説明

平鋼製品の製造方法および平鋼製品

【課題】平鋼製品にZnMgコーティングを設ける方法であって、優れた接着性および防錆能力を有しかつ比較的容易に加工できるだけでなく、優れた溶接性をも有するように非常に薄く調節することもできるコーティング方法を提供することにある。
【解決手段】鋼材料からなるベース層と、該ベース層に塗布された多層防錆コーティングとから形成された平鋼製品の製造方法において、ベース層を用意する段階と、電解コーティングによりベース層に亜鉛層を塗布する段階と、厚くても25nmのアルミニウム層を亜鉛層の表面に塗布する段階とを有し、アルミニウム層にマグネシウム層を塗布する段階と、ベース層に塗布された亜鉛層、アルミニウム層およびマグネシウム層から形成されたコーティングが設けられた平鋼製品を、MgZn層がアルミニウム層上のコーティング内でコーティングの表面の方向に形成されるように熱後処理する段階とを更に有することを特徴とする平鋼製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材料からなるベース層および該ベース層に塗布される多層防錆コーティングから形成される平鋼製品の製造方法に関する。
【0002】
また本発明は、鋼材料からなるベース層および該ベース層に塗布される多層コーティングから形成される平鋼製品に関する。
【背景技術】
【0003】
薄鋼板および鋼板を腐食から保護するのに、長い間金属コーティングが使用されている。この目的のため、近年、純粋亜鉛コーティングまたはアルミニウムコーティングに加え、2層システムおよび3層システムが多く使用されている。純粋亜鉛またはアルミニウムコーティングと比較して、これらのシステムは、最適防錆性とは別に、接着性、摩耗性、溶接性および加工性に関しても優れた特性を呈している。
【0004】
亜鉛、アルミニウムおよびマグネシウム(少量のシリコンが混合されることがある)の3層コーティングは、通常、溶融浸漬コーティングにより形成される。この点に関し、4〜10μmの層厚は、このようにコーティングされた平鋼製品を溶接するときに、実際に困難に遭遇する範囲内にある。このことは、特に、比較的厚い3層コーティングが設けられた薄鋼板の場合に重大であることが証明されている、接合ギャップがゼロのレーザ溶接に当てはまることである。
【0005】
鋼基板すなわち鋼ストリップまたは薄鋼板が最初に電解コーティングされ、次にマグネシウム層が更に塗布される場合には、薄くても高度の保護能力をもつ防錆コーティングを形成できる。次に、熱処理により亜鉛層内にマグネシウムを合金化してZnMgを形成する。電解亜鉛めっき薄鋼板のMgによるコーティングは、例えば、減圧下での物理蒸着法(PVD)により行うことができる。
【0006】
Mg蒸着電解亜鉛めっき薄鋼板をベースとしてこのように得られた亜鉛−マグネシウムコーティングは、顕著な防錆特性を有しかつコーティング厚さを大幅に低減でき、特に溶接性に関して有効な効果を有している。
【0007】
しかしながら、実際の製造に関しては、ZnMg層システムの困難性および複雑性は、マグネシウムを蒸着する前に、亜鉛表面から酸化物粒子および硫化物粒子をできる限り完全に除去しなければならないことにある。これが行われない場合には、熱後処理(thermal post-treatment, thermischen Nachbehandlung(英、独訳))の後の亜鉛−マグネシウム層の接着が不完全なものとなる。
【0008】
しかしながら、電解コーティング中および次の大気との接触中に酸化物および硫化物が作動条件下で形成されるという事実により、全体として酸化物および硫化物が存在しないという表面に対する条件は、事実上矛盾する。したがって、これらの酸化物および硫化物は、マグネシウム層が亜鉛層上に蒸着される前に、亜鉛層の表面から再び除去されなくてはならない。
【0009】
対応処理の1つの可能性は、真空中での蒸着前に、Zn表面をプラズマ微細浄化処理(plasma fine purification, Plasmafeinreinigung(英、独訳))することである。このために、表面は、ここに存在する酸化物を剥離させるべくアルゴンイオンの衝撃を受ける。実際に、下記特許文献1に開示のプラズマ微細浄化処理は、リバースマグネトロンスパッタエッチング(reverse magnetron sputter etching, inverses Magnetronsputteraetzen(英、独訳))として実施される。
