説明

導電膜積層部材、電気光学装置、電子機器

【課題】高精細及び高品質な導電膜積層部材を提供する。
【解決手段】本発明の導電膜積層部材は、基板上に形成された第1導電膜と、前記第1導電膜上に形成された第2導電膜と、を有し、前記第2導電膜が、前記第1導電膜よりも幅が狭く、かつ、前記第2導電膜が、断面視において、前記第1導電膜とは反対方向に、凸状に湾曲した表面を有するかまぼこ形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜積層部材、電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に導電膜等のパターン膜を形成する方法としては、例えば、インクジェット法を用いて、パターン膜の材料を含む液状材料を液滴として吐出し、基板上に液滴ドットで連なった機能液を塗布し、塗布された機能液を固化することによりパターン膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−080694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法によって形成されたパターン膜は、微小ドットパターンが互いに重なり合って構成された集合体であるため、ドットパターンの重なりによってパターン膜に段差が形成されてしまう。そうすると、パターン膜に外力が加えられた場合に、段差部分に応力が集中し、パターン膜の剥離やクラック等が発生してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる導電膜積層部材は、基板上に形成された第1導電膜と、前記第1導電膜上に形成された第2導電膜と、を有し、前記第2導電膜の膜幅が、前記第1導電膜の膜幅よりも狭く、かつ、前記第2導電膜が、断面視において、前記第1導電膜とは反対方向に、凸状に湾曲した表面を有するかまぼこ形状であることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第2導電膜は、基板に接触せず、また、第1導電膜の端部にかからない形態を有するため、応力等による膜の剥離等の発生を抑制することができる。さらに、第2導電膜は、略かまぼこ形状のため、応力等によるクラック等の発生を抑制することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる導電膜積層部材では、前記第2導電膜の膜幅が、前記第1導電膜の膜幅方向における両端部から各0.5〜5um狭いことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、さらに、第2導電膜の剥離やクラック等の抑制ができ、信頼性の高い導電膜積層部材を提供することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる導電膜積層部材では、前記第2導電膜の厚みが、0.2〜2umであり、かつ、前記第2導電膜の断面視における端部の角度が、0.5〜10°であることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、さらに、膜の剥離やクラック等の抑制ができ、信頼性の高い導電膜積層部材を提供することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる導電膜積層部材では、前記第1導電膜が、透明性を有する導電膜であり、前記第2導電膜が、銀を含む導電膜である、ことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、透明性を有する導電膜上に銀の導電膜が積層されるため、例えば、第1導電膜の電気抵抗率が比較的高い場合であっても、第1導電膜上に銀を含む第2導電膜が形成されるため、積層された導電膜全体として電気抵抗率を低減することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる導電膜積層部材では、前記第1導電膜及び前記第2導電膜上に形成された保護膜を有し、前記第1導電膜と前記第1導電膜上に形成された前記第2導電膜と前記第2導電膜上に形成された前記保護膜とで積層された3層積層部と、前記第1導電膜の膜幅方向の端部であって、前記第1導電膜と前記第1導電膜上に形成された前記保護膜とで積層された2層積層部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、3層積層部では、保護膜によって第2導電膜の表面が覆われる。また、2層積層部では、第1導電膜と保護膜とが密着するため、確実に第2導電膜が封じ込められる。これにより、外部環境下において第2導電膜が確実に保護される。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる導電膜積層部材では、前記第1導電膜と前記保護膜が、同じ材料であることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1導電膜と保護膜との密着性をさらに向上させることができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例にかかる導電膜積層部材では、前記第2導電膜が、前記基板の表面に撥水化処理を施すとともに、前記第1導電膜の表面に、前記基板における撥水力よりも弱い撥水化処理を施し、前記第1導電膜上に、前記第2導電膜の材料を含む液状材料を塗布することにより形成されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第1導電膜よりも幅が狭く、かつ、かまぼこ形状の第2電極膜が形成され、応力等による膜の剥離やクラックの発生を抑制することができる。
【0020】
[適用例8]本適用例にかかる電気光学装置は、上記の導電膜積層部材を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、信頼性の高い導電膜積層部材を備えた電気光学装置を提供することができる。この場合、電気光学装置は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等がこれに該当する。
【0022】
[適用例9]本適用例にかかる電子機器は、上記電気光学装置を搭載したことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、信頼性の高い電気光学装置を搭載した電子機器を提供することができる。この場合、電子機器は、例えば、カラーフィルター、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)を搭載したテレビ受像機、パーソナルコンピューター、携帯電子機器、その他、各種の電子製品がこれに該当する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】導電膜積層部材としてのタッチパネルの構成を示す平面図。
【図2】導電膜積層部材としてのタッチパネルの構成を示す断面図。
【図3】導電膜積層部材としてのタッチパネルの構成を示す断面図。
【図4】タッチパネルの製造方法を示すフローチャート。
