説明

床下地構造

【課題】木造戸建て住宅の二階や木造集合住宅の二階以上の床下地構造において、生活騒音が階下に伝搬することを効果的に抑制すると共に、十分な強度を確保する。
【解決手段】基盤である厚物合板1と壁4との隅に載置される際根太11と、この際根太の長手方向に平行または直交する方向に設けられる複数の桟木12と、これら桟木の下面と基盤との間で桟木の長手方向に一定間隔で設けられる弾性を有する脚13とを備えた床下地構造である。際根太は、この床下地構造の際根太および桟木の上に敷設される床板3の下面と基盤の上面との間の隙間寸法に相当する高さを有する棒状部材である。少なくとも一の際根太においては内側面に実111が設けられ、この実に、桟木の長手方向の一端に設けられる実121を嵌合することにより桟木が際根太に連結一体化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床下地構造に関する。本発明の床下地構造は、特に、木質系の戸建住宅の二階などの床下地、あるいは集合住宅の二階以上の床下地などに好適に適用され、床上で発生する生活騒音が階下に伝搬することを抑制する。本発明の床下地構造は、大引きの上に敷設された厚物合板(たとえば厚さ24mm、28mmなどの合板)や、大引きとその上の根太の上に敷設された12mm合板などの基盤の上に設けられる。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、床基盤上に設けられた際根太の上に床板が敷設され、際根太と壁材との間に際根太固定用粘着シートが設けられてなる床下地構造が示されている。壁際から離れた床板は板状の制振ゴムと支持棒によって支えられている。
【特許文献1】特開2002−309757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の床下地構造は、床上を歩行したり、床上に物が落下したりすることによって発生する生活騒音が際根太から壁を介して階下に伝搬することを比較的良好に防止するが、床板から床基盤を介して階下に伝わる生活騒音に関してはその伝搬防止効果が不十分であり、さらなる改善策が要望されていた。
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、木造戸建て住宅の二階や木造集合住宅の二階以上の床下地構造において、生活騒音が階下に伝搬することを効果的に抑制すると共に、十分な強度を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するため、請求項1に係る本発明は、基盤と壁との隅に載置される際根太と、この際根太の長手方向に平行または直交する方向に設けられる複数の桟木と、これら桟木の下面と基盤との間で桟木の長手方向に一定間隔で設けられる弾性を有する脚とを備えた床下地構造であって、際根太は、この床下地構造の際根太および桟木の上に敷設される床板の下面と基盤の上面との間の隙間寸法に相当する高さを有する棒状部材であり、且つ、少なくとも一の際根太においては内側面に実が設けられ、この実に、桟木の長手方向の一端に設けられる実を嵌合することにより桟木が際根太に連結一体化されることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の床下地構造において、一側面の基盤と壁の隅に一本の際根太が載置されることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る本発明は、請求項1記載の床下地構造において、一側面の基盤と壁の隅に二本以上の際根太が間隔を置いて平行に載置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る本発明の床下地構造によれば、際根太で支持される床板を除く大部分の床板は桟木および弾性を有する脚で支持される。この床上で歩行したり、床上に物が落下したりすることによって発生する生活騒音は、床板から桟木に伝達されるが、その多くは桟木の下に設けられる弾性を有する脚によって遮断され、階下への伝搬を抑制する。
【0009】
少なくとも一の際根太の内側面には実が設けられ、これを桟木の長手方向の一端に設けられる実に嵌合するので、際根太に対して直交方向に設けられる複数の桟木を一体的に連結することができ、床下地構造としての強度が確保される。
【0010】
請求項2に係る本発明の床下地構造では、一側面の基盤と壁の隅に一本の際根太が載置されるので、幅を取らず、施工面の略全体に弾性脚付きの桟木を施工して防音性能を高めることができる。また、施工箇所のサイズに合わせて切断加工することが容易であるので、狭い箇所や廊下などでの施工に適している。
【0011】
