説明

少なくとも部分的に非晶質の状態である敏感な活性物質の粉末組成物

本発明は、0.1から50重量%の敏感な活性物質と50から99.99重量%の賦形剤を含有する敏感な活性物質と賦形剤の凍結乾燥混合物である粉末製剤であって、少なくとも0.1重量%の混合物が非晶質の状態であり、実質的に減少された吸湿性を有する製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸湿性を減少した敏感な活性物質の安定な製剤、及び特に凍結乾燥によってその様な製剤を調製する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
凍結乾燥(凍結して乾燥する)及び乾燥技術は、敏感な活性物質を安定化するための方法としてよく知られている。敏感な活性物質は不安定な活性物質であると一般的に解されており、敏感な有機及び/または無機分子、生体高分子、例えばポリペプチド、タンパク質、酵素、ホルモン、ビタミン、抗生物質、ポリサッカリド、脂質、死細胞全体若しくは生細胞全体(ウイルス(ファージを含む)、細菌、真菌、及び/または真核細胞を含む)を含む。その様な活性物質は、ワクチン;醸造、ベーキング、コンポスト化、及び/またはサイレージの生産を開始する生物;溶剤、抗生物質、及び/またはバイオプロダクトなどの工業生産のために使用されて良い。
【0003】
凍結乾燥または乾燥品として提供される、生細胞またはそれらのバイオプロダクトである製薬品は、1つ以上の以下の特性を有する乾燥製品であることを確実にして製剤されるべきである:
・活性状態である;
・保管時に安定である;
・詰めるまたは固めると凝集する;
・指定の水分量まで乾燥される;
・製薬学的及び/または商業的に許容可能であるために商業的に提供可能である;及び
・可溶性(好ましくは容易に溶解可能)である
【0004】
更に、前記乾燥製品が粉末の形態で散布または使用されることが意図される際に、製薬学的に有効であるか、あるいは凝集、及びエアロゾル、スプレー装置、排出装置、若しくは吸入器の閉塞から前記粉末を防止する個別の粒子サイズを誘導することが必須である可能性がある。必要である場合には、前記乾燥粉末は脱凝集、混合、粉砕、調剤、及び/またはパッケージング等のような更なる処理に耐えられるべきである。
【0005】
これらの特性を改善するために、活性成分と組み合わせて、添加剤及び/または賦形剤が製剤中に含まれて良い。
【0006】
物理的な個々の構成は以下のようであって良い:
・全体的に結晶質;
・全体的に非晶質;または
・はじめ結晶質であるが、乾燥若しくは凍結乾燥処理によって非晶質の形態に変化する。
【0007】
特定の敏感な活性物質(例えば、無機若しくは有機の分子、またはポリペプチド、タンパク質、酵素、死細胞、若しくは生細胞を含むバイオプロダクト)が乾燥される際には、非晶質の状態の持続性が必要な条件である可能性があることが認識されている。そのため、その様な不安定な活性物質を安定化するために、分子レベルで賦形剤による特定の保護を必要とする可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、粉末が大気に曝露される場合に、乾燥後の非晶質の状態の持続性が一般的には乾燥した製品への水分及び空気の吸収を生じさせる。このことが前記製品を分解させ、及び/または投与を困難にする。
【0009】
水分及び空気の浸入を防止するために、製品を回収する前に凍結乾燥器若しくは乾燥器内の容器の製品を密封すること、または製品を凍結乾燥器若しくは乾燥器から不活性な水分を含まない雰囲気下に移して、全ての更なる処理をその様な環境で実施することが必要である。その様な設備は、製品の調製のための処理の費用を増す。
【0010】
一般的には、吸入器、排出器、フラスコ、サッシェ、錠剤、若しくは経口投与のための通常の容器では、湿った空気の浸入を少量にするであろう。敏感な活性物質にとって、この浸入は製品の活性若しくは保管時の安定性が妥協されるのに十分である可能性がある。前記製品が乾燥粉末の形態である場合には、前記製品が合着して排出器または吸入器を有意に妨害することによって、その有効性に不利な影響を与える可能性もある。
【0011】
水分または空気の吸収の特定の不利な効果は以下を含む:
・鼻若しくは肺への適用のための粉末エアロゾル排出器若しくは吸入器から個別の粒子として散布されることが意図される粉末への水分の吸収に由来する粒子サイズの変化、または経口、耳、局所的(傷、体内器官、若しくは皮膚への適用)、目、若しくは肛門への適用のためのふりかけ式容器若しくは排出器によって散布されることが意図される粉末の場合の、それら降りかけ式容器若しくは排出器の有効性が妥協されるような粒子サイズ及び物理特性の変化。
・上限を超える粉末の水分量の曝露または増大は、減少された保管時の安定性を生じさせる製品の化学的な分解の誘導により、保管時の安定性も減少させる可能性がある。
・上述の水分の吸収による粉末のサイズ分布及び物理特性の変化と同様に、粉末製品に浸入する酸素若しくは二酸化炭素のような反応性雰囲気ガスが、注射若しくは投与のために溶かされることが意図される、組成される若しくは出発物質である培養物または乾燥した製品として投与される、粉末として投与されることが意図される医薬品若しくは製品の活性、有効性、若しくは保管時の安定性に影響を与える可能性がある。
【0012】
これらの問題に対する解決法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、敏感な活性物質と賦形剤の凍結乾燥混合物である粉末製剤で:
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から50重量%の敏感な活性物質、
50から99.99まで、好ましくは99.9まで、より好ましくは99.5重量%までの賦形剤を含む製剤であって、
少なくとも前記混合物の0.1重量%が非晶質の状態である製剤を提供する。
【0014】
驚くべきことに、前記製剤の敏感な活性物質と賦形剤を安定な結晶質/非晶質のマトリックスに組み合わせることによって、前記製剤は有意に減少された吸湿性を有することを発見した。75%の相対湿度の環境で8時間後に前記製剤の重量の割合の増加によって測定される本発明に係る製剤の吸湿性は好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、最も好ましくは2重量%未満である。かくして、本発明は、粉末製剤が大気に曝される際に破砕及び最終的なパッケージングのために凍結乾燥器若しくは乾燥器からの回収後に乾燥した製品を保護する、またはその主な容器、例えばエアロゾルスプレーまたは排出器において前記製剤の保管若しくは散布の間に湿った空気が前記製品へ浸入することを防止する必要を除外する。
