説明

巻取式表面処理装置および表面処理方法

【課題】 表面処理中のベースフィルムの表面或いは裏面とガイドローラーが接触することに起因する汚染等を防止し、また、ベースフィルム内部に残留する水蒸気や酸素等不純物ガスの積層膜への影響をなくすことが可能な巻取式表面処理装置及び表面処理方法を提供する。
【解決手段】 ベースフィルムと、ベースフィルムの処理面を保護する保護フィルムとの重ね合わせが可能な重ね合わせ手段とを備え、前記重ね合わせ手段は、前記ベースフィルムの処理面と保護フィルムとを重ね合わせて巻き取り及び/又は剥離が可能な構成とした。また、ベースフィルムと、ベースフィルムの処理面を保護する保護フィルムとの重ね合わせが可能な重ね合わせ手段により、前記ベースフィルムの処理面と保護フィルムとを重ね合わせて巻き取り及び/又は剥離を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂や金属等から成る帯状の可撓性フィルム(以下、「ベースフィルム」という。)に真空蒸着、スパッタリング、CVD、プラズマエッチング等の表面処理を施す巻取式表面処理装置および表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム上に反射防止膜、発光膜等の機能膜を形成するため、表面処理として、蒸着処理、スパッタリング処理、CVD処理等が用いられている。
【0003】
図3は、従来のロールツーロール方式によりフィルム表面に処理を行って例えば膜を形成する表面処理装置の構成例を示す図である。図3に示すように、予め所定の経路に沿ってセットされたベースフィルム2は、上流側のベースフィルムロール3から送り出されてガイドローラー25、26、27を経由し、主ロール5、6を介して、下流側のガイドローラー28、29を経由して、巻取ロール12で巻き取られる。ベースフィルムロール3から送り出されるベースフイルム2は、表面処理部15に到達する前に、上流側のガイドローラー25、26間に配置されたプラズマ処理電極20によりベースフイルム2の表面と薄膜との密着性を向上させるためのプラズマ処理が行われ、表面処理部15で主ロール5、6の周面を通るベースフィルム2の表面に膜が形成される。
【0004】
ここで、ベースフィルム2の処理面とは、ベースフィルム2の表面処理が行われる面をいう。
【0005】
表面処理部15は、ベースフィルム2に対して蒸着処理を行う場合には真空蒸着源であり、またスパッタリング処理ではスパッタリング用ターゲット及びカソードが配設され、プラズマCVD処理ではRF電極が配設されている。なお、表面処理部15は真空処理の形態により処理方法が決められる。
【0006】
図3に示す表面処理装置を使用して、一旦巻き取られたベースフィルム2上に形成された膜の上にさらに膜を形成する場合には、表面処理装置のベースフィルム2の走行は一方向だけでなく、逆走行が可能となっているため、新たな真空条件と走行条件を設定して、一度巻き取ったベースフィルム2を逆走行させ、表面処理部15を通過させることにより、ベースフイルム2上に次の膜を形成することができる。
【0007】
ロールツーロール方式の表面処理装置で、例えば、真空蒸着法により有機物をその種類を変えて連続して積層する場合には、真空圧等の真空条件は同一であるため、図3に示すように、ベースフィルム2の走行方向に対して積層する分子を蒸着させる表面処理部15の真空蒸発源を仕切50で隔てて並べればよく、一つのチャンバでも連続して積層させることは可能であり、積層を完了したベースフィルム2は巻取ロール12で巻き取られる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−173773
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のロールツーロール方式の表面処理装置では、ベースフィルム2は所定の張力を与えてズレを防止するガイドローラーを経由して巻取ロール12で巻き取られるので、ガイドローラーの外周面が例えばベースフィルム2から剥離または転写された膜等の不純物で汚染されている場合、ベースフィルム2の処理面とガイドローラー27、28の外周面とが接触し、また、ベースフィルム2の裏面とガイドローラー25、26、29の外周面とが接触することによって、ベースフィルム2の処理面又は裏面に不純物が付着してしまう。さらに、処理済のベースフィルム2が巻取ロール12に巻き取られた状態では、処理面はベースフィルム2自身の裏面に密着した状態となるため、汚染されたベースフィルム2の裏面と処理面とが密着している時間に応じて処理面の汚染の拡散が進行し、積層界面の品質に影響を与える。このため、ロールツーロール方式の表面処理装置では、処理を完了したベースフィルムの巻き取りにより発生する処理面の汚染を防止することが課題となっている。