請求項3に係る本発明の床下地構造では、一側面の基盤と壁の隅に二本以上の際根太が間隔を置いて平行に載置されるので、壁際に家具等の重量物を載置する場合、間隔を置いて平行に載置される棒状際根太でその重量を安定して支えることができる。また、床板のサイズや家具等の重量物の奥行に応じた間隔を自由に決定することができる。さらには、施工に際し、棒状際根太の間隔よりも短い床板を使用する箇所があっても、該床板の固定位置に合わせて間隔内に棒材を追加するなど、施工箇所に合わせた構成をとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の床下地構造は、基盤と壁との隅に載置される際根太と、この際根太の長手方向に平行または直交する方向に設けられる複数の桟木と、これら桟木の下面と基盤との間で桟木の長手方向に一定間隔で設けられる弾性を有する脚とを備えて構成される。際根太は一側面の基盤と壁の隅に一本または二本以上を平行に載置しても良く、このとき一本とは一連に連続した棒状の際根太であっても良いし、あるいは何本かに分断された状態で断続的に連なったものであっても良い。
【0013】
際根太は、この床下地構造の際根太および桟木の上に敷設される床板の下面と基盤の上面との間の隙間寸法に相当する高さを有する棒状部材である。その断面形状は特に限定されないが、矩形または略矩形が好ましい。際根太は木質系であり、たとえばLVL、合板、MDFなどである。際根太の高さないし厚さH(図5(b)),H(図11(b)),H(図12(b))はたとえば40〜60mmの範囲内において、本発明の床下地構造の下に設ける根太ないし大引きの高さ寸法と、この上に敷設される厚物合板の厚さ寸法とに応じて選定するが、一例としてH=H=H=50mmである。際根太の長さL=L=Lはたとえば1700〜1900mm、幅D,D,Dはたとえば30〜100mmである。際根太に段部を設ける場合は、たとえばH=20〜40mmの高さ位置に幅D=20〜40mmで形成する。
【0014】
少なくとも一の際根太(二本以上の際根太が間隔を置いて平行に載置される場合は、壁から最も離れて位置する際根太)の少なくとも内側面には実が設けられるが、その両側面に実が設けられていても良い。実の形状は、ほんざね、あいじゃくり、やといざねなどである。この実は、雄実または雌実として形成され、後述する桟木の長手方向一端に対応する形状を有するものとして設けられる雌実または雄実と嵌合する。なお、ここで実とは互いに嵌合し得る凹凸形状を広く包含する概念であり、必ずしも一方の凸部が他方の凹部に実質的に隙間なく嵌め込まれる形状に限らない。また、単一の部材の厚さ範囲内)に実が形成される場合(図3,図4)だけでなく、棒材の内側面に設けた段部とその上に配される板材との間に嵌合用の凹部が形成されるような形態(図11,図12(c)・(d))も含むものである。
【0015】
際根太は基盤上に載置されるが、必ずしも際根太の下面が全面的に基盤に接触している必要はなく、たとえば際根太の下面に駒またはブロックを適宜ピッチで設けて該駒またはブロックで基盤上に支持されるものであっても良い。また、際根太の下面または駒ないしブロックの下面に板状またはシート状などの軟質シートを貼着または被着して防音性を高めることができる。
【0016】
桟木は際根太の厚さよりも小さい厚さを有するものとし、たとえば際根太の厚さHの二分の一程度の厚さを目安とする。桟木の材質は木質系であり、たとえばLVL、合板、無垢材などであるが、強度面からLVLが好ましい。桟木の上面には床板が敷設されるので、桟木の上面は実質的に平坦であることが好ましい。桟木の下面も実質的に平坦であることが好ましく、該平坦な下面から脚が突設されている。
【0017】
桟木の長手方向の一端には、際根太の内側面に形成される実と嵌合する実が設けられる。たとえば、桟木の長手方向一端に設けられる実が雄実である場合は、上記縦材の内側面の実はこの雄実に嵌合可能な形状の雌実として形成される。実の形状は、ほんさね、あいじゃくり、やとい実などである。桟木の長手方向の他端には、長手方向一端に設けられる実に嵌合可能な形状の実が形成されて、桟木同士を長手方向に連結可能とすることが好ましい。なお、実の概念については際根太の少なくとも内側面に形成される実について既述したと同様であり、互いに嵌合し得る凹凸形状を広く包含する概念である。
【0018】
