説明

少なくとも部分的に放射線硬化性ポリウレタンに包囲された顔料、それらの製造方法及び使用方法

【課題】改良された顔料の水性分散液を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)に少なくとも部分的に包囲された顔料(B)を含む水性分散液であって、少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)が、
(a)少なくとも1種のジイソシアナートと、
(b)少なくとも2個のイソシアナートと反応性のある基を有する、少なくとも1種の化合物及び
(c)少なくとも1種の一般式I:
【化1】


[上記式中、
1及びR2は同一または異なっていても良く、水素及びC1-C10-アルキルから独立して選択され、
1は酸素及びN-R3から選択され、
1は非置換、またはC1-C4-アルキル、フェニルまたはO-C1-C4アルキルによって単一または複数置換されたC1-C20-アルキレンから選択され、これらのC1-C20-アルキレンは、その1個以上の隣接しないCH2基が酸素に置換されていても良く、
2は水酸基およびNH-R3から選択され、
3はそれぞれ、同一または異なっていても良く、水素、C1-C10-アルキル及びフェニルから選択される。]
で表される化合物との反応によって得られることを特徴とする水性分散液により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)に少なくとも部分的に包囲された顔料(B)を含む水性分散液であって、少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)が、
(a)少なくとも1種のジイソシアナートと、
(b)少なくとも2個のイソシアナートと反応性のある基を有する、少なくとも1種の化合物及び
(c)少なくとも1種の一般式I:
【0002】
【化1】

【0003】
[上記式中、
1及びR2は同一または異なっていても良く、水素及びC1-C10-アルキルから独立して選択され、
1は酸素及びN-R3から選択され、
1は非置換、またはC1-C4-アルキル、フェニルまたはO-C1-C4アルキルによって単一または複数置換されたC1-C20-アルキレンから選択され、これらのC1-C20-アルキレンは、その1個以上の隣接しないCH2基が酸素に置換されていても良く、
2は水酸基およびNH-R3から選択され、
3はそれぞれ、同一または異なっていても良く、水素、C1-C10-アルキル及びフェニルから選択される。]
で表される化合物との反応によって得られることを特徴とする水性分散液に関する。
【0004】
本発明はさらに、少なくとも1種の顔料(B)及び少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)を分散して製造される少なくとも部分的に包囲された顔料であって、その放射線硬化性ポリウレタン(A)が、
(a)少なくとも1種のジイソシアナートと、
(b)少なくとも2個のイソシアナートと反応性のある基を有する、少なくとも1種の化合物及び
(c)少なくとも1種の一般式I
で表される化合物との反応によって得られることを特徴とする顔料に関する。
【0005】
本発明はさらに、本発明による少なくとも部分的に包囲された顔料及び本発明による水性分散液の製造方法、及びそれらを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0006】
顔料を液体、特に水溶性溶媒に分散することは、さらなる形態、例えば記録用流体、特にインクを製造するために高い頻度で必要である。特に厳しい必要条件はインクジェット方式(例えばサーマルインクジェット、ピエゾインクジェット、連続インクジェット、バルブジェット、転写方式など)に使用されるインクとの関係に置かれる。それらは印刷に適した粘度および表面張力を有していなければならず、貯蔵中に安定でなければならず、言い換えれば、それらは凝固または凝集すべきではなく、特に分散した、即ち、非溶解性の着色剤粒子を含むインクの場合に問題となる、プリンターノズルの詰まりを引き起こしてはならない。貯蔵中の安定性としては、さらにこれらの記録用流体及び特に分散させた着色剤粒子が沈殿しないインクであることを必要とする。さらに、連続インクジェットの場合、インクは導電性塩類の添加に安定であるべきであり、イオン含有量の増加で凝集傾向があるべきではない。さらに、得られた印刷物はカラリストの要求を満たす、即ち、輝度及び陰影の深さを示すことが必要であり、及び優秀な堅牢性、例えば、乾燥摩擦堅牢性、光堅牢性、水堅牢性及び湿潤摩擦堅牢性を、必要に応じて、例えばよく乾燥するなどの定着化のような後処理後に有していなければならない。
【0007】
特に、例えば印刷された素材の乾燥摩擦堅牢性、湿潤摩擦堅牢性および洗浄堅牢性などの優秀な堅牢性を確保するため、印刷はいわゆる放射線硬化を通じて定着することができる。いわゆる放射線硬化性インクはこの目的のため、例えばUS 5,623,001およびEP 0 993 495を採用しても良い。放射線硬化性インクジェット用インクは一般的に化学線を受けさせることにより硬化される物質を含む。さらに、光開始剤を放射線硬化性インクジェット用インクに含むことができる。
【0008】
しかしながら、いくつかの場合で放射線効果の程度が印刷された素材全体として均一でないという問題がある。硬化はいくつかの場所で非常に良好に観察され、その一方で他の領域では程度が弱く、これはソフトスポット(soft spots)として知られる。さらに、印刷された素材の手触りが悪化し、特に印刷された布地素材にとって望ましくない。従って、特に均一な硬化をもたらすインクジェット方式用インクの必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は顔料の水性分散液を提供することを目的とする。また、本発明は特に化学線の作用を通じて容易に硬化されるインクジェット方式用のインクを提供することを目的とする。さらに、本発明はインクジェット方式用のインクの製造方法を提供することを目的とする。最終的に本発明は印刷された素材および特に良い手触り及び優秀な堅牢性を有する印刷された布地素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的は文頭に規定した水性分散液により解決されることが見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書においては、「インクジェット方式用のインク」と「インクジェット用インク」の語句は同じ意味である。
【0012】
本発明の目的のため、ポリウレタンは全てウレタン基により結合されたポリマーだけでなく、ジ−またはポリイソシアナート類と活性水素原子を含む化合物との反応により得られる、より一般的意味でのポリマーを意味するものと理解される。従って、本発明の目的のためにポリウレタンはウレタン基と同様に尿素、ビュレット、カルボジイミド、アミド、エステル、エーテル、ウレトンイミン、ウレチジオン、イソシアヌラートまたはオキサゾリジン基を含むことができる。一般的な参考文献の一例として、Kunststoffhandbuch/Saechtling,26版、Carl-Hanser-Verlag, Munich 1995年,491頁以下参照、がある。
【0013】
本発明の一実施形態において、放射線硬化性ポリウレタン(A)は
超分岐(hyperbranched)ポリウレタンではない。超分岐ポリウレタンはそれ自体知られており、例えば、J.M.S-Rev.Macromol. Chem. Phys. 1997年、C37(3)、555頁に記載されている。
【0014】
本発明による水性分散液は少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)によって少なくとも部分的に包囲された少なくとも1種の顔料(B)を含む。以下においては、「少なくとも1種の放射線硬化ポリウレタンにより少なくとも部分的に包囲された顔料」とはその外面が完全にまたは部分的に、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、放射線硬化性ポリウレタンにより包囲された微粒子型の顔料を意味するものと理解される。その顔料粒子の一定の割合が放射線硬化性ポリウレタンによって包囲されておらず、その他の顔料粒子の外面が完全にまたは部分的に放射線硬化性顔料により包囲されている微粒子型のポリウレタンの混合物も同様に「少なくとも1種の放射線硬化ポリウレタンにより少なくとも部分的に包囲された顔料」の定義に入る。
【0015】
顔料(B)の包囲の程度(the degree of envelopment)は、例えば、光学顕微鏡または電子顕微鏡法(TEM、クライオTEM、SEM)などの顕微鏡法および具体的には凍結割断(freeze fracture)処理技術により、乾燥された少なくとも部分的に包囲された顔料のNMR分光法または光電子分光法を通じて、ゼータ電位を測定することによって定量することができる。
【0016】
少なくとも部分的に包囲された顔料(B)は本発明の範囲において、ドイツ標準規格 DIN 55944に規定された、実質的に水不溶性であり、微粉化した有機または無機の着色剤を少なくとも部分的に包囲することによって得られる。本発明による水性分散液は好ましくはカーボンブラックを含む有機顔料から製造される。特に適した顔料(B)の例をここで特定する。
【0017】
有機顔料類:
モノアゾ顔料:C.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントオレンジ5,13,36および67;C.I.ピグメントレッド1,2,3,5,8,9,12,17,22,23,31,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1、52:1,52:2,53,53:1,53:3,57:1,63,112,146,170,184,210,245および251;C.I.ピグメントイエロー1,3,73,74,65,97,151および183;
ジアゾ顔料:C.Iピグメントオレンジ16,34および44;C.I.ピグメントレッド144,166,214,242;C.I.ピグメントイエロー12、13、14,16,17,81、83,106,113,126,127,155,174,176および188;
アンサンスロン顔料:C.I.ピグメントレッド168(C.I.バットオレンジ3);
アンスラキノン顔料:C.I.ピグメントイエロー147および177;C.I.ピグメントバイオレット31
アンスラピリミジン顔料:C.I.ピグメントイエロー108(C.I.バットイエロー20)
キナクリドン顔料:C.I.ピグメントレッド122,202および206;C.I.ピグメントバイオレット19;
キノフタロン顔料:C.I.ピグメントイエロー138;
ジオキサジン顔料:C.I.ピグメントバイオレット23および37;
フラバンスロン顔料:C.I. ピグメントイエロー24(C.I.バットイエロー1);
インダンスロン顔料:C.I.ピグメントブルー60(C.I.バットブルー4)および64(C.I.バットブルー6);
イソインドリン顔料:C.I.ピグメントオレンジ69;C.I.ピグメントレッド260;C.I.ピグメントイエロー139および185:
イソインドリノン顔料:C.I.ピグメントオレンジ61;C.I.ピグメントレッド257および260;C.I.ピグメントイエロー109,110,173および185;
イソビオランスロン顔料:C.I.ピグメントバイオレット31(C.I.バットバイオレット1);
金属錯体顔料:C.I.ピグメントイエロー117,150および153;C.I.ピグメントグリーン8;
ペリノン顔料:C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.バットオレンジ7);C.I.ピグメントレッド194(C.I.バットレッド15)
ペリレン顔料:C.I.ピグメントブラック31および32;C.I.ピグメントレッド123,149,178,179(C.I.バットレッド23),190(C.I.バットレッド29)および224;C.I.ピグメントバイオレット29;
フタロシアニン顔料:C.I.ピグメントブルー15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6および16;C.I.ピグメントグリーン7および36
ピランスロン顔料:C.I.ピグメントオレンジ51;C.I.ピグメントレッド216(C.I.バットオレンジ4);
チオインディゴ顔料:C.I.ピグメントレッド88および181(C.I.バットレッド1);C.I.ピグメントバイオレット38(C.I.バットバイオレット3);
トリアリールカルボニウム顔料:C.I.ピグメントブルー1,61および62;C.I.ピグメントグリーン1;C.I.ピグメントレッド81,81:1および169;C.I.ピグメントバイオレット1,2,3および27;C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック);C.I.ピグメントイエロー101(アルダジンイエロー)C.I.ピグメントブラウン22。
【0018】
無機顔料類:
ホワイト顔料:二酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)、亜鉛白、色素性酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン;鉛白、硫酸バリウム;
ブラック顔料:酸化鉄黒(C.I.ピグメントブラック11)、鉄マンガン黒、スピネル黒(C.I.ピグメントブラック27);カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7);
カラー顔料:酸化クロム、水和酸化クロム緑;クロム緑(C.I.ピグメントグリーン48);コバルト緑(C.I.ピグメントグリーン50);ウルトラマリン緑;コバルト青(C.I.ピグメントブルー28および36);ウルトラマリン青;鉄青(C.I.ピグメントブルー27);マンガン青;ウルトラマリンバイオレット;コバルトおよびマンガンバイオレット;酸化鉄赤(C.I.ピグメントレッド108);モリブデン酸塩赤(C.I.ピグメントレッド104);ウルトラマリン赤;
酸化鉄ブラウン、混合ブラウン、スピネルブラウンおよびコランダムフェーズ(C.I.ピグメントブラウン24,29および31)、クロムオレンジ;
酸化鉄黄(C.I.ピグメントイエロー42);ニッケルチタン黄(C.I.ピグメントイエロー53;C.I.ピグメントイエロー157および164);クロムチタン黄;硫化カドミウムおよび硫化カドミウム亜鉛(C.I.ピグメントイエロー37および35);クロム黄(C.I.ピグメントイエロー34)、亜鉛黄、アルカリ土類金属クロム酸塩類;ナポリ黄;ビスマスバナジウム酸塩(C.I.ピグメントイエロー184);
干渉顔料:光沢のある金属小片(metal platelets)に基づくメタリック効果の顔料;金属酸化物コートされた雲母小片(mica platelets)に基づくパール光沢顔料。
【0019】
ここで好ましい顔料(B)はモノアゾ顔料(特にレーキBONS(laked BONS)顔料、ナフトールAS顔料)、ジアゾ顔料(特にジアリールイエロー顔料、ビスアセトアセタニリド顔料、ジスアゾピアゾロン顔料))、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ペリノン顔料、フタロシアニン顔料、トリアリールカルボニウム顔料(アルカリブルー顔料、ローダミンレーキ、色素のアニオン錯体塩)、イソインドリン顔料およびカーボンブラックである。
【0020】
特に好ましい顔料(B)の例は、具体的にはカーボンブラック、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122および146、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3および15:4、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントオレンジ5、38および43、及びC.I.ピグメントグリーン7である。
【0021】
本発明の目的のための放射線硬化性ポリウレタン(A)は、
(a)少なくとも1種のジイソシアナートと、
(b)少なくとも2個のイソシアナートと反応性のある基を有する、少なくとも1種の化合物及び
(c)少なくとも1種の一般式Iで表される化合物
との反応によって得られる。
【0022】
ジイソシアナート(a)は例えば脂肪族、芳香族及び脂環式ジイソシアナート類から選択される。芳香族ジイソシアナート類の例は2,4−トリレンジイソシアナート(2,4−TDI)、2,4‘−ジフェニルメタンジイソシアナート(2,4’−MDI)及びいわゆるTDI混合物(2,4−トリレンジイソシアナートおよび2,6−トリレンジイソシアナートの混合物)である。
【0023】
脂肪族ジイソシアナートの例は1,4−ブチレンジイソシアナート、1,12−ドデカメチレンジイソシアナート、1,10−デカメチレンジイソシアナート、2−ブチル−2−エチルペンタメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートおよび特にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)である。
【0024】
脂環式ジイソシアナートの例はイソホロンジイソシアナート(IPDI)、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアナート、2,4‘−メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアナートおよび4-メチルシクロヘキサン1,3−ジイソシアナート(H−TDI)である。
【0025】
さらに、異なる反応性を有するイソシアナートは1,3−フェニレンジイソシアナート、1,4−フェニレンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、ジフェニルジイソシアナート、トリジンジイソシアナートおよび2,6−トリレンジイソシアナートである。
【0026】
もちろん、前述のジイソシアナート(a)の混合物を使用することもできる。
【0027】
放射線硬化性ポリウレタン(A)はジイソシアナート(a)と少なくとも2個のイソシアナートと反応性のある基を有する、少なくとも1種の化合物(b)(以下、化合物(b)と略して称する)との反応によって作製される。特に容易に反応するイソシアナートと反応性のある基は例えばSH基、水酸基、NH2基およびNHR3基(このR3は上記で規定した通りである)を含む。
【0028】
化合物(b)は親水性または疎水性であっても良い。
【0029】
少なくとも1種の化合物(b)は好ましくは、
1,1,1−トリメチロール-C1-C4-アルキルカルボン酸類、例えば1,1,1−トリメチロール酢酸、1,1,1−トリメチロールプロピオン酸、1,1,1−トリメチロール酪酸、クエン酸、1,1−ジメチロール−C1-C4-アルキルカルボン酸類、例えば1,1−ジメチロール酢酸、1,1−ジメチロールプロピオン酸、1,1−ジメチロール酪酸、1,1−ジメチロール-C1-C4-アルキルスルホン酸類、1分子当たり平均3〜300個のアルキレンオキサイド単位を有するポリ-C2-C3-アルキレングリコール類、特に1分子当たり平均(数平均)3〜300個のエチレンオキサイド単位およびエチレンオキサイドの重付加生産物および1分子当たり平均(数平均)3〜300個のエチレンオキサイド単位を有するプロピレンオキサイドを有し、およびエチレンオキサイドのモル分率がプロピレンオキサイドのモル分率より高いポリエチレングリコール、
COOMまたはSO3M基を有するジアミン類、例えば、
【0030】
【化2】