【0015】
本発明によれば、本発明に係る製剤を含む剤形が更に提供される。前記剤形は、任意に、前記製剤を含む容器(例えば、カプセル(特にゼラチンカプセル)、経口投与用容器、フラスコ、若しくはサッシェ)、または前記製剤から形成されたもの(例えば錠剤)であって良い。
【0016】
本発明によれば、経鼻的な投与によるヒトまたは動物の体の治療的処置における使用のための、本発明に係る製薬製剤も提供される。
【0017】
本発明によれば、経鼻的な投与によるヒトまたは動物の体の治療的処理における使用のための医薬の製造における、本発明に係る製剤の使用が更に提供される。
【0018】
本発明の製剤では、適切には0.1から、好ましくは0.5から、より好ましくは1から50重量%の混合物が非晶質の状態である。
【0019】
例えば、本発明の1つの製剤は:
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から50重量%の敏感な活性物質を非晶質の状態で含有して良く、
50から99.99まで、好ましくは99.9まで、より好ましくは99.5重量%までの賦形剤を結晶質の状態で含有して良く、
0から5重量%の賦形剤を非晶質の状態で含有して良い。
【0020】
例えば、本発明の他の製剤は:
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から50重量%の敏感な活性物質を結晶質の状態で含有して良く、
50から99.89まで、好ましくは99.8まで、より好ましくは99.4重量%までの賦形剤を結晶質の状態で含有して良く、
0.1から5重量%の賦形剤を非晶質の状態で含有して良い。
【0021】
より具体的に、本発明の製剤は:
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から25重量%の非晶質または結晶質の状態の敏感な活性物質を含有して良く、
75から99.49まで、好ましくは99.4まで、より好ましくは99重量%までの結晶質の状態の賦形剤を含んで良く、
0.5から5重量%の非晶質の状態の賦形剤を含んで良い。
【0022】
敏感な活性物質のための、少量(0.1から10重量%、好ましくは0.1から1重量%)の添加剤/安定剤(例えば、抗酸化剤、フリーラジカル捕捉剤、及び/またはメイラード(Maillard)反応抑制剤)が望まれる場合には含まれて良い。抗酸化剤、フリーラジカル捕捉剤、及び/またはメイラード反応抑制剤は、乾燥処理によって誘導される酸化、フリーラジカルの誘導、若しくはメイラード反応に由来する保管時の安定性の損失を防止するために有用である。
【0023】
本発明で使用される賦形剤及び敏感な活性物質の凍結乾燥混合物は、一般的には、前記賦形剤と前記敏感な活性物質の水溶液の凍結乾燥混合物と同一である組成物である。そのため、本発明に係る製剤の平均的な粒子は、敏感な活性物質と賦形剤を最初の溶液のそれらの割合と同じ割合の量で含有するであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る凍結乾燥が意図される敏感な活性物質と賦形剤の結晶質/非晶質の特性は3つの群に評価して良い:
【0025】
1.結晶質の状態であり、凍結乾燥の工程の間を通じて、この形態を持続して乾燥した結晶質の状態のマトリックスを提供する活性物質及び賦形剤。前記賦形剤は結晶質として規定されて良く、共晶塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム)、特定のアミノ酸(例えば、グリシン)、特定の糖アルコール(例えば、マンニトール、及びソルビトール)、並びに他の有機分子より選択されて良い。
【0026】
2.結晶質であるが、凍結によって非結晶質または非晶質の状態に誘導され、この状態になると、後に続く乾燥、最終的な仕上げ、保管、及び投与の間を通じて非晶質のままである可能性がある活性物質及び賦形剤。例えば、特定のアミノ酸(例えば、グルタミン若しくはセリン)、モノサッカリド(例えば、グルコース)、ジサッカリド(例えば、スクロース、トレハロース、ラクトース)、トリサッカリド(例えば、ラフィノース)、ポリサッカリド、特定のポリエチレングリコール(例えば、約6000の分子量を有するポリエチレングリコール)、特定のポリペプチド(例えば、ポリアミノ酸)、及び/またはポリマー(例えば、ポリd-乳酸)が含まれる。
【0027】
3.非結晶質(非晶質)であり、後に続く乾燥、調剤、及び最終的な仕上げの工程、保管、並びに投与の間を通じて非晶質の状態を維持する活性物質及び/または賦形剤。例えば、特定のサッカリド(例えば、非晶質のラクトース)、特定のポリエチレングリコール(例えば、1000以下の分子量を有するポリエチレングリコール)、ポリグリカン、ポリサッカリド(例えば、デキストラン)、シクロデキストリン、ポビドン、微細セルロース、特定のポリマー(例えば、ジャガイモデンプン)、並びにタンパク質が含まれる。
【0028】
群2と3の化合物は本発明の目的のための非晶質として規定される。
【0029】
前記敏感な活性物質は好ましくは不安定な活性物質であり、特に不安定な有機及び/または無機分子、生体高分子、ポリペプチド、タンパク質、酵素、ホルモン、ビタミン、抗生物質、ポリサッカリド、脂質、死細胞若しくは生細胞の全体(特にウイルス(ファージを含む)、細菌、真菌、及び/または真核細胞)である。不安定な物質は、標準状態(つまり、環境の温度、気圧、及び湿度)で分解される、または標準状態で化学的に反応性若しくは不安定な物質であると一般的に解される。
【0030】
前記敏感な活性物質は、好ましくは酵素(例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ、L-アスパラギナーゼ、若しくはフェニルアラニンアンモニアリアーゼ)、種培養のための生酵母(例えば、Saccharomyces cerevissiae)、種培養のための生細菌(例えば、Escherichia coli)、診断使用のための生細菌(例えば、Salmonella typhimurium)、サイレージのための生細菌(例えばLactobacillus acidophilus)、弱毒化生ワクチン(例えば、インフルエンザウイルスWSN株)、または治療的使用または診断的使用のためのファージ(例えば、ファージφ174)である。
