説明

導電性粒子、導電性材料および異方性導電膜

【課題】導電性粒子のマイグレーションを防止でき、導通性を高く維持でき、粒子の凝集に起因する短絡を防止でき、かつ基材微粒子からのメッキ層の剥離を防止できるような、導電性粒子を提供することである。
【解決手段】導電性粒子は、基材微粒子、および基材微粒子を被覆する金属被覆層を備えている。金属被覆層が、無電解メッキされた内側銅メッキ層および外側錫メッキ層を備えており、外側錫メッキ層が、還元剤を含む無電解錫メッキ浴によって形成されており,銅メッキ層の膜厚が0.040μm以上であり、錫メッキ層の膜厚が0.050μm以上であり、銅メッキ層の膜厚と錫メッキ層の膜厚との合計値が0.090μm以上、0.180μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な電極間の導通接続に用いられる導電性粒子、導電性材料および異方性導電膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性微粒子を接着性樹脂や粘着性樹脂等に混合することにより、異方性導電接着剤や異方性導電フィルムが得られる。これらは液晶ディスプレイや電子回路等の接続に広く用いられている。従来は、表面に金メッキを施した導電性粒子が多く用いられてきた。しかし、導電性部材のコスト削減のため、従来の粒子と同等に低抵抗であって、かつ金メッキ層のない導電性粒子が求められている。
【0003】
特許文献1(特開2003-157717)には、基材微粒子にCu/Au メッキを被覆した導電性粒子が開示されている。
【0004】
特許文献2(特開平05- 5630)には、非金属コア粒子にCu/Sn/SnAg合金メッキを施した導電性粒子が開示されている。
【0005】
特許文献3(特開平05-36306)には、融点900 ℃以上の内側金属層と350 ℃以下の外側金属層を被覆した導電性粒子が開示されている。内側金属層としてニッケル、外側金属層として錫が挙げられている。実施例はNi層の膜厚は0.05 μmであり、Sn層の膜厚は0.01 μmである。
【0006】
特許文献4(特開2001-220691)には、内側金属層として銅メッキ、外側金属層は錫−銅合金メッキを施した導電性粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-157717
【特許文献2】特開2005-5630
【特許文献3】特開平05-36306
【特許文献4】特開2001-220691
【特許文献5】特願2009- 143484
【特許文献6】特開2009- 209425
【特許文献7】特開平5-9744
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1(特開2003-157717)に開示される銅メッキを施した粒子は、導通性に優れている。しかし、酸化性、マイグレーションの生じやすさから、金メッキ被覆が必要であり、コストの観点から、金メッキを行わない導電性粒子が求められていた。
【0009】
銅メッキを施した導電性粒子は特開2005-5630にも開示されている。しかし、銅のメッキ膜厚は3μm以上であり、さらにその外層に厚いハンダ層を被覆することから、端子間隔が50μm以下の狭ピッチ接続には適用することができなかった。
【0010】
特許文献3(特開平05-36306)では、マイグレーションの生じにくいニッケルメッキ層の外側に錫メッキを行った実施例があるのみであり、抵抗値が高く、導電性接続部材としては適していなかった。また、マイグレーションの生じにくい銅メッキについては特に記載されておらず、マイグレーションを防ぐことは容易ではなかった。
【0011】
特許文献4(特開2001-220691)にも、10μm以下の基材微粒子へのメッキについては特に記載されていない。外層が銅−錫メッキであり、銅を含むことからマイグレーションを防ぐことができない。
【0012】
本出願人は、特許文献5(特願2009- 143484)において、無電界メッキされた内側銅メッキ層および置換メッキされた外側錫メッキ層を備える導電性粒子を開示している。置換反応による錫メッキ浴は、作業が簡便であり、メッキ浴が安定である。
【0013】
しかし、外側錫メッキ層を置換メッキした場合、メッキ液が下地の銅メッキ層と基材微粒子との層間を浸食するため、基材微粒子と銅メッキ層との密着が悪化する現象が見られた。
【0014】
本発明の課題は、導電性粒子のマイグレーションを防止でき、導通性を高く維持でき、粒子の凝集に起因する短絡を防止でき、かつ基材微粒子からのメッキ層の剥離を防止できるような、導電性粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、基材微粒子、および基材微粒子を被覆する金属被覆層を備えている導電性粒子であって、
