小滴分配装置
本発明は、流体注入用の開口部(40)を備えた第一基板(42)と、多数の電極を備えた第二基板(46)とを含む液体分配装置に関する。多数の電極は、前記開口部(40)に少なくとも部分的に対向して配置された移送用電極と称される少なくとも一つの電極(44)と、少なくとも二つの小滴形成用電極(50、52)と、前記移送用電極(44)及び前記小滴形成用電極(50、52)に対応していて、前記小滴形成用電極のそれぞれの面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する、リザーバ電極と称される少なくとも一つの電極(48)とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電力を用いて液体リザーバから、小滴または少量の液体を形成するための装置及び方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、例えば化学的または生物学的な応用を目的として、マイクロ流体工学や小滴の流体工学に適用可能な液体分配装置に関する。
【0003】
本発明は、生化学的、化学的または生物学的な分析を目的として、医療分野、環境監視分野または品質管理分野における、装置内での小滴の形成に適用される。
【背景技術】
【0004】
流体の移動または操作において頻繁に用いられる方法の一つは、非特許文献1に開示されているように、誘電体上でのエレクトロウェッティング(electro−wetting)の原理に基づいている。
【0005】
流体の移動に用いられる力は静電力である。
【0006】
特許文献1には、流体の移動のために、活性化された電極の反対側に配置されたカテナリを用いた装置が開示されている。
【0007】
このタイプの移動の原理について、図1A〜1Cにまとめる。
【0008】
小滴2は電極のネットワーク4上に存在していて、小滴は誘電体層6及び疎水性層8によって電極から離隔されており(図1A)、これら全ては基板9上に存在している。
【0009】
それぞれの電極はスイッチを介して共通電極に接続されているか、または、個別の継電器制御システム11によって接続されている。
【0010】
最初、全ての電極及び対向電極は、基準電位V0に設定されている。
【0011】
小滴2の近傍に位置する電極4−1が活性化されると(継電器11の働きによってV0とは異なる電位V1に設定)、この活性化された電極と小滴との間にある誘電体層6及び疎水性層8は、対向電極10によって分極が引き起こされて、キャパシタとして機能し、静電荷の効果によって、活性化された電極上での小滴の移動が誘発される。対向電極10は特許文献1のようにカテナリであってもよいし、埋設されたワイアであってよいし、収容されたシステムの場合には筐体上の平坦な電極であってもよい。
【0012】
静電起源の力は湿潤力に重ね合わされて、表面上での小滴の拡散が生じる。そうして、表面が親水性にされることになる。
【0013】
従って、小滴を、電極4−1、4−2…を連続的に活性化させることによって、前方に移動させることが可能であり(図1C)、カテナリ10に沿って進む。
【0014】
特許文献1には、平面における小滴の操作のために、近接する一続きの電極を用いることが例示されている。
【0015】
このタイプの装置には二つの実施方法が存在する。
【0016】
第一の場合、図1Aや特許文献1に示されているように、電極のマトリックスを含む基板表面上に、小滴が存在する。
【0017】
第二の方法は、例えば上述の非特許文献1で説明されているように、二つの基板の間に小滴を収容させることによる。
【0018】
第一の場合はオープンなシステムであり、第二の場合は収容されたシステムである。
【0019】
一般的に、システムは、チップ及び制御システムから構成されている。
【0020】
チップは、上述のように電極を含む。
【0021】
電気制御システムは、一組の継電器を含み、そして、スイッチング継電器をプログラムするために用いられるコンピュータまたは自動制御システムを含む。
【0022】
チップは制御システムに電気的に接続されていて、各々の継電器を用いて一つ以上の電極を制御することができる。
【0023】
継電器という手段によって、全ての電極を特定の電位V0またはV1に設定することができる。
【0024】
小滴が電極のライン上を動くようにするために必要なのは、全ての電極を継電器に接続することと、図1A〜1Cにおいて説明したように電極を連続的に作動させることとである。
【0025】
この原理に基づいて、リザーバR(図2A)から小滴を形成することが、このリザーバに接続されている電極E1〜E4のラインという手段によって、可能となる。
【0026】
この一続きの電極E1〜E4の活性化によって、小滴の拡散が生じて、従って、図2Bに示すような液体のセグメント20が生じる。
【0027】
次に、得られた液体のセグメントが、活性化された電極の一つ(図2Cの電極Ec)を非活性化させることによって、分割される。この結果が図2Dに示すような小滴22である。
【0028】
このプロセスは、リザーバRと分割用電極と呼ばれる一つ以上の電極Ec(図2C)との間に電極を挿入することによって、実施可能になる。
【0029】
上述の収容された構成に適用されると、この原理によって、図3A〜3Dに示すような、小滴分配装置用の構成が得られる。
【0030】
分配される液体30は、この装置のウェル35内に配置される(図3A)。例えば、このウェルは、装置の上部カバー36に形成可能である。底部は、図1A〜1Cの構造と同様である。
【0031】
従って、一続きの電極31を用いて、図2A〜2Dを参照して上述したように、この極僅かな液体を取り出して(図3B及び3C)、その後で分割する(図3D)。
【0032】
この方法の欠点は、この動作を確実に再現させることができない点である。
【0033】
あいにく、極僅かな量を形成する時において、また、その後分割する時において、流体のメカニズムは、ウェル35内の圧力に非常に影響される。ウェルが空になるにつれて、圧力は変化し(ウェル内のメニスカスの形状は毛細管の圧力に影響を与え得るし、また、液体の高さも静水圧を変更し得る)、形成される小滴は一定の容量を有していない。
【0034】
【特許文献1】仏国特許発明第2841063号明細書
【非特許文献1】M.G.Pollack、A.D.Shendorov、R.B.Fair、“Electrowetting−based actuation of droplets for integrated microfluidics”、Lab on a Chip、2002年、第2巻、第1号、p.96−101
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0035】
第一に、本発明は、流体注入用の開口部を備えた第一基板と、多数の電極を備えた第二基板とを含む収容型の液体分配装置に関する。この多数の電極は、
‐ 開口部に少なくとも部分的に対向して配置された移送用電極と称される少なくとも一つの電極と、
‐ 少なくとも二つの小滴形成用電極と、
‐ 移送用電極と小滴分配用電極との間に配置されるか、移送用電極及び小滴形成用電極に対応していて、小滴形成用電極のそれぞれの面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する、リザーバ電極と称される少なくとも一つの電極(48)とを含む。
【0036】
本装置はまた、少なくとも一つの第二のリザーバ電極と、隣接する二つのリザーバ電極の間に配置された少なくとも一つの第二の移送用電極とを含みことが可能で、リザーバ電極のそれぞれに対応した少なくとも二つの小滴形成用電極を備える。
【0037】
一変形例によると、本装置はまた、少なくとも一つの第二のリザーバ電極と、開口部に少なくとも部分的に対向して配置された少なくとも一つの第二の移送用電極と、第二のリザーバ電極に対応した少なくとも一つの小滴形成用電極とを含むことが可能である。
【0038】
少なくとも一つの第二のリザーバ電極またはリザーバ電極のそれぞれは、対応する小滴形成用電極の面積の少なくとも三倍に等しい面積を有することが好ましい。
【0039】
従って、本発明はまた、流体注入用の開口部を備えた第一基板と、多数の電極を備えた第二基板とを含む収容型の液体分配装置に関する。この多数の電極は、
‐ その少なくとも一部が開口部に少なくとも部分的に対向して配置されている移送用電極と称される電極とリザーバ電極との交互の組と、
‐ それぞれのリザーバ電極に対応した一続きの小滴形成用電極とを含み、
リザーバ電極の少なくとも一つは、対応する小滴形成用電極のそれぞれの面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する。
【0040】
本発明はまた、流体注入用の開口部を備えた第一基板と、多数の電極を備えた第二基板とを含む収容型の液体分配装置に関する。この多数の電極は、
‐ その少なくとも一部が開口部に少なくとも部分的に対向して配置されている移送用電極と称される多数の電極と、そのそれぞれが一つの移送用電極に対応している多数のリザーバ電極と、
‐ それぞれのリザーバ電極に対応した一続きの小滴形成用電極とを含み、
リザーバ電極の少なくとも一つは、対応する小滴形成用電極のそれぞれの面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する。
【0041】
従って、複数のリザーバ電極を含む本発明による小滴供給システムを形成することが可能である。リザーバ電極のそれぞれは、一続きの小滴形成用電極に対応している。リザーバ電極は、
‐ 液体供給用開口部から直列的に配置され、移送用電極と交互になるか、または、
