説明

帯状補強部材の製造ライン、帯状補強部材の製造方法、及び空気のう

【課題】空気のう1の一連の製造時間を短くして、空気のう1の生産性を高めること。
【解決手段】
重合したゴムシート19,21と不織布シート23を上下から押圧する回転可能な一対のカレンダーロール29,31を備えてあって、帯状補強部材17を連続的に成形して送り方向へ搬送するカレンダーロール装置27と、送り方向Fからみてカレンダーロール装置27の下流側に配設されかつ帯状補強部材17に空気抜き穴17hを連続的に形成するピアッシング装置51と、送り方向Fからみてピアッシング装置51の下流側に配設されかつ空気抜き穴17hが形成された帯状補強部材17を連続的に巻取る巻取り装置77と、を具備したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気のうの構成要素である補強層の成型に用いられる帯状補強部材を連続的に製造するための帯状補強部材の製造ライン、帯状補強部材の製造方法、及び前記空気のうに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤ業界においては、タイヤの内圧が急激に低下した際に前記タイヤに代わって車両荷重を支持する空気のうについて、種々の開発が行われている。また、作動気体としての空気を充填可能な中空円環状のチューブと、このチューブに設けられた補強層とを具備している。そして、前記空気のうの構成要素である補強層の成型には、ゴムからなる一対のゴムシートと不織布からなる不織布シートを一体的に積層してなる帯状補強部材が用いられ(特許文献1参照)、前記帯状補強部材は、次のように製造される。
【0003】
即ち、一対の前記ゴムシート及び前記不織布シートをカレンダーロール装置における一対のカレンダーロールの間隙へ向かって連続的に送り出す。そして、一対の前記カレンダーロールを同期して回転させつつ、前記不織布シートを間にして重合した一対の前記ゴムシート及び前記不織布シート一対の前記カレンダーロールによって上下から押圧することにより、前記ゴムシートと前記不織布シートを一体的に積層してなる前記帯状補強部材を連続的に成形して送り方向へ搬送する。更に、成形された前記帯状補強部材を、前記送り方向からみて前記カレンダーロール装置の下流側に配設された巻取り装置によって連続的に巻取る。
【特許文献1】WO2002/096678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記補強層を成型する際に、前記帯状補強部材の重なり合った部分に多くの空気がシールされると、前記空気のうの製品不良の発生率が高くなる。そのため、前記補強層を成型した後であって前記補強層に加硫処理を施す前に、キリ等によって前記補強層に多数の空気抜き穴を形成しなければならず、前記空気のうの一連の製造時間が長くなって、前記空気のうの生産性を高めることができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前述の問題を解決するため、補強層を成型した後であって前記補強層に加硫処理を施す前に、キリ等によって前記補強層に多数の空気抜き穴を加工する必要がなくなる、新規な構成の帯状補強部材の製造ライン及び帯状補強部材の製造方法を第1の目的とし、更に、新規な構成の帯状補強部材の製造方法によって製造された帯状補強部材により成型された前記補強層を構成要素とする新規な構成の空気のうを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴(請求項1に記載の発明の特徴)は、空気のうの構成要素である補強層の成型に用いられ、ゴムからなるゴムシートと不織布からなる不織布シートを一体的に積層してなる帯状補強部材を連続的に製造する帯状補強部材の製造ラインであって、重合した前記ゴムシートと前記不織布シートを上下から押圧する回転可能な一対のカレンダーロールを備えてあって、前記帯状補強部材を連続的に成形して送り方向へ搬送するカレンダーロール装置と、前記送り方向からみて前記カレンダーロール装置の下流側に配設され、前記送り方向へ搬送された前記帯状補強部材に空気抜き穴を連続的に形成するピアッシング装置と、前記送り方向からみて前記ピアッシング装置の下流側に配設され、前記空気抜き穴が形成された前記帯状補強部材を連続的に巻取る巻取り装置と、を具備したことである。
【0007】
なお、「前記ゴムシート」には、前記カレンダーロール装置と別のカレンダーロール装置等によって予め圧延成形されたゴムシートの他に、前記カレンダーロール装置によって混練したゴムから直接的に圧延成形されたゴムシートも含む意である。また、「重合した前記ゴムシート及び前記不織布シート」とは、前記不織布シートを間にして重合した一対の前記ゴムシート及び前記不織布シートの他に、単に重合した1つの前記ゴムシート及び前記不織布シートを含む意である。
【0008】
第1の特徴によると、前記カレンダーロール装置における一対の前記カレンダーロールを回転させつつ、重合した前記ゴムシート及び前記不織布シートを一対の前記カレンダーロールによって上下から押圧することにより、前記帯状補強部材を連続的に成形して送り方向へ搬送する。また、前記送り方向へ搬送された前記帯状補強部材に、前記ピアッシング装置によって前記空気抜き穴を連続的に形成する。更に、前記空気抜き穴が形成された前記帯状補強部材を、前記巻取り装置によって連続的に巻取る。以上により、前記帯状補強部材を連続的に製造することができる。
【0009】
また、前述のように、前記送り方向へ搬送された前記帯状補強部材に前記ピアッシング装置によって前記空気抜き穴を連続して形成しているため、換言すれば、前記帯状補強部材を連続的に製造する際に、予め前記ピアッシング装置によって前記帯状補強部材に多数の前記空気抜き穴を形成しているため、前記補強層を成型した後であって前記補強層に加硫処理を施す前に、キリ等によって前記補強層に多数の前記空気抜き穴を加工する必要がなくなる。
【0010】
本発明の第2の特徴(請求項2に記載の発明の特徴)は、第1の特徴に加えて、前記ピアッシング装置は、外周面に尖った突起が形成された円筒状の第1ピアッシング部材と、外周面に前記突起が進入可能な進入穴又は進入溝が形成され、前記第1ピアッシング部材との協働によって前記帯状補強部材を上下から挟む円筒状の第2ピアッシング部材と、を備えてあって、前記第1ピアッシング部材及び前記第2ピアッシング部材が一対の前記カレンダーロールの周速と同じ周速で同期して回転するように構成されたことである。
