説明

導電性樹脂を用いるキャパシタ構造及びその製造方法

【課題】製造コスト及び環境負荷の少なくともいずれかを改善又は低減することができるキャパシタ構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂材料内部において、導電性フィラー含有率が相対的に低い第1の領域(13)の厚み方向の両側に、導電性フィラー含有率が相対的に高い、第2の領域及び第3の領域がそれぞれ配置されていることにより、該第2の領域及び第3の領域との間に電気的な容量を形成していることを特徴とするキャパシタ構造及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性樹脂を用いるキャパシタ構造、特に電子機器を構成するマザーボード、半導体パッケージ基板、LSIチップへ形成されるキャパシタ構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器とそれを構成する機能モジュール、半導体パッケージなどの機能部品の高機能化、高性能化の進展は、能動部品(半導体素子)の高集積化、高性能化に支えられている。それに伴い、回路を構成するキャパシタ、抵抗体、フィルタなどの回路を構成する受動素子の数、特にキャパシタと抵抗体に至っては飛躍的に搭載される数が増加している。
【0003】
キャパシタや抵抗体は、チップ型部品の形状で基板などの被実装体表面の電極部にはんだを介して接続・固定されているものが最も多い。また、チップ型部品のサイズは、機器の小型化の要求に伴って小型化の一途をたどり、現在では最小で0402タイプ(JIS規格、0.4mm×0.2mmサイズ)まで実用化が進んでいる。しかし、必要な受動素子数の飛躍的増加と、小型化しているとは言え増加する受動部品の実装面積、さらにはより高速な動作のための受動部品の配置自由度において課題があった。
【0004】
そのような背景から、基板内に受動部品を内蔵した部品内蔵基板に関する研究開発がなされており、一部実用化されている。受動部品の部品内蔵基板は、受動部品をチップ型部品の形状で供給し、キャビティ形状をした基板構成材内に実装し埋め込むタイプと、薄膜プロセスを用いて受動素子を基板内に作りこんでいく薄膜タイプに大別され、部品の小型化・薄型化による高集積度、及び複数素子の一括形成による合理性の面で薄膜プロセスにより受動素子を作りこむタイプ(後者)が有利である。
【0005】
例えば特許文献1では、金、銀等を含有する導電性ペーストで補助電極層を形成し、チタンを主成分とする導電性ペーストを用いて導電膜を形成することでコンデンサを製造する技術が開示されている。また、特許文献2では、導電性粉末を混合した導電性ペーストで電極とアルミニウム金属板を接着させたコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−150301号公報
【特許文献2】特開平10−97952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、薄膜タイプのキャパシタにおいても、複数素子が一括形成できるという面で合理性があるとは言え、コストの面ではまだ高く、その適用範囲は付加価値の高いハイエンド領域に事実上限定される。つまり、この薄膜タイプキャパシタは、基本的にフォトリソグラフィー技術をプロセスの基本にしており、プロセスステップ数が多く、また高価な設備を使用するため高コスト化に繋がる。1例として電極(導体)層の形成ステップを示すと、「導体の全面形成(銅箔貼り合わせなど)→感光樹脂(フォトレジスト)の全面塗布→露光→現像→余分な感光性樹脂除去→導体エッチング→エッチングレジスト除去」の大まかに分けても7つのステップを踏む必要がある。
【0008】
また、薄膜タイプのキャパシタプロセスは、環境負荷が高いということもある。具体的には、フォトリソプロセスでは、エッチングにより多くの導体材料、誘電体材料、感光性樹脂材料を結果的には廃棄することになり、またエッチング処理に用いる薬液についても廃棄せざるを得ない。地球環境のサステイナビリティに全世界的に大きな関心が寄せられ、環境負荷物質に対する規制の動向も活発になりつつある中、廃棄物の低減は大きな課題と言える。
【0009】
本発明は、上述の事情を鑑みてなされたもので、誘電体層の両側を導体層で挟むタイプのキャパシタにおいて、製造コスト及び環境負荷の少なくともいずれかを改善又は低減することができるキャパシタ構造及びその製造プロセスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の視点において、本発明に係るキャパシタ構造は、樹脂材料内部において、導電性フィラー含有率が相対的に低い第1の領域の厚み方向の両側に、導電性フィラー含有率が相対的に高い、第2の領域及び第3の領域がそれぞれ配置されていることにより、該第2の領域及び第3の領域との間に電気的な容量を形成していることを特徴とする。本願において樹脂材料とは、例えば樹脂中に導電性フィラーを主に含み、さらに分散剤や溶剤等を添加剤として含む材料等をいう。また、第2の領域と第3の領域の構成は同一であってもよく、異なってもよい。また、各領域において、導電性フィラーの分布が必ずしも均一でなくともよい。各領域全体として導電性フィラーの含有率に差を設けることにより、電気的容量を形成させることが重要である。