桟木の下面には上述のように脚が突設されるが、たとえば、桟木の下面に複数の穴を形成して、これらの穴に脚の上端突起部を挿入・固定することによって脚を突設することができる。脚の取付ピッチP(図6)は床板の幅に一致または略一致させることが好ましく、たとえばP=303mmである。脚は、たとえば合成ゴム、天然ゴム、合成樹脂などの弾性を有する材料から形成され、その硬さはデュロメータ硬さ(JIS K6253:2006)でA50〜A90、好ましくはA65〜A85である。硬さがA50未満のときは、この脚を介して荷重を受ける床のたわみが大きく床の平坦度を維持できないこととなり、床の平坦度を維持する観点からA65以上がより好ましい。一方、硬さがA90を超えると床の防音性が劣り、防音性を維持する観点からA85以下がより好ましい。
【0019】
脚の高さは、際根太の厚さから桟木の厚さを引いた寸法となり、たとえば際根太の厚さH=50mm、桟木の厚さH=24mmの場合は、脚の高さH=26mmとなる。脚の形状は任意であり、円形や四角形その他の断面形状の柱形状または切頭錐形状とすることができる。その側面に環状などの凹みが一または複数設けられたものであっても良い。
【実施例】
【0020】
本発明の一実施例による床下地構造について、図1ないし図6を参照して以下に詳述する。
【0021】
図1ないし図4に示すように、この床下地構造は、住宅の床において大引き2の上に敷設された厚物合板1(24mm厚)の上に設けられ、その上に床板3が敷設される。符号5は幅木を示す。
【0022】
床下地構造は、厚物合板1と部屋の壁4とがなす隅の四周に沿って設けられる際根太11と、床板3の長手方向と一致する方向に延長する際根太11に対して直交する方向に延長するように該際根太11に連結される複数の桟木12とを有する。桟木12の下面には軟質材で形成された脚(ゴム脚)13が長手方向に一定間隔をおいて設けられ、このゴム脚13を介して桟木12を床基盤である厚物合板1上に支持している。床板3はこれら際根太11および桟木12の上にフロアネイル20(図10)などで固着して敷設される。
【0023】
際根太11は、図5に示すように、横断面略矩形の棒状部材である。この実施例における際根太11の材質はLVLであり、その大きさは、長さL=1777mm、幅D=50mm、厚さH=50mmである。際根太の一方の側面(設置状態で内側面となる側面)に開口する雌実111が長手方向全長に亘って設けられている。
【0024】
桟木12は、図6に示すように、その長手方向一端に雄実121が設けられると共に他端に該雄実121を嵌合可能な形状の雌実122が設けられたLVLからなる角棒状の部材であり、この実施例では、長さL=910mm、幅D=50mm、厚さH=24mmである。桟木12の下面には所定ピッチP=303mmで3箇所に穴123が設けられている。これらの穴123にはゴム脚13の上端突起131(図3)が挿入される。このとき、穴123の内部にあらかじめ適量の接着剤を注入しておくと良い。この接着剤としては、シリコン系シーリング剤、アクリル樹脂系接着剤、ゴム系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂系接着剤などが適している。桟木12の雄実121が形成された側の先端部の寸法Qは、該寸法Q+際根太11の幅寸法D<床板3の幅寸法(=303mm)となるように定められ、たとえば際根太の幅寸法D=50mm、床板3の幅寸法=303mmのときは、Q=200mmとする。
【0025】
この実施例におけるゴム脚13は、図3に示すように、直径40mm、上端突起131を除いた高さH=26mmの円柱形であり、その側面に環状の凹み132を有している。環状の凹み132は、高さ8.5mm、深さ5.5mmのコの字形をゴム脚13の縦軸を中心に回転させて得られる形状である。ゴム脚13は合成ゴムで形成され、その硬さはデュロメータ硬さ(JIS K6253:2006)でA75に相当する。
【0026】
図3を参照して、図5に示す際根太11は、その一側面(雌実111が形成されていない側面)をクッション材14を介して壁面4aに当接させた状態で厚物合板1上に載置する。クッション材14は予め際根太11の側面に貼着させておいても良い。クッション材14は連続して設けても間隔をおいて断続的に設けても良い。このようにクッション材14を設けることで、際根太11と壁面4aとが直に接触することが回避され、防音性能を向上させることができる。クッション材14の材質は任意であり、たとえばポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などの発泡体、ネオプレンゴム、ブチルゴムなどの発泡体を使用することができる。このようにして際根太11を配置すると、他側面に設けられた雌実111が室内側に開口する。この雌実111に桟木12の長手方向一端の雄実121を嵌合させることにより、桟木12が際根太11と連結される。桟木12は、その下面の穴123に上端突起131を挿入することによって取り付けられたゴム脚13を介して厚物合板1上に支持される。かかる取付状態におけるゴム脚13の高さHは、際根太の厚さH=50mmと桟木12の厚さH=24mmとの差に等しく、したがって上述のようにH=26mmである。言い換えれば、際根太11の厚さは、桟木12の厚さとゴム脚13の高さを加えた寸法と等しいこととなる。
