説明

床下暖房住宅及び床下暖房システム

【課題】常時換気を行いつつ室内空間の暖房を行うと共に、暖房エリアの変更に対応して換気ルートも変更する。
【解決手段】外周基礎材201には、外気を第1床下空間21に取り入れるための床下吸気口20Hが設けられている。第1床下空間21には暖房装置5が配置され、その暖気が、第1〜第9ダンパ4A〜4Iの開閉状態に応じて、他の床下空間22〜27に導入される。この暖気は、第1〜第3床吹き出し口11H〜13Hから室内空間にも導入される。外壁部材の適所には、室内空間の常時換気のために第1〜第6換気扇3A〜3Fが配置されている。床下吸気口20Hから取り入れられた外気は、第1床下空間21から、他の床下空間22〜27に一部又は全部に循環され、専ら第1〜第3床吹き出し口11H〜13Hを経て室内空間に導入され、第1〜第6換気扇3A〜3Fを経て外部に流出するという空気の換気ルートが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常時換気設備を備える住宅に床下暖房機能を付加した床下暖房住宅、及びこれに適用される床下暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅における室内空間の空気調和設備と、室内空間の換気設備とは、別個の設備として扱うことが一般的であった。例えば、空調装置としての床下暖房装置で室内空間を如何に暖房するかという問題と、換気扇等により室内空間を如何に換気するかという問題とは別問題として扱われ、空調及び換気は、各々が必要なときに行われるものとされてきた。
【0003】
ところで、2003年7月の建築基準法改正により、住宅に24時間連続して室内空間の換気を行う常時換気設備の設置が義務付けられるに至った。しかし、上述の通り空調システムと換気システムとがリンクしていない結果、例えば冬季において居住者が、冷たい外気の室内空間への進入を嫌い、常時換気設備を強制停止させて換気機能を封殺するような使用態様を許容している。このような使用態様は、室内の汚染空気を外部に排出させない問題を招来する。
【0004】
一方、特許文献1には、床下に温風ダクトを設置し、当該温風ダクトから床下空間と室内空間とに温風を吹き出すと共に、その室内空間の排気のための排気ダクトを具備した床暖房装置が開示されている。この装置は、空調と換気とがリンクした設備であるということはできる。しかし、特許文献1の装置では、温風ダクト及び排気ダクトの配設が必須となることから設備が大掛かりにならざるを得ない。また、暖房する室内空間が固定化されていないと適用し難い装置構成であり、室内空間の利用態様に応じてフレキシブルに暖房エリアを設定することが困難という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−332160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みて為されたものであり、常時換気を行いつつ室内空間の暖房を行うと共に、暖房エリアの変更に対応して換気ルートも変更することが可能な床下暖房住宅及び床下暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る床下暖房住宅は、室内空間と、前記室内空間に対応して区画された複数の床下空間と、前記複数の床下空間のうちの少なくとも1つの床下空間内に配置される暖房設備と、前記床下空間と外部とを仕切る外周壁に設けられ、外気を前記床下空間に取り入れるための床下吸気口と、前記床下空間と前記室内空間とを仕切る床部材に設けられ、前記床下空間から空気を前記室内空間内へ取り入れるための床吹き出し口と、前記室内空間と外部とを仕切る壁部材に設けられ、前記室内空間内の空気を外部に排気させるための排気口と、前記複数の床下空間を仕切る床下壁に設けられ、前記床下空間同士で空気を流通させるための通気口と、前記通気口に配置され、当該通気口を開閉する開閉装置と、暖房対象とされる室内空間の配置に応じて定められる暖房運転パターンに基づき、前記開閉装置の開閉状態を制御すると共に換気ルートを設定する制御手段と、を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