【0011】
第2の特徴によると、前記ピアッシング装置における第1ピアッシング部材と第2ピアッシング部材を一対の前記カレンダーロールの周速と同じ周速で同期して回転させつつ、前記第1ピアッシング部材と前記第2ピアッシング部材の協働によって前記帯状補強部材を上下から挟むことにより、前記突起を前記進入穴又は進入溝に進入させつつ、前記帯状補強部材に前記空気抜き穴を連続的に形成する。
【0012】
ここで、前記帯状補強部材に前記空気抜き穴を形成する際に、前記第1ピアッシング部材及び前記第2ピアッシング部材を一対の前記カレンダーロールの周速と同じ周速で同期して回転させているため、前記空気抜き穴の形成に伴う前記帯状補強部材の伸びを十分に抑えることができる。
【0013】
本発明の第3の特徴(請求項3に記載の発明の特徴)は、第1の特徴に加えて、ライン稼働中に、前記カレンダーロール装置と前記巻取り装置との間における一部の停止領域において前記帯状補強部材が見かけ上間欠的に停止するように構成されてあって、前記ピアッシング装置は、前記停止領域の近傍に設けられ、前記停止領域側の面に尖った突起が形成された第1ピアッシング部材と、前記停止領域の近傍に設けられ、前記停止領域側の面に前記突起が進入可能な進入穴又は進入溝が形成され、前記帯状補強部材の見かけ上の停止タイミングに合わせつつ、前記第1ピアッシング部材との協働によって前記帯状補強部材を上下から挟む第2ピアッシング部材と、を備えていることである。
【0014】
第3の特徴によると、前記停止領域で、前記帯状補強部材の見かけ上の停止タイミングに応じて、前記第1ピアッシング部材と前記第2ピアッシング部材との協働によって前記帯状補強部材を上下から挟むことにより、前記突起を前記進入穴又は前記進入溝に進入させつつ、前記帯状補強部材に前記空気抜き穴を連続的に形成する。
【0015】
ここで、前記帯状補強部材に前記空気抜き穴を形成する際に、前記停止領域で、前記帯状補強部材の見かけ上の停止タイミングに応じて、前記第1ピアッシング部材と前記第2ピアッシング部材との協働によって前記帯状補強部材を上下から連続的に挟んでいるため、前記空気抜き穴の形成に伴う前記帯状補強部材の伸びを十分に抑えることができる。
【0016】
本発明の第4の特徴(請求項4に記載の発明の特徴)は、空気のうの構成要素である補強層の成型に用いられ、ゴムからなるゴムシートと不織布からなる不織布シートを一体的に積層してなる帯状補強部材を連続的に製造するための帯状補強部材の製造方法であって、カレンダーロール装置における一対のカレンダーロールを回転させつつ、重合した前記ゴムシート及び前記不織布シートを一対の前記カレンダーロールによって上下から押圧することにより、前記帯状補強部材を連続的に成形して送り方向へ搬送する成形工程と、 前記成形工程において前記送り方向へ搬送された前記帯状補強部材に、前記送り方向からみて前記カレンダーロール装置の下流側に配設されたピアッシング装置によって空気抜き穴を連続的に形成する空気抜き穴形成工程と、前記空気抜き穴形成工程において前記空気抜き穴が形成された前記帯状補強部材を、前記送り方向からみて前記ピアッシング装置の下流側に配設された巻取り装置によって連続的に巻取る巻取り工程と、を具備したことである。
【0017】
なお、「前記ゴムシート」には、前記カレンダーロール装置と別のカレンダーロール装置等によって予め圧延成形されたゴムシートの他に、前記カレンダーロール装置によって混練したゴムから直接的に圧延成形されたゴムシートも含む意である。また、「重合した前記ゴムシート及び前記不織布シート」とは、前記不織布シートを間にして重合した一対の前記ゴムシート及び前記不織布シートの他に、単に重合した1つの前記ゴムシート及び前記不織布シートを含む意である。
【0018】
第4の特徴によると、前記送り方向へ搬送された前記帯状補強部材に前記ピアッシング装置によって前記空気抜き穴を連続して形成しているため、換言すれば、前記帯状補強部材を連続的に製造する際に、予め前記ピアッシング装置によって前記帯状補強部材に多数の前記空気抜き穴を形成しているため、前記補強層を成型した後であって前記補強層に加硫処理を施す前に、キリ等によって前記補強層に多数の前記空気抜き穴を加工する必要がなくなる。
【0019】
本発明の第5の特徴(請求項5に記載の発明の特徴)は、第4の特徴に加えて、前記空気抜き穴形成工程において、前記ピアッシング装置における円筒状の第1ピアッシング部材と円筒状の第2ピアッシング部材を一対の前記カレンダーロールの周速と同じ周速で同期して回転させつつ、前記第1ピアッシング部材と前記第2ピアッシング部材の協働によって前記帯状補強部材を上下から挟むことにより、前記第1ピアッシング部材の外周面に形成された尖った突起を、前記第2ピアッシング部材の外周面に形成された進入穴又は進入溝に進入させつつ、前記帯状補強部材に前記空気抜き穴を連続的に形成することである。
【0020】
第5の特徴によると、前記帯状補強部材に前記空気抜き穴を形成する際に、前記第1ピアッシング部材及び前記第2ピアッシング部材を一対の前記カレンダーロールの周速と同じ周速で同期して回転させているため、前記空気抜き穴の形成に伴う前記帯状補強部材の伸びを十分に抑えることができる。
【0021】
本発明の第6の特徴(請求項6に記載の発明の特徴)は、第4の特徴に加えて、前記空気抜き穴形成工程において、前記帯状補強部材が見かけ上間欠的に停止する停止領域で、前記帯状補強部材の見かけ上の停止タイミングに応じて、前記ピアッシング装置における第1ピアッシング部材と第2ピアッシング部材との協働によって前記帯状補強部材を上下から挟むことにより、前記第1ピアッシング部材の前記停止領域側の面に形成された尖った突起を、前記第2ピアッシング部材の前記停止領域側の面に形成された進入穴又は進入溝に進入させつつ、前記帯状補強部材に前記空気抜き穴を連続的に形成することである。
【0022】
第6の特徴によると、前記帯状補強部材に前記空気抜き穴を形成する際に、前記停止領域で、前記帯状補強部材の見かけ上の停止タイミングに応じて、前記第1ピアッシング部材と前記第2ピアッシング部材との協働によって前記帯状補強部材を上下から連続的に挟んでいるため、前記空気抜き穴の形成に伴う前記帯状補強部材の伸びを十分に抑えることができる。
【0023】
本発明の第7の特徴(請求項7に記載の発明の特徴)は、第4の特徴から第6の特徴のうちのいずれかの特徴に加えて、前記巻取り工程おいて、前記巻取り装置によって巻取られる前記帯状補強部材の単位幅当りの張力が1N/cm以上で8N/cm以下になるように、前記巻取り装置の巻取りトルクを制御することである。