【0027】
桟木12の長手方向他端には、雄実121を嵌合可能な形状(したがって際根太11の内側面に設けられる雌実111と略同一形状)の雌実122が形成されているので、これら雄実121と雌実122との嵌合を介して長手方向に複数連結して延長させることができる(図2参照)。
【0028】
このようにして適宜延長された後、桟木12は、図3と反対側の壁面4a近くに設けられた際根太11に対しては、実結合ではなく、その木口を際根太の内側面に突き合わせ、あるいは若干の隙間16を残した状態で施工される(図4)。この場合、桟木12の突き合わせ側端部と厚物合板1との間にスペーサ15を配して桟木12を安定的に支持することが好ましい。なお、桟木12の該端部は寸法調整のために切断されているので、雌実122は存在していない。また、図4において、際根太11の内側面には雌実111が設けられているが、この雌実111は壁面4aにクッション材14を介して当接するので、桟木12の雄実121を嵌合するものとしては用いられない。
【0029】
次に、図7〜図10を参照して、この床下地構造の施工方法について説明する。この床下地構造は、下記説明から理解されるように、簡易施工ができる利点がある。
【0030】
まず、図7に示すように、この床下地構造を設ける部屋の下地を調整しておく。すなわち、大引き2などの上に敷設した24mm厚の厚物合板1(東京合板工業組合、東北合板工業組合の「ネダノン」(商標)など)に墨出し6を行う。
【0031】
その後、図8に示すように、際根太11を壁面4aとの間にそれぞれ3mmの隙間をあけ、長さ75mm以上のビス17で厚物合板1に固定する。
【0032】
そして、図9に示すように、桟木12の長手方向一端の雄実121を際根太11の内側面に開口する雌実111に差し込み、ビス18で実部分を固定する。吸音材を用いる場合は、桟木12の間に吸音材19を敷き詰める。吸音材19はある程度の硬さを持った材質であることが好ましく、たとえばポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォーム、硬質ウレタンフォームなどであり、密度はたとえば20kg/m以上である。吸音材19の厚さについては、ゴム脚13が嵌入された桟木12の高さよりも薄く吸音材19を敷き詰めて、吸音材19表面と床板3裏面との間に隙間が形成されるようにすることが好ましい。前述のようにある程度の硬さを有する吸音材19を用いる場合、吸音効果だけでなく、床上を歩行した際に生ずる床板3の沈み込みを支持して、それ以上の沈み込みを防止する効果も発揮するので、たとえば床板3の沈み込み量を最大2mmと仮定して、これよりも若干小さい隙間を吸音材19表面と床板3裏面との間に与えておくことにより、それ以上の沈み込みを防止することができる。
【0033】
次いで、図10に示すように、際根太11および桟木12の表面に接着剤(図示せず)を塗布し、この上に床板3を壁面4aから3mmの隙間をあけて(これにより床板3の外縦縁が際根太11の外縁に一致する)載置し、フロアネイルまたはステープルなどの固着具20で固定する。次に、桟木12を雄実121と雌実122との嵌合を介して長手方向に連結し、該実嵌合部に長さ25mm程度のビス21を打ち込んで固定する。このようにして連結していき、雄実121を差し込んでビス18で固定した際根太111に対向する際根太111との間に3〜5mm程度の隙間16(図4)があくように端部をカットする。
【0034】
そして、図1に示すように床板3を床下地構造10の全体に施工した後、幅木5を取り付け、接着剤が乾くまで養生する。このようにして、床が完成する。
【0035】
図11は、本発明の床下地構造10に用いる際根太についての別の構成例を示す。この際根太22は、図5に示す際根太11と略同様の断面形状を有する(図11(c))が、図5の際根太11は単一の角棒材を加工して実111を形成しているのに対し、この際根太22は角棒材221の片側上端を高さH=25mmの高さ位置で切り欠いて段部222を長手方向全長に亘って形成し、この角棒材221上に同一幅および同一長さの板材223を貼着して段部222上に突出する該板材の突出端と段部222との間に、桟木12の雄実121を受け入れるための嵌合用凹部を形成している。この実施例の際根太22の大きさは、長さL=1818mm、幅D=50mm、高さH=50mm(=ゴム脚13が嵌入された桟木12の高さ(H+H))である。角棒材221の材質はLVLであり、板材223の材質は合板である。