【0031】
幾つかの敏感な活性物質が単一の製剤に包含されて、より効果的な製品が提供されて良い。前記敏感な活性物質は、それ自体は活性を有さないが前記活性成分の効果を助長する、若しくはアジュバントとして働く、単一若しくは複合体である化合物の添加によって増強されて良い。
【0032】
好ましくは、賦形剤は以下のパラメータの1つ以上を満足するべきである:
・処理条件に適合する;
・前記活性物質に損傷を与えない;
・可溶性、吸収性の製品を提供する;
・保管時に安定な製品を提供する;及び
・市販できる製品を提供する。
【0033】
本発明に係る製剤は、好ましくは製薬製剤である。前記製剤が製薬製剤である場合には、賦形剤が以下のパラメータの1つ以上を満足するべきである:
・薬理学的に不活性である;及び
・動物またはヒトの組織(特に、鼻組織及び鼻の生理学的機能、または耳組織及び耳の生理学的機能、または口組織若しくは口の生理学的機能、または眼組織、若しくは眼の生理学的機能、または損傷/標的組織若しくは損傷/標的組織の生理学的機能、または肛門/消化管組織若しくは肛門/消化管の生理学的機能)によって良好に許容される。
【0034】
使用されて良い賦形剤は、サッカリド、ポリサッカリド、及び/または糖アルコールであって良い。
【0035】
用語「シクロデキストリン」は、α-、β-、及びγ-シクロデキストリン並びに/またはそれらの誘導体、例えばメチル化β-シクロデキストリンのような環状オリゴサッカリドを意味する。
【0036】
用語「サッカリド」は、モノサッカリド(例えば、グルコース)、ジサッカリド(例えば、ラクトース、マルトース、トレハロース、スクロース、及び/またはサッカロース)、並びにポリサッカリド(例えば、デキストラン)を含む。
【0037】
用語「糖アルコール」は、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、及び/またはキシリトールのようなサッカリドポリオールを意味する。
【0038】
本発明に係る製剤は保存料(つまり、殺菌剤または殺真菌剤)が必要でないという利点を有する。
【0039】
本発明に係る製薬製剤は、滅菌された流体に溶いた後に経口的に投与されて、または滅菌若しくは非滅菌の再構成用の流体に溶いた後に溶液若しくは懸濁物として使用若しくは適用されて良い。
【0040】
経鼻用注入器若しくは受動装置(passive device)を使用して、本発明に係る製薬製剤を投与しても良い。例えば、吸入器若しくは注入器にセットされるカプセルに前記製剤が収容される。針を前記カプセルに貫通させて、カプセルの上部と下部に小孔を作製して、吸入によって空気を吸い込み若しくは装置を介して空気を吹きだして、患者の鼻に粉末粒子を吐き出させる。前記製剤は、不活性ガスの高圧噴射において投与されても良く、液状有機流体に懸濁されても良い。本発明に係る製剤の経鼻的な投与に必要とされる量は、例えば、1と50mgの間、典型的には1から20mgであって良く、例えば鼻腔当たり約5から20mgで投与される。
【0041】
本発明の製剤は凍結乾燥によって一般的に調製される。前記敏感な活性物質及び賦形剤は乾燥工程に適合すべきであり、処理中の乾燥製品の移動を防止するために処理容器の内部の容量を提供するべきである(容量の減少)。
【0042】
本発明に係る製剤の更なる利点としては、全身の循環に吸収される鼻粘膜における活性物質の快適な保持及び急速な溶解に適した粒子サイズを示す最終的な乾燥された粉末を予想通りに得ることが可能なことである。本発明に係る製剤は、処理、最終的な仕上げ、保存、及び投与の間を通じて安定及び均一な状態である粒子を含む。前記製剤は、保管時に安定で自由に流動し、最終的な容器に分配された際に全く問題を生じず、患者によって投与するために単純である。
【0043】
本発明に係る製剤の非晶質及び結晶質の量の比及び持続性は、示差走査熱量測定を含む熱分析技術によって、上述の結晶質/非晶質パラメータを遵守して決定されて良い。前記製剤の粒子サイズの分布様式は、例えば、Malvern Instruments社製のMastersizer計測器を使用するレーザー回折技術を使用して粒子サイズの特性により規定されて良い。このレーザー回折による粉末特性決定技術は、前記製剤の乾燥粉末サンプルに対して(乾式分析)、または前記製剤が溶解しない溶媒に懸諾された前記製剤のサンプルに対して(湿式分析)直接実施されて良い。分析される各サンプルが特性決定の時点で完全に脱凝集されていることを確実にする必要があり、このことは湿式分析方法を使用して最も良好に達成される。この方法とともに、粒子の塊の脱凝集は、分析前の分散剤、界面活性剤、及び/またはサンプルの超音波処理の使用によって達成されて良く、分析中のサンプルの攪拌または再循環によって維持されて良い。更に、前記サンプルの脱凝集は顕微鏡下で視覚的に確認されて良い。
【0044】
上記の結晶質/非晶質のパラメータを満たすことによって、及び前記成分の水性製剤が凍結乾燥に適合するという条件で、本発明に係る製剤が以下の特性の1つ以上を好ましく有する:
・凍結乾燥によって誘導され、維持される経鼻的な投与のために適切な粒子サイズ;
・5μm未満のサイズを通常有する小粒子のサイズ分布を最小にする;
・凍結乾燥器から回収して大気に曝す際に、前記製剤の粒子のサイズが変化せず、前記粒子が凝集または粘性になり、それにより最終的な仕上げ若しくは調剤を妨害し、薬理学的な活性に影響を与えるような程度まで水分を吸収しない;
・最終的な経鼻的に投与する粉末は、高い溶解度、改善された経鼻的な吸収、及び結果として非常に高い薬理学的若しくは生物学的な活性を示す。
【0045】
本発明によれば、医学的な治療方法であって、治療上有効量の本発明に係る製剤または治療上有効量の本発明に係る剤形をヒトまたは動物(好ましくは動物)の患者に与える工程を含む方法も提供される。
【0046】
本発明によれば:
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から50重量%の敏感な活性物質、
50から99.99まで、好ましくは99.9まで、より好ましくは99.5重量%までの賦形剤、