【0011】
第2の視点において、本発明に係るキャパシタ構造の製造方法は、導電性フィラーを含んで形成した第1の導電性樹脂層の、一方の表層部に含まれる該導電性フィラーの含有率を減少させる工程と、次いで該表層部の表面上の少なくとも一部に、導電性フィラーを含んだ第2の導電性樹脂層を形成する工程と、を含み、該第2の導電性樹脂層に含まれる導電性フィラーの粒度分布は、該第1の導電性樹脂層に含まれる導電性フィラーの粒度分布よりもより大きい側に分布している、ことを特徴とする。
【0012】
第3の視点において、本発明に係るキャパシタ構造の製造方法は、導電性フィラーを含んだ第1の導電性樹脂層を硬化形成する工程と、該第1の伝導性樹脂層の上の少なくとも一部に導電性フィラーを含んだ第2の導電性樹脂層を形成する工程と、該第1の導電性樹脂層から該第2の導電性樹脂層側に向けて遠心力又は重力をかける工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
第4の視点において、本発明に係るキャパシタ構造の製造方法は、導電性フィラーを含んだ第1の導電性樹脂層を硬化形成する工程と、表層部に含まれる導電性フィラーの含有率を減少させた第2の導電性樹脂層を、該導電性フィラーの含有率を減少させた該表層部を相対する面として該第1の導電性樹脂層と積層する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
このように、例えば第1の導電性樹脂層の表層の導電性フィラーを減少させることにより、誘電体層として機能させ、見かけ上キャパシタの下部電極と誘電体膜を一体的に形成していることになる。従って、導電性樹脂層を必要な箇所に必要な量だけ供給し、加熱硬化させるという作製工程数が極めて少ないプロセスで、かつ下部電極膜と誘電体膜を一括して形成でき、コスト低減に繋がる。また、前述のように導電性樹脂電極、配線は必要な箇所に必要な量だけ供給し、廃棄材料、廃棄薬液などが非常に少ないため、環境負荷が非常に小さいという利点も併せ持つ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)〜(d)は本発明の一実施例のキャパシタ作製プロセスを順次示す全体斜視図である。
【図2】(a)〜(d)は本発明の一実施例のキャパシタ作製プロセスを順次示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例のキャパシタ構造を示す模式断面図である。
【図4】本発明に用いる導電性樹脂層に含有される導電性フィラーの粒度(粒径)分布の一例を示す図である。
【図5】(a)、(b)は本発明の他の実施例のキャパシタ構造を示す模式断面図である。
【図6】本発明の他の実施例のキャパシタ製造プロセスにおける遠心分離のイメージを示す図である。
【図7】(a)、(b)は本発明の他の実施例のキャパシタ製造プロセスにおける遠心分離前後の断面をそれぞれ示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記第1の領域には、前記導電性フィラーが含まれていないことが好ましい。
【0017】
導電性フィラーは、粉末状又は繊維状の形状を有する、金、銀、銅、ニッケル、カーボンのうちの単体又はこれらの混合物、該元素同士又は該元素と他元素との合金、もしくは他元素よりなるフィラー表面に該元素のメッキを施したもののいずれかであることが好ましい。
【0018】
前記樹脂材料の樹脂成分は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とのハイブリッド型であることが好ましい。これにより例えば、第1の導電性樹脂層の表層部の導電性フィラーの除去工程の後に適正な加熱処理を施すことで、第2の導電性樹脂層形成後に両導電性樹脂層間のより確実な絶縁を得ることができる。
【0019】
前記第2の領域と第3の領域の、それぞれに含有される導電性フィラーの粒度分布が異なっていることが好ましい。特に、後で形成する第2の導電性樹脂層を構成する導電性フィラーの粒度分布のほうが、最初に形成する第1の導電性樹脂層を構成する導電性フィラーの粒度分布よりも、全体として大きい方に移動した粒度分布とすることで、第1の導電性樹脂層の表層部の導電性フィラー除去工程により形成された表層の空孔部分に第2の導電性樹脂層に含まれる導電性フィラーが入り込んで導通経路を形成するのを防ぎ、より確実に第1の導電性樹脂の表層を挟んで両側の絶縁を実現し、第1の導電性樹脂の表層部を誘電体層として機能させることができる構成となっている。