【0036】
図12(a)〜(c)は、本発明の床下地構造10に用いる際根太についてのさらに別の構成例を示す。この際根太23は、図11に示す際根太22と同様に、角棒材231の片側上端を高さH=25mmの高さ位置で切り欠いて段部232を長手方向全長に亘って形成し、この角棒材231上に同一長さの板材233を貼着して段部232上に突出する該板材の突出端と段部232との間に、桟木12を連結するための凹部を形成している。この凹部の高さ寸法は桟木12の板厚と略同一に形成することができ、桟木121の雄実121側端部は段部232上に安定して載置されると共に該凹部に嵌合される。この実施例の際根太23の大きさは、長さL=1818mm、幅D=75mm、高さH=50mm(=ゴム脚13が嵌入された桟木12の高さ(H+H))である。角棒材231の材質はLVLであり、板材233の材質は合板である。
【0037】
図12(d)〜(f)は際根太における嵌合用凹部の形成手法についての変形例を示す。際根太は単一の棒状部材であっても良いが、平板状部材と棒状部材とを組み合せて接合して形成すると、角棒材231の内側上端部を切り欠く加工手間を省いて段部232および嵌合用凹部を形成することができるので好ましい。たとえば、図12(c)における角棒材231を板材231aと棒材231bとを組み合せたものとすることができる(図12(b))。また、図12(e)は段部232および桟木12の雄実121を受け入れるための雌実234を有する際根太を単一の棒状部材の切り欠き加工により形成した例であるが、図12(f)に示すように幅広の板材231cと棒材231dとを組み合せて接合したものを用いることにより、棒材231dに雌実234を形成するだけで板材231c上に自動的に段差232を形成することができる。
【0038】
図13は、図12(e)の際根太23を用いた床下地構造10の一例を示す。この例では、段部232および嵌合用凹部が内側を向くようにして2本の際根太23,23を用い、1本をクッション材14を介して壁面4aに接するように厚物合板1上に設けると共に、もう1本の際根太23を所定間隔を置いて平行に設けている。際根太23,23の間隔は、この床下地構造10の上に敷設する床板3の幅寸法や、壁面4aに接して設置される家具等の重量物の奥行寸法などに応じて適宜に設定することができる。その他の構成については図3に示す床下地構造10と基本的に同一であるので、詳細説明は省略する。
【0039】
図14は、図12(e)の際根太23を用いた床下地構造10の他例を示す。この例では、段部232および嵌合用凹部が内側を向くようにして3本の際根太23,23’,23’を用い、際根太23’をクッション材14を介して壁面4aに接するように厚物合板1上に設け、これとの間に所定間隔を置いて平行に際根太23’,23を設けている。これら際根太23同士の間隔は、この床下地構造10の上に敷設する床板3の幅寸法や、壁面4aに接して設置される家具等の重量物の奥行寸法などに応じて適宜に設定することができる。図示の例では中央の際根太23’上で床板3,3が実結合により連接されるようにしている。なお、図示の例では壁面4a側の2本の際根太23’,23’については段部232および嵌合用凹部の部分を切除して断面方形状として用いているが、このような切除をせずに図12(e)の形状のままの際根太23として用いても良い。その他の構成については図3,図13に示す床下地構造10と基本的に同一であるので、詳細説明は省略する。
【0040】
本発明の床下地構造を使用した床の防音性能を検証するため、図1〜図6の構成の床下地構造10(ただし吸音材19は使用せず)を用いた床(以下「本構造床」という。)と、厚物合板24mmの上に床板12mmを敷設した床(以下「比較対象床」という。)との防音性能比較試験を行った。
【0041】
軽量衝撃音の測定は、JIS A 1418−1に従い、500gハンマー(直径30mmの円筒形)を4cm高さから自由落下させて音の減衰量を測定した。このときの音は、生活騒音で言えば、スプーン落下、いすを引く音、スリッパのパタパタ音、掃除機で床をこする音などに相当するものである。
【0042】
この結果、500Hzの測定値は、本構造床ではLL−72、比較対象床ではLL−81であった。したがって、本構造床を採用したことにより8.0dBの改善が見られた。なお、本構造床においてさらに吸音材19を敷き詰めて同様に試験したところ、さらに3dB(500Hz)程度の改善が見られた。
【0043】
また、重量衝撃音の測定は、JIS A 1418−2に従い、軽自動車のタイヤ(重さ7.3kg、空気圧2.4kg/cm)を85cm高さから自由落下させて63Hz音の減衰量を測定した。このときの音は、生活騒音で言えば、子供が飛び跳ねたときの音(ドスン、ドスン)に相当するものである。
