説明

差動増幅器

【課題】非反転入力端子の電圧が変化した場合でも、出力トランジスタに流れる電流を一定にすることができる、差動増幅器を提供する。
【解決手段】非反転入力端子143と、反転入力端子144と、P型MOSトランジスタ107及び108とN型MOSトランジスタ101及び102と定電流源121とからなる差動増幅回路と、P型MOSトランジスタ103及び104とN型MOSトランジスタ113及び114と定電流源122とからなる差動増幅回路と、P型MOSトランジスタ107及び108に電流を流す定電流源124とで構成される相補型フォールデッドカスコード増幅回路に、さらにP型MOSトランジスタ107及び108に電流を流す電流制御回路である、定電流源123とN型MOSトランジスタ105を備え、相補型差動対の負荷であるカスコード増幅回路に流れる電流を、非反転入力端子の電圧によって制御する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMOS回路で構成された差動増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
差動増幅器において、入力電圧範囲を大きくする技術として、N型MOSトランジスタの差動入力回路とP型MOSトランジスタの差動入力回路を設けることが知られている。
【0003】
図4は、従来の入力Rail to Railの差動増幅器である。
【0004】
従来の入力Rail to Railの差動増幅器は、非反転入力端子143と、非反転入力端子144と、P型MOSトランジスタ107及び108とN型MOSトランジスタ101及び102と定電流源121とからなる差動増幅回路と、P型MOSトランジスタ103及び104とN型MOSトランジスタ113及び114と定電流源122とからなる差動増幅回路と、P型MOSトランジスタ107及び108に電流を流す定電流源124と、差動増幅回路と出力端子145の間に設けられた出力回路と、を備えている。出力回路は、P型MOSトランジスタ117及びN型MOSトランジスタ118からなる出力ドライバと、位相補償容量151及び152と、を備えている。
【0005】
非反転入力端子143や非反転入力端子144に電源電圧近辺の電圧が入力されるときには、P型MOSトランジスタ103及び104はオフするが、N型MOSトランジスタ101及び102からなる差動入力回路が動作する。また、非反転入力端子143や非反転入力端子144にGND電圧近辺の電圧が入力されるときには、N型MOSトランジスタ101及び102はオフするが、P型MOSトランジスタ103及び104からなる差動入力回路が動作する。従って、入力Rail to Rail 動作を実現している。ここで、端子131、132、133、134には、カスコード電圧が与えられる。
【0006】
また、出力端子145につながる出力ドライバのP型MOSトランジスタ117及びN型MOSトランジスタ118は、ゲート電圧を、P型MOSトランジスタ115及びN型MOSトランジスタ116によって適切な電圧に制御される。そして、P型MOSトランジスタ110及びN型MOSトランジスタ112にある電流が流れることによって、出力端子145に負荷電流がない場合にも、出力ドライバトランジスタに電流が流れ、AB級出力動作を実現している(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
上記の通り、非反転入力端子143の電圧がGND電圧から電源電圧まで変化しても、P型MOSトランジスタの差動入力回路またはN型MOSトランジスタの差動入力回路のどちらかが動作することにより、入力Rail to Rail動作が可能となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】アナログCMOS集積回路の設計 下巻 P396
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の差動増幅器は、非反転入力端子143や非反転入力端子144に入力される電圧レベルにより、出力ドライバトランジスタに流れる電流値が変化してしまう、という課題がある。
【0010】
図5は、図4の回路において非反転入力端子143の電圧を変化させた場合の、各ノードの電流値を示している。
【0011】
AB級出力動作をするためには、たとえ出力端子145に負荷電流が流れない場合でも、P型MOSトランジスタ117とN型MOSトランジスタ118に、電流が流れていることが求められる。
【0012】
