説明

平滑面検査装置

【課題】測定対象物及びスライダの損傷を回避して、微小な欠陥を検出することが可能な平滑面検査装置を提供する。
【解決手段】測定対象物3を支持するステージ26と、ステージ26を回転させるスピンドル4と、測定対象物3に光を照射する光源5と、測定対象物3からの散乱光を信号化する光検出部8と、散乱光7を第1の欠陥の情報に変換する信号処理部11と、第1の欠陥の情報を記憶する第1のメモリ部12とを有する第1のパートと、第1の欠陥よりも小さい第2の欠陥を検出し、接触センサが搭載されたスライダ9と、スライダ9を浮上させるロード・アンロード機構と、第1のメモリ部12に記憶された第1の欠陥の情報に基づいて、ロード・アンロード機構22を制御するスライダ制御部14と、接触センサ信号処理部16で変換された第2の欠陥の情報を記憶する第2のメモリ部17とを有する第2のパートとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平滑面の欠陥を検査する平滑面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業の発展に伴い、平滑面の欠陥を検出する技術に要求される水準は年々高まっている。平滑な面が要求される製品としては、例えばパターン形成前の半導体ウェハや磁気ディスクなどが挙げられる。これら平滑面には、少なからず表面に欠陥が存在する。この平滑面の検査は、この平滑面を用いて製造される製品の信頼性、性能および歩留まり向上のために重要な工程となっている。
【0003】
平滑面上の欠陥としては、例えば半導体ウェハにおいては主に平滑面の製造工程において発生するスクラッチ痕、突起やホールなどの微小形状欠陥と、製造工程において表面に付着する微小異物などが挙げられる。
【0004】
また、例えば磁気ディスクのように表面に薄膜が形成される平滑面においては、上記薄膜形成時に発生するフレークや膜抜け等も欠陥となる。
【0005】
これに対し、特許文献1には、平滑面に斜め入射した光の散乱を検出し、これら欠陥を検出する方法が開示されている。この光散乱を用いる手法により、数十nmから数μm以上の寸法の欠陥検出が可能である。
【0006】
ここで、欠陥に対してレーザで照明を行った時に発生する散乱光の大きさIは、欠陥の粒径をdとすると、I∝d^6の関係があることが知られている。つまり、欠陥のサイズが小さくなると発生する散乱光は急速に減少するため、微細な欠陥から発生する散乱光を増大させる必要がある。
【0007】
また、特許文献2には、回転する平滑面上でスライダを飛ばし、このスライダとの接触を検知することで平滑面上の欠陥を検出する手法が開示されている。この手法では、例えば特許文献2に開示されているように、接触熱によって抵抗変化を生じる素子、例えばMR素子、を搭載したスライダを用いる。あるいは、特許文献3に開示されているように、アコースティックエミッション素子を用いたりして、スライダと平滑面上の欠陥の接触を検知する。この手法により、高さ4nm程度までの微小欠陥の検出が可能となっている。
【0008】
更に、特許文献4には、浮上スライダの浮上高さをスライダに内蔵したヒータによって調整し、更にスライダの浮上最下点付近に接触センサを搭載することで、高さ4nm以下の微小な欠陥を検知する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−268189号公報
【特許文献2】特開平8−167121号公報
【特許文献3】特開昭62−132282号公報