【0031】
[上記式中、Mはアルカリ金属イオン類、特にナトリウムイオン、アンモニウムイオンから選択される。]、
少なくとも1種の脂肪族または脂環式ジオール、好ましくはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シス−1,4−シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール、シス-およびトランス−1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン(シクロヘキサンジメタノール)と、
少なくとも1種の脂肪族、芳香族または脂環式ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸との、
重縮合により作製されるポリエステルジオール類から選択される。
【0032】
本発明の一実施形態においては、一つが芳香族でもう一方が脂肪族であるポリエステルジオールを作製するために、例えば、コハク酸およびイソフタル酸、グルタル酸およびイソフタル酸、アジピン酸およびイソフタル酸、コハク酸およびテレフタル酸、グルタル酸およびテレフタル酸、アジピン酸およびテレフタル酸といった、少なくとも2個のジカルボン酸の選択することが含まれる。
【0033】
2個以上のジカルボン酸を用いてポリエステルジオールを作製するために、任意の好ましいモル比が適用できる。芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸が使用される場合、10:1〜1:10の範囲のモル比が好ましく、1.5:1〜1:1.5の範囲が特に好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態において、(c)として使用されるポリエステルジオール類は20〜200mgKOH/g、好ましくは50〜180、最も好ましくは100〜160mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。ヒドロキシル価はドイツ標準規格DIN53240に従って測定される。
【0035】
本発明の一実施形態において、(b)として使用されるポリエステルジオール類は500〜100000g/molの範囲、好ましくは700〜50000g/mol、さらに好ましくは30000g/mol以下の分子量Mwを有する。
【0036】
さらに適切な化合物(b)はエタノールアミン、ジエタノールアミン、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,1−ジメチロールプロパンである。
【0037】
本発明の一実施形態においては、ジイソシアナート(a)を、1個はエタノールアミン、ジエタノールアミン、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,1−ジメチロールプロパンから選択される、少なくとも2個の化合物(b)と反応することが含まれる。
【0038】
放射線硬化性ポリウレタン(A)はジイソシアナート(a)を少なくとも1個の化合物(b)およびさらに少なくとも1個の一般式Iで表される化合物(c)(以下、化合物(c)と略して称する)と反応することにより作製され、
【0039】
【化3】