【図5】タッチパネルの製造方法の一部を示すフローチャート。
【図6】表面処理装置の構成を示す模式図。
【図7】液滴吐出装置の構成を示す斜視図。
【図8】ピエゾ方式による機能液の吐出原理を示す模式図。
【図9】タッチパネルの製造方法を示す工程図。
【図10】タッチパネルの製造方法を示す工程図。
【図11】基材における接触角の測定データ。
【図12】基材の表面処理状態を示す模式図。
【図13】機能液の塗布状態等を示す模式図。
【図14】電気光学装置としての液晶表示装置の構成を示す平面図及び断面図。
【図15】電子機器としてのパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮尺や数等を異ならせて図示している。
【0026】
(導電膜積層部材の構成)
まず、導電膜積層部材の構成について説明する。なお、本実施形態では、導電膜積層部材としてのタッチパネルを例に挙げて説明する。図1は、タッチパネルの構成を示す平面図である。図2及び図3は、タッチパネルの構成を示す断面図であり、図2は、図1に示したタッチパネルのA−A’断面図であり、図3は、図1に示したタッチパネルのB−B’断面図である。
【0027】
タッチパネル100は、基板1と、基板1上に設けられた入力領域5と、引き回し配線領域6を有する。基板1は、透明性を有し、例えば、石英ガラス、ガラス、プラスチック等である。なお、本実施形態では、ガラス基板1として説明する。ガラス基板1は、平面視において矩形状に成形されている。
【0028】
入力領域5は、図1において一点鎖線で囲まれた領域であり、タッチパネル100に入力される指の位置情報を検出する領域である。入力領域5には、複数のX電極10及び複数のY電極20がそれぞれ配置されている。X電極10は、図示でX軸方向に沿って延在し、且つX電極10は、Y軸方向に互いに間隔をあけて複数配列されている。Y電極20は図示でY軸方向に沿って延在し、それぞれのY電極20は、X軸方向に互いに間隔をあけて配列されている。X電極10及びY電極20は、互いのブリッジ配線を交差させることによって入力領域5内の交差部Kで交差している。
【0029】
X電極10は、X軸方向に配列された複数の島状電極部12と、隣り合う島状電極部12同士を接続するブリッジ配線11を備えている。島状電極部12は平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がX軸に沿うように配置されている。
【0030】
Y電極20は、Y軸方向に配列された複数の島状電極部22と、隣り合う島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21を備えている。島状電極部22は、平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がY軸に沿うように配置されている。島状電極部12と島状電極部22とは、X軸方向及びY軸方向において互い違いに配置(市松状配置)されており、入力領域5では、矩形状の島状電極部12,22が平面視マトリクス状に配置されている。
【0031】
X電極10、Y電極20及びブリッジ配線11,21を構成する材質としては、ITO(インジウムスズ酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物;登録商標)、ZnOなどの透光性を有する抵抗体を採用することができる。
【0032】
引き回し配線領域6は、図1において二点鎖線で囲まれた領域である。引き回し配線領域6には、複数の引き回し配線60が形成されている。各引き回し配線60の一方端は、X電極10またはY電極20と接続され、他方端は、タッチパネル100の内部あるいは外部装置に設けられた駆動部及び電気信号変換/演算部(いずれも図示省略)と接続される。
【0033】
また、引き回し配線領域6は、第1領域6aと第2領域6bとに区分けされている。本実施形態では、駆動部及び電気信号変換/演算部(いずれも図示は省略)と電気的に接続される端子接続部の領域に対応する第1領域6aと、第1領域6a以外の領域に対応する第2領域6bとに区分けされている。
【0034】
タッチパネル100は、図2及び図3に示すように、ガラス基板1の一方面1aに、島状電極部12(図示は省略)、島状電極部22、ブリッジ配線11、引き回し配線60が設けられている。ブリッジ配線11上には、X電極10とY電極20間を絶縁する電極間絶縁膜30が島状電極部22と略面一となる高さで形成されている。そして、電極間絶縁膜30上にブリッジ配線21が配置されている。X電極10のブリッジ配線11は、島状電極部22よりも薄く、例えば1/2程度の厚さに形成されている。これらの電極及び配線を覆うように平坦化膜40が形成されている。平坦化膜40上には、接着層51を介して保護基板50が配置されている。また、ガラス基板1の他方面1bには、シールド層70が設けられている。
【0035】
電極間絶縁膜30は、例えば、ポリシロキサン、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどによって形成される。なお、ポリシロキサンを用いて形成した場合には、電極間絶縁膜30はシリコン酸化物からなる無機絶縁膜となる。一方、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーを採用した場合には、電極間絶縁膜30は樹脂材料からなる有機絶縁膜となる。ここでは、JSR NN525E と、EDM(ジエチレングリコールエチルメチルエーテル)とを4:1(重量比)で混合したインクを用いている。
【0036】
電極間絶縁膜30の構成材料には、比誘電率が4.0以下、望ましくは3.5以下である材料を採用することが好ましい。これにより、ブリッジ配線11,21の交差部Kにおける寄生容量を低減して、タッチパネルの位置検出性能を保持することができる。また、電極間絶縁膜30の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、ガラス基板1やX電極10、Y電極20との屈折率差を小さくすることができ、使用者に電極間絶縁膜30のパターンが見えてしまうのを防止できる。
【0037】
引き回し配線60は、ガラス基板1の一方面1aに配置された第1導電膜60aと、第1導電膜60a上に形成された第2導電膜60bとを有している。そして、第1領域6aでは、引き回し配線60の表面を覆った第1保護膜61が形成されている。また、第2領域6bでは、引き回し配線60の表面を覆った第2保護膜62が形成されている。
【0038】
第1導電膜60aは、透明性を有する透明導電膜である。例えば、ITOやIZOなどの抵抗体である。第2導電膜60bは、Agを主成分とする金属膜である。なお、第2導電膜60bは、第1導電膜60aよりもシート抵抗を小さくすることができるものであれば特に限定されない。例えば、Agの他、Au、Al、Cu、Pdなどの金属、及びカーボン(グラファイト、カーボンナノチューブなどのナノカーボン)のうち1種類以上を成分とする、有機化合物、ナノ粒子、ナノワイヤーなどを用いられる。このように、第1導電膜60aと第2導電膜60bとを積層して導電膜積層構造に形成することにより、引き回し配線60全体として電気抵抗率を低減することができる。