金属被覆層が、無電解メッキされた内側銅メッキ層および外側錫メッキ層を備えており、前記外側錫メッキ層が、還元剤を含む無電解錫メッキ浴によって形成されており,銅メッキ層の膜厚が0.040μm以上であり、錫メッキ層の膜厚が0.050μm以上であり、銅メッキ層の膜厚と錫メッキ層の膜厚との合計値が0.090μm以上、0.180μm以下であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記導電性粒子、およびこの導電性粒子を結着する結着剤を備えていることを特徴とする、導電性材料に係るものである。また、本発明は、この導電性材料からなることを特徴とする、異方性導電膜に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導電性粒子上に銅メッキ層を形成し、その上に錫メッキ層を形成することによって、マイグレーションを防止でき、導通性を高く維持でき、粒子の凝集に起因する短絡を防止できる。これに加えて、錫メッキ層を、還元剤を含む無電解錫メッキ浴によって形成することによって、下地である銅メッキ層と基材粒子との間の浸食によるメッキ層の剥離を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】櫛型基板を模式的に示す平面図である。
【図2】接続抵抗評価に用いる試験片を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(金属被覆層の膜厚)
銅メッキ層の膜厚と錫メッキ層の膜厚との合計値は、0.180μm以下とする。これが0.180μmを超えると、複数の粒子が合一した状態でメッキされるため、粒子の解砕を行った後でも凝集が残り、狭ピッチの接続に用いた場合、隣接する端子間で短絡が生ずることが判明した。銅メッキ層の膜厚と錫メッキ層の膜厚との合計値を0.180μm以下とすることで、凝集のない導電性粒子の製造が可能となった。
【0020】
銅メッキ層の膜厚は0.040μm以上である。銅/錫メッキ導電性粒子において、銅は錫に比べ抵抗が低く、電流は主に銅メッキ層を伝わって流れる。銅メッキ層の膜厚が0.040μm未満の薄膜である場合、メッキ工程の金属イオンの還元−析出ムラから、銅メッキ層が不連続となり易く、導通率が著しく低くなることを発見した。導電性粒子を使った接続において、接続端子間には通常3個程度の粒子が介在して電気接続が行われる。少なくとも一個の導電性粒子の導通が必要なことから、導電性粒子の導通率は通常50%程度以上が要求される。銅メッキ層の膜厚を0.040μm以上とすることで、接続を確実に遂行できる導電性粒子を得ることが可能となった。
【0021】
錫メッキ層の膜厚は0.050μm以上とする。銅層はマイグレーションを生じやすく、これを抑えるために錫メッキ層が設けられる。錫メッキ層の膜厚が0.050μm未満の場合、下層の銅層を十分に被覆することが難しく、マイグレーションが生ずることが実験的に確かめられた。また、錫メッキ層の膜厚を0.050μm以上とすることで、銅層の酸化も防止することができる。
【0022】
銅メッキ層の膜厚と錫メッキ層の膜厚との合計値は、上記の理由から0.090μm以上となる。
【0023】
更に好ましくは、銅メッキ層の膜厚を0.050μm以上、0.080μm以下とし、錫メッキ層の膜厚を0.070μm以上、0.120μm以下とする。本実施形態においては、導通率が80%を超えるという顕著な効果を奏する。
【0024】
各メッキ層の膜厚は以下のようにして決定する。すなわち、メッキされた微粒子を硝酸、硫酸等の酸性溶液によりメッキ層を溶解し、ICP発光分析により各金属の含有率を求める。得られた錫および銅の含有率から下記式によって錫および銅のメッキ膜厚を算出した。
錫メッキ被膜の膜厚(μm)=
(ρ×WSn×D)/[6×ρSn×(100−WSn−WCu)]
銅メッキ被膜の膜厚(μm)=
(ρ×WCu×D)/[6×ρCu×(100−WSn−WCu)]
[ρ:基材粒子の比重
ρSn:錫メッキ被膜の比重
ρCu:銅メッキ被膜の比重
Sn:導電性微粒子に占める錫含有率(重量%)
Cu:導電性微粒子に占める銅含有率(重量%)
D:樹脂芯材の平均粒子径
【0025】
(他の金属被覆層)
なお、錫メッキ層上に更に金メッキ等の貴金属層を設けることもできる。しかし、耐マイグレーション性の観点からは、最外層は銅を含まないメッキ層が好ましく、銅を含まない錫メッキ層が特に好ましい。好ましくは金属被覆層が前記銅メッキ層と錫メッキ層との二層からなる。