を含有する活性物質と賦形剤の混合溶液を形成する工程、及び少なくとも0.1重量%の凍結乾燥混合物が非晶質の状態であるように前記溶液を凍結乾燥する工程を含む、粉末製剤を調製する方法も提供される
【0047】
本発明の方法では、
・最大の昇華速度をもたらす任意の氷晶構造;
・マトリックス中の結晶質相の維持;並びに/または
・マトリックス中の非晶質相の誘導及び/若しくは維持
を提供するために、凍結条件が好ましく選択されるべきである。
【0048】
適切な凍結条件の選択は:
・溶液または懸濁物中の、前記敏感な活性物質及び結晶質または非晶質の賦形剤の化学的な性質及び濃度;
・凍結乾燥器の設計及び仕様書;
・前記製品を処理するために使用される主な容器;及び/または
・サンプルに満たされる深度
によって影響を受けるであろう。
【0049】
示差走査熱量計測、熱量の差の分析、及び抵抗の分析が最適な凍結条件を規定するために使用されて良い。本発明者は、その様な分析から、正確なマトリックス組成を誘導または維持するために適用されるヒートアニーリングサイクル(heat annealing cycle) または遅い速度で製品を凍結するのが望ましいことを発見した。例えば、約0.1から0.5℃の分速での凍結とヒートアニーリングサイクル、例えば製品を分速0.1から1.0℃で-45℃まで冷却して、-15℃まで加温して2時間維持し、-45℃まで再び冷却して乾燥前まで2時間維持を含む;が使用された。これらの値は模範のために使用されているが、前記活性物質の製剤、並びに凍結乾燥に使用される装置及び他の成分によって導入される制限に依存して変化してよい。
【0050】
例えば、適切な乾燥サイクルは、主な乾燥のために5℃まで直接的に加熱、150mTorrまでチャンバーの圧力を増大させて熱の供給の促進、20℃まで最終的な乾燥温度の増大を含む。特定の製品/処理の最適化のために設計される、このサイクルの変化は、主な(第1の)乾燥の第1段階のための15℃まで棚温度を上昇、次いでを製品への熱の供給を容易にするために300mTorrまで増大されたチャンバーの圧力で主な(第1の)乾燥の残部のため5℃まで次第に減少、引き続き最終的な(第2の)乾燥のために25℃まで棚温度の増大というサイクルを含む。
【0051】
サンプルの凍結乾燥特性を決定する因子は以下を含む:
・冷却された塊の粘度が有意に減少して前記サンプルが凍結乾燥の間に崩壊する温度を決定するガラス転移温度(Tg')。ガラス転移温度は示差走査熱量測定、熱量の差の分析、及び抵抗分析によって決定されている;
・操作上、凍結乾燥の間にサンプルが崩壊する温度は崩壊温度(Tc)として規定される。崩壊温度は凍結乾燥顕微鏡によって決定されて良い。乾燥サンプルの表面の外層の発達のような複雑な因子の非存在下では、崩壊温度とガラス転移温度は典型的に類似する;
・外層の形成及び関連する欠陥も凍結乾燥顕微鏡によって決定される。
【0052】
75%の相対湿度の環境に曝されたマンニトール及びトレハロースの凍結乾燥サンプルの重量における割合の増加を示すグラフを表す添付の図面の図を参照して一例として本発明を説明する。
【0053】
本発明を説明する以下の実施例は、特許請求の範囲を制限することを意図しない。
【実施例】
【0054】
(方法の実施例1)
以下の凍結乾燥サイクルが、約-16から-18℃のTg'またはTcを有する製剤のために効果的に使用された。これは、製品温度が約-23℃(すなわち、-18℃に操作の安全のための5℃を加えて-23℃)に維持されるべきであることを意味する。
【0055】
-45℃まで凍結
1分に0.25℃の速度で冷却
120分間維持
【0056】
主乾燥:
棚温度(工程1)-20℃
1分に1.0℃の速度で加温
1200分間維持
チャンバーの圧力は50mTorr
【0057】
棚温度(工程2)0℃
1分に1.0℃の速度で加温
720分間維持
チャンバーの圧力は50mTorr
【0058】
棚温度(工程3)5℃
1分に1.0℃の速度で加温
1000分間維持
チャンバーの圧力は50mTorr
【0059】
最終乾燥
棚温度15℃
1分に1.0℃の速度で加温
700分間維持
チャンバーの圧力は50mTorr
【0060】
(実施例2及び3)
凍結乾燥後の酵素乳酸デヒドロゲナーゼの活性を本発明に係る製剤について、及び比較する製剤について測定した。活性の測定は、その反応物であるラクトースと酵素の反応によって化学的に実施した。
【0061】
方法の実施例1で設定した凍結乾燥サイクルを使用して、以下に設定した製剤を調製した:
【0062】
比較例1:
0.1から1.5gの酵素
2.0gのマンニトール
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0063】
実施例2:
0.1から1.5gの酵素
2.0gのマンニトール
1.0gのラクトース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0064】
実施例3:
0.1から1.5gの酵素
2.0gのマンニトール
1.0gのグルコース(凍結乾燥後に非晶質)
2.0gのデキストラン(凍結乾燥後に分子量70,000の非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0065】
比較例1において、酵素は凍結乾燥工程後に8%の活性を有することを確認した。それに比べて、本発明に係る実施例2及び3の酵素は、60%の凍結乾燥後の活性を有した。
【0066】
(実施例4から7)
凍結乾燥後の酵素L-アスパラギナーゼ(抗癌剤として知られている)の活性を、本発明に係る製剤について及び比較する製剤について測定した。活性の測定は、その反応物であるL-アスパラギンと酵素の反応によって化学的に実施した。
【0067】
方法の実施例1で設定した凍結乾燥サイクルを使用して、以下に設定した製剤を調製した。
【0068】
比較例2:
0.1から1.5gの酵素
2.0gのマンニトール
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0069】
実施例4:
0.1から1.5gの酵素
2.0gのマンニトール
1.0gのグルコース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0070】
実施例5:
0.1から1.5gの酵素
2.0gのマンニトール
1.0gのラクトース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0071】