【0024】
前述のように、前記巻取り装置によって巻取られる前記帯状補強部材の単位幅当りの張力が8N/cm以下となるようにしたのは、8N/cmを越える単位幅当りの張力で巻取った前記帯状補強部材を用いて成型された前記補強層を前記空気のうの構成要素とした場合に、前記タイヤの内圧が急激に低下した際における前記空気のうの拡張機能を十分に発揮できないという、新規な知見に基づくものである。また、前記巻取り装置によって巻取られる前記帯状補強部材の単位幅当りの張力が1N/cm以上となるようにしたのは、1N/cm未満の単位幅当りの張力で巻取られると、前記帯状補強部材にしわが発生し易いという、新規な知見に基づくものである。
【0025】
第7の特徴によると、前記巻取り工程において前記巻取り装置によって巻取られる前記帯状補強部材の単位幅当りの張力が1N/cm以上で8N/cm以下になるように、前記巻取り装置の巻取りトルクを制御するため、前記巻取り装置によって巻取られる際における前記帯状補強部材のしわの発生を抑えつつ、前記帯状補強部材を用いて成型された前記補強層を前記空気のうの構成要素とした場合に、前記タイヤの内圧が急激に低下した際における前記空気のうの拡張機能を十分に発揮させることがきる。
【0026】
本発明の第8の特徴(請求項8に記載の発明の特徴)は、第4の特徴から第7の特徴のうちのいずれかの特徴に加えて、前記成形工程中における一対の前記カレンダーロールによる押圧荷重が2N以上になるようにすることである。
【0027】
前述のように、前記成形工程中における一対の前記カレンダーロールによる押圧荷重を2N以上としたのは、一対の前記カレンダーロールによる押圧荷重が2N未満であると、前記帯状補強部材中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができないからである。
【0028】
第8の特徴によると、前記成形工程中における一対の前記カレンダーロールによる押圧荷重が2N以上になるようにするため、前記帯状補強部材中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができる。
【0029】
本発明の第9の特徴(請求項9に記載の発明の特徴)は、第4の特徴から第8の特徴に加えて、タイヤの内圧が急激に低下した際に、前記タイヤに代わって車両荷重を支持する空気のうであって、ゴムからなり、作動気体を充填可能な中空円環状のチューブと、前記チューブに設けられ、第4の手段から第8の手段のうちのいずれかの手段からなる帯状補強部材の製造方法によって製造した帯状補強部材を用いて成型された補強層と、を具備したことである。
【0030】
なお、作動気体とは、主に空気のことをいうが、空気に限られるものではなく、窒素ガス等の空気以外の作動気体も含むものである。
【0031】
第9の特徴によると、パンク等によって前記タイヤの内圧が急激に低下すると、前記空気のうが拡張して、前記タイヤの内周面に密着する。これによって、前記タイヤに代わって、前記空気のうにより車両荷重を支持することができる。
【0032】
一方、通常の走行中においては、前記補強層によって前記チューブの剛性(換言すれば、前記空気のうの剛性)を高めつつ、遠心力による前記空気のうの拡張を抑えることができる。これによって、前記タイヤと前記空気のうとの擦り合いによる前記タイヤ及び前記空気のうの損傷をなくすことができる。
【発明の効果】
【0033】
請求項1から請求項9のうちのいずれかの請求項に記載の発明によれば、前記補強層を成型した後であって前記補強層に加硫処理を施す前に、キリ等によって前記補強層に多数の前記空気抜き穴を加工する必要がなくなるため、前記空気のうの一連の製造時間を短くして、前記空気のうの生産性を高めることができる。
【0034】
請求項2、請求項3、請求項5から請求項9のうちのいずれかの請求項に記載の発明によれば、前記空気抜き穴の形成に伴う前記帯状補強部材の伸びを十分に抑えることができることができるため、前記帯状補強部材の品質を安定させることができる。特に、請求項8又は請求項9に記載の発明によれば、前記帯状補強部材中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができるため、前記帯状補強部材自体の品質をより安定させることができる。
【0035】
請求項7から請求項9のうちのいずれかの請求項に記載の発明によれば、前記巻取り装置によって巻取られる際における前記帯状補強部材のしわの発生を抑えつつ、前記帯状補強部材を用いて成型された前記補強層を前記空気のうの構成要素とした場合に、前記タイヤの内圧が急激に低下した際における前記空気のうの拡張機能を十分に発揮させることがきるため、前記帯状補強部材自体の品質を向上させつつ、前記帯状補強部材の製品不良を極力少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施形態について図1から図5を参照して説明する。
【0037】
ここで、図1は、本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造ライン(帯状補強部材の製造方法)を説明する模式的な図であって、図2は、本発明の実施形態に係わるピアッシング装置の模式的な正面図であって、図3は、本発明の実施形態に係わるピアッシング装置の別の態様を示す図であって、図4は、本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造方法における送出工程の他の態様を説明する模式的な図であって、図5は、タイヤに収容された状態の本発明の実施形態に係わる空気のうの部分断面図である。なお、図中、「F」は、送り方向を指してあって、「W」は、ライン幅方向を指してあって、L「U」は、上方向を指してあって、「D」は、下方向を指している。
【0038】
図5に示すように、本発明の実施形態に係わる空気のう1は、タイヤ3内に収容された状態でリム5に組付けられるものであって、パンク等によってタイヤ3の内圧が急激に低下した際にタイヤ3に代わって車両荷重を支持するものである。
【0039】
空気のう1は、中空円環状のチューブ7を具備しており、このチューブ7は、天然ゴム,ブチルゴム等のゴムからなるものであって、作動気体としての空気を充填可能である。なお、チューブ7に充填された空気の圧力は、タイヤ3の内部に充填された空気の圧力以上になっており、空気のう1に充填される作動気体には、窒素ガス等の空気以外の作動気体も含まれる。
