説明

導電性成形品の製造方法及び導電性成形品

【課題】 カーボンナノファイバーを少量添加した場合でも効率よく導電性を発現できる導電性成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】 非晶性の熱可塑性樹脂、ポリエチレン系樹脂及びカーボンナノファイバーを含む樹脂組成物からなる導電性成形品の製造方法であって、非晶性の熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも70℃以上高い溶融温度で樹脂組成物を溶融し、金型温度を(Tg+50℃)以上の温度とし、溶融状態の樹脂組成物を金型のキャビティ内に充填し、樹脂組成物の充填後に、金型温度をガラス転移温度以下とし、樹脂組成物を冷却する、導電性成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性成形品の製造方法に関する。さらに詳しくは、カーボンナノファイバーの添加が少量であっても導電性を効率よく発現できる導電性成形品の製造方法及び導電性成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は成形性に優れることから、様々な用途で便利な素材として使用されている。しかし、絶縁材料であるため、用途によっては、導電性が必要な場合がある。
熱可塑性樹脂に導電性を付与する方法として、一般的には、熱可塑性樹脂に導電性物質を添加し、複合化する方法が行われている。導電性物質としては、金属粒子や金属繊維、カーボン繊維、カーボンブラック等が一般的に用いられいる。
【0003】
ところで、最近、導電性ナノフィラーとしてカーボンナノファイバー(CNF)やカーボンナノチューブ(CNT)が開発されて話題となっている。両者は共に、直径が数nmから数十nmであり、従来のカーボン繊維(直径が10〜15μm)と比べ少量の添加量で熱可塑性樹脂に導電性を付与するポテンシャルを有している。
しかし、CNTは非常に高価であり、また、中空で柔軟性があるため糸まり状に凝集しやすい。そのため、導電性フィラーとして使用するには凝集を防ぐための特別な分散技術が必要である。一方、CNFはCNTよりは安価であり、また、剛直で柔軟性がないために糸まり状の凝集体になりにくい特徴がある。従って、CNFをできるだけ少量添加して、熱可塑性樹脂に導電性を付与する技術の開発が望まれていた。
【0004】
この課題に対し、特許文献1では、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂にCNTを1〜2wt%程度添加した組成物を用い、標準の成形加工温度よりも高温で射出し、また、その射出速度を非常に遅くすることで、少量のCNT量で表面抵抗値を下げることが可能であることが開示されている。
しかしながら、CNFに関する記載はなく、また、スチレン系以外の樹脂についての技術開示はないため、各樹脂の特異性についての技術開示はない。また、非常に遅い射出速度であるため、実際の製品の製造では対応が難しかった。
【0005】
一方、本発明者の一人である呉らは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とCNFの複合材料において、少量(1〜5wt%)のポリエチレン(PE)を添加することにより、CNFの量が大幅に少ない領域でもCNF同士の会合状態が発生し、導電性となる事を見出している(非特許文献1参照)。そして、少量で導電性になる理由として、複合材料内部の電子顕微鏡観察を行い、CNFの端部に選択的に吸着されたPEがクランプホルダーとなって、CNFが連結した構造が形成されていることを示している。
【0006】
しかし、本技術は静的な状態でのみ観察されたものであり、実際の射出成形のように溶融樹脂の流動を伴う場合では、CNFが配向しCNFが単純に連結した構造が形成されないため、CNFを少量添加する系では導電性を示さないか、又は導電性が非常に低かった。そのため、この方法にて導電体として使用可能な程度の導電性を得るためには大量のCNFを添加する必要があり、コスト的に実用が困難であった。
【特許文献1】特開2003−100147号公報
【非特許文献1】Macromolecules,32,3534−3536(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、射出成形等の成形法において成形サイクルに優れ、CNFを少量添加した場合でも効率よく導電性を発現できる導電性成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究したところ、
(1)射出成形時における樹脂組成物の溶融温度及び金型温度を特定の条件に調整すること、
(2)ポリエチレン系樹脂の配合量を調整することによって、少量のCNFの添加でもCNFが連続した構造を形成でき、高い導電性を発現できること、