【0039】
また、図3に示すように、第2導電膜60bの膜幅W2は、第1導電膜60aの膜幅W1よりも狭く形成されている。さらに、第2導電膜60bは、断面視において、第1導電膜60aとは反対方向に凸状に湾曲した表面を有するかまぼこ形状を有している。さらに、具体的には、第2導電膜60bの膜幅W2は、第1導電膜の膜幅W1の両端部から各0.5〜5um狭く形成されている。また、第2導電膜60bの厚みHは、0.2〜2umであり、第2導電膜60bの断面視における端部の角度θは、0.5〜10°である。
【0040】
第1保護膜61は、第1導電膜60aの表面及び第2導電膜60bの表面上に形成されている。第1保護膜61は、透明性を有する透明導電膜である。例えば、第1導電膜60aと同じ材料であり、ITOやIZOなどの抵抗体である。ここで、引き回し配線60と第1保護膜61との積層関係において、図3(b)に示すように、第1導電膜60aと第1導電膜60a上に形成された第2導電膜60bと第2導電膜60b上に形成された第1保護膜61とで積層された3層積層部80と、第1導電膜60aの幅方向の端部であって、第1導電膜60aと第1導電膜60a上に形成された第1保護膜61とで積層された2層積層部81と、を有する。2層積層部81では、第1導電膜60aと第1保護膜61との接合部(接触部)が形成されるため、第1導電膜60aと第1保護膜61とによって第2導電膜60bが封じ込められる。これにより、外的環境から第2導電膜60bを保護することができる。
【0041】
第2保護膜62は、第1導電膜60aの表面及び第2導電膜60bの表面上に形成されている。第2保護膜62は、絶縁性を有し、例えば、ポリシロキサン、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどによって形成される。なお、第2領域6bにおける積層構造も上記の第1領域6aにおける積層構造と同様である。具体的には、第1導電膜60aと第1導電膜60a上に形成された第2導電膜60bと第2導電膜60b上に形成された第2保護膜62とで積層された3層積層部と、第1導電膜60aの幅方向の端部であって、第1導電膜60aと第1導電膜60a上に形成された第2保護膜62とで積層された2層積層部と、を有する。2層積層部では、第1導電膜60aと第2保護膜62との接触部が形成されるため、第1導電膜60aと第2保護膜62とによって第2導電膜60bが封じ込められる。
【0042】
平坦化膜40は、X及びY電極10,20及び第2領域6bにおける引き回し配線60(第2保護膜62上)上に形成されている。そして、平坦化膜40上には、接着層51を介して保護基板50が配置されている。また、ガラス基板1の他方面1bには、シールド層70が設けられている。なお、第1領域6aにおける引き回し配線60上には、平坦化膜40及び保護基板50等は設けられていない。第1領域6aにおける引き回し配線60は、駆動部及び電気信号変換/演算部(いずれも図示省略)と接続する必要があるからである。
【0043】
平坦化膜40によりガラス基板1の一方面1a側が平坦化されていることで、ガラス基板1と保護基板50とをほぼ全面にわたって均一に接合することができる。また、平坦化膜40の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、ガラス基板1やX電極10、Y電極20との屈折率差を小さくすることができ、X電極10やY電極20の配線パターンを見えにくくすることができる。
【0044】
保護基板50は、ガラスやプラスチックなどの透明基板である。あるいは、本実施形態のタッチパネル100が液晶パネルや有機ELパネルなどの表示装置の前面に配置される場合には、保護基板50として、表示装置の一部として用いられる光学素子基板(偏光板や位相差板など)を用いることもできる。
【0045】
シールド層70は、ITOやIZO(登録商標)などの透明導電材料をガラス基板1の他方面1bに成膜することで形成される。あるいは、シールド層となる透明導電膜が形成されたフィルムを用意し、かかるフィルムをガラス基板1の他方面1bに接着した構成としてもよい。シールド層70が設けられていることで、ガラス基板1の他方面1b側において電界を遮断する。これにより、タッチパネル100の電界が表示装置等に作用したり、表示装置等の外部機器の電界がタッチパネル100に作用したりするのを防止することができる。なお、本実施形態では、ガラス基板1の他方面1bにシールド層70を形成しているが、シールド層70をガラス基板1の一方面1a側に形成してもよい。
【0046】
ここで、タッチパネル100の動作原理について簡単に説明する。まず、図示は省略の駆動部から、引き回し配線60を介してX電極10及びY電極20に所定の電位を供給する。なお、シールド層70には、例えば、グランドの電位(接地電位)を入力する。
【0047】
上記のように電位が供給された状態で、保護基板50側から入力領域5に向けて手指を近づけると、保護基板50に近づけた手指と、接近位置付近のX電極10及びY電極20のそれぞれとの間に寄生容量が形成される。すると、寄生容量が形成されたX電極10及びY電極20では、この寄生容量を充電するために一時的な電位低下が引き起こされる。
【0048】
駆動部では、各電極の電位をセンシングしており、上述の電位低下が発生したX電極10及びY電極20を即座に検出する。そして、検出された電極の位置を電気信号変換/演算部によって解析することによって、入力領域5における指の位置情報が検出される。具体的には、X軸方向に延在するX電極10によって、手指が接近した位置の入力領域5におけるY座標が検出され、Y軸方向に延在するY電極20によって、入力領域5におけるX座標が検出される。
【0049】
(導電膜積層部材の製造方法)
次に、導電膜積層部材の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、導電膜積層部材としてのタッチパネルの製造方法について説明する。図4は、タッチパネルの製造方法を示すフローチャートである。
【0050】
本実施形態のタッチパネルの製造工程は、ガラス基板1の一方面1aに、島状電極部12,22、ブリッジ配線11、及び引き回し配線60の一部となる第1導電膜60aを形成する電極成膜工程S10と、第1導電膜60a上に第2導電膜60bを形成する第2導電膜形成工程S20と、ブリッジ配線11上に電極間絶縁膜30を形成するとともに、第2領域6bにおける引き回し配線60を覆う第2保護膜62を形成する絶縁膜形成工程S30と、第1領域6aにおける引き回し配線60を覆う第1保護膜61を形成する第1保護膜形成工程S40と、電極間絶縁膜30上を経由して隣り合った島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21を形成するブリッジ配線形成工程S50と、ガラス基板1の一方面1a側を平坦化する平坦化膜40を形成する平坦化膜形成工程S60と、接着層51を介して保護基板50を平坦化膜40と接合する保護基板接合工程S70と、ガラス基板1の他方面1bにシールド層70を形成するシールド層形成工程S80とを含む。
【0051】
