説明

干渉型レーダー

【課題】一般のレーダーと異なり、送信信号はパルスではなく、CWまたはFMCW信号であるため、レーダー用ではない一般通信用の送信モジュールを使用することができる。
【解決手段】目標対象物に向けて信号を送信する送信部Tと、目標対象物で反射する反射波を受信する受信部Rとを有している。前記送信部Tは、目標対象物の方位及び速度を検出するためのCW信号を送信アンテナ7から出力する。前記受信部Rは、前記送信部Tからの送信と同時に、目標対象物で反射した反射波を複数台の受信アンテナ8で受信し、受信信号に対してスペクトル解析を行い速度成分ごとの受信信号に分類する機能と、受信アンテナ系統の信号間の相関する機能と、前記相関処理された信号を積分する機能と、受信アンテナ間の信号の位相差からアンテナ面に入射する信号の位相面を求めて、その出力を2次元FFTしてターゲットの方位方向及び速度を計測する機能とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔する目標対象物を観測する干渉型レーダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダーは、ターゲットの方位を知るために非常に細いビーム幅のアンテナを使用している。この細いビーム幅で広域を監視するためには、アンテナを高速にスキャンする必要がある。存在の可能性があるターゲットを捜索する場合、ある特定の方向をスキャンしてから、再び同じ方向をスキャンするまでに一定の時間が必要であり、突然出現したターゲットを見逃す可能性がある。
【0003】
従来のレーダーでは、送信波がターゲットで反射し受信されるまでの遅延時間で距離を計測している。距離分解能を向上するためには、送信パルス幅を短くする必要があり、送信平均電力の低下とともに、受信帯域幅が拡大し、S/Nの低下が生じる。そのため、送信波の反射する反射断面積が小さなターゲットは発見できない場合がある。
【0004】
従来のパルスレーダーではターゲットの速度を計測するには、反射信号のドップラー周波数シフトを用いるのが一般的である。高速な移動体の速度を計測するためには、そのドップラー周波数の2倍のパルス繰り返し周波数で送信受信を繰り返す必要がある。ミサイル等のように非常に高速な飛行物体である場合、受信窓が極めて小さくなり、距離計測にあいまいさが出てくる。これを防ぐために、複数のパルス繰り返しを用いて解析的に処理を行い、ターゲットの距離を計算する必要があった。
【0005】
従来のフェーズドアレイレーダーは複数のビームを形成し、これらのビームを用いて複数のターゲットを独立にトラッキングするものである。しかし、分割可能なビーム数に制約があるため、トラッキングできるターゲット数に制約がある。
【0006】
パルスレーダー以外の方法を用いてターゲットまでの距離とターゲットの速度とを知る方法として、FMCWレーダーがある。従来のFMCWレーダーではFMCW信号の周波数のぼり時と、周波数くだり時のベースバンド信号周波数のシフト量からターゲットの速度を検出し、さらにドップラー成分を補正後のターゲットとの距離を求める手法が使用されている(例えば、特許文献1,特許文献2)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ターゲットが移動している場合、受信信号を送信波と同じ信号で周波数変換したベースバンド信号は、ターゲットの速度によるドップラーシフトを受けると同時にターゲットの移動に伴って、周波数が変化し、正確な距離の計測を行うことができないという課題があった。さらにターゲットの速度および速度変化が大きい場合、同時に多数の異なる速度のターゲットが存在する場合には、上記手法は適用困難であった。
【0008】
また従来のFMCWレーダーでは、距離による遅延より遥かに大きな繰返し周期をとることにより、遅延による影響を無視していた。そのため、遠距離の計測をする場合、早い繰返し周期を採用することができず、高速移動ターゲットの測距高精度化が難しいという課題があった。
【0009】
【特許文献1】特開2000−46941号
【特許文献2】特開2003−177175号
【0010】
本発明の目的は、一般のレーダーと異なり、送信信号はパルスではなく、CWまたはFMCW信号を用いることにより、レーダー用ではない一般通信用の送信モジュールを使用することができる干渉型レーダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係る干渉型レーダーは、目標対象物に向けて信号を送信する送信部と、目標対象物で反射する反射波を受信する受信部とを有している。前記送信部は、MTIモード時に目標対象物の方位及び速度を検出するためのCW信号を、測距モード時及びISARモード時に、目標対象物の方位及び距離を検出するためのFMCW信号を送信アンテナからそれぞれ出力する。前記受信部は、前記送信部からの送信と同時に、目標対象物で反射した反射波を複数台の受信アンテナで受信し、受信信号に対して3つのモードで異なる処理を行い、未知のターゲットの速度計測、方位計測、瞬時距離の計測、軌道の推定、さらに、形状の画像化を行う。MTIモードでは、ベースバンド信号をスペクトル解析処理しターゲットの速度で分類する。さらに特定のターゲットの高精度速度計測を行う。測距モードでは、送信信号と同じFMCW信号で受信信号を周波数変換した後スペクトル解析し、ターゲットの距離で分類する。さらに特定のターゲットの高精度測距処理では測距モードと同様のFMCWによる周波数変換を行った後、高精度測距のための速度補正処理を行い、高精度な距離計測を行う。ISARモードでは、特定ターゲットのISAR画像処理を行う。これら3つのモードのうち、MTIモードと測距モードの概査処理では、各受信アンテナ系統のスペクトル解析出力を相関処理し、相関処理された信号を積分し2次元FFTする処理を行う。