‐ この開口部の周りに並列的に配置され、そのそれぞれは一つの移送用電極によって供給が行われる。
【0042】
少なくとも一つのリザーバ電極は、小滴形成用電極の面積の少なくとも三倍、10倍または20倍に等しい面積を有することが好ましい。
【0043】
少なくとも一つのリザーバは櫛型であり、その歯の部分は移送用電極側において徐々に細くすることが可能である。
【0044】
一変形例によると、少なくとも一つのリザーバ電極は星型である。
【0045】
本発明による装置は、リザーバ電極と開口部との間に収容壁を含むことが可能であり、少なくとも一つのリザーバ電極の周りに収容壁を含むことさえ可能である。
【0046】
小滴形成用電極の一つは、一方の側が円形で他方が尖っていることが有利である。これによって、小滴放出のメカニズムが容易なものとなり、液体の特性及び装置の作動パラメータ依存性が最小化される。
【0047】
第一基板は導電手段を含むことが可能であり、対向電極を形成する。
【0048】
また、この第一基板は疎水性表面を有することも可能である。
【0049】
第二基板もまた疎水性表面を有することが可能であり、この疎水性表面の下に誘電体層を有することも可能である。
【0050】
本発明はまた、液体のウェルから液体リザーバを形成する方法に関し、
‐ ウェルに少なくとも部分的に対向して配置された移送用電極と称される電極の補助を用いて、所謂リザーバ電極にウェルから液体を完全にまたは部分的に移送する段階を含む。液体リザーバ内の圧力は、ウェル内の液体の圧力に依存しない。
【0051】
或る量の液体が形成された後に移送用電極を非活性化させることを通じて、液体のリザーバ内の圧力は、ウェル内の液体の圧力に依存しないものとされる。
【0052】
本発明はまた、上述の液体リザーバの形成方法と、少なくともn個(n≧2)の小滴形成用電極の活性化によって液体の小滴を形成する段階と、リザーバ電極に近い方のn−1個の電極の中から少なくとも一つを非活性化させて、極僅かな量の液体を取り出す段階とを含む液体の小滴を分配する方法に関する。
【0053】
本発明はまた、上述の装置を用いて液体の小滴を分配する方法であり、リザーバ電極に面するようにまたはその上方に液体リザーバを形成する段階と、n個(n≧2)の小滴形成用電極を活性化させることによって液体の小滴を放出する段階と、リザーバが形成されるリザーバ電極に近い方のn−1個の前記電極の中から少なくとも一つを非活性化させる段階とを含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本発明の第一実施例を図4A及び4Bにそれぞれ、上面図及び側面図として示す。
【0055】
図4Aは、本発明による調整された小滴を分配する装置内に実装された電極のシステムのみを示す。
【0056】
一番左には、まずウェル40が示されており、装置のカバー領域42内に形成されている(図4Bを参照)。
【0057】
このウェルは、移送用電極44の前面に少なくとも部分的に配置されていて、移送用電極は装置の基板46内に形成されている。
【0058】
この移送用電極から続くのは、リザーバ電極48であり、液体保持用マイクロリザーバを形成するために用いられる。
【0059】
次に来るのは、小滴形成用電極であり、図4A及び4Bに示されている形成用電極50、52、54、56を備える。
【0060】
対向電極47はカバー領域42内に配置されている。
【0061】
従って、本発明は、小滴分配装置内の一続きの電極の構成を提案する。これらの電極は異なる機能を有しており、一続きの小滴形成用電極と、それぞれのリザーバ電極に対応した移送用電極とがある。図4Aにおいては、リザーバ電極は移送用電極と小滴形成用電極との間に配置されているが、図8A及び8Bに示すように、他の構成も可能である。
【0062】
第一電極44(移送用電極と呼ぶ)を用いて、リザーバから液体をポンピングすることが可能であり、また、液体を第二電極48(リザーバ電極と呼ぶ)の近傍に運ぶことが可能である。
【0063】
このリザーバ電極上では、特定の量の液体を集めることが可能である。このリザーバ電極は、図4Aでは正方形または矩形の形状を有するものとして示されているが、どのような形状も可能である。分配される小滴の量の少なくとも3倍から4倍の量を集めることが可能であることが好ましい。または、分配されるそれぞれの小滴の量の少なくとも10倍または20倍であることが好ましい。
【0064】
二つの基板42、46の間の距離は実質的に一定なので(図4Bから見て取れるように)、電極48の面積は、小滴形成用電極50、52、54、56のそれぞれの面積の少なくとも3倍から4倍、または、少なくとも10倍または20倍である。
【0065】
稼動時には、移送用電極を用いて、ウェル40内に位置する或る量の液体を、リザーバ電極48の近傍に移動させることが可能である。
【0066】
稼動時にはまた、リザーバ電極48の上方に位置する装置の表面上に、液体が移送される。
【0067】
リザーバ48の上方に位置する領域に供給を継続したいのであれば、電極44を再活性化させ、その後電極48を再活性化させて、このリザーバ領域内に液体を集めることを継続させる。
【0068】
従って、装置内に、多量の液体51(図4B)を集めることが可能である。こうすることの大きな利点は、電極48の上方に集められた液体の圧力が、移送用電極44の非活性化を通じてウェル40内の液体の圧力に依存しないという点である。
【0069】
従って、電極50〜56を用いてこの後に形成可能な小滴自体は、ウェル40内の液体の圧力に依存しない。
【0070】
移送用電極が活性化されない限りは、リザーバ電極48によって形成される液体は、ウェル40に接触していない。従って、この後に電極48の上方に蓄えられた液体から影響され得る小滴の放出または分配は、関連するマイクロ流体構成要素を満たすためにウェル40を用いながらも、調節された方法で実施可能であり、ウェル内の圧力に依存しない。
【0071】
以下は手順の一例である。
【0072】
使用者は、マイクロ流体構成要素内に分配される液体でウェル40を満たす。
【0073】
その後、様々な電極の電気制御を、それぞれの電極に対応した継電器を作動させるコンピュータまたは自動電気制御システムに割り当てる。
【0074】
様々な段階が例えば以下のように続く。
1‐全ての電極は停止状態である(状態0)、
2‐移送用電極44を状態1に設定し、ウェル内の液体をリザーバ電極48の近傍に移動させる、
3‐リザーバ電極48を状態1に設定し、液体がリザーバ電極48の上方の空間を満たす、
4‐移送用電極44を状態0にリセットする。そうして、リザーバ電極に多量の小滴51が形成されるが(図4B)、この小滴は最早ウェルに物理的に接触していない。
5‐形成される新たな小滴のそれぞれに対して、例えば、
5.1‐リザーバ電極48を非活性化させる、
5.2‐分配用電極50〜56の(少なくとも)二つを活性化させる、
5.3‐分配用電極50〜56の少なくとも一つを非活性化させ(電極が二つしかない場合には、電極50を非活性化する)、電極48及び電極52活性化させて、極僅かな量の液体を抽出する。一般的に、リザーバ51から最も離れている分配用電極以外の分配用電極を非活性化させる。
5.4‐リザーバ電極48を活性化させ、分割動作を容易にする。これによって、新たな小滴の形成及び放出が生じる。
【0075】
段階5を繰り返すことによって、一続きの小滴が形成可能である。
【0076】
リザーバ電極が空になるか十分に満たされていなくなると、新たなサイクルを開始させることが可能であり(段階1から5)、ウェル40内に液体を再びポンピングして、移送用電極44という手段によって液体をリザーバ電極に移動させる等と続く。
【0077】
本装置は、少なくとも二つの形成用電極を含むが、他の電極を、マイクロシステム内での小滴の操作のために備え付けることが可能である(図4Aの電極54、56)。
【0078】
ウェルの体積は、その直径(または断面)及び高さによって決まる。特に、ウェルの高さは、1ミリメートルから数ミリメートルのオーダにすることが可能であり、例えば1mmと10mmとの間である。従って、ウェル内に蓄えられる液体の量は多量でありながら、その寸法は(チップ領域に関して)最小化されている。従って、電極の面積を最小化しながらも(特にリザーバ電極48)、多数の小滴を分配することが可能である。例えば、数マイクロリットルの容量のリザーバから、数十ナノリットルの小滴を分配することが可能である。
【0079】
図5Aに示す変形例によると、液体のより良い格納のために、例えば壁60という形態で、収容手段を追加することが可能である。スペーサは樹脂の厚い層であってもよく、例えば感光性樹脂(SU8、Orydl等)の層を用いて、フォトリソグラフィによってパターンを決めることによって、その形状を構造化可能である。従って、複数の電極の周りに壁を形成することが可能である。特に、開口部61を備えた壁が、リザーバ電極48とウェル40との間に形成される。
【0080】
この第一パターンを用いて、リザーバ電極48の液体が毛細管現象によってウェル40に戻ってしまわないようにする。表面が濡れていない限り、つまり電極が活性化されていない限り、収縮作用はバリアとして作用する。壁60の表面は疎水性にされていることが好ましい。
【0081】
図5Bに示すように、入口の開口部61及び出口の開口部63を備えた壁62という形態の収容手段によって、リザーバ電極48全体を格納することが可能である。これによって、リザーバ電極が状態1でないときにおいてもリザーバ内に液体を常に保持することが可能であり、隣接するリザーバ間の汚染の危険性が抑制される。
【0082】
こうした壁または収容手段60、62は上述の5A及び5Bから理解できるものではあるが、装置の二つの基板42、46の間に配置されていることにも留意されたい。