【0020】
前記第2の領域と第3の領域の、それぞれの樹脂材料の構成が異なってもよい。即ち、樹脂成分、含有されるフィラーの種類、形状、分布やそれぞれの組成比等について、さまざまな組み合わせが可能である。
【0021】
前記樹脂材料が無機フィラーを含むことができる。そうすることで、第1の導電性樹脂層表層部の誘電体層として機能する部位の誘電率を上げ、より高いキャパシタ容量を得ることが可能になる。
【0022】
例えば前記無機フィラーは、ペロブスカイト構造を持つ金属酸化物である。
【0023】
また、本発明の第2の視点におけるキャパシタ構造の製造方法において、導電性フィラー含有率を減少させる工程は、化学的エッチングにより行われることが好ましい。こうすることで、比較的容易、かつ確実に表面近傍の導電性フィラーを除去でき、除去する領域厚さも薄く設定することができる。この導電性フィラーを除去する領域、つまり誘電体層として機能させる部位の厚さを薄く設定できることは、より大きなキャパシタ容量の実現に繋がる。
【0024】
また、導電性フィラー含有率を減少させる工程は、遠心力又は重力による沈降により行うことができる。
【0025】
また、少なくとも第1の導電性樹脂の樹脂成分に熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の両方を含むハイブリッド型とした場合において、第1の導電性樹脂の表面近傍の導電性フィラーを除去する工程の後、さらに加熱工程を含むことが好ましい。前記加熱工程において、ハイブリッドタイプ樹脂の熱可塑性樹脂成分が軟化し、流動性が上がることで、部分的に露出している導電性フィラーの表面を覆い、絶縁性を上げることが可能になる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明のいくつかの典型的な実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
(実施例1)
本発明に係る実施例1の詳細な構造を図3に示す。実施例1においては、基板10の上に第1の導電性樹脂層11が形成され、その最表面近傍(表層部)が導電性フィラー欠乏層(導電性フィラーの含有率が低い領域)13となっており、その上に第2の導電性樹脂層12が形成されている。導電性フィラー欠乏層13は、第1の導電性樹脂層の最表面近傍の導電性フィラーがエッチングにより除去されたものである。その後の第2の導電性樹脂層の供給時に、エッチングにより形成された空孔の少なくとも一部に、第2の導電性樹脂層の樹脂成分が充填されている。また、第1の導電性樹脂層と第2の導電性樹脂層では、第2の導電性樹脂層を構成する導電性フィラーの粒度分布のほうが、全体として大きい方に移動した粒度分布となっている。そうすることで、エッチングにより形成された空孔部分に第2の導電性樹脂層に含まれる導電性フィラーが入り込んで導通経路を形成するのを防ぎ、より確実に誘電体層を形成できる構成となっている。
【0028】
本実施例のキャパシタ作製プロセスを順次、図1に全体斜視図、図2に断面図として示す。なお、図1と図2に示す各工程を表す記号は対応している。最初に図1(a)、図2(a)に示すように基板10を用意する。その上に、図1(b)、図2(b)に示すように第1の導電性樹脂層11を所定のパターンに従ってスクリーン印刷法で供給する。第1の導電性樹脂層11は、銀(Ag)フィラー、エポキシ系の熱硬化性樹脂、分散剤、溶剤で構成されており、Agフィラーの粒度分布は0.3μm付近にピークを持つ。粒度分布は、JISZ8901に記載の定義に準ずる。本実施例では、第1の導電性樹脂層11(及び後述の第2の導電性樹脂層12を供給する方法にスクリーン印刷法を用いたが、この方法に限定されるものではなく、インクジェットやディスペンス、凹版印刷法や凸版印刷法、オフセット印刷法なども適宜用いることができる。ただし、それぞれの供給手法によって印刷材料に求められる物性が異なっており、手法に合う物性に適合させるために樹脂種や溶剤種、もしくはそれらの含有量などを調整する必要があるのは言うまでもない。
【0029】
次に、図1(c)、図2(c)に示すように導電性フィラー欠乏層13を形成する。具体的には、基板10ごとAgの溶解作用を有するアルカリ性のエッチング液に浸漬した。本実施例では、エッチング液に約3分浸漬した後、縦断面を作製してエッチングした部分を詳細に観察して導電性フィラー欠乏層13の厚さを確認したところ、約2μmであった。
【0030】