【0040】
上記式中の変数は、
1およびR2は同一または異なっていても良く、C1-C10-アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル。n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、より好ましくはC1-C4-アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、特にメチルおよび特に水素から独立して選択され、
1は酸素及びN-R3から選択され、
1はC1-C20-アルキレン、好ましくはC2-C10-アルキレン、例えば、-CH2-、-(CH212-、-(CH214-、-(CH216-、-(CH220-、好ましくは-(CH22-、-(CH23-、-(CH24-、-(CH25-、-(CH26-、-(CH28-、-(CH210-であり、
これらは非置換、またはC1-C4-アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、好ましくはメチル、
フェニルまたは
-O-C1-C4-アルキル、例えば、-O-CH3、-O-C25、-O-n-C37、-O-CH(CH32、-O-n-C49、-O−iso−C49、-O−sec−C49、-O-C(CH33、によって単一または複数置換され、
置換されたC1-C20-アルキレンとしては、例えば、-CH(CH3)-、CH(C25)-、-CH(C65)-、CH2-CH(CH3)-、シス-およびトランス-CH(CH3)-CH(CH3)-、-(CH2)-C(CH32-CH2-、CH2-CH(25)-、CH2-CH(n-C37)-、CH2-CH(iso−C37)-が挙げられ、
置換された、または非置換のC1-C20-アルキレンの1つ以上の隣接しないCH2基が酸素に置換されていても良く、例えば、-CH2-O-CH2-、-(CH22-O-(CH22-、-[(CH22-O]2-(CH22-,-[(CH22-O]3-(CH22-であるものから選択され、
2はNH-R3、好ましくは酸素から選択され、
3はそれぞれ、異なりまたは好ましくは同一であり、水素、フェニルおよび、
1-C10-アルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n-ノニル、n−デシル、より好ましくはC1-C4-アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、特にメチルから選択される。
【0041】
特に好ましい化合物(c)はアクリル酸(メタクリル酸)2−ヒドロキシエチルおよびアクリル酸(メタクリル酸)3−ヒドロキシプロピルである。
【0042】
少なくとも1種のジイソシアナート(a)、少なくとも1種の化合物(b)、および化合物(c)の反応は好ましくは1種以上の触媒の存在下で行われる。
【0043】
有用な触媒は例えばポリウレタン化学において一般的に使用される全ての触媒を含む。
【0044】
触媒はポリウレタン化学において一般的に使用される触媒は好ましくは有機アミン類、特に第三級脂肪族、脂環式または芳香族アミン類、およびルイス酸有機金属化合物である。
【0045】
有用なルイス酸有機金属化合物としては、例えば錫(II)有機カルボン酸塩類、例として酢酸錫(II)、錫(II)オクトアート、錫(II)エチルヘキサノアート、ラウリン酸錫(II)および有機カルボン酸類のジアルキル錫(IV)誘導体類、例として二酢酸ジメチル錫、二酢酸ジブチル錫、二酪酸ジブチル錫、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキサノアート)、ジラウリン酸ジブチル錫、マレイン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジオクチル錫および二酢酸ジオクチル錫のような錫化合物が含まれる。鉄、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケルおよびコバルトのアセチルアセトナート類の様な金属錯体は同様に使用できる。さらに、ルイス酸有機金属化合物はBlankらによる Progress in Organic Coatings, 1999年,35巻,19頁以降に記載されている。
【0046】
好ましいルイス酸有機金属化合物は二酢酸ジメチル錫、二酪酸ジブチル錫、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキサノアート)、ジラウリン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジオクチル錫、ジルコニウムアセチルアセトナートおよびジルコニウム2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナートである。
【0047】
同様に、ビスマスおよびコバルト触媒およびセシウム塩もまた親水性触媒として使用することができる。有用なセシウム塩は以下のアニオン:F-、Cl-、ClO-、ClO3-、ClO4-、Br-、I-、IO3-、CN-、OCN-、NO2-、NO3-、HCO3-、CO32-、S2-、SH-、HSO3-、SO32-、HSO4-、SO42-、S222-、S242-、S252-、S262-、S272-、S282-、H2PO2-、H2PO4-、HPO42-,PO43-、P274-、(OCn2n+1-、(Cn2n-12-、(Cn2n-32-および(Cn+12n-242-(式中nは1〜20の整数を示す)、を利用したセシウム化合物を含む。
【0048】
好ましくはカルボン酸セシウムのアニオンは式(Cn2n-12-および(Cn+12n-242-(式中nは1〜20である)で表される。特に好ましいセシウム塩類はアニオンとして一般式(Cn2n-12-(式中nは1〜20の整数を示す)のモノカルボン酸塩類を含む。特に、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサノアートおよび2−エチルヘキサノアートが挙げられる。
【0049】
通例の有機アミン類には、一例として、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N‘,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N‘,N’−テトラメチルブタン−1,4−ジアミン、N,N,N‘,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、3−メチル−6−ジメチルアミノ−3−アザペントール、ジメチルアミノプロピルアミン、1,3−ビスジメチルアミノブタン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン、N−シクロヘキシルモルホリン、2−ジメチルアミノエトキシエタノール、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミノ−N−メチルエタノールアミン、N−メチルイミダゾール、N−ホルミル−N,N‘− ジメチルブチレンジアミン、N−ジメチルアミノエチルモルホリン、3,3’−ビス−ジメチルアミノ−ジ−n−プロピルアミンおよび/または2,2‘−ジピパラジンジイソプロピルエーテル、ジメチルピパラジン、トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)−s−ヘキサヒドロトリアジン、1,2−ジメチルイミダゾール、4−クロロ−2,5−ジメチル−1−(N−メチルアミノエチル)イミダゾール、2-アミノプロピル−4,5−ジメトキシ−1−メチルイミダゾール、1−アミノプロピル−2,4,5−トリブチルイミダゾール、1−アミノエチル−4−ヘキシルイミダゾール、1−アミノブチル−2,5−ジメチルイミダゾール、1−(3−アミノプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾールおよび/または1−(3−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾールの様なイミダゾール類が挙げられる。
【0050】
好ましい有機アミン類は独立して2個のC1〜C4-アルキルラジカルおよび1個のアルキルまたは4〜20個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカルを有するトリアルキルアミン類で、例えばジメチルドデシルアミンの様なジメチル-C4−C15-アルキルアミンまたはジメチル-C3−C8−シクロアルキルアミンである。同様に好ましい有機アミン類は必要に応じて酸素または窒素などのヘテロ原子をさらに含むことができるビサイクリックアミン類、例えば1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンである。
【0051】
酢酸アンモニウムまたはトリエチルアミンの使用が特に好ましく、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)アンモニウム2−エチルヘキサノアートの使用が最も好ましい。
【0052】
上記の化合物の2種以上の混合物を同様に触媒として使用することは好ましい。
【0053】
特に好ましい上記の化合物はアセトン、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドンおよび/またはN−エチルピロリドンの様な有機溶剤に溶解するものである。
【0054】
好ましくは、触媒はジイソシアナート(a1)に基づいて0.0001質量%〜10質量%、さらに好ましくは0.001質量%〜5質量%の量で使用される。
【0055】
触媒はその組成により固体または液体状態または溶液状態で添加することができる。有用な溶媒はトルエン、ヘキサンおよびシクロヘキサンのような芳香族または脂肪族炭化水素類および酢酸エチルの様なカルボン酸エステルなどの水と混ざらない溶媒であり、さらに有用な溶媒としてアセトン、THFおよびN−メチルピロリドンおよびN−エチルピロリドンが含まれる。触媒は、好ましくは固体または液体状態で、最も好ましくはアセトン、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドンまたはN−エチルピロリドンなどの有機溶剤の溶液状態で添加される。
【0056】
以下に記載された実施形態は1種以上のジイソシアナート(a)、1種以上の化合物(b)及び1種以上の化合物(c)が放射線硬化性ポリウレタン(A)の作製に使用されるかどうかに関わりない可能性がある。
【0057】
ジイソシアナート(a)および化合物(b)はそれぞれの場合にジイソシアナート(a)の総量および化合物(b)の総量に基づいて、例えば10:1〜1:5、好ましくは5:1〜1:3、さらに好ましくは3:1〜1:1のモル比で使用することができる。
【0058】
ジイソシアナート(a)と化合物(c)はそれぞれの場合にジイソシアナート(a)の総量および化合物(c)の総量に基づいて、例えば10:1〜1:2、好ましくは5:1〜1:1、さらに好ましくは4:1〜1:1のモル比で使用することができる。
【0059】
本発明の好ましい一変形例はジ−またはポリイソシアナート(a)、ジイソシアナート(a)、化合物(b)および化合物(c)だけでなく、追加して、この場合、停止剤(stoppers)(以下、停止剤(d)と称する。)として使用され、少なくとも1種の求核性アルコールまたはアミンとを反応することによって放射線硬化性ポリイソシアナート(A)を作製することを含む。適切な停止剤(d)はモノ−およびジ−C1−C4−アルキルアミン類、特にジエチルアミンである。停止剤(d)は合成される放射線硬化性ポリウレタン(A)に基づいて10質量%以下で使用できる。
【0060】
本発明の一実施形態において、ジイソシアナート(a)、化合物(b)、化合物(c)、および必要に応じて停止剤(d)は互いに温度20℃〜150℃、好ましくは20℃〜80℃の範囲で反応させることができる。
【0061】
本発明の一実施形態において、ジイソシアナート(a)、化合物(b)、化合物(c)および必要に応じて停止剤(d)は互いに溶媒中、好ましくは、例えばトルエン、アセトンまたはテトラヒドロフラン、または上記の溶媒の混合物のような有機溶媒または有機溶媒の混合物中で反応させることができる。本発明の別の実施形態においてはジイソシアナート(a)を化合物(b)、化合物(c)および必要に応じて停止剤(d)と反応させる際に溶媒を使用しない。
【0062】
本発明の一実施形態において、放射線硬化性ポリウレタン(A)は、例えば滴定によって検出される、遊離のNCO基を有さない。
【0063】