【0083】
他の変形例によると、リザーバ電極48の形状を最適化することが可能であり、小滴形成用電極50〜56に対して液体を一定に平坦化したり引き寄せたりして、小滴分配の手順において、極僅かな量の液体の形成プロセスの開始が常に確実なものになる。
【0084】
図6A及び6Bに示すように、例えば、櫛型または半星型の電極48を用いて、電極表面の勾配を確実にすることが可能である。図9A及び9Bに示すように、尖った形状の電極481を用いることも可能である。実際のところ、絶縁体上でのエレクトロウェッティングは、活性化された電極での液体を拡散させる効果を有していて、電極に関して面積が最大化される液体の位置が生じる。これによって、第一小滴形成用電極50の近傍に液体が“集まる”という効果が生じる。
【0085】
この改善策を用いて、完全にリザーバを空にすることも可能である。
【0086】
櫛型(図6A)、半星型(図6B)、尖った形状(図9A、9B)の先端部分は、四角形であっても尖っていてもよいことには留意されたい。
【0087】
これらの多様な場合において、移送用電極44は、リザーバ電極48に液体を移動させるように設計されている形状を有する。
【0088】
この変形例は図6A及び6Bに示されており、キャビティを形成する収容手段62を備えているが、このような手段を実装せずともよく、単に図5Aの壁を実装することもできる。
【0089】
更に他の変形例によると、前述の変形例の何れかと組み合わせることが可能であり、図7A〜7Cに示すように、電極形成用電極50〜56の形状を最適化することによって、小滴の量の再現性を改善することもできる。
【0090】
分割段階(図7A)において、極僅かな量の液体は、新たな小滴を形成するために分割される。分割時には、将来的な小滴は一方の側では尖った形状を有し、他方ではほぼ球形または角のある形状である(図7B)。球形または角のある形状は、四角形の電極上でのエレクトロウェッティング効果と毛細管力との間の競合によるものである。最後に、小滴の量は、表面張力の値と電極に印加される電圧の値とに大きく依存している。
【0091】
次に、分割時において、小滴はスワンネック形状を取る。
【0092】
このスワンネック形状もまた特定の数のパラメータに依存し、例えば、表面張力、電極に印加される電圧の値、分割用電極の幾何学的形状が挙げられる。
【0093】
これによって、小滴の量は、液体の特性とチップの作動パラメータに依存することになる。
【0094】
この問題に対処するために、一方の側における角の効果を限定する形状を有する小滴形成用電極を形成することが可能であり、スワンネックの形状を制御する。このことは、例えば小滴形状の電極54のような電極を形成することによって達成される。図7Aに示すように、この電極は一方の側では円形54−1であり、他方では尖っている54−2。
【0095】
他の応用例が図8A及び8Bに概略的な上面図として示されている。これらの図においては、図4A〜7Aのように、収容部を形成しその中にウェルが形成されている上面基板は、示されていない。移送用電極、リザーバ電極、小滴形成用電極の分布のみが示されている。
【0096】
図8Aでは、移送用電極101、103、105、107という手段によって、ウェル100が、本発明によるリザーバ電極104、106、108、110に供給を行う。リザーバ電極のそれぞれのアウトプットには、小滴形成用電極が形成されており、全体に対して参照符号154、156、158、160が付されている。一続きの形成用電極のそれぞれは、リザーバ電極に対応している。この例では、リザーバ104、106、108、110はウェルから直列に配置されており、小滴はそれぞれのリザーバから並列に形成される。
【0097】
図8Bでは、移送用電極201、203、205という手段によって並列的に、ウェル200が、本発明によるリザーバ電極204、206、208に供給を行う。リザーバ電極のそれぞれのアウトプットには、小滴形成用電極が形成されており、全体に対して参照符号254、256、258が付されている。ここでもまた、一続きの形成用電極のそれぞれは、リザーバ電極に対応している。この例では、リザーバ204、206、208はウェルに関して並列に配置されており、小滴はそれぞれのリザーバから並列に形成される。
【0098】
ここでもまた、様々な電極の電気制御は、それぞれの電極に対応した継電器を作動させるコンピュータまたは自動電気制御システムによって実施可能である。
【0099】
図8A及び8Bの実施方法を、図5A〜7Cの実施方法の一つ以上と組み合わせることが可能である。リザーバ電極の一つ以上を、図5A及び5Bのように収容手段に合わせることが可能であり、及び/又は、図6A及び6Bのような形状を持たせることが可能である。一方、小滴形成用電極の一つ以上は、図7Aに示すような形状を有することが可能である。
【0100】
どちらの基板においても、マイクロエレクトロニクスにおいて採用されている従来の微細技術という手段によって、Au、Al、ITO、Pt、Cu、Cr等から選択された金属の良質な層を堆積および彫刻することによって、埋設された電極が得られる。電極の厚さは数十ナノメートルから数マイクロメートルであり、例えば、10nmと1μmとの間である。電極50〜56及び移送用電極44に対して、パターンの幅は数μmから数mmである(平坦な電極)。
【0101】
二つの基板42、46は典型的には10μmと100μmまたは500μmとの間の間隔で離隔されている。
【0102】
どの実施例を想定するにしても、液体の放出された小滴は、例えば数ピコリットルと数マイクロリットルとの間の量、また、例えば、1plまたは10plから、5μlまたは10μlまでの間の量を有する。
【0103】
これに加えて、電極50〜56、150、152、154、250、252、254のそれぞれは、輸送される小滴のサイズに従って、例えば数十μm2のオーダ(10μm2から例えば1mm2)の面積を有し、隣接する電極間の間隔は、例えば1μmと10μmとの間である。
【0104】
電極の構造化は、フォトリソグラフィ等の従来の微細技術の方法によって達成可能である。例えば、フォトリソグラフィで金属層(Au、Al、ITO、Pt、Cr、Cu等)を堆積させることによって、電極を形成する。
【0105】
その後、基板を、Si3N4、SiO2等の誘電体層で覆う。最後に、疎水性層を堆積させる。例えば、スピンコーティング法によってテフロン(登録商標)を堆積させる。
【0106】
本発明による装置を組み込んだチップの形成方法は、特許文献1のプロセスから直に導き出せる。
【0107】
導線、特に埋設されたカテナリは、疎水性層の堆積に先立って、導電層を堆積させて、導線に適したパターンへとこの層をエッチングすることによって、形成可能である。
【0108】
特に対向電極が形成可能である上部カバー42に対しては、そうである。
【0109】
様々な電極のそれぞれは、継電器を形成する手段へと接続されており、継電器は、電極を、電圧源によって決定される電位へと引き上げる。全体は、自動電気制御システムまたはコンピュータによって制御される。
【0110】
本発明によるチップ構造の例を図9A及び9Bに示す。
【0111】
一実施例によると、チップは13mm×13mmの寸法を示し、小滴分配用電極は800μm×800μmの寸法を示す。
【0112】
ハッチングされた円盤350、352、354、356、358(図9A)、351、353、355(図9B)は、カバーの穴(ウェル)の位置を示す。円盤360は、廃棄物処理領域を示す。
【0113】
チップの底部には、本発明による主リザーバ400が存在し、第一ラインの電極255に通じている。第一ラインの電極の左端は、廃棄物処理領域360に通じている。このラインを介して、主リザーバ400からエレクトロウェッティングによって、液体の小滴を取り出して、輸送することが可能である。
【0114】
従って、リザーバ400を完全に空にして、直に廃棄物処理領域360に向かわせることによって、リザーバ400を簡単にパージすることが可能である。また、リザーバ400から形成される小滴は、エレクトロウェッティングによって小滴を移動させることが可能なループ402へと送ることもできる。このループのまわりには、副リザーバ350、352、354、356(図9A)または351、353、355(図9B)の集まりが、並列に配置されている。
【0115】
図9A及び9Bは、リザーバ350、352、354、356、351、353、355の形状及び配置が異なる二つのチップ構造である。従って、図9Aのチップは、4つの副リザーバ350、352、354、356を有しており、ウェル毎に外側に通じている。図9Bのチップは、三つの副リザーバ351、353、355を有しており、ウェル毎に外側に通じている。
【0116】
それぞれのリザーバは一組の電極362、364、366、361、363に対応していて、この電極は、一つ以上の小滴を経路402に対応するリザーバから運ぶのに用いられる。同様に、電極から形成されるセクション257を用いて、経路255とループ402を接続することが可能である。
【0117】
参照符号410、411は、経路255、402と様々なリザーバのアウトプットに位置する電極とを構成する電極のアドレス領域またはパッドを示す。この領域またはパッド自体を、電子手段またはコンピュータによって制御することが可能である。
【0118】
リザーバは本発明に従って、設計されており、また使用される。リザーバは一続きの電極を含んでおり、これらを用いて、ウェルからリザーバ電極に或る量の液体を収容させ、小滴の再現性のある分配を可能にする。これに加えて、リザーバは星型または尖った形状の収容手段480、481(リザーバ電極)を含み、本発明に従って、リザーバからの移送用電極の下流に配置されている。