なお、本実施例では第1の導電性樹脂層11の供給時にキャパシタの下部電極と配線を同時に形成している。従って、エッチング時に配線が露出していれば、配線の表面もAgフィラーがエッチングされることになる。また、第1の導電性樹脂層11以外の部分もエッチング液に浸漬されるため、基板表面材料等との相性によってはダメージを受ける可能性がある。そのように、前記エッチング液への浸漬が不適切な場合は、エッチング処理の前にレジスト膜などを、エッチングを施したくない場所、またはエッチング液によってダメージを受けることが懸念される場所に形成し、キャパシタ部分のみをエッチングすることも可能である。
【0031】
また、本実施例では、基板10には大きな段差はないものを用いているが、他の部品が既に搭載されているなど、基板10の表面の凹凸がスクリーン印刷に供するのが難しいほど大きい場合には、インクジェットなど非接触式の印刷工法を用いるのが好適である。
【0032】
次に、図1(d)、図2(d)に示すように、第2の導電性樹脂層12を第1の導電性樹脂層11を形成したときと同じくスクリーン印刷法で供給した。この場合には、第1の導電性樹脂層11の厚さ分の段差を吸収して配線切れすることなく膜を形成する必要があるが、第1の導電性樹脂層11の厚さは15μm程度になるよう設計されており、スクリーン印刷法もスクリーンマスクをスキージでたわませながら印刷していくオフセット印刷を用いているため、配線切れなどの不具合を発生させることなく第2の導電性樹脂層12の供給が可能であった。
【0033】
本実施例では、第2の導電性樹脂層12のAgフィラーの粒度分布は0.8μm付近にピークを持つように調整し、第1の導電性樹脂層11の導電性フィラー径よりも全体的に大きくなるようにした。図4にフィラー径の設計における考え方を示す。粉末状の導電性フィラーの粒子サイズはある粒度分布を持っている。この粒度分布の形状は、金属種、フィラーの作製方法及び条件、粉末作製後の選別の細かさなどによってシャープになったりブロードになったりする。また、一般的にはシャープな粒度分布、つまりフィラーの径が非常にそろった粉末を得ようとすればするほど、プロセスコストの上昇や歩留まりの低下を招き、高価な粉末となってしまう。
【0034】
図4には、第1の導電性樹脂層11と第2の導電性樹脂層12に含まれる導電性フィラーの粒度分布イメージが示されており、両者が重なった部分が両方の導電性樹脂層に存在しうる粒径と、その含有割合を示している。つまり、これは第2の導電性樹脂層12の導電性フィラーがエッチングによりできた第1の導電性樹脂層表面の空孔に侵入する可能性に対応している。この重なり合った部分は、粒度分布が類似していればしている程大きく、また粒度分布がシャープになればなるほど小さくなることが容易に推察できる。従って、導電性フィラーの粒度分布に、第2の導電性樹脂層12の導電性フィラー径の方が大きくなる方向に差を持たせることで、空孔を経由して電気的なリークが起こる危険性を効率的に低減することができる。
【0035】
最後に第2の導電性樹脂層を180℃、30分の条件で加熱、硬化させてキャパシタの作製が完了する(図示せず)。
【0036】
なお、本実施例1では第1の導電性樹脂層11の導電性フィラーにAgフィラーを用いたが、Agに限定されるものではなく、他にも金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、カーボン(C)のいずれかよりなる粉末、又はそれらの混合物、または前記元素同士又はこれらの元素と他元素との合金、もしくは他元素よりなるフィラー表面に前記元素のめっきを施した粉末を用いても良い。
【0037】
なお、本実施例では第1の導電性樹脂層11と第2の導電性樹脂層12は導電性フィラーの粒度分布は異なるものの、同一フィラー種(Ag)、同一樹脂成分、溶剤などを用いたが、フィラー種や樹脂種などが同一である必要は必ずしもなく、個別に適宜選択される。なお、硬化後の第1の導電性樹脂層11表面に対する、第2の導電性樹脂層の接着性、親和性については考慮されるべきであるが、これらは当業者には公知であるので詳細には述べない。
【0038】
(実施例2)
図5(a)に本発明に係る実施例2の構成を示す。本実施例2の概略の構成は実施例1と同一であり、実施例1と異なる点は第1の導電性樹脂層11の最表面付近への誘電体層の形成方法である。具体的には、実施例1においては、第1の導電性樹脂層11を供給、加熱硬化後、エッチングにより最表面付近の導電性フィラーを除去したが、本実施例2においては第1の導電性樹脂層11を供給後、遠心処理により導電性フィラーを偏在させ、第1の導電性樹脂層11の最表面近傍に導電性フィラーの存在が極めて少ない、もしくは存在しない樹脂層14を形成する。
【0039】
以下に、実施例1との差異プロセスである樹脂層14の形成部分に絞って詳細にプロセスを説明する。
【0040】