【0040】
チューブ7には、補強体9が設けられており、この補強体9は、チューブ7全体を覆うように構成されている。また。補強体9は、チューブ7に設けられた補強層11と、この補強層11に一体に接合された外皮層13と、補強層11と外皮層13との間に介在した一対の補強ビード15とからなる。ここで、補強層11の成型には、帯状補強部材17が用いられ、この帯状補強部材17は、例えば天然ゴム,ブチルゴム等のゴムからなる一対のゴムシート19,21(又はいずれかのゴムシート19(21))と、例えばポリアミド不織布,ポリエステル不織布,カーボン不織布,レーヨン不織布,ガラス不織布等の不織布からなる不織布シート23を一体的に積層してなるものである(図1参照)。
【0041】
従って、パンク等によってタイヤ3の内圧が急激に低下すると、空気のう1が拡張して、タイヤ3の内周面に密着する。これによって、タイヤ3に代わって、空気のう1により車両荷重を支持することができる。
【0042】
一方、通常の走行中においては、補強体9によってチューブ7の剛性(換言すれば、空気のう1の剛性)を高めつつ、遠心力による空気のう1の拡張を抑えることができる。これによって、タイヤ3と空気のう1との擦り合いによるタイヤ3及び空気のう1の損傷をなくすことができる。
【0043】
図1に示すように、本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造ライン25は、帯状補強部材17を連続的に製造するものであって、以下、帯状補強部材の製造ライン25の詳細な構成について説明する。
【0044】
即ち、帯状補強部材の製造ライン25は、一対のゴムシート19,21及び不織布シート23を一体的に積層してなる帯状補強部材17を連続的に成形して送り方向Fへ搬送するカレンダーロール装置27を主要な装置として具備している。
【0045】
具体的には、カレンダーロール装置27は、不織布シート23を間にして重合した一対のゴムシート19,21及び不織布シート23を上下から押圧する一対のカレンダーロール29,31を備えており、一対のカレンダーロール29,31は、カレンダーロール用モータ33に連動連結されてあって、カレンダーロール用モータ33の駆動によって同期して回転するようになっている。また、一対のカレンダーロール29,31による押圧荷重を調節できるように、一方のカレンダーロール29は、押圧シリンダ35の作動によって他方のカレンダーロール31に対して接近離反する上下方向へ移動可能に構成されている。
【0046】
送り方向Fからみてカレンダーロール装置27の上流側には、一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって一対のゴムシート19,21及び不織布シート23を連続的に送り出す送出装置37が配設されている。
【0047】
具体的には、送り方向Fからみてカレンダーロール装置27の上流側には、上部送出ロール支持部材39が設けられており、この上部送出ロール支持部材39には、一方のゴムシート19を一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって連続的に送り出す上部送出ロール41が回転自在かつ着脱可能に設けられている。また、上部送出ロール支持部材39の下方には、下部送出ロール支持部材43が設けられており、この下部送出ロール支持部材43には、他方のゴムシート21を一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって連続的に送り出す下部送出ロール45が回転自在かつ着脱可能に設けられている。更に、上部送出ロール支持部材39と下部送出ロール支持部材43の間には、中間送出ロール支持部材47が設けられており、この中間送出ロール支持部材47には、不織布シート23を一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって連続的に送り出す中間送出ロール49が回転自在かつ着脱可能に設けられている。なお、上部送出ロール支持部材39の近傍には、一方のゴムシート19の送り出しを補助する上部送出補助ロール(図示省略)が回転可能に設けられており、下部送出ロール支持部材43の近傍には、他方のゴムシート21の送り出しを補助する下部送出補助ロール(図示省略)が回転可能に設けられてあって、中間送出ロール支持部材47の近傍には、不織布シート23の送り出しを補助する中間送出補助ロール(図示省略)が回転可能に設けられている。
【0048】
送り方向Fからみてカレンダーロール装置27の下流側には、送り方向Fへ搬送された帯状補強部材17に空気抜き穴17hを連続的に形成するピアッシング装置51が設けられている。
【0049】
具体的には、図1及び図2に示すように、ピアッシング装置51は、帯状補強部材17を協働して上下から挟む円筒状の第1ピアッシング部材53と第2ピアッシング部材55とを備えており、第1ピアッシング部材53と第2ピアッシング部材55は、ピアッシング用モータ57に連動連結されてあって、ピアッシング用モータ57の駆動によって一対のカレンダーロール29,31の周速と同じ周速で同期して回転するように構成されている。また、第1ピアッシング部材53の外周面には、尖った多数の突起59が形成されており、第2ピアッシング部材55の外周面には、対応関係にある突起59が進入可能な多数の進入穴61が形成されている。なお、多数の進入穴61が形成される代わりに、図3に示すように、第2ピアッシング部材55の外周面には、対応関係にある複数の突起59が進入可能な複数の進入溝63が形成されるようにしても差し支えない。更に、第1ピアッシング部材53と第2ピアッシング部材55の間隙を調節できるように、第1ピアッシング部材53は、調節シリンダ65の作動によって第2ピアッシング部材55に対して接近離反する上下方向へ移動可能に構成されている。
【0050】
再び図1に示すように、送り方向Fからみてピアッシング装置51の下流側には、空気抜き穴17hが形成された帯状補強部材17を所定幅に裁断するカッター装置67が配設されている。
【0051】