【0119】
こうした構造を用いて、水溶性溶液の小滴を、液体の量に関して高精度で分配することができる。
【0120】
Cv=2×標準偏差/平均値×100として、3%未満のCvが測定された。
【0121】
本発明による小滴分配プロセスにおいては、図9A及び9Bを参照して説明したような装置を採用可能である。
【0122】
主リザーバ400から小滴を生じさせて、経路402に沿って移動させることが可能であり、その経路中に、一つ以上のリザーバ350、352、354、356(図9A)または351、353、355(図9B)からの一つ以上の小滴と混合される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1A】絶縁体上のエレクトロウェッティングにより小滴を操作する原理を示す。
【図1B】絶縁体上のエレクトロウェッティングにより小滴を操作する原理を示す。
【図1C】絶縁体上のエレクトロウェッティングにより小滴を操作する原理を示す。
【図2A】一列の電極上に小滴を形成する周知のプロセス段階を示す。
【図2B】一列の電極上に小滴を形成する周知のプロセス段階を示す。
【図2C】一列の電極上に小滴を形成する周知のプロセス段階を示す。
【図2D】一列の電極上に小滴を形成する周知のプロセス段階を示す。
【図3A】従来技術の装置を示す。
【図3B】従来技術の装置を示す。
【図3C】従来技術の装置を示す。
【図3D】従来技術の装置を示す。
【図4A】本発明による装置の実施例である。
【図4B】本発明による装置の実施例である。
【図5A】本発明による装置の変形例である。
【図5B】本発明による装置の変形例である。
【図6A】本発明による装置の他の変形例である。
【図6B】本発明による装置の他の変形例である。
【図7A】本発明による装置の更に他の変形例を示す。
【図7B】本発明による装置の更に他の変形例を示す。
【図7C】本発明による装置の更に他の変形例を示す。
【図8A】本発明による装置の他の応用例を示す。
【図8B】本発明による装置の他の応用例を示す。
【図9A】本発明による装置の構造を示す。
【図9B】本発明による装置の構造を示す。
【符号の説明】
【0124】
2 小滴
4 電極のネットワーク
4−1,4−2 電極
6 誘電体層
8 疎水性層
9 基板
10 対向基板
20 液体のセグメント
22 小滴
31 電極
30 液体
35 ウェル
36 上部カバー
40 ウェル
42,46 基板
44 移送用電極
47 対向電極
48 リザーバ電極
50,52,54,56 小滴形成用電極
60,62 壁
61,63 開口部
100 ウェル
101,103,105,107 移送用電極
104,106,108,110 リザーバ電極
154,156,158,160 小滴形成用電極
200 ウェル
201,203,205 移送用電極
204,206,208 リザーバ電極
254,256,258 小滴形成用電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電力を用いて液体リザーバから、小滴または少量の液体を形成するための装置及び方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、例えば化学的または生物学的な応用を目的として、マイクロ流体工学や小滴の流体工学に適用可能な液体分配装置に関する。
【0003】
本発明は、生化学的、化学的または生物学的な分析を目的として、医療分野、環境監視分野または品質管理分野における、装置内での小滴の形成に適用される。
【背景技術】
【0004】
流体の移動または操作において頻繁に用いられる方法の一つは、非特許文献1に開示されているように、誘電体上でのエレクトロウェッティング(electro−wetting)の原理に基づいている。
【0005】
流体の移動に用いられる力は静電力である。
【0006】
特許文献1には、流体の移動のために、活性化された電極の反対側に配置されたカテナリを用いた装置が開示されている。
【0007】
このタイプの移動の原理について、図1A〜1Cにまとめる。
【0008】
小滴2は電極のネットワーク4上に存在していて、小滴は誘電体層6及び疎水性層8によって電極から離隔されており(図1A)、これら全ては基板9上に存在している。
【0009】
それぞれの電極はスイッチを介して共通電極に接続されているか、または、個別の継電器制御システム11によって接続されている。
【0010】
最初、全ての電極及び対向電極は、基準電位V0に設定されている。
【0011】
小滴2の近傍に位置する電極4−1が活性化されると(継電器11の働きによってV0とは異なる電位V1に設定)、この活性化された電極と小滴との間にある誘電体層6及び疎水性層8は、対向電極10によって分極が引き起こされて、キャパシタとして機能し、静電荷の効果によって、活性化された電極上での小滴の移動が誘発される。対向電極10は特許文献1のようにカテナリであってもよいし、埋設されたワイアであってよいし、収容されたシステムの場合には筐体上の平坦な電極であってもよい。
【0012】
静電起源の力は湿潤力に重ね合わされて、表面上での小滴の拡散が生じる。そうして、表面が親水性にされることになる。
【0013】
従って、小滴を、電極4−1、4−2…を連続的に活性化させることによって、前方に移動させることが可能であり(図1C)、カテナリ10に沿って進む。
【0014】
特許文献1には、平面における小滴の操作のために、近接する一続きの電極を用いることが例示されている。
【0015】
このタイプの装置には二つの実施方法が存在する。
【0016】
第一の場合、図1Aや特許文献1に示されているように、電極のマトリックスを含む基板表面上に、小滴が存在する。
【0017】
第二の方法は、例えば上述の非特許文献1で説明されているように、二つの基板の間に小滴を収容させることによる。
【0018】
第一の場合はオープンなシステムであり、第二の場合は収容されたシステムである。
【0019】
一般的に、システムは、チップ及び制御システムから構成されている。
【0020】
チップは、上述のように電極を含む。
【0021】
電気制御システムは、一組の継電器を含み、そして、スイッチング継電器をプログラムするために用いられるコンピュータまたは自動制御システムを含む。
【0022】
チップは制御システムに電気的に接続されていて、各々の継電器を用いて一つ以上の電極を制御することができる。
【0023】
継電器という手段によって、全ての電極を特定の電位V0またはV1に設定することができる。
【0024】
小滴が電極のライン上を動くようにするために必要なのは、全ての電極を継電器に接続することと、図1A〜1Cにおいて説明したように電極を連続的に作動させることとである。
【0025】
この原理に基づいて、リザーバR(図2A)から小滴を形成することが、このリザーバに接続されている電極E1〜E4のラインという手段によって、可能となる。
【0026】
この一続きの電極E1〜E4の活性化によって、小滴の拡散が生じて、従って、図2Bに示すような液体のセグメント20が生じる。
【0027】
次に、得られた液体のセグメントが、活性化された電極の一つ(図2Cの電極Ec)を非活性化させることによって、分割される。この結果が図2Dに示すような小滴22である。
【0028】
このプロセスは、リザーバRと分割用電極と呼ばれる一つ以上の電極Ec(図2C)との間に電極を挿入することによって、実施可能になる。
【0029】
上述の収容された構成に適用されると、この原理によって、図3A〜3Dに示すような、小滴分配装置用の構成が得られる。
【0030】
分配される液体30は、この装置のウェル35内に配置される(図3A)。例えば、このウェルは、装置の上部カバー36に形成可能である。底部は、図1A〜1Cの構造と同様である。
【0031】
従って、一続きの電極31を用いて、図2A〜2Dを参照して上述したように、この極僅かな液体を取り出して(図3B及び3C)、その後で分割する(図3D)。
【0032】
この方法の欠点は、この動作を確実に再現させることができない点である。
【0033】
あいにく、極僅かな量を形成する時において、また、その後分割する時において、流体のメカニズムは、ウェル35内の圧力に非常に影響される。ウェルが空になるにつれて、圧力は変化し(ウェル内のメニスカスの形状は毛細管の圧力に影響を与え得るし、また、液体の高さも静水圧を変更し得る)、形成される小滴は一定の容量を有していない。
【0034】
【特許文献1】仏国特許発明第2841063号明細書
【非特許文献1】M.G.Pollack、A.D.Shendorov、R.B.Fair、“Electrowetting−based actuation of droplets for integrated microfluidics”、Lab on a Chip、2002年、第2巻、第1号、p.96−101
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0035】
第一に、本発明は、流体注入用の開口部を備えた第一基板と、多数の電極を備えた第二基板とを含む収容型の液体分配装置に関する。この多数の電極は、
‐ 開口部に少なくとも部分的に対向して配置された移送用電極と称される少なくとも一つの電極と、
‐ 少なくとも二つの小滴形成用電極と、
‐ 移送用電極と小滴分配用電極との間に配置されるか、移送用電極及び小滴形成用電極に対応していて、小滴形成用電極のそれぞれの面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する、リザーバ電極と称される少なくとも一つの電極(48)とを含む。