【0010】
また、一般的に、ベースフィルム2が合成樹脂製の場合、水蒸気や酸素等の不純物ガスの透過率は大きく、ベースフィルム2内部にこれらの不純物ガスの一部が放出しきれず残留していた場合には、ベースフィルム2の処理面は、巻き取り後の裏面との密着により、水蒸気や酸素等不純物ガスの影響を受けて、積層膜の特性が劣化してしまうおそれがある。特に、不純物ガスの影響を受けやすい有機ELの発光層(有機物の積層膜)では大きな課題となっている。
【0011】
そこで、本発明は、一つのチャンバで処理条件の異なる処理を行ってベースフィルム上に積層膜を形成する場合に、処理中のベースフィルムの表面或いは裏面とガイドローラーが接触することに起因する汚染等を防止し、また、ベースフィルム内部に残留する水蒸気や酸素等不純物ガスの積層膜への影響をなくすことが可能な巻取式表面処理装置および表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による巻取式表面処理装置は、ロール室と表面処理室とを有するチャンバ内において、ベースフィルムと、ベースフィルムの処理面を保護する保護フィルムとの重ね合わせが可能な重ね合わせ手段とを備え、前記重ね合わせ手段は、前記ベースフィルムの処理面と保護フィルムとを重ね合わせて巻き取り及び/又は剥離が可能な構成としたことを特徴とする。ここで、保護フィルムとは、プラズマ処理などで清浄な表面をもった合成樹脂等からなる帯状の可撓性フィルム、若しくは、予めベースフィルムとの密着面側にガスバリア膜等の薄膜が形成されているものをいう。また、本発明による巻取式表面処理装置は、前記ベースフィルムの処理面と前記保護フィルムとの重ね合わせがなされた表面処理済のベースフィルムの走行方向を逆方向にして、前記重ね合わせ手段により表面処理済のベースフィルムと保護フィルムとの剥離を行って、前記表面処理済のベースフィルムの処理面に同一又は異なる表面処理が可能な構成としたことを特徴とする。また、本発明による巻取式表面処理装置の前記チャンバは、減圧による真空雰囲気及び/又は不活性ガスの導入による不活性ガス雰囲気を保持可能な構成としたこと特徴とする。また、本発明による表面処理方法は、ベースフィルムと、ベースフィルムの処理面を保護する保護フィルムとの重ね合わせが可能な重ね合わせ手段により、前記ベースフィルムの処理面と保護フィルムとを重ね合わせて巻き取り及び/又は剥離が可能なことを特徴とする。また、本発明による表面処理方法は、前記ベースフィルムの処理面と前記保護フィルムとの重ね合わせがなされた表面処理済のベースフィルムの走行方向を逆方向にして、前記保護フィルムとの剥離を行い、前記表面処理済のベースフィルムの処理面に同一又は異なる表面処理が可能なことを特徴とする。また、本発明による表面処理方法は、前記ベースフィルムの処理面と前記保護フィルムとの重ね合わせがなされた表面処理済のベースフィルムの走行方向を逆方向にして、前記保護フィルムとの剥離を行い、前記表面処理済のベースフィルムの処理面に同一又は異なる表面処理をし、保護フィルムとの重ね合わせを行ってベースフィルムの処理面に保護フィルムを重ね合わせて巻き取りが可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一つのチャンバでベースフィルム上に処理条件の異なる表面処理を行う場合に、保護フィルムをプラズマ処理などで表面を清浄に処理した後、ベースフィルムの処理面に重ね合わせて巻き取ることにより、保護フィルムでベースフィルムの処理面を清浄に保護でき、表面処理が行われるベースフィルムの処理面又は裏面とガイドローラとが接触することに起因する汚染等を防止することができ、ベースフィルムの処理面の汚染を低減することができる。
【0014】
