説明

導電膜形成用感光材料、導電性材料、表示素子及び太陽電池

【課題】透過性が高く、ヘイズに優れ、密着性及び可撓性を有しつつ、高い導電性を有する導電性材料及びそれを製造するための導電膜形成用感光材料並びにこれを用いた表示素子及び太陽電池の提供。
【解決手段】導電膜形成用感光材料は、銀塩含有乳剤層と、導電性繊維を含有する導電層とを有してなり、前記導電性繊維の塗設量が、0.005g/m〜0.2g/mであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜形成用感光材料、これを用いた導電性材料、並びにこの導電性材料を有する表示素子及び太陽電池に関する。さらに詳しくは、本発明はいずれかの層に導電性繊維を含有させた導電膜形成用感光材料、これを用いた導電性材料、並びにこの導電性材料を有する表示素子及び太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な製造方法による導電性フィルムが検討されている。この中で、ハロゲン化銀乳剤を塗布し、導電性のための銀の導電部と、透明性の確保のための開口部からなるようにパターン露光して、導電性フィルムとして製造される銀塩方式導電性フィルムがある。また、フィルム全面に電力を供給するために、ITOなどの金属酸化物を併用する方法が提案されている。しかしながら、このような導電性フィルムでは、一般に蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法などの真空成膜法によって形成されるため、高コストであるという問題があった。
【0003】
このような問題に鑑み、製造コストを下げるためにITO微粒子を塗布する方法が提案されているが、抵抗を低くするために導電性を有する微粒子を多量に塗布することが必要であり、また、透過率の低下など、本質的な課題解決には至っていないという問題があった(特許文献1参照)。
【0004】
さらに近年、銀のナノワイヤを用いた透明導電膜の検討も報告されており(特許文献2参照)、透明性、抵抗、使用金属量の低減の面では優れているが、有機溶剤を用いた高温中での合成が一般的であり、製造スケールでのコスト高や、有機溶剤を用いるという環境面からの要請に応えられていないという問題があった。また、導電性を有する材料の使用量が少ないため、電流駆動式の素子に展開するとエレクトロマイグレーションが発生してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−146747号公報
【特許文献2】米国特許出願公開2007/74316号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、透過性が高く、ヘイズに優れ、密着性及び可撓性を有しつつ、高い導電性を有する導電性材料及びそれを製造するための導電膜形成用感光材料並びにこれを用いた表示素子及び太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、銀塩含有乳剤層又は銀塩含有乳剤層側のいずれかの層に導電性繊維を含有させることで、得られる導電性材料の導電性を高めることができ、面電極などとして有用であることを見出した。
【0008】
つまり、導電性繊維とバインダーを感光材料のいずれかの層に含有させ、これを露光、現像処理して導電性材料を作製することで、上記課題を解決し得ることを見出し、また、このような導電性材料を用いた面電極、液晶表示素子、集積型太陽電池が顕著な効果を発揮することを見出したことにより、本発明を完成させるに至った。即ち、
<1> 銀塩含有乳剤層と、導電性繊維を含有する導電層とを有してなり、
前記導電性繊維の塗設量が、0.005g/m〜0.2g/mである導電膜形成用感光材料である。
<2> 導電性繊維を含有する銀塩含有乳剤層を有する導電膜形成用感光材料であって、
前記銀塩含有乳剤層における銀塩の量が、銀換算で1.0g/m〜7.5g/mである導電膜形成用感光材料である。
<3> 導電性繊維の材料が、金属又はカーボンである前記<1>から<2>のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料である。
<4> 導電性繊維の塗設量が、0.005〜0.2g/mである前記<1>から<3>のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料である。
<5> 銀塩含有乳剤層と導電層とを同時重層塗布して形成された前記<2>から<4>のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料をパターン露光し、現像処理して得た導電性材料である。
<7> 金属銀と導電性繊維とを有する前記<6>に記載の導電性材料である。
<8> 前記<6>に記載の導電性材料を有する表示素子である。
<9> 前記<6>に記載の導電性材料を有する太陽電池である。
<10> 支持体上に、銀塩含有乳剤層と、導電性繊維を含有する導電層とを有してなり、前記導電性繊維の塗設量が、0.005g/m〜0.2g/mである前記<1>から<5>のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料である。
<11> 支持体上に、導電性繊維を含有する銀塩含有乳剤層を有する導電膜形成用感光材料であって、前記銀塩含有乳剤層における銀塩の量が、銀換算で1.0g/m〜7.5g/mである前記<1>から<5>及び<10>のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料である。
<12> 導電層における導電性繊維の含有量が、0.005g/m〜0.2g/mである前記<1>から<5>及び<10>から<11>のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料である。
<13> 銀塩含有乳剤層における導電性繊維の含有量が、0.005g/m〜0.2g/mである前記<1>から<5>及び<10>から<12>のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料である。
<14> 導電性繊維が、径が8nm〜50nm、長さが1μm〜40μmの金属ナノワイヤである前記<1>から<5>及び<10>から<13>のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料である。
<15> 金属ナノワイヤが、銀又は銀と他の金属との混合物からなる前記<1>から<5>及び<10>から<14>のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料である。
<16> 導電性繊維が、径が1nm〜1,000nm、長さが0.1μm〜1,000μmであるカーボンナノチューブである前記<1>から<5>及び<10>から<15>のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料である。
<17> 金属銀及び導電性繊維を含有する層を有する前記<6>から<7>のいずれかに記載の導電性材料である。
<18> 金属銀を含有する層と、導電性繊維を含有する導電層とを有する前記<6>から<7>及び<17>のいずれかに記載の導電性材料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、透過性が高く、ヘイズに優れ、密着性及び可撓性を有しつつ、高い導電性を有する導電性材料及びそれを製造するための導電膜形成用感光材料並びにこれを用いた表示素子及び太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、金属ナノワイヤの断面を示す図である。
【図2A】図2Aは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの一般的な製造方法を説明するためのデバイスの断面図である。
【図2B】図2Bは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの一般的な製造方法を説明するためのデバイスの断面図である。
【図2C】図2Cは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの一般的な製造方法を説明するためのデバイスの断面図である。
【図2D】図2Dは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの一般的な製造方法を説明するためのデバイスの断面図である。
【図3】図3は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体における格子定数とバンドギャップとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
(導電膜形成用感光材料)
本発明による導電膜形成用感光材料は、導電性繊維を含有する銀塩含有乳剤層を有し、必要に応じてその他の部材を有する。また、本発明による導電膜形成用感光材料は、銀塩含有乳剤層と、導電性繊維を含有する導電層とを有し、必要に応じてその他の部材を有する。さらに、本発明は、上記の構成を後述の支持体上に有するものであってもよい。
【0013】
<銀塩含有乳剤層>
本発明による導電膜形成用感光材料は、銀塩乳剤を含む乳剤層(銀塩含有乳剤層)を有する。銀塩含有乳剤層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、銀塩乳剤の他、バインダー、溶媒、染料などの添加剤を含有してもよい。また、銀塩含有乳剤層は、後述の導電性繊維を含有してもよい。銀塩含有乳剤層の厚さは、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0014】
導電膜形成用感光材料において、銀塩含有乳剤層は実質的に最上層に配置されている。ここで、「銀塩含有乳剤層が実質的に最上層である」とは、銀塩含有乳剤層が実際に最上層に配置されている場合のみならず、銀塩含有乳剤層の上に設けられた層の総膜厚が0.5μm以下であることを意味する。銀塩含有乳剤層の上に設けられた層の総膜厚は、好ましくは0.2μm以下である。
【0015】
−銀塩乳剤−
本発明に用いられる銀塩乳剤としては、媒体として水を有し、下記の銀塩を含有する、乳白色の液体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。銀塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、ハロゲン化銀塩などの無機銀塩及び酢酸銀などの有機銀塩が挙げられる。本発明においては、所定の波長の露光に反応して還元反応が顕著に進む特性に優れるハロゲン化銀塩を用いることが好ましい。銀塩含有乳剤層に導電性繊維とバインダーを含有させる場合、銀塩の塗設量としては、銀換算で1.0〜7.5g/mであることが本発明の一態様であり、1.5〜6.5g/mであることが好ましく、2.0〜6.0g/mであることがより好ましく、2.5〜5.5g/mであることが特に好ましい。
【0016】
また、導電性繊維とバインダーを含有する層が銀塩含有乳剤層よりも上層(例えば、導電層又は保護層)の場合;及び導電性繊維とバインダーを含有する層が銀塩含有乳剤層よりも下層(例えば、下引層)の場合のいずれにおいても、銀塩の塗設量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、銀換算で、1.0〜7.5g/mであることが好ましく、1.5〜6.5g/mであることがより好ましく、2.0〜6.0g/mであることが特に好ましく、2.5〜5.5g/mであることが特により好ましい。銀塩の量が少なすぎると十分な導電性が得られなくなり、高すぎると透過率の低下などの問題が顕在化する。
【0017】
−−VIII族金属及びVIIB族金属−−
銀塩乳剤は、高コントラスト及び低カブリを達成することを目的として、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物等を含有することが好ましい。これら化合物は、各種の配位子を有する化合物であってよい。また、高感度化のためにはK[Fe(CN)]やK[Ru(CN)]、K[Cr(CN)]のような六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
【0018】
−−−ロジウム化合物−−−
上記ロジウム化合物としては、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。水溶性ロジウム化合物としては、例えば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム錯塩、テトラクロロジアコロジウム錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩、K[RhBr]等が挙げられる。
【0019】
−−−イリジウム化合物−−−
上記イリジウム化合物としては、K[IrCl]、K[IrCl]等のヘキサクロロイリジウム錯塩、ヘキサブロモイリジウム錯塩、ヘキサアンミンイリジウム錯塩、ペンタクロロニトロシルイリジウム錯塩等が挙げられる。
【0020】
−バインダー−
上記バインダーとしては、例えば、ゼラチン、カラギナン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0021】
銀塩含有乳剤層に含有されるバインダーの含有量は、分散性と密着性を発揮し得る限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。銀塩含有乳剤層の銀塩及びバインダーの含有量は、Ag/バインダー体積比で1/10以上が好ましく、1/4以上がより好ましく、1/2以上が特に好ましく、1/1以上が特により好ましい。ここでバインダー量が多い場合には、導電性が低下する要因となるのでバインダー量は少ないほうが好ましく、逆にAgが多すぎると、密着不良などの問題が顕在化する。なお、Ag/バインダー体積比は、原料のハロゲン化銀量/バインダー量(質量比)を銀量/バインダー量(質量比)に変換し、さらに銀量/バインダー量(質量比)を銀量/バインダー量(体積比)に変換することで求めることができる。銀塩含有乳剤層は、銀塩含有量が同一又は異なる2層以上から構成されてもよい。
【0022】
なお、銀塩含有乳剤層には、導電性繊維を含有させなくても、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ銀塩含有乳剤層と支持体との密着を補助する目的で上記と同様のバインダーが好ましく用いられる。
【0023】
−溶媒−
銀塩含有乳剤層の形成に用いられる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等アルコール類、アセトンなどケトン類、ホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げられる。
【0024】
銀塩含有乳剤層に用いられる溶媒の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば、銀塩含有乳剤層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であることが好ましく、50〜80質量%の範囲であることがより好ましい。30質量%未満であると、粘度減少による乳剤粒子の沈降や、溶液の塗設量が多くなり乾燥工程の長時間化などプロセス負荷が大きくなり、90質量%を超えると、経時により粒子の凝集が発生しやすく、塗布ムラなどの重大な問題が発生する場合がある。