実施例6:
0.1から1.5gの酵素
2.0gのマンニトール
1.0gのスクロース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0072】
実施例7:
0.1から1.5gの酵素
2.0gのマンニトール
1.0gのトレハロース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0073】
比較例2の酵素は凍結乾燥後に1%未満の活性を有することを確認した。それと比較して、本発明に係る実施例4から7の酵素は100%の凍結乾燥後の活性を有した。
【0074】
(実施例8)
凍結乾燥後の酵素フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(薬剤として知られている)の活性を本発明に係る製剤について、及び比較する製剤について測定した。活性の測定は、その反応物であるフェニルアラニンと酵素の反応によって化学的に実施した。
【0075】
方法の実施例1で設定した凍結乾燥サイクルを使用して、以下に設定した製剤を調製した:
【0076】
比較例3:
0.1から1.0gの酵素
1.0gのマンニトール
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0077】
実施例8:
0.1から1.5gの酵素
2.0gのマンニトール
1.0gのラクトース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0078】
比較例3において、酵素は凍結乾燥後に5%未満の活性を有することを確認した。それと比較して、実施例8の酵素は70%の凍結乾燥後の活性を有した。
【0079】
(実施例9及び10)
凍結乾燥後のSaccharomyces cerevissiae(種培養のための生酵母)の生存度を本発明に係る製剤について、及び比較する製剤について測定した。生存度の測定は、固形の寒天プレートを使用して平板培養した後の真菌の懸濁物の1ml当たりのコロニー形成単位(cfu)の数である力価によって表した。
【0080】
方法の実施例1に設定した凍結乾燥サイクルを使用して、以下に設定した製剤を調製した:
【0081】
比較例4:
108から1012のコロニー形成単位のSaccharomyces cerevissiae
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0082】
実施例9:
108から1012のコロニー形成単位のSaccharomyces cerevissiae
10gのマンニトール
1.0gのトレハロース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0083】
実施例10:
108から1012のコロニー形成単位のSaccharomyces cerevissiae
10gのマンニトール
1.0gのグルコース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0084】
比較例4において、Saccharomyces cerevissiaeは凍結乾燥処理後に1%未満の生存度を有することを確認した。それと比較して、本発明に係る実施例9及び10のSaccharomyces cerevissiaeは25%の凍結乾燥後の生存度を有した。
【0085】
(実施例11から15)
凍結乾燥後のEscherichia coli(種培養のための生細菌)の生存度を本発明に係る製剤について、及び比較する製剤について測定した。生存度の測定は、固形の寒天プレートを使用して平板培養して、細菌の懸濁物の1ml当たりのコロニー形成単位(cfu)の数である力価によって表した。
【0086】
方法の実施例1で設定した凍結乾燥サイクルを使用して、以下に設定した製剤を調製した:
【0087】
比較例5:
106から1012のコロニー形成単位のEscherichia coli
1.0から5.0gのマンニトール
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0088】
実施例11:
106から1012のコロニー形成単位のEscherichia coli
1.0から5.0gのマンニトール
1.0gのトレハロース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0089】
実施例12:
106から1012のコロニー形成単位のEscherichia coli
1.0から5.0gのマンニトール
1.0gのスクロース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0090】
実施例13:
106から1012のコロニー形成単位のEscherichia coli
1.0から5.0gのマンニトール
1.0gのグルコース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0091】
実施例14:
106から1012のコロニー形成単位のEscherichia coli
2.0gのマンニトール
1.0gのマルトース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0092】
実施例15
106から1012のコロニー形成単位のEscherichia coli
2.0gのマンニトール
1.0gのラクトース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0093】
比較例5において、Escherichia coliは凍結乾燥後に1%未満の生存度を有することを確認した。それと比較して、本発明に係る実施例11から15のEscherichia coliは60%の凍結乾燥後の生存度を有した。
【0094】
実施例11a、12a、13a、14a、及び15aにおいて、30mMのチオ尿素をフリーラジカル捕捉剤として含むことを除いて、実施例11から15と同一の方法で各製剤を調製した。凍結乾燥後のこれらの製剤の保管時の安定性は、固形の寒天プレートを使用して平板培養して細菌懸濁物の1ml当たりのコロニー形成単位(cfu)の数として表される力価によって測定されて、30日(比較例5)から200日(1桁の生存度の損失時に測定された)に改善された。
【0095】
(実施例16から18)
