説明

平面度測定方法と装置

【課題】 簡単な構成で、効率的に平面度を求めることができる平面度測定方法と装置を提供する。
【解決手段】 互いに直交する方向の傾斜を検知する傾斜計12と、傾斜計12が取り付けられた本体14と、本体14の下面14aから突出した3点の測定子15,16,17と、傾斜計12により検知した傾斜を記憶しその傾斜の測定子間の距離から測定対象部位の変位を求めるコンピュータ等の演算手段とを備える。傾斜計12は、傾斜により動く電極間の静電容量の変化を2方向同時に検知する。3点の測定子15,16,17を測定対象面20に載置し、測定子15,16,17のうちの1点に対する他の2点の平面上での位置と傾斜を検知し、次に本体14を移動させて、先に検知した2点のうちの少なくとも1点に測定子16を合わせて、測定対象面20の他の点の変位を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種工作機械のステージや定盤、その他種々の平面の平面度を精密に検査するための平面度測定方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工作機械に用いられるステージや作業用の定盤の平面精度を測定する方法としては、水準器を用いて2点間の傾斜を求め、測定点の一方を重複させて直線的に逐次傾斜を記録し、これを積分してその直線上での変位、即ちその平面のある線分上での真直度を求め、これを平行に繰り返すとともにその直角方向にも繰り返して平面度を求めていた。さらに、この2点法による測定精度を高めるため、水準器の代わりにオートコリメータを用いるものやさらにレーザ干渉計を用いる方法もある。
【0003】
また、真直度を求める方法として、特許文献1に開示されている逐次2点法がある。この逐次2点法は、一定の間隔に配置して2つの変位計を設け、この2つの変位計を測定方向に対して常に平行に変位するようにして、検査対象物を2つの変位計によりその間隔毎に重複して変位を測定して、その測定線上の真直度を求めるものである。この方法によれば、測定機を載せた検査台の真直度と測定対象の真直度を独立に一度に求めることができるものである。
【特許文献1】特開2001−157951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の平面度測定方法は、いずれも直線上に測定器を移動させ、その直線の真直度を求めて、これを平行に複数回測定するとともにその直角方向にも測定を繰り返すことにより平面度を求めるので、測定回数が多く、効率の悪いものであった。
【0005】
この発明は、前記従来技術の問題を鑑みて成されるもので、簡単な構成で、効率的に平面度を求めることができる平面度測定方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、互いに直交する方向の傾斜を検出可能得な傾斜計と、この傾斜計が取り付けられた本体と、この本体の下面から突出した3点の測定子とを備え、前記3点の測定子を測定対象面に載置し、前記測定子の1点に対する他の2点の平面上での位置と傾斜を検知し、前記本体を移動させて、先に検知した2点のうちの少なくとも1点に前記測定子を合わせて、前記測定対象面の他の点の変位を検知する平面度測定方法である。
【0007】
前記本体は、直線状に移動させて、前記測定子による測定点の変位を測定するものである。または前記本体は、既知の角度により屈曲させながら移動させて、前記測定子による測定点の変位を測定するものである。
【0008】
またこの発明は、互いに直交する方向の傾斜を検知する傾斜計と、この傾斜計が取り付けられた本体と、この本体の下面から突出した3点の測定子と、前記傾斜計により検知した傾斜を記憶しその傾斜の測定子間の距離から測定対象部位の変位を求めるコンピュータ等の演算手段とを備えた平面度測定装置である。
【0009】
前記傾斜計は、傾斜により動く電極間の静電容量の変化を検知するもので、同時に互いに直交する2方向の傾斜を検知可能である。さらに、前記本体には、前記測定子が接触する位置以外の測定対象面の変位を検知する容量型または光学的な非接触の変位センサを備えたものである。
【0010】
さらに、前記演算手段は、前記傾斜計により検知した各測定点の傾斜により、測定対象面の鉛直度を含む傾斜角度を求めるようにしても良い。
【発明の効果】
【0011】
この発明の平面度測定方法と装置によれば、同時に3点の平面上での位置とその高低である変位を検知し、1点を重複させて、2点を未知の検知位置の変位測定に用いることにより、面状に平面上の測定位置の変位を測定することができ、極めて測定効率が高いものである。さらに、測定子が3点であるため安定に測定対象面に載置または接触させることができ、接触点も微小な点にすることができ、より測定精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の平面度測定方法と装置の実施形態について説明する。図1〜図3は、この発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態における測定装置10は、互いに直交する方向の傾斜を検知する傾斜計12と、この傾斜計12が取り付けられた本体14を備える。この本体14の下面14aには、3点の測定子15,16,17が突設されている。測定子15,16,17は、直角二等辺三角形を成すように配置され、測定装置10の傾斜検知方向は、測定子15,16方向と、測定子16,17方向の2方向である。また、傾斜計12により検知した傾斜を記憶しその傾斜の測定子間の距離から測定対象部位の変位を求めるパーソナルコンピュータ等による演算手段とを備える。