【0025】
−その他の添加剤−
銀塩含有乳剤層に用いられる添加剤としては、特に制限は無く、公知のものを好ましく用いることができる。例えば、染料、増粘剤、酸化防止剤、マット剤、滑剤、帯電防止剤、造核促進剤、化学増感色素や分光増感色素などの増感色素、界面活性剤、カブリ防止剤、硬膜剤、黒ポツ防止剤などが挙げられる。また誘電率の高い物質を添加したり、表面を疎水性にするためにバインダーに疎水性基を導入したり、疎水性化合物を添加剤として添加したりしてもよい。なお、これらの添加剤は、銀塩含有乳剤層だけでなく、導電膜形成用感光材料を構成するその他の層に含まれてもよい。
【0026】
−増感−
本発明による導電膜形成用感光材料において、各種の増感の方法で増感されてもよく、この増感方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、化学増感剤、分光増感剤などを用いた増感方法が挙げられる。化学増感の方法としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感等のカルコゲン増感、金増感等の貴金属増感、及び還元増感等を用いることができる。これらは、単独又は組み合わせて用いられる。上記化学増感の方法を組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法等の組み合わせが好ましい。
【0027】
−−硫黄増感−−
上記硫黄増感に用いられる硫黄増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、チオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類などの各種硫黄化合物が挙げられる。好ましい硫黄化合物としては、チオ硫酸塩、チオ尿素化合物である。硫黄増感剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、化学熟成時のpH、温度、銀塩粒子の大きさ等の種々の条件を考慮して、銀塩1モル当り10−7〜10−2モルが好ましく、より好ましくは10−5〜10−3モルである。
【0028】
−−セレン増感−−
上記セレン増感に用いられるセレン増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、公知のセレン化合物を用いることができる。セレン増感の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、不安定型及び/又は非不安定型セレン化合物を添加して40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌する方法であってもよい。上記不安定型セレン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、特公昭44−15748号公報、同43−13489号公報、特開平4−109240号公報、同4−324855号公報等に記載の化合物が挙げられる。なかでも、特開平4−324855号公報中の一般式(VIII)及び(IX)で示される化合物が好ましい。
【0029】
セレン化合物の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、使用する銀塩粒子、化学熟成条件を考慮して、ハロゲン化銀1モル当たり10−8〜10−2モル、好ましくは10−7〜10−3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜85℃である。
【0030】
−−テルル増感−−
上記テルル増感剤に用いられるテルル増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、銀塩粒子表面又は内部に、増感核になると推定されるテルル化銀を生成せしめる化合物が挙げられる。ハロゲン化銀乳剤中のテルル化銀生成速度については特開平5−313284号公報に記載の方法で試験することができる。具体的には、米国特許第1,623,499号明細書、同第3,320,069号明細書、同第3,772,031号明細書、英国特許第235,211号明細書、同第1,121,496号明細書、同第1,295,462号明細書、同第1,396,696号明細書、カナダ特許第800,958号明細書、特開平4−204640号公報、同4−271341号公報、同4−333043号公報、同5−303157号公報、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・ケミカル・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Chem.Commun.)635頁(1980)、同1102頁(1979)、同 645頁(1979)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・パーキン・トランザクション(J.Chem.Soc.Perkin.Trans.)1巻,2191頁(1980)、S.パタイ(S.Patai)編、ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・セレニウム・アンド・テルリウム・カンパウンズ(The Chemistry of Organic Selenium and Tellunium Compounds)、1巻(1986)、同2巻(1987)に記載の化合物を用いることができる。特に特開平5−313284号公報中の一般式(II)(III)(IV)で示される化合物が好ましい。
【0031】
テルル増感剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、使用する銀塩粒子、化学熟成条件を考慮して、銀塩1モル当たり10−8〜10−2モル、好ましくは10−7〜10−3モル程度を用いる。増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜85℃である。
【0032】
−−貴金属増感−−
上記貴金属増感に用いられる貴金属増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、金、白金、パラジウム、イリジウムが挙げられ、なかでも、金増感が好ましい。金増感に用いられる金増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、チオグルコース金(I)、チオマンノース金(I)等が挙げられる。貴金属増感剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、銀塩1モル当たり10−7〜10−2モルであってもよい。
【0033】
−−還元増感−−
蒸気還元増感に用いられる還元増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、第一スズ塩、アミン類、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物が挙げられる。
【0034】
−−分光増感−−
上記分光増感に用いられる増感色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロホーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素が挙げられる。増感色素は2種以上を併用してもよい。増感色素を銀塩乳剤中に添加せしめるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独若しくは混合溶媒に溶解して乳剤に添加してもよい。
【0035】
増感色素の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、銀塩粒子の形状、サイズ等を考慮して、銀塩1モルあたり、4×10−6〜8×10−3モルで用いることができる。例えば銀塩粒子サイズが0.2〜1.3μmの場合には、銀塩粒子の表面積1m当たり、2×10−7〜3.5×10−6モルの添加量が好ましく、6.5×10−7〜2.0×10−6モルの添加量がより好ましい。
【0036】
<導電層>
導電層としては、後述の導電性繊維を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、導電性繊維の他、導電性粒子を有してもよい。導電層に含まれる導電性繊維の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、露光、現像、定着処理前においては、0.05質量%〜15質量%であってもよい。この量が0.05質量%未満であると、導電性繊維のパーコレートが不良となり面電極としての機能が得られなくなり、15質量%を超えると、透過率の低下、ヘイズの上昇などが著しく、透明導電膜として実用上問題となる。
【0037】
導電層が導電性繊維を有する場合、導電層に接する層との密着性を付与するため、バインダーを含有してもよい。バインダーとしては、銀塩乳剤に用いたバインダーであってもよく、なかでも、水溶性ポリマーであってもよい。導電層の構造として、層の構成であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、後述の下引層上、上述の銀塩含有乳剤層上下のいずれか、若しくは両方に形成されてもよい。導電層の厚みとしては、透明性の観点で、3μm以下が好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。導電層の塗布方法及び形成方法は、特に限定されず、公知の塗布方法及び形成方法を適宜選択することができる。
【0038】
−導電性繊維−
前記導電性繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、極細炭素繊維、金属ナノチューブ、金属ナノワイヤ、金属酸化物ナノチューブ、金属酸化物ナノワイヤなどが挙げられる。導電性繊維の中でも、透明性と導電性との両立を図ることができる点で、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブが好ましく、金属ナノワイヤがより好ましい。導電性繊維の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、金属、金属酸化物、カーボンが挙げられる。
【0039】
−−極細炭素繊維−−
前記極細炭素繊維としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどが挙げられる。なかでも、導電ネットワーク形成の有利さから、カーボンナノチューブが好ましい。
【0040】
−−−カーボンナノチューブ−−−
前記カーボンナノチューブとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、径が1nm〜1,000nm、長さが0.1μm〜1,000μm、アスペクト比が100〜10,000の細長い炭素からなるチューブ状の炭素であってもよい。径が、1nm未満であると、安定性、大量製造の困難さがあり、1,000nmを超えると、透明性、導電性の両立の観点で問題がある。また、長さが、0.1μm未満であると、導電ネットワーク形成のための塗布量が大きくなり、透過率の減少を引き起こし、1,000μmを超えると、長時間塗布時において液滞留部での凝集物発生による塗布故障が起こる。
【0041】
前記カーボンナノチューブの作製方法としては、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱CVD法、プラズマCVD法などが知られている。前記アーク放電法及びレーザー蒸発法により得られるカーボンナノチューブには、グラフェンシートが一層のみの単層カーボンナノチューブ(SWNT:Single Wall Nanotube)と、複数のグラフェンシートからなる多層カーボンナノチューブ(MWNT:Multi Wall Nanotube)とが存在する。熱CVD法及びプラズマCVD法では、主としてMWNTが作製できる。前記SWNTは、炭素原子同士がSP2結合と呼ばれる最も強い結合により6角形状につながったグラフェンシート一枚が筒状に巻かれた構造を有する。
【0042】
前記カーボンナノチューブ(SWNT、MWNT)は、グラフェンシート1枚〜数枚を筒状に丸めた構造を有する直径0.4nm〜10nm、長さ0.1μm〜数100μmのチューブ状物質である。グラフェンシートをどの方向に丸めるかによって、金属になったり半導体になったりするというユニークな性質を有する。
【0043】
−−金属ナノチューブ、金属酸化物ナノチューブ、金属ナノワイヤ、金属酸化物ナノワイヤ−−
前記金属ナノワイヤ及び金属酸化物ナノワイヤとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、金属元素単体、複数金属元素からなるコアシェル構造、アロイ、鍍金された金属ナノワイヤなどが好適に挙げられる。
【0044】
前記金属ナノチューブ及び金属ナノワイヤにおける金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、ニッケル、シリコンなどが挙げられる。これらは、1種単独であっても、2種以上を併用してもよい。なかでも、導電性を向上させる点で、銀単独、又は銀と他の金属との混合物からなるものであることが好ましい。
【0045】
金属酸化物ナノチューブ及び金属酸化物ナノワイヤにおける金属酸化物としては、ITO、酸化亜鉛、酸化スズ、さらにそれらの化合物へ導電性向上の目的で不純物をドーピングされたものが挙げられる。
【0046】
前記金属ナノワイヤ及び金属酸化物ナノワイヤの直径(径)としては、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。なかでも、径が8nm〜50nmであることが特により好ましい。前記直径が300nmを超えると、金属ナノワイヤに起因する光散乱が生じるためか、十分な透明性を得ることができないことがある。直径が小さすぎると耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあるため、直径は5nm以上であるのが好ましい。
【0047】
前記金属ナノワイヤ及び金属酸化物ナノワイヤの長さ(長軸長)としては、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が特に好ましい。金属ナノワイヤの長軸の長さが長すぎると金属ナノワイヤ製造時に絡まるためか、製造過程で凝集物が生じてしまうことがあるため、前記長軸の長さは1mm以下であるのが好ましく、500μm以下がより好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。前記長軸長さが、1μm未満であると、密なネットワークを形成することが難しいためか、十分な導電性を得ることができないことがある。
【0048】
ここで、前記ナノワイヤの径及び長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)と光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができる。上記ナノワイヤの径及び長さは、統計的に意味のある個数(例えば、600個以上)の粒子を計測し、その平均値として求めることができる。
【0049】