【特許文献4】特開2008−16158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、例えば光学式手法を用いる上記従来技術では、レーザパワーを増大させることにより検出感度を向上させることが可能だが、平滑面の被照射部の表面温度が上昇し、ダメージが発生する可能性がある。またはレーザの照射時間を長くすることにより検出感度を向上させることもできるが、単位時間あたりの検査可能面積が縮小するためスループットの低下を招く。上記の手法を併用しても10nm程度の大きさの欠陥を高速検査するのは非常に困難である。また、浮上スライダを用いる方式では、測定対象物である平滑面の表面に存在する欠陥が比較的大きい場合、スライダの浮上面あるいはスライダに設けられた接触センサに強く衝突し、スライダの浮上面、接触センサ自体あるは測定対象物の平滑面を損傷してしまうおそれがある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、測定対象物及びスライダの損傷を回避して、微小な欠陥を検出することが可能な平滑面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、測定対象物と、前記測定対象物を支持するステージと、前記ステージを回転させるスピンドルと、少なくとも、前記測定対象物に光を照射する光源と、前記測定対象物で反射した散乱光を検出し、前記散乱光を信号化する光検出部と、前記信号化された散乱光を第1の欠陥の情報に変換する信号処理部と、前記信号処理部で変換された前記第1の欠陥の情報を記憶する第1のメモリ部とを有する第1のパートと、少なくとも、前記第1の欠陥よりも小さい第2の欠陥を検出し、信号化する接触センサが搭載されたスライダと、前記スライダを前記測定対象物に浮上させるロード・アンロード機構と、前記第1のメモリ部に記憶された前記第1の欠陥の情報に基づいて、前記ロード・アンロード機構を制御するスライダ制御部と、前記信号化された第2の欠陥を情報に変換する接触センサ信号処理部と、前記接触センサ信号処理部で変換された前記第2の欠陥の情報を記憶する第2のメモリ部とを有する第2のパートとを備える。
【0013】
さらに、前記スライダを複数個有し、前記複数個のスライダを走査させるスライダ走査機構と、前記スライダと前記スライダ走査機構との間であって、前記複数個のスライダの各々に設けられ、前記スライダの各々を動作させる複数個のスライダ微動機構とを備える。
【0014】
さらに、前記スライダ制御部は、前記第1の欠陥の情報に基づいて、前記スライダを前記測定対象物の平滑面の半径方向又は前記測定対象物の外に移動させるように、前記スライダを制御する。
【0015】
さらに、前記スピンドルの回転数を制御するステージ・スピンドル制御部とを備える。
【0016】
また、測定対象物と、前記測定対象物を支持するステージと、前記ステージを回転させるスピンドルと、前記スピンドルの回転数を制御するステージ・スピンドル制御部と、第1の欠陥及び前記第1の欠陥よりも小さい第2の欠陥を検出し、信号化する接触センサが搭載されたスライダと、前記スライダを前記測定対象物に浮上させるロード・アンロード機構と、前記第1のメモリ部に記憶された前記第1の欠陥の情報に基づいて、前記ロード・アンロード機構を制御するスライダ制御部と、前記信号化された第1及び第2の欠陥を情報に変換する接触センサ信号処理部と、前記接触センサ信号処理部で変換された前記第2の欠陥の情報を記憶する第2のメモリ部とを備え、前記ステージ・スピンドル制御部は、前記第1の欠陥を検出する場合の前記スピンドルの回転数を前記第2の欠陥を検出する場合の前記スピンドルの回転数よりも多くするように、前記スピンドルを制御する。
【0017】
さらに、前記スライダを複数個有し、前記複数個のスライダを走査させるスライダ走査機構と、前記スライダと前記スライダ走査機構との間であって、前記複数個のスライダの各々に設けられ、前記スライダの各々を動作させる複数個のスライダ微動機構とを備える。
【0018】
さらに、前記スライダ制御部は、前記第1の欠陥の情報に基づいて、前記スライダを前記測定対象物の平滑面の半径方向又は前記測定対象物の外に移動させるように、前記スライダを制御する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、測定対象物及びスライダの損傷を回避して、微小な欠陥を検出することが可能な平滑面検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の平滑面検査装置の概略図である。