本発明の一実施形態において、放射線硬化性ポリウレタン(A)は、例えば1HNMR分光法により水素化ヨウ素価を測定することによって定量される、0.1〜5mol/kg(A)、好ましくは0.2〜3mol/kg(A)、さらに好ましくは0.3〜2mol/kg(A)の二重結合密度を有する。
【0064】
ジイソシアナート(a)、化合物(b)、化合物(c)および必要に応じて停止剤(d)から放射線硬化性ポリウレタン(A)の作製は1工程または好ましくは複数の工程で行うことができる。例えば、ジイソシアナート(a)および化合物(b)が第一工程において、例えば触媒の存在下で反応され、反応停止後、再びジイソシアナート(a)および化合物(c)および必要に応じて、さらに化合物(b)が加えられる。また、例えばジイソシアナート(a)、化合物(b)および化合物(c)をワンポット(one-pot)反応、この場合、親水性化合物(b)に対して過剰量のジイソシアナート(a)とする条件で行われ、化合物(c)および必要に応じて停止剤(d)を添加することによって反応を停止するという、反応とすることも可能である。
【0065】
ジイソシアナート(a)と化合物(b)、化合物(c)および必要に応じて停止剤(d)との反応が終了した後、例えばジイソシアナート(a)または化合物(c)のような未反応の開始物質を除去することによって、放射線硬化性ポリウレタン(A)が分離される。ジイソシアナート(a)、化合物(c)および場合によって停止剤(d)などの未反応の開始物質を除去する適切な方法としては蒸留除去すること、好ましくは減圧下で蒸留除去することである。薄膜蒸発器は特に適切である。好ましくは未反応のジイソシアナートは蒸留除去されない。
【0066】
本発明に使用される放射線硬化性ポリウレタン(A)の分子量Mwは例えばゲル透過クロマトグラフィ(GPC)による測定により、例えば500〜50000g/molの範囲、好ましくは1000〜30000g/molの範囲、さらに好ましくは2000〜25000g/molとすることができる。
【0067】
本発明の一実施形態において、放射線硬化性ポリウレタン(A)は遊離のNCO基は含まない。
【0068】
ジイソシアナート(a)、化合物(b)、化合物(c)および必要に応じて停止剤(d)の反応が行われた後、例えば放射線硬化性ポリウレタン(A)の水に対する重量比が1:1〜1:10の範囲となるように水を添加することができる。
【0069】
ジイソシアナート(a)、化合物(b)、化合物(c)および必要に応じて停止剤(d)の反応が行われた後、十分に酸性水素原子を含む官能基は対応する塩へ変換する塩基と処理することができる。有用な塩基は、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物および重炭酸塩またはアルカリ金属の炭酸塩を含む。有用な塩基はさらに揮発性アミン類、即ち、大気圧で180℃以下の沸点を有するアミン類、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミンまたはN−メチルジエタノールアミンを含む。同様に、塩基性官能基は、例えばα-ヒドロキシカルボン酸類またはα-アミノ酸類または他にα-ヒドロキシスルホン酸と対応する塩へ変換することができる。
【0070】
ジイソシアナート(a)、化合物(b)、化合物(c)および必要に応じて停止剤(d)の反応が行われた後、使用されたどの有機溶媒も例えば蒸留によって分離除去することができる。
【0071】
放射線硬化性ポリウレタン(A)が作製された後、1種以上の顔料(B)および必要に応じて水が加えられる。固形分含有率は3%〜40%の範囲、好ましくは3%〜35%、さらに好ましくは5%〜30%の範囲に設定することが好ましい。
【0072】
放射線硬化性ポリウレタン(A)の顔料(B)に対する重量比は広い範囲で変えることができる。本発明の一実施形態において、放射線硬化性ポリウレタン(A)の顔料(B)に対する重量比は5:1〜1:3、好ましくは3:1〜1:2、さらに好ましくは2:1〜2:3の範囲である。
【0073】
次に、放射性硬化性ポリウレタン(A)および顔料(B)は分散される。分散はどの適切な装置によっても行うことができる。例えばSkandexなどの振とう機は実施例で挙げられている。好ましくは、放射性硬化性ポリウレタン(A)および顔料(B)は、例えば超音波装置、高圧ホモジナイザー、2−、3−、4−または5−ロールミル、ミニミル、ヘンシェルミキサー、振とうミル、オングミル、ギアミル、ビーズミル、ウェットミル、サンドミル、磨砕機、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、Ultra Turrax攪拌機により、および特に、例えば2−、3−、4−または5−ロールミル、ミニミル、振とうミル、オングミル、ギアミル、ビーズミル、ウェットミル、サンドミル、コロイドミル、ボールミル、具体的には攪拌ボールミルで磨り潰すことにより分散される。
【0074】
分散時間は長時間のほうが良いと考えられるが、適切には、例えば10分〜48時間の範囲である。好ましく、分散時間は15分〜24時間である。
【0075】
分散中の圧力および温度条件は一般的には重要ではなく、例えば大気圧が適切であることが認められている。温度については、例えば10℃〜100℃の温度範囲が適切であり、好ましくは80℃以下が適切であると認められている。
【0076】
分散により本発明による水性分散液が提供される。本発明の一実施形態において、本発明による水性分散液は3%〜40%の範囲、好ましくは35%以下、さらに好ましくは10%〜30%の範囲の固形分含有率を有する。
【0077】
慣用の粉砕補助剤は分散中に添加することができる。
【0078】
放射線硬化性ポリウレタン(A)に少なくとも部分的に包囲された顔料(B)の平均粒子径は本発明に関連して一般的に容積平均を表し、分散後、一般的には20nm〜1.5μmの範囲、好ましくは60〜500nmの範囲、さらに好ましくは60〜350nmである。平均粒子径を測定する有用な測定機器には例えばCoulter LS230などのコールターカウンターが含まれる。
【0079】
本発明による顔料(B)としてカーボンブラックを使用する場合、粒子径は最初の粒子の平均粒子径に基づく。
【0080】
本発明による水性分散液は熱開始剤、即ち、60℃において少なくとも1時間の半減期を有し、工程中でフリーラジカルに分裂し、例えば過酸化物類、ヒドロペルオキシド類、過酸化水素、過硫酸塩類、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)または水溶性AIBN誘導体のようなアゾ化合物、高置換の、特にヘキサ置換されたエタン誘導体または酸化還元触媒である化合物を含まない。
【0081】
本発明の一実施形態において、本発明による水性分散液には少なくとも1種のポリウレタン(C)が含まれる。ポリウレタン(C)は例えばジイソシアナート(a)を化合物(b)と反応することによって得られる。特に好ましくは、顔料(B)は放射線硬化性ポリウレタン(A)だけでなく、ポリウレタン(C)によっても、少なくとも部分的に包囲される。
【0082】
本発明の一実施形態において、本発明による水性分散液には放射線硬化性ポリウレタン(A)とポリウレタン(C)が10:1〜1:2の範囲、好ましくは8:1〜1:1の範囲(重量比)で含まれる。
【0083】
本発明の一実施形態において、本発明による水性分散液には少なくとも1種の光開始剤(D)が含まれる。光開始剤(D)は分散前または分散後のどちらにおいても加えることができる。
【0084】
適切な光開始剤(D)には、例えば当業者に知られた、例えば、「Advance in Polymer Science」,14巻, Springer Berlin 1974年、またはK.K.Dietliker, Chemistry and Technology of UV-and EB-Formulation for Coatings, Inks and Paint,3巻; Photoinitiators for Free Radical and Cationic Polymerization, P.K.T.Oldring (Eds), SITA Technology Lts, London、に挙げられた光開始剤が含まれる。
【0085】
有用な光開始剤には、例えばEP-A 0 007 508, EP-A 0 057 474, DE-A 196 18 720, EP-A 0 495 751 およびEP-A 0 615 980に記載されたモノ-またはビスアクリルホスホリンオキサイド類、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、エチル2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィナート、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、フェニルグリオキシル酸、及びその誘導体または上記の光開始剤の混合物が含まれる。例として、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アセトナフトキノン、メチルエチルケトン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α−フェニルブチロフェノン、p−モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−モルホリノデオキシベンゾイン、p−ジアセチルベンゼン、4−アミノベンゾフェノン、4‘−メトキシアセトフェノン、β-メチルアントラキノン、tert−ブチルアントラキノン、アントラキノンカルボン酸エステル類、ベンズアルデヒド、α-テトラロン、9−アセチルフェナントレン、2−アセチルフェナントレン、10−チオキサンテノン、3−アセチルフェナントレン、3−アセチルインドール、9−フルオレノン、1−インダノン、1,3,4−トリアセチルベンゼン、チオキサンテン−9−オン、キサンテン−9−オン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジ-イソ-プロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、クロロキサンテノン、ベンゾインテトラヒドロピラニルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、7−H−ベンゾインメチルエーテル、ベンズ[de]アントラセン−7−オン、1−ナフタルデヒド、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)-ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、ミヒラーケトン、1-アセトナフトン、2−アセトナフトン、1−ベンゾイルシクロヘキサン−1−オール、2−ヒドロキシ-2,2,−ジメチルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシアセトフェノン、アセトフェノンジメチルケタール、o−メトキシベンゾフェノン、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、ベンズ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタールなどのベンジルケタール類、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−メチルアントラキノンなどのアントラキノン類、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンおよび2,3−ブタンジオンが挙げられる。
【0086】
DE-A 198 26 712、DE-A 199 13 353またはWO 98/33761に記載されたフェニルグリオキシル酸エステル型の非黄変または低黄変の光開始剤もまた適切である。
【0087】
好ましい光開始剤(D)には、例えばベンジルジメチルケタールなどのベンジルジアルキルケタール型の光開始剤のような活性化に際して分裂する光開始剤、いわゆるα-開裂型(α-splitters)が含まれる。さらに、有用なα-開裂型の例としては、ベンゾイン誘導体、イソブチルベンゾインエーテル、ホスフインオキサイド類、特にモノ-およびビスアシルホスフィンオキサイド、例えばベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、例えば2-ヒドロキシ-2-メチルフェニルプロパノン(D.1)などのα-ヒドロキシアルキルアセトフェノン類、
【0088】
【化4】