【0012】
また前記送信部は、基準信号と位相同期して発生させた信号を搬送波として前記送信アンテナから送信するとともに、前記基準信号を前記受信部に出力し、前記受信部は、前記送信部から出力される基準信号を共通信号として、前記反射波に対して周波数変換を行い、スペクトル解析処理、相関処理及び積分処理を行う。
【0013】
また前記送信部は、送信波としてFMCW信号を送信し、前記受信部は、受信した信号を送信信号と同じFMCW信号で周波数変換し、ターゲットの距離情報を周波数情報に変換する。また前記送信部は送信波としてFMCW信号を送信し、前記受信部は、受信した信号を送信信号と同じFMCW信号で周波数変換し、さらにMTIモードで得られた特定ターゲットの速度情報を用いて、特定ターゲットの距離補正を行った後、ターゲットの距離情報を周波数情報に変換し高精度な距離情報を得る。また前記送信部は送信波としてFMCW信号を送信し、前記受信部は受信した信号を送信信号と同じFMCW信号で周波数変換し、ISAR処理を行う。
【0014】
また前記送信部は、送信波としてCW信号を送信し、前記受信部は、受信したCW信号のベースバンド信号をスペクトル解析し、目標対象物の速度を得る。
【0015】
また前記送信部は、複数の送信アンテナをマトリックス状に配列し、位相器で送信波のビーム幅,ビーム方向を調整して出力する。前記受信部は、複数の受信アンテナをT型形状に配列し、T型形状の寸法により空間分解能を拡大する。
【0016】
さらに画像表示部を有している。前記画像表示部は、前記受信部からの出力画像を重ね合わせて画像化することにより、ターゲットの方位、距離、速度さらに特定ターゲットの瞬時時刻における高精度な距離、特定ターゲットのISAR画像を組み合わせて表示する。
【0017】
高速に移動するターゲットの距離を高精度に計測するために、FMCWの繰り返し周波数を高くし、かつ広帯域に周波数を変化させるFMCWレーダーにおいて、遠距離からの反射信号の受信信号エネルギーを有効に処理するために、繰返し周期と周波数変化率の積と等しいA/D変換を行うことにより、一周期を遥かに超えた受信信号成分もディジタル信号の折り返し特性により同じ周波数に変換され、全受信信号エネルギーが有効に処理される。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、一般のレーダーと異なり、送信信号はパルスではなく、CWまたはFMCW信号であるため、レーダー用ではない一般通信用の送信モジュールを使用することができる。このため、低価格、高信頼性を容易に実現できる。またCWまたはFMCWを用いるため長時間積分によるS/N比の改善により、画像化に必要な送信パワーも従来のレーダーに比べて著しく小さくてよい。さらに、従来のレーダーよりも遥かに高感度を実現することができる。このため、小型、低価格にすることができる。
【0019】
干渉型レーダー装置は、星や、太陽を観測する天文分野で実現されている。これらのシステムでは、ターゲットが自ら発する微弱なエネルギーを検出して、その放射マップを作る。これらのシステムでは、ターゲットまでの距離は計測する必要がなかった。一方、ミサイルや航空機を監視するためには、速度とともに、距離も非常に重要な情報である。また、航空機や、ミサイルそれ自身から放射するエネルギーは不明であり、画像化には用いられない。
【0020】
これに対して本発明は、画像化に必要な電磁波エネルギーを、送信部から放射する。距離情報は、送信波をFMCW信号とすることで、距離情報を周波数情報に変換して、得ることができる。送信アンテナのビームをスキャンすることなく、全照射領域のターゲットを画像一定時間ごとに画像化することができる。
【0021】
また、送信信号にCW信号を用いており、ベースバンド信号のスペクトルを解析することにより、簡単にターゲットの速度を求めることができる、速度分解能はドップラー周波数分解能で決まり、FFTのデータ数で決定される。ミサイルやICBMのように非常に高速なターゲットでも、そのドップラー周波数のFFTで解析するだけで、容易に求めることができる。
【0022】
従来のFMCWレーダーでは、高速に移動するターゲットを高感度かつ高精度に測距するのは困難であった。しかし、本発明の高精度測距モードでは、MTIモードで得られたターゲットの速度データを用いて、受信データを補正し、等速直線運動をしていると見なせる範囲内の時間積分をすることで高感度に、かつパルスレーダーと同様な高精度な距離計測を行うことができる。
【0023】
送信部は複数の小型の送信モジュールで構成されており、位相器を調整することで、ペンシルビームからブロードビームまで簡単に変化させることができる。送信電力を特定のターゲット方向に集中し、受信信号のS/N比を向上させ、ISAR処理で画像化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を図に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る干渉型レーダーは、複数の送信モジュールから構成される1台の送信部Tと、複数台の受信部Rとを有している。
【0026】
図1に示す本発明の実施形態に係る干渉型レーダーは、運用面から見ると、パッシブモードとアクティブモードとの2つの動作モードを備えている。そしてアクティブモードは、測距モードと、MTIモードと、高精度測距モードと、ISARモードを備えている。各モードについて説明する。
【0027】
前記パッシブモードは、ターゲットに向けて電波(送信波)を放射することなく、例えば航空機の気象レーダー,戦闘機のFCSレーダー,人工衛星搭載レーダーの信号などのように受信アンテナビーム内で受信可能周波数範囲の全電波源の方向と電波強度とを表示する動作モードである。
【0028】