また、図5は、タッチパネルの製造方法の一部を示すフローチャートである。すなわち、タッチパネルの製造方法における第2導電膜形成工程S20をさらに詳細に説明するためのフローチャートである。
【0052】
図5に示すように、第2導電膜形成工程S20は、ガラス基板1の一方面1aに第1導電膜60aが形成された基材1’の表面を洗浄する洗浄工程S20aと、基材1’の表面を表面処理する表面処理工程S20bと、第1導電膜60a上に、第2導電膜60bの材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する塗布工程S20cと、機能液が付着した基材1’を放置する放置工程S20dと、塗布された機能液を固化して、第1導電膜60a上に第2導電膜60bを形成する固化工程S20eを有している。
【0053】
なお、本実施形態では、上記表面処理工程S20bにおいて表面処理装置を用い、また、塗布工程S20c等において液滴吐出装置を用いている。そこで、タッチパネルの製造方法の説明に先立ち、表面処理装置および液滴吐出装置について説明する。
【0054】
まず、表面処理装置について説明する。図6は、表面処理装置の構成を示す模式図である。表面処理装置900は、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザンを用いて基材の表面処理を行う装置であり、一般的にHMDS処理を行う装置である。なお、本実施形態では、ガス拡散法による表面処理装置900の構成を示している。表面処理装置900は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)910と、ヘキサメチルジシラザン910が入れられる皿容器920と、皿容器920と基材1’を密閉可能に収容する収容容器930とを有している。そして、表面処理を行う場合には、収容容器930の中に、ヘキサメチルジシラザン910が入れられた皿容器920と、皿容器920の上方に基材1’をそれぞれ設置して、収容容器930を密閉状態とする。そして、ヘキサメチルジシラザン910を気化させ、収容容器930内をヘキサメチルジシラザン910のガス雰囲気下とする。これにより、基材1’とヘキサメチルジシラザン910とが反応し、基材1’の表面処理が行われる。
【0055】
次に、液滴吐出装置について説明する。図7は、液滴吐出装置の構成を示す斜視図である。液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1001と、X軸方向駆動軸1004と、Y軸方向ガイド軸1005と、制御装置CONTと、ステージ1007と、クリーニング機構1008と、基台1009と、ヒーター1015を備えている。
【0056】
ステージ1007は、機能液が塗布されるワークWを支持するものであって、ワークWを基準位置に固定する図示は省略の固定機構を備えている。
【0057】
液滴吐出ヘッド1001は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1001の下面に一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1001の吐出ノズルからは、ステージ1007に支持されているワークWに対して、機能液を液滴として吐出して、ワークW上に機能液を塗布するように構成されている。
【0058】
X軸方向駆動軸1004には、X軸方向駆動モーター1002が接続されている。このX軸方向駆動モーター1002は、ステッピングモーター等からなるもので、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸1004を回転させる。X軸方向駆動軸1004が回転すると、液滴吐出ヘッド1001はX軸方向に移動する。
【0059】
Y軸方向ガイド軸1005は、基台1009に対して動かないように固定されている。ステージ1007は、Y軸方向駆動モーター1003を備えている。Y軸方向駆動モーター1003はステッピングモーター等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ1007をY軸方向に移動する。
【0060】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1001に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モーター1002に液滴吐出ヘッド1001のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モーター1003にステージ1007のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0061】
クリーニング機構1008は、液滴吐出ヘッド1001をクリーニングするものである。クリーニング機構1008には、図示は省略のY軸方向の駆動モーターが備えられている。このY軸方向の駆動モーターの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸1005に沿って移動する。クリーニング機構1008の移動も制御装置CONTにより制御される。
【0062】
ヒーター1015は、ここではランプアニールによりワークWを熱処理する手段であり、ワークW上に配置された機能液に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒーター1015の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0063】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1001とワークWを支持するステージ1007とを相対的に走査しつつ、ワークWに対して、液滴吐出ヘッド1001の下面にX軸方向に配列された複数の吐出ノズルから液滴を吐出するようになっている。
【0064】
図8は、ピエゾ方式による機能液の吐出原理を示す模式図である。図8において、機能液を収容する液体室1021に隣接してピエゾ素子1022が設置されている。液体室1021には、機能液を収容する材料タンクを含む液体材料供給系1023を介して機能液が供給される。ピエゾ素子1022は駆動回路1024に接続されており、この駆動回路1024を介してピエゾ素子1022に電圧を印加し、ピエゾ素子1022を変形させることにより、液体室1021が変形し、吐出ノズル1025から機能液が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0065】
ここで、タッチパネルの製造方法の説明に戻る。図9及び図10は、タッチパネルの製造方法を示す工程図である。
【0066】