前記ナノワイヤは、電子デバイスへ組み込んだときの信頼性の観点で、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲン化物イオン等の無機イオンを含まないことが好ましい。前記金属ナノワイヤを水に分散させたときの電気伝導度としては、1mS/cm以下が好ましく、0.1mS/cm以下がより好ましく、0.05mS/cm以下が特に好ましい。前記金属ナノワイヤを水に分散させたときの20℃における粘度としては、0.5mPa・s〜100mPa・sが好ましく、1mPa・s〜50mPa・sがより好ましい。
【0050】
[ナノワイヤの製造方法]
前記ナノワイヤの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、ワイヤ生成比率と分散性の点で、以下のようにハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子と分散剤を溶解した溶媒中でナノワイヤの原料となる金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。
【0051】
−ハロゲン化合物及びハロゲン化金属微粒子−
金属ナノワイヤの製造に用いるハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子しては、臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲンを有する化合物又はハロゲンを有する金属微粒子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子を金属ナノワイヤの製造に用いることで、ナノワイヤ生成比率が高くなり、また分散安定性も良好となる。
【0052】
ハロゲン化合物としては、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリハライドが好ましい。ハロゲン化合物の種類によっては、アルキル4級アンモニウムのハライドなど、後述の分散剤として機能するものがあり得るが、同様に好ましく用いることができる。
【0053】
ハロゲン化金属微粒子としては、例えば、臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀などのハロゲン化銀微粒子が挙げられ、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を共に使用してもよい。
【0054】
ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子と後述の分散剤とは同一物質で併用してもよい。ハロゲン化合物と分散剤を併用した化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含むHTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)、アミノ基と塩化物イオンを含むHTAC(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド)が挙げられ、これらのアルキル差及び、ハロゲン種の異なるものを併用してもよい。
【0055】
ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子の添加タイミングは、後述の分散剤の添加前でも添加後でもよく、還元剤の添加前でも添加後でもよい。ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子と後述の分散剤の添加のタイミングは、後述の還元剤の添加前でも添加後でもよく、金属ナノワイヤの原料となる金属イオン又はハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよいが、単分散性のよりよい金属ナノワイヤを得るためには、粒子の核形成と成長を制御できるためか、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
【0056】
−分散剤−
金属ナノワイヤの製造に用いる分散剤としては、金属ナノワイヤを金属ナノワイヤの製造に用いる溶媒中に分散させ得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えばアミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、多糖類由来の天然高分子、合成高分子、又はこれらに由来するゲル等の高分子類、などが挙げられる。
【0057】
前記高分子類としては、例えば保護コロイド性のあるポリマーでゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体、などが挙げられる。
【0058】
前記分散剤として使用可能な成分の構造については、例えば「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照でき、使用する分散剤の種類によって得られる金属ナノワイヤの形状を変化させることができる。
【0059】
前記分散剤を添加する段階としては、粒子調製する前に添加し、後述のポリマーなどの分散剤の存在下で添加してもよいし、粒子調製後に分散状態の制御のために添加しても構わない。分散剤の添加を2段階以上に分けるときには、その量は必要とする金属ワイヤの長さにより変更すればよい。これは核となる金属粒子量の制御による金属ワイヤの長さに起因しているためと考えられる。
【0060】
−溶媒−
前記の還元を行って金属ナノワイヤを製造する方法に用いる溶媒としては、後工程の脱塩、濃縮の簡便さの点で、親水性溶媒が好ましく、例えば水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン等のケトン類、などが挙げられる。
【0061】
−還元−
金属ナノワイヤを製造するための上記の還元の方法としては、金属ナノワイヤとなる金属イオンを還元し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、後述する還元剤を溶媒に溶解させ加熱して還元する方法が挙げられる。
【0062】
加熱温度は、250℃以下が好ましく、20℃以上200℃以下がより好ましく、30℃以上180℃以下が特に好ましく、40℃以上170℃以下が特により好ましい。必要であれば、金属粒子形成過程で温度を変更してもよく、途中での温度変更は粒子の核形成の制御や再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果があることがある。
【0063】
前記加熱温度が250℃を超えると、金属ナノワイヤの断面の角が急峻になるためか、塗布膜評価での透過率が低くなることがある。また、前記加熱温度が低くなる程、粒子の核形成確率が下がり金属ナノワイヤが長くなりすぎるためか、金属ナノワイヤが絡みやすく、分散安定性が悪くなることがある。この傾向は20℃以下で顕著となる。
【0064】
−−還元剤−−
金属ナノワイヤを製造するための上記の還元の方法には、金属イオンの還元反応を促進し得ることから、還元剤を添加して行うことが好ましい。前記加熱を行う場合であっても、還元剤を添加してもよい。還元剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素金属塩;水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウム等の水素化アルミニウム塩;亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩等;ジエチルアミノエタノール、エタノールアミン、プロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミン;プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピレンアミン、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等のヘテロ環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン;ベンジルアミン、キシレンジアミン、N−メチルベンジルアミン等のアラルキルアミン;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、グルタチオン、有機酸類(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等)、還元糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオース等)、糖アルコール類(ソルビトール等)などが挙げられる。これらのなかでも、還元速度のコントロールのしやすさの点で、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
【0065】
前記還元剤の種類によっては、機能として分散剤、溶媒としても働く場合があり、同様に好ましく用いることができる。このような例としては、エチレングリコールが挙げられる。
【0066】
前記還元剤の添加のタイミングは、分散剤の添加前でも添加後でもよく、ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよい。
【0067】
−その他の処理−
金属ナノワイヤの製造方法において、前記溶媒中で前記金属ナノワイヤが分散した液には、その後、任意の処理を行ってもよく、例えば、脱塩処理、濃縮処理が挙げられる。脱塩処理としては、金属ナノワイヤを形成した後、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離などの手法により行うことができる。
【0068】
<その他の層>
本発明による導電膜形成用感光材料は、上記の銀塩含有乳剤層及び/又は導電層の他、導電膜形成用感光材料に一定の機械的強度を付与する支持体、支持体との接着性を向上させるための下引層、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現させるための保護層、が挙げられる。なお、このその他の層の配置の位置は、導電膜形成用感光材料のいずれの位置であってもよいが、塗布工程の簡便さの点で、後述の支持体からみて、銀塩含有乳剤層が存在する側に設けることが好ましい。
【0069】
−支持体−
本発明による導電膜形成用感光材料に用いられる支持体としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、及びガラス板などを挙げることができる。なかでも、支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)(融点:258℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN)(融点:269℃)、ポリエチレン(PE)(融点:135℃)、ポリプロピレン(PP)(融点:163℃)、ポリスチレン(融点:230℃)、ポリ塩化ビニル(融点:180℃)、ポリ塩化ビニリデン(融点:212℃)やトリアセチルセルロース(TAC)(融点:290℃)等の融点が約290℃以下であるプラスチックフィルム、又はプラスチック板が好ましく、透光性電磁波遮蔽膜用には光透過性や加工性などの観点から、PETが特に好ましい。透明導電性フィルムは透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが好ましい。
【0070】
上記支持体の全可視光透過率は、70%以上が好ましく、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。また、本発明では、支持体として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0071】
−下引層−
下引層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、上記の銀塩含有乳剤層に用いた銀塩乳剤からなるもの、乳剤中のバインダーのみからなるものであってもよい。なかでも、塗布工程簡略化の点で、銀塩乳剤を有することが好ましい。下引層の構造としては、層の構成であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、前述の支持体の上に直接形成されるのが好ましい。下引層の厚みとしては、密着性の点で、2μm以下が好ましく、0.05μm〜1.5μmがより好ましい。下引層の塗布方法及び形成方法は、特に限定されず、公知の塗布方法及び形成方法を適宜選択することができる。
【0072】
−保護層−
保護層としては、上記の効果を発現するためのものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層であってもよい。保護層の構造としては、層の構成であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、上記の銀塩含有乳剤層の上に形成されてもよい。保護層の厚みとしては、力学特性を発揮し得る点で、0.2μm以下が好ましく、0.02〜0.1μmがより好ましい。保護層の塗布方法及び形成方法は、特に限定されず、公知の塗布方法及び形成方法を適宜選択することができる。
【0073】
これらのその他の層は、上述の導電性繊維とバインダーを、含有してもよく、後述の支持体からみて、上記の銀塩含有乳剤層より上層でも下層に設けられてもよい。また、銀塩含有乳剤層との導通の点で、銀塩含有乳剤層と隣接する層に導電性繊維とバインダーを含有させることも好ましい。
【0074】
導電性繊維を含有する層(以下、導電性繊維含有層とも称する。)を、上記の保護層や下引層とは別に独立して設けた場合の本発明による導電膜形成用感光材料の層構成としては、下記の(1)〜(4)のものが挙げられる。なお、いずれも支持体から見た層構成を示す。
【0075】
(1)下引層/銀塩含有乳剤層/導電性繊維含有層(導電層)/保護層又はシリカを含有する密着性付与層
(2)下引層/銀塩含有乳剤層/導電性繊維含有層(導電層)
(3)導電性繊維含有層(導電層)/銀塩含有乳剤層/保護層
(4)下引層/第一の銀塩含有乳剤層/第二の銀塩含有乳剤層/導電性繊維含有層(導電層)/保護層(乳剤層の銀塩含有量が異なる)
【0076】
なお、(2)のように、保護層がなく導電性繊維含有層が最上層となる形態でもよい。
【0077】
[導電膜形成用感光材料の製造方法]
本発明による導電膜形成用感光材料の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、支持体上に、銀塩含有乳剤層形成用の塗布液を、スピンコート、バーコート、ワイヤバーコート、ブレード塗工、ダイコート、スリットコートなどの適当な塗布方法で塗布した後、乾燥する方法であってもよい。また、導電膜形成用感光材料が銀塩乳剤を含有する銀塩含有乳剤層と導電性繊維を含有する導電層とを有する場合には、上記と同様に、銀塩含有乳剤層形成用の塗布液を塗工して乾燥し、その後、導電層形成用の塗布液を上記の塗工方法で塗布した後、乾燥する方法であってもよく、銀塩含有乳剤層形成用の塗布液及び導電層形成用の塗布液を同時重層塗布し、乾燥する方法であってもよい。また、各層を乾燥した後、導電性繊維の導通の向上を目的として、カレンダー処理を行ってもよい。このように重層塗布して後述する露光現像処理を施すことで導電膜が製造でき、これにより製造工程を簡略化して歩留まりを向上させることもできる。また、メッシュ形状の導電膜に導電性繊維含有層形成用塗布液を塗布する場合には、導電性繊維が均一に分散せずに、メッシュ上に凝集するなどの問題が生じることがあるが、同時重層塗布によれば、そのような問題が生じず、導電性繊維の分散性が高い導電層を得ることができる。
【0078】