アクティブモードのうち前記測距モード及び前記MTIモードは、時分割に交互に動作し、ターゲットの方位と距離とを計測するとともに、その計測結果を合成して画面表示するモードである。また前記測距モード及び前記MTIモードでは、全視野を瞬時にもれなく観測する概査MTI機能と特定のターゲットの測距MTIを高精度に行う個別測距機能、また全視野を瞬時にもれなく観測する概査測距機能と特定のターゲットの測距を高精度に行う個別測距機能が同時に動作する。これら概査MTI,概査測距、個別MTI,個別測距機能の計測結果は画像処理されて、全体画面上に合成して、又は個別ターゲットの詳細情報として表示される。前記ISARモードは、動作時に電波(送信波)を送信し、ターゲットからの反射波を受信して、ISAR(Inverse Synthetic Aperture Radar)処理を行い画像化するモードである。
【0029】
前記送信部Tは図1に示すように複数のモジュールから構成される。前記複数のモジュールは、同期信号発生部1と、信号生成部2と、エキサイタ3と、信号分配器4と、信号分配器4で分配された信号がそれぞれ入力する複数の位相器5と、各位相器5にそれぞれ接続された複数のマイクロパワーモジュール(MPM)6と、各マイクロパワーモジュール6からの送信波を送信する複数の送信アンテナ7とを有している。ここに、マイクロパワーモジュール(MPM)6は図示しない位相安定回路を備えた小型のTWTA(Traveling Wave Tube Amplifier)が組み込まれ、送信波を増幅するものである。またエキサイタ3は、信号生成部2からの送信波の振幅を大きくして信号分配器4に出力させる。
【0030】
前記複数の送信アンテナ7は図2に示すように、1つのアンテナ面9aにマトリックス状に配列している。前記アンテナ面9aは、その法線方向が目標対象物(以下、ターゲットという)21に向いた平面形状をなしている。なお、ターゲット21としては、ミサイル,航空機などの高速飛行物体が挙げられるが、図ではミサイルを図示している。
【0031】
前記送信アンテナ7は、前記マイクロパワーモジュール6及び前記位相器5の直列回路にそれぞれ直列に接続されている。前記複数の位相器5には、信号分配器4で分配された信号が並列にそれぞれ入力する。複数の位相器5はビーム幅及びビーム方向をそれぞれ調整して送信波を送信アンテナ7に出力するため、前記複数の送信アンテナ7は図2に示すように、これらのアンテナ7を組み合わせた合成開口からのビーム幅が広いブロードビームB1と、前記合成開口からのビーム幅が特定のターゲット21の方向に集中した鋭利なペンシルビームB2とに切り替えられて送信波をターゲット21に向けて送信する。ここで、ブロードビームB1は測距モード時とMTIモード時とに出力させるものであり、送信信号を後述する受信アンテナの全視野角に均一電力で照射するビームである。ペンシルビームB2は特定のターゲット21を注目してできるだけ高いS/N比で観測するとき及びISAR観察モード時に出力させるものであり、送信信号を特定の方向に全送信電力を集中させたビームである。
【0032】
前記同期信号発生部1は、前記信号生成部2及び前記受信部R並びにそのほかの各部に同期信号を出力する。前記信号生成部2は前記同期信号発生部1からの同期信号を入力として、MTIモード時にCW(Continuous Wave)信号を出力し、測距モード時及びISARモード時にFMCW(Frequency-Modulated Continuous Wave)信号を出力する。ここに、CW信号とは、周波数を変調させずに連続して出力される信号である。FMCW信号とは、周波数を直線的に変調させながら連続的に出力される信号である。
【0033】
前記受信部Rは図1に示すように、H(水平)系とV(垂直)系との複数の受信アンテナ8H,8Vを備えている。これらのH系とV系との受信アンテナ8H,8Vは図3に示すように、1つのアンテナ面9bにT型形状に配列されている。すなわち、H系の受信アンテナ8Hは図3に示すように、アンテナ面9bの横(水平)方向(図の左右方向)に直線状に配列され、V系のアンテナ8Vはアンテナ面9bの縦(垂直)方向(図の上下方向)に直線状に配列されることにより、T型形状をなしている。この場合、V系受信アンテナ列はH系受信アンテナ列の中心位置から下方に伸びている場合に最も効率が良くなるが、この場合に限られるものではなく、その中心位置から左右にずれた位置から下方に伸びてT型形状をなすようにしても効率が若干落ちるが、特に問題が生じるものではない。前記アンテナ面9bは、その法線方向が観測すべき方向に向いた平面形状をなしており、受信アンテナ8H,8Vとしてマイクロ波(例えばXバンド)受信アンテナが用いられる。図3において、横方向に配列されたH系受信アンテナ8Hの列の長さD1と、縦方向に配列されたV系受信アンテナ8Vの列の長さD2とにより空間分解能が決定される。アンテナ列の長さD1及びD2の寸法が大きいほど、空間分解能が大きくなる。
【0034】
送信アンテナ7と受信アンテナ8(8H,8V)との関係では、通常観測時は送信アンテナ7のアンテナパターン及びビーム幅は、ターゲット21からの反射波が受信アンテナ8の全視野角に均等に照射するようにブロードビームモードB1に選定される。
【0035】
前記複数の受信アンテナ8(8H,8V)は図1に示すように、それぞれほぼ等しい電気的仕様を有する受信装置を備えている。前記受信装置は、低雑音増幅器(LNA)10と、周波数変換部11と、対をなすローパスフィルタ12a,12bと、A/D変換部13と、FFT処理部14と、相関処理部(相関器15a,積分器15b)15と、2次元FFT処理部16と、データ処理部17と、画像表示部18と、高精度測距処理部19とを備えている。
【0036】