凍結乾燥後のSalmonella typhimurium(診断的使用のための生細菌)の生存度を本発明に係る製剤について、及び比較する製剤について測定した。生存度の測定は、固形の寒天プレートに平板培養して、細菌懸濁物の1ml当たりのコロニー形成単位(cfu)の数である力価で表した。
【0096】
方法の実施例1で設定した凍結乾燥サイクルを使用して、以下に設定した製剤を調製した。
【0097】
比較例6:
106から1011のコロニー形成単位のSalmonella typhimurium
5.0gのマンニトール
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0098】
実施例16
106から1011のコロニー形成単位のSalmonella typhimurium
5.0gのマンニトール
1.0gのスクロース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0099】
実施例17
106から1011のコロニー形成単位のSalmonella typhimurium
5.0gのマンニトール
1.0gのトレハロース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0100】
実施例18
106から1011のコロニー形成単位のSalmonella typhimurium
5.0gのマンニトール
1.0gのラクトース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0101】
比較例6において、Salmonella typhimuriumが凍結乾燥後に1%未満の生存度を有することを確認した。それと比較して、本発明に係る実施例16から18のSalmonella typhimuriumは40%の凍結乾燥後の生存度を有した。
【0102】
(実施例19から22)
凍結乾燥後のLactobacillus acidophilus(サイレージの使用のための生細菌)の生存度を本発明に係る製剤について、及び比較する製剤について測定した。生存度の測定は、固形の寒天プレートを使用して平板培養し、細菌懸濁物の1ml当たりのコロニー形成単位(cfu)の数である力価によって表した。
【0103】
方法の実施例1で設定した凍結乾燥サイクルを使用して、以下に設定した製剤を調製した。
【0104】
比較例7:
106から1012のコロニー形成単位のLactobacillus acidophilus
5.0gのマンニトール
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0105】
実施例19:
106から1012のコロニー形成単位のLactobacillus acidophilus
10.0gのマンニトール
10.0gのウシ胎仔血清(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0106】
実施例20:
106から1012のコロニー形成単位のLactobacillus acidophilus
5.0gのマンニトール
1.0gのトレハロース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0107】
実施例21:
106から1012のコロニー形成単位のLactobacillus acidophilus
5.0gのマンニトール
1.0gのラクトース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0108】
実施例22:
106から1012のコロニー形成単位のLactobacillus acidophilus
5.0gのマンニトール
1.0gのスクロース(凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0109】
比較例7において、Lactobacillus acidophilusは凍結乾燥処理後に1%未満の生存度を有することを確認した。それと比較して、本発明に係る実施例19のLactobacillus acidophilusは60%の凍結乾燥後の生存度を有し、本発明に係る実施例20から22のLactobacillus acidophilusは40%の凍結乾燥後の生存度を有した。
【0110】
(実施例23から26)
凍結乾燥後のインフルエンザウイルス株WSN(弱毒化生ワクチン)の感染力を本発明に係る製剤について、及び比較する製剤について測定した。感染力の測定は、凍結乾燥前及び後の鶏胚細胞単層(「シート」として規定される)におけるプラーク形成単位(1ml当たりのpfuであって、1pfu=「プラーク」と称される1つの領域である)として表した。
【0111】
方法の実施例1で設定した凍結乾燥サイクルを使用して、以下に設定した製剤を調製した。
【0112】
比較例8:
108から1011のプラーク形成単位のインフルエンザウイルス株WSN
1.0gの塩化ナトリウム
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0113】
実施例23:
108から1011のプラーク形成単位のインフルエンザウイルス株WSN
2.0gの塩化ナトリウム
1.0gのヒト血清アルブミン(凍結乾燥後に非晶質)
1.0gのラクトビオン酸カルシウム
20mlの鶏尿膜流動体
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0114】
実施例24:
108から1011のプラーク形成単位のインフルエンザウイルス株WSN
1.0gの塩化ナトリウム
1.0gのラクトース(凍結乾燥後に非晶質)
2.0gのデキストラン(分子量110,000、凍結乾燥後に非晶質)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0115】
実施例25:
108から1011のプラーク形成単位のインフルエンザウイルス株WSN
1.0gの塩化ナトリウム
1.0gのラクトース(凍結乾燥後に非晶質)
1.0gのモノグルタミン酸ナトリウム(メイラード反応阻害剤)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0116】
実施例26:
108から1011のプラーク形成単位のインフルエンザウイルス株WSN
1.0gの塩化ナトリウム
1.0gのラクトース(凍結乾燥後に非晶質)