【0010】
プラズマ微細浄化処理は、比較的容易に制御できるという長所を有している。したがって、このようなプラズマ微細浄化処理は、一般に、金属が真空下で基板上に蒸着される既知の全てのコーティング方法に使用される。
【0011】
しかしながら、平鋼製品の加工を支配する条件に関し、プラズマ微細浄化処理の既知の方法は、大規模で用いるには非常に複雑でコストが嵩むものである。例えば、一方で、必要なプラント技術には、高投資コストが必要である。同時に、これらのプラントの稼働寿命は極めて短く、短いメインテナンス間隔が必要である。なぜならば、イオン衝撃により摩耗された表面材料がプラント内に残るからである。したがって、プラズマ微細浄化処理プラント内に残留物が残留する各場合に、加工される平鋼製品の汚染を回避するには、表面材料は短い時間間隔で除去されなくてはならない。
【0012】
コストが嵩みかつ複雑なプラズマ微細浄化処理を巧みに回避するため、下記特許文献2には、コーティングすべき平鋼製品を、電解Znコーティング後にカスケードシンクに通し、Znコーティングの表面上に存在する酸化物を除去する方法が提案されている。次に、Mg層がこの浄化されたZn層上に蒸着され、かつ最適作動パラメータ下で熱後処理が行われる。これは、プラズマ微細浄化処理の省略にも係わらず、鋼基板へのZnMgコーティングの充分な接着が達成されることを確保するためのものである。しかしながら、これに関連して維持すべきアニーリングのプロセスウィンドウは非常に狭く、このため、実際の条件下では必要な精度でこれを維持することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第0780485(DE 696 10 064T2)号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102005045780号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記背景から、本発明の目的は、実用的条件下で、比較的簡単な方法で平鋼製品にZnMgコーティングを設けることを可能にする方法であって、優れた接着性および防錆能力を有しかつ比較的容易に加工できるだけでなく、このようなコーティングが設けられた平鋼製品が優れた溶接性を有するように非常に薄く調節することもできるコーティング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
また、平鋼製品は、実用的条件下で安価に製造され、腐食に対して保護されかつ同時に
優れた加工性および溶接性を有するべきである。
【0016】
方法に関しては、上記目的は、本発明によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載の段階が実施されるならば達成される。本発明による方法の有利な形態は、請求項1に従属する請求項に記載されている。
【0017】
平鋼製品に関しては、本発明の上記目的は、平鋼製品が請求項12に記載の特徴を有する場合に達成される。本発明による平鋼製品の有利な形態は、請求項12に従属する請求項に記載されている。
【0018】
本発明によれば、鋼材料からなるベース層と、該ベース層に塗布された多層防錆コーティングとから形成された平鋼製品を製造するには、下記の作動段階が実施される。
a)鋼材料からなる平鋼製品のベース層が用意される。このベース層は、ここまでコーティングされていない鋼ストリップまたは薄鋼板である。
b)ベース層には、電解コーティングによりベース層に亜鉛層が塗布される。
c)亜鉛層の表面には、厚くても25nmのアルミニウム層が塗布される。この非常に小さい厚さのAl層とは別に、本発明にとって重要なことは、亜鉛層の表面上には、電解亜鉛コーティングの終時に存在する状態またはこの方法の結果としてアルミニウムコーティング中に生じる状態で残された酸化物および硫化物が存在することである。このことは、酸化物または硫化物を除去する目的で予め特別な洗浄または予処理を行うことなく、Al層を直接Zn層に塗布することを意味する。Zn層に塗布されるアルミニウムは、ここに存在するZn酸化物と硫化物とを結合する。