前記低雑音増幅器10は前記受信アンテナ8から出力される受信信号を増幅する。前記周波数変換部11は前記信号生成部2から出力される信号を用いて、複数の受信アンテナ8が受信する複数の受信信号に対してH系受信アンテナ8とV系受信アンテナ8との系統別に周波数変換を行い、複数の受信信号を復調し、それぞれの受信信号から複素信号であるIQ信号(アナログ信号)を抽出し、そのI信号を一方のローパスフィルタ12aに、残りのQ信号を他方のローパスフィルタ12bにそれぞれ出力する。ローパスフィルタ12a,12bは、IQ信号の高周波成分を除去する。前記A/D変換部13は、ローパスフィルタ12a,12bで高周波成分が除去されたアナログのIQ信号(受信信号)を前記同期信号発生部1からの同期信号に同期させてディジタル信号にA/D変換する。前記FFT処理部14は、H系とV系との受信アンテナ8で受信されて復調された前記A/D変換部13からのディジタル信号について離散フーリエ変換に関連する変換を並行して実行し(FFT)、その出力信号を前記相関処理部15及び前記高精度測距処理部19に出力する。
【0037】
前記相関処理部15は相関器15aと積分器15bとを有し、前記FFT処理部14からの出力信号を複数の受信アンテナ8のH系とV系との信号間で相関積分処理を行う。前記2次元FFT処理部16は、相関処理部15で相関積分処理された信号を入力として、ターゲット21の速度別のアンテナ面(受信アンテナのアンテナ面)9bに入力される信号の位相面から電波源(ターゲット21)の方向を求める処理を行う。前記データ処理部17は、前記同期信号発生部1から出力される同期信号を用いて、前記2次元FFT処理部16で2次元FFT処理されたデータを入力とし、MTIモードでターゲットの速度毎に分類したターゲットの方位エレベーションと測距モードでターゲットの距離ごとに分類したターゲットの方位エレベーションを画像表示部18に出力し、かつターゲットの速度及び方位のデータを前記高精度測距処理部19に出力する。
【0038】
本発明の実施形態においては、送信アンテナ7からの送信と受信アンテナ8による受信とが同時刻に行われるため、図3に示すように送信アンテナ7からの送信信号が受信アンテナ8に廻り込まないように送信アンテナ7と受信アンテナ8とを白抜き矢印で示すように干渉しない程度に分離して設置する。
【0039】
さらに本発明の実施形態における方位分解能は、最も離れて設置された受信アンテナ8,8間の距離により決定される。また観測可能な視野角は、各受信アンテナ8のビーム幅により決定される。
【0040】
本発明の実施形態においては、前記送信部Tと前記受信部Rとの動作を変更することにより、非常に高感度にターゲットの方位と速度とを検出するMTIモードと、同様に高感度にターゲットの方位と距離とを計測する測距モードとで動作させる。本発明は図1に示すように制御部20を備えている。前記制御部20は、前記送信部Tと前記受信部Rとの動作を前記MTIモードと前記測距モードの二つの動作モードに数十ミリ秒から数秒以内で交互に切り替え、その出力画像を合成して、高精度な測距、MTIレーダー画像として表示する制御を行う機能を有している。さらに制御部20はMTIモード及び測距モードにおいて、データ処理部17及び高精度測距処理部19を動作制御し、個別のターゲットに関し、高精度に速度計測,距離計測を行う制御機能を有している。
【0041】
先ず、本発明におけるMTIモード時の動作について説明する。制御部20からMTIモードの指令が送信部Tに入力すると、信号生成部2は同期信号発生部1からの同期信号を入力として一定周波数のCW信号(ベースバンド信号)を連続して出力し、そのCW信号をエキサイタ3に通して信号分配器4に出力する。信号分配器4は、入力したCW信号を分配して複数の位相器5に出力する。位相器5は、分配された信号が入力すると、送信アンテナ7から送信する送信信号のビーム幅,ビーム方向を調整し、その調整後の送信信号をマイクロパワーモジュール6に通して送信アンテナ7に出力する。複数の送信アンテナ7は、図3の(a)に示す一定周波数の連続したCW信号を送信信号(送信波)としてターゲット21に向けて放射する。この場合、CW信号の送信波は、送信アンテナ7からペンシルビームB2でターゲット21に向けて放射される。
【0042】
制御部20は、送信部Tと受信部RとにMTIモードの動作指令を同時に出力するものであり、送信部Tが上述したように送信信号(CW信号)をターゲット21に向けて送信している際に、受信部Rはターゲット21で反射される信号(受信信号)を受信している。このように送信部Tと受信部Rとは、同時に動作しているために、送信部Tからの送信信号が受信部Rに線形動作領域(小信号の範囲;リニアな範囲)を超えるほど強力な信号として廻り込むと、受信部Rは、送信部Tから出力された送信信号とターゲット21からの反射信号とを識別することが困難になる。そのため、送信アンテナ7と受信アンテナ8とを離して設置している。ここに、前記送信信号のパワーが前記線形動作領域であれば、送信アンテナ7から受信アンテナ8に廻り込む不要な送信波を受信部およびFFT処理で分離することが可能である。
【0043】
図3において、送信アンテナ7から送信される送信信号のアンテナビーム方向に高速で飛翔してくるターゲット21が存在しているとする。この場合、送信アンテナ7からの送信信号はターゲット21で反射され、その反射波は非常に微弱な受信信号として複数の受信アンテナ8で受信される。
【0044】
前記受信アンテナ8で受信した受信信号(反射波)は、ターゲット21の速度VによりドップラーシフトΔfを受けている。ここに、送信アンテナ7から送信される送信信号の送信周波数をf、ターゲット21の速度をV、ドップラーシフトをΔf、Cを光速とすると、これらの関係は次の式(1)となる。
Δf=(2×V)/(C×f) (1)
【0045】