まず、電極成膜工程S10では、ガラス基板1上に、X電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)、島状電極部22、及び引き回し配線60の一部を構成する第1導電膜60aを形成する。形成方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法を用いて形成することができる。具体的には、スパッタ法などによりガラス基板1の一方面1aのほぼ全面にITO膜を形成した後、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてITO膜をパターニングすることで、X電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)、島状電極部22、及び引き回し配線60の第1導電膜60aを形成する。なお、フォトリソグラフィー法以外の方法としては、図7に示した液滴吐出装置IJを用いて、インクジェット法により形成することもできる。例えば、ITO粒子を含む機能液を液滴として吐出し、ガラス基板1上に機能液を塗布する。その後、ガラス基板1上に塗布された機能液(液滴)を乾燥・固化させることにより、ガラス基板1上に、ITO粒子の集合体からなるX電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)、島状電極部22、及び引き回し配線60の一部を構成する第1導電膜60aを形成することができる。
【0067】
なお、本実施形態の電極成膜工程S10では、ITO粒子を含有する液滴を吐出することによって、ITO膜を形成しているが、この他にも、IZO(登録商標)の粒子を含有する液滴を用いてIZO(登録商標)からなる透明導電膜を形成してもよい。
【0068】
次に、第2導電膜形成工程S20に移行する。まず、第2導電膜形成工程S20の洗浄工程S20aでは、ガラス基板1上に第1導電膜60aが形成された基材1’を洗浄する。洗浄方法としては、例えば、UV洗浄、プラズマ洗浄、HF(フッ化水素酸)洗浄等で行うことができる。ここで、基材1’の洗浄後におけるガラス基板1の、水に対する接触角は、およそ10°以下であり、第1導電膜60aの、水に対する接触角も、およそ10°以下である。すなわち、基材1’の表面全域が親水化領域となる。
【0069】
次に、表面処理工程S20bでは、図6に示す表面処理装置900を用いて、ガス拡散法によるHMDS処理により基材1’の表面を表面処理する。なお、本実施形態では、表面処理剤としてのヘキサメチルジシラザン((CH33SiNHSi(CH33)910を用いる。具体的には、収容容器930の内部に、ヘキサメチルジシラザン910を貯留した皿容器920を設置するとともに、皿容器920の上方に基材1’を設置する。そして、収容容器930を密閉状態に維持し、ヘキサメチルジシラザン910を気化させたガス雰囲気内に基材1’を曝露させる。
【0070】
基材1’の表面処理条件は、基材1’の構成や、後に塗布される機能液の性質等を考慮し、適宜設定することができる。ここで、表面処理条件について具体例を挙げて説明する。図11は、基材における接触角の測定データである。同図(a)は、横軸に表面処理時間hをとり、縦軸に接触角θをとり、ガラス基板1の表面の、水に対する接触角θ、および、第1導電膜60aの表面の、水に対する接触角θを示した測定データである。同図(b)は、横軸に表面処理時間hをとり、縦軸に接触角θをとり、ガラス基板1の表面の、機能液に対する接触角θ、および、第1導電膜60aの表面の、機能液に対する接触角θを示した測定データである。ここで、表面処理におけるヘキサメチルジシラザン910は、常温(およそ20〜25℃)で気化させた状態である。また、機能液は、銀粒子が分散された水系分散媒を含む液状材料である。図11(a)に示すように、ガラス基板1の表面の、水に対する接触角θは、表面処理開始から20分程度で急激に大きくなり、表面処理時間が3分時点で50°以上となる。そして、表面処理時間が20分以降になると徐々に大きくなっていく。一方、第1導電膜60aの表面の、水に対する接触角θは、表面処理開始から10分程度で急激に大きくなるものの、およそ25°以下に抑えられている。従って、同図(a)から、表面処理(HMDS処理)により、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面)と撥水力の弱い領域(第1導電膜60a)のコントラストが同時期に形成されることが分かる。
【0071】
また、図11(b)に示すように、ガラス基板1の表面の、機能液に対する接触角θは、表面処理開始から10分程度で急激に大きくなり、表面処理時間が3分時点で40°以上となる。そして、表面処理時間が10分以降になると徐々に大きくなっていく。一方、第1導電膜60aの表面の、機能液に対する接触角θは、表面処理開始から10分程度で急激に大きくなるものの、およそ30°以下に抑えられている。従って、同図(b)からも、表面処理(HMDS処理)により、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面)と撥水力の弱い領域(第1導電膜60a)が同時期に形成されることが分かる。
【0072】
以上、図11に示した測定でデータを参考にし、本実施形態における基材1’の表面処理条件は、ヘキサメチルジシラザン910を常温で気化させ、基材1’の曝露時間は、3〜15分程度とした。なお、加工状況に合わせ、例えば、表面処理条件の基材1’の曝露時間を3分以内としてもよいし、15分以上(60分以内)としてもよい。
【0073】
次に、表面処理における基材1’の表面状態について、さらに詳細に説明する。図12は、基材の表面処理状態を示す模式図である。同図(a)は、表面処理前(洗浄工程S20a後)のガラス基板1の表面の状態を示している。この状態において、ガラス基板1の表面は水酸基(−OH)が多数存在しており、水に対して親水性を有している。従って、同図(b)に示すように、ガラス基板1の、水に対する接触角θは、概ね10°以下となる。また、第1導電膜60aの表面に関しても、ガラス基板1の表面状態と同様に、親水性を有し、第1導電膜60aの、水に対する接触角は、概ね10°以下となる。ここで、接触角θは、気中(空気中)において、固体表面(本実施形態では、ガラス基板1の表面,第1導電膜60aの表面)にある液体(本実施形態では、水滴)に対し、気体相・液体相・固体相の3相の接点から引いた液体の接線と、固体表面の成す液体側の角度を、この固体に対する、この液体の接触角θと定義する。従って、接触角が小さいほど、水滴はガラス基板1の面に濡れ広がり、つまり、親水性を示し、接触角が大きいほど、水滴はガラス基板1の面をはじく、つまり、撥水性を示すことになる。
【0074】
図12(c)は、表面処理後のガラス基板1の表面の状態を示している。同図(c)に示すように、ヘキサメチルジシラザン910は、ガラス基板1の表面の水分(−OH)と反応し、アンモニア(NH3)を発生させる。そして、ガラス基板1の表面は、トリメチルシリル化(−Si(CH33)される。すなわち、ガラス基板1の表面が撥水化処理される。従って、同図(d)に示すように、表面処理前に比べ、ガラス基板1の、水に対する接触角θは大きくなり、概ね50°以上となる。一方、第1導電膜60aの表面との反応は遅いため、ガラス基板1における撥水力よりも弱い撥水化処理が施される。すなわち、弱撥水化処理が施される(親水力が保持される)。具体的には、第1導電膜60aの、水に対する接触角は、概ね25°以下となる。このように、当該表面処理工程S20bにより、一の基材1’において、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面領域)と撥水力の弱い領域(第1導電膜60aの表面領域)とを同時期に形成することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン910を用いたが、他に、例えば、トリメチルメトキシシラン(CH3Si(OCH33)、トリメチルクロロシラン((CH33SiCl)等のシラン化合物を用いることもできる。また、本実施形態では、HMDS処理としてガス拡散法を用いたが、他に、例えば、液体状のHMDSを貯留するビンに窒素ガスを吹き込んでバブリングさせ、HMDS蒸気を生じさせ、このHMDS蒸気を基材に噴射するバブリング法を用いてもよい。