したがって本発明によれば、プラズマ微細浄化処理または特別なすすぎ方法または同等の洗浄方法のいずれも、Al層が塗布される前に、Znコーティングが設けられた平鋼製品に実施されることはない。それどころか、本発明によれば、Zn層の表面上に酸化物および/または硫化物が存在すること(このことは、慣用の考えによれば、充分に強固に接着した防錆コーティングの形成を妨げる)が意識的に受入れられる。
酸化物または硫化物の除去に関し、亜鉛層の表面の処理を本発明により省略すると、既知の方法(既知の方法ではこのような処理は絶対的に重要であると考えられている)に比べて本発明による方法をかなり簡単化できる。
d)アルミニウム層の塗布後に、マグネシウム層がアルミニウム層に塗布される。
e)Zn層、Al層およびMg層から形成された、このように塗布されたコーティングは、最後に熱後処理を受ける。これに関して設定される作動パラメータは、狭く制限されるだけでなく、簡単に調節されるべきであり、これにより、Al層上のコーティングの表面に向けられた熱が付加される結果として、コーティング内にMgZn層が形成される。
驚くべきことに、Zn層とMg層との間に横たわる薄いAl層は、亜鉛をマグネシウム層中に拡散させることができることが実際に証明されている。同時に、Al層はカップリング剤として作用する。このカップリング剤は、本発明によるコーティングは、プラズマ微細浄化処理および熱後処理の最適化された温度またはMg層の塗布前にZn層の表面をすすぐときの特別なすすぎ条件がなくても、顕著な層接着力を有することを確保する。
【0019】
したがって、本発明の成功のためには、Mg中へのZnの拡散がMgを通して行われるように、Al層が非常に薄く塗布されることが重要である。Al中間層自体は従来技術から知られているが、拡散バリヤとしても使用されている。したがって、例えば、溶融浸漬亜鉛めっきでは、ZnおよびFeの拡散を防止するため、AlFe中間層が意図的に形成される。
【0020】
本発明による方法に関する上記説明に対応して、本発明による平鋼製品は、鋼材料および該鋼材料に塗布された多層コーティングからなるベース層から形成され、ここでコーティングは、本発明によれば、ベース層上に横たわるZn層と、表面に近いMgZn拡散層と、Zn層とMgZn拡散層との間に横たわる厚くても25nmの厚いAl層とからなる。本発明により作られる平鋼製品のコーティングのMgZn層の厚さは、一般に400〜2500nmであり、最適防錆効果は、400〜1000nmの厚さにより達成される。
【0021】
専らマグネシウムからなる薄層はMgZn層上にも設けることができるが、この層は原則として上方原子層(upper atomic layers, oberen Atomlagen(英、独訳))のみを占める。
【0022】
かくして本発明は亜鉛−マグネシウムコーティングを有し、該コーティングは、接着を向上させるため、先ず第1に、電解コーティングされた薄鋼板上に薄いアルミニウム層を蒸着させることにより作られる。この後、マグネシウム層が塗布され、該層は次に熱後処理を受ける。この熱後処理の間、MgZn層が表面の近くに形成される。25nmより小さい厚さを有する薄いアルミニウム層は、Al層の塗布前に亜鉛層の表面を特別に洗浄する必要なくしてコーティングの接着を改善すべく機能する。同様に、マグネシウムをAl層上に蒸着する前にAl層を洗浄する必要は全くない。
【0023】
99.9重量%までの高純度の亜鉛からなるZn層が電解Znコーティング中に形成される場合には、特に有効な防錆が達成される。この点に関し、本発明により形成されかつ構成されたコーティングにより所望の最適防錆を行うには、電解蒸着されたZn層の厚さは2〜10μmあれば充分であることが判明している。この場合、本発明にしたがって作られる平鋼製品の溶接性に関しては、8μmより薄いZn層がベース層に塗布されれば好都合である。
【0024】
本発明にしたがって使用される亜鉛層に塗布されるアルミニウム層が、少なくとも8nmの厚さで亜鉛層に塗布されるならば、アルミニウム層の作用が特に有効に行われる。アルミニウム層の厚さが8.5〜13nmである場合には、アルミニウム層は最適効果を発揮する。
【0025】