具体的には、カッター装置67は、帯状補強部材17を上下から挟む円板状の第1カッター部材69と円筒状の第2カッター部材71を複数組(1組のみ図示)備えている。また、第1カッター部材69は、外周側に、帯状補強部材17に切込みを与える切り刃69aを有しており、第2カッター部材71は、外周側に、切り刃69aを受ける刃受け部71aを有している。そして、第1カッター部材69及び第2カッター部材71が一対のカレンダーロール29,31の周速と同じ周速で同期して回転するようにするため、第2カッター部材71は、カッター用モータ73に連動連結されてあって、カッター用モータ73の駆動によって一対のカレンダーロール29,31の周速と同じ周速で回転可能になっており、第1カッター部材69は、押付けシリンダ75の作動によって第2カッター部材71側へ押付け可能になっている。なお、第1カッター部材69がカッター用モータ73に連動連結されるようにしても差し支えない。更に、各組の第1カッター部材69及び第2カッター部材71は、帯状補強部材17の所定幅に応じて、ライン幅方向Wへ位置調節できるように構成されている。
【0052】
送り方向Fからみてカッター装置67の下流側には、所定幅に裁断された帯状補強部材17を巻取る巻取り装置77が配設されている。
【0053】
具体的には、送り方向Fからみてカッター装置67の下流側には、巻取りロール支持部材79が設けられており、この巻取りロール支持部材79には、巻取りロール81が着脱可能に設けられている。また、巻取りロール81は、巻取り用モータ83に連動連結されており、巻取り用モータ83の駆動によって回転するようになっている。
【0054】
続いて、本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造方法について図1から図4を参照して説明する。
【0055】
帯状補強部材の製造方法は、帯状補強部材17を連続的に製造するための方法であって、(i)送出工程と、(ii)成形工程と、(iii)ピアッシング工程と、(iv) 裁断工程と、(v)巻取り工程とを具備している。
【0056】
(i) 送出工程
送出装置37における上部送出ロール41、下部送出ロール45、及び中間送出ロール49から一方のゴムシート19、他方のゴムシート21、及び不織布シート23を一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって連続的に送り出す。なお、図2(a)に示すように、上部送出ロール41及び中間送出ロール49から一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって一方のゴムシート19及び不織布シート23のみを連続的に送り出すようにしてもよく、図2(b)に示すように、下部送出ロール45及び中間送出ロール49から一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって他方のゴムシート21及び不織布シート23のみを連続的に送り出すようにしてもよい。
【0057】
(ii) 成形工程
カレンダーロール用モータ33の駆動によって一対のカレンダーロール29,31を同期して回転させつつ、不織布シート23を間にして重合した一対のゴムシート19,21及び不織布シート23を押圧シリンダ35の作動により一対のカレンダーロール29,31によって上下から押圧する。これにより、前記(i)送出工程において送り出された一対のゴムシート19,21と不織布シート23を一体的に積層してなる帯状補強部材17を連続的に成形して送り方向Fへ搬送することができる。なお、図4(a)に示すように、一方のゴムシート19及び不織布シート23のみを送り出している場合には、一方のゴムシート19と不織布シート23を一体的に積層してなる帯状補強部材17を成形することができ、図4(b)に示すように、他方のゴムシート21及び不織布シート23のみを送り出している場合には、他方のゴムシート21と不織布シート23を一体的に積層してなる帯状補強部材17を成形することができる。
【0058】
ここで、前記(ii)成形工程中における一対のカレンダーロール29,31による押圧荷重が2N以上になるように、押圧シリンダ35を制御している。つまり、前記(ii)成形工程中における一対のカレンダーロール29,31による押圧荷重を2N以上としたのは、一対のカレンダーロール29,31による押圧荷重が2N未満であると、帯状補強部材17中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができないからである。
【0059】
また、前記(ii)成形工程中における一対のカレンダーロール29,31の温度は、60℃から70℃に加温設定されている。
【0060】
(iii) ピアッシング工程
ピアッシング用モータ57の駆動によって第1ピアッシング部材53と第2ピアッシング部材55を一対のカレンダーロール29,31の周速と同じ周速で同期して回転させつつ、調節シリンダ65の作動により第1ピアッシング部材53と第2ピアッシング部材55の協働によって帯状補強部材17を上下から挟む。これにより、多数の突起59を対応関係にある進入穴61又は進入溝63に進入させつつ、前記(ii)成形工程において送り方向Fへ搬送された帯状補強部材17に空気抜き穴17hを連続的に形成することができる。
【0061】
(iv) 裁断工程
カッター用モータ73の駆動及び押付けシリンダ75の作動によって第1カッター部材69及び第2カッター部材71を一対のカレンダーロール29,31の周速と同じ周速で同期して回転させつつ、前記(iii)ピアッシング工程において空気抜き穴17hが形成された帯状補強部材17を押付けシリンダ75の作動により第1カッター部材69と第2カッター部材71によって上下から挟む。これにより、前記(iii)ピアッシング工程において空気抜き穴17hが形成された帯状補強部材17を所定幅に連続的に裁断することができる。
【0062】
(v) 巻取り工程
巻取り用モータ83の駆動によって巻取りロール81を回転させることにより、帯状補強部材17を巻取り装置77によって連続的に巻取ることができる。なお、巻取り装置77の巻取り速度は、一対のカレンダーロール29,31の周速と同じである。
【0063】
ここで、巻取り装置77によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力が1N/cm以上で8N/cm以下になるように、巻取り用モータ83の巻取りトルク(換言すれば、巻取り装置77の巻取りトルク)を制御している。つまり、巻取り装置77によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力が8N/cm以下となるようにしたのは、8N/cmを越える単位幅当りの張力で巻取った帯状補強部材17を用いて成型された補強層11を空気のう1の構成要素とした場合に、タイヤ3の内圧が急激に低下した際における空気のう1の拡張機能を十分に発揮できないという、新規な知見に基づくものである。また、巻取り装置77によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力が1N/cm以上となるようにしたのは、1N/cm未満の単位幅当りの張力で巻取られると、帯状補強部材17にしわが発生し易いという、新規な知見に基づくものである(後述の実施例参照)。