【0076】
次に、塗布工程S20cでは、第1導電膜60a上に、第2導電膜60bの材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する。第2導電膜60bの金属材料としては、第1導電膜60aよりも電気抵抗率が低い材料を用いる。例えば、銀粒子を含む金属材料を用いることができる。なお、第2導電膜60bを形成する他の材料としては、銀粒子を含む材料のほか、例えば、Au、Al、Cu、Pdなどの金属粒子を含む材料や、グラファイトやカーボンナノチューブを含む材料を用いることができる。金属粒子やカーボン粒子は、ナノ粒子やナノワイヤーの形態で機能液中に分散される。
【0077】
図13は、塗布工程S20cにおける機能液の塗布状態を示す模式図である。同図(a)に示すように、本実施形態では、液滴吐出装置IJを用いて、機能液を液滴Dとして吐出し、第1導電膜60a上に機能液を塗布する。具体的には、ステージ1007と液滴吐出ヘッド1001を相対的に移動させつつ、液滴吐出ヘッド1001を吐出駆動させることにより、液滴Dを吐出させ、液滴Dを第1導電膜60a上に付着させる。このとき、第1導電膜60aの配線幅、或いは、第1導電膜60aの表面状態を考慮して、液滴Dの液滴量を適宜設定する。なお、図11に示したように、ガラス基板1の、機能液(液滴D)に対する接触角θは、概ね40°以上である。一方、第1導電膜60aの、機能液(液滴D)に対する接触角θは、概ね30°以下である。水に対する接触角と同様に、機能液に対しても、表面処理工程S20bにより、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面領域)と撥水力の弱い領域(第1導電膜60aの表面領域)とのコントラスが保持される。
【0078】
同図(b)は、液滴Dが第1導電膜60a上に着弾された液滴ドットDaの状態を平面視した模式図である。液滴吐出ヘッド1001から吐出された液滴Dは、第1導電膜60a上に着弾され、着弾した液滴ドットDaは、第1導電膜60a上で濡れ広がる。また、塗布工程S20cでは、第1導電膜60a上に塗布された液滴ドットDaが、隣接する他の液滴ドットDaと接触するように、液滴Dを複数回に渡って吐出する。液滴ドットDaは、同図(b)に示すように、隣接する液滴ドットDa同士が数珠状に連なり、第1導電膜60a上に塗布された液体状態の液面が平面視において凸凹形状を有する。なお、塗布された液滴ドットDaは、第1導電膜60a上において濡れ広がるが、ガラス基板1の表面にまでは濡れ広がらない。ガラス基板1の表面は、撥水化処理されているため、第1導電膜60aとの境界部分において液滴ドットDaの濡れ広がりが規制されるからである。なお、塗布工程S20cでは、形成する第2導電膜60bの膜厚を考慮し、適宜塗布量(液滴吐出量)を調整する。
【0079】
次に、放置工程S20dでは、機能液が塗布された基材1’を放置する。例えば、常温で1〜10分程度放置する。図13(c)は、放置後の液体状態を示す模式図である。同図(c)に示すように、第1導電膜60a上に塗布された機能液は、第1導電膜60aのパターン形状に倣った液体状態となる。すなわち、同図13(b)に示す凹凸形状を有する液状態から、第1導電膜60aのパターン形状に倣った液体状態に変化する。本実施形態では、第1導電膜60aの直線的なパターン形状に倣った液体状態に変化する。これは、同図13(b)に示す凹凸形状を有する液体状態において、液滴ドットDa同士が接続される凹部は、第1導電膜60aの表面が弱撥水化(親水化)されているため、第1導電膜60aの配線幅方向に濡れ広がる。一方、凸部は、ガラス基板1の表面が強撥水化処理されているため、第1導電膜60aとガラス基板1との境界部分で機能液がはじかれ、はじかれた機能液は第1導電膜60a側に移動する。こうして放置することにより、機能液が自己整合的に移動して、第1導電膜60aのパターン形状に倣った液体状態を形成する。なお、本放置工程S20dは、第1導電膜60a上に塗布された機能液の自己整合的移動時間を考慮したものであるため、例えば、素早く自己整合的移動が完了する場合等では、省略することも可能である。
【0080】
次に、固化工程S20eでは、塗布された機能液を固化して、第2導電膜60bを形成する。例えば、基材1’を230℃、1時間で加熱し、焼成する。固化工程S20eにおいて、塗布された機能液は、溶媒分が蒸発するとともに、機能液が収縮する。そして、図13(d)に示すように、第1導電膜60a上に、第1導電膜60aの膜幅よりも狭い第2導電膜60bが形成される。本実施形態では、上記の工程を経ることにより、第1導電膜60aよりも膜幅が狭く、かつ、断面視において、第1導電膜60aとは反対方向に、凸状に湾曲した表面を有するかまぼこ形状を有する第2導電膜60bが形成される。さらに詳細には、第1導電膜60aの膜幅方向の両端部から各0.5〜5um狭く、膜厚が、0.2〜2umであり、断面視における端部の角度が、0.5〜10°の第2導電膜60bが形成される。
【0081】
次に、絶縁膜形成工程S30では、図9(c)に示すように、X電極10のブリッジ配線11を埋めるように島状電極部12,22の間の隙間に電極間絶縁膜30を形成する。また、同時期に、第2領域6bにおける引き回し配線60を覆う第2保護膜62を形成する。絶縁膜形成工程S30では、例えば、液滴吐出装置IJを用いて、絶縁膜の材料(例えば、ポリシロキサンを含む液体材料や、アクリル系樹脂、又はアクリルモノマー)を含む機能液を液滴Dして吐出し、上記各領域に機能液を塗布する。そして、塗布された機能液を乾燥・固化することにより、電極間絶縁膜30及び第2保護膜62が形成される。なお、電極間絶縁膜30を形成するに際しては、少なくともブリッジ配線11上の領域において液滴を隙間無く配置することが好ましい。これにより、ブリッジ配線11に達する孔やクラックのない電極間絶縁膜30を形成することができ、電極間絶縁膜30における絶縁不良やブリッジ配線21の断線が防止される。このとき、交差部Kにおける電極間絶縁膜30は、隔壁としての島状電極部22と接していることから表面張力が作用し、両端側が盛り上がる、所謂滲み上がりが抑制された状態で島状電極部22の上面と略面一に成膜される。
【0082】
次に、第1保護膜形成工程S40では、第1領域6aにおける引き回し配線60を覆う第1保護膜61を形成する。例えば、フォトリソグラフィー法を用いて第1保護膜61を形成する。なお、フォトリソグラフィー法で露光した際に、上記のように、第1導電膜60aの表面は、凹凸のない均等な曲面を有しているため、ハレーション等の乱反射の発生が抑制され、高精度なパターン膜形成が可能となる。