銀塩含有乳剤層に導電性繊維とバインダーを含有させる場合は、導電性繊維の塗布量が0.005g/m〜0.2g/mであることが好ましく、0.005g/m〜0.17g/mであることがより好ましく、0.01g/m〜0.15g/mであることが特に好ましく、0.01g/m〜0.125g/mであることがより特に好ましい。
【0079】
また、導電性繊維とバインダーを含有させる層が銀塩含有乳剤層よりも上層(例えば、導電層又は保護層)の場合;及び導電性繊維とバインダーを含有させる層が銀塩含有乳剤層よりも下層(例えば、下引層)の場合のいずれにおいても、導電性繊維の塗布量が0.005g/m〜0.2g/mであることが本発明の一つの態様であり、0.005g/m〜0.17g/mであることが好ましく、0.01g/m〜0.15g/mであることがより好ましく、0.01g/m〜0.125g/mであることが特に好ましい。導電性繊維の塗布量が前記上限値を超えると、透明性が実用的に不十分となり、透明導電性フィルムとして不適となる傾向がある。また、導電性繊維の塗布量が前記上限値を超えると、導電性繊維の塗布工程において均一に分散させることが難しく、製造不良が増加する傾向がある。一方、前記下限値未満であると、面内の電気特性が不十分となり、例えば、EL素子に使用した場合には輝度が実用的に不十分となる傾向がある。
【0080】
導電性繊維とバインダーを含有させる層は、銀塩含有乳剤層側の上層、例えば保護層であることが好ましい。保護層に導電性繊維を含有させる方が、電極などとして用いると導電性が有利となり、無機EL素子等の発光素子に組み込んだ際の輝度向上効果が大きくなる。
【0081】
導電性繊維とバインダーを含有させる層が保護層である場合、導電性繊維の塗布量は、上記好適な範囲と同様であるが、バインダーの塗布量は、0.5g/m以下であることが好ましく、0.4g/m以下であることがより好ましく、0.3g/m以下であることが特に好ましい。バインダーの塗布量が少ないほど、導電性が向上し好ましい。バインダーの塗布量が多い場合には、バインダーを含有する塗布液の残留溶剤量が多くなるため、残存用材が他の機能層に悪影響を与えることがある。したがって、バインダーは、保護層に含有させなくてもよい。なお、バインダー塗布量を少なくする場合、ダイコーター、スリットコーターなどの塗布方法とすることで導電性繊維の塗布ムラを抑制することができる。
【0082】
(導電性材料)
本発明による導電性材料は、上記の導電膜形成用感光材料をパターン露光し、現像処理して得られるものである。
【0083】
本発明による導電性材料としては、上記の構成を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、上記の本発明による導電膜形成用感光材料において支持体上に形成された銀塩含有乳剤層を後述の露光・現像・定着を行うことで生じた金属銀を含有する層を有してもよく、同様に上記の本発明による導電膜形成用感光材料において支持体上に形成された銀塩乳剤及び導電性繊維を有する銀塩含有乳剤層を後述の露光・現像・定着を行うことで生じた金属銀及び導電性繊維を含有する層を有してもよい。また、上記の本発明による導電膜形成用感光材料において支持体上に形成された銀塩含有乳剤層と導電層を含有する導電層とを後述の露光・現像・定着を行うことで生じた、金属銀を含有する層と導電性繊維を有する層とを有してもよい。上記の本発明による導電膜形成用感光材料の銀塩含有乳剤層を露光・現像・定着して得られるものとしては、銀箔メッシュパターン、銅箔メッシュパターン、印刷方式により形成されたメッシュパターンなどが挙げられる。また、上記の本発明による導電膜形成用感光材料の導電性繊維を含有する導電層を露光・現像・定着して得られるものとしては、導電性繊維を含有する層が挙げられる。
【0084】
本発明による導電性材料の全光線透過率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、81%以上が好ましく、82%以上がより好ましく、83%以上が特に好ましく、84%以上が特により好ましく、85%以上が特にさらに好ましく、90%以上が最も好ましい。本発明による導電性材料では、露光・現像処理して得られたメッシュパターンを含まない開口部の透過率が、81%以上であることが好ましく、82%以上がより好ましく、83%以上が特に好ましく、84%以上が特により好ましく、85%以上が特にさらに好ましく、90%以上が最も好ましい。導電性粒子として、銀粒子や銅粒子などの金属球形粒子、又は、金属酸化物及びこれらの複合酸化物からなる球形粒子を使用した場合には、抵抗を下げるために多量に塗設する必要があり、抵抗開口部の透過率が低下するため、透明性が実用的に不十分となる。したがって、本発明による導電性材料では、透明性と抵抗の観点から、上述した導電性繊維を使用する。
【0085】
本発明による導電性材料において、上記の本発明による導電膜形成用感光材料の銀塩含有乳剤層を露光・現像・定着して得られる金属銀を含有する層(以下、第1の導電膜とも称する。)、銀塩含有乳剤と導電性繊維を有する導電層を露光・現像・定着して得られる導電性繊維を含有する層(以下、第2の導電膜とも称する。)、銀塩含有乳剤がなく導電性繊維を有する導電層(以下、第3の導電膜とも称する。)の表面抵抗は、0.01Ω/□〜500Ω/□であることが好ましく、導電性材料の面内の電気特性がより均一となり、例えば無機EL素子としたときに面内全体で十分な輝度が得られる。
【0086】
本発明において、表面抵抗は、低抵抗率計ロレスタ―GP(商品名,三菱化学社製),NON−CONTACT CONDUCTANCE MONITOR MODEL 717B(商品名,DELCOM社製)やデジタル超高抵抗/微少電流計8340A(商品名、株式会社エーディーシー社製)により測定できる。
【0087】
以下、本発明による導電膜形成用感光材料をパターン露光し、現像処理して得られる本発明による導電性材料の実施形態について詳述する。
【0088】
本発明において、パターン露光・現像処理によって形成する形状は、メッシュ状で、直線が直交している格子状、交差部間が少なくとも1つの湾曲を有する波線形状などがあるが、例えば格子状メッシュでは、ライン/スペースが20〜1,000μmであることが好ましく、20〜300μmがより好ましい。このときピッチは200〜1,000μmが好ましく、200〜600μmがより好ましい。
【0089】
なお、本発明では、導電性、透明性が確保される範囲内で、露光・現像処理して得た導電膜上に導電性ポリマーを塗布することにより、さらに導電層を形成してもよい。
【0090】
−露光−
本発明による導電性材料において、露光の方法としては、上記の導電膜形成用感光材料の感光材料を有する層側から所定の波長で露光するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
【0091】
−現像処理−
本発明による導電性材料において、現像処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
【0092】
本発明では、上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部にパターン状の金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。
【0093】
本発明による導電膜形成用感光材料を用いた現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明による導電膜形成用感光材料を露光・現像処理した後に行われる定着処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0094】
このようにして得られた本発明による導電性材料は、銀塩含有乳剤層に導電性繊維が入っている場合には、銀塩が抜けた光透過部に導電性繊維が分散し、金属銀部よりも高抵抗の導電層が形成される。銀塩含有乳剤層以外の層に導電性繊維が入っている場合にも、同様に光透過部に導電性繊維が分散した導電層が形成される。
【0095】
本発明による導電性材料の用途としては、透明性と導電性とを要する技術であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、無機又は有機のEL素子、液晶などの表示素子、IC基板等の多層基板、抵抗膜、静電容量など各方式のタッチパネル用の透明導電膜、各種回路パターン、基板上に形成する太陽電池などの各種デバイスが挙げられる。なかでも、EL素子、タッチパネル用の透明電極として好適である。
【0096】
分散型エレクトロルミネッセンス素子は、交流で駆動される。典型的には、100Vで50Hz〜400Hzの交流電源を用いて駆動される。輝度は面積が小さい場合には、印加電圧並びに周波数にほぼ比例して増加する。しかしながら、0.25m以上の大面積素子の場合、素子の容量成分が増大し、素子と電源のインピーダンスマッチングがずれたり、素子への蓄電荷に必要な時定数が大きくなったりするため、高電圧化や特に高周波化しても電力供給が十分に行われない状態になり易い。特に、0.25m以上の素子では、500Hz以上の交流駆動に対しては、しばしば駆動周波数の増大に対して印加電圧の低下が起こり、低輝度化が起こることがしばしば起こる。
【0097】
これに対し、本発明による導電性材料を電極として使用したエレクトロルミネッセンス素子は、0.25m以上の大サイズでも高い周波数の駆動が可能で、高輝度化することができる。この場合、500Hz以上5kHz以下での駆動が好ましく、800kHz以上3kHz以下の駆動がより好ましい。
【0098】
(表示素子)
本発明による表示素子は、上記の本発明による導電性材料を有し、その他必要に応じてその他の部材/成分を有する。
【0099】
本発明による表示素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、液晶表示素子、無機又は有機のEL素子、TFT基板が挙げられる。例えば、表示素子としての液晶表示素子では、基板上にパターニングされた本発明による導電性材料が設けられた素子基板と、対向基板であるカラーフィルター基板とを、位置を合わせて圧着後、熱処理して組み合わせ、液晶を注入し、注入口を封止することによって製作されてもよい。このとき、カラーフィルター上に形成される透明導電膜も、本発明による導電性材料を用いて形成されてもよい。また、前記素子基板上に液晶を散布した後、基板を重ね合わせ、液晶が漏れないように密封して液晶表示素子が製作されてもよい。
【0100】
このようにして、本発明による導電性材料を用いて形成された、優れた透明性を有する導電膜を液晶表示素子などの表示素子として用いることができる。
【0101】
なお、本発明による表示素子の一例としての液晶表示素子に用いられる液晶、即ち液晶化合物及び液晶組成物については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、公知の液晶化合物及び液晶組成物をも使用することができる。
【0102】
(太陽電池)
本発明による太陽電池は、上記の本発明による導電性材料を有し、その他必要に応じてその他の部材/成分を有する。
【0103】
本発明による太陽電池としては、上記の構成を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、太陽電池デバイスとして一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池デバイス、多結晶シリコン系太陽電池デバイス、シングル接合型、又はタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池デバイス、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、色素増感型太陽電池デバイス、有機太陽電池デバイス等が挙げられる。なかでも、本発明においては、上記太陽電池デバイスが、タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、及び銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイスであることが好ましい。特に、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる、カルコパイライト構造の半導体薄膜であるCuInSe(CIS系薄膜)、又は、これにGaを固溶したCu(In,Ga)Se(CIGS系薄膜)を光吸収層に用いた薄膜太陽電池は、高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による効率の劣化が少ないという利点を有している。
【0104】
タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイスの場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン薄膜層、また、これらにGeを含んだ薄膜、更に、これらの2層以上のタンデム構造が光電変換層として用いられる。成膜はプラズマCVD等を用いる。
【0105】
<導電性材料>
本発明による太陽電池において、上記の本発明による導電性材料(以下、透明導電層、透明導電体とも称する。)は、太陽電池において、導電性を要する部材であれば、いずれの部材として用いられてもよい。前記透明導電層は、太陽電池デバイスのどの部分に含まれてもよいが、変換効率の点で、光電変換層に隣接していることが好ましい。光電変換層との位置関係に関しては下記の構成が好ましいが、これに限定されるものではない。また、下記に記した構成は太陽電池デバイスを構成する全ての部分を記載しておらず、前記透明導電層の位置関係が分かる範囲の記載としている。
【0106】
(A)基板−透明導電層(本発明品)−光電変換層
(B)基板−透明導電層(本発明品)−光電変換層−透明導電層(本発明品)
(C)基板−電極−光電変換層−透明導電層(本発明品)
(D)裏面電極−光電変換層−透明導電層(本発明品)
【0107】
また、本発明による太陽電池において、上記の本発明による導電性材料は、集電用電極としては透明電極を用いない結晶系(単結晶、多結晶など)シリコン太陽電池に対しても適用できる。結晶系シリコン太陽電池は、集電電極としては、一般的に銀蒸着電線、又は銀ペーストによる電線が用いられるが、本発明で用いられる透明導電層を適用することでこれらに対しても高い光電変換効率が得られる。
【0108】
さらに、本発明の太陽電池に用いられる透明導電層は、赤外波長の透過率が高く、かつシート抵抗が小さいため、赤外波長に対する吸収の大きな太陽電池、例えばタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池などに好適に用いられる。
【0109】
〔透明導電層の製造方法〕
前記透明導電層の形成方法は、上記の導電性材料の製造方法に準じる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、前記銀塩乳剤を有する組成物、及び/又は導電性繊維を分散させた塗工液を、基板上へ塗設し、乾燥する方法であってもよい。
【0110】
前記塗工液の塗設方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばウェブコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、ドクターブレードコーティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、インクジェット法などが挙げられる。特に、ウェブコーティング法、スクリーン印刷法、インクジェット法に関しては、フレキシブルな基板へのロールトゥロール製造が可能である。