前記H系及びV系の複数の受信アンテナ8で受信された信号は、それぞれ低雑音増幅器10で増幅され、その増幅後の受信信号が周波数変換部11にそれぞれ入力する。それぞれの周波数変換部11は、信号生成部2からの送信信号(送信アンテナ7から送信される送信波)で周波数変換し、ベースバンド周波数の信号(ベースバンド信号)に変換する。
【0046】
A/D変換部13は、複数の周波数変換部11からの前記ベースバンド信号を受け取ると、アナログ信号である前記ベースバンド信号をディジタル信号に変換し、そのディジタル信号であるベースバンド信号をFFT処理部14に出力する。
【0047】
次に前記FFT処理部14は、入力したベースバンド信号をドップラーシフト周波数に分類する(スペクトル解析)。このとき、ベースバンド信号に含まれる直流周波数成分は、速度を持たないターゲットからの反射信号、及び送信アンテナ7から受信アンテナ8への廻り込み成分であるので、A/D変換部13及びFFT処理部14により除去される。Xバンドの周波数を用いる干渉レーダーの実施例では、計測対象速度範囲を最大7Km/sとすると、最高ドップラー周波数は約450KHzとなる。この場合、A/D変換周波数はその2倍以上となり、たとえば1MHzとする。概査MTI処理では、必要速度分解能を70m/s程度とすると、256点FFTが必要になる。この出力を相関処理し、積分、二次元FFT処理を行い、速度毎の画面として画像化する。
【0048】
前記FFT処理部14でのFFT処理を図6に基づいて説明する。送信アンテナ7と受信アンテナ8とのスラントンジ方向速度がVであるターゲット21からの反射信号はドップラーシフトを受けている。このドップラーシフト周波数によりターゲット21からの信号を分類し、速度ごとのターゲット分布図を求める。
【0049】
すなわち図6に示すように、前記FFT処理部14は、前記A/D変換部13でA/D変換されたディジタル信号であるベースバンド信号を一定周期T1,T2,T3・・・毎に周波数解析する。この場合、A/D変換のサンプル周波数Δtは、次式(2)で示すように想定される最高ドップラー周波数の2倍以上であることが必要である。
【0050】
1/Δt>2Δfmax (2)
ここに、Δfmaxは、想定される最高ドップラー周波数である。
【0051】
またFFT処理部14に1回に入力処理するデータ時間T1,T2,T3・・・は、次式(3)で示すように、必要とする速度分解能のドップラー周波数の逆数時間以上でなければならない。
【0052】
T1,T2,T3・・・>1/Δfmin (3)
ただし、Δfmin=2ΔVf/Cである。ここに、ΔVは速度分解能、Δfminはドップラー周波数分解能である。
【0053】
前記FFT処理部14でドップラーシフト周波数に分類された信号が相関処理部(相関器15a,積分器15b)に入力すると、相関処理部15により相関積分処理が行われる。次に相関処理と積分処理とに区分けして説明する。
【0054】
先ず前記相関器15aが受信アンテナ8系列の信号間で相関処理を行う場合について説明する。図6に示すように、前記FFT処理部14でドップラーシフト周波数に分類された信号(F(ω))が前記相関器15aに入力すると、前記相関器15aは、H系とV系との受信アンテナ8,8の相互間で信号H*(ω)〜H*(ω)・・・H*(ω)〜H*(ω),信号V(ω)〜V(ω)・・・V(ω)〜V(ω)の周波数成分の相関処理を行う。この周波数成分の相関処理は、H系とV系との全ての組み合わせの受信アンテナ8,8の相互間で行う。前記相関器15aによる相関処理により、各受信アンテナ系統で受信された信号間の、入射方向による位相差が検出され、全受信アンテナ8間の相関を求めることにより、アンテナ面9bに入射される全受信信号のベクトル合成された位相面を求めることができる。
【0055】
前記積分器15bは、前記相関器15aで相関処理された信号を長時間積分処理する(図3の(b))。前記積分器15bによる積分の結果、受信アンテナ8,8のH系とV系とで発生する内部雑音が抑圧され、内部雑音レベル以下の非常に微弱な受信信号も画像化することができる。同時に受信部R内の共通的なスプリアスが存在する場合、そのスプリアスは相関積分処理で抽出される。そのため、受信部Rの局部発信には共通信号源の逓倍信号ではなく、フェーズドロック発信器による独立発信信号を使う必要がある。前記周波数変換部11からのベースバンド信号に含まれる直流分は、A/D変換部13及びFFT処理部14で除去することにより、送信アンテナ7からの送信信号が受信アンテナ8の受信信号に混入する影響を除去することができる。
【0056】
以上のように、H系とV系の受信アンテナ8,8相互間の全ての組み合わせについてドップラーシフト周波数別に相関演算を行なうと、図7(a)に示すように分類されたドップラーシフト周波数(ターゲット21の速度)別のアンテナ面9bに入力される受信信号(ターゲット21からの反射波)の位相面(H−V)を求めることができる。
【0057】
前記2次FFT処理部16は前記相関処理部15からの信号を受けると、図7(a)に示す位相面(H−V)の2次元関数を2次元FFT処理することにより、図7(b)に示す速度ごとに分類したターゲット21の方位エレベーション(D−E)を求める。
【0058】
前記データ処理部17は、前記説明した概査MTI処理で求められたターゲット21の方位エレベーション(D−E)に基づいて特定ターゲット21の方向及び速度を計測する。すなわち、図3の(a)のようにMTIモードでは、送信側から連続したCW信号が出力される。ターゲット4の速度Vにより受信信号はドプラーシフトされたものであり、ドップラーシフトΔfがドップラー周波数として検出されるから、データ制御部17は、式(1)によりターゲット21の速度Vを算出する。本発明では、送信信号にCW信号を用いているため、非常に高精度に速度分析を行うことができる。必要なドップラー周波数分解能の逆数が1回の周波数解析処理に必要なデータ時間である。たとえば、送信信号の送信周波数が10GHzである場合に、100m/sの速度分解能を得るためには、0.15msの受信データを周波数解析すればよい。