【0083】
次に、ブリッジ配線形成工程S50に移行する。ブリッジ配線形成工程S50では、図9(d)に示すように、隣り合って配置された島状電極部22上と電極間絶縁膜30上とにわたって、ITO粒子を含む液体材料の液滴を配線形状に配置する。その後、ガラス基板1上の液体材料を乾燥固化する。これにより、島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21が形成される。ブリッジ配線21の形成時には、上述したように、下地となる交差部Kの電極間絶縁膜30が隔壁(島状電極部22)により輪郭が区画されることで略面一となっているため、ブリッジ配線21は、下地に滲み上がりが生じている場合のように屈曲することなく、直線状に形成される。なお、ブリッジ配線21の形成に用いる液体材料としては、上記したITO粒子を含む液体材料のほか、IZO(登録商標)粒子や、ZnO粒子を含む液体材料を用いて形成することもできる。
【0084】
ブリッジ配線形成工程S50では、電極成膜工程S10と同一の液体材料を用いてブリッジ配線21を形成することが好ましい。すなわち、ブリッジ配線21の構成材料には、X電極10や島状電極部22の構成材料と同一の材料を用いることが好ましい。
【0085】
次に、平坦化膜形成工程S60に移行する。平坦化膜形成工程S60では、図10(a)に示すように、ガラス基板1の一方面1aを平坦化させる目的で、絶縁材料からなる平坦化膜40を一方面1aのほぼ全面に形成する。平坦化膜40は、絶縁膜形成工程S30で用いた電極間絶縁膜30形成用の液体材料と同様の液体材料を用いて形成することができるが、ガラス基板1表面の平坦化を目的としているため、樹脂材料を用いて形成することが好ましい。
【0086】
次に、保護基板接合工程S70に移行する。保護基板接合工程S70では、図10(b)に示すように、別途用意した保護基板50と平坦化膜40との間に接着剤を配置し、かかる接着剤からなる接着層51を介して保護基板50と平坦化膜40とを貼り合わせる。保護基板50は、ガラスやプラスチック等からなる透明基板のほか、偏光板や位相差板などの光学素子基板であってもよい。接着層51を構成する接着剤としては、透明な樹脂材料などを用いることができる。
【0087】
次に、シールド層形成工程S80に移行する。シールド層形成工程S80では、図10(c)に示すように、ガラス基板1の他方面1b(一方面1aとは反対側の面)に導電膜で構成されたシールド層70を形成する。シールド層70は、真空成膜法、スクリーン印刷法、オフセット法、液滴吐出法などの公知の成膜法を用いて形成することができる。例えばシールド層70を液滴吐出法などの印刷法を用いて形成する場合には、電極成膜工程S10、及びブリッジ配線形成工程S50で使用されるITO粒子等を含む液体材料を用いることができる。また、ガラス基板1に対する成膜によりシールド層70を形成する方法のほかにも、一面又は両面に導電膜が成膜されたフィルムを別途用意し、かかるフィルムをガラス基板1の他方面1bに貼り合わせることでフィルム上の導電膜をシールド層70としてもよい。
【0088】
なお、本実施形態では、シールド層70をタッチパネル製造工程の最後に実施することとしているが、シールド層70は任意のタイミングで形成することができる。例えば、予めシールド層70が形成されたガラス基板1を電極成膜工程S10以降の工程に供することもできる。また、電極成膜工程S10〜保護基板接合工程S70までの任意の工程の間にシールド層形成工程を配してもよい。
【0089】
また、本実施形態においては、ガラス基板1の他方面1bにシールド層70を形成しているが、ガラス基板1の一方面1a側にシールド層70Aを形成する場合には、電極成膜工程S10に先立って、シールド層70Aを形成する工程と、絶縁膜を形成する工程とを実行する。この場合にも、シールド層70Aは、シールド層形成工程S80と同様の手法によって形成することができる。また、絶縁膜の形成工程は、例えば絶縁膜形成工程S30と同様とすることができる。
【0090】
(電気光学装置の構成)
次に、電気光学装置の構成について説明する。なお、本実施形態では、電気光学装置としての液晶表示装置であり、上記のタッチパネル100を備えた液晶表示装置の構成について説明する。図14は、液晶表示装置の構成を示し、同図(a)は、平面図であり、同図(b)は、(a)の平面図におけるH−H’断面図である。
【0091】
図14(a)に示すように、液晶表示装置500は、素子基板410、対向基板420、及び画像表示領域410aを有している。素子基板410は対向基板420に比して広い平面領域を有した矩形状の基板である。対向基板420は液晶表示装置500における画像表示側であり、ガラスやアクリル樹脂などで形成された透明な基板である。対向基板420は、シール材452を介して素子基板410の中央部に接合されている。画像表示領域410aは、対向基板420の平面領域であって、シール材452の内周に沿って設けられた周辺見切り453の内側領域である。
【0092】
素子基板410における対向基板420の周辺には、データ線駆動回路401、走査線駆動回路404、データ線駆動回路401及び走査線駆動回路404と接続された接続端子402、及び対向基板420に対して対向して配置された走査線駆動回路404同士を接続する配線405などが配置されている。
【0093】
次に、液晶表示装置500の断面について説明する。素子基板410の液晶層450側の面には、画素電極409及び配向膜418などが積層されている。対向基板420の液晶層450側の面には、遮光膜(ブラックマトリクス)423、カラーフィルター422、共通電極425、及び配向膜429などが積層されている。液晶層450が、素子基板410及び対向基板420によって挟持されている。そして、対向基板420の外側(液晶層450反対側)の面には、接着層101を挟んで本発明のタッチパネル100が配置されている。
【0094】
(電子機器の構成)
次に、電子機器の構成について説明する。なお、本実施形態では、電子機器としてのモバイル型パーソナルコンピューターであり、上記のタッチパネル又はタッチパネルを備えた液晶表示装置を搭載したモバイル型パーソナルコンピューターの構成について説明する。図15は、モバイル型パーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。モバイル型パーソナルコンピューター1100は、表示部1101と、キーボード1102を有する本体部1103とを備えている。モバイル型パーソナルコンピューター1100は、上記実施形態の液晶表示装置500を表示部1101に備えている。このような構成を備えたモバイル型パーソナルコンピューター1100によれば、本発明のタッチパネルが表示部に用いられているので、製造コストを抑えた電子機器とすることができる。
【0095】
なお、上記の電子機器は、本発明の電子機器を例示するものであって、本発明の技術範囲を限定するものではない。例えば、携帯電話、携帯用オーディオ機器、PDA(Personal Digital Assistant)などの表示部にも本発明に係るタッチパネルを好適に用いることができる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0097】