【0026】
(導電性粒子の特性)
好ましくは、導電性粒子が、粒子密度2vol%の割合で接着樹脂「ストラクトボンドXN−5A」(三井化学株式会社製:商標名)に混ぜ合せ、Line/Space=30/30μmおよび重なり幅5mmの櫛型電極を形成したFPC(太洋工業株式会社製)にて熱圧着した試験片を温度85°C、相対湿度85%および印加電圧30Vの条件で500時間恒温恒湿促進試験を行った後に10Ω以上の抵抗値を維持する。
【0027】
(基材微粒子)
基材微粒子の材質は特に限定されないが、有機系重合体、有機・無機ハイブリット材料、シリコーン微粒子、シリカ微粒子が好ましい。
【0028】
基材微粒子を構成する重合体としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド等の線状重合体;ジビニルベンゼン、ヘキサトリエン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルカルビノール、アルキレンジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジメタクリレート、アルキレントリアクリレート、アルキレンテトラアクリレート、アルキレントリメタクリレート、アルキレンテトラメタクリレート、アルキレンビスアクリルアミド、アルキレンビスメタクリルアミド、両末端アクリル変性ポリブタジエンオリゴマー等を単独又は他の重合性モノマーと重合させて得られる網状重合体;フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体の単独又は他の重合性モノマーと共重合させて得られる樹脂、ジメチルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン樹脂、シリカ微粒子等が挙げられる。
【0029】
樹脂の重合法は限定されず、懸濁重合法、シード重合法、分散重合法、乳化重合法であってよい。
【0030】
有機・無機ハイブリット材料としては、側鎖にシリル基を有する(メタ)アクリレートとスチレン、メチルメタクリレート等のビニルモノマーとの共重合体を作製した後、上記シリル基を縮合反応させたもの;有機重合体共存下でテトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシシラン等をゾル−ゲル反応させたもの;テトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシシラン等をゾル−ゲル反応させた後、低温で焼成を行うことにより有機成分を残留させたものが挙げられる。
【0031】
基材微粒子の形状は限定されず、真球形状、回転楕円体、多面体、針状、ファイバー状、ウイスカー、柱状、筒状、不定形であってよいが、真球状とすることが好ましい。
【0032】
好適な実施形態においては、基材微粒子の平均粒子径が0.1〜10μmであり,これによって特に狭ピッチの接続端子の接続に好ましく使用することが出来る。この観点からは、基材微粒子径が、1〜8μmであることが更に好ましい。基材微粒子の平均粒子径は、基材微粒子が球状の場合は直径であり、回転楕円体状である場合は長径である。また、前記平均粒子径は、任意の基材微粒子300個を電子顕微鏡で観察・測定することにより得られる値である。
【0033】
基材微粒子の粒子径分布の変動係数(CV値)は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることが一層好ましい。CV値が15%を超えると、基材微粒子の粒子径が不揃いとなるため、この基材微粒子を用いて製造した導電性粒子によって電気接続を図る際に、接続に関与しない導電性粒子が発生し、導通不良現象が生じる場合がある。
【0034】
上記CV値とは、下記の式(1);
CV値(%)=(σ/Dn)×100・・・・(1)
(式中、σは、粒子径の標準偏差を表し、Dnは、数平均粒子径を表す)で表される値である。上記標準偏差及び上記数平均粒子径は、任意の基材微粒子300個を電子顕微鏡で観察・測定することにより得られる値である。
【0035】
基材微粒子には、「相互侵入高分子網目構造を形成し得る化合物」を含浸させることが可能である。これは、粒子内部において加熱によって相互侵入高分子網目構造を生成することができるような化合物であれば、限定されない。好適な実施形態においては、本化合物は、相互に架橋反応し得る官能基を複数有する。このように、本化合物が複数の官能基を有し、各官能基において架橋反応が進行することによって、相互侵入高分子網目構造が生成する。このような官能基としては、以下を例示できる。これらの官能基は、1つの化合物に一種類または二種類以上包含されている。