を見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下の導電性成形品の製造方法及び導電性成形品が提供される。
1.非晶性の熱可塑性樹脂、ポリエチレン系樹脂及びカーボンナノファイバーを含む樹脂組成物からなる導電性成形品の製造方法であって、前記非晶性の熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも70℃以上高い溶融温度で前記樹脂組成物を溶融し、金型温度を(前記Tg+50)℃以上の温度とし、溶融状態の前記樹脂組成物を金型のキャビティ内に充填し、前記樹脂組成物の充填後に、前記金型温度を前記ガラス転移温度以下とし、前記樹脂組成物を冷却する、導電性成形品の製造方法。
2.ポリエチレン系樹脂を除く結晶性の熱可塑性樹脂、ポリエチレン系樹脂及びカーボンナノファイバーを含む樹脂組成物からなる導電性成形品の製造方法であって、前記結晶性の熱可塑性樹脂の融点(Tm)よりも50℃以上高い溶融温度で前記樹脂組成物を溶融し、金型温度を(前記Tm+30)℃以上の温度とし、溶融状態の前記樹脂組成物を金型のキャビティ内に充填し、前記樹脂組成物の充填後に、前記金型温度を前記融点以下とし、前記樹脂組成物を冷却する、導電性成形品の製造方法。
3.前記樹脂組成物が、前記非晶性の熱可塑性樹脂又はポリエチレン系樹脂を除く結晶性の熱可塑性樹脂を70〜98.5wt%、前記ポリエチレン系樹脂を0.5〜20wt%、及び前記カーボンナノファイバーを0.5〜10wt%含む組成物である1又は2に記載の導電性成形品の製造方法。
4.前記樹脂組成物が、前記非晶性の熱可塑性樹脂又はポリエチレン系樹脂を除く結晶性の熱可塑性樹脂を80〜94wt%、高密度ポリエチレン系樹脂を5.5〜15wt%、及び前記カーボンナノファイバーを0.5〜5wt%含む組成物である1又は2に記載の導電性成形品の製造方法。
5.さらに、前記樹脂組成物100重量部に対し、カーボンブラックを0.5〜10重量部含む1〜4のいずれかに記載の導電性成形品の製造方法。
6.上記1〜5のいずれかに記載の導電性成形品の製造方法により得られる導電性成形品。
7.体積固有抵抗が1010〔Ω・cm〕以下である6記載の導電性成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性成形品の製造方法により、CNFの少量添加でも高い導電性を有する導電性成形品が得られる。また、成形サイクルよく射出成形できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の導電性成形品の製造方法を具体的に説明する。
本発明の導電性成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂、ポリエチレン系樹脂及びカーボンナノファイバー(CNF)を含む樹脂組成物を、一定以上の溶融温度で溶融し、従来よりも比較的高温に設定した金型内に充填する。そして、キャビティへの充填後、金型温度を樹脂のガラス転移温度又は融点以下に冷却して、樹脂組成物を冷却する。
本発明では金型温度を、樹脂組成物の充填後に変化させたことに特徴がある。即ち、金型内において樹脂の冷却を2段階で行なっている。このように金型温度を制御することにより、CNFの添加量が少量であっても、優れた導電性を有する成形品が得られる。
【0011】
このようにCNFの添加量が少量で導電性に優れる成形品が得られるのは、CNFの端部が実質的にポリエチレン(PE)系樹脂のドメイン中に存在し、この樹脂を介して連続構造を形成しているためである。即ち、CNFはPE系樹脂と親和性が高いためにPEドメイン中に主に集まるようになり、その結果、成形品中に点在するPEドメインをCNFが橋をかける構造となるため、CNF同士の接点が多くなる。
【0012】
具体的に、熱可塑性樹脂として非晶性の樹脂を用いる場合は、非晶性の熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも70℃以上高い温度(Tg+70)℃以上、好ましくは、(Tg+80)℃〜(Tg+200)℃、特に好ましくは、(Tg+100)℃〜(Tg+150)℃の温度で樹脂組成物を溶融する。
充填時における金型温度は、(上記Tg+50)℃以上の温度、好ましくは、(Tg+60)℃〜(Tg+200)℃、かつ370℃以下に設定する。370℃を超えると樹脂の分解が起こるおそれがある。
樹脂組成物を金型内に充填した後の金型温度は、非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)以下、好ましくは(Tg−10)℃〜(Tg−50)℃、特に好ましくは(Tg−20)℃〜(Tg−40)℃とする。
【0013】