【0111】
塗布の順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、後述のバッファ層を形成した後に、行われてもよく、バッファ層を形成した後に後述のZnO層を形成し、その後、行われてもよい。
【0112】
前記塗工液を塗設後に行う乾燥としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、加熱によるアニールを行ってもよい。この際、加熱温度は、50℃以上300℃以下が好ましく、70℃以上200℃以下がより好ましい。
【0113】
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、以下のものが挙げられる。なかでも、上記素子用基板としては、フィルム状、又は箔状が好ましい。
【0114】
(1)石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、サファイア、ソーダライムガラス等のガラス
(2)ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ナイロン、スチレン系樹脂、ABS樹脂、アラミド系等の熱可塑性樹脂
(3)エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂
(4)ステンレス、チタン、アルミニウム、銅等の金属板
(5)特開2005−317728号公報記載の集成マイカ基板
【0115】
前記基板の表面は、親水化処理を施してもよい。また、前記の銀塩乳剤及び/又は導電性繊維を含む塗工液との親和性の点で、前記基板表面に親水性ポリマーを塗設したものが好ましい。これらにより、銀塩乳剤及び/又は導電性繊維を有する水性分散物の基板への塗布性及び密着性が向上する。
【0116】
前記親水化処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば薬品処理、機械的粗面化処理、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理などが挙げられる。これらの親水化処理により基板表面の表面張力を30dyne/cm以上にすることが好ましい。
【0117】
前記基板表面に塗設する親水性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、ガゼイン、寒天、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストラン、などが挙げられる。前記親水性ポリマー層の層厚(乾燥時)は、0.001μm〜100μmが好ましく、0.01μm〜20μmがより好ましい。
【0118】
前記親水性ポリマー層には、この親水性ポリマー層の軟化を防止する点で、硬膜剤を添加して膜強度を高めることが好ましい。前記硬膜剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン化合物;ジビニルスルホン等のビニルスルホン化合物;2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等のトリアジン化合物;米国特許第3,103,437号明細書等に記載のイソシアネート化合物、などが挙げられる。
【0119】
前記親水性ポリマー層は、上記化合物を水等の溶媒に溶解乃至分散させて塗布液を調製し、得られた塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート、バーコート、ダイコート等の塗布法を利用して親水化処理した基板表面に塗布し、乾燥することにより形成してもよい。前記乾燥温度は120℃以下が好ましく、30℃〜100℃がより好ましく、40℃〜80℃が更に好ましい。
【0120】
−CIGS系の太陽電池−
CIGS系(銅/インジウム/ガリウム/セレン系)の太陽電池の構成について、その製造方法を参照しながら、説明する。
【0121】
図2A〜2Dは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの一般的な製造方法を説明するためのデバイスの断面図である。図2Aに示すように、まず、基板100上にプラス側の下部電極となるモリブデン電極層(Mo電極層)200が形成される。次に、図2Bに示すように、Mo電極層200上に、組成制御により、p型を示す、CIGS系薄膜からなる光吸収層300が形成される。次に、図2Cに示すように、その光吸収層300上に、CdSなどのバッファ層400を形成し、そのバッファ層400上に、不純物がドーピングされてn型を示す、マイナス側の上部電極となるZnO(酸化亜鉛)からなる透光性電極層500を形成する。このとき、このZnO上に本発明による導電性材料(透明導電体)を積層させるか、ZnOの代わりに本発明の透明導電体を用いることで、本発明による太陽電池を得ることができる。次に、図2Dに示すように、メカニカルスクライブ装置によって、ZnOからなる透光性電極層500からMo電極層200までを、一括してスクライブ加工する。これによって、薄膜太陽電池の各セルが電気的に分離(即ち、各セルが個別化)される。
【0122】
以下に、代表的なCIGS層の形成方法を示すが、これに限定されるものではない。
【0123】
1)多源同時蒸着法
多源同時蒸着法の代表的な方法としては、米国のNREL(National Renewable Energy Laboratory)が開発した3段階法とECグループの同時蒸着法がある。3段階法は、例えば、J.R.Tuttle,J.S.Ward,A.Duda,T.A.Berens,M.A.Contreras,K.R.Ramanathan,A.L.Tennant,J.Keane,E.D.Cole,K.Emery及びR.Noufi著、Mat.Res.Soc.Symp.Proc.、1996年、426巻、p.143.に記載されている。また、同時蒸着法は、例えば、L.Stoltら著、Proc.13th ECPVSEC(1995,Nice)1451.に記載されている。
【0124】
3段階法は、高真空中で最初にIn、Ga、Seを基板温度300℃で同時蒸着し、次に500〜560℃に昇温してCu、Seを同時蒸着後、In、Ga、Seを更に同時蒸着する方法で、禁制帯幅が傾斜したグレーデッドバンドギャップCIGS膜が得られる。ECグループの方法は、蒸着初期にCu過剰CIGS、後半でIn過剰CIGSを蒸着するBoeing社の開発したバイレーヤー法をインラインプロセスに適用できるように改良したものである。バイレーヤー法は、W.E.Devaney,W.S.Chen,J.M.Stewart及びR.A.Mickelsen著、IEEE Trans.Electron.Devices、1990年、37巻、p.428に記載されている。
【0125】
3段階法及びECグループの同時蒸着法は共に、膜成長過程でCu過剰なCIGS膜組成とし、相分離した液相Cu2−xSe(x=0〜1)による液相焼結を利用するため、大粒径化が起こり、結晶性に優れたCIGS膜が形成されるという利点がある。
【0126】
更に、近年CIGS膜の結晶性を向上させるため、この方法に加えた種々の方法に関する検討が行われており、これらを用いてもよい。
【0127】
(a)イオン化したGaを使用する方法
蒸発したGaをフィラメントによって発生した熱電子イオンが存在するグリッドを通過させ、Gaと熱電子が衝突することでGaをイオン化する方法である。イオン化したGaは引き出し電圧により加速され基板に供給される。詳細は、H.Miyazaki,T.Miyake,Y.Chiba,A.Yamada,M.Konagai著、Phys.Stat.Sol.(a)、2006年、203巻、p.2603に記載されている。
【0128】
(b)クラッキングしたSeを使用する方法
蒸発したSeは通常クラスターとなっているが、更に高温ヒーターにより熱的にSeクラスターを分解することでSeクラスターを低分子化する方法である(第68回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007年秋、北海道工業大学)7P−L−6)。
【0129】
(c)ラジカル化したSeを用いる方法
バルブトラッキング装置により発生したSeラジカルを用いる方法である(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007年春、青山学院大学)29P−ZW−10)。
【0130】
(d)光励起プロセスを利用した方法
3段階蒸着中にKrFエキシマレーザー(例えば波長248nm、100Hz)、又はYAGレーザー(例えば、波長266nm、10Hz)を基板表面に照射する方法である(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007年春、青山学院大学)29P−ZW−14)。
【0131】
2)セレン化法
セレン化法は2段階法とも呼ばれ、最初にCu層/In層や(Cu−Ga)層/In層等の積層膜の金属プレカーサをスパッタ法、蒸着法、電着法などで製膜し、これをセレン蒸気又はセレン化水素中で450℃〜550℃程度に加熱することにより、熱拡散反応によってCu(In1−xGa)Se等のセレン化合物を作製する方法である。この方法を気相セレン化法と呼ぶが、このほか、金属プリカーサ膜の上に固相セレンを堆積し、この固相セレンをセレン源とした固相拡散反応によりセレン化させる固相セレン化法がある。現在、唯一、大面積量産化に成功しているのは、金属プリカーサ膜を大面積化に適したスパッタ法で製膜し、これをセレン化水素中でセレン化する方法である。
【0132】
しかし、この方法ではセレン化の際に膜が約2倍に体積膨張するため、内部歪みが生じ、また、生成膜内に数μm程度のボイドが発生し、これらが膜の基板に対する密着性や太陽電池特性に悪影響を及ぼし、光電変換効率の制限要因になっているという問題がある(B.M.Basol,V.K.Kapur,C.R.Leidholm,R.Roe,A.Halani及びG.Norsworthy著、NREL/SNL Photovoltaics Prog.Rev.Proc.14th Conf.−A Joint Meeting(1996)AIP Conf.Proc.394.)。
【0133】
このようなセレン化の際に生ずる急激な体積膨張を回避するために、金属プリカーサ膜に予めセレンをある割合で混合しておく方法(T.Nakada,R.Ohnishi及びA.kunioka著、’’CuInSe−Based Solar Cells by Se−Vapor Selenization from Se−Containing Precursors’’、Solar Energy Materials and Solar Cells、1994年、35巻、p.204−214)や、金属薄層間にセレンを挟み(例えばCu層/In層/Se層・・・Cu層/In層/Se層と積層する)多層化プリカーサ膜の使用が提案されている(T.Nakada,K.Yuda,and A.Kunioka:’’Thin Films of CuInSe Produced by Thermal Annealing of Multilayers with Ultra−Thin stacked Elemental Layers’’ Proc. of 10th European Photovoltaic Solar Energy Conference、1991年、p.887−890)。これらにより、上述の堆積膨張の問題はある程度回避されている。
【0134】
しかし、このような手法を含めて、すべてのセレン化法に当てはまる問題点がある。それは、最初にある決まった組成の金属積層膜を用い、これをセレン化するため、膜組成制御の自由度が極めて低いという点である。例えば現在、高効率CIGS系太陽電池では、Ga濃度が膜厚方向で傾斜したグレーデッドバンドギャップCIGS薄膜を使用するが、このような薄膜をセレン化法で作製するには、最初にCu−Ga合金膜を堆積し、その上にIn膜を堆積し、これをセレン化する際に、自然熱拡散を利用してGa濃度を膜厚方向で傾斜させる方法がある(K.Kushiya,I.Sugiyama,M.Tachiyuki,T.Kase,Y.Nagoya,O.Okumura,M.Sato,O.Yamase及びH.Takeshita著、Tech.Digest 9th Photovoltaic Science and Engineering Conf.Miyazaki、1996年(Intn.PVSEC−9,Tokyo,1996)p.149)。
【0135】
3)スパッタ法
スパッタ法は大面積化に適するため、これまでCuInSe薄膜形成法として多くの手法が試みられてきた。例えば、CuInSe多結晶をターゲットとした方法や、CuSeとInSeをターゲットとし、スパッタガスにHSeとAr混合ガスを用いる2源スパッタ法(J.H.Ermer,R.B.Love,A.K.Khanna,S.C.Lewis及びF.Cohen著、’’CdS/CuInSe Junctions Fabricated by DC Magnetron Sputtering of CuSe and InSe’’、Proc.18th IEEE Photovoltaic Specialists Conf.、1985年、p.1655−1658)が開示されている。また、Cuターゲット,Inターゲット,Se又はCuSeターゲットをArガス中でスパッタする3源スパッタ法などが報告されている(T.Nakada,K.Migita,A.Kunioka:’’Polycrystalline CuInSe Thin Films for Solar Cells by Three−Source Magnetron Sputtering’’、Jpn.J.Appl.Phys.、1993年、32巻、p.L1169−L1172並びに、T.Nakada,M.Nishioka及びA.Kunioka著、’’CuInSe Films for Solar Cells by Multi−Source Sputtering of Cu, In, and Se−Cu Binary Alloy’’、Proc.4th Photovoltaic Science and Engineering Conf.、1989年、p.371−375)。
【0136】
4)ハイブリッドスパッタ法
前述したスパッタ法の問題点が、Se負イオン又は高エネルギーSe粒子による膜表面損傷であるとするなら、Seのみを熱蒸発に変えることで、これを回避できるはずである。中田らは、CuとIn金属は直流スパッタで、Seのみは蒸着とするハイブリッドスパッタ法で、欠陥の少ないCIS薄膜を形成し、変換効率10%を超すCIS太陽電池を作製した(T.Nakada,K.Migita,S.Niki,及びA.Kunioka著、’’Microstructural Characterization for Sputter−Deposited CuInSe Films and Photovoltaic Devices’’、Jpn.Appl.Phys.、1995年、34巻、p.4715−4721)。また、Rockettらは、これに先立ち、有毒のHSeガスの代わりにSe蒸気を用いることを目的としたハイブリッドスパッタ法を報告している(A.Rockett,T.C.Lommasson,L.C.Yang,H.Talieh,P.Campos及びJ.A.Thornton著、Proc.20th IEEE Photovoltaic Specialists Conf.、1988年、p.1505)。更に古くは膜中のSe不足を補うためSe蒸気中でスパッタする方法も報告されている(S.Isomura,H.Kaneko,S.Tomioka,I.Nakatani及びK.Masumoto著、Jpn.J.Appl.Phys.、1980年、19(Suppl.19−3)、p.23)。