エポキシ基、加水分解性シリル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イミノ基
【0036】
エポキシ基を有する前記化合物としては、以下を例示できる。
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、3−グリシジドキシプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル) エチルトリメトキシシラン
【0037】
加水分解性シリル基を有する化合物としては、以下を例示できる。
テトラエトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルトリメトキシシラン、6−トリメトキシシリルヘキサメチレントリメトキシシラン、p−ジメトキシシリルエチルベンゼン、テレフタル酸ジ−3−トリメトキシシリルプロピル、アジピン酸ジ−3−トリメトキシシリルプロピル、イソシアヌル酸トリ−3−メチルジメトキシシリルプロピル
【0038】
また、相互侵入高分子網目構造を形成する結合としては、エーテル結合、シロキサン結合、エーテル結合とシロキサン結合との組み合わせを例示できる。
【0039】
(無電解銅メッキ)
無電解銅メッキは、触媒付与工程と銅還元メッキ工程とによって形成する。
【0040】
上記触媒付与工程においては、基材微粒子の表面に、メッキの核となる触媒を析出又は吸着させるが、この際、白金族の金属化合物を用いることが好ましい。具体的には塩化第一錫の塩酸溶液に基材微粒子を浸漬した後、更に、塩化パラジウムの塩酸溶液に浸漬加熱し、水洗する。このようにして得た粒子では、パラジウムが粒径50nm以下の微粒子として析出している。
【0041】
また、塩化錫と塩化パラジウムとの混合溶液に基材微粒子を浸漬し、その後、塩酸又は硫酸水溶液を用いて錫を溶出、除去してもよい。この場合も上記と同様、粒子表面にパラジウム微粒子が析出している。
【0042】
更に、塩化パラジウムと、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピリジン等の水溶性モノマーと、アスコルビン酸との混合水溶液にグラフト重合層を有する基材微粒子を浸漬してもよい。この場合も上記と同様、粒子表面にパラジウム微粒子が析出している。
【0043】
次に、上記の方法により触媒の付与された基材微粒子を用いて、還元メッキを行う。還元メッキを行う方法としては、公知の方法(「最新無電解メッキ技術」発行;総合技術センター、1986年、43頁等)を用いることができ、酸性メッキ、アルカリ性メッキのいずれをも用いることができる。
【0044】
銅還元メッキは、例えば、硫酸銅をホルムアルデヒドによって還元し、触媒を付与された基材微粒子の表面に析出させる。
【0045】
(錫メッキ層)
錫メッキ層は、還元剤を含む無電解錫メッキ浴によって形成されている。
こうした錫メッキ層は、特許文献6(特開2009- 209425)、特許文献7(特開平5-9744)に記載されている。
【0046】
無電解錫メッキ浴には、錫塩と、還元反応により錫化合物から錫金属を銅メッキ上に析出させる還元剤とを含有する
【0047】
錫塩(錫塩(II))としては、特に限定されるものではないが、イセチオン酸錫(II)等のアルカノールスルホン酸錫(II)、メタンスルホン酸錫(II)等のアルカンスルホン酸錫(II)などの有機スルホン酸錫(II)、硫酸錫(II)、塩化錫(II)、臭化錫(II)、ヨウ化錫(II)、酸化錫(II)、リン酸錫(II)、ピロリン酸錫(II)、酢酸錫(II)、クエン酸錫(II)、グルコン酸錫(II)、酒石酸錫(II)、乳酸錫(II)、コハク酸錫(II)、スルファミン酸錫(II)、ホウフッ化錫(II)、ギ酸錫(II)、ケイフッ化錫(II)等が挙げられる。なお、浴中の錫イオン量は、1〜100g/L、特に、1〜30g/Lとすることが好ましい。
【0048】
還元剤としては、ホウ素化合物を用いることができ、特に水素化ホウ素化合物を用いることが好ましい。このホウ素化合物としては、特に限定されるものではないが、具体的には水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、ジメチルアミノホウ素、ジエチルアミノホウ素等から選択することができ、特に水素化ホウ素ナトリウムを選択することが好ましい。なお、還元剤のメッキ浴中への添加量は、1〜100g/L、特に、10〜50g/Lとすることが好ましい。
