説明

帯電部材の製造方法

【課題】導電性支持体をキャビティに入れ、ゴムを主成分とする材料を充填して導電性支持体に半導線性弾性層を成形する帯電部材の製造方法において、キャビティに材料を充填する時間を遅くすると表面にヘジテーションマークが着くという問題がある。また、キャビティに材料を充填する時間を早くすると反りが大きくなるという問題がある。
【解決手段】キャビティへのゴムを主成分とする材料の充填時間を、キュラストメーターの測定で10%の硬化反応が進行する時間(T10)の60%〜76%(0.60×T10〜0.76×T10)とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として複写機、プリンター等の画像形成装置で使用される帯電部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、感光体の帯電は、従来よりコロナ放電器によるコロナ放電方式が使用されている。しかし、かかるコロナ放電方式は、高圧電源が必要なことと、放電に伴いオゾンが発生し環境に悪影響を及ぼすことから、帯電ロールを感光体へ接触させ、従動回転させながら電圧を印加し、感光体表面を帯電させる接触ロール帯電方式が低中速機では主に採用されている。
【0003】
この種の帯電ロールを製造する方法としては、導電性支持体を金型キャビティにセットし、金型キャビティ中にゴムを充填した後、該ゴムを固化して導電性支持体の表面に半導電性弾性層を形成した後、半導電性弾性層の表面を研磨するものがある(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平05−249805号公報
【特許文献2】特開平05−303258号公報
【特許文献3】特開2008−051962号公報
【特許文献4】特開2006−113120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、金型キャビティにゴムを充填する時間を遅くすると、金型キャビティにゴムが満ちる前にゴムの一部の硬化が始まるため、半導電性弾性層にうろこ状の微細な凹凸(ヘジテーションマーク)が着くという問題がある。かかるヘジテーションマークが付いた帯電ロールを画像形成装置で用いると、画像品質を悪化させるという問題がある。尚、該ヘジテーションマークは、半導電性弾性層の内部までも形成されているので、半導電性弾性層の表面を研磨しても無くなることはない。また、金型キャビティへのゴムの充填時間を遅くすると、帯電ロールの生産性が悪化するという問題もある。
【0006】
逆に、金型キャビティへのゴムの充填時間を早くすると、前記したヘジテーションマークは無くなるが、導電性支持体の反り量が大きくなるという問題がある。導電性支持体が反る理由は、高圧のゴムが金型キャビティに短時間で充填されると、ゴムの高い圧力で導電性支持体を曲げる力が働くからである。かかる導電性支持体の反り量が大きな帯電ロールは表面を研磨しても帯電ロールの形状が悪いので、かかる帯電ロールを画像形成装置で使用すると、感光体への帯電ロールの接触が一様でないため、画像品質を悪化させるという問題がある。
【0007】
本発明は、前記した全ての問題を解決するためになされたものであって、画像品質に影響を与えることがなく、高い生産効率で帯電部材が生産できる帯電部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(第1発明)
第1発明に係る帯電部材の製造方法は、金型キャビティに導電性支持体をセットし、金型キャビティにゴムを主成分とする材料を充填して導電性支持体上に半導電性弾性層を形成した後、成形物を金型キャビティから脱型し、半導電性弾性層の表面を研磨するものである。そして、金型キャビティへのゴムを主成分とする材料の充填時間を、キュラストメーターの測定で10%の硬化反応が進行する時間(T10)の60%〜76%(0.60×T10〜0.76×T10)とするものである。
【0009】
ここで、成形物とは、導電性支持体をセットした金型キャビティに、金型キャビティを満たす量のゴムを主成分とする材料を射出充填した後、ゴムを固化して得たものをいう。
また、脱型とは、前記した成形物を金型キャビティから取り出すことをいう。具体的には、可動型と固定型を型締めすることにより形成される金型キャビティであれば、可動型を動作させて型開きを行い、可動型または固定型の金型キャビティを構成する部分に着いている成形物を、可動型または固定型から取り出すことである。
【0010】
また、キュラストメーター(加硫試験機)とは、ゴム材料の加硫特性や、ゴムの硬化過程を測定する試験機をいう。より具体的には、金型キャビティに充填するゴムを主成分とする材料のサンプルをキュラストメーターの測定部にセットし、一定振幅で振動変形を与えたときに発生する応力を測定する。これにより、ゴムを主成分とする材料が硬化するまでに加わる応力を経時的に測定することができる。本発明で用いるキュラストメーターは、一般に市販されているものを用いることができる。
【0011】
本発明においては、金型キャビティおける、ある温度でのトルク−時間曲線をキュラストメーターにて測定し、トルクが最も小さいところをゴムを主成分とする材料が100%溶融状態(0%硬化)とし、トルクが最も安定したところをゴムを主成分とする材料が100%硬化したとする。そして、ゴムを主成分とする材料が10%硬化するまでに要する時間、すなわち、キュラストメーターの測定で10%の硬化反応が進行する時間をT10とする。
【0012】
本発明は、金型キャビティへの溶融したゴムを主成分とする材料の充填時間を0.60×T10以上0.76×T10以下の範囲に設定するものである。かかる範囲内の時間に金型キャビティにゴムを主成分とする材料を充填すれば(満たせば)、表面にヘジテーションマークが無く、反りが非常に少ない帯電部材を製造することができる。
【0013】
(第2発明)
第2発明に係る帯電部材の製造方法は、第1発明において、ゴムをエピクロルヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル共重合体としたものである。
かかる構成であっても、前記第1発明と同じ効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る帯電部材の製造方法は、画像品質に影響を与えることがなく、高い生産効率で帯電部材を生産できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を以下に詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
(導電性支持体)
本発明で使用する導電性支持体は、鉄、アルミニウム等の金属製のシャフトを用いることができる。
本実施例においては、導電性支持体として、鉄製の金属シャフトに無電解ニッケルメッキをコーティングしたものを用いた。
【0017】
(ゴム)
本発明では、例えば、エピクロルヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル共重合体、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)等の電気抵抗値が低い弾性材料を使用することができる。
本実施例においては、表1に示す様に、ゴムとして、日本ゼオン社製のエピクロルヒドリンゴムを用い、このエピクロルヒドリンゴム100重量部に対して、表1に示す各種添加剤を配合した。尚、表1において、配合部とは、重量部のことである。
【0018】
【表1】