従って、上記の実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0098】
(1)第1導電膜60a上に、第1導電膜60aの膜幅W1よりも狭い膜幅W2を有する第2導電膜60bを備えた。さらに、第2導電膜60bは、凸状に湾曲した表面を有するかまぼこ形状とした。このような積層構造を形成することにより、第2導電膜60bが、ガラス基板1に接触せず、また、第1導電膜60aの端部にかからない形態を有するため、応力等による膜の剥離等の発生を抑制することができる。さらに、応力等によるクラック等の発生を抑制することができる。
【0099】
(2)膜厚が、0.2〜2umであり、かつ、断面視における端部の角度が、0.5〜10°を有する第2導電膜60bを設けた。これにより、さらに、膜の剥離やクラック等の抑制ができ、信頼性の高いタッチパネルを提供することができる。また、第1及び第2導電膜60a,60bを覆う第1保護膜61との関係では、例えば、第1保護膜61をフォトリソ法で形成する際において、露光した場合に、第2導電膜60bにおける乱反射の発生(ハレーション)が低減される。これにより、高精細な積層パターンを有するタッチパネル100を提供することができる。
【0100】
(1)ヘキサメチルジシラザン910を用いて、ガラス基板1上に第1導電膜60aが形成された基材1’の表面処理を行った。そうすると、ヘキサメチルジシラザン910とガラス基板1の表面の水分とが反応し、ガラス基板1の表面がトリメチルシリル化される。すなわち、ガラス基板1の表面が撥水化処理される。一方、第1導電膜60aの表面との反応は遅いため、撥水力は弱い。すなわち、第1導電膜60aの表面は、親水力が保持される。従って、上記表面処理を行うことにより、同時期に、かつ、選択的に撥水化領域と親水化領域を形成することができる。これにより、製造工程を簡略化させることができる。そして、第1導電膜60a上に向けて、第2導電膜60bの材料が分散された水系分散媒を含む機能液を液滴として吐出し、第1導電膜60a上に機能液を塗布させた。第1導電膜60aの表面は、弱撥水性(親水性)を有するため、塗布された機能液は、第1導電膜60a上に濡れ広がる。一方、ガラス基板1の表面は、撥水性を有するため、機能液のガラス基板1側への濡れ広がりが規制される。従って、第1導電膜60aのパターン形状に倣って、機能液を濡れ広がらせることができる。そして、機能液を固化させることにより、第1導電膜60a上に、第1導電膜60aの膜幅W1よりも狭い膜幅W2を有する形状の第2導電膜60bを形成することができる。そして、フォトリソグラフィー法によるパターン膜形成よりも優れた精度で第2導電膜60bを形成できる。これにより、微細な導電膜形成を行うことができる。
【0101】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0102】
(変形例1)上記実施形態では、導電膜積層部材として、タッチパネル100を例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば、他に、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)プラズマディスプレイ等に適用してもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0103】
1…基板、1a…一方面、5…入力領域、6…引き回し配線領域、6a…第1領域、6b…第2領域、60…引き回し配線、60a…第1導電膜、60b…第2導電膜、61…第1保護膜、62…第2保護膜、80…3層積層部、81…2層積層部、100…導電膜積層部材としてのタッチパネル、500…電気光学装置としての液晶表示装置、900…表面処理装置、1001…液滴吐出ヘッド、1100…電子機器としてのモバイル型パーソナルコンピューター、IJ…液滴吐出装置、D…液滴、W1…第1導電膜の膜幅、W2…第2導電膜の膜幅、H…第2導電膜の膜厚、θ…角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された第1導電膜と、
前記第1導電膜上に形成された第2導電膜と、を有し、
前記第2導電膜の膜幅が、前記第1導電膜の膜幅よりも狭く、かつ、
前記第2導電膜が、断面視において、前記第1導電膜とは反対方向に、凸状に湾曲した表面を有するかまぼこ形状であることを特徴とする導電膜積層部材。
【請求項2】
請求項1に記載の導電膜積層部材において、
前記第2導電膜の膜幅が、前記第1導電膜の膜幅方向における両端部から各0.5〜5um狭いことを特徴とする導電膜積層部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の導電膜積層部材において、
前記第2導電膜の厚みが、0.2〜2umであり、かつ、
前記第2導電膜の断面視における端部の角度が、0.5〜10°であることを特徴とする導電膜積層部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電膜積層部材において、
前記第1導電膜が、透明性を有する導電膜であり、
前記第2導電膜が、銀を含む導電膜である、ことを特徴とする導電膜積層部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電膜積層部材において、
前記第1導電膜及び前記第2導電膜上に形成された保護膜を有し、
前記第1導電膜と前記第1導電膜上に形成された前記第2導電膜と前記第2導電膜上に形成された前記保護膜とで積層された3層積層部と、
前記第1導電膜の膜幅方向の端部であって、前記第1導電膜と前記第1導電膜上に形成された前記保護膜とで積層された2層積層部と、を備えたことを特徴とする導電膜積層部材。
【請求項6】
請求項5に記載の導電膜積層部材において、
前記第1導電膜と前記保護膜が、同じ材料であることを特徴とする導電膜積層部材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電膜積層部材において、
前記第2導電膜が、
前記基板の表面に撥水化処理を施すとともに、前記第1導電膜の表面に、前記基板における撥水力よりも弱い撥水化処理を施し、前記第1導電膜上に、前記第2導電膜の材料を含む液状材料を塗布することにより形成されたことを特徴とする導電膜積層部材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電膜積層部材を備えた電気光学装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電気光学装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−64751(P2011−64751A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213008(P2009−213008)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】