また、保護フィルムが、例えば、ガスバリア膜で被覆されている場合、ベースフィルム内部に水蒸気や酸素等不純物ガスの一部が放出しきれずに残留していたとしても、表面処理後のベースフィルムの処理面に保護フィルムを重ね合わせて巻き取ることにより、ベースフィルムの処理面に影響を及ぼさない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による巻取式表面処理装置および表面処理方法の実施の形態について図1及び図2を参照して説明する。図1及び図2は、本発明による巻取式表面処理装置の構成を示す図である。なお、従来の巻取式表面処理装置と同一の構成及び機能を有するものについては、同じ符号を付して説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、本発明による巻取式表面処理装置1は、チャンバ19により密閉空間が形成されており、この密閉空間内に仕切16を介して形成されるロール室31、表面処理室32とを有している。チャンバ19には、表面処理室32内の排気を行う表面処理室用排気配管18と、ロール室31内の排気を行って減圧するためのロール室用排気配管17が配設されている。表面処理室用排気配管18およびロール室用排気配管17は、配管の末端にそれぞれ排気装置18b、17bが設けられており、排気配管の途中に設けた可変バルブ18a、17aにより開閉が行えるようになっている。また、チャンバ19には、表面処理室32内に不活性ガスの供給を行う表面処理室用ガス供給配管38と、ロール室31内に不活性ガスの供給を行うロール室用ガス供給配管37が配設されており、各ガス供給配管の途中に設けた可変バルブ38a、37aにより開閉が行えるようになっている。
【0017】
巻取式表面処理装置1は、ベースフィルムの処理面に膜形成等の表面処理を行うための帯状のベースフィルム2を巻き取って収納した上流側のベースフィルムロール3と、ベースフィルムロール3を図示せぬ駆動手段によりCW(Clock Wise。時計回り。)、CCW(Counter Clock Wise。反時計回り。)の両回転方向に所定のトルクで回転制御して回転させベースフィルム2を供給する供給用回転軸4と、帯状のベースフィルム2の搬送経路上に設けられてベースフィルム2をガイドするガイドローラー25、26及び27と、ガイドローラー25と26との間に介装されベースフィルム2の両側に1対設けられたプラズマ処理電極20と、ロール室31を通りロール室31と表面処理室32の仕切16の隙間を通ってベースフィルム2を表面処理室32に案内して膜形成等の表面処理を行うための主ロール5と、主ロール5の回転中心下方に配されてベースフィルム2の処理面に膜形成等の表面処理を行う表面処理部15が設けられており、表面処理部15によって表面処理室32内で表面処理済のベースフィルム2は、主ロール5の外周面で案内されながら下流側に位置する重合せローラー35を経由して巻取ロール12により巻き取られる。この巻取ロール12は、図示せぬ回転手段によりCW、CCWの両回転方向に所定のトルクで回転制御して回転させる巻取ロール用回転軸13により支持されている。また、主ロール5と下流側の重合せローラー35との間に介装されベースフィルム2の両側に1対設けられたプラズマ処理電極21が設けられている。
【0018】
そして、本発明による巻取式表面処理装置1は、ロール室31内に設けられて表面処理済のベースフィルム2の処理面と保護フィルム7との重ね合わせを行ってベースフィルム2を案内する重ね合わせ手段(第1の重ね合わせ手段)を備えている。すなわち、この重ね合わせ手段は、帯状の保護フィルム7を収納した保護フィルムロール8と、保護フィルムロール8を図示せぬ駆動手段によりCW,CCWの両回転方向に所定のトルクで回転制御して回転させて保護フィルム7を送り出して供給する保護フィルム用回転軸10と、ガイドローラ28を経由して重合せローラー35により表面処理済のベースフィルム2の処理面と保護フィルム7との重ね合わせを行った後に巻取ロール12により巻き取られる。また、ガイドローラ28と重合せローラー35との間には、保護フィルム7の両側に1対設けられたプラズマ処理電極23が設けられている。
【0019】