【図2】平滑面検査装置を構成する機構の一部分である複数個のスライダからなるスライダ群の概略鳥瞰図である。
【図3】実施例1の平滑面検査装置の平滑面測定時のフローチャート概略である。
【図4】実施例1の平滑面検査装置の平滑面測定時のフローチャートのうち、散乱光方式で欠陥を検出する場合のフローチャートである。
【図5】実施例1の平滑面検査装置の平滑面測定時のフローチャートのうち、スライダ接触方式で微小欠陥を検出する場合のフローチャートである。
【図6】実施例2の平滑面検査装置の概略図である。
【図7】実施例2の平滑面検査装置の平滑面測定時のフローチャート概略である。
【図8】実施例2の平滑面検査装置の平滑面測定時のフローチャートのうち、スライダ接触方式で欠陥を検出する場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例を図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、実施例1の平滑面検査装置の概略図である。実施例1の平滑面検査装置は、大きく分けて測定機構部1と装置制御部2からなる。
【0023】
測定機構部1は、少なくとも、平滑面を有する測定対象物3を支持するステージ26と、ステージ26を回転させるスピンドル4と、散乱光方式の欠陥検出で用いる光源5(実施例1では、例えば、レーザ光源を使用)と、光源5からの光6(レーザ光)が平滑面に入射して、反射した散乱光7を検出する光検出部8と、回転する平滑面上で浮上するスライダ群9を平滑面上で走査するスライダ走査機構10からなる。また、図示はしないが、光源5と光検出部8を平滑面上で、スライダ群9を相対的に移動させ、平滑面上の欠陥を連続的に測定する機構を備える。
【0024】
なお、光源5、光検出部8については、測定のスループットを考慮すると複数個設置するのが望ましいが、単数でもよい。また、スライダ群9に含まれるスライダの数についても、測定のスループットを考慮すると複数個設置するのが望ましいが、単数であってもよい。また、光源5および光検出部8は、例えば特許文献1に記載されたように構成する。
【0025】
装置制御部2は、散乱光方式測定向けの第1のパートと、スライダ接触方式測定向けの第2のパートと、欠陥データマップ処理向けの第3のパートからなる。
【0026】
第1のパートは、光検出部8からの信号を処理し、欠陥の形状やサイズ等の情報に変換する信号処理部11と、信号処理部11で得られた情報を欠陥情報として記憶する欠陥情報メモリ部(第1のメモリ部)12と、光源5及び光検出部8を制御する光源・光検出部制御部13などからなる。
【0027】
第2のパートは、浮上したスライダの浮上高さやオフトラック位置を調整し、スライダ走査機構を制御するスライダ制御部14と、スピンドル4の回転数を制御するステージ・スピンドル制御部15と、スライダに搭載された接触センサで検出した欠陥の検出信号を処理する接触センサ信号処理部16と、接触センサ信号処理部16で得られた情報を微小欠陥情報として記憶する微小欠陥情報メモリ部(第2のメモリ部)17などからなる。
【0028】
第3のパートは、欠陥情報メモリ部12と微小欠陥情報メモリ部17に記憶した情報をもとに平滑面上の欠陥データを統合させる処理を行う欠陥データ演算部18と、欠陥データ演算部18で得られたデータをもとに欠陥マップを表示する欠陥マップ表示部19などからなる。
【0029】
図2は、平滑面検査装置の一部である、複数個のスライダからなるスライダ群9の概略鳥瞰図である。
【0030】