【0036】
本装置はまた、少なくとも一つの第二のリザーバ電極と、隣接する二つのリザーバ電極の間に配置された少なくとも一つの第二の移送用電極とを含みことが可能で、リザーバ電極のそれぞれに対応した少なくとも二つの小滴形成用電極を備える。
【0037】
一変形例によると、本装置はまた、少なくとも一つの第二のリザーバ電極と、開口部に少なくとも部分的に対向して配置された少なくとも一つの第二の移送用電極と、第二のリザーバ電極に対応した少なくとも一つの小滴形成用電極とを含むことが可能である。
【0038】
少なくとも一つの第二のリザーバ電極またはリザーバ電極のそれぞれは、対応する小滴形成用電極の面積の少なくとも三倍に等しい面積を有することが好ましい。
【0039】
従って、本発明はまた、流体注入用の開口部を備えた第一基板と、多数の電極を備えた第二基板とを含む収容型の液体分配装置に関する。この多数の電極は、
‐ その少なくとも一部が開口部に少なくとも部分的に対向して配置されている移送用電極と称される電極とリザーバ電極との交互の組と、
‐ それぞれのリザーバ電極に対応した一続きの小滴形成用電極とを含み、
リザーバ電極の少なくとも一つは、対応する小滴形成用電極のそれぞれの面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する。
【0040】
本発明はまた、流体注入用の開口部を備えた第一基板と、多数の電極を備えた第二基板とを含む収容型の液体分配装置に関する。この多数の電極は、
‐ その少なくとも一部が開口部に少なくとも部分的に対向して配置されている移送用電極と称される多数の電極と、そのそれぞれが一つの移送用電極に対応している多数のリザーバ電極と、
‐ それぞれのリザーバ電極に対応した一続きの小滴形成用電極とを含み、
リザーバ電極の少なくとも一つは、対応する小滴形成用電極のそれぞれの面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する。
【0041】
従って、複数のリザーバ電極を含む本発明による小滴供給システムを形成することが可能である。リザーバ電極のそれぞれは、一続きの小滴形成用電極に対応している。リザーバ電極は、
‐ 液体供給用開口部から直列的に配置され、移送用電極と交互になるか、または、
‐ この開口部の周りに並列的に配置され、そのそれぞれは一つの移送用電極によって供給が行われる。
【0042】
少なくとも一つのリザーバ電極は、小滴形成用電極の面積の少なくとも三倍、10倍または20倍に等しい面積を有することが好ましい。
【0043】
少なくとも一つのリザーバは櫛型であり、その歯の部分は移送用電極側において徐々に細くすることが可能である。
【0044】
一変形例によると、少なくとも一つのリザーバ電極は星型である。
【0045】
本発明による装置は、リザーバ電極と開口部との間に収容壁を含むことが可能であり、少なくとも一つのリザーバ電極の周りに収容壁を含むことさえ可能である。
【0046】
小滴形成用電極の一つは、一方の側が円形で他方が尖っていることが有利である。これによって、小滴放出のメカニズムが容易なものとなり、液体の特性及び装置の作動パラメータ依存性が最小化される。
【0047】
第一基板は導電手段を含むことが可能であり、対向電極を形成する。
【0048】
また、この第一基板は疎水性表面を有することも可能である。
【0049】
第二基板もまた疎水性表面を有することが可能であり、この疎水性表面の下に誘電体層を有することも可能である。
【0050】
本発明はまた、液体のウェルから液体リザーバを形成する方法に関し、
‐ ウェルに少なくとも部分的に対向して配置された移送用電極と称される電極の補助を用いて、所謂リザーバ電極にウェルから液体を完全にまたは部分的に移送する段階を含む。液体リザーバ内の圧力は、ウェル内の液体の圧力に依存しない。
【0051】
或る量の液体が形成された後に移送用電極を非活性化させることを通じて、液体のリザーバ内の圧力は、ウェル内の液体の圧力に依存しないものとされる。
【0052】
本発明はまた、上述の液体リザーバの形成方法と、少なくともn個(n≧2)の小滴形成用電極の活性化によって液体の小滴を形成する段階と、リザーバ電極に近い方のn−1個の電極の中から少なくとも一つを非活性化させて、極僅かな量の液体を取り出す段階とを含む液体の小滴を分配する方法に関する。
【0053】
本発明はまた、上述の装置を用いて液体の小滴を分配する方法であり、リザーバ電極に面するようにまたはその上方に液体リザーバを形成する段階と、n個(n≧2)の小滴形成用電極を活性化させることによって液体の小滴を放出する段階と、リザーバが形成されるリザーバ電極に近い方のn−1個の前記電極の中から少なくとも一つを非活性化させる段階とを含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本発明の第一実施例を図4A及び4Bにそれぞれ、上面図及び側面図として示す。
【0055】
図4Aは、本発明による調整された小滴を分配する装置内に実装された電極のシステムのみを示す。
【0056】
一番左には、まずウェル40が示されており、装置のカバー領域42内に形成されている(図4Bを参照)。
【0057】
このウェルは、移送用電極44の前面に少なくとも部分的に配置されていて、移送用電極は装置の基板46内に形成されている。
【0058】
この移送用電極から続くのは、リザーバ電極48であり、液体保持用マイクロリザーバを形成するために用いられる。
【0059】
次に来るのは、小滴形成用電極であり、図4A及び4Bに示されている形成用電極50、52、54、56を備える。
【0060】
対向電極47はカバー領域42内に配置されている。
【0061】
従って、本発明は、小滴分配装置内の一続きの電極の構成を提案する。これらの電極は異なる機能を有しており、一続きの小滴形成用電極と、それぞれのリザーバ電極に対応した移送用電極とがある。図4Aにおいては、リザーバ電極は移送用電極と小滴形成用電極との間に配置されているが、図8A及び8Bに示すように、他の構成も可能である。
【0062】
第一電極44(移送用電極と呼ぶ)を用いて、リザーバから液体をポンピングすることが可能であり、また、液体を第二電極48(リザーバ電極と呼ぶ)の近傍に運ぶことが可能である。
【0063】
このリザーバ電極上では、特定の量の液体を集めることが可能である。このリザーバ電極は、図4Aでは正方形または矩形の形状を有するものとして示されているが、どのような形状も可能である。分配される小滴の量の少なくとも3倍から4倍の量を集めることが可能であることが好ましい。または、分配されるそれぞれの小滴の量の少なくとも10倍または20倍であることが好ましい。
【0064】
二つの基板42、46の間の距離は実質的に一定なので(図4Bから見て取れるように)、電極48の面積は、小滴形成用電極50、52、54、56のそれぞれの面積の少なくとも3倍から4倍、または、少なくとも10倍または20倍である。
【0065】
稼動時には、移送用電極を用いて、ウェル40内に位置する或る量の液体を、リザーバ電極48の近傍に移動させることが可能である。
【0066】
稼動時にはまた、リザーバ電極48の上方に位置する装置の表面上に、液体が移送される。
【0067】
リザーバ48の上方に位置する領域に供給を継続したいのであれば、電極44を再活性化させ、その後電極48を再活性化させて、このリザーバ領域内に液体を集めることを継続させる。
【0068】
従って、装置内に、多量の液体51(図4B)を集めることが可能である。こうすることの大きな利点は、電極48の上方に集められた液体の圧力が、移送用電極44の非活性化を通じてウェル40内の液体の圧力に依存しないという点である。
【0069】
従って、電極50〜56を用いてこの後に形成可能な小滴自体は、ウェル40内の液体の圧力に依存しない。
【0070】
移送用電極が活性化されない限りは、リザーバ電極48によって形成される液体は、ウェル40に接触していない。従って、この後に電極48の上方に蓄えられた液体から影響され得る小滴の放出または分配は、関連するマイクロ流体構成要素を満たすためにウェル40を用いながらも、調節された方法で実施可能であり、ウェル内の圧力に依存しない。
【0071】
以下は手順の一例である。
【0072】
使用者は、マイクロ流体構成要素内に分配される液体でウェル40を満たす。
【0073】
その後、様々な電極の電気制御を、それぞれの電極に対応した継電器を作動させるコンピュータまたは自動電気制御システムに割り当てる。
【0074】
様々な段階が例えば以下のように続く。
1‐全ての電極は停止状態である(状態0)、
2‐移送用電極44を状態1に設定し、ウェル内の液体をリザーバ電極48の近傍に移動させる、
3‐リザーバ電極48を状態1に設定し、液体がリザーバ電極48の上方の空間を満たす、
4‐移送用電極44を状態0にリセットする。そうして、リザーバ電極に多量の小滴51が形成されるが(図4B)、この小滴は最早ウェルに物理的に接触していない。
5‐形成される新たな小滴のそれぞれに対して、例えば、
5.1‐リザーバ電極48を非活性化させる、
5.2‐分配用電極50〜56の(少なくとも)二つを活性化させる、
5.3‐分配用電極50〜56の少なくとも一つを非活性化させ(電極が二つしかない場合には、電極50を非活性化する)、電極48及び電極52活性化させて、極僅かな量の液体を抽出する。一般的に、リザーバ51から最も離れている分配用電極以外の分配用電極を非活性化させる。
5.4‐リザーバ電極48を活性化させ、分割動作を容易にする。これによって、新たな小滴の形成及び放出が生じる。
【0075】
段階5を繰り返すことによって、一続きの小滴が形成可能である。