また、本発明による巻取式表面処理装置1は、図2に示す構成とすることによって、ベースフィルムロール3に予め保護フィルム7を重ねて巻き直してあるものを使用し、第1層膜形成前に保護フィルム7を剥離してからベースフィルム2の処理面に第1層膜を形成し、その後、別の保護フィルム7を重ね合わせて巻き取ることも可能となる。
【0020】
すなわち、図2に示すように、重ね合わせ手段(第2の重ね合わせ手段)は、上流側であるベースフィルムロール3側にも設けられており、この第2の重ね合わせ手段は、帯状のベースフィルム2と帯状の保護フィルム7とが予め重ねて巻き取られたベースフィルムロール3と、ベースフィルムロール3から繰り出されたベースフィルム2と保護フィルム7とがガイドローラ25を経由して重合せローラー36により第1層膜を形成する前に保護フィルム7とベースフィルム2とが剥離されて保護フィルム7は、ガイドローラ29を経由して保護フィルム7が保護フィルムロール9により収容される。保護フィルムロール9は、図示せぬ駆動手段によりCW、CCWの両回転方向に所定のトルクで回転制御して回転されて保護フィルム7を巻き取る保護フィルム用回転軸11により支持されている。また、重合せローラー36とガイドローラー29との間には、保護フィルム7の両側に1対設けられて保護フィルム7の表面に清浄性付与のための前処理を行うプラズマ処理電極20が設けられている。
【0021】
本発明による巻取式表面処理装置1に使用する保護フィルム7は、保護フィルム7のベースフィルム2の処理面と接触する面側には、保護膜としてのガスバリア膜を被覆するようにしてもよい。また、保護フィルム7のフィルムは、PET(ポリエチレンテレフタレート)等であり、ガスバリア膜は、SiOx(ケイ素酸化物)等で形成されている。成膜等の表面処理後のベースフィルム2の処理面に保護フィルム7を重ね合わせて巻き取ることにより、ベースフィルム2内部に水蒸気や酸素等不純物ガスの一部が放出しきれずに残留していた場合でも、保護フィルム7のガスバリア膜が水蒸気や不純物ガスを遮断してベースフィルム2の処理面に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0022】
また、保護フィルム7は、ITO(酸化インジウム)をフイルムの表面に成膜等の表面処理をして導電性を付加するようにしてもよい。保護フィルム7に導電性を付加することによりベースフィルム2への静電気の帯電を低減させることができ、静電気によるベースフィルム2の処理面への影響を防止することができる。
【0023】
また、本発明による巻取式表面処理装置1は、チャンバ19内は密閉空間で気密状態が保持されており、排気装置18b、17bによりチャンバ19内を減圧して表面処理が可能であり、表面処理部15は、蒸着処理により成膜を行う場合には真空蒸着源等であり、またスパッタリング処理により成膜を行う場合は、スパッタリング用ターゲット及びカソード等が配設され、プラズマCVD処理により成膜を行う場合は、RF電極等が配設される。
【0024】
また、チャンバ19内のロール室用ガス供給配管37、表面処理室用ガス供給配管38からアルゴン、窒素等の不活性ガスを供給することにより、前記のような減圧だけでなく、大気組成と異なる空間環境を保持することも可能である。
【0025】
また、表面処理部15には、例えば、プラズマ処理電極を配設してベースフィルム2上に形成されている薄膜のプラズマエッチングを行ったり、インクジェットヘッドを配設してベースフィルム2上に液体状の膜形成物質を微粒子で飛散させて印刷を行うようにしてもよく、ベースフィルム2の処理面に対して成膜処理以外の表面処理が可能である。
【0026】
なお、プラズマCVD処理、プラズマエッチング等のプラズマを発生させる表面処理を行う場合、表面処理部15は、図1および図2に示すプラズマ処理電極20、21、22、23と同様の構成でなるプラズマ処理電極(図示せず)を配設して、該プラズマ処理電極間にベースフィルム2を通過させる構成として表面処理を行うようにしてもよい。
【0027】
ベースフィルム2に膜を形成する場合は、成膜前にベースフィルム2上の有機物等の異物を除去し表面を活性化させて密着性を改善することが可能であり、また、前記のようなエッチングを行う場合は、表面処理部15でのエッチング後の異物を除去することができるからである。
【0028】
また、保護フィルム7に使用する場合も、保護フィルム7上の有機物等の異物を除去して清浄性を高めることができるからである。