この構成によれば、床下壁に設けられている通気口を開閉装置により開又は閉とすることにより、互いに連通されている床下空間と、遮断されている床下空間とに区画することができるので、自在に暖房運転パターン(暖房エリア)を設定することができる。また、その暖房エリアに応じて、所定の床下吸気口、通気口、床吹き出し口及び排気口を通る排気ルートが設定されるので、常時換気に対応することができる。そして、外気は床下吸気口から床下空間内に一旦取り入れられ、暖房設備により加温された後に床吹き出し口から室内空間へ導入されるので、冷気が直接的に室内空間へ進入することはなく、居住者に不快感を与えることはない。
【0009】
上記構成において、前記室内空間は、前記床吹き出し口を具備する第1室内空間と、前記床吹き出し口を具備しない第2室内空間とを含み、前記第1室内空間は、前記床吹き出し口から供給される暖気と、前記床下空間からの前記床部材を通した輻射熱とで暖房され、前記第2室内空間は、前記床下空間からの前記床部材を通した輻射熱で暖房される構成とすることができる(請求項2)。
【0010】
この構成によれば、例えば居間や寝室等の居室においては暖気と輻射熱とで暖房し、玄関ホールや廊下といった箇所では輻射熱のみで暖房するというように、住宅の間取りに応じて効率的な暖房を行うことが可能となる。
【0011】
上記構成において、前記排気口に配置され、24時間連続運転される換気扇をさらに備えることが望ましい(請求項3)。この構成によれば、換気扇の動作によって、換気ルートに沿った空気流を形成することができる。
【0012】
上記構成において、前記暖房設備が、温風吹き出し型の暖房設備であることが望ましい(請求項4)。この構成によれば、前記換気ルートに沿った空気流を一層形成し易くなる利点がある。
【0013】
本発明の他の局面に係る床下暖房システムは、室内空間と、前記室内空間に対応して区画された複数の床下空間と、前記床下空間と外部とを仕切る外周壁に設けられ、外気を前記床下空間に取り入れるための床下吸気口と、前記床下空間と前記室内空間とを仕切る床部材に設けられ、前記床下空間から空気を前記室内空間内へ取り入れるための床吹き出し口と、前記室内空間と外部とを仕切る壁部材に設けられ、前記室内空間内の空気を外部に排気させるための排気口と、前記複数の床下空間を仕切る床下壁に設けられ、前記床下空間同士で空気を流通させるための通気口と、を備えた住宅に適用される床下暖房システムであって、前記複数の床下空間のうちの少なくとも1つの床下空間内に配置される暖房設備と、前記通気口に配置され、当該通気口を開閉する開閉装置と、暖房対象とされる室内空間の配置に応じて定められる複数の暖房運転パターンを記憶する記憶部と、前記複数の暖房運転パターンのいずれかの選択操作を受け付ける操作部と、前記操作部により選択された暖房運転パターンに基づき、前記開閉装置の開閉状態を制御すると共に換気ルートを設定する制御手段と、を備えることを特徴とする(請求項5)。
【0014】
この構成によれば、通気口を開閉装置により開又は閉をすることにより、互いに連通されている床下空間と、遮断されている床下空間とに区画することができる。従って、操作部に与えられた選択操作に基づき、記憶部のパターンデータを読み出して、自在に暖房運転パターン(暖房エリア)を設定することができる。また、その暖房エリアに応じて、所定の床下吸気口、通気口、床吹き出し口及び排気口を通る排気ルートが設定されるので、常時換気に対応することができる。そして、外気は床下吸気口から床下空間内に一旦取り入れられ、暖房設備により加温された後に床吹き出し口から室内空間へ導入されるので、冷気が直接的に室内空間へ進入することはなく、居住者に不快感を与えることはない。
【0015】
上記構成において、前記暖房運転パターンが、第1パターンから、これとは異なる第2パターンに変更される場合において、前記制御手段は、前記第1パターンにおいて暖房対象とされていた室内空間に対応する第1床下空間の暖気が、前記第1パターンにおいて暖房対象とされず前記第2パターンにおいて暖房対象とされる第2床下空間へ受け渡されるよう、前記開閉装置の開閉状態を制御することが望ましい(請求項6)。
【0016】