熱可塑性樹脂として結晶性の樹脂を用いる場合は、結晶性の熱可塑性樹脂の融点(Tm)よりも50℃以上高い溶融温度(Tm+50)℃以上、好ましくは、(Tm+50)℃〜(Tm+150)℃、特に好ましくは、(Tm+60)℃〜(Tm+100)℃の溶融温度で樹脂組成物を溶融する。
充填時における金型温度は、(上記Tm+30)℃以上の温度、好ましくは、(Tm+60)℃〜(Tm+200)℃、かつ370℃以下に設定する。
樹脂組成物を金型内に充填した後の金型温度は、結晶性樹脂の融点(Tm)以下、好ましくは(Tm−30)℃〜(Tm−150)℃、特に好ましくは(Tm−40)℃〜(Tm−100)℃とする。
【0014】
本発明の製造方法を実施する成形装置は、上述の条件に制御可能な成形装置であれば特に制限されない。例えば、通常の射出成形機を使用する場合、樹脂組成物の溶融温度は射出成形機のバレル(シリンダ)の温度を設定することにより、また、金型温度は、ヒーターによる加熱や冷却媒体の循環による冷却機構により調整できる。
尚、本明細書において、溶融温度とは、溶融状態の樹脂の温度を意味し、金型温度とは、金型表面の温度を意味する。また、樹脂のガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)は、DSC(示差走査型熱量計)で測定した温度を意味する。
【0015】
本発明の製造方法で使用する熱可塑性樹脂、ポリエチレン系樹脂及びカーボンナノファイバーは、特に制限はなく、工業用に販売されているものが使用できる。
熱可塑性樹脂のうち、非晶性樹脂の例としては、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アタクチックポリスチレン系樹脂、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、塩化ビニル等を挙げることができる。好ましくは、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、アタクチックポリスチレン系樹脂である。
また、結晶性の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール等を挙げることができる。好ましくは、ポリプロピレン、PPS、SPS、PBTである。
【0016】
ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の各種ポリエチレンや、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−αオレフィン共重合体が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。好ましくは、HDPEである。
【0017】
カーボンナノファイバーとしては、一般的に市販されているもの、例えば、繊維長が0.5μm〜200μm、繊維径が10nm〜300nmであるものが使用できる。
【0018】
樹脂組成物の配合は、ポリエチレン系樹脂を除く熱可塑性樹脂を70〜98.5wt%とし、ポリエチレン系樹脂を0.5〜20wt%とし、カーボンナノファイバーを0.5〜10wt%とすることが好ましく、特に、ポリエチレン系樹脂を除く熱可塑性樹脂を80〜94wt%とし、ポリエチレン系樹脂を5.5〜15wt%とし、カーボンナノファイバーを0.5〜5wt%とすることが好ましい。このような配合比とすることにより、ポリエチレン系樹脂の添加による成形品の機械的性能を低下させることなく、また、少量のCNFの添加でも効率よく導電性を付与することができる。
【0019】
本発明では樹脂組成物が、さらに、カーボンブラックを樹脂組成物100重量部に対し、0.5〜10重量部含むことが好ましく、特に1〜5重量部含むことが好ましい。これにより、導電性が高まるとともに、より少ないCNF量で導電性を得ることができる。
カーボンブラックは、工業用に販売されているものが特に制限なく使用できる。
尚、本発明では上記材料の他、必要に応じて、ガラス繊維、タルク等の無機フィラー、着色剤、可塑剤、成形助材、紫外線吸収剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0020】
本発明の製造方法で作製した成形品は、カーボンナノファイバーが、成形品中にてポリエチレン系樹脂からなるドメイン部に選択的に移行し、連続して繋がった構造を形成するため、カーボンナノファイバーの添加が少量であっても高い導電性を有する成形品が得られる。従って、本発明の導電性成形品は、体積固有抵抗が、1010〔Ω・cm〕以下、特に10〔Ω・cm〕以下という優れた導電性を有する。
尚、体積固有抵抗はJIS K7194に記載の方法で測定した値を意味する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
実施例1−3、比較例1−4
(1)樹脂組成物ペレットの作製