【0029】
次に、本発明による巻取式表面処理装置1によるベースフイルム2の処理面の表面処理方法(成膜処理)について説明する。
【0030】
図1に示すように、図示せぬ駆動手段によってベースフィルムロール3、巻取ロール12、保護フィルムロール8が回転制御されて駆動すると、ベースフィルム2と保護フィルム7は同時に走行が開始され、ベースフィルム2の処理面には、プラズマ処理電極20を通過してプラズマ処理が行われる。そして、ベースフィルム2は、主ロール5の外周面に沿って案内され、主ロール5の回転中心下方に対向配置された表面処理部15の近傍を通過中に表面処理部15の真空蒸着源からの蒸発物質により第1層目の成膜が行われる。表面処理部15を通過後のベースフィルム2は、保護フィルムロール8から別経路で繰り出されてプラズマ処理電極23でプラズマ処理された保護フィルム7と重合せローラー35の外周面で重ね合わされて巻取ロール12に巻き取られる。第1層の成膜が終了すると、ベースフィルム2および保護フィルム7の走行は停止して、真空蒸着源の蒸発が停止される。
【0031】
このようにベースフイルム2の処理面に形成された膜は、重合せローラー35に接触する前に表面が清浄化された保護フィルム7に重ね合わせられて巻き取られるため、膜表面の汚染は低減される。
【0032】
次に、本発明による巻取式表面処理装置1によるベースフイルムの処理面への表面処理方法(成膜処理)について、図2を参照して説明する。
【0033】
まず、ベースフィルムロール3からベースフィルム2と保護フィルム7とが同時に繰り出されて走行が開始される。ベースフィルムロール3から繰り出された保護フィルム7は、重合せローラー36でベースフィルム2と分離されて保護フィルムロール9に巻き取られ、ベースフィルム2は、重合せローラー36で保護フィルム7と分離された後にプラズマ処理電極21を通過してプラズマ処理が行われる。そして、ベースフィルム2は主ロール5の外周面に沿って案内されて表面処理部15を通過中に表面処理部15の真空蒸着源からの蒸発物質により第1層目の成膜が行われる。表面処理部15を通過後のベースフィルム2は、保護フィルムロール8からプラズマ処理電極23でプラズマ処理された保護フィルム7とベースフィルム2の処理面とが重合せローラー35の外周面で重ね合わされ、その状態のまま巻取ロール12に巻き取られる。第1層の成膜が終了したらベースフィルム2及び保護フィルム7の走行は停止して、真空蒸着源の蒸発を停止する。
【0034】
このように第1層膜の表面は、重合せローラー35に接触する前に表面を清浄化された保護フィルム7に重ね合わせられ巻き取られるため、処理面の汚染は低減される。また、上流側であるベースフィルムロール3から繰り出されたベースフィルム2と保護フィルム7は、重合せローラー36で分離されて主ロール5に供給されるものであるから、清浄化されたベースフィルム2が主ロール5に供給される。
【0035】
次に、チャンバ19は真空を保持したままで、真空条件及びフィルム走行条件は第2層目成膜のために新たに設定され、プラズマ処理電極は21から22へ切り替えがなされて、表面処理部15の真空蒸発源の蒸発物質も切り替えられる。ベースフィルム2及び保護フィルム7は、第2層の成膜のため第1層目の走行方向とは逆に走行させられ、重合せローラー35を通過後に保護フィルム7から分離されたベースフィルム2はプラズマ処理電極22で表面を活性化後に再度表面処理部15を通過し、真空蒸発源により第2層目が成膜され、第2の重ね合わせ手段としての保護フィルムロール9から別経路で繰り出されてプラズマ処理電極20でプラズマ処理された保護フィルム7と重合せローラー36の外周面で重ね合わされ、その状態のままベースフィルムロール3へ巻き取られる。以上により、第2層が成膜されたベースフィルム2は、保護フィルム7と共にベースフィルムロール3へ巻き取られる。そして、本発明による巻取式表面処理装置1は、第1及び第2の重ね合わせ手段を備えてなるので清浄化されたベースフィルム2が搬送経路に供給される。
【0036】
したがって、第1層膜上に第2層膜を積層する場合でも、第1層膜を成膜後、ベースフィルム2を保護フィルム7で重ね合わせて巻き取り、第2層膜を成膜後もベースフィルム2を保護フィルム7で重ね合わせて巻き取って処理面は保護され、さらに保護フィルムにガスバリア膜が被膜されているものを使用すれば、ベースフィルム内部の水蒸気や酸素等不純物ガスを保護フィルムで遮断して、ベースフィルムの積層膜の成膜に影響を及ぼさなくすることもできる。