この構成によれば、第1パターンでの暖房運転の際に生成された第1床下空間の暖気を、未だ暖気が充填されていない第2床下空間へ導入させることができる。このため、昇温効率を高め、エネルギーロスの少ないシステムとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、常時換気を行いつつ室内空間の暖房を行うと共に、暖房エリアの変更に対応して換気ルートも変更することが可能となる。従って、常に温熱環境及び清浄度が安定した室内環境を居住者に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用された床下暖房住宅の間取り例を示す平面図である。
【図2】図1の間取りに対応した床下空間の区画を示す平面図である。
【図3】蓄熱体ユニットの上面視の断面図である。
【図4】蓄熱体ユニットの側面視の断面図である。
【図5】床下暖房ユニットの制御構成を示すブロック図である。
【図6】(A)は暖房運転パターンの一例を示す平面図、(B)はダンパの開閉状態を示す表形式の図である。
【図7】(A)は暖房運転パターンの他の例を示す平面図、(B)はダンパの開閉状態を示す表形式の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明が適用された床下暖房住宅1の室内空間1Aの間取りを示す平面図、図2は、当該床下暖房住宅1の、室内空間1Aの間取りに対応した床下空間1Bの区画を示す平面図である。
【0020】
本実施形態では、図1に示すように、室内空間1Aとして、ダイニングルーム11、リビングルーム12、寝室13、ホール14、廊下15(トイレを含む)、キッチン16、及び洗面所(浴室を含む)17が備えられている例を示している。なお、この室内空間1Aは2階建て住戸の1階部分を示している。これら室内空間の外周囲は、外壁部材(室内空間と外部とを仕切る壁部材)101で仕切られている。また、各室内空間同士は、LDKを構成するダイニングルーム11、リビングルーム12及びキッチン16を除き、内壁部材やドア等で区画されている。
【0021】
外壁部材101の適所には、室内空間1A内の空気を外部に排気させるための排気口が複数穿孔されている。これら排気口には、第1〜第6換気扇3A〜3Fが各々組み付けられ、これら換気扇3A〜3Fの駆動により、各室内空間の空気が外部へ強制排気されるようになっている。具体的には、ダイニングルーム11及びリビングルーム12に対応して第1換気扇3Aが、寝室13に対応して第2換気扇3Bが、キッチン16に対応して第3換気扇3Cが、洗面所(浴室)17に対応して第4、第5換気扇3D、3Eが、廊下(トイレ)15に対応して第6換気扇3Fが、それぞれ配置されている。これら第1〜第6換気扇3A〜3Fは、常時換気のための設備であって、全てが24時間連続して運転される換気扇である。
【0022】
ダイニングルーム11及びリビングルーム12の床面を構成する床部材102には、床下空間1B(第1床下空間21及び第2床下空間22)から暖気(空気)を取り入れるための第1床吹き出し口11H及び第2床吹き出し口12Hが設けられている。また、寝室13の床面を構成する床部材103にも、床下空間1B(第3床下空間23)から暖気を取り入れるための第3床吹き出し口13Hが設けられている。
【0023】
図2に示すように、このような室内空間1Aに対応して、複数の床下空間1Bが区画されている。床下空間1Bは、ダイニングルーム11に対応した床下の区画である第1床下空間21、リビングルーム12に対応した第2床下空間22、寝室13に対応した第3床下空間23、ホール14に対応した第4床下空間24、廊下15に対応した第5床下空間25、キッチン16に対応した第6床下空間26、及び、洗面所27に対応した第7床下空間27を含む。
【0024】
これら床下空間の外周囲は、外周基礎材201(床下空間と外部とを仕切る外周壁)で外部と仕切られている。また、各床下空間21〜27は、内側基礎材202(複数の床下空間を仕切る床下壁)で区画されている。外周基礎材201及び内側基礎材202は、所定の幅及び高さを備えた基礎コンクリートで形成されている。この基礎コンクリートと、各床下空間21〜27の底面を構成する土間コンクリートとにより、当該床下暖房住宅1の基礎構造体が形成されている。ここで、外周基礎材201の周囲に断熱材を貼設し、床下空間1Bの断熱を施すことが望ましい。なお、図2では、第1〜第6換気扇3A〜3F及び第1〜第3床吹き出し口11H〜13Hの位置を、説明の便宜上、書き加えているが、これらが外周基礎材201上、若しくは第1〜第3床下空間21〜23内に存在している訳ではない。