【0019】
(キュラストメーターでの測定)
上記表1のゴムを主成分とする材料8グラムを、JSRトレーディング株式会社製のキュラストメーター(型式:キュラストメーター7)の測定部に載せ、図1に示すキュラスト特性(グラフ)を得た。
【0020】
図1により、表1に示すゴムを主成分とする材料を用いた場合のトルクの最小値(MIN)は(1)であり、最大値(MAX)は(2)である。つまり、表1に示すゴムを主成分とする材料は、(1)では溶融状態にあり、(2)では硬化した状態にある。この(1)を溶融状態、(2)を硬化状態とした場合に、ゴムを主成分とする材料が10%硬化した状態は、図1における(3)である。そして、(3)における時間T10は、1.1分である。
【0021】
ここで、ゴムを主成分とする材料が10%硬化した状態である(3)の位置の求め方は、トルクの最大値(MAX)と最小値(MIN)の差を10等分して求めた単位トルク((MAX−MIN)÷10)を、トルクの最小値(MIN)に加算すれば、ゴムを主成分とする材料が10%硬化した状態である(3)の位置のトルク(MIN+単位トルク)が分かるので、このトルクの算出値(MIN+単位トルク)に基づいて(3)の位置が分かる。
【0022】
本実施例においては、表1に示すゴムを主成分とする材料が10%硬化する時間T10は、図1により1.1分である。そうすると、表1に示すゴムを主成分とする材料を用いて帯電部材を製造する場合は、金型キャビティへの当該ゴムを主成分とする材料の充填時間を、1.1分×60%以上1.1分×76%以下に設定すれば良いことがわかる。すなわち、40秒以上50秒以下である。
【0023】
(帯電ロールの成形テスト)
表1に示したゴムを主成分とする材料を用いて、図2に示す帯電部材としての帯電ロールの成形テストを行った。
導線性支持体としての鉄製の金属シャフト(長さ330mm、直径8mm)を、金型(固定型および可動型)の温度と略同一の温度まで予備加熱して、固定型にセットし、可動型を型締めした後、溶融状態のゴムを主成分とする材料(表1)が金型キャビティに満ちるまで射出充填した。充填時間(充填開始から充填終了までの時間)を30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒にして、それぞれ1本の帯電ロールを製造した。製造した帯電ロールは、半導電性弾性弾性層の長さが315mm、直径が12.5mmである。
【0024】
脱型した後、半導電性弾性弾性層を研磨する前に、帯電ロールの振れと、ヘジテーションマークの有無を確認した。振れの測定は、帯電ロールの両端を支持して定速で回転させ、レーザー測定器により帯電ロールの中央部の振れ量を測定した。尚、半導電性弾性弾性層を研磨する前に、帯電ロールの振れを測定した理由は、研磨前に振れが大きいと研磨後であっても振れが大きく、研磨前に振れが小さいと研磨後も振れが小さいからである。
表2は、実験結果をまとめたものである。
【0025】
【表2】

【0026】
表2より、ヘジテーションマークは、充填時間が55秒(0.83×T10)の場合のみにできるため、この場合のみNGであった。
一方、振れは、充填時間が40秒(0.60×T10)以上50秒(0.76×T10)以下の場合に振れ量が0.17mm以下であり、良好な結果が出た。
【0027】
つまり、ヘジテーションマークが無く、かつ、振れ(導電性支持体の反り)が小さい帯電ロールを製造するためには、金型キャビティへのゴムを主成分とする材料の充填時間を、キュラストメーターの測定で10%の硬化反応が進行する時間(T10)の60%〜76%(0.60×T10〜0.76×T10)とすれば良いことが分かる。
【0028】
その後、充填時間を40秒、45秒、50秒とした、すなわち、キュラストメーターの測定で10%の硬化反応が進行する時間(T10)の60%〜76%(0.60×T10〜0.76×T10)とした3本の帯電ロールの半導電性弾性層の表面を0.25mm研磨した後、帯電ロールの両端を支持して定速で回転させ、レーザー測定器により帯電ロールの中央部の振れ量を測定した。振れ量は、表1のデータと略同じであった。
【0029】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除および付加が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、複写機、プリンター等の画像形成装置で使用される帯電部材の製造方法で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】キュラストメーターのグラフ(実施例1)
【図2】帯電ロールの正面図(実施例1)
【符号の説明】
【0032】
1 導電性支持体
2 半導電性弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型キャビティに導電性支持体をセットし、該金型キャビティにゴムを主成分とする材料を充填して該導電性支持体上に半導電性弾性層を成形した後、該成形物を前記金型キャビティから脱型し、該半導電性弾性層の表面を研磨する帯電部材の製造方法において、
前記金型キャビティへの前記ゴムを主成分とする材料の充填時間を、キュラストメーターの測定で10%の硬化反応が進行する時間(T10)の60%(0.60×T10)以上76%(0.76×T10)以下とすることを特徴とする帯電部材の製造方法
【請求項2】
前記ゴムは、エピクロルヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル共重合体である請求項1に記載の帯電部材の製造方法

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−236956(P2009−236956A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79082(P2008−79082)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】