P型MOSトランジスタ117に、常に電流が流れるようにゲート-ソース間電圧を調整しているのが、P型MOSトランジスタ115である。よって、P型MOSトランジスタ117の電流値は、P型MOSトランジスタ115の閾値と流れている電流値によって決定される。N型MOSトランジスタ118に、常に電流が流れるようにゲート-ソース間電圧を調整しているのが、N型MOSトランジスタ116である。よって、N型MOSトランジスタ118の電流値は、N型MOSトランジスタ116の閾値と流れている電流値によって決定される。P型MOSトランジスタ110から流れ出る電流は、P型MOSトランジスタ115、N型MOSトランジスタ116にて2等分される。P型MOSトランジスタ110に流れる電流は、定電流源124がカレントミラーされたP型MOSトランジスタ108の電流値から、N型MOSトランジスタ102の電流値を、引いた分である。
【0013】
前述の通り、N型MOSトランジスタ102の電流値は、非反転入力端子143の電圧が電源電圧近辺となったときに減少する。そのため、P型MOSトランジスタ110に流れる電流が増加して、結果としてP型MOSトランジスタ117とN型MOSトランジスタ118に流れる電流値が大きく変化してしまう。これにより、出力端子145に接続して駆動可能な出力容量値が異なってしまうため、位相補償をすることが困難になる。すなわち、位相補償容量151及び152は、マージンを持った大きな容量が必要になる。
【0014】
本発明は、以上のような課題を解決するために考案されたものであり、入力電圧によって出力電流が変化することのない、差動増幅回路を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、差動増幅器において、非反転入力端子の電圧によって定電流値を変化させることで、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、非反転入力端子の電圧が変化した場合でも、出力トランジスタに流れる電流を一定にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の差動増幅器を示す回路図である。
【図2】図1の差動増幅器の入力電圧−電流特性を示す図である。
【図3】本発明の差動増幅器の他の例を示す回路図である。
【図4】従来の差動増幅器を示す回路図である。
【図5】従来の差動増幅器における入力電圧−電流特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照して、本発明の差動増幅器について説明する。
【0019】
図1は、本発明の差動増幅器を示す回路図である。
【0020】
本発明の差動増幅器は、非反転入力端子143と、非反転入力端子144と、P型MOSトランジスタ107及び108とN型MOSトランジスタ101及び102と定電流源121とからなる差動増幅回路と、P型MOSトランジスタ103及び104とN型MOSトランジスタ113及び114と定電流源122とからなる差動増幅回路と、P型MOSトランジスタ107及び108に電流を流す定電流源124と、差動増幅回路と出力端子145の間に設けられた出力回路と、を備えている。
【0021】
N型MOSトランジスタ101及び102は、N型MOSトランジスタの差動入力回路を構成している。P型MOSトランジスタ103及び104は、P型MOSトランジスタの差動入力回路を構成している。N型MOSトランジスタの差動入力回路において、P型MOSトランジスタ107及び108が電流源であり、N型MOSトランジスタ113及び114がカレントミラーとなっている。
【0022】
出力回路は、P型MOSトランジスタ117及びN型MOSトランジスタ118からなる出力ドライバと、位相補償容量151及び152と、を備えている。本発明の差動増幅器は、さらにP型MOSトランジスタ107及び108に電流を流す電流制御回路である、定電流源123と、N型MOSトランジスタ105を備えている。
【0023】
非反転入力端子143や非反転入力端子144に電源電圧近辺の電圧が入力されるときには、P型MOSトランジスタ103及び104はオフするが、N型MOSトランジスタ101及び102からなる差動入力回路が動作する。また、非反転入力端子143や非反転入力端子144にGND電圧近辺の電圧が入力されるときには、N型MOSトランジスタ101及び102はオフするが、P型MOSトランジスタ103及び104からなる差動入力回路が動作する。ここで、端子131、132、133、134には、カスコード電圧が与えられる。
【0024】
また、出力端子145につながる出力ドライバのP型MOSトランジスタ117及びN型MOSトランジスタ118は、ゲート電圧を、P型MOSトランジスタ115及びN型MOSトランジスタ116によって適切な電圧に制御される。そして、P型MOSトランジスタ110及びN型MOSトランジスタ112にある電流が流れることによって、出力端子145に負荷電流がない場合にも、出力ドライバトランジスタに電流が流れ、AB級出力動作を実現している。
【0025】