【0025】
外周基礎材201の第1床下空間21を区画する部分には、外気を床下空間1Bに取り入れるための床下吸気口20Hが設けられている(図1でも、床下吸気口20Hを便宜的に書き加えている)。床下吸気口20Hから取り入れられた外気は、第1床下空間21から、他の床下空間22〜27に一部又は全部に循環され得る。そして、専ら第1〜第3床吹き出し口11H〜13Hを経て室内空間1A(特にダイニングルーム11、リビングルーム12及び寝室13)に導入され、さらにはドア下の隙間等を経て他の室内空間へも導入され、第1〜第6換気扇3A〜3Fの一部又は全部を経て外部に流出するという空気の換気ルートが形成される。この換気ルートに沿った空気流は、第1〜第6換気扇3A〜3Fの稼働による吸引力で生成される。
【0026】
床下空間同士を仕切る内側基礎材202の各々には、床下空間同士で空気を流通させるための9つの通気口が設けられている。これらの通気口には、当該通気口を開状態若しくは閉状態とする第1〜第9ダンパ4A〜4I(開閉装置)が組み付けられている。各々のダンパ4A〜4Iには図略の開閉駆動装置が付設され、開状態と閉状態との切換が遠隔制御される。ダンパ4A〜4Iが開状態であるとき、隣り合う床下空間同士は連通状態となり、空気が流通可能となる。一方、ダンパ4A〜4Iが閉状態であるとき、隣り合う床下空間同士は遮断された状態となり、空気の流通は実質的に不能となる。従って、第1〜第9ダンパ4A〜4Iのいずれかを開、残りを閉とすることで、床下空間内における空気流を自在に制御することが可能である。
【0027】
第1床下空間21の土間コンクリート上には、温風吹き出し型の暖房装置5が配置されている。暖房装置5は、温風を発生するヒートポンプエアコン(HP)51と、このヒートポンプエアコン51が生成する熱を蓄熱する蓄熱体ユニット52とを含んで構成されている。なお、ヒートポンプエアコン51に対して、図示省略の室外機が備えられている。ヒートポンプエアコン51が発する温風は、ダクト51A(図3、図4参照)を通して蓄熱体ユニット52に導かれる。
【0028】
図3は、蓄熱体ユニット52の上面視の断面図、図4は側面視の断面図である。蓄熱体ユニット52は、筐体53内に潜熱蓄熱体からなる薄板状の蓄熱プレート54、54、54・・・が複数枚収納されてなる。
【0029】
筐体53は、その入口側52Tと出口側52Eとが開口した、断面矩形の角筒形状を有する筐体である。入口側52Tには、ヒートポンプエアコン51が発する温風が送り込まれるダクト51Aの出口側が接続されたチャンバー55が密に取り付けられている。従って、ヒートポンプエアコン51からの温風は、チャンバー55内の空間55Hを介して漏れなく筐体53の入口側52Tへ導入されるようになっている。
【0030】
蓄熱プレート54としては、例えばノルマルパラフィンのような潜熱蓄熱材をプラスチック樹脂製の平板状容器に封入して作成されたものが採用できる。本実施形態で好適に用いることができる潜熱蓄熱体の物性の一例は、相変化温度=36℃、融解熱量175kJ/kg、密度=900kg/m、比熱=2500J/kgK、熱伝導率=0.219W/mk、使用体積=0.68mである。
【0031】
かかる蓄熱プレート54は、図3に示すように同一平面上に複数枚が並列配置されると共に、図4に示すように、その並列配置体54Lが通気路53Hとなる間隔を置いて複層に積層されている。なお、このような蓄熱プレート54の並列・複層配置を可能とするために、図略のラックが筐体53内に組み付けられている。
【0032】
蓄熱体ユニット52がこのような内部構成を備えていることから、ヒートポンプエアコン51からの温風が入口側52Tから筐体52内へ導入されると、該温風が通気路53Hを通る際に温風が持つ熱が各蓄熱プレート54に与えられ、蓄熱プレート54は蓄熱する。そして、熱交換後の温風は、筐体52の出口側52Eから第1床下空間21へ吹き出され、暖房の用に供される。なお、第1床下空間21の土間コンクリート上の出口側52Eに対応する部分には、土中への熱流出を抑止するために断熱材等を敷設することが望ましい。
【0033】