ポリカーボネート樹脂(出光興産株式会社製、出光タフロン:FN2200A、粘度平均分子量が22000、ガラス転移温度152℃)91wt%と、カーボンナノファイバー(CNF、昭和電工製:VGCF)3wt%と、高密度ポリエチレン(出光興産株式会社製、出光PE:110J)6wt%とをドライブレンドした。これを二軸混練機(東芝機械製、TEM−35B)にて280℃で溶融混練し、樹脂組成物ペレットを得た。
【0022】
(2)射出成形
上記の樹脂組成物ペレットを120℃で6時間乾燥した後、射出成形を行なった。射出成形機は日精AZ7000−36H(型締め力220t)を使用し、金型は300mm×200mm×2mm厚の平板形状金型を用いた。金型には、加熱用のヒーターを埋め込むと共に、開閉バルブの付いた冷却パイプを設置した。
実施例1−3、及び比較例1−4における成形条件(樹脂組成物の溶融(射出)温度、充填時の金型温度及び充填後の金型温度)と、得られた射出成形品の体積固有抵抗を表1に示す。
尚、実施例1〜3では、溶融樹脂を金型内に射出充填後、約30秒間後に冷却パイプに冷却水を導入して金型温度を120℃まで冷却し、成形品を固化した。また、表1に示した以外の成形条件は、射出速度を5mm/sec、射出圧力を30kg/cm、金型における冷却時間180秒とした。
体積固有抵抗はJIS K7194に基づいて測定した。
【0023】
【表1】

【0024】
得られた成形品の一部を切り出し、メチレンクロライドでポリカーボネートをエッチングし、電子顕微鏡にて形態を観察した。その結果、実施例1−3では、CNFの連結構造が形成されていた。一方、比較例1−4においては、CNFは単独で分散しており連結構造が形成されていなかった。
実施例1で作製した成形品のCNFの連結状態を観察した電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0025】
実施例4,5
ポリカーボネート樹脂(出光興産株式会社製、出光タフロン:FN1900A、粘度平均分子量が19000、ガラス転移温度151℃)を使用し、カーボンブラック(EC600JD)を添加し、さらに、樹脂組成物の組成を表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物ペレットを作製した。
このペレットを用いて、溶融温度を300℃、充填時の金型温度を250℃、充填後の金型温度を120℃とした他は、実施例1と同様にして射出成形をした。得られた成形品の体積固有抵抗を表2に示す。
【0026】
【表2】

PC:ポリカーボネート
PE:ポリエチレン
CNF:カーボンナノファイバー
CB:カーボンブラック
【0027】
比較例5,6
射出成形時の溶融温度を300℃、充填時及び充填後の金型温度を80℃とした他は、実施例5又は6と同様にして射出成形をした。
得られた成形品の体積固有抵抗を表2に示す。
【0028】
比較例7−10
樹脂組成物を表3に示す配合とした他は、実施例4又は比較例5の成形条件にて成形品を作製し、評価した。
得られた成形品の体積固有抵抗を表3に示す。
【0029】
【表3】

条件A:溶融温度を300℃、充填時及び充填後の金型温度を80℃とした。
条件B:溶融温度を300℃、充填時の金型温度を250℃、充填後の金型温度を120℃とした。
【0030】
実施例6,7、比較例11−13
(1)樹脂組成物ペレットの作製
ポリメタクリル酸メチル樹脂(三菱レーヨン製、VH:ガラス転移温度97℃)89wt%と、カーボンナノファイバー(CNF、昭和電工製:VGCF)6wt%と、高密度ポリエチレン(出光興産株式会社製、出光PE:110J)5wt%をドライブレンドした。これを二軸混練機(東芝機械製、TEM−35B)にて230℃で溶融混練し、樹脂組成物ペレットを得た。
【0031】
(2)射出成形
上記の樹脂組成物ペレットを80℃で3時間乾燥した後、射出成形を行なった。射出成形機及び金型は、上記実施例1等と同じものを用いた。
実施例6,7、及び比較例11−14における成形条件(樹脂組成物の溶融(射出)温度、充填時の金型温度及び充填後の金型温度)と、得られた射出成形品の体積固有抵抗を表4に示す。
尚、実施例6,7では、溶融樹脂を金型内に射出充填後、約40秒間後に冷却パイプに冷却水を導入して金型温度を70℃まで冷却し、成形品を固化した。また、その他の成形条件は、射出速度を20mm/sec、射出圧力を10kg/cm、金型における冷却時間200秒とした。
【0032】
【表4】

【0033】
比較例14
樹脂組成物ペレットの作製において、高密度ポリエチレンを添加せずに、カーボンナノファイバーを10wt%添加した他は、実施例7と同様にしてペレットを作製し、射出成形した。結果を表4に示す。
【0034】
実施例8,9、比較例15,16
(1)樹脂組成物ペレットの作製