薄いAl層の蒸着方法としては、陰極スパッタリング方法、より詳しくはマグネトロンスパッタリングが特に適している。どのコーティング方法が特に使用されるか否かにかかわらず、従来技術と比較して本発明による方法の決定的な長所は、塗布されたAlが、平鋼製品と一緒にプラントから出てくるという事実にある。ZnMgコーティングの充分な接着を確保するには、物質の除去を含むプラズマ微細浄化処理を用いなくてはならないという方法とは異なり、本発明による方法では、除去された酸化物だけでなく、再凝縮金属(re-condensing metals, rekondensierende Metalle(英、独訳))も作用結果を危険に曝すことはない。それどころか、Al層の形成のために本発明により使用されるプラントは、長い使用期間に亘って故障および中断なく使用できる。
【0026】
マグネシウム層は、200〜1500nmの厚さでアルミニウム層に塗布されるため、Mg層の保護効果が信頼性をもって達成される。この場合、Al層に塗布されるMg層の厚さが、次の熱後処理前に300〜800nmである場合には、最適効果が同時に確保される。
【0027】
作動的に信頼できる方法で行うためには、Al層を通るZnのMg層中への拡散が熱後処理中に生じ、熱後処理の温度は280〜350℃にすべきであり、325±10℃の熱後処理温度が特に適していることが判明している。一般に、熱処理時間は5〜30秒である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、例示実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0029】
本発明の作用を実証するため、種々の実験を行った。これらの実験の概略的実施を以下に説明する。
【0030】
DC06品質のIF鋼からなる鋼ストリップ上に、99.9重量%の亜鉛からなる厚さ2.5μmのZn層を連続パスで電解法により蒸着し、製造すべき平鋼製品のベース層を形成した。
【0031】
このようにしてZnコーティングが設けられた鋼ストリップは、次に、連続プロセス条件を妨げることなく、慣用マグネトロンスパッタリング装置に直ちに通される。この場合、コーティング表面上に存在する酸化物および/または硫化物を予め除去することなく、薄いAl層がコーティング上に蒸着される。
【0032】
この後、Zn層がコーティングされかつAl層がその上に蒸着された鋼基板が、連続プロセス条件を維持しつつ、同じく慣用のPVDコーティングプラント(PVDとは、「物理蒸着」(Physical Vapor Deposition)をいう)に通された。この場合、Al層上には、厚さ300nmのMg層が真空下で蒸着された。
【0033】
最後に熱後処理が行われた。この場合、鋼材料から形成されたベース層と、該ベース層上に設けられかつZn層、Al層およびMg層から形成されたコーティングとからなる平鋼製品が、320℃の温度に10秒間保持された。このようにして、平鋼製品のコーティングには層構造が形成された。この場合、鋼ベース層上には、実質的にZnからなる層が存在し、該層上には酸化物および硫化物を含有する薄層が横たわり、該薄層はAl層により覆われた。Al層はMgZn層により覆われ、該MgZn層は純粋Mg層および原子の厚さの数層により覆われた。
【0034】
本発明による第1サンプルE1のAl層の厚さは、マグネトロンスパッタリング装置の出力を対応して設定することにより、8.5nmに調節された。同様に、本発明による第2サンプルE2のAl層の厚さは10.5nmに調節され、本発明による第3サンプルE3のAl層の厚さは13nmに調節された。
【0035】
比較の目的で、本発明によらない第1サンプルV1が、電解亜鉛めっきによりZnMgコーティングし、次にプラズマ微細浄化処理し、PVD法によりMg層を蒸着し、次に320℃の温度で熱後処理することにより慣用方法で作られた。
【0036】
同様に、比較の目的で、本発明によらない第2サンプルV2が、電解亜鉛めっきによりZnMgコーティングし、PVD法によりMg層を蒸着し、次に320℃の温度で熱後処理することにより慣用方法で作られた。Mg層の塗布前に、Zn層上に存在する酸化物および硫化物を除去するいかなる処理も行われなかった。
【0037】
第1研究として、サンプルE1、E2、E3、V1、V2について接着ビード曲げ試験を行った。このために、長さ約150mmのそれぞれの材料のストリップが使用された。
【0038】
一定のオイリングの後、商品名Betamate(登録商標)1496として販売されている慣用の接着剤からなる接着剤ビードが、各場合にこれらのストリップに塗布される。
【0039】