【0137】
5)メカノケミカルプロセス法
CIGSの各組成の原料を遊星ボールミルの容器に入れ、機械的なエネルギーによって原料を混合してCIGS粉末を得る。その後、スクリーン印刷によって基板上に塗布し、アニールを施しCIGSの膜を得る方法である(T.Wada,Y.Matsuo,S.Nomura,Y.Nakamura,A.Miyamura,Y.Chia,A.Yamada,M.Konagai、Phys.stat.sol.(a)、2006年、203巻、p.2593)。
【0138】
6)その他の方法
その他のCIGS製膜法としては、例えばスクリーン印刷法、近接昇華法、MOCVD法、スプレー法などが挙げられる。スクリーン印刷法、スプレー法等で、成分となるIb族元素、IIIb族元素、VIb族元素とそれらの化合物からなる微粒子から構成される薄膜を基板上に形成し、熱処理、VIb族元素雰囲気での熱処理などにより所望の組成の結晶を得る。例えば酸化物微粒子を塗布にて薄膜を形成した後、セレン化水素雰囲気中で加熱する。PVSEC−17 PL5−3又は、金属−VIb族元素結合を含む有機金属化合物の薄膜を基板上にスプレー・印刷などで形成し、熱分解することによって、所望の無機薄膜を得る。例えば、Sの場合には、金属メルカプチド、金属のチオ酸塩、金属のジチオ酸塩、金属のチオカルボナート塩、金属のジチオカルボナート塩、金属のトリチオカルボナート塩、金属のチオカルバミン酸塩若しくは金属のジチオカルバミン酸塩(特開平9−74065号公報、特開平9−74213号公報)などが挙げられる。
【0139】
−バンドギャップの値と分布制御−
太陽電池の光吸収層としては、I族元素−III族元素−VI族元素の各種組合せからなる半導体が好ましく利用できる。よく知られているものを図3に示す。図3は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体における格子定数とバンドギャップとの関係を示す図である。組成比を変えることにより様々な禁制帯幅(バンドギャップ)を得ることができる。バンドギャップよりエネルギーの大きな光子が半導体に入射された場合、バンドギャップを超える分のエネルギーは熱損失となる。太陽光のスペクトルとバンドギャップとの組合せで変換効率が最大になるのが、およそ1.4eV〜1.5eVであることが理論計算で分かっている。CIGS太陽電池の変換効率を上げるため、例えばCu(InGa1−x)SのGa濃度を上げたり、Cu(InAl)SのAlを上げたり、CuInGa(S,Se)のS濃度を上げたりしてバンドギャップを大きくすることで、変換効率の高いバンドギャップを得る。Cu(InGa1−x)Sの場合1eV〜1.68eVの範囲で調整できる。
【0140】
また、組成比を膜厚方向に変えることでバンド構造に傾斜を付けることができる。光の入射窓側から反対側の電極方向にバンドギャップを大きくするシングルグレーデットバンドギャップ、又は、光の入射窓からPN接合部に向かってバンドギャップが小さくなりPN接合部を過ぎるとバンドギャップが大きくなるダブルグレーデッドバンドギャップの2種類が考えられる。このような太陽電池は、例えば、T.Dullweber,A new approach to high−efficiency solar cells by band gap grading in Cu(In,Ga)Se chalcopyrite semiconductors、Solar Energy Materials & Solar Cells、2001年、67巻、p.145−150などに開示されている。いずれもバンド構造の傾斜によって内部に発生する電界のため、光に誘起されたキャリアが加速され電極に到達しやすくなり、再結合中心との結合確率を下げるため、発電効率が向上する(国際公開第2004/090995号パンフレット参照)。
【0141】
−タンデム型−
スペクトルの範囲別にバンドギャップの異なる半導体を複数使うと、光子エネルギーとバンドギャップとの乖離による熱損失を小さくし、発電効率を向上することができる。このような複数の光電変換層を重ねて用いるものをタンデム型という。2層タンデムの場合には、例えば1.1eVと1.7eVの組合せを用いることにより発電効率を向上することができる。
【0142】
−−光電変換層以外の構成−−
光電変換層以外の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、I−III−VI族化合物半導体と接合を形成するn形半導体には、例えば、CdSやZnO、ZnS、Zn(O,S,OH)などのII−VI族の化合物を用いることができる。これらの化合物は、光電変換層とキャリアの再結合のない接合界面を形成することができ、好ましい(特開2002−343987号公報参照)。
【0143】
〔裏面電極〕
前記裏面電極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えばモリブデン、クロム、タングステンなどの金属を用いることができる。これらの金属材料は熱処理を行っても他の層と混じりにくく好ましい。I−III−VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる場合、モリブデン層を用いることが好ましい。また、裏面電極において、光吸収層CIGSと裏面電極との境界面には再結合中心が存在する。したがって、裏面電極と光吸収層との接続面積は電気伝導に必要となる以上の面積があると、発電効率が低下する。接触面積を少なくするために、例えば、電極層を絶縁材料と金属がストライプ状に並んだ構造を用いるとよい(特開平9−219530号公報参照)。
【0144】
層構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、スーパーストレート型、サブストレート型が挙げられる。I−III−VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる場合、サブストレート型構造を用いるほうが、変換効率が高く好ましい。
【0145】
〔バッファ層〕
前記バッファ層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えばCdS、ZnS、ZnS(O,OH)、ZnMgOなどを使うことができる。例えば、CIGSのGa濃度を上げて光吸収層のバンドギャップを広くすると、伝導帯がZnOの伝導帯より大きくなり過ぎるため、バッファ層には伝導帯のエネルギーが大きいZnMgOが好ましい。
【実施例】
【0146】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0147】
以下の例において、ナノワイヤー構造体としての金属ナノワイヤーの直径及び長軸長さ、ナノワイヤー構造体としての金属ナノワイヤー直径の変動係数、適切ワイヤー化率、及びナノワイヤー構造体としての金属ナノワイヤーの断面角の鋭利度は、以下のようにして測定した。
【0148】
<金属ナノワイヤーの直径及び長軸長さ>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの直径及び長軸長さを求めた。
【0149】
<金属ナノワイヤーの径(短軸径)の変動係数>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの直径を計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより変動係数を求めた。
【0150】
<適切ワイヤー化率>
各銀ナノワイヤー水分散物をろ過して銀ナノワイヤーとそれ以外の粒子を分離し、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8000)を用いてろ紙に残っているAg量と、ろ紙を透過したAg量を各々測定し、直径が50nm以下であり、かつ長さが5μm以上である金属ナノワイヤー(適切なワイヤー)の全金属粒子中の金属量(質量%)を求めた。なお、適切ワイヤー比率を求める際の適切なワイヤーの分離は、メンブレンフィルター(Millipore社製、FALP 02500、孔径1.0μm)を用いて行った。
【0151】
<金属ナノワイヤーの断面角の鋭利度>
金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)で観察し、300個の断面について、断面の外周長さと断面の各辺の合計長さを計測し、「断面の各辺」の合計長さに対する前記「断面の外周長さ」との比率である鋭利度を求めた。この鋭利度が75%以下の場合には角の丸い断面形状であるとした。
【0152】
<サンプルNo.101の調製>
(乳剤Aの調製)
38℃、pH4.5に保たれた下記1液に、下記2液と下記3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、粒子径0.16μmの核粒子を形成した。
【0153】
・1液:
水 750mL
ゼラチン(フタル化処理ゼラチン) 8g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300mL
硝酸銀 150g
・3液
水 300mL
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム 5mL
(0.005%KCl 20%水溶液)
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム 7mL
(0.001%NaCl 20%水溶液)
【0154】
なお、3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKClの20%水溶液、NaClの20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0155】
続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、粒子径0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0156】
・4液
水 100mL
硝酸銀 50g
・5液
水 100mL
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0157】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。
【0158】
次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。
【0159】
水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整した。その後、これに、下記成分を55℃で添加して、化学増感を施した。
【0160】
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム 3mg
チオ硫酸ナトリウム 15mg
塩化金酸 10mg
【0161】
その後、この化学増感を施した液に、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名,ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子を有する乳剤Aを得た。最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=40μS/m、密度=1.2×10kg/m、粘度=60mPa・sとなった。
【0162】
(塗布液Aの調製)
上記乳剤Aに、下記構造式を有する増感色素(SD−1)5.7×10−4モル/モルAgを加えて分光増感を施した。さらにKBr3.4×10−4モル/モルAg、及び下記構造式を有する化合物(Cpd−3)8.0×10−4モル/モルAgを加え、よく混合した。
【0163】
次いで、下記成分を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整し、塗布液Aを作製した。
【0164】
1,3,3a,7−テトラアザインデン 1.2×10−4モル/モルAg
ハイドロキノン 1.2×10−2モル/モルAg
クエン酸 3.0×10−4モル/モルAg
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウム塩
90mg/m
コロイダルシリカ 15質量%
(粒径10μm) (ゼラチンに対して)
下記構造式を有する水性ラテックス(aqL−6) 50mg/m
ポリエチルアクリレートラテックス 100mg/m
ラテックス共重合体 100mg/m
(メチルアクリレートと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩と2−アセトキシエチルメタクリレートの共重合体(質量比88:5:7))
コアシェル型ラテックス 100mg/m
コア:スチレン/ブタジエン共重合体(質量比37/63)
シェル:スチレン/2−アセトキシエチルアクリレート(質量比84/16)
(コア/シェル比=50/50)
下記構造式を有する化合物(Cpd−7) 4質量%
(ゼラチンに対して)
【0165】
【化1】

【0166】
(下引層)
下記のようにして支持体上に下引層を設けた(支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)(厚さ100μm)を用いた。PETにはあらかじめ表面親水化処理したものを用いた。)。即ち、上記の乳剤Aの調製に用いた1液中のゼラチンの量を20gとして上記の乳剤Aと同様に調製したものを用いて、支持体上に、ゼラチン0.10g/mになるように下引層を設けた。
【0167】
(ハロゲン化銀乳剤層)
塗布液Aを用いて、上記のように調製した塗布液Aを上記下引層上にAg4.5g/m、ゼラチン0.25g/mになるように塗布してハロゲン化銀乳剤層を設けた。このようにして、支持体上に下引層及びハロゲン化銀乳剤層を有するサンプルNo.101を得た。
【0168】
<サンプルNo.102の調製>
(銀ナノワイヤー分散物の調製)
−銀ナノワイヤー分散物(1)の調製−
予め、下記の添加液A、G、及びHを調製した。
【0169】
〔添加液A〕
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに添加し、その後、1Nのアンモニア水を透明になるまで添加した。そして、全量が100mLになるように純水を添加した。
〔添加液G〕
グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
〔添加液H〕
HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0170】
次に、以下のようにして、銀ナノワイヤー水分散物を調製した。即ち、純水410mLを三口フラスコ内に入れ、20℃にて攪拌しながら、添加液H 82.5mL、及び添加液G 206mLをロートにて添加した(一段目)。この液に、添加液A 206mLを流量2.0mL/min、攪拌回転数800rpmで添加した(二段目)。その10分後、添加液Hを82.5mL添加した。その後、3℃/分で内温75℃まで昇温した。その後、攪拌回転数を200rpmに落とし、5時間加熱した。
【0171】
得られた水分散物を冷却した後、限外濾過モジュールSIP1013(旭化成株式会社製、分画分子量6,000)、マグネットポンプ、及びステンレスカップをシリコーン製チューブで接続し、ステンレスカップに冷却した水分散物を入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。上記の洗浄を伝導度が50μS/cm以下になるまで繰り返した後、濃縮を行い、銀ナノワイヤー分散物(1)を得た。