【0059】
さらに前記データ処理部17は、前記2次元FFT処理部16から出力される方位エレベーション(D−E)ごとのターゲット21からの信号強度を一定時間積分する。ある一定時間内方位が一定とみなせるターゲットの監視画像を出力する場合には、その時間内積分することができ、さらにS/N比を改善することができる。したがって、通常のレーダーでは検出不可能なターゲットも画像化することが可能である。
【0060】
次に、本発明における測距モード時の動作について説明する。測距モード時においては、MTIモード時に出力したCW信号に代えて、FMCW信号を出力する。この測距モードは、MTIモードと同じ構成で送信信号をFMCWとすることにより、ターゲットまでの距離を計測することができる。
【0061】
この測距モードにおいては、受信信号を送信信号と同じFMCW信号で周波数変換することにより、ターゲット21の距離が反射信号(受信信号)の周波数に変換される。
【0062】
したがって、相関処理部15は、H系とV系の受信アンテナ8,8相互間の全ての組み合わせについて周波数別に相関演算を行なうと、図7(a)に示すようにターゲット21までの距離で分類された周波数(ターゲット21の距離)別のアンテナ面9bに入力される受信信号(ターゲット21からの反射波)の位相面(H−V)を求めることができる。図7(a)には、ターゲット21までの距離に相当する周波数別に分類された複数の前記位相面(H−V)を図示している。
【0063】
前記2次FFT処理部16は前記相関処理部15からの信号を受けると、図7(a)に示す位相面(H−V)の2次元関数を2次元FFT処理することにより、図7(b)に示すターゲット21の距離ごとに分類したターゲット21の方位エレベーション(D−E)を求める。概査処理ではターゲット21が速度を持っている場合は静止している場合より若干周波数がシフトするが、距離分解能の誤差内に抑えることが可能である。Xバンドの干渉レーダーの実施例では最大観測範囲を3000Kmとした場合、FMCW信号の繰り返し周期は20mS程度、最高距離分解能を1mとすると、FMCW送信信号帯域幅は150MHzとなる。ターゲット21の最大ドップラー周波数シフトは450KHz程度であるので、概査で距離分解能を20Kmとした場合、ドップラー周波数偏移による誤差は無視することができる。
【0064】
概査処理においては、前記受信アンテナ8の受信信号を前記FFT処理部14によるFFT処理で周波数分類した後はMTIモードと同じように相関処理、積分を行い、S/N比を向上させている。視野角内のターゲットの数に関係なく(性能低下することなく)データ処理部17でそれぞれのターゲットの軌跡をトレースすることが可能である。受信アンテナ8に対するターゲット21の方位,ターゲット21までの距離及びターゲット21の速度が大きく変化しない限り(誤差範囲内のとき)、ターゲット21で反射された信号の相関出力位相は一定なため、複数パルスにわたって位相積分を行い、高感度化,高精度化を図ることができる。測距モードと同様にベースバンド信号への変換後に直流成分近傍の低周波成分を除去することにより、受信アンテナ8への送信信号の回り込み成分を除去することができる。
【0065】
さらにデータ処理部17は、図7(b)に示す2次FFT処理部16から出力される方位エレベーション(D−E)ごとの信号強度を解析し、前記算出したターゲット21の距離ごとに方位エレベーション(D−E)内での座標からターゲット21の方位方向を検出する。
【0066】
前記制御部20は、前記送信部Tと前記受信部Rとの動作を前記MTIモードと前記測距モードの二つの動作モードに数十ミリ秒から数秒以内で交互に切り替える。
【0067】
前記画像表示部18は、MTIモード時に前記データ処理部17からのデータを受け取ると、ドップラー周波数毎に分類されたターゲット21の速度及び方位方向のデータを合成し、視野角全体に存在するターゲット21の方位,速度を合成表示する。さらに画像表示部18は、測距モード時に前記データ処理部17からのデータを受け取ると、距離に対応したベースバンド周波数毎に分類されたターゲット21の距離及び方向のデータを合成し、視野角全体に存在するターゲット21の方向,距離を合成表示する。したがって図9(a)に示すように、ターゲット位置情報(x,y,z及びx,y,z)を受信アンテナ8のビームB3内に三次元表示(3D)する。ターゲット21の速度及び進行方向情報をベクトル表示する。さらにターゲット21の軌跡情報を破線表示する。
【0068】
以上説明した概査MTI及び概査測距モードでは、受信アンテナ8による視野角全体に存在するターゲット21の方位,速度,距離を合成表示する場合であるが、特定のターゲット21について精密測距,トラッキング,予想軌道の表示を行う、或いは図9(b)のようなISAR画像の表示を行う場合がある。この場合について説明する。この場合、MTIモードで取得したターゲット21の速度情報を基にして周波数Δfを補正することにより、距離分解能を向上、すなわち位置と時間とを同定する必要がある。この処理は図1の高精度測距処理部19により行われる。
【0069】
次に高精度測距処理部19による処理を説明する。図4(a)に示すように、ターゲット21が停止している場合、周波数変換部11で送信信号と受信信号の差分を求めると、ターゲット21までの距離が受信信号の周波数に変換される。この場合、ターゲット21が停止しているため、距離変化による周波数の変化はない。送信信号に対する受信信号の遅延時間Tは次式(4)で表される。
【0070】
=2R/C=2(R−Vt)/C (4)
R(R)は受信アンテナ8からターゲット21までの距離、Cは光速、Vはターゲット21の速度である。
【0071】