1.0gのアスコルビン酸(抗酸化剤)
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0117】
比較例8において、インフルエンザウイルス株WSNは凍結乾燥後に1%未満の感染力を有することを確認した。それと比較して、本発明に係る実施例23のインフルエンザウイルス株WSNは70%の凍結乾燥後の感染力を有し、本発明に係る実施例24のインフルエンザウイルス株WSNは40%の凍結乾燥後の感染力を有した。比較例8と比較して、凍結乾燥前及び後の鶏胚細胞単層(「シート」として規定される)におけるプラーク形成単位(1ml当たりのpfuであって、1pfu=「プラーク」と称される1つの領域である)として測定される、実施例24及び25の保管時の安定性は、約40日で感染力の1桁の損失(1桁の損失=90%の計算損失)から1000日より長くで1桁の感染力の損失へと改善された。
【0118】
(実施例27)
凍結乾燥後のファージφ174(治療的または診断的使用のためのファージ)の活性を本発明に係る製剤について、及び比較する製剤について測定した。活性の測定は、凍結乾燥の前及び後にEscherichia coli細菌細胞培養物(「シート」として規定される)におけるプラーク形成単位(1ml当たりのpfuであって、1pfu=「プラーク」と称される1つの領域である)として表した。
【0119】
方法の実施例1で設定した凍結乾燥サイクルを使用して、以下に設定する製剤を調製した。
【0120】
比較例9:
1010プラーク形成単位のファージφ174
0.9gの塩化ナトリウム
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0121】
実施例27
1010プラーク形成単位のファージφ174
0.9gの塩化ナトリウム
0.1gの血清アルブミン
0.1gのデキストランポリマー
0.1gのスクロース
凍結乾燥前の出発製剤として水で100gにした。
【0122】
比較例9において、ファージφ174は凍結乾燥後に1%未満の活性を有することを確認した。それと比較して、本発明に係る実施例27のファージφ174は60%の活性を有した。
【0123】
(実施例28)
上記の実施例1から27は、凍結乾燥の間に敏感な活性物質を含有する製剤の生物学的活性/生存度を維持すること、凍結乾燥の間に非晶質状態を誘導または維持する成分を含むことが必要であることを示す。しかしながら、凍結乾燥された非晶質の物質は、それらの環境から水分を吸収して物理的性質の悪化を誘導し、通常は非晶質のマトリックスを「粘性」及び更なる処理(例えば、脱凝集、混合、破砕、調剤、及び/またはパッケージング等)に不適切となるように誘導する。水分の吸収は製品の保管時の安定性にも不利に作用する。このために、敏感な活性物質の凍結乾燥製剤は不利な環境に曝される前に、凍結乾燥器の中で密封されて良いバイアルまたは他の容器の中で通常は凍結乾燥される。対照的に、凍結乾燥処理の間に結晶質の性質を保持する製剤は、生物学的活性のような特性を維持することにおいては効果的ではないが、一方で安定な物理特性を保持して相当量の水分を吸収しないため非常に保管時に安定である。
【0124】
これを以下の実施例で示す。トレハロース(凍結乾燥後に自然に非晶質である事が既知である)及びマンニトール(凍結乾燥の間にその結晶質性を維持することが既知である)を含有する以下の4つの溶液を調製し、バイアル中で凍結乾燥した。
【0125】
比較例10
マンニトール 200mg
水 2mLまで
10%w/vのマンニトール溶液を提供する。
【0126】
比較例11
マンニトール 20mg
水 2mLまで
1%w/vのマンニトール溶液を提供する。
【0127】
比較例12
トレハロース 200mg
水 2mLまで
10%w/vのトレハロース溶液を提供する。
【0128】
比較例13
トレハロース 20mg
水 2mLまで
1%w/vのトレハロース溶液を提供する。
【0129】
凍結乾燥後に、最終的な凍結乾燥されたマトリックスを75%のRH(相対湿度)雰囲気下に8時間曝して、各サンプルの水分の取り込みを重量測定法で測定し、サンプルの重量の増加の割合として算出した。図1より有意な水分取り込みが非晶質(トレハロース)のサンプルには存在するが、一方で結晶質(マンニトール)のサンプルに相当量の水分取り込みが存在しないことが明らかである。非晶質のサンプル中の水分の取り込みは、これらのサンプルの物理的な特性における悪化を伴った。
【0130】
しかしながら、本発明に係る結晶質/非晶質の特性を有する賦形剤を含む敏感な活性物質を含有する製剤の利用によって、前記敏感な活性物質の生物学的な活性/生存度を維持すること(上述の実施例参照)、及び相当量の水分を取り込まない安定な物理特性を達成することの双方が可能である。驚くべきことに、本発明の実施例1から27は、高い(75%)相対湿度の環境に8時間曝された後に各サンプルの重量の増加が3重量%未満であるような、実質的に減少された水分の取り込みを有した。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】75%の相対湿度の環境に曝されたマンニトール及びトレハロースの凍結乾燥サンプルの重量における割合の増加を示すグラフを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から50重量%の敏感な活性物質、
50から99.99まで、好ましくは99.9まで、より好ましくは99.5重量%までの賦形剤
を含有する、敏感な活性物質と賦形剤の凍結乾燥混合物である粉末製剤であって、少なくとも0.1重量%の混合物が非晶質の状態である製剤。
【請求項2】
0.1から、好ましくは0.5から、より好ましくは1から50重量%の前記凍結乾燥混合物が非晶質の状態である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から50重量%の非晶質の状態の敏感な活性物質、
50から99.99まで、好ましくは99.9まで、より好ましくは99.5重量%までの結晶質の状態の賦形剤、
0から5重量%の非晶質の状態の賦形剤
を含有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは、0.5から50重量%の結晶質の状態の敏感な活性物質、
50から99.89まで、好ましくは99.8まで、より好ましくは99.4重量%までの結晶質の状態の賦形剤、