【0172】
得られた銀ナノワイヤー分散物(1)に含まれる銀ナノ粒子は、平均径18nm、平均長軸長さ38μmのワイヤー状であった。また、この銀ナノワイヤーの直径の変動係数は22.4%、適切ワイヤー化率は78.7%、銀ナノワイヤーの断面角の鋭利度は44.1であった。
【0173】
サンプルNo.101で用いた塗布液Aへ、塗布乾燥後の銀ナノワイヤーの塗設量が0.03g/mとなるように銀ナノワイヤー分散物を混合、塗布し、サンプルNo.102を得た。
【0174】
<サンプルNo.103〜106の調製>
サンプルNo.101で用いた塗布液Aへ、塗布乾燥後の銀ナノワイヤーの塗設量が0.003g/m、0.007g/m、0.16g/m、0.24g/mとなるように銀ナノワイヤー分散物を混合、塗布し、サンプルNo.103〜106を得た。
【0175】
<サンプルNo.107の調製>
(導電層用組成物の調製)
上記の銀ナノワイヤー分散物(1)とゼラチンを乾燥後固形分質量比が1:1となるように水と混合して導電層用組成物を調製した。
【0176】
サンプルNo.101の通りに支持体上に下引層及びハロゲン化銀乳剤層を設けた後、上記の通り調製した導電層用組成物を用いて、塗布乾燥後の銀ナノワイヤーの塗設量が0.03g/mとなるように、塗布及び乾燥を行って、サンプルNo.107を得た。
【0177】
<サンプルNo.108〜111の調製>
サンプルNo.107において、塗布乾燥後の銀ナノワイヤーの塗設量が0.003g/m、0.007g/m、0.16g/m、0.24g/mとなるように銀ナノワイヤー分散物を混合、塗布し、サンプルNo.108〜111を得た。
【0178】
<サンプルNo.112の調製>
サンプルNo.101の通りに支持体上に下引層を設けた後、上記の通り調製した導電層用組成物を用いて、塗布乾燥後の銀ナノワイヤーの塗設量が0.03g/mとなるように、塗布及び乾燥を行って、導電層を設けた。その後、この導電層上に、サンプルNo.101と同様にハロゲン化銀乳剤層を設けて、サンプルNo.112を得た。
【0179】
<サンプルNo.113の調製>
サンプルNo.103において、銀ナノワイヤー分散物(1)に代えて、下記の通りに調製した銀ナノワイヤー(2)を用いた以外は、サンプルNo.103と同様に調製を行って、サンプルNo.113を得た。
【0180】
−銀ナノワイヤー分散物(2)の調製−
エチレングリコール30mLを三口フラスコに入れ160℃に加熱した。その後、36mMのポリビニルピロリドン(K−55)、3μMのアセチルアセトナート鉄及び60μMの塩化ナトリウムを有するエチレングリコール溶液18mLと、24mMの硝酸銀を有するエチレングリコール溶液18mLとをそれぞれ毎分1mLの速度で添加した。160℃で60分加熱後室温まで冷却した。水を加えて遠心分離し、伝導度が50μS/cm以下になるまで精製し、銀ナノ粒子の水分散物を得た。
【0181】
得られた銀ナノ粒子は、平均径110nm、平均長軸長さ32μmのワイヤー状であった。また、得られた銀ナノワイヤー(2)の直径の変動係数は86.1%、適切ワイヤー化率は75.6%、銀ナノワイヤーの断面角の鋭利度は45.3であった。
【0182】
得られた銀ナノ粒子の水分散物を遠心分離の後、デカンテーションにより水を除去し、純水を添加し、再分散を行い、その操作を3回繰り返し、銀ナノワイヤーの分散液(2)を得た。この分散液における銀の含有量は、銀1.2質量%であった。
【0183】
<サンプルNo.114の調製>
サンプルNo.103の調製において、導電層用組成物に、導電性酸化物微粒子(SN−100P石原産業製)を、塗布乾燥後に塗設量が0.2g/mとなるようにさらに追加した以外は、サンプルNo.103の調製と同様に行って、サンプルNo.114を得た。
【0184】
<サンプルNo.115の調製>
サンプルNo.103の調製において、導電層用組成物の調製に用いた銀ナノワイヤー分散液(1)に代えて、下記方法にて作製した単層カーボンナノチューブを用いた以外は、No.103の調製と同様に行って、サンプルNo.115を得た。
【0185】
−単層カーボンナノチューブの作製−
特許第3903159号公報の実施例1を参考にして単層カーボンナノチューブ分散液を調製した。即ち、単層カーボンナノチューブ(文献Chemical Physics Letters、2000年、323巻、p.580−585に基づき合成)と、分散剤としてポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体とを、溶媒としてのイソプロピルアルコール/水混合物(混合比3:1)中に加えた。カーボンナノチューブの含有量は0.003質量%、分散剤の含有量は0.05質量%であった。得られたカーボンナノチューブの長軸長さは1〜3μm、短軸径は1〜2nm、アスペクト比は1,000〜1,500であった。
【0186】
<サンプルNo.116〜119の調製>
サンプルNo.102の調製において、塗布液Aの塗布量を、乾燥後の銀量が0.8g/m、1.4g/m、6.8g/m、8.4g/mとなるようにした以外は、サンプルNo.102と同様に行って、サンプルNo.116〜119を得た。
【0187】
<サンプルNo.201〜219の調製>
(露光・現像処理)
上記の通り調製した各試料(サンプルNo.101〜119)に、ライン/スペース=5μm/295μmの現像銀像を与え得る格子状のフォトマスクライン/スペース=295μm/5μm(ピッチ300μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、下記の現像液で現像し、さらに定着液(商品名:CN16X用N3X−R:富士フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスし、下記のカレンダー処理を行って、サンプルNo.201〜219を得た。
【0188】
[現像液の組成]
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037モル/L
N−メチルアミノフェノール 0.016モル/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140モル/L
水酸化ナトリウム 0.360モル/L
臭化ナトリウム 0.031モル/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187モル/L
【0189】
(カレンダー処理)
上記のように現像処理した各サンプルをカレンダー処理した。カレンダーロールは金属ロール(鉄芯+ハードクロムメッキ、ロール直径250mm)からなり、線圧力400kgf/cmをかけてローラー間にサンプルを通した。
【0190】
<サンプルNo.220〜223の調製>
−サンプルNo.220−
カレンダー処理後のサンプルNo.207に対して、スパッタ法を用いて厚さ200nmのITO導電層を形成させたサンプルを作製し、サンプルNo.220を得た。
【0191】
−サンプルNo.221−
サンプルNo.214の調製に用いたサンプルNo.114の調製において、銀ナノワイヤー分散液(1)を用いずにサンプルNo.114と同様に調製し、このようにして得たものを用いて、上記の露光、現像、カレンダー処理及びITO導電層の形成を行って、サンプルNo.221を作製した。
【0192】
−サンプルNo.222−
サンプルNo.220の調製に用いたサンプルNo.107の導電層用組成物の調製において、銀ナノワイヤー分散液(1)を用いなかった以外はサンプルNo.107の調製と同様に行い、サンプルNo.222を作製した。
【0193】
−サンプルNo.223−
サンプルNo.207の調製に用いたサンプルNo.107の調製において、ハロゲン化銀乳剤層及び導電層の形成に用いた塗布液A及び導電層用組成物の粘度及び表面張力の調整を行い、ハロゲン化銀乳剤層及び導電層の形成を同時重層塗布により行った以外はNo.203と同様に行って、サンプルNo.223を作製した。
【0194】
<サンプルNo.224(透明補助電極フィルム)の調製>
特許文献1(特開2009−146747)の実施例を参考に、比較例サンプルNo.224を以下のように作製した。
【0195】
〔第1の補助電極−グリッド状金属補助電極−の形成〕
[ハロゲン化銀乳剤の調製]
反応容器内で下記溶液Aを34℃に保ち、特開昭62−160128号公報記載の混合撹拌装置を用いて高速に撹拌しながら、硝酸(濃度6%)を用いてpHを2.95に調整した。引き続き、ダブルジェット法を用いて下記溶液Bと下記溶液Cを一定の流量で8分6秒間かけて添加した。添加終了後に、炭酸ナトリウム(濃度5%)を用いてpHを5.90に調整し、続いて下記溶液Dと溶液Eを添加した。
【0196】
(溶液A)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 18.7g
塩化ナトリウム 0.31g
溶液I(下記) 1.59mL
純水 1,246mL
【0197】
(溶液B)
硝酸銀 169.9g
硝酸(濃度6%) 5.89mL
純水にて全量を317.1mLとした。
【0198】
(溶液C)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 5.66g
塩化ナトリウム 58.8g
臭化カリウム 13.3g
溶液I(下記) 0.85mL
溶液II(下記) 2.72mL
純水にて全量を317.1mLとした。
【0199】
(溶液D)
2−メチル−4ヒドロキシ−1,3,3a,7−テトラアザインデン 0.56g
純水 112.1mL
【0200】
(溶液E)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 3.96g
溶液I(下記) 0.40mL
純水 128.5mL
【0201】
〈溶液I〉
界面活性剤:ポリイソプロピレンポリエチレンオキシジコハク酸エステルナトリウム塩の10質量%メタノール溶液
【0202】
〈溶液II〉
六塩化ロジウム錯体の10質量%水溶液
【0203】
上記操作終了後に、常法に従い40℃にてフロキュレーション法を用いて脱塩及び水洗処理を施し、溶液Fと防バイ剤を加えて60℃でよく分散し、40℃にてpHを5.90に調整して、最終的に臭化銀を10モル%含む平均粒子径0.09μm、変動係数10%の塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。
【0204】
(溶液F)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 16.5g
純水 139.8mL
【0205】
上記塩臭化銀立方体粒子乳剤に対し、チオ硫酸ナトリウムをハロゲン化銀1モル当たり20mg用い、40℃にて80分間化学増感を行い、化学増感終了後に4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン(TAI)をハロゲン化銀1モル当たり500mg、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モル当たり150mg添加して、ハロゲン化銀乳剤を得た。このハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子とゼラチンの体積比(ハロゲン化銀粒子/ゼラチン)は0.625であった。
【0206】
[塗布]
さらに硬膜剤(H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン)をゼラチン1g当たり200mgの比率となるようにして添加し、また塗布助剤として、界面活性剤(SU−2:スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)・ナトリウム)を添加し、表面張力を調整した。
【0207】
こうして得られた塗布液を、銀換算の目付け量が0.625g/mとなるように、下塗り層を施した厚さ100μm、透過率92%(裏面に反射防止加工)のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材上に塗布した後、50℃、24時間のキュア処理を実施して感光材料を得た。
【0208】
[露光]
得られた感光材料を、メッシュ状のフォトマスク(L/S=5μm/295μm)を介してUV露光器で露光した。
【0209】
[化学現像]
露光した感光材料を、下記現像液(DEV−1)を用いて25℃で60秒間の現像処理を行った後、下記定着液(FIX−1)を用いて25℃で120秒間の定着処理を行った。
【0210】
(DEV−1)
純水 500mL
メトール 2g
無水亜硫酸ナトリウム 80g
ハイドロキノン 4g
ホウ砂 4g
チオ硫酸ナトリウム 10g
臭化カリウム 0.5g
水を加えて全量を1リットルとした。
【0211】
(FIX−1)
純水 750mL
チオ硫酸ナトリウム 250g
無水亜硫酸ナトリウム 15g
氷酢酸 15mL
カリミョウバン 15g
水を加えて全量を1リットルとした。
【0212】
[物理現像]
次に、下記物理現像液(PDEV−1)を用いて30℃で10分間物理現像を行った後、水道水で10分間洗い流して水洗処理を行った。
【0213】
(PDEV−1)
純水 900mL
クエン酸 10g
クエン酸三ナトリウム 1g
アンモニア水(28%) 1.5g
ハイドロキノン 2.3g
硝酸銀 0.23g
水を加えて全量を1000mLとした。
【0214】
[電解めっき]
物理現像処理の後に、下記電解めっき液を用いて25℃で電解銅めっき処理を施した後、水洗、乾燥処理を行った。なお電解銅めっきにおける電流制御は3Aで1分間、次いで1Aで12分間、計13分間かけて実施した。めっき処理終了後に、水道水で10分間洗い流して水洗処理を行い、乾燥風(50℃)を用いてドライ状態になるまで乾燥した。
【0215】
(電解めっき液)
硫酸銅(五水和物) 200g
硫酸 50g
塩化ナトリウム 0.1g
水を加えて全量を1000mLとした。
【0216】
[水洗処理及び乾燥処理]
めっき処理後のフィルムを電子顕微鏡にて観察したところ、フィルム基材上にL/S=14μm/300μmのグリッド状の金属パターンが形成されていることが確認された。このグリッド状の金属パターンから構成された第1の補助電極を有する透明補助電極フィルムを得た。
【0217】
〔第2の補助電極−銀ナノワイヤ補助電極−の形成〕
[銀ナノワイヤの調製]
参考文献であるAdv.Mater.、2002年、14巻、p.833〜837に記載の方法を参考に、還元剤としてエチレングリコール(EG)を、形態制御剤兼保護コロイド剤としてポリビニルピロリドン(PVP:平均分子量40,000)を使用し、かつ核形成工程と粒子成長工程とを分離して粒子形成を行い、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
【0218】
(核形成工程)
反応容器内で160℃に保持したEG液100mLを攪拌しながら、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.5×10−4モル/L)10mLを、一定の流量で10秒間かけて添加した。その後、160℃で5分間保持しながら銀イオンを還元して銀の核粒子を形成した。反応液は、ナノサイズの銀微粒子の表面プラズモン吸収に由来する黄色を呈しており、銀イオンが還元されて銀の微粒子(核粒子)が形成されたことを確認した。
【0219】
(粒子成長工程)