ここに、ターゲット21までの距離Rのデータには、前記測距モードで求めた距離情報を用いる。またターゲット21の速度のデータには、前記MTIモードで求めた距離情報を用いる。tは、前記測距モードで求めた距離情報と前記MTIモードで求めた距離情報とに基づいて求める。
【0072】
図4(b)は、周波数変換部11で周波数変換したベースバンド周波数の変化と時間(ターゲット21までの距離変化)との関係を示すものである。図4(b)において、点線で示すラインLは、FMCW信号のサンプルによる繰返し周波数を示す。また図4(b)において、周波数変換部11で周波数変換したベースバンド周波数fは、次の式(5)で表される。
【0073】
=2kR/C (5)
kはチャープ率であって、送信信号のパルス幅をτ、送信信号の帯域幅をBとすると、k=B/τである。
【0074】
図4(a)の場合、ターゲット21は停止しているから、ベースバンド周波数fはターゲット21までの距離によって変化しない。送信信号に対する受信信号のドップラーシフトΔfを折り返すと、ベースバンド周波数fは一定となる。
【0075】
したがって、周波数変換部11で周波数変換されて距離に相当する周波数別に分類されたベースバンド信号(受信信号)のエネルギーは図4(c)に示すように先鋭な形状となる。
【0076】
これに対して図5に示すように、ターゲット21が高速で受信アンテナ8に近づく場合を考える。図5(a)において、周波数変換部11で送信信号と受信信号との差分を求めて周波数変換すると、図5(b)に示すようになる。図5(b)に示すように、ターゲット21が高速(一定速度)で移動する場合、ベースバンド周波数fは、tの一次式で変化する。すなわち、ベースバンド周波数fは、ドップラー周波数による影響を受けて、距離による周波数変化を生じる。その周波数変化yは次式(6)で表される。
【0077】
y={-2kVt+2(kR-Vf)}/C (6)
ここで、ドップラー周波数f=2Vf/Cである。
【0078】
図5(c)に示すように、ベースバンド信号(受信信号)のエネルギーは図4(c)と比較して広がり、感度が低下し、さらに距離分解能が劣化する。そのため、高精度測距処理部19により、速度補正処理を行い、高精度な距離計測を行う必要がある。次に高精度測距処理部19による高精度な距離計測の処理について説明する。
【0079】
高精度測距処理部19は、データ処理部17から高精度処理すべきターゲットの位置情報と概査処理結果の速度距離データを取得する。前記データの取得後、前記高精度測距処理部19は、概査MTI処理で求めたターゲットのドップラー周波数に相当するFFT処理部14の出力信号のうち、データ処理部17から入力した方位情報から求める方位方向のベースバンド信号fのみを抽出する。
【0080】
この抽出されたベースバンド信号fに、ターゲット21までの距離変化による周波数変化yの補正項を加える。その周波数変化の補正項を加えたベースバンド信号foutは次式(7)で表せる。
【0081】
out=f+2kVt/C=2(kR-Vf)/C (7)
この式(7)を、距離Rを表す式に書き換えると、次式(8)となる。
【0082】
=(foutC/2+Vf)/k (8)
【0083】
前記高精度測距処理部19は、前記式(7)を算出すると、前記周波数変化の補正項が加えられたベースバンド信号foutについて高精度に周波数解析を行うことにより、高精度の速度計測を行う。
【0084】
次に前記高精度測距処理部19は、前記高精度に計測した速度データを用いて、高精度測距処理を行う。すなわち高精度測距処理部19は、概査測距モードで求めた距離情報から、そのターゲット情報が含まれるFFT処理部14の出力周波数を選択し、全受信アンテナ系等分の信号を取得する。そして高精度測距処理部19は、全受信アンテナ系統の信号を、概査で求めたターゲット方位のみが強め合うように位相遅延させて合成することにより、ターゲットの信号方向成分のみを抽出する。この抽出された信号に前記の高精度に求めた速度データを使用し、積分時間にわたり距離補正,ドップラー補正を行い、その後に高精度な周波数解析を行う。これにより特定ターゲットについて、高精度測距処理部19は、正確な距離情報を画像表示部18に出力する。
【0085】
画像表示部18は、高精度測距処理部19からの距離情報に基づいて、特定のターゲットについて精密測距,トラキング,予想軌道を表示する。ISARモードでは、図11(b)に示すようなISAR画像を表示する。また精密測距モードは、測距モードと併用して使用され、画像表示部18は、特定ターゲットの精密距離を測定時刻のタイムスタンプとともに表示する。この場合、データ処理部17は、高精度測距処理部19からの距離情報に基づいてターゲットの軌道推定を行う。
【0086】
上述した実施形態では、同期信号発生部1からの同期信号を基準信号として用いたが、基準信号は同期信号に限られない。すなわち本発明に係るFMCWレーダーは、一定周波数変化率(チャープ率)kで変化し、周期Tで繰り返す信号を送信する送信部Tと、目標対象物で反射した信号を送信信号と全く同じタイミングまたは位相同期したタイミングの周波数変化率kの局部発信信号で周波数変換するヘテロダイン機能を有する受信部Rと、前記kとTの積になるサンプル周波数F(F=kT)でディジタル化するA/D変換部とを有する構成に変更してもよい。
【0087】
この構成によれば、図3に示すようにFMCWの繰り返し周波数を高くし、かつ広帯域に周波数を変化させるFMCWレーダーにおいて、遠距離からの反射信号の受信信号エネルギーを有効に処理するために、繰返し周期と周波数変化率の積と等しいA/D変換を行うことにより、一周期を遥かに超えた受信信号成分もディジタル信号の折り返し特性により同じ周波数に変換され、全受信信号エネルギーが有効に処理される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように本発明によれば、一般のレーダーと異なり、送信信号はパルスではなく、CWまたはFMCW信号であるため、レーダー用ではない一般通信用の送信モジュールを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る干渉型レーダーの構成を示す構成図である。