【0037】
以上述べたように、本発明による巻取式表面処理装置によれば、単層のみならず、多層薄膜を積層する場合であっても、各層毎の成膜毎に保護フィルムで重ね合わせて巻き取ることにより、膜の界面では劣化が少なく、かつベールフィルムのロール内で品質の一定した積層膜を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による巻取式表面処理装置の構成を示す図である。
【図2】保護フィルムロールを、ベースフィルムの繰り出し側と巻き取り側の2カ所に設けた巻取式表面処理装の構成を示す図である。
【図3】フィルム表面に真空処理して成膜を行う従来のロールツーロール方式による表面処理装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 巻取式表面処理装置
2 ベースフィルム
3 ベースフィルムロール
4 供給用回転軸
5、6 主ロール
7 保護フィルム
8、9 保護フィルムロール
10、11 保護フィルム用回転軸
12 巻取ロール
13 巻取ロール用回転軸
15 表面処理部
16 ロール室と表面処理室の仕切
17 ロール室用排気配管
17a、18a、37a、38a 可変バルブ
17b、18b 排気装置
18 表面処理室用排気配管
19 チャンバ
20、21、22、23 プラズマ処理電極
25、26、27、28、29 ガイドローラー
31 ロール室
32 表面処理室
35、36 重合せローラー
37 ロール室用ガス供給配管
38 表面処理室用ガス供給配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール室と表面処理室とを有するチャンバ内において、ベースフィルムと、ベースフィルムの処理面を保護する保護フィルムとの重ね合わせが可能な重ね合わせ手段とを備え、
前記重ね合わせ手段は、前記ベースフィルムの処理面と保護フィルムとを重ね合わせて巻き取り及び/又は剥離が可能な構成としたことを特徴とする巻取式表面処理装置。
【請求項2】
前記ベースフィルムの処理面と前記保護フィルムとの重ね合わせがなされた表面処理済のベースフィルムの走行方向を逆方向にして、前記重ね合わせ手段により表面処理済のベースフィルムと保護フィルムとの剥離を行って、前記表面処理済のベースフィルムの処理面に同一又は異なる表面処理が可能な構成としたことを特徴とする請求項1に記載の巻取式表面処理装置。
【請求項3】
前記チャンバは、減圧による真空雰囲気及び/又は不活性ガスの導入による不活性ガス雰囲気を保持可能な構成としたこと特徴とする請求項1又は請求項2に記載の巻取式表面処理装置。
【請求項4】
ベースフィルムと、ベースフィルムの処理面を保護する保護フィルムとの重ね合わせが可能な重ね合わせ手段により、前記ベースフィルムの処理面と保護フィルムとを重ね合わせて巻き取り及び/又は剥離が可能なことを特徴とする表面処理方法。
【請求項5】
前記ベースフィルムの処理面と前記保護フィルムとの重ね合わせがなされた表面処理済のベースフィルムの走行方向を逆方向にして、前記保護フィルムとの剥離を行い、前記表面処理済のベースフィルムの処理面に同一又は異なる表面処理が可能なことを特徴とする請求項4に記載の表面処理方法。
【請求項6】
前記ベースフィルムの処理面と前記保護フィルムとの重ね合わせがなされた表面処理済のベースフィルムの走行方向を逆方向にして、前記保護フィルムとの剥離を行い、前記表面処理済のベースフィルムの処理面に同一又は異なる表面処理をし、保護フィルムとの重ね合わせを行ってベースフィルムの処理面に保護フィルムを重ね合わせて巻き取りが可能なことを特徴とする請求項4に記載の表面処理方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−43965(P2006−43965A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225907(P2004−225907)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】