【0049】
なお、上述した水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤に加えて、さらに、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸ニッケル等のリン化合物からなる還元剤を一緒に使用するようにしてもよい。これらのリン化合物をさらに含有させることにより、メッキの密着性を高めることが可能となる。
【0050】
無電解錫メッキ浴には、アミノカルボン酸を含有させることができる。アミノカルボン酸としては、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレントリアミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、ジヒドロキシエチルイミノ酢酸(DHEIMA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸(DHEDDA)、グリシン、イミノ酢酸、ニトリロトリ酢酸(NTA)等が挙げられ、これらのアミノカルボン酸を1種または2種以上を添加することが可能である。
【0051】
また、無電解錫メッキ浴には、さらにアミノ化合物を含有させることができる。アミノ化合物としては、特に限定されるものではないが、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、アミルアミン、グリシン、アラニン、アミノ-n-酪酸、バリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、硫酸ヒドラジニウム、硫酸ヒドロキシルアンモニウム、尿素等が挙げられ、これらのアミノ化合物を1種または2種以上を添加することが可能である。特に、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが好適に用いられる。このようにして、無電解錫メッキ浴中に、アミノ化合物を含有させることによって、2価の錫イオンの4価の錫イオンへの酸化を抑制することが可能となり、メッキ皮膜を形成したときに発生するスラッジの生成を防止することができる。また、メッキ浴の安定性を向上させることが可能であるとともに、上記のアルカノールアミンを含有させることによって、錫メッキ皮膜の析出速度を向上させることが可能となる。なお、アミノ化合物のメッキ浴中への添加量は、10〜100g/L、特に、10〜50g/Lとすることが好ましい。
【0052】
また、無電解錫メッキ浴は、メッキ浴の安定性の観点から、そのpHは9〜11の間に維持することが好ましい。これによって、長時間のメッキ処理においても自己分解を抑制し、安定した状態で当該メッキ浴を維持させることができ、また所望とする厚みを有した錫メッキ皮膜を析出形成させることが可能となる。
【0053】
pHの水準を維持するために、当該無電解錫メッキ浴に、pH安定化剤、pH緩衝剤、pH調整剤等を含有させるようにしてもよい。例えば、pH安定化剤としては、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸マグネシウム、アンモニア等が挙げられ、またこれらの含水塩を用いるようにしてもよい。このように、当該メッキ浴をアルカリ性に安定的に維持させることによって、メッキ浴の安定性を向上させることができるとともに、金属錫と下地となっている銅回路の金属銅との間に起こる置換反応を抑制させることも可能となり、より一層に銅の溶解を抑制させることが可能となる。
【0054】
無電解錫メッキ浴には、必要に応じて錯化剤を含有させるようにしてもよい。含有させることが可能な錯化剤としては、特に限定されないが、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム、リン酸、ホウ酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ三酢酸、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等を挙げることができる。
【0055】
無電解錫メッキ浴には、チオ尿素類、ベンゾキノンオキシム類、メルカプトベンゾチアゾール等を含有させてもよい。これらの化合物は、メッキ浴を安定化するとともに、金属錫の結晶を微細化させ、析出速度を促進させる効果がある。浴中の含有量については、その含有量が少なすぎると析出促進効果が充分に発揮されないが、含有量が多すぎると析出速度を大きく低下させることになることから、浴1Lあたり、30〜130g、特に、50〜110gとすることが好ましい。