【0064】
以上により、帯状補強部材17を連続的に製造することができる。
【0065】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0066】
前記(iii)ピアッシング工程において、送り方向Fへ搬送された帯状補強部材17にピアッシング装置51によって空気抜き穴17hを連続して形成しているため、換言すれば、帯状補強部材17を連続的に製造する際に、予めピアッシング装置51によって帯状補強部材17に多数の空気抜き穴17hを形成しているため、補強層11を成型した後であって補強層11に加硫処理を施す前に、キリ等によって補強層11に多数の空気抜き穴17hを加工する必要がなくなる。
【0067】
また、帯状補強部材17に空気抜き穴17hを形成する際に、第1ピアッシング部材53及び第2ピアッシング部材55を一対のカレンダーロール29,31の周速と同じ周速で同期して回転させているため、空気抜き穴17hの形成に伴う帯状補強部材17の伸びを十分に抑えることができる。
【0068】
更に、前記(v)巻取り工程において巻取り装置77によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力が1N/cm以上で8N/cm以下になるように、巻取り用モータ83の巻取りトルクを制御するため、巻取り装置77によって巻取られる際における帯状補強部材17のしわの発生を抑えつつ、帯状補強部材17を用いて成型された補強層11を空気のう1の構成要素とした場合に、タイヤ3の内圧が急激に低下した際における空気のう1の拡張機能を十分に発揮させることがきる。
【0069】
また、前記(ii)成形工程中における一対のカレンダーロール29,31による押圧荷重が2N以上になるようにするため、前記(ii)成形工程において帯状補強部材17中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができる。
【0070】
以上の如き、本発明の実施形態によれば、補強層11を成型した後であって補強層11に加硫処理を施す前に、キリ等によって補強層11に多数の空気抜き穴17hを加工する必要がなくなるため、空気のう1の一連の製造時間を短くして、空気のう1の生産性を高めることができる。
【0071】
また、空気抜き穴17hの形成に伴う帯状補強部材17の伸びを十分に抑えることができることができるため、帯状補強部材17の品質を安定させることができる。特に、前記(ii)成形工程において帯状補強部材17中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができるため、帯状補強部材17自体の品質をより安定させることができる。
【0072】
更に、巻取り装置77によって巻取られる際における帯状補強部材17のしわの発生を抑えつつ、帯状補強部材17を用いて成型された補強層11を空気のう1の構成要素とした場合に、タイヤ3の内圧が急激に低下した際における空気のう1の拡張機能を十分に発揮させることがきるため、帯状補強部材17自体の品質を向上させつつ、帯状補強部材17の製品不良を極力少なくすることができる。
【0073】
なお、本発明は、前述の実施形態の他に、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【0074】
(変形例)
次に、図6を参照して変形例について説明する。
【0075】
ここで、図6は、変形例に係わる帯状補強部材の製造ラインを説明する模式的な図である。なお、図中、「F」は、送り方向を指してあって、「W」は、ライン幅方向を指してあって、L「U」は、上方向を指してあって、「D」は、下方向を指している。
【0076】
図6に示すように、変形例に係わる帯状補強部材の製造ライン85は、前述の帯状補強部材の製造ライン25と略同じ構成をしており、帯状補強部材の製造ライン25と異なる部分の構成についてのみ説明する。なお、変形例に係わる帯状補強部材の製造ライン85における複数の構成要素のうち、実施形態に係わる帯状補強部材の製造ライン25における構成要素と対応するものについては、図中に同一番号を付する。
【0077】
帯状補強部材の製造ライン85は、カレンダーロール装置27とカッター装置67との間における一部の停止領域85aにおいてライン稼動中に帯状補強部材17を見かけ上間欠的に停止させる間欠停止装置87を備えている。換言すれば、帯状補強部材の製造ライン85は、ライン稼働中に、カレンダーロール装置27とカッター装置67との間における一部の停止領域85aにおいてライン稼動中に帯状補強部材17が見かけ上間欠的に停止するように構成されている。
【0078】
具体的には、送り方向Fからみて停止領域85aの上流側には、帯状補強部材17を送り方向Fへ搬送する第1搬送ロール89が回転可能に設けられており、送り方向Fからみて停止領域85aの下流側には、帯状補強部材17を送り方向Fへ搬送する第2搬送ロール91が回転可能に設けられている。また、第1搬送ロール89及び第2搬送ロール91は、搬送ロール用モータ93に連動連結されてあって、搬送ロール用モータ93の駆動によって同じ周速で同期して回転するようになっている。
【0079】
送り方向Fからみて第1搬送ロール89の下流側近傍には、帯状補強部材17を送り方向Fへ間欠的に搬送する第1間欠搬送ロール95が回転可能に設けられており、送り方向Fからみて第2搬送ロールの上流側近傍には、帯状補強部材17を送り方向Fへ間欠的に搬送する第2間欠搬送ロール97が回転可能に設けられている。また、第1間欠搬送ロール95及び第2間欠搬送ロール97は、間欠搬送ロール用モータ99に連動連結されてあって、間欠搬送ロール用モータ99の駆動によって同じ周速で同期して間欠的に回転するようになっている。ここで、第1間欠搬送ロール95及び第2間欠搬送ロール97の周速は、第1搬送ロール89及び第2搬送ロール91の周速よりも速くなっている。
【0080】