【0076】
リザーバ電極が空になるか十分に満たされていなくなると、新たなサイクルを開始させることが可能であり(段階1から5)、ウェル40内に液体を再びポンピングして、移送用電極44という手段によって液体をリザーバ電極に移動させる等と続く。
【0077】
本装置は、少なくとも二つの形成用電極を含むが、他の電極を、マイクロシステム内での小滴の操作のために備え付けることが可能である(図4Aの電極54、56)。
【0078】
ウェルの体積は、その直径(または断面)及び高さによって決まる。特に、ウェルの高さは、1ミリメートルから数ミリメートルのオーダにすることが可能であり、例えば1mmと10mmとの間である。従って、ウェル内に蓄えられる液体の量は多量でありながら、その寸法は(チップ領域に関して)最小化されている。従って、電極の面積を最小化しながらも(特にリザーバ電極48)、多数の小滴を分配することが可能である。例えば、数マイクロリットルの容量のリザーバから、数十ナノリットルの小滴を分配することが可能である。
【0079】
図5Aに示す変形例によると、液体のより良い格納のために、例えば壁60という形態で、収容手段を追加することが可能である。スペーサは樹脂の厚い層であってもよく、例えば感光性樹脂(SU8、Orydl等)の層を用いて、フォトリソグラフィによってパターンを決めることによって、その形状を構造化可能である。従って、複数の電極の周りに壁を形成することが可能である。特に、開口部61を備えた壁が、リザーバ電極48とウェル40との間に形成される。
【0080】
この第一パターンを用いて、リザーバ電極48の液体が毛細管現象によってウェル40に戻ってしまわないようにする。表面が濡れていない限り、つまり電極が活性化されていない限り、収縮作用はバリアとして作用する。壁60の表面は疎水性にされていることが好ましい。
【0081】
図5Bに示すように、入口の開口部61及び出口の開口部63を備えた壁62という形態の収容手段によって、リザーバ電極48全体を格納することが可能である。これによって、リザーバ電極が状態1でないときにおいてもリザーバ内に液体を常に保持することが可能であり、隣接するリザーバ間の汚染の危険性が抑制される。
【0082】
こうした壁または収容手段60、62は上述の5A及び5Bから理解できるものではあるが、装置の二つの基板42、46の間に配置されていることにも留意されたい。
【0083】
他の変形例によると、リザーバ電極48の形状を最適化することが可能であり、小滴形成用電極50〜56に対して液体を一定に平坦化したり引き寄せたりして、小滴分配の手順において、極僅かな量の液体の形成プロセスの開始が常に確実なものになる。
【0084】
図6A及び6Bに示すように、例えば、櫛型または半星型の電極48を用いて、電極表面の勾配を確実にすることが可能である。図9A及び9Bに示すように、尖った形状の電極481を用いることも可能である。実際のところ、絶縁体上でのエレクトロウェッティングは、活性化された電極での液体を拡散させる効果を有していて、電極に関して面積が最大化される液体の位置が生じる。これによって、第一小滴形成用電極50の近傍に液体が“集まる”という効果が生じる。
【0085】
この改善策を用いて、完全にリザーバを空にすることも可能である。
【0086】
櫛型(図6A)、半星型(図6B)、尖った形状(図9A、9B)の先端部分は、四角形であっても尖っていてもよいことには留意されたい。
【0087】
これらの多様な場合において、移送用電極44は、リザーバ電極48に液体を移動させるように設計されている形状を有する。
【0088】
この変形例は図6A及び6Bに示されており、キャビティを形成する収容手段62を備えているが、このような手段を実装せずともよく、単に図5Aの壁を実装することもできる。
【0089】
更に他の変形例によると、前述の変形例の何れかと組み合わせることが可能であり、図7A〜7Cに示すように、電極形成用電極50〜56の形状を最適化することによって、小滴の量の再現性を改善することもできる。
【0090】
分割段階(図7A)において、極僅かな量の液体は、新たな小滴を形成するために分割される。分割時には、将来的な小滴は一方の側では尖った形状を有し、他方ではほぼ球形または角のある形状である(図7B)。球形または角のある形状は、四角形の電極上でのエレクトロウェッティング効果と毛細管力との間の競合によるものである。最後に、小滴の量は、表面張力の値と電極に印加される電圧の値とに大きく依存している。
【0091】
次に、分割時において、小滴はスワンネック形状を取る。
【0092】
このスワンネック形状もまた特定の数のパラメータに依存し、例えば、表面張力、電極に印加される電圧の値、分割用電極の幾何学的形状が挙げられる。
【0093】
これによって、小滴の量は、液体の特性とチップの作動パラメータに依存することになる。
【0094】
この問題に対処するために、一方の側における角の効果を限定する形状を有する小滴形成用電極を形成することが可能であり、スワンネックの形状を制御する。このことは、例えば小滴形状の電極54のような電極を形成することによって達成される。図7Aに示すように、この電極は一方の側では円形54−1であり、他方では尖っている54−2。
【0095】
他の応用例が図8A及び8Bに概略的な上面図として示されている。これらの図においては、図4A〜7Aのように、収容部を形成しその中にウェルが形成されている上面基板は、示されていない。移送用電極、リザーバ電極、小滴形成用電極の分布のみが示されている。
【0096】
図8Aでは、移送用電極101、103、105、107という手段によって、ウェル100が、本発明によるリザーバ電極104、106、108、110に供給を行う。リザーバ電極のそれぞれのアウトプットには、小滴形成用電極が形成されており、全体に対して参照符号154、156、158、160が付されている。一続きの形成用電極のそれぞれは、リザーバ電極に対応している。この例では、リザーバ104、106、108、110はウェルから直列に配置されており、小滴はそれぞれのリザーバから並列に形成される。
【0097】
図8Bでは、移送用電極201、203、205という手段によって並列的に、ウェル200が、本発明によるリザーバ電極204、206、208に供給を行う。リザーバ電極のそれぞれのアウトプットには、小滴形成用電極が形成されており、全体に対して参照符号254、256、258が付されている。ここでもまた、一続きの形成用電極のそれぞれは、リザーバ電極に対応している。この例では、リザーバ204、206、208はウェルに関して並列に配置されており、小滴はそれぞれのリザーバから並列に形成される。
【0098】
ここでもまた、様々な電極の電気制御は、それぞれの電極に対応した継電器を作動させるコンピュータまたは自動電気制御システムによって実施可能である。
【0099】
図8A及び8Bの実施方法を、図5A〜7Cの実施方法の一つ以上と組み合わせることが可能である。リザーバ電極の一つ以上を、図5A及び5Bのように収容手段に合わせることが可能であり、及び/又は、図6A及び6Bのような形状を持たせることが可能である。一方、小滴形成用電極の一つ以上は、図7Aに示すような形状を有することが可能である。
【0100】
どちらの基板においても、マイクロエレクトロニクスにおいて採用されている従来の微細技術という手段によって、Au、Al、ITO、Pt、Cu、Cr等から選択された金属の良質な層を堆積および彫刻することによって、埋設された電極が得られる。電極の厚さは数十ナノメートルから数マイクロメートルであり、例えば、10nmと1μmとの間である。電極50〜56及び移送用電極44に対して、パターンの幅は数μmから数mmである(平坦な電極)。
【0101】
二つの基板42、46は典型的には10μmと100μmまたは500μmとの間の間隔で離隔されている。
【0102】
どの実施例を想定するにしても、液体の放出された小滴は、例えば数ピコリットルと数マイクロリットルとの間の量、また、例えば、1plまたは10plから、5μlまたは10μlまでの間の量を有する。
【0103】
これに加えて、電極50〜56、150、152、154、250、252、254のそれぞれは、輸送される小滴のサイズに従って、例えば数十μm2のオーダ(10μm2から例えば1mm2)の面積を有し、隣接する電極間の間隔は、例えば1μmと10μmとの間である。
【0104】
電極の構造化は、フォトリソグラフィ等の従来の微細技術の方法によって達成可能である。例えば、フォトリソグラフィで金属層(Au、Al、ITO、Pt、Cr、Cu等)を堆積させることによって、電極を形成する。
【0105】
その後、基板を、Si3N4、SiO2等の誘電体層で覆う。最後に、疎水性層を堆積させる。例えば、スピンコーティング法によってテフロン(登録商標)を堆積させる。
【0106】
本発明による装置を組み込んだチップの形成方法は、特許文献1のプロセスから直に導き出せる。
【0107】
導線、特に埋設されたカテナリは、疎水性層の堆積に先立って、導電層を堆積させて、導線に適したパターンへとこの層をエッチングすることによって、形成可能である。
【0108】
特に対向電極が形成可能である上部カバー42に対しては、そうである。
【0109】
様々な電極のそれぞれは、継電器を形成する手段へと接続されており、継電器は、電極を、電圧源によって決定される電位へと引き上げる。全体は、自動電気制御システムまたはコンピュータによって制御される。
【0110】
本発明によるチップ構造の例を図9A及び9Bに示す。
【0111】
一実施例によると、チップは13mm×13mmの寸法を示し、小滴分配用電極は800μm×800μmの寸法を示す。
【0112】