スライダ群9は、スライダ走査機構10に取り付けた状態で用いる。スライダ走査機構10は、回転する測定対象物3の平滑面を半径方向に移動させるための粗動機構を有するものとする。また、スライダ走査機構10は、平滑面上の欠陥を回避するために、スライダ20とスライダ走査機構10との間に、スライダ20を半径方向に動かすスライダ微動機構21を有する。または、スライダ走査機構10は、平滑面上の欠陥を回避するために、スライダを浮上高さ方向に逃がす機構として、ロード・アンロード機構22を有する。スライダ微動機構21は、例えば圧電素子による変位機構からなる。また、ロード・アンロード機構22は、例えばサスペンション23先端のマージリップ24をロード・アンロード用ワイヤ25で上下させて、スライダ20のロード・アンロードを実現するよう構成しても良い。また、スライダ群9は、スライダ20に搭載されたスライダ浮上量調整用のヒータ(図示せず)に電力を印加する機能と、スライダ20の浮上量を調整可能とする機構と、平滑面の欠陥とスライダとの接触を検知する機構を備える。更に、回転する平滑面上でスライダ20を走査する際に、スライダ20の浮上高さを一定に保つことが望ましい。例えば、平滑面の回転数をスライダ20の浮上半径(測定対象物3の中心とスライダとの間の距離)に合わせて調整し、スライダ20の浮上半径における周速を一定に保てばよい。または、平滑面の回転数をスライダ20の浮上半径によらず一定とした場合には、スライダ浮上調整用のヒータに印加する電力を調整すればよい。このスライダ浮上調整用のヒータは、各々のスライダに搭載される。なお、測定のスループットを向上させるため、回転する平滑面において、複数のスライダを同時に浮上させて測定するのが望ましい。この場合、複数のスライダは、異なる周速条件で浮上することになるため、スライダ浮上量調整用のヒータを用い、各々のスライダの浮上量を略同じにするのが望ましい。
【0031】
図3は、実施例1の平滑面検査装置による平滑面検査を実施するときのフローチャートを示す。このフローチャートは、平滑面評価測定開始(ステップS01)から欠陥マッピング実施(ステップS07)まで、大きく分けて7つのステップからなる。図4は、図3のフローチャートの動作のうち、散乱光方式での欠陥検出実施(ステップS03)の詳細を示すフローチャートである。図5は、図3のフローチャートのうち、スライダ接触形式で微小欠陥検出実施(ステップS05)の詳細を示すフローチャートである。
【0032】
図1〜図5を用いて、実施例1の平滑面検査装置による平滑面検査について説明する。
【0033】
まず、平滑面検査装置のスピンドル4に対して測定対象物3を据付け、平滑面評価測定を開始する(ステップS01)。ここで、スピンドル4で測定対象物3を保持する方法は、例えば真空チャック等であってもよい。スピンドル4を起動(ステップS02)して、ステージ・スピンドル制御部14でスピンドル4の回転数を所定の回転数に制御した後、散乱光方式での欠陥検出を実施する(ステップS03)。散乱光方式では、比較的大きな欠陥(第1の欠陥)の検出を行う。
【0034】
散乱光方式での欠陥検出開始(ステップS031)後、光源5を起動してレーザ光を発光するとともに、光検出部8を起動する(ステップS032)。その後、レーザ光の発光が安定したところで、測定対象物3の平滑面上におけるレーザ光の走査を開始する(ステップS033)。光検出部8で平滑面からの散乱光7をモニタしながら、レーザスポットを回転する平滑面の半径方向に移動していく(ステップS034)。ここで、光検出部8の出力を信号処理部11で処理した結果、平滑面上に欠陥があると判断した場合(ステップS035)、欠陥情報メモリ部12に平滑面上での欠陥の位置および欠陥の形状、大きさなどの情報を記憶する(ステップS036)。この光の走査及び欠陥の検出の動作を、レーザの走査が終了するまで繰り返す(ステップS037)。このレーザの走査が終了したところで、レーザ光を消光し、光検出部8を停止して(ステップS038)、散乱光方式の欠陥検出を終了する(ステップS039)。
【0035】
散乱光方式で欠陥の検出を実施した(ステップS03)後、スライダ接触方式で微小欠陥(第2の欠陥)の検出を実施する。
【0036】