第1搬送ロール89と第1間欠搬送ロール95との間には、帯状補強部材17を支持する第1支持ロール101が設けられており、この第1支持ロール101は、ライン稼働中に、第1間欠搬送ロール95が回転状態のときに上昇しかつ第1間欠搬送ロール95が停止状態のときに下降するように構成されている。また、第2搬送ロール91と第2間欠搬送ロール97との間には、第2支持ロール103が設けられており、この第2支持ロール103は、ライン稼働中に、第2間欠搬送ロール97が回転状態のときに下降しかつ第2間欠搬送ロール97が停止状態のときに上昇するように構成されている。なお、第1支持ロール101及び第2支持ロール103は、昇降用モータ等の昇降用アクチュエータ(図示省略)の駆動によって昇降するようにしても差し支えない。
【0081】
従って、ライン稼働中に、間欠搬送ロール用モータ99の駆動によって第1間欠搬送ロール95及び第2間欠搬送ロール97を回転させると、第1支持ロール101を上昇させ、かつ第2支持ロール103を下降させて、停止領域85aにおいて帯状補強部材17を送り方向Fへ搬送することができる。また、ライン稼働中に、第1間欠搬送ロール95及び第2間欠搬送ロール97を停止させると、第1支持ロール101を下降させ、かつ第2支持ロール103を上昇させて、停止領域85aにおいて帯状補強部材17を見かけ上停止させることができる。
【0082】
また、変形例に係わる帯状補強部材の製造ライン85は、帯状補強部材の製造ライン25と異なり、ピアッシング装置51の代わりに、別の構成のピアッシング装置105を具備している。
【0083】
具体的には、停止領域85aの上側近傍には、第1ピアッシング部材107が設けられており、この第1ピアッシング部材107の下面(停止領域85a側の面)には、尖った多数の突起109が形成されている。また、停止領域85aの下側近傍には、第2ピアッシング部材111が設けられており、この第2ピアッシング部材111の上面(停止領域85a側の面)には、対応関係にある突起109が進入可能な多数の進入穴113が形成されている。ここで、第1ピアッシング部材107と第2ピアッシング部材111は、一対の昇降シリンダ115,117の作動によって接近離反するように同期して昇降するようになっている。なお、多数の進入穴113が形成される代わりに、第2ピアッシング部材111の上面には、対応関係にある複数の突起109が進入可能な複数の進入溝(図示省略)が形成されるようにしても差し支えない。
【0084】
更に、変形例に係わる帯状補強部材の製造方法は、前述の帯状補強部材の製造方法と同様に、帯状補強部材17を連続的に製造するための方法であって、前記(i)送出工程と、前記(ii)成形工程と、前記(iii)ピアッシング工程に代わる別の(III)ピアッシング工程と、前記(iv) 裁断工程と、前記(v)巻取り工程とを具備している。そして、前記(III)ピアッシング工程の具体的な内容は、次のようになる。
【0085】
(III)ピアッシング工程
停止領域85aで、帯状補強部材17の見かけ上の停止タイミングに応じて、一対の昇降シリンダ115,117の作動によって第1ピアッシング部材107と第2ピアッシング部材111を同期して昇降させて、第1ピアッシング部材107と第2ピアッシング部材111との協働によって帯状補強部材17を上下から挟む。これにより、多数の突起109を対応関係にある進入穴113に進入させつつ、前記(ii)成形工程において送り方向Fへ搬送された帯状補強部材17に空気抜き穴17hを連続的に形成することができる。
【0086】
ここで、帯状補強部材17に空気抜き穴17hを形成する際に、停止領域85aで、帯状補強部材17の見かけ上の停止タイミングに応じて、第1ピアッシング部材107と第2ピアッシング部材111との協働によって帯状補強部材17を上下から連続的に挟んでいるため、空気抜き穴17hの形成に伴う帯状補強部材17の伸びを十分に抑えることができる。
【0087】
なお、変形例においても、前述の実施形態と同様の作用及び効果を奏するものである。
【実施例】
【0088】
(第1の実施例)
実施形態に係わる帯状補強部材の製造ライン25によって製造された帯状補強部材17を補強層11の成型に用いた場合(実施例1)と、ピアッシング装置51を含まない従来の帯状補強部材の製造ラインによって製造した帯状補強部材17を補強層11の成型に用いた場合(比較例1)において、補強層11を成型した後であって補強層11に加硫処理を施す前に、1個の補強層11当たり、キリ等によって必要な数の空気抜き穴17hを加工するのに要した時間(1個の補強層11当たりの加工時間)についてまとめると、表1に示すようになる。
【表1】

【0089】
即ち、実施形態に係わる帯状補強部材の製造ライン25によって製造された帯状補強部材17を補強層11の成型に用いた場合には、従来の帯状補強部材の製造ラインによって製造した帯状補強部材17を補強層11の成型に用いた場合に比較して、1個の補強層11当たりの加工時間を大幅に短縮することができた。
【0090】
(第2の実施例)
巻取り装置77によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力と、帯状補強部材17のしわの程度との関係をまとめると、表2に示すようになる。ここで、実施例2における帯状補強部材17のしわの程度を1とし、数値が大きくなるにしたがって帯状補強部材17のしわが多いことを示している。
【表2】

【0091】
即ち、実施例2から実施例4、及び比較例2に示すように、巻取り装置77によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力が1N/cm未満であると、帯状補強部材17にしわが多くなる。なお、比較例3の場合には、帯状補強部材17のしわはほとんどないが、帯状補強部材17の伸びが大きくなりすぎて、製品不良(NG)になる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造ライン(帯状補強部材の製造方法)を説明する模式的な図である。
【図2】本発明の実施形態に係わるピアッシング装置の模式的な正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係わるピアッシング装置の別の態様を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造方法における送出工程の他の態様を説明する模式的な図である。
【図5】タイヤに収容された状態の本発明の実施形態に係わる空気のうの部分断面図である。