ハッチングされた円盤350、352、354、356、358(図9A)、351、353、355(図9B)は、カバーの穴(ウェル)の位置を示す。円盤360は、廃棄物処理領域を示す。
【0113】
チップの底部には、本発明による主リザーバ400が存在し、第一ラインの電極255に通じている。第一ラインの電極の左端は、廃棄物処理領域360に通じている。このラインを介して、主リザーバ400からエレクトロウェッティングによって、液体の小滴を取り出して、輸送することが可能である。
【0114】
従って、リザーバ400を完全に空にして、直に廃棄物処理領域360に向かわせることによって、リザーバ400を簡単にパージすることが可能である。また、リザーバ400から形成される小滴は、エレクトロウェッティングによって小滴を移動させることが可能なループ402へと送ることもできる。このループのまわりには、副リザーバ350、352、354、356(図9A)または351、353、355(図9B)の集まりが、並列に配置されている。
【0115】
図9A及び9Bは、リザーバ350、352、354、356、351、353、355の形状及び配置が異なる二つのチップ構造である。従って、図9Aのチップは、4つの副リザーバ350、352、354、356を有しており、ウェル毎に外側に通じている。図9Bのチップは、三つの副リザーバ351、353、355を有しており、ウェル毎に外側に通じている。
【0116】
それぞれのリザーバは一組の電極362、364、366、361、363に対応していて、この電極は、一つ以上の小滴を経路402に対応するリザーバから運ぶのに用いられる。同様に、電極から形成されるセクション257を用いて、経路255とループ402を接続することが可能である。
【0117】
参照符号410、411は、経路255、402と様々なリザーバのアウトプットに位置する電極とを構成する電極のアドレス領域またはパッドを示す。この領域またはパッド自体を、電子手段またはコンピュータによって制御することが可能である。
【0118】
リザーバは本発明に従って、設計されており、また使用される。リザーバは一続きの電極を含んでおり、これらを用いて、ウェルからリザーバ電極に或る量の液体を収容させ、小滴の再現性のある分配を可能にする。これに加えて、リザーバは星型または尖った形状の収容手段480、481(リザーバ電極)を含み、本発明に従って、リザーバからの移送用電極の下流に配置されている。
【0119】
こうした構造を用いて、水溶性溶液の小滴を、液体の量に関して高精度で分配することができる。
【0120】
Cv=2×標準偏差/平均値×100として、3%未満のCvが測定された。
【0121】
本発明による小滴分配プロセスにおいては、図9A及び9Bを参照して説明したような装置を採用可能である。
【0122】
主リザーバ400から小滴を生じさせて、経路402に沿って移動させることが可能であり、その経路中に、一つ以上のリザーバ350、352、354、356(図9A)または351、353、355(図9B)からの一つ以上の小滴と混合される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1A】絶縁体上のエレクトロウェッティングにより小滴を操作する原理を示す。
【図1B】絶縁体上のエレクトロウェッティングにより小滴を操作する原理を示す。
【図1C】絶縁体上のエレクトロウェッティングにより小滴を操作する原理を示す。
【図2A】一列の電極上に小滴を形成する周知のプロセス段階を示す。
【図2B】一列の電極上に小滴を形成する周知のプロセス段階を示す。
【図2C】一列の電極上に小滴を形成する周知のプロセス段階を示す。
【図2D】一列の電極上に小滴を形成する周知のプロセス段階を示す。
【図3A】従来技術の装置を示す。
【図3B】従来技術の装置を示す。
【図3C】従来技術の装置を示す。
【図3D】従来技術の装置を示す。
【図4A】本発明による装置の実施例である。
【図4B】本発明による装置の実施例である。
【図5A】本発明による装置の変形例である。
【図5B】本発明による装置の変形例である。
【図6A】本発明による装置の他の変形例である。
【図6B】本発明による装置の他の変形例である。
【図7A】本発明による装置の更に他の変形例を示す。
【図7B】本発明による装置の更に他の変形例を示す。
【図7C】本発明による装置の更に他の変形例を示す。
【図8A】本発明による装置の他の応用例を示す。
【図8B】本発明による装置の他の応用例を示す。
【図9A】本発明による装置の構造を示す。
【図9B】本発明による装置の構造を示す。
【符号の説明】
【0124】
2 小滴
4 電極のネットワーク
4−1,4−2 電極
6 誘電体層
8 疎水性層
9 基板
10 対向基板
20 液体のセグメント
22 小滴
31 電極
30 液体
35 ウェル
36 上部カバー
40 ウェル
42,46 基板
44 移送用電極
47 対向電極
48 リザーバ電極
50,52,54,56 小滴形成用電極
60,62 壁
61,63 開口部
100 ウェル
101,103,105,107 移送用電極
104,106,108,110 リザーバ電極
154,156,158,160 小滴形成用電極
200 ウェル
201,203,205 移送用電極
204,206,208 リザーバ電極
254,256,258 小滴形成用電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体注入用の開口部(40)を備えた第一基板(42)と、多数の電極を備えた第二基板(46)とを含む液体分配装置であり、前記多数の電極は、
‐ 前記開口部(40)に少なくとも部分的に対向して配置された移送用電極と称される少なくとも一つの電極(44)と、
‐ 少なくとも二つの小滴形成用電極(50、52)と、
‐ 前記移送用電極(44)及び前記小滴形成用電極(50、52)に対応していて、前記小滴形成用電極のそれぞれの面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する、リザーバ電極と称される少なくとも一つの電極(48)とを含む装置。
【請求項2】
少なくとも一つの第二のリザーバ電極(104、106、108、110)と、隣接する二つの前記リザーバ電極の間に、または、隣接する二つ前記リザーバ電極に対応して、配置された少なくとも一つの第二の移送用電極(101、103、105、107)とを更に含み、前記リザーバ電極のそれぞれに対応した少なくとも二つの小滴形成用電極(154、156、158、160)を備えた請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも一つの第二のリザーバ電極(204、206、208)と、前記開口部(40)に少なくとも部分的に対向して配置された少なくとも一つの第二の移送用電極(201、203、205)と、前記第二のリザーバ電極に対応した少なくとも一つの小滴形成用電極(254、256、258)とを更に含む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの第二のリザーバ電極は、対応する前記小滴形成用電極の面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する請求項2または請求項3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記リザーバ電極(48)の少なくとも一つは、対応する前記小滴形成用電極の面積の少なくとも十倍に等しい面積を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記リザーバ電極の少なくとも一つは櫛型または尖った形状を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記櫛型または尖った形状は、前記移送用電極側において徐々に細くなる歯の部分を有する請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記リザーバ電極の少なくとも一つは星型である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも一つのリザーバ電極と前記開口部(40)との間に収容壁(60)を含む請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも一つのリザーバ電極のまわりに少なくとも一つの収容壁(62)を含む請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記小滴形成用電極の少なくとも一つは、一方の側が円形で、他方が尖っている請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記第一基板は導電手段(47)を含む請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記第一基板(42)は疎水性表面を有する請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記第二基板は疎水性表面(8)を有する請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第二基板は前記疎水性表面(8)の下に誘電体層を有する請求項14に記載の装置。
【請求項16】