【0089】
2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(D.2)、
【0090】
【化5】

【0091】
硫化ホスフィン類およびエチル4−ジメチルアミノベンゾアートおよび(D.3)
【0092】
【化6】

がある。
【0093】
さらに、好ましい光開始剤(D)には、例えば置換したまたは非置換のアセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、安息香酸エステル類、または置換したまたは非置換のベンゾフェノン類のような水素引き抜き型(hydrogen-abstracting)光開始剤が含まれる。特に好ましい例としては、イソプロピルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルベンジルケトン、4-メチルベンゾフェノン、ハロメチル化ベンゾフェノン類、アントロン、ミヒラーケトン(4,4‘−bis−N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン)、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、アントラキノンである。
【0094】
本発明の一実施形態において、十分量の光開始剤(D)は本発明による水性分散液に、放射線硬化性ポリウレタン(A)の光開始剤(D)に対する重量比が3:1〜100000:1の範囲、好ましくは5:1〜5000:1、最も好ましくは10:1〜1000:1の範囲で添加される。
【0095】
本発明による水性分散液中の光開始剤(D)の効果は必要に応じて、少なくとも1種の相乗剤(synergist)、例えば少なくとも1種のアミン、特に少なくとも1種の第三級アミンを添加することによって高めることができる。有用なアミン類には、例えばトリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミン変性ポリエーテルアクリレート類などのアミノアクリレート類が含まれる。第三級アミン類などのアミン類は放射線硬化性ポリウレタン(a)の合成において触媒として使用され、合成後に除去されない場合、触媒として使用された第三級アミンは相乗剤としても役割を果たすことができる。同様に、例えばCOOH基またはSO3H基などの酸性官能基の中和に使用した第三級アミンも相乗剤として役割を果たす。使用される光開始剤(D)に基づいて、2倍以下のモル量の相乗剤を添加することができる。
【0096】
本発明による水性分散液には少なくとも1種の紫外線吸収剤またはフリーラジカル補足剤などの重合防止剤(E)を添加することができる。有用な紫外線吸収剤には、例えばオキサニリド類、トリアジン類およびベンゾトリアゾール(後者はCiba-Spezialitatenchemie社からTinuvin(登録商標)として入手できる)、ベンゾフェノン類、ヒドロキシベンゾフェノン類、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテルなどのヒドロキノンモノアルキルエーテル類が含まれる。フリーラジカル補足剤はフリーラジカル中間体に結合する。有用なフリーラジカル補足剤には、例えばHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)として知られる立体障害のあるアミン類が含まれる。その例として、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピペリジンまたはその誘導体、例えばセバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)が挙げられる。
【0097】
例えば、(A)および(B)の合計に基づいて、5質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下の重合防止剤(E)を添加することができる。
【0098】
本発明による分散液はさらに1種以上の、C−C二重結合を有する化合物(F)(以下、不飽和化合物(F)と称する)を添加することができる。特に適切な不飽和化合物(F)には、例えば一般式Iの化合物が含まれる。さらに適切な不飽和化合物(F)は一般式F.1:
【0099】
【化7】

【0100】
[上記式中、
1およびR2は同一または異なっていても良く、水素およびC1−C10−アルキルから独立して選択され、
mは0〜2の整数および好ましくは1であり、
2は、m=0の場合、CH2または−CH2−CH2−またはR8−CHまたはpara−C64であり、
m=1の場合、CH、C−OH、C−O−C(O)−CH=CH2、C−O−CO−C(CH3)=CH2、R8−Cまたは1,3,5−C63であり、m=2の場合は炭素であり、
8はC1−C4−アルキル、例えばn−C49、n−C37、イソ−C37および好ましくはC25およびCH3
またはフェニルであり、
3、A4およびA5は同一または異なっていても良く、それぞれ、
例えば−CH2−、−CH(CH3)− 、−CH(C25)−、−CH(C65)−、−(CH22−、(CH23−、−(CH24−、−(CH25−、−(CH26−、−(CH27−、−(CH28−、−(CH29−、−(CH210−、−CH(CH3)−(CH22−CH(CH3)−のような、C1−C20−アルキレン、
例えばシス−1,3−シクロペンチリデン、トランス−1.3−シクロペンチリデン、シス−1,4−シクロヘキシリデン、トランス−1,4−シクロヘキシリデンのような、シスまたはトランスC4−C10シクロアルキレン、
例えば−CH2−O−CH2− 、−(CH22−O−CH2−、−(CH22−O−(CH22−、−[(CH22−O]2−(CH22−、−[(CH22−O]3−(CH22−のような、それぞれ1個〜7個の隣接しない炭素原子が酸素に置換されているC1−C20−アルキレン、
例えば−CH2−O−CH2−CH(OH)−CH2−、−CH2−O−[CH2−CH(OH)−CH2]2−、−CH2−O−[CH2−CH(OH)−CH23−のような、4個以下の水酸基によって置換され、隣接しない1個〜7個の炭素原子が酸素に置換されているC1−C20−アルキレン、
para−C64のようなC6−C14−アリレン、
から選択される。]
で表される化合物である。
【0101】
一般式F.1の化合物の特に好ましい例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプルエトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートである。
【0102】
さらに、不飽和化合物(F)の非常に有用な代表としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0103】
さらに、不飽和化合物(F)の非常に有用な代表としては、部分的または完全に(メタ)アクリル酸化されたポリオール類、例えば部分的または完全に(メタ)アクリル酸化されたトリメチロールプロパン二量体、部分的または完全に(メタ)アクリル酸化されたトリメチロールエタン二量体、部分的または完全に(メタ)アクリル酸化ペンタエリスリトール二量体である。
【0104】
例えば、(A)および(B)の合計に基づいて総量として100質量%以下、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下の不飽和化合物(F)を添加することができる。
【0105】
本発明による水性分散液は素材を染色または印刷する製剤として、またはその製剤の製造、例えば顔料染色のための染色液の製造または顔料印刷のための印刷ペーストの製造に非常に有用である。従って、本発明はさらに素材を染色または印刷する製剤として、またはその製剤の製造に本発明による水性分散液を使用する方法を提供する。同様に、本発明は少なくとも1種の本発明による水性分散液を使用して染色または印刷する方法を提供する。
【0106】
有用な素材材料としては、
セルロース材料、例えば紙、厚紙(board)、カード、木材および木質材などであって、それぞれラッカー塗装または他のコーティングがされていても良く、
金属材料、例えばアルミニウムのホイル類、シート類または加工物、鉄、銅、銀、金、亜鉛またはそれらの合金などであって、それぞれラッカー塗装、または他のコーティングがされていても良く、
ケイ酸系材料、例えばガラス、磁器、陶磁器などであって、それぞれコーティングされていても良く、
あらゆる高分子材料、例えばポリスチレン、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリレート類、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン類、ポリカーボナート類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン類および対応するブロック共重合体を含む共重合体、生分解性ポリマーおよびゼラチンなどの天然高分子、
天然および人工の滑らかな革状の皮革素材、ナパ革またはスエード革、食べ物類および化粧品類、および特に布地素材、例えば繊維、毛糸、糸、編み物、織物、不織布およびポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステル混合布、綿、綿混合布、黄麻、亜麻、麻およびラミー布などのセルロース素材、ビスコース、羊毛、絹、ポリアミド、ポリアミド混合布、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボナート、ポリプロピレン、塩化ポリビニル、ポリエステル−ポリウレタン混合布(例えば、Lycra(登録商標))ポリエチレン−ポリプロピレン混合布などの混合布、ポリエステルマイクロファイバーおよびガラス繊維布の衣類が含まれる。
【0107】
本発明による水性分散液は特にインクジェット方式用のインク、特にインクジェット方式用の水性インクの製造に有用である。本発明による水性分散液はインクジェット方式の顔料含有水性インクの製造に特に有用である。従って、さらに本発明はインクジェット方式用のインクの製造に本発明による水性分散液を使用する方法を提供する。さらに、本発明は少なくとも1種の本発明による水性分散液の利用を含む、インクジェット方式用のインクの製造方法を提供する。
【0108】
本発明の範囲において、インクジェット方式用のインクはインクジェット用インクまたは単にインクと称する。
【0109】
本発明の一実施形態において、本発明によるインクジェット用インクには本発明による水性分散液が、本発明によるインクの総質量に基づいて、1質量%〜40質量%、好ましくは2質量%〜35質量%で含まれる。
【0110】
本発明による水性分散液はインクジェット用インクとして直接使用することもできる。
【0111】
別の実施形態において、本発明によるインクジェット用インクは少なくとも1種の追加剤(extra)(G)を含むことができる。
【0112】
本発明の一実施形態において、本発明によるインクジェット用インクは本発明による水性分散液を水で希釈し、および必要に応じて1種以上の追加剤(G)と混合することによって製造される。
【0113】
本発明の一実施形態において、本発明によるインクジェット用インクは固形分含有率を3%〜40%の範囲、好ましくは35%以下、さらに好ましくは5%〜30%の範囲に設定される。
【0114】
本発明によるインクジェット方式用インクは1種以上の有機溶剤を追加剤(G)として含むことができる。低分子量のポリテトラヒドロフラン(poly−THF)は好ましい追加剤(G)であり、これは単独でまたは1種以上の高沸点で水溶性または水混和性の有機溶剤と混合して使用することができる。
【0115】
好ましい低分子量のポリテトラヒドロフランの平均分子量Mwは一般的には150〜500g/mol、好ましくは200〜300g/mol、さらに好ましくは約250g/mol(分子量分布に従う。)である。
【0116】
ポリテトラヒドロフランはテトラヒドロフランのカチオン重合による既知の方法で作製される。その生産物は直鎖ポリテトラメチレングリコール類である。
【0117】
ポリテトラヒドロフランがさらに有機溶媒と混合して追加剤(G)として使用される場合、使用される有機溶剤は一般的に高沸点(即ち、一般的に大気圧下で沸点が>100℃)であり、およびそのために保水性があり、水に溶解または混和する有機溶媒である。
【0118】
有用な溶媒には、多価アルコール類、好ましくは2個〜8個、特に3個〜6個の炭素原子を有する、非分岐および分岐の多価アルコール類、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、アドニトールおよびキシリトールなどのペンチトール類、ソルビトール、マンニトールおよびダルシトールなどのへキシトール類が含まれる。
【0119】
さらに、有用な溶媒には、ポリエチレングリコール類およびポリプロピレングリコール類、それらの低重合体(ジ−、トリ−およびテトラマー)、およびそれらのモノ−(特にC1−C6およびC1−C4)アルキルエーテル類が含まれる。好ましくは、ポリエチレンおよびポリプロピレングリコール類は分子量Mnが100〜6000g/molの範囲、特に〜1500g/mol、特に150〜500g/molである。例として、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジ−、トリ−およびテトラ−1,2−および−1,3−プロピレングリコール、およびジ−、トリ−およびテトラ−1,2−および−1,3−プロピレングリコールモノメチル、モノエチル、モノ−n−プロピル、モノイソプロピル、およびモノ−n−ブチルエーテルが挙げられる。
【0120】
さらに、有用な溶媒には、ピロリドンおよびアルキル鎖が好ましくは1〜4個、特に1個または2個の炭素原子を含む、N−アルキルピロリドン類が含まれる。有用なアルキルピロリドン類の例としては、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンおよびN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンがある。
【0121】
特に好ましい溶媒の例としては、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(Mw300〜500g/mol)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ピロリドン、N−メチルピロリドンおよびN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンである。
【0122】
ポリテトラヒドロフランは1種以上(例えば2、3または4種)の上記に列挙した溶媒と混合することができる。
【0123】
本発明の一実施形態において、本発明によるインクジェット方式用インクは0.1質量%〜80質量%、好ましくは2質量%〜60質量%、さらに好ましくは5質量%〜50質量%、最も好ましくは10質量%〜40質量%の非水溶媒を含むことができる。
【0124】
特に好ましい溶媒の組合せを含めて、追加剤(G)として使用される非水溶媒には、溶媒混合物の保水効果をさらに高めるために、好ましくは尿素を(一般的に、顔料製剤の質量に基づいて、0.5質量%〜3質量%の範囲で)補うことができる。
【0125】
本発明によるインクジェット方式用インクは、特に水性インクジェット用インクに印刷および塗装業界において慣用されている追加剤(G)をさらに含むことができる。例としては、保存剤、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(Avecia Lim.からProxelブランドとして市販されている)およびそのアルカリ金属塩類、グルタルアルデヒドおよび/またはテトラメチロールアセチレンジウレア、Protectols(登録商標)、抗酸化剤、脱気剤/消泡剤、例えばアセチレンジオール類および一般的にはアセチレンジオール1molに対して20〜40molのエチレンオキサイドが含まれ、分散効果を有するエトキシ化アセチレンジオール類、粘度調節剤、フロー剤(flow agents)、湿潤剤(例えばエトキシ化またはプロポキシ化脂肪またはオキソアルコール類、プロピレンオキサイド−エチレンオキサイドブロック共重合体、エトキシ化オレイン酸またはアルキルフェノール類、アルキルフェノールエーテル硫酸エステル類、アルキルポリグリコシド類、アルキルホスホン酸エステル、アルキルフェニルホスホン酸エステル、アルキルリン酸エステル、アルキルフェニルリン酸エステルまたは好ましくはポリエーテルシロキサン共重合体、特にアルコキシ化2−(3−ヒドロキシプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、これは一般的に7〜20、好ましくは7〜12のエチレンオキサイド単位、および2〜20、好ましくは2〜10ブロックのプロピレンオキサイド単位を含み、顔料製剤に0.05質量%〜1質量%が含まれる)、沈殿防止剤、光沢改良剤、流動促進剤、接着改良剤、抗スキニング剤、つや消し剤、乳化剤、安定剤、疎水化剤、光調節剤(light control additives)、手触り改良剤(hand improvers)、トリエタノールアミンなどの塩基類または酸類、特にpHを調節するための乳酸またはクエン酸などのカルボン酸が含まれる。これらの薬剤は本発明によるインクジェット方式用インクの構成要素の一部であり、それらの総量は本発明の顔料製剤、特に本発明のインクジェット方式用のインクの重量を基準として、一般的に2質量%、特に1質量%である。
【0126】
有用な追加剤(G)には、さらにアルコキシ化された、またはアルコキシ化されていないアセチレンジオール類、例えば一般式II:
【0127】
【化8】