ひとたび接着剤が硬化したならば、ストリップは、先ず、長手方向長さに対して横方向に整合した軸線の回りで、室温RTで突然曲げられた。次に、対応サンプルが、−20℃の温度で同様に変形された。それぞれの変形の間に、接着剤の層間剥離および破壊が生じた。
【0040】
次に、接着剤が層間剥離されたサンプルの表面が視覚評価された。これに関し、金属コーティング内に層間剥離が生じているか(いわゆる「層間破壊(delamination fracture, Delaminationsbruch(英、独訳))」=「DF」)、または接着剤と金属表面との間であるかまたは接着剤内であるか(いわゆる「混合破壊(mixed fracture, Mischbruch(英、独訳))」=「MF」)の判別がなされた。それぞれのサンプルの接着剤ビードの破壊表面の特性が、視覚判定された。室温で5%より大きい層間破壊比率は、コーティングの接着問題を示すものであるため、好ましくないとみなされた。このように遂行された評価の結果は、下記表1に示すように要約されている。
【表1】

【0041】
これらの結果は、Mg層の塗布前にプラズマ微細浄化処理を受けた比較変更例V1の場合には、100%までの混合破壊があることを示している。
【0042】
比較実験V2は、プラズマ微細浄化処理を省略した場合には、本発明による薄いアルミニウム層なくして、室温で、既に高い層間破壊比率が生じており、これは−20℃では90%より高い比率になることを示している。
【0043】
一方、本発明によるサンプルE1〜E3を用いて行われた実験は、厚さ約8.5nmの非常に薄いAl層は、室温で、100%の混合破壊比率(−20℃でも90%より高い)を有することを証明している。したがって、本発明により形成されるAl層は、Zn層とMg層との間で、比較変更例V1、V2と比較して大きい改善をもたらしている。
【0044】
また、サンプルE1〜E3およびV1、V2について、引っ張り剪断試験を行った。
【0045】
引っ張り剪断試験では、2つのストリップが互いに接合され、この場合には接着剤Betamate(登録商標)1496も使用される。一体接合されたサンプルは、次に、接合部位が破壊されるまで、室温および−20℃の温度で引っ張り応力を受ける。
【0046】
この試験は、接合後の短時間経過後、サンプルE1〜E3およびV1、V2の第1部分について行われ、30日のみのエージング後に、サンプルE1〜E3およびV1、V2の他の部分について行われた。
【0047】
下記の表2〜5において、略語は次のような意味を有している。
「SF」:鋼ベース材料の破壊
「DF」:層間破壊、すなわちコーティングの分離
「AF」:接着剤の破壊、すなわち接着剤と表面との間の分離
「SCF」:表面近くの粘着力破壊、すなわち表面近くの接着剤の破壊
「CF」:粘着力破壊、すなわち接着剤の破壊
【0048】
表2には、接合の直後に室温で行われた引っ張り剪断試験で測定された破壊表面比率が示されている。
【表2】

【0049】
表3には、接合後30日間保管した後に、室温で行われた引っ張り剪断試験で測定された破壊表面比率が示されている。

【表3】

【0050】
表4には、接合直後に、−20℃で行われた引っ張り剪断試験で測定された破壊表面比率が示されている。
【表4】

【0051】
表5には、接合後30日間保管した後に、−20℃で行われた引っ張り剪断試験で測定された破壊表面比率が示されている。
【表5】

【0052】
引っ張り剪断試験の結果は、明らかな結果を示している。プラズマ微細浄化処理を行うことなく得られた比較例V2では、全ての実験条件下で大きい層間破壊比率が生じかつ好ましくない大きさに到達する。
【0053】
プラズマ微細浄化処理を行って形成された比較例V1では、このような比率は、30日後にのみ−20℃の温度で生じる。
【0054】
本発明による各サンプルE1〜E3の層間剥離比率は小さいので、薄いアルミニウム層の蒸着は、一方では大きい改善をもたらす。この場合、アルミニウム層の厚さの影響は顕著である。全ての実験条件下で、層間剥離は、アルミニウム層の厚さの増大とともに低下する。
【符号の説明】
【0055】
SF 鋼ベース材料の破壊
DF 層間破壊、すなわちコーティングの分離
AF 接着剤の破壊、すなわち接着剤と表面との間の分離
SCF 表面近くの粘着力破壊、すなわち表面近くの接着剤の破壊