上記核形成工程を終了した後の核粒子を含む反応液を、攪拌しながら170℃に保持し、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0×10−1モル/L)200mLと、PVPのEG溶液(ビニルピロリドン濃度換算:6.0×10−1モル/L)200mLを、ダブルジェット法を用いて一定の流量で210分間かけて添加した。粒子成長工程において、30分毎に反応液を採取して電子顕微鏡で確認したところ、核形成工程で形成された核粒子が時間経過に伴ってワイヤ状の形態に成長しており、粒子成長工程における新たな微粒子の生成は認められなかった。最終的に得られた銀ナノワイヤについて、電子顕微鏡写真を撮影し、300個の銀ナノワイヤ粒子像の長軸方向及び短軸方向の粒径を測定して算術平均を求めた。短軸方向の平均粒径は100nm、長軸方向の平均粒径は21μmであった。
【0220】
(脱塩水洗工程)
上記粒子形成工程を終了した反応液を室温まで冷却した後、分画分子量0.2μmの限外濾過膜を用いて脱塩水洗処理を施すと共に、溶媒をエタノールに置換した。最後に液量を100mLまで濃縮して銀ナノワイヤのEtOH分散液を調製した。
【0221】
[塗布]
上記、第1の補助電極を有する透明補助電極フィルム上に、目付け量が0.25g/mとなるように、銀ナノワイヤのエタノール分散液をスピンコーターを用いて塗布、乾燥して銀ナノワイヤ層を形成した後、カレンダー処理を施した。次いで、ウレタンアクリレートのメチルイソブチルケトン溶液をスピンコーターを用いて塗布、乾燥した。なお、ウレタンアクリレート層の膜厚は、銀ナノワイヤ層を完全に埋没させず、その一部がウレタンアクリレート層から露出する厚さで、かつ銀ナノワイヤ層をフィルム基材に固定化できる厚さに設定した。
【0222】
上記塗布後のフィルムを電子顕微鏡にて観察したところ、第1の補助電極であるグリッド状の金属パターンの開口部を含め、フィルム基材上に第2の補助電極である銀ナノワイヤのネットワークが形成されていることが確認された。
【0223】
以上のようにして、グリッド状の金属パターンから構成された第1の補助電極と、銀ナノワイヤネットワークから構成された第2の補助電極を有する透明補助電極フィルム(サンプルNo.224)を作製した。
【0224】
上記の通り調製したサンプルNo.201〜224について、以下に示す方法で評価し、結果を表1に示した。
【0225】
<導電性1>
得られた各サンプルの表面抵抗を、三菱化学株式会社製Loresta−GP MCP−T600を用いて測定した。
【0226】
<導電性2>
得られた各サンプルのメッシュ開口部の表面抵抗を、デジタルマルチメータ7555(商品名、株式会社横河電子機器社製)を用いて測定した。
【0227】
<透過率>
ガードナー社製ヘイズガードプラスを使用して、得られた各サンプルの全光透過率(%)を測定した。
【0228】
<ヘイズ>
ガードナー社製ヘイズガードプラスを使用して、得られた各サンプルのヘイズを測定した。
【0229】
<密着性>
得られた各サンプルを碁盤目剥離試験(クロスカット試験)により評価した。評価は1mm角の碁盤目100個中のテープ剥離後の残存碁盤目数で判断した。
【0230】
評価基準は、以下の通りである。なお、密着性は、数字が大きいほど優れていることを示す。
【0231】
[評価基準]
1.残存碁盤目数が30未満で、剥離が著しく、実用上問題のあるレベルである。
2.残存碁盤目数が30以上50未満で、剥離が確認でき、実用上問題のあるレベルである。
3.残存碁盤目数が50以上70未満で、剥離が若干見られるが、実用上問題ないレベルである。
4.残存碁盤目数が70以上90未満で、剥離がほとんどなく、実用上問題ないレベルである。
5.残存碁盤目数が90以上で、剥離がほぼ確認できず、実用上問題ないレベルである。
【0232】
<可撓性>
得られた各サンプルの導電層を付与した面を外側にし、直径9mmの金属棒に巻きつけ、15秒間静置させた。巻きつけ前後の各サンプルのメッシュ開口部の表面抵抗を、デジタルマルチメータ7555(商品名、株式会社横河電子機器社製)により測定し、その変化を(巻きつけ後)/(巻きつけ前)×(100%)=抵抗率変化(%)とし、以下の基準で評価した。なお、可撓性は、数字が大きいほど優れていることを示す。
【0233】
[評価基準]
1.抵抗率変化が300%以上で、実用上問題のあるレベルである。
2.抵抗率変化が300%未満150%以上で、実用上問題のあるレベルである。
3.抵抗率変化が150%未満130%以上で、実用上問題ないレベルである。
4.抵抗率変化が130%未満115%以上で、実用上問題ないレベルである。
5.抵抗率変化が115%未満で、実用上問題ないレベルである。
【0234】
【表1】

【0235】
表1の結果から、本発明の導電膜は、優れた導電性、透明性、下地との密着性、及び可撓性を兼ね備え、更に、それが一回塗布にて形成され、銀ナノワイヤーを併用したときに特に顕著な効果が現れることが分かった。このことは、本発明において初めて明らかになったことであり、予測できない驚くべき結果であった。
【0236】
サンプルNo.203では、評価結果は良好であったが、逐次塗布した場合は、下層の導電層との導通が悪くなったためか、導電性が劣る結果となった。
【0237】
サンプルNo.215では、単層カーボンナノチューブを用いても結果は概ね良好であったが、銀ナノワイヤー分散物を用いたときと比較して透明性とメッシュ開口部の導電性においては劣る結果となった。
【0238】
酸化物導電粒子、又はスパッタ法にて導電層を形成したサンプルNo.221及び222は、本発明の実施例と同様の優れた導電性、透明性、下地との密着性、及び可撓性をすべて満たすことは確認できなかった。
【0239】
(エレクトロルミネセンス素子の作製)
上記のように作製されたサンプルNo.201、207、221及び222を分散型無機EL(エレクトロルミネッセンス)素子に組み込み、発光テストを行った。
【0240】
素子の形成としては、平均粒子サイズが0.03μmの顔料を含む反射絶縁層と粒径が50〜60μmである蛍光体粒子を含む発光層とを背面電極となるアルミニウムシート上に塗布し、温風乾燥機を用いて110℃で1時間乾燥した。その後、各サンプル(サンプルNo.201、207、221及び222)を蛍光体層上に重ね、熱圧着してEL素子を形成した。素子を2枚のナイロン6からなる吸水性シートと2枚の防湿フィルムと挟んで熱圧着した。EL素子のサイズは、3cm×5cmであった。
【0241】
(評価)
定周波定電圧電源 CVFT−Dシリーズ(東京精電株式会社製、商品名)を、発光輝度を測定させるための電源として用いた。また、輝度の測定には、輝度計 BM−9(株式会社トプコンテクノハウス製、商品名)を用いた。
【0242】
(結果)
ピーク電圧100V、周波数1,000Hz及び2,000Hzで得た無機EL素子を駆動させ輝度を測定した。その結果を表2に示す。
【0243】
【表2】

【0244】
表2の結果から、本発明の導電膜はメッシュ開口部からの発光に起因し、輝度が向上しているのがわかる。しかし、酸化物導電粒子を追加したサンプルNo.221では、粒子の凝集、表面の凹凸に起因するためか、抵抗値の減少が少なく、その分輝度向上の効果が得られなかった。酸化物導電層をスパッタ法にて形成したサンプルNo.222においては、メッシュ部と開口部で均一にスパッタされなかったこと、又は張り合わせなどの次工程にて面状が悪化してしまったことなどに起因し、やはり輝度向上の効果が得られなかった。
【0245】
(タッチパネルの作製)
本発明のサンプルをタッチパネルの透明導電膜として使用した場合、メッシュ開口部の導電性の向上と、可撓性の向上によりペン入力で文字などの入力情報が途切れることなく直線性に優れ、また、その耐久性に優れることがわかった。
【0246】
<サンプルNo.301〜303の作製>
[表示素子の作製]
−サンプルNo.301−
本発明の感光性組成物を用い、以下のようにして表示素子を作製した。
まず、ガラス基板上にボトムゲート型のTFTを形成し、このTFTを覆う状態でSiからなる絶縁膜を形成した。次に、この絶縁膜に、コンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFTに接続される配線(高さ1.0μm)を絶縁膜上に形成した。
【0247】
次いで、配線の形成による凹凸を平坦化するために、配線による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜上へ平坦化層を形成し、コンタクトホールを形成し、平坦膜Aを得た。
【0248】
次に、平坦膜A上に、コンタクトホールに合わせたパターンを形成したサンプルNo.207を貼り合わせ、TFT−Aを得た(サンプルNo.301)。TFT動作の確認を行ったところ、良好な作動を確認できた。
【0249】
−サンプルNo.302〜303−
サンプルNo.301の作製において、サンプルNo.207に代えて、サンプルNo.221及び222をそれぞれ用いた以外は、サンプルNo.301の作製と同様に行って、TFT−B及びTFT−C(サンプルNo.302及び303)をそれぞれ得た。
【0250】
サンプルNo.302は、TFT動作は同様に確認できたが、No.301に対し、透過率が劣っており、また、サンプルNo.303においては斜め方向の干渉ムラが確認され、表示素子として実用上問題ありと判断した。
【0251】
<サンプルNo.401〜403の作製>
[集積型太陽電池の作製]
−サンプルNo.401−
(アモルファス太陽電池(スーパーストレート型)の作製)
ガラス基板上に、サンプルNo.107の調製と同様に下引層及びハロゲン化銀乳剤層を設け、さらに導電層用組成物を用いて導電層を設け、露光、現像処理を行って、上記ガラス基板上に導電膜を形成した。その上部にプラズマCVD法により膜厚約15nmのp型、膜厚約350nmのi型、膜厚約30nmのn型アモルファスシリコンを形成し、裏面反射電極としてガリウム添加酸化亜鉛層20nm、銀層200nmを形成し、光電変換素子401(サンプルNo.401)を作製した。
【0252】
−サンプルNo.402−
ガラス基板上に、カレンダー処理を行わなかった以外はサンプルNo.221と同様に導電膜を形成し、さらにサンプルNo.401と同様にp型、i型及びn型アモルファスシリコン、酸化亜鉛層並びに銀層を形成して、光電変換素子402(サンプルNo.402)を作製した。
【0253】
−サンプルNo.403−
ガラス基板上に、サンプルNo.101の調製と同様に下引層及びハロゲン化銀乳剤層を設け、さらに導電層用組成物を用いて導電層を設けて、上記ガラス基板上に導電膜を形成し、その後さらにサンプルNo.222と同様にスパッタ法にて酸化物導電層を形成させ、光電変換素子401と同様にして、光電変換素子403(サンプルNo.403)を作製した。
【0254】
<サンプルNo.501〜503の作製>
[CIGS太陽電池(サブストレート型)の作製]
−サンプルNo.501−
ソーダライムガラス基板上に、直流マグネトロンスパッタ法により膜厚500nm程度のモリブデン電極、真空蒸着法により膜厚約2.5μmのカルコパイライト系半導体材料であるCu(In0.6Ga0.4)Se薄膜、溶液析出法により膜厚約50nmの硫化カドミニウム薄膜、MOCVDにより膜厚約50nmの酸化亜鉛薄膜を形成し、その上にサンプルNo.107の調製と同様に下引層及びハロゲン化銀乳剤層を設け、さらに導電層用組成物を用いて導電層を設け、露光、現像により上記ソーダライムガラス基板上に導電膜を形成し、光電変換素子501(サンプルNo.501)を作製した。
【0255】
−サンプルNo.502−
ソーダライムガラス基板上に、サンプルNo.501と同様にモリブデン電極、Cu(In0.6Ga0.4)Se薄膜、硫化カドミニウム薄膜及び酸化亜鉛薄膜を形成し、その後、カレンダー処理を行わなかった以外はサンプルNo.221と同様に、酸化亜鉛薄膜上に導電膜を形成させ、光電変換素子502(サンプルNo.502)を作製した。
【0256】
−サンプルNo.503−
ソーダライムガラス基板上に、サンプルNo.501と同様にモリブデン電極、Cu(In0.6Ga0.4)Se薄膜、硫化カドミニウム薄膜及び酸化亜鉛薄膜を形成し、その後、酸化亜鉛薄膜上にサンプルNo.101の調製と同様に下引層及びハロゲン化銀乳剤層を設け、さらに導電層用組成物を用い、露光、現像により導電層を設け、その後さらにサンプルNo.222と同様にスパッタ法にて導電層上に酸化物導電層を形成させ、光電変換素子503(サンプルNo.503)を作製した。
【0257】
次に、作製した各太陽電池において、以下のようにして変換効率を評価した。結果を表3に示す。
【0258】
<太陽電池特性(変換効率)の評価>
各太陽電池について、ソーラーシミュレーターによりAM1.5、100mW/cmの疑似太陽光を照射することで太陽電池特性(変換効率)を測定した。
【0259】
【表3】

【0260】
表3の結果から、本発明の導電性材料を用いることで、いずれの太陽電池方式においても高い変換効率が得られることが分かった。なお、変換効率に関して、比較例に対して本発明による効果は、数字上は1〜2%の差であるが、この差は当業界では周知の通り重要な差である。
【産業上の利用可能性】
【0261】
本発明の導電膜形成用感光材料は、本発明による導電性材料に好適に利用可能であって、この導電性材料は、高い透明性と高い導電性を有し、保存安定性に優れているので、例えば有機EL素子、IC基板等の多層基板、透明導電膜の形成、プリント配線基板の配線回路、ビアホール充填、部品実装用接着剤;ビルドアップ配線板、プラスチック配線板、プリント配線板、セラミック配線板等の多層配線板に微細な回路パターンや配線板表裏面間を結ぶ方向の微細な導通用孔部の形成、基板上に形成する太陽電池などの各種デバイスなどに幅広く適用される。
【符号の説明】
【0262】
100 基板
200 Mo電極層
300 光吸収層
400 バッファ層
500 透光性電極層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀塩含有乳剤層と、導電性繊維を含有する導電層とを有してなり、
前記導電性繊維の塗設量が、0.005g/m〜0.2g/mであることを特徴とする導電膜形成用感光材料。
【請求項2】
導電性繊維を含有する銀塩含有乳剤層を有する導電膜形成用感光材料であって、
前記銀塩含有乳剤層における銀塩の量が、銀換算で1.0g/m〜7.5g/mであることを特徴とする導電膜形成用感光材料。
【請求項3】
導電性繊維の材料が、金属又はカーボンである請求項1から2のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項4】
導電性繊維の塗設量が、0.005〜0.2g/mである請求項1から3のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項5】
銀塩含有乳剤層と導電層とを同時重層塗布して形成された請求項2から4のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の導電膜形成用感光材料をパターン露光し、現像処理して得たことを特徴とする導電性材料。
【請求項7】
金属銀と導電性繊維とを有する請求項6に記載の導電性材料。
【請求項8】
請求項6に記載の導電性材料を有することを特徴とする表示素子。
【請求項9】
請求項6に記載の導電性材料を有することを特徴とする太陽電池。





【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−65944(P2011−65944A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217372(P2009−217372)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】