ループ(402)の形状に配置され、エレクトロウェッティングによって小滴を移動させる手段を更に含む請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記ループ(402)のまわりに配置された一つ以上の副リザーバ(350、352、354、356、358、351、353、355)を更に含む請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記副リザーバのそれぞれは、一つ以上の移送用電極(361、362、363、364、366)によって前記ループ(402)に接続されている請求項17に記載の装置。
【請求項19】
液体のウェル(40)から液体リザーバ(51)を形成する方法であり、
‐ 前記ウェル(40)に少なくとも部分的に対向して配置された移送用電極と称される電極(44)の補助を用いて、リザーバ電極と称される電極(48)に前記ウェル(40)から液体を移送する段階と
‐ 前記移送用電極(44)を非活性化させる段階とを含み、
前記液体リザーバ内の圧力は前記ウェル(40)内の液体の圧力に依存しない方法。
【請求項20】
請求項19に記載の液体リザーバの形成方法と、少なくともn個(n≧2)の小滴形成用電極(50、52)の活性化によって液体の小滴を形成する段階と、前記リザーバ電極に近い方のn−1個の前記電極の中から少なくとも一つを非活性化させて、極僅かな量の液体を取り出す段階とを含む、液体の小滴を分配する方法。
【請求項21】
前記リザーバ電極(48)は、前記小滴形成用電極のそれぞれの面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の装置を用いて液体の小滴を分配する方法であり、前記リザーバ電極に対向した液体リザーバ(51)を形成する段階と、n個(n≧2)の小滴形成用電極を活性化させることによって液体の小滴を放出する段階と、前記リザーバ電極に近い方のn−1個の前記電極の中から少なくとも一つを非活性化させる段階とを含む方法。
【請求項23】
請求項16から請求項18のいずれか一項に記載の装置を用いて液体の小滴を分配する方法。
【請求項24】
形成される小滴がループ(402)の形状の経路に沿って輸送される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
形成される小滴が前記ループ(402)の周りに配置されたリザーバからの一つ以上の小滴と混合される請求項24の記載の方法。
【請求項1】
流体注入用の開口部(40)を備えた第一基板(42)と、多数の電極を備えた第二基板(46)とを含む液体分配装置であり、前記多数の電極は、
‐ 前記開口部(40)に少なくとも部分的に対向して配置された移送用電極と称される少なくとも一つの電極(44)と、
‐ 少なくとも二つの小滴形成用電極(50、52)と、
‐ 前記移送用電極(44)及び前記小滴形成用電極(50、52)に対応していて、前記小滴形成用電極のそれぞれの面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する、リザーバ電極と称される少なくとも一つの電極(48)とを含む装置。
【請求項2】
少なくとも一つの第二のリザーバ電極(104、106、108、110)と、隣接する二つの前記リザーバ電極の間に、または、隣接する二つ前記リザーバ電極に対応して、配置された少なくとも一つの第二の移送用電極(101、103、105、107)とを更に含み、前記リザーバ電極のそれぞれに対応した少なくとも二つの小滴形成用電極(154、156、158、160)を備えた請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも一つの第二のリザーバ電極(204、206、208)と、前記開口部(40)に少なくとも部分的に対向して配置された少なくとも一つの第二の移送用電極(201、203、205)と、前記第二のリザーバ電極に対応した少なくとも一つの小滴形成用電極(254、256、258)とを更に含む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの第二のリザーバ電極は、対応する前記小滴形成用電極の面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する請求項2または請求項3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記リザーバ電極(48)の少なくとも一つは、対応する前記小滴形成用電極の面積の少なくとも十倍に等しい面積を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記リザーバ電極の少なくとも一つは櫛型または尖った形状を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記櫛型または尖った形状は、前記移送用電極側において徐々に細くなる歯の部分を有する請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記リザーバ電極の少なくとも一つは星型である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも一つのリザーバ電極と前記開口部(40)との間に収容壁(60)を含む請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも一つのリザーバ電極のまわりに少なくとも一つの収容壁(62)を含む請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記小滴形成用電極の少なくとも一つは、一方の側が円形で、他方が尖っている請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記第一基板は導電手段(47)を含む請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記第一基板(42)は疎水性表面を有する請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記第二基板は疎水性表面(8)を有する請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第二基板は前記疎水性表面(8)の下に誘電体層を有する請求項14に記載の装置。
【請求項16】
ループ(402)の形状に配置され、エレクトロウェッティングによって小滴を移動させる手段を更に含む請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記ループ(402)のまわりに配置された一つ以上の副リザーバ(350、352、354、356、358、351、353、355)を更に含む請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記副リザーバのそれぞれは、一つ以上の移送用電極(361、362、363、364、366)によって前記ループ(402)に接続されている請求項17に記載の装置。
【請求項19】
液体のウェル(40)から液体リザーバ(51)を形成する方法であり、
‐ 前記ウェル(40)に少なくとも部分的に対向して配置された移送用電極と称される電極(44)の補助を用いて、リザーバ電極と称される電極(48)に前記ウェル(40)から液体を移送する段階と
‐ 前記移送用電極(44)を非活性化させる段階とを含み、
前記液体リザーバ内の圧力は前記ウェル(40)内の液体の圧力に依存しない方法。
【請求項20】
請求項19に記載の液体リザーバの形成方法と、少なくともn個(n≧2)の小滴形成用電極(50、52)の活性化によって液体の小滴を形成する段階と、前記リザーバ電極に近い方のn−1個の前記電極の中から少なくとも一つを非活性化させて、極僅かな量の液体を取り出す段階とを含む、液体の小滴を分配する方法。
【請求項21】
前記リザーバ電極(48)は、前記小滴形成用電極のそれぞれの面積の少なくとも三倍に等しい面積を有する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の装置を用いて液体の小滴を分配する方法であり、前記リザーバ電極に対向した液体リザーバ(51)を形成する段階と、n個(n≧2)の小滴形成用電極を活性化させることによって液体の小滴を放出する段階と、前記リザーバ電極に近い方のn−1個の前記電極の中から少なくとも一つを非活性化させる段階とを含む方法。
【請求項23】
請求項16から請求項18のいずれか一項に記載の装置を用いて液体の小滴を分配する方法。
【請求項24】
形成される小滴がループ(402)の形状の経路に沿って輸送される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
形成される小滴が前記ループ(402)の周りに配置されたリザーバからの一つ以上の小滴と混合される請求項24の記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2008−525778(P2008−525778A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547602(P2007−547602)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/FR2005/051131
【国際公開番号】WO2006/070162
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/FR2005/051131
【国際公開番号】WO2006/070162
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】
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