【0013】
傾斜計は、例えば傾斜により動く移動電極と固定電極間の静電容量の変化を検知するもので、同時に互いに直交する2方向の位置に設けられた容量が傾斜により変化し、傾斜を検知可能なものである。その他、公知の光学的に検知するものでも良く、適宜のものを利用することが可能であり、1軸方向の傾斜センサを直角に配置して2方向の傾斜を検知しても良い。
【0014】
この実施形態の平面度測定方法は、図1に示すように、傾斜計12を備えた測定装置10を、測定対象面20に載置し、測定子15,16,17のうち、直角の角にある測定子16を測定対象面20の角に合わせ、規準点kとし、この基準点に対する各測定点の傾きを検知し、その測定点の基準点に対する変位を測定する。
【0015】
測定装置12の移動方法は、図3に示すように、基準点kに測定子16を合わせて、他の2点の変位を測定した後、測定装置10を測定対象面20の1辺に沿って測定子16,17間の間隔分測定装置10を平行移動させ、測定子16を、直前に測定子17が位置していた測定点に合わせる。この状態で、測定子15,17の測定点の変位を傾斜計12のデータから演算し、これを繰り返す。これにより、測定子16,17による直線上の各測定点と、この直線と平行な直線上の測定子15による各測定点の変位を同時に得ることができる。
【0016】
さらに、図1において、右端まで測定装置10を移動させた後、測定装置10を図面上90°反時計回りに回動させ、測定子16,17間の2倍の間隔を前記移動方向と直角方向に移動させ、前記移動方向と反対方向に平行に、同様に測定する。この動きを繰り返して、測定対象面20の平面度を測定する。なお、測定装置10の測定子15,16,17を移動させて検知する際に、測定装置10を平行移動させる測定点を結んだ線が奇数本の場合、図3に示すように、最後の測定は、測定子17等による1点ずつの測定となる。
【0017】
この実施形態の平面度測定方法と装置によれば、同時に3点の平面上での位置とその変位を検知し、未知の2点の変位を同時に測定することができ、平面上の測定位置の変位を面状に測定して行くことができ、従来の約2分の1に近い測定回数となり、極めて測定効率が高いものである。
【0018】
次に、この発明の平面度測定装置の第二実施形態について、図4を基にして説明する。この実施形態の平面度測定装置は、本体14の下面14aに露出して、非接触で間隔を測定可能な変位センサ22を設けたものである。変位センサ22としては、静電容量を検知するものや渦電流を用いるもの、レーザダイオードによる干渉を利用するもの等、既存の装置を利用することができる。
【0019】
また、この測定装置10の測定子15,16,17は二等辺三角形の頂点に位置し、頂角の角度は鋭角に設定されたものである。この場合も、上記実施形態と同様に、例えば測定子16,17方向に測定装置10を平行移動させて、測定子15による検知を同時に行うことができる。
【0020】
この実施形態の平面度測定装置によれば、測定子15,16,17の間隔を大きくとって、その間の測定対象の変位を変位センサ22により同時に測定することにより、さらに効率良く平面度の測定を行うことができる。また、測定点の間隔を狭くして、測定点を多く取ることにより、より精細な面評価が可能となる。
【0021】
次に、この発明の平面度測定方法の第三実施形態について、図5を基にして説明する。この実施形態の平面度測定方法は、適宜形状の三角形状の測定装置10を既知の所定角度屈曲させながら移動させ、円状に被測定対象面20を測定するものである。この場合も、測定装置10の移動距離と移動角度及び測定点の傾斜により、測定位置の変位を測定することができる。従って、上記実施形態と同様に、測定対象面20の平面度を測定することができる。さらに、円形以外にも測定対象面の範囲内で、適宜既測定点に一つの測定子を重複させて、任意の方向に測定装置を移動させながら平面度の測定が可能である。
【0022】
なお、この発明の平面度測定方法と装置は上記実施形態に限定されるものではなく、測定装置の測定子の配置は上記実施形態以外の配置でも良く、傾斜計も互いに直交する2方向の傾斜が検知または演算により検出できるものであれば良く、その構造は問わない。また、測定対象面は、工作機械のステージや定盤の他、各種測定器のガイド面や建造物の平面等、小さな面から大きな面まで、対象物を選ばないものである。
【0023】