一方、各蓄熱プレート54が一旦蓄熱されると、ダクト51Aからは温風を供給せずとも常温風を入口側52Tから筐体52内へ導入すれば、この常温風が通気路53Hを通る際に蓄熱プレート54が放熱する熱により加熱され、出口側52Eから温風を吹き出させることができる。すなわち、蓄熱プレート54の蓄熱完了後は、ヒートポンプエアコン51は熱を発生する動作を行う必要はなく、単に送風ファン等で送風動作を行うだけで良くなる。従って、省エネルギー化を図ることができる。
【0034】
暖房装置5から第1床下空間21内に吹き出された温風は、ダンパ4A〜4Iが開状態とされることで、他の床下空間22〜27へ導入される。温風が導入された床下空間21〜27は加温され、床部材を通した輻射熱で、対応する室内空間11〜17を暖房する。さらに前記温風は、第1〜第3床吹き出し口11H〜13Hを通して室内空間へ導入され、その暖気によって直接室内空間を暖房する。本実施形態では、第1〜第3床吹き出し口11H〜13Hを有するダイニングルーム11、リビングルーム12及び寝室13(以上、第1室内空間)は、第1〜第3床吹き出し口11H〜13Hから供給される暖気と、前記輻射熱との双方で暖房される。一方、床吹き出し口を具備しないホール14、廊下15、キッチン16及び洗面所17(以上、第2室内空間)については、専ら前記輻射熱で暖房される。
【0035】
続いて、図5に基づいて、本実施形態の床下暖房住宅1に適用されている床下暖房システム1Cについて説明する。床下暖房システム1Cは、上述のヒートポンプエアコン51及び第1〜第9ダンパ4A〜4Iに加え、これらの動作を制御する制御部60と、ユーザからの操作指示を受け付ける操作部70とを備えている。また、制御部60は、HP(ヒートポンプ)制御部61、ダンパ開閉制御部62(制御手段)、パターン記憶部63(記憶部)、及びパターン設定部64を備えている。
【0036】
HP制御部61は、ヒートポンプエアコン51の運転動作を制御する。例えばHP制御部61は、操作部70から運転指示が与えられるとヒートポンプエアコン51を起動させ、温風を第1床下空間21内へ放出させる。そして、蓄熱プレート54への蓄熱が完了している状態では、ヒートポンプエアコン51での熱生成を停止し、送風ファンのみを駆動して省エネ運転を実行させる。深夜電力時間帯にヒートポンプエアコン51で熱生成して暖房及び蓄熱プレート54への蓄熱を実行させ、昼間に蓄熱プレート54からの放熱で暖房を実行することは、HP制御部61の好ましい制御態様である。
【0037】
ダンパ開閉制御部62は、第1〜第9ダンパ4A〜4Iに付設されている図略の開閉駆動装置に制御信号を与え、それら各々の開閉動作を制御する。すなわち、ダンパ開閉制御部62は、所定の暖房運転パターンに基づいて、第1〜第9ダンパ4A〜4Iのうち、いくつかを「開状態」とし、残りを「閉状態」とすることで、室内空間1Aの一部または全部を暖房状態とする。
【0038】
例えば、全室暖房の運転パターンが操作部70で選択された場合、ダンパ開閉制御部62は、第1〜第9ダンパ4A〜4Iの全てを開状態とする。この場合、暖房装置5から発せられる温風は全ての床下空間21〜27へ行き渡り、ダイニングルーム11、リビングルーム12、寝室13、ホール14、廊下15、キッチン16及び洗面所17の全てが暖房される状態となる。
【0039】
また、ダイニングルーム11及びリビングルーム12の暖房を行うLD暖房の運転パターンが操作部70で選択された場合、ダンパ開閉制御部62は、第1ダンパ4Aを開状態とする一方で、第2、第6、第8ダンパ4B、4F、4Hを閉状態とする。これにより、ダイニングルーム11及びリビングルーム12に対応する第1、第2床下空間21、22が他の床下空間と遮断された閉鎖空間となり、両室が暖房される状態となる。なお、残りのダンパ4C、4D、4E、4G、4Iは、開状態又は閉状態のいずれにしても良い。
【0040】
第1〜第6換気扇3A〜3Fの駆動と、上記のような第1〜第9ダンパ4A〜4Iの開閉制御によって、自ずと換気ルートが設定されることになる。上記の全室暖房の運転パターンの場合は、床下吸気口20H→第1〜第3床吹き出し口11H〜13H→第1〜第6換気扇3A〜3Fという換気ルートが形成されることになる。一方、上記のLD暖房の運転パターンの場合は、床下吸気口20H→第1、第2床吹き出し口11H、12H→第1〜第6換気扇3A〜3Fという換気ルートとなる。なお、本実施形態によれば、第1〜第6換気扇3A〜3Fの駆動によって換気ルートが形成されることから、第1〜第9ダンパ4A〜4Iの配置位置にファン等の送気手段を設置する必要が無いという利点がある。