0.1から5重量%の非晶質の状態の賦形剤
を含有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から25重量%の非晶質または結晶質の状態の敏感な活性物質、
75から99.49まで、好ましくは99.4まで、より好ましくは99重量%までの結晶質の状態の賦形剤、
0.5から5重量%の非晶質の状態の賦形剤
を含有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
非晶質の状態で賦形剤を提供するためにサッカリドが使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
結晶質の状態で賦形剤を提供するために糖アルコールが使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
0.1から10重量%(好ましくは1から10重量%)の添加剤/安定剤を更に含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記添加剤/安定剤が抗酸化剤、フリーラジカル捕捉剤、及び/またはメイラード反応抑制剤である、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
前記敏感な物質が、不安定な有機及び/または無機分子、生体高分子、ポリペプチド、タンパク質、酵素、ホルモン、ビタミン、抗生物質、ポリサッカリド、脂質、死細胞全体、または生細胞全体である、請求項1から9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記敏感な活性物質がウイルス(ファージを含む)、細菌、真菌、及び/または真核細胞である、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に実質的に記載される製剤。
【請求項13】
ヒトまたは動物の体の治療的処理における使用のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の製剤を含む剤形。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の製剤を含む容器、または請求項1から13のいずれか一項に記載される製剤から形成されたものである、請求項14に記載の剤形。
【請求項16】
ヒトまたは動物の体の治療的処理における使用のための請求項14または15に記載の剤形。
【請求項17】
ヒトまたは動物の体の治療的処理における使用のための医薬の製造における、請求項1から13のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項18】
ヒトまたは動物の体の治療的処理における使用のための医薬の製造における、請求項14から16のいずれか一項に記載の剤形の使用。
【請求項19】
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から50重量%の敏感な活性物質、
50から99.99、好ましくは99.9、より好ましくは99.5重量%の賦形剤
を含有する、敏感な活性物質と賦形剤の混合溶液を形成する工程、
及び少なくとも0.1重量%の凍結乾燥された混合物が非晶質の状態であるように前記溶液を凍結乾燥する工程を含む、粉末製剤を調製する方法。
【請求項20】
前記活性物質が凍結乾燥して結晶質の状態であり、前記混合溶液が:
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から50重量%の非晶質の状態の敏感な活性物質、
50から99.99まで、好ましくは99.9まで、より好ましくは99.5重量%までの結晶質の状態の賦形剤、
凍結乾燥して非晶質の状態である、0.1から5重量%の賦形剤
を含有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記活性物質が凍結乾燥して非晶質の状態であり、前記混合溶液が:
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から50重量%の結晶質の状態の敏感な活性物質、
50から99.89まで、好ましくは99.8まで、より好ましくは99.4重量%までの結晶質の状態の賦形剤、
凍結乾燥して非晶質の状態である、0から5重量%の賦形剤
を含有する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記混合溶液が:
0.01から、好ましくは0.1から、より好ましくは0.5から25重量%の非晶質または結晶質の状態の敏感な活性物質、
75から99.49まで、好ましくは99.4まで、より好ましくは99%重量までの結晶質の状態の賦形剤、
凍結乾燥して非晶質の状態である、0.1から5重量%の賦形剤
を含有する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
非晶質の状態で賦形剤を提供するために糖が使用される、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
結晶質の状態で賦形剤を提供するために糖アルコールが使用される、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
治療上有効量の請求項1から13のいずれか一項に記載の製剤、または治療上有効量の請求項14から16のいずれか一項に記載の剤形をヒトまたは動物の患者に与える工程を含む、医学的な治療の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−525534(P2007−525534A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501338(P2007−501338)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000742
【国際公開番号】WO2005/084646
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(501406967)ブリタニア ファーマシューティカルズ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】