【図6】変形例に係わる帯状補強部材の製造ラインを説明する模式的な図である。
【符号の説明】
【0093】
1 空気のう
3 タイヤ
11 補強層
17 帯状補強部材
17h 空気抜き穴
19 ゴムシート
21 ゴムシート
23 不織布シート
25 帯状補強部材の製造ライン
27 カレンダーロール装置
29 カレンダーロール
31 カレンダーロール
51 ピアッシング装置
53 第1ピアッシング部材
55 第2ピアッシング部材
59 突起
61 進入穴
63 進入溝
67 カッター装置
77 巻取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気のうの構成要素である補強層の成型に用いられ、ゴムからなるゴムシートと不織布からなる不織布シートを一体的に積層してなる帯状補強部材を連続的に製造する帯状補強部材の製造ラインであって、
重合した前記ゴムシートと前記不織布シートを上下から押圧する回転可能な一対のカレンダーロールを備えてあって、前記帯状補強部材を連続的に成形して送り方向へ搬送するカレンダーロール装置と、
前記送り方向からみて前記カレンダーロール装置の下流側に配設され、前記送り方向へ搬送された前記帯状補強部材に空気抜き穴を連続的に形成するピアッシング装置と、
前記送り方向からみて前記ピアッシング装置の下流側に配設され、前記空気抜き穴が形成された前記帯状補強部材を連続的に巻取る巻取り装置と、
を具備したことを特徴とする帯状補強部材の製造ライン。
【請求項2】
前記ピアッシング装置は、
外周面に尖った突起が形成された円筒状の第1ピアッシング部材と、
外周面に前記突起が進入可能な進入穴又は進入溝が形成され、前記第1ピアッシング部材との協働によって前記帯状補強部材を上下から挟む円筒状の第2ピアッシング部材と、を備えてあって、
前記第1ピアッシング部材及び前記第2ピアッシング部材が一対の前記カレンダーロールの周速と同じ周速で同期して回転するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の帯状補強部材の製造ライン。
【請求項3】
ライン稼働中に、前記カレンダーロール装置と前記巻取り装置との間における一部の停止領域において前記帯状補強部材が見かけ上間欠的に停止するように構成されてあって、
前記ピアッシング装置は、
前記停止領域の近傍に設けられ、前記停止領域側の面に尖った突起が形成された第1ピアッシング部材と、
前記停止領域の近傍に設けられ、前記停止領域側の面に前記突起が進入可能な進入穴又は進入溝が形成され、前記帯状補強部材の見かけ上の停止タイミングに合わせつつ、前記第1ピアッシング部材との協働によって前記帯状補強部材を上下から挟む第2ピアッシング部材と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の帯状補強部材の製造ライン。
【請求項4】
空気のうの構成要素である補強層の成型に用いられ、ゴムからなるゴムシートと不織布からなる不織布シートを一体的に積層してなる帯状補強部材を連続的に製造するための帯状補強部材の製造方法であって、
カレンダーロール装置における一対のカレンダーロールを回転させつつ、重合した前記ゴムシート及び前記不織布シートを一対の前記カレンダーロールによって上下から押圧することにより、前記帯状補強部材を連続的に成形して送り方向へ搬送する成形工程と、
前記成形工程において前記送り方向へ搬送された前記帯状補強部材に、前記送り方向からみて前記カレンダーロール装置の下流側に配設されたピアッシング装置によって空気抜き穴を連続的に形成する空気抜き穴形成工程と、
前記空気抜き穴形成工程において前記空気抜き穴が形成された前記帯状補強部材を、前記送り方向からみて前記ピアッシング装置の下流側に配設された巻取り装置によって連続的に巻取る巻取り工程と、
を具備したことを特徴とする帯状補強部材の製造方法。
【請求項5】
前記空気抜き穴形成工程において、前記ピアッシング装置における円筒状の第1ピアッシング部材と円筒状の第2ピアッシング部材を一対の前記カレンダーロールの周速と同じ周速で同期して回転させつつ、前記第1ピアッシング部材と前記第2ピアッシング部材の協働によって前記帯状補強部材を上下から挟むことにより、前記第1ピアッシング部材の外周面に形成された尖った突起を、前記第2ピアッシング部材の外周面に形成された進入穴又は進入溝に進入させつつ、前記帯状補強部材に前記空気抜き穴を連続的に形成することを特徴とする請求項4に記載の帯状補強部材の製造方法。
【請求項6】
前記空気抜き穴形成工程において、前記帯状補強部材が見かけ上間欠的に停止する停止領域で、前記帯状補強部材の見かけ上の停止タイミングに応じて、前記ピアッシング装置における第1ピアッシング部材と第2ピアッシング部材との協働によって前記帯状補強部材を上下から挟むことにより、前記第1ピアッシング部材の前記停止領域側の面に形成された尖った突起を、前記第2ピアッシング部材の前記停止領域側の面に形成された進入穴又は進入溝に進入させつつ、前記帯状補強部材に前記空気抜き穴を連続的に形成することを特徴とする請求項4に記載の帯状補強部材の製造方法。
【請求項7】
前記巻取り工程おいて、前記巻取り装置によって巻取られる前記帯状補強部材の単位幅当りの張力が1N/cm以上で8N/cm以下になるように、前記巻取り装置の巻取りトルクを制御することを特徴とする請求項4から請求項6のうちのいずれかの請求項に記載の帯状補強部材の製造方法。
【請求項8】
前記成形工程中における一対の前記カレンダーロールによる押圧荷重が2N以上になるようにすることを特徴とする請求項4から請求項7のうちのいずれかの請求項に記載の帯状補強部材の製造方法。
【請求項9】
タイヤの内圧が急激に低下した際に、前記タイヤに代わって車両荷重を支持する空気のうであって、
ゴムからなり、作動気体を充填可能な中空円環状のチューブと、
前記チューブに設けられ、請求項4から請求項8のうちのいずれかの請求項に記載の帯状補強部材の製造方法によって製造した帯状補強部材を用いて成型された補強層と、
を具備したことを特徴とする空気のう。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−112019(P2007−112019A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306167(P2005−306167)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】