基板10に第1の導電性樹脂層11をスクリーン印刷により供給の後、図6に示すように、第1の導電性樹脂層を供給した基板21ごと全体を遠心分離装置100にセットする。第1の導電性樹脂層を供給した基板21は、遠心分離機の内壁に、印刷面を内側にしてセットする。そして約1500回転/分で1分間回転させる。すると、遠心力により基板方向への力を受けた導電性フィラーは、機械的に沈降させられ、図7に示すイメージのように、印刷直後(図7(a))にはほぼ均等に導電性フィラーが分布していたものが、遠心分離後(図7(b))は導電性フィラーが沈み込み、最表面近傍に樹脂層14が形成される。
【0041】
最後に樹脂層14の上に第2の導電性樹脂層12を形成する。この場合、図5(a)に示すように、見かけ上樹脂層14の上面が第1の導電性樹脂層11と第2の導電性樹脂層12との境界20となる。なお、代替手段として遠心分離でなく、所定の時間をかけて重力による自然沈降を利用しても良い。
【0042】
また、第1の導電性樹脂層11は導電性フィラーを沈降させず加熱硬化させた後、第2の導電性樹脂層12を供給の後に遠心分離によって導電性フィラーを強制的に偏在させる方法も有効である。この場合の詳細断面イメージを図5(b)に示し、遠心分離のイメージは図6と同じである(第1及び第2の導電性樹脂層を供給した基板22を配置する)。ただし、第2の導電性樹脂層12に遠心分離を掛ける場合は、導電性フィラーを最表面側へ偏在させるため、遠心力を掛ける向きが逆になる。従って、第2の導電性樹脂層12が外側になるように基板22を取り付ける必要がある。この場合、図5(b)に示すように、樹脂層14の下面が第1の導電性樹脂層11と第2の導電性樹脂層12との境界20となる。
【0043】
なお、導電性フィラーに用いられる金属と、樹脂成分では、金属の方が比重が5倍以上も大きく、混ぜ合わせると比重の違いから自然に分離していくが、通常の導電性樹脂層は、導電性フィラーの均一な分散を実現するため、樹脂の調整や分散剤の添加などを用いて沈降を極力抑制するよう設計されている。しかし、本実施例では導電性フィラーの沈降を促すことを意図しており、かつ安定した材料供給の面では導電性樹脂層の印刷前にフィラー沈降が起こるのでは課題がある。そこで、分散剤の調整や、樹脂の温度に対する粘度変化を調整し、樹脂の本硬化温度より低い温度への加熱で沈降が起こるようにすることで、より簡単に層分離を実現することができる。
【0044】
また、導電性樹脂層には、チタン酸バリウム(BaTiO3)やチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)など、ペロブスカイト構造を有する誘電率の高いフィラーを適量含有させても良い。そうすることで、樹脂膜部分の見かけの誘電率を向上させ、引いてはキャパシタンスを向上させることに繋がる。
【0045】
(実施例3)
本実施例3の概略の構成は実施例1と同一であり、実施例1と異なる点は第1の導電性樹脂層の樹脂成分を熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂のハイブリッド型にした点であり、それに伴ってプロセスを変更している(図示せず)。
【0046】
具体的には、第1の導電性樹脂層の樹脂成分として、エポキシ系熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂のハイブリッド型を採用し、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の含有量がほぼ等しく設定した。
【0047】
プロセスとしては、第1の導電性樹脂層を形成してその表層部の導電性フィラーをエッチング除去した後、100℃、10分の予備加熱処理を施した後に、180℃、30分の本加熱を行った以外は、実施例1と同一である。これは、熱可塑性樹脂が一旦硬化後も再加熱によって軟化し、流動性を持つことを利用したもので、エッチングにより発生した空孔部内部の導電性フィラーの露出の危険性に対して、100℃加熱により流動性を高めた熱可塑性樹脂成分が露出している導電性フィラー部を覆い、絶縁を保持する効果が期待できる。
【0048】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。つまり実施例で示した導電性フィラー材料、導電性フィラー粒度分布、サンプルへの遠心力付加手法、ハイブリッド型導電性樹脂材料及び予備加熱条件等は一例を示したものであって、目的、用途等に応じて適宜変更することができる。また、実施例においては基板上へのキャパシタ作製を例示したが、適用範囲はそれに制約を受けるものではなく、シリコンチップ上やガラス上へのキャパシタ形成にも適用可能である。また、本発明で提案した手法を用いて、キャパシタを内蔵した多層基板を作製することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 基板