スライダ接触方式での微小欠陥検出開始(ステップS041)後、ロード・アンロード機構22を用いて、回転する測定対象物3の平滑面上にスライダ20をロードする(ステップS042)。その後、スライダ制御部14を用いてスライダ20の浮上量を調整する(ステップS043)。その後、回転する平滑面の半径方向へのスライダ群9の走査を開始する(ステップS044)。その際、スライダを半径方向に移動させる前に、次の半径位置に欠陥があるかどうかを、欠陥情報メモリ部12に記憶された欠陥情報を確認する(ステップS045)。確認の結果、この半径位置に欠陥があると判断した場合(ステップS046)には、この半径位置に移動(ステップS047)後、スライダ微動機構21あるいはロード・アンロード機構22を用いて欠陥がある位置でスライダの回避動作を実施しつつ、この半径位置での微小欠陥の検出を実施する。この半径位置に欠陥がないと判断した場合(ステップS046)には、この半径位置に移動(ステップS048)し、そのまま、この半径位置での微小欠陥の検出を実施する。ここで、接触センサ信号処理部16からの出力をもとに、この半径位置でスライダ20によって微小欠陥を検出したと判断した場合(ステップS04A)、その微小欠陥の平滑面上での位置および大きさ等の情報を、微小欠陥情報メモリ部17に記憶する(ステップS04B)。特に、微小欠陥を検出しなかった場合には、スライダ20の走査が終了(ステップS04C)するまで、ステップS045からステップS04Bまでの動作を繰り返す。スライダの走査終了をもって、スライダ接触方式での欠陥の検出を終了(ステップS04D)とする。
【0037】
なお、ここで、比較的大きな欠陥への接触を回避する動作としては、例えば、スライダ20を浮上させる前に、当該箇所にヘッドをアンロードして回避してもよい。あるいは、当該箇所を通過する前に、オフトラック方向(測定対象物3の外)にスライダ20を移動して回避してもよい。スライダ20の浮上量調整のストロークが充分ある場合には、当該箇所を通過する前にスライダ20の浮上量を調整して、接触を回避してもよい。
【0038】
この動作によって比較的大きな欠陥への接触を回避しつつ、回転する平滑面の半径方向にスライダ20を走査し、散乱光方式では検出できない微小欠陥を検出し、欠陥の高さ及び位置情報を微小欠陥情報メモリ部17に保存する。
【0039】
このとき、スライダ20の浮上量を変えて走査を繰り返すことで、微小欠陥の高さを精度よく検出することが可能となる。なお、欠陥への激しい接触に伴う接触センサ、スライダ20の浮上面あるいは測定対象物3での平滑面の損傷を抑制するためには、スライダ20の浮上高さを徐々に下げながら、欠陥の高さおよび位置情報を微小欠陥情報メモリ部17へ保存する。欠陥の存在する箇所については、スライダ20が浮上しないように回避動作を実施しながらより微小な欠陥を探査し、検出した微小欠陥の情報を微小欠陥情報メモリ部17に追記するのがよい。
【0040】
また、スライダ接触方式での微小欠陥の検出については、スライダ20の浮上量を徐々に低下しながらステップS044からステップS04Cまでの動作を繰り返した場合、スライダ20の浮上量をもとに微小欠陥の高さを推測することが可能となる。この場合には、微小欠陥の高さ情報を微小欠陥情報メモリ部17に記憶しておくことで、欠陥マッピングの際に微小欠陥の高さ分布情報を得ることが可能となる。
【0041】
スライダ接触方式での欠陥の検出を実施(ステップS04)後、スピンドル4を停止(ステップS05)する。その後、欠陥情報メモリ部12に記憶した、ステップS03の散乱光方式での測定で得られた欠陥情報と、微小欠陥情報メモリ部17に記憶した、ステップS04のスライダ接触方式で得られた微小欠陥情報とを基に、欠陥データ演算部18でデータを処理する(ステップS06)。最後に、演算の結果得られた情報を用いて、平滑面上における欠陥検出結果を表示する(ステップS07)。以上、平滑面評価測定は終了となる。
【0042】
散乱光方式およびスライダ接触方式による測定の後、欠陥情報メモリ部12および微小欠陥情報メモリ部17に記憶した欠陥情報をもとに演算を実施し、平滑面上における欠陥の分布図を作成する。この分布図を作成した後、用途によっては、欠陥部分にマーキングを実施し、その後の検査の際に欠陥の存在箇所を容易に特定できるようにしてもよい。
【0043】