CF 粘着力破壊、すなわち接着剤の破壊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材料からなるベース層と、該ベース層に塗布された多層防錆コーティングとから形成された平鋼製品の製造方法において、
ベース層を用意する段階と、
電解コーティングによりベース層に亜鉛層を塗布する段階と、
厚くても25nmのアルミニウム層を亜鉛層の表面に塗布する段階とを有し、亜鉛層の表面上には、電解亜鉛コーティングの終時に存在する状態またはこの方法の結果としてアルミニウムコーティング中に生じる状態で残された酸化物および硫化物を有し、
アルミニウム層にマグネシウム層を塗布する段階と、
ベース層に塗布された亜鉛層、アルミニウム層およびマグネシウム層から形成されたコーティングが設けられた平鋼製品を、MgZn層がアルミニウム層上のコーティング内でコーティングの表面の方向に形成されるように、熱後処理する段階とを更に有することを特徴とする平鋼製品の製造方法。
【請求項2】
前記亜鉛層は高純度亜鉛で形成されていることを特徴とする請求項1記載の平鋼製品の製造方法。
【請求項3】
前記亜鉛層は99.9重量%までの亜鉛からなることを特徴とする請求項2記載の平鋼製品の製造方法。
【請求項4】
前記亜鉛層は2〜10μmの厚さでベース層に塗布されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の平鋼製品の製造方法。
【請求項5】
前記亜鉛層は8μmより小さい厚さでベース層に塗布されることを特徴とする請求項4記載の平鋼製品の製造方法。
【請求項6】
前記アルミニウム層は少なくとも8nmの厚さで亜鉛層に塗布されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の平鋼製品の製造方法。
【請求項7】
前記亜鉛層に塗布されるアルミニウム層の厚さは8.5〜13nmであることを特徴とする請求項6記載の平鋼製品の製造方法。
【請求項8】
前記アルミニウム層は陰極スパッタリング法により塗布されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の平鋼製品の製造方法。
【請求項9】
前記マグネシウム層は、200〜1500nmの厚さでアルミニウム層に塗布されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の平鋼製品の製造方法。
【請求項10】
前記アルミニウム層に塗布されるマグネシウム層の厚さは300〜800nmであることを特徴とする請求項9記載の平鋼製品の製造方法。
【請求項11】
前記熱後処理の温度は280℃〜350℃であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の平鋼製品の製造方法。
【請求項12】
鋼材料および該鋼材料に塗布される多層コーティングからなるベース層から形成される平鋼製品において、前記コーティングは、ベース層上に横たわるZn層と、表面に近いMgZn拡散層と、前記Zn層とMgZn拡散層との間に横たわる厚くても25nmのAl層とからなることを特徴とする平鋼製品。
【請求項13】
前記MgZn層の厚さは400〜2500nmであることを特徴とする請求項12記載の平鋼製品。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項記載の方法により製造されることを特徴とする請求項12または13記載の平鋼製品。


【公表番号】特表2012−528247(P2012−528247A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512313(P2012−512313)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056974
【国際公開番号】WO2010/136383
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(510041496)ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト (18)
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
【住所又は居所原語表記】Kaiser−Wilhelm−Strasse 100,47166 Duisburg Germany
【Fターム(参考)】