【0128】
[上記式中、
AOは同一のまたは異なるアルキレンオキサイド単位、例えばプロピレンオキサイド単位、ブチレンオキサイド単位、特にエチレンオキサイド単位を表わし、
4、R5、R6およびR7はそれぞれ同一または異なっていても良く、C1−C10−アルキル、分岐したまたは非分岐の、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n-ノニル、n−デシル、より好ましくはC1-C4-アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、及び水素から選択され、
bはそれぞれ、同一または異なっていても良く、0〜50、好ましくは0または1〜30、さらに好ましくは3〜20の範囲の整数から選択され、
本発明の好ましい実施形態においては、R5またはR7はメチルである。]で表される化合物が含まれる。
【0129】
本発明の好ましい実施形態においては、R5およびR7はメチルであり、R4およびR6はイソブチルである。
【0130】
その他の好ましい追加剤はアルコキシ化されたまたはアルコキシ化されていない式III:
【0131】
【化9】

【0132】
[上記式中、bは上記に規定したとおりである。]
で表されるシリコン化合物である。
【0133】
さらに、本発明によるインクジェット方式用インクは本発明による水性分散液の作製に使用された光開始剤(D)の他にさらに光開始剤を含むことができ、それは上記に示した光開始剤から選択される。
【0134】
本発明の一実施形態において、本発明によるインクジェット方式用インクは2〜80mPa・s、好ましくは3〜40mPa・s、さらに好ましくは25mPa・s以下の範囲の動的粘度を有する。動的粘度はドイツ標準規格DIN53018に従って23℃で測定される。
【0135】
本発明の一実施形態において、本発明によるインクジェット方式用インクの表面張力は24〜70mN/mの範囲、特に25〜60mN/mの範囲である。表面張力はドイツ標準規格DIN53993に従って25℃で測定される。
【0136】
本発明の一実施形態において、本発明によるインクジェット方式用インクのpHは5〜10の範囲、好ましくは7〜9の範囲である。
【0137】
本発明のインクジェット方式用インクは全体に有利な性能特性、特に、優れた印刷開始性能および優れた持続した使用性能(コゲーション(kogation))および、特に好ましい溶媒の組合せが使用された場合、優れた染色性能および高質の印刷イメージ、即ち、高い輝度及び陰影の深さ、及び乾燥摩擦、光、水及び湿潤摩擦堅牢性を有する。それらは特にコーティングされた、またはそのままの紙および布地素材の印刷に有用である。
【0138】
さらに、本発明の一態様は本発明によるインクジェット方式用インクの製造方法である。本発明のインクジェット方式用インクの製造方法には、少なくとも1種の本発明による水性分散液、水および必要に応じて少なくとも1種の追加剤(G)を互いに、例えば1以上の工程により混合することが含まれる。
【0139】
有用な混合技術には、例えば攪拌および激しい振とう、および例えばボールミルまたは攪拌ボールミルにおける分散が含まれる。
【0140】
本発明による水性分散液を混合する際に、水、必要に応じて(C)、必要に応じて(D)、必要に応じて(E)、必要に応じて(F)および必要に応じて(G)を添加する順序はそれ自体重要ではない。
【0141】
本発明の一変形例においては、最初に少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)を合成し、次いで顔料(B)とともに分散し、その後1種以上の必要な添加物(C)、(D)、(E)、(F)および/または(G)とともに混合し、混合の前後に水で希釈することができる。
【0142】
本発明の他の一変形例においては、少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)および少なくとも1種のポリウレタン(C)を合成し、次いで(B)とともに分散し、水で希釈し、1種以上の必要な添加物(D)、(E)、(F)および/または(G)とともに混合する。
【0143】
本発明の他の一変形例においては、少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)を合成し、次いで顔料(B)および少なくとも1種の必要な添加物(C)、(D)、(E)、(F)および(G)とともに分散する。
【0144】
本発明の他の一変形例においては、少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)および少なくとも1種のポリウレタン(C)を合成し、次いで顔料(B)および少なくとも1種の必要な添加物(D)、(E)、(F)、および(G)とともに分散する。
【0145】
さらに、本発明の一態様は少なくとも1種の本発明によるインクジェット方式用したインクジェット方式によるインクシート状または三次元素材を印刷する方法(以下、発明印刷方法と称する。)である。発明印刷方法の実施のため、少なくとも1種の本発明によるインクジェット用インクが素材に印刷される。発明印刷方法の好ましい一変形例には、少なくとも1種の本発明のインクジェット用インクを素材に印刷し、次いで化学線による処理することが含まれる。
【0146】
インクジェット方式において、一般的に水性インクは小さい液滴として直接素材に吹き付けられる。インクがノズルを通じ一定の速度で押し出され、噴出液が印刷する構図に従い電場によって素材に方向づけられる方式のコンティニュアス型、およびインクが着色した点として射出される中断式またはドロップ・オン・デマンド方式があり、後者の方式はピエゾクリスタル素子式または加熱中空針式(バブルまたはサーマルジェット方式)いずれもインクシステムに圧力をかけ、インクの液滴を吐きだすことによる方式である。これらの技術はText. Chem. Color, 19巻(8)、23〜29頁、1987年、および21巻(6)、27〜32頁、1989年に記載されている。
【0147】
本発明のインクは特にバブルジェット(登録商標)方式およびピエゾクリスタル素子による方式に有用である。
【0148】
本発明による水溶性放射線硬化性生産物(A)は化学線によって硬化される。例えば、200nm〜450nmの範囲の波長を有する化学線が有用である。例えば、70mJ/cm2〜2000mJ/cm2の範囲のエネルギーを有する化学線が有用である。例えば、化学線は連続してまたはフラッシュ式で適用することができる。
【0149】
本発明の一実施形態において、印刷後化学線処理前の素材は、例えば熱または赤外線放射により中間乾燥することができる。適切な条件の例としては、温度30℃〜120℃の範囲で、10秒〜24時間の期間、好ましくは30分以下、さらに好ましくは5分以下である。有用な赤外線放射には、例えば波長800nmを超える赤外線放射が含まれる。有用な中間乾燥装置には、例えば熱式中間乾燥用の真空乾燥器を含む乾燥器、および赤外線ランプが含まれる。
【0150】
同様に、化学線の適用に伴う熱は中間乾燥効果を有することができる。
【0151】
さらに、本発明は素材、特に、上記に規定した発明印刷方法の1種によって印刷され、特にはっきりと印刷された画像または素描、および優秀な手触りが顕著である布地素材を提供する。さらに、本発明により印刷された素材はソフトスポットをほとんど有さない。
【0152】
本発明のさらなる実施形態において、2種以上好ましくは3種以上の異なる本発明によるインクジェット方式用インクをそれぞれ異なる色を有する異なる顔料を含むインクを一式に組み合わせることができる。
【0153】
本発明はさらに、少なくとも1種の顔料(B)および少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)を分散することによって製造された少なくとも部分的に包囲された顔料であって、その放射線硬化性ポリウレタン(A)が、
(a)少なくとも1種のジイソシアナートと、
(b)少なくとも2個のイソシアナートと反応性のある基を有する、少なくとも1種の化合物及び
(c)少なくとも1種の一般式I:
【0154】
【化10】