以上、実施例1によれば、予め散乱光方式検出法で比較的大きな欠陥(第1の欠陥)の検出を実施することにより、次にスライダ接触方式で微小な欠陥(第2の欠陥)を検出するときに、記憶した欠陥情報をもとに比較的大きな欠陥と浮上したスライダの衝突を回避した上で、スライダ接触方式での微小欠陥の検出が可能となる。ここで、第1の欠陥は、第2の欠陥よりも大きく、径が約20nm以上である。このため、平滑面、平滑面上の欠陥及び浮上したスライダへのダメージを回避しながら、高精度な微小欠陥の検出が可能となる。
【0044】
なお、実施例1では、全ての測定終了後に平滑面上における欠陥検出結果を表示するものとしたが、例えば、ステップS036やステップS04Bで欠陥および微小欠陥の情報を記憶する際に逐次欠陥検出結果を表示してもよい。
【0045】
また、実施例1では、散乱光方式で全測定対象面を測定した後に、スライダ接触方式での微小欠陥検出を実施するとしたが、双方の方式を同時並行的に実施してもよい。但し、この場合には、スライダ接触方式で測定する領域は散乱光方式で予め測定済となるように装置および測定シーケンスを構成する。
【0046】
更に、スライダ群9が1個のスライダからなる場合において、回転する平滑面の半径方向にスライダを走査する場合、スライダの浮上量を一定にするためには、測定対象物3の平滑面とスライダ間の相対速度を常に一定にする必要がある。このためには、測定対象物3の平滑面の回転数、即ち、スピンドル4の回転数をステージ・スピンドル制御部15を用いて制御すれば、スライダの浮上高さを調整する必要がなく、より正確にスライダの浮上高さを一定にすることが可能となる。この場合、ステージ・スピンドル制御部15は、スライダが測定対象物3の中心から外周側に向かうにつれて、スピンドル4の回転数が少なくなるように、スピンドル4の回転数を制御する。
【0047】
次に、図6を用いて、実施例2について説明する。
【0048】
図6は、実施例2の平滑面検査装置の概略図である。実施例2の平滑面検査装置も、実施例1と同様に、大きく分けて測定機構部1と装置制御部2からなる。
【0049】
測定機構部1は、主には、平滑面を有する測定対象物3を回転するスピンドル4と、回転する平滑面上で浮上するスライダ群9を平滑面上で走査するスライダ走査機構10などからなる。実施例2は、実施例1とは散乱光方式に用いる光学系が実装されていない点で異なる。
【0050】
なお、スライダ群9に含まれるスライダ数は、測定のスループットを考慮すると複数個設置するのが望ましいが、単数であってよい。
【0051】
装置制御部2は、スライダ接触方式測定向けの第1のパートと、欠陥データマップ処理向けの第2のパートからなる。
【0052】
第1のパートは、浮上スライダの浮上高さやオフトラック位置を調整し、スライダ走査機構10を制御するスライダ制御部14と、スピンドル4の回転数を制御するステージ・スピンドル制御部15と、スライダに搭載された接触センサからの欠陥検出信号を処理する接触センサ信号処理部16と、接触センサ信号処理部16で得られた情報を欠陥情報として記憶する欠陥情報メモリ部12、あるいは微小欠陥情報として記憶する微小欠陥情報メモリ部17などからなる。
【0053】
第2のパートは、欠陥情報メモリ部12と微小欠陥情報メモリ部17に記憶した情報をもとに平滑面上の欠陥データを統合処理する欠陥データ演算部18と、欠陥データ演算部18で得られたデータをもとに欠陥マップを表示する欠陥マップ表示部19などからなる。
【0054】
なお、スライダ群9およびスライダ走査機構10の構成は、実施例1と同様である。
【0055】
図7は、実施例2の平滑面検査装置による平滑面検査を実施するときのフローチャートである。図3に示した実施例1の平滑面検査を実施するときのフローチャートと異なる点は、散乱光方式で欠陥検出を実施する動作(ステップS03)が、スライダ接触方式による欠陥の検出(ステップS09)に置き換わっている点である。これに伴い、スライダの浮上量の高さを高く調整するためのスピンドル4の回転数の制御(ステップS08およびステップS10)が新たに加わっている。
【0056】