【0041】
パターン記憶部63は、暖房対象とされる室内空間の配置に応じて定められる複数の暖房運転パターン、つまり、第1〜第9ダンパ4A〜4Iの開閉パターンを記憶する。例えば、上述の全室暖房、LD暖房の他、寝室13を中心とする暖房、洗面所17とLDKを中心とする暖房等の暖房運転パターンに応じて、それらの床下空間へ暖気を導入可能な複数のパターンが、予めパターン記憶部63に記憶される。ダンパ開閉制御部62は、操作部70からの特定の暖房運転パターンの選択指示が与えられたとき、このパターン記憶部63の情報を読み出して、第1〜第9ダンパ4A〜4Iを開閉制御する。
【0042】
パターン設定部64は、暖房運転パターンが、特定の第1パターンから、これとは異なる第2パターンに変更される場合において、第1パターンにおいて暖房対象とされていた室内空間に対応する床下空間の暖気が、第1パターンにおいて暖房対象とされず第2パターンにおいて暖房対象とされる床下空間へ受け渡されるよう、第1〜第9ダンパ4A〜4Iの開閉パターンを設定する。この点の具体例については、図6、図7に基づき後述する。
【0043】
操作部70は、例えば操作ボタンや液晶タッチパネル等を備えたリモコン装置からなり、床下暖房システム1Cに対するユーザの各種の操作指示を受け付ける。上述の通り、暖房運転パターンの選択指示も、この操作部70で受け付けられる。
【0044】
以下、暖房運転パターンの具体例を図示して説明する。図6(A)は、暖房運転パターンの一例を示す平面図であって、LDK中心型の暖房運転パターン(以下、第1パターンという)が実行されている状態を示す平面図、図6(B)は、第1パターンにおける第1〜第9ダンパ4A〜4Iの開閉状態を示す表形式の図である。この第1パターンでは、ダイニングルーム11、リビングルーム12、廊下15及びキッチン16が暖房対象とされる。
【0045】
この第1パターンが操作部70で選択された場合、ダンパ開閉制御部62は、図6(B)に示すように、第2、第4、第7、第9ダンパ4B、4D、4G、4Iを閉状態とし、残りのダンパを開状態とする。これにより、ダイニングルーム11、リビングルーム12、廊下15及びキッチン16に対応する第1、第2、第5、第6床下空間21、22、25、26が、他の床下空間から遮断された状態となる。
【0046】
この状態で、HP制御部61がヒートポンプエアコン51を動作させると、第1床下空間21に温風が吹き出され、第1床下空間21内の空気が暖気に変換されるようになる。この暖気は、図6(A)の図中に矢印F1で示すように、第1ダンパ4A→第6ダンパ4F→第5ダンパ4E→第8ダンパ4Hというルート(或いはその逆ルート)を経て、第2、第5、第6床下空間22、25、26に循環されるようになる。その結果、これらの床下空間は暖気で満たされるようになり、床部材を通した輻射熱によりダイニングルーム11、リビングルーム12、廊下15及びキッチン16が暖房される。これに加えて、第1、第2床吹き出し口11H、12Hから暖気が吹き出されるので、LDKスペースはこの暖気によっても暖房される。この第1パターンにおける換気ルートは、床下吸気口20H→第1、第2床吹き出し口11H、12H→第1〜第6換気扇3A〜3Fというルートとなる。
【0047】
図7(A)は、暖房運転パターンの他の例を示す平面図であって、寝室13を重視した暖房運転パターン(以下、第2パターンという)が実行されている状態を示す平面図、図7(B)は、第2パターンにおける第1〜第9ダンパ4A〜4Iの開閉状態を示す表形式の図である。この第2パターンでは、ダイニングルーム11、リビングルーム12及び寝室13が暖房対象とされる。
【0048】