11 第1の導電性樹脂層
12 第2の導電性樹脂層
13 導電性フィラー欠乏層
14 樹脂層
20 第1の導電性樹脂層と第2の導電性樹脂層の境界
21 第1の導電性樹脂層供給ずみ基板
22 第1及び第2の導電性樹脂層供給ずみ基板
100 遠心分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料内部において、導電性フィラー含有率が相対的に低い第1の領域の厚み方向の両側に、導電性フィラー含有率が相対的に高い、第2の領域及び第3の領域がそれぞれ配置されていることにより、該第2の領域及び第3の領域との間に電気的な容量を形成していることを特徴とする、キャパシタ構造。
【請求項2】
前記第1の領域には、前記導電性フィラーが含まれていないことを特徴とする、請求項1に記載のキャパシタ構造。
【請求項3】
前記導電性フィラーは、粉末状又は繊維状の形状を有する、金、銀、銅、ニッケル、カーボンのうちの単体又はこれらの混合物、該元素同士又は該元素と他元素との合金、もしくは他元素よりなるフィラー表面に該元素のメッキを施したもののいずれかであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のキャパシタ構造。
【請求項4】
前記樹脂材料の樹脂成分は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とのハイブリッド型であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載のキャパシタ構造。
【請求項5】
前記第2の領域及び第3の領域の、それぞれに含有される導電性フィラーの粒度分布が異なっていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載のキャパシタ構造。
【請求項6】
前記第2の領域及び第3の領域の、それぞれの樹脂材料の構成が異なることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載のキャパシタ構造。
【請求項7】
前記樹脂材料が、無機フィラーを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載のキャパシタ構造。
【請求項8】
前記無機フィラーは、ペロブスカイト構造を持つ金属酸化物であることを特徴とする、請求項7に記載のキャパシタ構造。
【請求項9】
導電性フィラーを含んで形成した第1の導電性樹脂層の、一方の表層部に含まれる該導電性フィラーの含有率を減少させる工程と、
次いで該表層部の表面上の少なくとも一部に、導電性フィラーを含んだ第2の導電性樹脂層を形成する工程と、を含み、
該第2の導電性樹脂層に含まれる導電性フィラーの粒度分布は、該第1の導電性樹脂層に含まれる導電性フィラーの粒度分布よりもより大きい側に分布している、ことを特徴とする、キャパシタ構造の製造方法。
【請求項10】
前記導電性フィラー含有率を減少させる工程は、化学的エッチングにより行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記導電性フィラー含有率を減少させる工程は、遠心力又は重力による該導電性フィラーの沈降により行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記導電性フィラー含有率を減少させる工程の後、さらに加熱工程を含むことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一に記載の方法。
【請求項13】
導電性フィラーを含んだ第1の導電性樹脂層を硬化形成する工程と、
該第1の伝導性樹脂層の上の少なくとも一部に導電性フィラーを含んだ第2の導電性樹脂層を形成する工程と、
該第1の導電性樹脂層から該第2の導電性樹脂層側に向けて遠心力又は重力をかける工程と、
を含むことを特徴とする、キャパシタ構造の製造方法。
【請求項14】
導電性フィラーを含んだ第1の導電性樹脂層を硬化形成する工程と、
表層部に含まれる導電性フィラーの含有率を減少させた第2の導電性樹脂層を、該導電性フィラーの含有率を減少させた該表層部を相対する面として該第1の導電性樹脂層と積層する工程と、
を含むことを特徴とする、キャパシタ構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−205993(P2010−205993A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50768(P2009−50768)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】