【0056】
(導電性材料)
本発明による導電性粒子は、優れた導通性と耐マイグレーション性とを有していることから、樹脂などの結着材に混入することにより、優れた導電性を有する導電性材料が得られる。このような導電性材料は、フィルム状の帯電防止膜や、電子回路において電気的接合を行う部分に使用可能な異方性導電膜として好適に利用できる。
【0057】
こうした導電性材料を構成する結着材(接着剤)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、スチレン・アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂を例示できる。
【実施例】
【0058】
以下のようにして実施例、比較例の導電性粒子を製造した。
(実施例1)
スチレン及びp−トリメトキシシリルスチレンを分散重合させた後、アルカリによる加水分解を行い、直径2.8μm のシロキサン架橋重合体粒子を得た。この粒子2.0gを基材粒子として、まず基材表面を改質するためカチオン系界面活性剤にて処理した。
【0059】
基材粒子を濾別して水洗した後、塩化パラジウム100mg/L、塩化スズ10g/L及び濃塩酸150mL/Lである水溶液に浸漬し、濾別し、水洗した後、25mg/L 塩化パラジウム溶液及び5%硫酸で処理して基材微粒子表面にパラジウム触媒を担持させた。基材微粒子を濾別して水洗した後、水に加えてスラリーを作製し、ホルムアルデヒドを加えた。その後スラリーを銅メッキ液に投入して液を撹拌すると同時に、超音波振動を付与しながら、20分間無電解銅メッキを行った。このとき、スラリー投入後のメッキ液量が1.6 Lになるように、スラリー及びメッキ液の量を調整した。メッキ液の組成は、スラリー投入後において、硫酸銅2.4g/L、ロシェル塩80g/L、水酸化ナトリウム50g/L、硫酸ニッケル0.1g/L、安定剤 若干、であり、pH12、温度25℃に調整した。メッキされた基材粒子を濾別及び水洗し、無電解銅メッキを終了した。
【0060】
次に、得られた銅メッキ皮膜の形成された粒子を45℃の無電解錫メッキ浴に投入し、攪拌と同時に超音波振動を付与しながら180分間メッキを行った。無電解錫メッキ浴は、塩化錫(II) 1.0g/L、EDTA-2Na
10g/L、トリエタノールアミン 10g/L、エチレンジアミン 4g/L、ホウ酸ナトリウム 2g/L、水素化ホウ素ナトリウム 1g/Lを含有する4Lの水溶液である。この結果、銅メッキ膜厚0.060μm、錫メッキ膜厚0.080μmの金属被覆微粒子を得た。
【0061】
得られた金属被覆粒子1gをエタノール100mlに分散し、直径1mmのジルコニアビーズ40gを入れた300mlのビーカー内で金属製の攪拌羽根で30分間、400rpmで攪拌し、解砕を行った。光学顕微鏡により、金属被覆層の剥離した粒子は1%であることを確認した。粒子をろ別した後、500mlのトールビーカーに移しかえ、エタノールを加え、分散した後、放置し上澄みを除き、ろか乾燥を行い、金属破片やメッキのはがれた粒子を取り除いた。精製後の導電性粒子は5gであった。
【0062】
(比較例1)
実施例1と同様にして、基材粒子2gに対して銅メッキを行った。次いで、得られた銅メッキ被膜の形成された粒子を、5%アルカンスルホン酸溶液に加え、500mLに調整し、10分間攪拌した。次いで、錫30g/L、チオ尿素 170g/Lを含む錫メッキ液200mLを滴下し、攪拌すると同時に超音波振動を付与しながら、30分間メッキを行った。この結果、銅メッキ膜厚0.060μm、錫メッキ膜厚0.080μmの金属被覆粒子を得た。得られた金属被覆粒子を実施例1と同様にして解砕し、精製を行った。この結果、解砕後の剥離粒子は20%も発生し、精製後の終了は2gであった。
【0063】
(実施例2〜11および比較例2〜9)
実施例1と同様にして各導電性粒子を作製した。ただし、銅メッキ層の膜厚、錫メッキ層の膜厚は、表1に示すように変化させた。
【0064】
各導電性粒子について、以下のようにして特性を測定した。
(メッキ層の剥離性評価)
金属被覆層が形成された後の金属被覆粒子をエタノールに分散し、直径1mm程度のジルコニアビーズを入れたビーカー内で金属製の攪拌羽根で30分間、400rpmで攪拌し、解砕を行った。次いで、光学顕微鏡によって、透過光モードにて、金属被覆層が粒子の半分以上剥離していた粒子の割合を観察した。
【0065】
(マイグレーション評価)