【0155】
[上記式中、
1及びR2は同一または異なっていても良く、水素及びC1-C10-アルキルから独立して選択され、
1は酸素及びN-R3から選択され、
1は非置換、またはC1-C4-アルキル、フェニルまたはO-C1-C4アルキルによって単一または複数置換されたC1-C20-アルキレンから選択され、これらのC1-C20-アルキレンは、その1個以上の隣接しないCH2基が酸素に置換されていても良く、
2は水酸基およびNH-R3から選択され、
3はそれぞれ、同一または異なっていても良く、水素、C1-C10-アルキル及びフェニルから選択される。]
で表される化合物との反応によって得られることを特徴とする顔料を提供する。
【0156】
本発明による少なくとも部分的に包囲された顔料は特にインクジェット方式用のインクの製造に有用である。
【0157】
本発明による少なくとも部分的に包囲された顔料の製造方法は上記に記載されており、同様に本発明の対象の一部である。
【0158】
本発明による少なくとも部分的に包囲された顔料は本発明による水性分散液から、例えば乾燥、凍結乾燥、ろ過、またはそれらの組合せにより、水を除去することによって勝算がある。
【0159】
本発明を実施例により説明する。
【実施例1】
【0160】
一般的準備事項:
それぞれの場合、NCO含有率はドイツ標準基準DIN53185に従い、滴定法で測定した。
本発明による顔料の包囲の程度は凍結割断法を用いて透過電子顕微鏡により測定した。
テトラヒドロフラン(THF)は使用前にナトリウム/ベンゾフェノンを加え蒸留することにより乾燥した。
固形分含有率:本発明の範囲において%は全て質量%である。本発明の範囲において固形分含有率は全て150℃で30分乾燥することで測定する。
【0161】
I. 放射線硬化性ポリウレタンの作製
I.1 ポリウレタノールの作製
イソフタル酸、アジピン酸および1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン(異性体混合物)をモル比1:1:2で重縮合させることにより作製した、分子量Mw2400g/molおよびヒドロキシル価140mgKOH/gであるポリエステルジオール(b.1.1)の239.7gを130℃に加熱した。得られた融液を攪拌機、還流冷却器、ガス給入管および滴下漏斗を装備した2Lの反応器へ移し、窒素雰囲気下にて130℃で加熱した。ポリエステルジオール(b.1.1)が透明な融液となった時点で、攪拌しながら80℃に冷却した。その後、36.9gのネオペンチルグリコール(b.1.2)および1,120.7gの1−ジメチロールプロピオン酸(b.1.3)を60℃に冷却する前に加えた。その後、750gのテトラヒドロフラン(THF)、308.2gのジイソシアナート(a.1)および308.2gのヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)(a.1)を加えた。その後、1000ppm(HDIに基づいて)のジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を加え、滴定法で測定したNCO含有率が総反応混合液に基づいて、1.3質量%に減少するまで60℃で攪拌した。その後、反応混合液を氷浴により室温に冷却し、47.3gのTHFに溶解した47.3gのジエタノールアミンを加えて反応を停止した。続いて、酸性官能基を91.1gのTHFに溶解した91.1gのトリエタノールアミンで中和し、ポリウレタノールを得た。
【0162】
I.2 放射線硬化性ポリウレタン(A.1)の作製
15.6gのイソホロンジイソシアナート(IPDI)を46.7gのTHFと混合し、混合液を50℃に加熱し、IPDIに基づいて130質量ppmのジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を加えた。その後、24.4gのTHF中の8.1gのアクリル酸2−ヒドロキシエチル(d.1)を加えた。滴定法で測定したNCO含有率が総反応混合液に基づいて、3.1質量%に低下するまで、50℃で攪拌し、その時点で551.1gの実施例I.1のポリウレタノールを加え、さらに総反応混合液に基づいて、0.2質量%のジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を加えた。混合液を滴定法でNCOが測定できなくなるまで60℃で加熱し、攪拌した。次いで、900gの水を加え、THFを蒸留により除去し、動的光散乱法の測定により、22nmの平均粒子径を有する放射線硬化性ポリウレタン(A.1)の水性分散液(固形分含有率25質量%)を得た。C−C二重結合密度は0.23mol/kg(A.1)であった。
【0163】
I.3 放射線硬化性ポリウレタン(A.2)の作製
30.0gのイソホロンジイソシアナート(IPDI)を90.0gのTHFと混合し、混合液を50℃に加熱し、IPDIに基づいて130質量ppmのジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を加えた。その後、47.0gのTHF中の15.7gのアクリル酸2−ヒドロキシエチル(d.1)を加えた。滴定法で測定したNCO含有率が総反応混合液に基づいて、3.1質量%に低下するまで、50℃で攪拌し、その時点で532.9gの実施例I.1のポリウレタノールを加え、さらに総反応混合液に基づいて、0.2質量%のジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を加えた。混合液を滴定法でNCOが測定できなくなるまで60℃で加熱し、攪拌した。次いで、936gの水を加え、THFを蒸留により除去し、動的光散乱法の測定により、13nmの平均粒子径を有する放射線硬化性ポリウレタン(A.2)の水性分散液(固形分含有率25質量%)を得た。C−C二重結合密度は0.43mol/kg(A.2)であった。
【0164】
I.4 放射線硬化性ポリウレタン(A.3)の作製
42.2gのイソホロンジイソシアナート(IPDI)を126.7gのTHFと混合し、混合液を50℃に加熱し、IPDIに基づいて130質量ppmのジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を加えた。その後、66.2gのTHF中の22.1gのアクリル酸2−ヒドロキシエチル(d.1)を加えた。滴定法で測定したNCO含有率が総反応混合液に基づいて、3.1質量%に低下するまで、50℃で攪拌し、その時点で495.0gの実施例I.1のポリウレタノールを加え、さらに総反応混合液に基づいて、0.2質量%のジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を加えた。混合液を滴定法でNCOが測定できなくなるまで60℃で加熱し、攪拌した。次いで、935gの水を加え、THFを蒸留により除去し、動的光散乱法の測定により、23nmの平均粒子径を有する放射線硬化性ポリウレタン(A.3)の水性分散液(固形分含有率25質量%)を得た。C−C二重結合密度は0.61mol/kg(A.3)であった。
【0165】
I.5 放射線硬化性ポリウレタン(A.4)の作製
44.5gのイソホロンジイソシアナート(IPDI)を133.4gのTHFと混合し、混合液を50℃に加熱し、IPDIに基づいて130質量ppmのジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を加えた。その69.7gのTHF中の23.2gのアクリル酸2−ヒドロキシエチル(d.1)を加えた。滴定法で測定したNCO含有率が総反応混合液に基づいて、3.1質量%に低下するまで、50℃で攪拌し、その時点で394.7gの実施例I.1のポリウレタノールを加え、さらに総反応混合液に基づいて、0.2質量%のジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を加えた。混合液を滴定法でNCOが測定できなくなるまで60℃で加熱し、攪拌した。次いで、795gの水を加え、THFを蒸留により除去し、動的光散乱法の測定により、21nmの平均粒子径を有する放射線硬化性ポリウレタン(A.4)の水性分散液(固形分含有率25質量%)を得た。C−C二重結合密度は0.76mol/kg(A.4)であった。
【0166】
II. 発明の少なくとも部分的に包囲された顔料および発明の水性分散液の製造、および用途の実施例
II.1 発明の水性分散液の製造、一般的処方
発明の水性分散液を60gの0.25−0.5mmの直径のガラス球を使用してSkandex振とう装置により製造した。製造条件を表1にまとめた。各材料とガラス球をSkandexに秤取し、得られた混合物を表1に示した時間、振とうした。その後、試料を採取し、分散された顔料の平均粒子径を測定した(Courter Counter LS230による)。pHを測定し、必要に応じてトリエタノールアミンで7.5に調整した。以上により、発明の水性分散液WD.4.1〜WD.4.3が得られた。
【0167】
表1 発明の水性分散液W.D4.1〜WD.4.3の材料および製造条件
【0168】
【表1】