【0044】
この結果、63Hzの測定値は、本構造床ではLH−69、比較対象床ではLH−75であった。したがって、本構造床を採用したことにより5.6dBの改善が見られた。なお、本構造床においてさらに吸音材19を敷き詰めて同様に試験したが、重量床衝撃音については吸音材を用いても有意な改善は見られなかった。
【0045】
以上より、本構造床によれば比較対象床に比べて軽量衝撃音、重量衝撃音のいずれにおいても顕著な改善が見られ、生活騒音の階下への伝搬を効果的に防止することができるものであることが実証された。
【0046】
次に、本発明の床下地構造を使用した床について床たわみ性試験を行った。人間が片足で立ったときを想定して80kg荷重を床上に置いた載荷板(直径50mm)にかけた。載荷板の設置位置は桟木と桟木の間の中央とした。荷重をかける前の床板が荷重をかけることによってたわむ変形量(変位)を、床板3の裏面に設置した1/100mmダイヤルゲージで測定した。
【0047】
たわみ変形量は4.18mmであったが、部屋の床面全体から判断するとほとんど目立たないものであり、本構造床によれば、重量物を載置した場合でも床のたわみ変形を十分に抑制できることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例による床下地構造を床板と共に示す斜視図である。
【図2】この床下地構造を大部分の床板を取り除いた状態で示す斜視図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】図3とは反対側の壁面近くの断面図である。
【図5】この床下地構造に用いる棒状の際根太を示す平面図(a)、正面図(b)および右側面図(c)である。
【図6】この床下地構造に用いる桟木を示す断面図(a)および下面図(b)である。
【図7】この床下地構造の施工方法の説明図である。
【図8】同施工方法の説明図である。
【図9】同施工方法の説明図である。
【図10】同施工方法の説明図である。
【図11】この床下地構造に用いる棒状際根太の別構成例を示す平面図(a)、正面図(b)および右側面図(c)である。
【図12】この床下地構造に用いる棒状際根太のさらに別の構成例を示す平面図(a)、正面図(b)および右側面図(c)である。同図(d)〜(f)は棒状際根太における変形例を示す同図(c)と同様の右側面図である。
【図13】図12(e)の際根太を用いた床下地構造の一例を示す図3と同様の断面図である。
【図14】同際根太を用いた床下地構造の他の例を示す図3と同様の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 厚物合板(基盤)
2 大引き
3 床板
4 壁
5 幅木
11 際根太
111 雌実(実)
12 桟木
121 雄実(実)
122 雌実
123 穴
13 ゴム脚(弾性を有する脚)
131 上端突起
132 環状の凹み
14 クッション材
15 スペーサ
16 隙間
17 ビス
18 ビス
19 吸音材
20 フロアネイル
21 ビス
22 際根太
221 角棒材
222 段部
223 板材
23 際根太
231 角棒材
232 段部
233 板材
234 雌実

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤と壁との隅に載置される際根太と、この際根太の長手方向に平行または直交する方向に設けられる複数の桟木と、これら桟木の下面と基盤との間で桟木の長手方向に一定間隔で設けられる弾性を有する脚とを備えた床下地構造であって、際根太は、この床下地構造の際根太および桟木の上に敷設される床板の下面と基盤の上面との間の隙間寸法に相当する高さを有する棒状部材であり、且つ、少なくとも一の際根太においては内側面に実が設けられ、この実に、桟木の長手方向の一端に設けられる実を嵌合することにより桟木が際根太に連結一体化されることを特徴とする床下地構造。
【請求項2】
一側面の基盤と壁の隅に一本の際根太が載置されることを特徴とする請求項1記載の床下地構造。
【請求項3】
一側面の基盤と壁の隅に二本以上の際根太が間隔を置いて平行に載置されることを特徴とする請求項1記載の床下地構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−174300(P2009−174300A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171805(P2008−171805)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】