銅パターン配線にNi/Auメッキを施したL/S=30/30(間隙数10)のFPC 基板を用いた。図1は、この櫛型基板を模式的に示す平面図である。各導電性粒子の粒子密度を2vol%となるように接着樹脂(三井化学製XN−5A )に混ぜ合せて混合ペーストを作製した。このペーストをFPC 基板に塗布し、5kg/cm、予備加熱80℃、45分、本加熱150 ℃、45分にて無アルカリガラス板に対して熱圧着を行い、試験片を得た。
この試験片に30V のバイアスを印加しながら、85℃、相対湿度85%環境で500時間放置した。放置後の電極間の絶縁抵抗を測定し、また、デンドライトの発生の有無を観察することでマイグレーションの評価を行った。
【0066】
(粒子導通性評価)
島津製作所製 抵抗測定キット付 微小圧縮試験機MCT-W201を用い、先端50μmの金属製平型圧子にて0.29mN/secの負荷速度にて、元の粒径から10%変形させた時の抵抗値の測定し、100個の導電性粒子を測定したときの20Ω以下の粒子の割合を評価した(測定温度 20℃)。
【0067】
(接続抵抗評価)
線幅1mmの銅パターン配線にNi/Auメッキした基板2枚の交差部に粒子濃度2vol.%にて接着樹脂(三井化学株式会社製 XN-5A)に分散した混合ペーストを塗布し、加熱圧着後、抵抗を測定し、評価した。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
還元剤を含む錫メッキ工程で作製した実施例1は、金属被覆層の剥離が少なく、精製後の収量も多かった。置換錫メッキ法で作製した比較例1は、粒子からの金属被覆層の剥離が多く、精製後の収量が少なかった。
【0071】
また、実施例の導電性粒子は、いずれも絶縁状態を維持し、デンドライトの発生も見られなかった。一方、錫層の膜厚が0.05μm未満の粒子においては、絶縁状態の低下が見られた、デンドライトも観察された。また、メッキ膜厚が0.180μmを超える粒子では、凝集によって初期から端子間での短絡が見られた。
【0072】
また、実施例の粒子は60%以上の導通率があり、従来のニッケル/金メッキを施した導電性粒子に対して同等以上であった。
【0073】
更に、実施例の粒子は接続抵抗が低かった。実施例1、2、3、4、10、11の導電性粒子によって、特に低い接続抵抗を得ることができた。
【符号の説明】
【0074】
1 基板 2 導電性粒子と接着樹脂との混合ペースト 3 銅パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材微粒子、および基材微粒子を被覆する金属被覆層を備えている導電性粒子であって、
前記金属被覆層が、無電解メッキされた内側銅メッキ層および外側錫メッキ層を備えており、前記外側錫メッキ層が、還元剤を含む無電解錫メッキ浴によって形成されており、前記銅メッキ層の膜厚が0.040μm以上であり、前記錫メッキ層の膜厚が0.050μm以上であり、前記銅メッキ層の膜厚と前記錫メッキ層の膜厚との合計値が、0.090μm以上、0.180μm以下であることを特徴とする、導電性粒子。
【請求項2】
前記基材微粒子の平均粒子径が0.1μm以上、10μm以下であることを特徴とする、請求項1記載の導電性粒子。
【請求項3】
前記銅メッキ層の膜厚が0.050μm以上、0.080μm以下であり、前記錫メッキ層の膜厚が0.070μm以上、0.120μm以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の導電性粒子。
【請求項4】
粒子密度2vol%の割合で接着樹脂に混ぜ合せ、Line/Space=30/30μmおよび重なり幅5mmの櫛型電極を形成したFPCにて熱圧着した試験片を温度85°C、相対湿度85%および印加電圧30Vの条件で500時間恒温恒湿促進試験を行った後に10Ω以上の抵抗値を維持することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の導電性粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の導電性粒子、およびこの導電性粒子を結着する結着剤を備えていることを特徴とする、導電性材料。
【請求項6】
請求項5記載の導電性材料からなることを特徴とする、異方性導電膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−134480(P2011−134480A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290934(P2009−290934)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(392007566)ナトコ株式会社 (42)
【Fターム(参考)】