また、測定装置を逐次移動させる手段は、手動の他、適宜の装置を利用することができるものであり、工作機械等の移動機構やロボットでも良い。そのほか、測定対象面は水平面のみならず、傾斜した面や垂直面でも良く、面の傾斜角度や鉛直度等を合わせて計測するようにしても良い。例えば、建築物の屋根や壁、天井、床その他の面の傾斜を測定して、その面の評価をすることが可能である。
【実施例1】
【0024】
次に、この発明の平面度測定方法と装置により定盤を測定した実施例について説明する。この実施例の測定装置は、測定対象面の測定点が直交する升目状を想定して、3本の測定子を直角二等辺三角形の各頂点に配置した。測定面の傾きの調整を行うために、差動マイクロメータヘッドを測定子に利用した。測定子の間隔は、1m〜2mの定盤の平面度測定において、JISで規定されている155mmと190mmを選択できるように設計されている。また、傾斜計は、測定装置の重心に配置した。
【0025】
従来の2点法とこの実施例の方法との比較
2点法とこの実施例の方法との比較を行うため、製作した測定装置を使って同一の定盤の平面度を測定した。被測定物には、900mm×900mmの鋳鉄製の作業定盤を利用した。測定点の間隔は、x,y方向にそれぞれ155mmとし、測定点数は、x,y方向にそれぞれ5点とした。したがって、620mm×620mmの範囲で平面度の測定を行ったことになる。各測定点での傾きの測定は、1000回の測定を行い、その平均値を測定値として用いた。
【0026】
図6に従来の2点法による測定結果を示す。また、図7にこの発明の実施例による測定結果を示す。それぞれの測定法によって得られた平面度は、423μmと425.5μmであった。
【0027】
この実施例では、2軸傾斜計を使用して平面度を測定することができ、測定精度は従来の2点法と変わらないことが確認された。さらに、2点法と比較して、測定回数を約半分に減少させることができ、測定時間を短縮することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の平面度測定装置による第一実施形態を示す斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態の測定装置を示す斜視図である。
【図3】この発明の一実施形態の測定装置による測定方法を示す平面図である。
【図4】この発明の平面度測定装置の第二実施形態の平面図(a)、正面図(b)、側面図(c)である。
【図5】この発明の平面度測定装置による第三実施形態の測定方法を示す平面図である。
【図6】従来の2点法による平面度測定結果を示すグラフである。
【図7】この発明の一実施例の測定装置により測定した平面度測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0029】
10 測定装置
12 傾斜計
14 本体
15,16,17 測定子
20 測定対象面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する方向の傾斜を検出可能な傾斜計と、この傾斜計が取り付けられた本体と、この本体の下面から突出した3点の測定子とを備え、前記3点の測定子を測定対象面に載置し、前記測定子の1点に対する他の2点の平面上での位置と傾斜を検知し、前記本体を移動させて、先に検知した2点のうちの少なくとも1点に前記測定子を合わせて、前記測定対象面の他の点の変位を検知することを特徴とする平面度測定方法。
【請求項2】
前記本体は、直線状に移動させて、前記測定子による測定点の変位を測定することを特徴とする請求項1記載の平面度測定方法。
【請求項3】
前記本体は、既知の角度により屈曲させながら移動させて、前記測定子による測定点の変位を測定することを特徴とする請求項1記載の平面度測定方法。
【請求項4】
互いに直交する方向の傾斜を検知する傾斜計と、この傾斜計が取り付けられた本体と、この本体の下面から突出した3点の測定子と、前記傾斜計により検知した傾斜を記憶しその傾斜の測定子間の距離から測定対象部位の変位を求める演算手段とを備えたことを特徴とする平面度測定装置。
【請求項5】
前記傾斜計は、傾斜により動く電極間の静電容量の変化を検知するもので、同時に互いに直交する2方向の傾斜を検知可能であることを特徴とする請求項4記載の平面度測定装置。
【請求項6】
前記本体には、前記測定子が接触する位置以外の測定対象面の変位を検知する非接触の変位センサを備えたことを特徴とする請求項4記載の平面度測定装置。
【請求項7】
前記演算手段は、前記傾斜計により検知した各測定点の傾斜により、測定対象面の傾斜を求めることができることを特徴とする請求項4,5または6記載の平面度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−234427(P2006−234427A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45970(P2005−45970)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(591046641)
【出願人】(505066187)
【出願人】(594166568)富山検査株式会社 (5)
【Fターム(参考)】