実施例2では、スピンドル4の回転数を多く設定してスライダの浮上高さを高く調整することで、散乱光方式に代わり第1の欠陥の検出を実施する。
【0057】
図8は、実施例2において、スピンドルの回転数を多く設定してスライダ浮上高さを高く調整することで、実施例1における散乱光方式に代わりスライダ接触方式で欠陥の検出を実施する場合のフローチャートである。スライダの浮上高さを高く設定した状態で得られた欠陥の情報を、欠陥情報メモリ部12に記憶する。
【0058】
その他装置構成及び動作フローに関しては、実施例1と同じである。スピンドル4の回転数を多く設定して、スライダの浮上高さを高く調整した状態で得られた欠陥の情報と、スピンドルの回転数を元の設定に戻し、スライダの浮上高さを低く調整した状態で得られた微小欠陥の情報をもとに、欠陥データ演算部18にてデータ処理を実施(ステップS06)し、最後に、演算の結果得られた情報を用いて、平滑面上における欠陥を検出した結果を表示する(ステップS07)。以上で平滑面評価測定は終了となる。
【0059】
詳細に説明すると、実施例2の平滑面検査装置では、始めに平滑面の回転数を多く設定して、スライダの浮上高さを高く設定した状態で、スライダを平滑面の半径方向に走査し、スライダ接触方式で平滑面上の比較的大きな欠陥(第1の欠陥)を検出する。検出した欠陥は、寸法、形状および平滑面上での位置を欠陥情報メモリ部12に記憶する。なお、スライダの浮上高さを高く設定する際、平滑面の回転数を多く設定するかわりに、スライダにかかる荷重を低下させることで浮上高さを高く設定してもよい。
【0060】
次に、平滑面の回転数を欠陥測定時よりも少なく設定して、スライダの浮上高さを低くした状態でスライダを平滑面の半径方向に走査し、平滑面上の微小欠陥(第2の欠陥)を検出する。その際、欠陥情報メモリ部12に記憶された欠陥情報を活用し、欠陥の存在する箇所についてはスライダが浮上しないように回避動作を実施する。この動作により、スライダに搭載された接触センサが欠陥に激しく接触するのを避け、接触に伴う接触センサ、スライダ浮上面あるいは測定対象物である平滑面の損傷を抑制することが可能となる。
【0061】
実施例2の平滑面検査装置は、スライダ接触方式による測定の後、欠陥情報メモリ部12および微小欠陥情報メモリ部17に記憶した欠陥情報をもとに演算を実施し、平滑面上における欠陥の分布図を作成する。この分布図を作成した後、欠陥部分にマーキングを実施し、その後の検査の際に欠陥の存在箇所を容易に特定できるようにしてもよい。
【0062】
なお、ここで、実施例2では、ディスクの回転数の設定により、スライダの浮上高さを高く設定するものとしたが、例えば、スライダ走査機構を平滑面の面外方向に若干ずらしてサスペンション23からスライダ20にかかる荷重を軽減することでスライダの浮上高さを高く設定してもよい。
【0063】
以上、実施例1〜2を説明したが、例えば、この平滑面検査装置を磁気ディスクの表面測定や半導体ウェハの表面測定に適用してもよい。また、スライダの浮上高さを制御する方法としては、ピエゾ素子などで浮上高さの制御を行ってもよい。更には、スライダと平滑面との接触検知をより確かなものにするため、複数の接触センサを設けてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 測定機構部
2 装置制御部
3 測定対象物
4 スピンドル
5 光源
6 レーザ光
7 散乱光
8 光検出部
9 スライダ群
10 スライダ走査機構
11 信号処理部
12 欠陥情報メモリ部(第1のメモリ部)
13 光源・光検出部制御部
14 スライダ制御部
15 ステージ・スピンドル制御部
16 接触センサ信号処理部
17 微小欠陥情報メモリ部(第2のメモリ部)
18 欠陥データ演算部
19 欠陥マップ表示部
20 スライダ
21 スライダ微動機構
22 ロード・アンロード機構
23 サスペンション
24 マージリップ
25 ロード・アンロード用ワイヤ
26 ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物と、