この第2パターンが操作部70で選択された場合、ダンパ開閉制御部62は、図7(B)に示すように、第3、第6、第8ダンパ4C、4F、4Hを閉状態とし、残りのダンパを開状態とする。これにより、ダイニングルーム11、リビングルーム12及び寝室13に対応する第1、第2、第3床下空間21、22、23が、他の床下空間から遮断された状態となる。従って、第1床下空間21内の暖気は、図7(A)の図中に矢印F2で示すように、第1ダンパ4A→第2ダンパ4Bというルートを経て、第2、第3床下空間22、23に循環される。これにより、床部材を通した輻射熱と、第1〜第3床吹き出し口11H〜13Hによりダイニングルーム11、リビングルーム12及び寝室13が暖房される。この第1パターンにおける換気ルートは、床下吸気口20H→第1〜第3床吹き出し口11H〜13H→第1〜第6換気扇3A〜3Fというルートとなる。
【0049】
暖房運転パターンが上記の第1パターンから第2パターンへ変更されるとき、第1パターンにおいて暖房対象とされていたリビングルーム12下の第2床下空間22の暖気が、第1パターンにおいて暖房対象とされず第2パターンにおいて暖房対象とされる寝室13の第3床下空間23へ受け渡される。つまり、直前の第1パターンでの暖房運転の際に生成された第2床下空間22の暖気が、未だ暖気が充填されていない第3床下空間23へ導入される。このため、第3床下空間23の昇温効率を高めることができる。パターン設定部64は、上記のような暖気の受け渡しが隣接する床下空間同士で行われるよう、第1〜第9ダンパ4A〜4Iの開閉パターンを設定する。
【0050】
すなわち、パターン記憶部63には、暖房対象とされる室内空間に応じて複数の開閉パターンが記憶されている。例えば、寝室13が暖房対象となる場合、対応する第3床下空間23へ複数のルートで暖気を導入することが可能であり、各ルートに応じた第1〜第9ダンパ4A〜4Iの開閉パターンが記憶されている。パターン設定部64は、暖房運転パターンが変更される際、パターン記憶部63に記憶されている上記複数の開閉パターンの中から、直前の暖房運転パターンでの暖房運転の際に生成された床下空間の暖気が、未だ暖気が充填されていない他の床下空間へ導入される開閉パターンを選択する。これにより、エネルギーロスの少ない暖房システムが実現される。
【0051】
本実施形態の床下暖房住宅1によれば、第1〜第9ダンパ4A〜4Iを開又は閉とすることにより、互いに連通されている床下空間と、遮断されている床下空間とに区画することができるので、自在に暖房運転パターン(暖房エリア)を設定することができる。また、その暖房エリアに応じて、床下吸気口20H、通気口(ダンパ4A〜4I)、床吹き出し口11H〜13H及び排気口(換気扇3A〜3F)を通る排気ルートが設定されるので、常時換気に対応することができる。そして、外気は床下吸気口20Hから床下空間1B内に一旦取り入れられ、暖房装置5により加温された後に床吹き出し口11H〜13Hから室内空間1Aへ導入されるので、冷気が直接的に室内空間1Aへ進入することはなく、居住者に不快感を与えることはない。
【0052】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取ることができる。
【0053】
(1)上記実施形態では、内側基礎材202の各々に設けられている通気口に第1〜第9ダンパ4A〜4Iを配置する例を示した。これに加えて、第1〜第3床吹き出し口11H〜13Hにもダンパを配置しても良い。この場合、例えば図7(A)の寝室13を重視した暖房運転パターンを行う際、第1、第2床吹き出し口11H、12Hのダンパを閉状態とし、第3床吹き出し口13Hを開状態とすれば、寝室13を効果的に暖房することが可能となる。
【0054】
(2)上記実施形態では、暖房設備の一例としてヒートポンプエアコン51を例示した。暖房設備は、床下空間を加温できるものであれば良く、各種の熱源を用いることができる。また、上記実施形態では、第1床下空間21にのみ暖房装置5を配置する例を示したが、複数の暖房設備を、異なる床下空間に配置しても良い。
【0055】
(3)上記実施形態では、外周基礎材201の第1床下空間21を区画する部分に床下吸気口20Hが1つ設けられる例を示した。床下吸気口は1つに限らず、複数個設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 床下暖房住宅
1A 室内空間
1B 床下空間
1C 床下暖房システム
11H〜13H 第1〜第3床吹き出し口
101 外壁部材(室内空間と外部とを仕切る壁部材)
102,103 床部材
20H 床下吸気口
21〜27 第1〜第7床下空間
201 外周基礎材(床下空間と外部とを仕切る外周壁)