図1から、P型MOSトランジスタ110に流れる電流I(110)は、式1で表される。
【0026】
I(110)=I(124)+I(123)−I(102) (1)
ここで、I(124)は定電流源124の電流、I(123)は定電流源123の電流、I(102)はN型MOSトランジスタ102の電流である。N型MOSトランジスタ105のゲートには、非反転入力端子143が接続されている。このため、非反転入力端子143に電源電圧近辺の電圧が入力されるときには、電流I(123)は電流I(102)と同期して減少する。従って、P型MOSトランジスタ110に流れる電流I(110)を一定値にすることが可能である。
【0027】
図2に、図1の回路において非反転入力端子143の電圧を変化させた場合の、各ノードの電流値を示す。
【0028】
これにより、P型MOSトランジスタ117とN型MOSトランジスタ1118に流れる電流を一定値に保つことが可能になる。従って、位相補償容量151、152を小さくすることが可能となる。
【0029】
図3は、本発明の差動増幅器の他の例を示す回路図である。図1の差動増幅器では、P型MOSトランジスタ107及び108が電流源であり、N型MOSトランジスタ113及び114がカレントミラーとなっている。図3の差動増幅器では逆となっており、P型MOSトランジスタ213及び214がカレントミラーであり、N型MOSトランジスタ207及び208が電流源となっている。そして、電流制御回路である、定電流源123とP型MOSトランジスタ205が追加されている。P型MOSトランジスタ205のゲートには、非反転入力端子143が接続されている。
【0030】
このように構成した差動増幅器は、図1の差動増幅器と同様に、P型MOSトランジスタ117とN型MOSトランジスタ1118に流れる電流を一定値に保つことが可能になり、位相補償容量151、152を小さくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
121、122、123、124 定電流源
143 非反転入力端子
144 反転入力端子
145 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非反転入力端子と、反転入力端子と、出力端子と、
前記非反転入力端子と前記反転入力端子に接続されたN型MOSトランジスタの差動入力回路を備えた第1の差動増幅回路と、
前記非反転入力端子と前記反転入力端子に接続されたP型MOSトランジスタの差動入力回路を備えた第2の差動増幅回路と、
前記第1の差動増幅回路と前記第2の差動増幅回路に接続された出力回路と、を備えた差動増幅器であって、
前記第1の差動増幅回路の電流源であるトランジスタに、前記非反転入力端子の電圧によって定電流値が変化する電流制御回路を設け、前記非反転入力端子の電圧が変化したときに出力トランジスタに流れる電流量を一定値に保つことを特徴とする差動増幅器。
【請求項2】
前記電流制御回路は、
定電流源と、
ゲートが前記非反転入力端子に接続され、ソースが前記定電流源に接続され、ドレインが前記前記第1の差動増幅回路の電流源であるトランジスタに接続されたN型MOSトランジスタと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の差動増幅器。
【請求項3】
非反転入力端子と、反転入力端子と、出力端子と、
前記非反転入力端子と前記反転入力端子に接続されたN型MOSトランジスタの差動入力回路を備えた第1の差動増幅回路と、
前記非反転入力端子と前記反転入力端子に接続されたP型MOSトランジスタの差動入力回路を備えた第2の差動増幅回路と、
前記第1の差動増幅回路と前記第2の差動増幅回路に接続された出力回路と、を備えた差動増幅器であって、
前記第2の差動増幅回路の電流源であるトランジスタに、前記非反転入力端子の電圧によって定電流値が変化する電流制御回路を設け、前記非反転入力端子の電圧が変化したときに出力トランジスタに流れる電流量を一定値に保つことを特徴とする差動増幅器。
【請求項4】
前記電流制御回路は、
定電流源と、
ゲートが前記非反転入力端子に接続され、ソースが前記定電流源に接続され、ドレインが前記前記第2の差動増幅回路の電流源であるトランジスタに接続されたP型MOSトランジスタと、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の差動増幅器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−77717(P2011−77717A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225464(P2009−225464)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】