前記測定対象物を支持するステージと、
前記ステージを回転させるスピンドルと、
少なくとも、前記測定対象物に光を照射する光源と、前記測定対象物で反射した散乱光を検出し、前記散乱光を信号化する光検出部と、前記信号化された散乱光を第1の欠陥の情報に変換する信号処理部と、前記信号処理部で変換された前記第1の欠陥の情報を記憶する第1のメモリ部とを有する第1のパートと、
少なくとも、前記第1の欠陥よりも小さい第2の欠陥を検出し、信号化する接触センサが搭載されたスライダと、前記スライダを前記測定対象物に浮上させるロード・アンロード機構と、前記第1のメモリ部に記憶された前記第1の欠陥の情報に基づいて、前記ロード・アンロード機構を制御するスライダ制御部と、前記信号化された第2の欠陥を情報に変換する接触センサ信号処理部と、前記接触センサ信号処理部で変換された前記第2の欠陥の情報を記憶する第2のメモリ部とを有する第2のパートとを備えた平滑面検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の平滑面検査装置であって、
前記スライダを複数個有し、
前記複数個のスライダを走査させるスライダ走査機構と、
前記スライダと前記スライダ走査機構との間であって、前記複数個のスライダの各々に設けられ、前記スライダの各々を動作させる複数個のスライダ微動機構とを備えた平滑面検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の平滑面検査装置であって、
前記スライダ制御部は、前記第1の欠陥の情報に基づいて、前記スライダを前記測定対象物の平滑面の半径方向又は前記測定対象物の外に移動させるように、前記スライダを制御する平滑面検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の平滑面検査装置であって、
前記スピンドルの回転数を制御するステージ・スピンドル制御部とを備えた平滑面検査装置。
【請求項5】
測定対象物と、
前記測定対象物を支持するステージと、
前記ステージを回転させるスピンドルと、
前記スピンドルの回転数を制御するステージ・スピンドル制御部と、
第1の欠陥及び前記第1の欠陥よりも小さい第2の欠陥を検出し、信号化する接触センサが搭載されたスライダと、
前記スライダを前記測定対象物に浮上させるロード・アンロード機構と、
前記第1のメモリ部に記憶された前記第1の欠陥の情報に基づいて、前記ロード・アンロード機構を制御するスライダ制御部と、
前記信号化された第1及び第2の欠陥を情報に変換する接触センサ信号処理部と、
前記接触センサ信号処理部で変換された前記第2の欠陥の情報を記憶する第2のメモリ部とを備え、
前記ステージ・スピンドル制御部は、前記第1の欠陥を検出する場合の前記スピンドルの回転数を前記第2の欠陥を検出する場合の前記スピンドルの回転数よりも多くするように、前記スピンドルを制御する平滑面検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の平滑面検査装置であって、
前記スライダを複数個有し、
前記複数個のスライダを走査させるスライダ走査機構と、
前記スライダと前記スライダ走査機構との間であって、前記複数個のスライダの各々に設けられ、前記スライダの各々を動作させる複数個のスライダ微動機構とを備えた平滑面検査装置。
【請求項7】
請求項5に記載の平滑面検査装置であって、
前記スライダ制御部は、前記第1の欠陥の情報に基づいて、前記スライダを前記測定対象物の平滑面の半径方向又は前記測定対象物の外に移動させるように、前記スライダを制御する平滑面検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−209090(P2011−209090A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76576(P2010−76576)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】