ポリプロピレン(出光興産株式会社製、出光ポリプロ、J−3000GP:融点166℃)81wt%と、カーボンナノファイバー(CNF、昭和電工製:VGCF)4wt%と、高密度ポリエチレン(出光興産株式会社製、出光PE:110J)15wt%をドライブレンドした。これを二軸混練機(東芝機械製、TEM−35B)にて230℃で溶融混練し、樹脂組成物ペレットを得た。
【0035】
(2)射出成形
上記の樹脂組成物ペレットを80℃で3時間乾燥した後、射出成形を行なった。射出成形機及び金型は、上記実施例1等と同じものを用いた。
実施例8,9、及び比較例15,16における成形条件(樹脂組成物の溶融(射出)温度、充填時の金型温度及び充填後の金型温度)と、得られた射出成形品の体積固有抵抗を表5に示す。
尚、実施例8,9では、溶融樹脂を金型内に射出充填後、約60秒間後に冷却パイプに冷却水を導入して金型温度を60℃まで冷却し、成形品を固化した。また、その他の成形条件は、射出速度を10mm/sec、射出圧力を15kg/cm、金型における冷却時間150秒とした。
【0036】
【表5】

【0037】
比較例17−20
実施例1,2及び比較例1,2において、高密度ポリエチレンの代わりにポリプロピレン(出光興産株式会社製、出光ポリプロ、J−785H)を使用した。その他は同様にして、樹脂組成物ペレットを作製し、射出成形を行った。結果を表6に示す。
【0038】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の製造方法で作製される導電性成形品は、導電性を必要とする成形品、例えば、静電塗装を必要とする自動車部品や帯電防止性が必要な電子部品の搬送トレイ、電子部品のハウジング、コピー機の転写ロール等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1で作製した成形品のCNFの連結状態を観察した電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性の熱可塑性樹脂、ポリエチレン系樹脂及びカーボンナノファイバーを含む樹脂組成物からなる導電性成形品の製造方法であって、
前記非晶性の熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも70℃以上高い溶融温度で前記樹脂組成物を溶融し、
金型温度を(前記Tg+50)℃以上の温度とし、溶融状態の前記樹脂組成物を金型のキャビティ内に充填し、
前記樹脂組成物の充填後に、前記金型温度を前記ガラス転移温度以下とし、前記樹脂組成物を冷却する、導電性成形品の製造方法。
【請求項2】
ポリエチレン系樹脂を除く結晶性の熱可塑性樹脂、ポリエチレン系樹脂及びカーボンナノファイバーを含む樹脂組成物からなる導電性成形品の製造方法であって、
前記結晶性の熱可塑性樹脂の融点(Tm)よりも50℃以上高い溶融温度で前記樹脂組成物を溶融し、
金型温度を(前記Tm+30)℃以上の温度とし、溶融状態の前記樹脂組成物を金型のキャビティ内に充填し、
前記樹脂組成物の充填後に、前記金型温度を前記融点以下とし、前記樹脂組成物を冷却する、導電性成形品の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、前記非晶性の熱可塑性樹脂又はポリエチレン系樹脂を除く結晶性の熱可塑性樹脂を70〜98.5wt%、前記ポリエチレン系樹脂を0.5〜20wt%、及び前記カーボンナノファイバーを0.5〜10wt%含む組成物である請求項1又は2に記載の導電性成形品の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、前記非晶性の熱可塑性樹脂又はポリエチレン系樹脂を除く結晶性の熱可塑性樹脂を80〜94wt%、高密度ポリエチレン系樹脂を5.5〜15wt%、及び前記カーボンナノファイバーを0.5〜5wt%含む組成物である請求項1又は2に記載の導電性成形品の製造方法。
【請求項5】
さらに、前記樹脂組成物100重量部に対し、カーボンブラックを0.5〜10重量部含む請求項1〜4のいずれかに記載の導電性成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の導電性成形品の製造方法により得られる導電性成形品。
【請求項7】
体積固有抵抗が1010〔Ω・cm〕以下である請求項6記載の導電性成形品。



【図1】
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【公開番号】特開2007−15333(P2007−15333A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201669(P2005−201669)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】