【0169】
材料の量は明示の記載が無い限り常にgで記録した。
殺生物剤1は20質量%1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンのプロピレングリコール溶液である。
(A.4)は固形分含有率を考慮される。
【0170】
さらなる発明の水性分散液が、上記に示した手順のうち、(A.4)をそれぞれ(A.1)、(A.2)および(A.3)に置き換えた方法により得られた。得られた発明の水性分散液を以下に示す。
【0171】
WD.1.1(マゼンタ、(A.1)使用)、
WD.1.2(黒、(A.1)使用)、
WD.1.3(黄、(A.1)使用)、
WD.2.1(マゼンタ、(A.2)使用)、
WD.2.2(黒、(A.2)使用)、
WD.2.3(黄、(A.2)使用)、
WD.3.1(マゼンタ、(A.3)使用)、
WD.3.2(黒、(A.3)使用)、
WD.3.3(黄、(A.3)使用)。
【0172】
II.2 発明のインクジェット方式用のインクの作製
II.2.1 発明のインクジェット方式用のマゼンタインクT4.1.1の作製
以下の材料、
30gのWD.4.1、
1gの尿素、
0.16gの光開始剤(D.1)、
3gのトリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、
7gのポリエチレングリコール(Mn=400g/mol)、
8gのグリセロール、
0.8gの20質量%ベンズイソチアゾリン−3−オンのプロピレングリコール溶液、
0.5gの式[(CH3)Si−O]2Si(CH3)−O(CH2CH2O)8−Hのエトキシ化トリシロキサン、
49.54gの蒸留水、
をガラスビーカー中で攪拌して混合した。
【0173】
ガラス繊維フィルター(分画サイズ1μm)を用いてろ過することにより、発明のインクT4.1.1が得られた。発明のインクT4.1.1はpH7.6および25℃において4.2mPa・sの動的粘度であった。
【0174】
【化11】

【0175】
II.2.2 発明のインクジェット方式用のインクT4.1.2の作製
以下の材料、
30gのWD.4.1、
1gの尿素、
0.16gの光開始剤(D.1)、
3gのトリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、
7gのポリエチレングリコール(Mn=400g/mol)、
8gのグリセロール、
0.35gのジプロピレングリコールジアクリレート
0.8gの20質量%ベンズイソチアゾリン−3−オンのプロピレングリコール溶液、
0.5gの式[(CH3)Si−O]2Si(CH3)−O(CH2CH2O)8−Hのエトキシ化トリシロキサン、
49.24gの蒸留水、
をガラスビーカー中で攪拌して混合した。
【0176】
ガラス繊維フィルター(分画サイズ1μm)を用いてろ過することにより、本発明のインクT4.1.2が得られた。発明のインクT4.1.2はpH7.6および25℃において4.2mPa・sの動的粘度であった。
III.発明のインクジェット方式用のインクによる印刷試験
本発明のインクT4.1.1およびT4.1.2はそれぞれ、カートリッジに充填され、Epson Mimaki Tx2 720dpiを用いて紙に印刷された。A4用紙5枚にノズルの詰まり無しに印刷できた。摩擦堅牢性試験は良い結果であった。
【0177】
さらに、本発明のインクT4.1.1およびT4.1.2はそれぞれ、Mimaki TX2 720X720dpiプリンタを用いて綿布に印刷された。
【0178】
その後、3種の変形例により定着化した。変形例1は熱乾燥し、続いて光照射し、変形例2は化学線照射し、続いて熱乾燥し、および変形例3は、熱乾燥をせず、化学線照射をした。
【0179】
熱乾燥は乾燥器にて100℃、5分間乾燥した。
【0180】
化学線の照射は2個の異なるUVランプ:Eta Plus M−400−U2H、Eta−Plus M−400−U2HCを有するIST社のUV照射機を使用して実施した。照射時間は1000mJ/cm2のエネルギーで10秒間とした。
【0181】
表2に示したように、本発明の印刷された綿布S4.1.1〜S4.3.1(インクT4.1.1使用)およびS4.1.2〜S4.3.2(インクT4.1.2使用)が得られ、摩擦堅牢性をISO−105−D02:1993および洗浄堅牢性をISO−105−C06:1994に従って測定した。
【0182】
表2 本発明により印刷された綿布の堅牢性
【0183】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)に少なくとも部分的に包囲された顔料(B)を含む水性分散液であって、少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)が、
(a)少なくとも1種のジイソシアナートと、
(b)少なくとも2個のイソシアナートと反応性のある基を有する、少なくとも1種の化合物及び
(c)少なくとも1種の一般式I:
【化1】

[上記式中、
1及びR2は同一または異なっていても良く、水素及びC1-C10-アルキルから独立して選択され、
1は酸素及びN-R3から選択され、
1は非置換、またはC1-C4-アルキル、フェニルまたはO-C1-C4アルキルによって単一または複数置換されたC1-C20-アルキレンから選択され、これらのC1-C20-アルキレンは、その1個以上の隣接しないCH2基が酸素に置換されていても良く、
2は水酸基およびNH-R3から選択され、
3はそれぞれ、同一または異なっていても良く、水素、C1-C10-アルキル及びフェニルから選択される。]
で表される化合物との反応によって得られることを特徴とする水性分散液。
【請求項2】
放射線硬化性ポリウレタン(A)が超分岐ポリウレタンではない請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
少なくとも2個のイソチアナートと反応性のある基を有する少なくとも1種の化合物(b)が1,1,1−トリメチロール-C1-C4-アルキルカルボン酸類、クエン酸、1,1−ジメチロール−C1-C4-アルキルカルボン酸類、1,1−ジメチロール-C1-C4-アルキルスルホン酸類、1分子当たり平均3〜300個のC2−C3−アルキレンオキサイド単位を有するポリ-C2-C3-アルキレングリコール類、少なくとも1種の脂肪族または脂環式ジオールと、少なくとも1種の脂肪族、芳香族または脂環式ジカルボン酸との重縮合により作成されるポリエステルジオール類から選択される、請求項1または請求項2に記載の水性分散液。
【請求項4】
ジイソシアナート(a)と少なくとも2個のイソシアナートと反応性のある基を有する化合物(b)との反応により得られる少なくとも1種のポリウレタン(C)をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項5】
顔料(B)がポリウレタン(C)によって部分的に包囲された請求項4記載の水性分散液。
【請求項6】
少なくとも1種の光開始剤(D)を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項7】
少なくとも1種の光開始剤(D)がα−開裂型または水素引き抜き型光開始剤である請求項6に記載の水性分散液。
【請求項8】
少なくとも1種の顔料(B)を放射線硬化性ポリウレタン(A)で分散させる工程、および必要に応じて、その分散前または後に少なくとも1種のポリウレタン(C)および/または少なくとも1種の光開始剤(D)を加える工程を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性分散液の製造方法。
【請求項9】
分散をミリング法で行う請求項8に記載の方法。
【請求項10】
素材を染色または印刷するための製剤として、またはその製剤の製造に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性分散液を使用する方法。
【請求項11】
少なくとも1種の請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性分散液の使用することを含む素材を染色または印刷する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法により染色または印刷された素材。
【請求項13】
少なくとも1種の請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性分散液の使用を含むインクジェット方式用のインクの製造方法。
【請求項14】
少なくとも1種の請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性分散液を含むインクジェット方式用のインク。
【請求項15】
請求項14に記載のインクジェット方式用のインクの使用を含む素材を印刷する方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法により得られる印刷された素材。
【請求項17】
少なくとも1種の顔料(B)及び少なくとも1種の放射線硬化性ポリウレタン(A)を分散して製造される少なくとも部分的に包囲された顔料であって、その放射線硬化性ポリウレタン(A)が、
(a)少なくとも1種のジイソシアナートと、
(b)少なくとも2個のイソシアナートと反応性のある基を有する、少なくとも1種の化合物及び
(c)少なくとも1種の一般式I:
【化2】

[上記式中、
1及びR2は同一または異なっていても良く、水素及びC1-C10-アルキルから独立して選択され、
1は酸素及びN-R3から選択され、
1は非置換、またはC1-C4-アルキル、フェニルまたはO-C1-C4アルキルによって単一または複数置換されたC1-C20-アルキレンから選択され、これらのC1-C20-アルキレンは、その1個以上の隣接しないCH2基が酸素に置換されていても良く、
2は水酸基およびNH-R3から選択され、
3はそれぞれ、同一または異なっていても良く、水素、C1-C10-アルキル及びフェニルから選択される。]
で表される化合物との反応によって得られることを特徴とする顔料。

【公表番号】特表2008−531779(P2008−531779A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556610(P2007−556610)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060233
【国際公開番号】WO2006/089934
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】