202 内側基礎材(複数の床下空間を仕切る床下壁)
3A〜3F 換気扇(排気口)
4A〜4I 第1〜第9ダンパ(開閉装置)
5 暖房装置(暖房設備)
51 ヒートポンプエアコン
52 蓄熱体ユニット
60 制御部
61 ヒートポンプ制御部
62 ダンパ開閉制御部(制御手段)
63 パターン記憶部(記憶部)
64 パターン設定部
70 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間と、
前記室内空間に対応して区画された複数の床下空間と、
前記複数の床下空間のうちの少なくとも1つの床下空間内に配置される暖房設備と、
前記床下空間と外部とを仕切る外周壁に設けられ、外気を前記床下空間に取り入れるための床下吸気口と、
前記床下空間と前記室内空間とを仕切る床部材に設けられ、前記床下空間から空気を前記室内空間内へ取り入れるための床吹き出し口と、
前記室内空間と外部とを仕切る壁部材に設けられ、前記室内空間内の空気を外部に排気させるための排気口と、
前記複数の床下空間を仕切る床下壁に設けられ、前記床下空間同士で空気を流通させるための通気口と、
前記通気口に配置され、当該通気口を開閉する開閉装置と、
暖房対象とされる室内空間の配置に応じて定められる暖房運転パターンに基づき、前記開閉装置の開閉状態を制御すると共に換気ルートを設定する制御手段と、
を備えることを特徴とする床下暖房住宅。
【請求項2】
前記室内空間は、前記床吹き出し口を具備する第1室内空間と、前記床吹き出し口を具備しない第2室内空間とを含み、
前記第1室内空間は、前記床吹き出し口から供給される暖気と、前記床下空間からの前記床部材を通した輻射熱とで暖房され、
前記第2室内空間は、前記床下空間からの前記床部材を通した輻射熱で暖房される、
ことを特徴とする請求項1に記載の床下暖房住宅。
【請求項3】
前記排気口に配置され、24時間連続運転される換気扇をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の床下暖房住宅。
【請求項4】
前記暖房設備が、温風吹き出し型の暖房設備であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の床下暖房住宅。
【請求項5】
室内空間と、前記室内空間に対応して区画された複数の床下空間と、前記床下空間と外部とを仕切る外周壁に設けられ、外気を前記床下空間に取り入れるための床下吸気口と、前記床下空間と前記室内空間とを仕切る床部材に設けられ、前記床下空間から空気を前記室内空間内へ取り入れるための床吹き出し口と、前記室内空間と外部とを仕切る壁部材に設けられ、前記室内空間内の空気を外部に排気させるための排気口と、前記複数の床下空間を仕切る床下壁に設けられ、前記床下空間同士で空気を流通させるための通気口と、を備えた住宅に適用される床下暖房システムであって、
前記複数の床下空間のうちの少なくとも1つの床下空間内に配置される暖房設備と、
前記通気口に配置され、当該通気口を開閉する開閉装置と、
暖房対象とされる室内空間の配置に応じて定められる複数の暖房運転パターンを記憶する記憶部と、
前記複数の暖房運転パターンのいずれかの選択操作を受け付ける操作部と、
前記操作部により選択された暖房運転パターンに基づき、前記開閉装置の開閉状態を制御すると共に換気ルートを設定する制御手段と、
を備えることを特徴とする床下暖房システム。
【請求項6】
前記暖房運転パターンが、第1パターンから、これとは異なる第2パターンに変更される場合において、
前記制御手段は、前記第1パターンにおいて暖房対象とされていた室内空間に対応する第1床下空間の暖気が、前記第1パターンにおいて暖房対象とされず前記第2パターンにおいて暖房対象とされる第2床下空間へ受け渡されるよう、前記開閉装置の開閉状態を制御することを特徴とする請求項5に記載の床下暖房システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−140755(P2012−140755A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292224(P2010−292224)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】