【図2】本発明に係る干渉型レーダーにおける送信部に設置する送信アンテナの構成を示す構成図である。
【図3】本発明に係る干渉型レーダーにおける受信部に設置する受信アンテナの構成を示すとともに、MTIモード動作時を示す構成図である。
【図4】ターゲットが停止している場合を示す図である。
【図5】ターゲットが近づいている場合を示す図である。
【図6】本発明におけるFFT及び相関処理を説明する図である。
【図7】本発明における2次元FFT処理を説明する図である。
【図8】本発明に係る干渉型レーダーにおける受信部に設置する受信アンテナの構成を示すとともに、測距モード動作時を示す構成図である。
【図9】本発明において、画像表示する表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
T 送信部
R 受信部
7 送信アンテナ
8 受信アンテナ
11 周波数変換部
13 A/D変換部
14 FFT処理部
15 相関処理部
16 2次FFT処理部
17 データ処理部
18 画像表示部
19 高精度測距処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標対象物に向けて信号を送信する送信部と、
目標対象物で反射する反射波を受信する受信部とを有し、
前記送信部は、目標対象物の方位及び速度を検出するためのCW信号を送信アンテナから出力する機能を有し、
前記受信部は、前記送信部からの送信と同時に、目標対象物で反射した反射波を複数台の受信アンテナで受信し、受信信号に対してスペクトル解析を行い速度成分ごとの受信信号に分類する機能と、受信アンテナ系統の信号間の相関処理する機能と、相関処理された信号を積分する機能と、前記積分処理された出力を2次元FFTしてターゲットの方位方向及び速度を計測する機能とを有することを特徴とする干渉型レーダー。
【請求項2】
目標対象物に向けて信号を送信する送信部と、
目標対象物で反射する反射波を受信する受信部とを有し、
前記送信部は、目標対象物の方位及び距離を検出するためのFMCW信号を送信アンテナから出力する機能を有し、
前記受信部は、前記送信部からの送信と同時に、目標対象物で反射した反射波を複数台の受信アンテナで受信し、受信信号に対してFMCWの送信信号と同じ信号で周波数変換された受信信号にスペクトル解析を行い、距離成分ごとの受信信号に分類する機能と、受信アンテナ系統の信号間の相関処理する機能と、前記相関処理された信号を積分する機能と、前記積分処理された出力を2次元FFTしてターゲットの方位方向及び距離を計測する機能とを有することを特徴とする干渉型レーダー。
【請求項3】
さらに前記受信部は、前記送信部からの送信と同時に、目標対象物で反射した反射波を複数台の受信アンテナで受信し、受信信号に対してFMCWの送信信号と同じ信号で周波数変換された受信信号に、測距を行おうとする特定ターゲットの速度データを用いて、速度成分によるドップラーシフトおよび位置変化を補正する周波数補正を行う機能と、周波数補正が行われた信号について詳細なスペクトル解析を行い周波数に変換された距離情報を高精度に求める機能とを有することを特徴とする請求項2に記載の干渉レーダー。
【請求項4】
前記送信部は、発生させた基準信号に位相同期したFMCW送信信号を前記送信アンテナから送信するとともに、前記基準信号を前記受信部に出力し、
前記受信部は、前記送信部から出力される基準信号を共通信号として、前記反射波について周波数変換、及びISAR処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の干渉型レーダー。
【請求項5】
前記送信部は、複数の送信モジュールに接続される複数の送信アンテナをマトリックス状に配列し、送信モジュールの位相器で送信波のビーム幅,ビーム方向を調整して出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の干渉型レーダー。
【請求項6】
前記受信部は、アンテナ面に複数の受信アンテナをT型形状に配列し、T型形状の寸法により空間分解能を拡大したことを特徴とする請求項1又は2に記載の干渉型レーダー。
【請求項7】
さらに画像表示部を有し、
前記画像表示部は、前記受信部からの出力画像を重ね合わせて画像化することにより、ターゲットの方位、距離、速度さらに特定ターゲットの瞬時時刻における高精度な距離、特定ターゲットのISAR画像を組み合わせて表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の干渉型レーダー。
【請求項8】
一定周波数変化率kで変化し、周期Tで繰り返す信号を送信する送信部と、目標対象物で反射した信号を送信信号と全く同じタイミングまたは位相同期したタイミングの周波数変化率k,周期Tで繰り返す局部発信信号で周波数変換するヘテロダイン機能を有する受信部と、前記kとTの積になるサンプル周波数F(F=kT)でディジタル化するA/D変換部とを有することを特徴とする干渉型レーダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−177907(P2006−177907A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374181(P2004−374181)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】