説明

廃タイヤ連続燃焼炉

【課題】廃タイヤの連続燃焼炉及び該燃焼炉を用いた廃タイヤの処理方法を提供する。
【解決手段】廃タイヤ乾留燃焼炉に廃タイヤを投入して廃タイヤを処理する方法であって、廃タイヤをトレイに載せて乾留炉内に送り込む工程、廃タイヤを乾留し、炭化物とスチール線を分離すると共に、炭化物をトレイから落下させる工程、(3)トレイ上の残渣(スチール線)を回収する工程、を含むことを特徴とする廃タイヤの処理方法、及び廃タイヤを乾留式連続燃焼により処理する装置であって、乾留装置本体と、該本体の上部に配置された廃タイヤ投入部と、その下部に位置する廃タイヤ乾留部と、乾留部の下に配置されたトレイ回収部、炭化物燃焼部、及び焼却灰取り出し部とを有することを特徴とする廃タイヤの処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃タイヤの連続燃焼炉に関するものであり、更に詳しくは、乾留装置本体に、廃タイヤ投入部と、廃タイヤ乾留部と、トレイ回収部、炭化物燃焼部及び焼却灰取り出し部とを特定の配置形態で設置して構成される乾留式連続燃焼による廃タイヤ処理装置であって、廃タイヤの丸ごと連続投入、炭化物と残渣(スチール線)の完全分離、炭化物の完全燃焼と乾留熱源としての高効率活用、スチール線の酸化の防止とそのリサイクル化及び廃タイヤの連続処理を連続運転で高効率に実施することを可能とする、廃タイヤの乾留式連続燃焼処理方法及びその装置に関するものである。本発明は、廃タイヤを連続燃焼し、その際、発生するスチール線をリサイクル可能にすると共に、発生ガスを、金属の溶解用などの適宜の熱源に用いることを可能にする、廃タイヤのサーマルリサイクル技術に関する新技術・新製品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
廃タイヤの乾留燃焼には、大別して連続方式とバッチ式がある。従来、これらの方法について種々の方法が提案されているが、実用化されている方法について述べると、連続方式の乾留炉は、ロータリーキルンなどを用いた大量処理用として位置づけられる。この方式では、廃タイヤ中の、乾留ガス、タイヤ中のスチール分、及び炭化した乾留残渣(ここでは、炭化物と呼ぶ)が連続的に分離できる。乾留ガスは、燃料として用いることができ、分離されたスチール分の酸化も僅かで、上質となる。
【0003】
但し、ロータリーキルンでは、炭化物は、乾留と同時に燃焼させることができないので、廃タイヤからの熱エネルギー取得量が少なくなる。また、炭素分は、活性炭などに利用されることになるが、廃タイヤは、炭素以外の元素も多量に含むため、良質の活性炭は得られにくく、その処分が問題となる。更に、装置が大型化するので、発電やボイラーには向いているが、金属の溶解用や小型ボイラーなどでは過大装置となる。更に、タイヤを予め切断チップ化する必要もある。
【0004】
一方、バッチ式の乾留炉の多くは、乾留炉中に廃タイヤを詰め込み、空気を送り込んで廃タイヤを不完全燃焼させ、その熱でゴムを分解し、乾留ガスを発生させる方式が採用されている。装置の構成は、簡単で、小型化も可能であり、炭化物の燃焼も同時に行える。
【0005】
しかしながら、乾留後、炉内炭化物に空気を送り込んで、熾き火燃焼させ、炭化物を灰化させるが、この時の熾き火燃焼が高温となるため、スチール分の殆どが酸化して、スチールのリサイクルができない。また、この酸化したスチール分は、焼却灰量を増大させるばかりか、灰中の炭化物の完全な燃焼を妨げるため、焼却灰中に多くの未燃物が残る場合もあり、焼却灰を埋め立てに廃却するには、問題となる場合もある。また、溶解したスチールは、炉床などに付着して耐火物を損傷する。
【0006】
更に、バッチ式の乾留炉の場合、詰め込んだ廃タイヤの下部に着火し、徐々に上方へ燃え移ることになり、乾留も下部から上部へ進行する。従って、炉内温度も下部から上方へ向かって上昇することになり、炉内の定点の温度は経時的に変化する。また、この変化は乾留の進行程度によって変化するのみならず、炉内下部で炭化、灰化が進むと上部に詰め込んだタイヤの重みで崩れることになるので、温度の経時変化は更に複雑となる。従って、乾留炉内の定点温度測定を行って、それを基に乾留空気の送風量を変え、乾留ガス生成量を制御する場合、定点温度が経時的に変化するので、精度の高いガス生成量を制御することが困難となる。従って、乾留ガスを利用した金属溶解炉などでは、定温での制御を必要とするので、ガス生成量制御が新たな課題となる。もちろん、バッチ式の乾留炉では、処理がバッチであるため、長時間の連続運転ができず、自動化も困難で、人手に頼ることが多く燃焼コストも高くなる。
【0007】
廃タイヤの乾留燃焼処理に関する先行技術としては、多数の事例が報告されており、枚挙にいとまがないが、ここで、具体的な事例を幾つか例示してみると、例えば、乾留炉内に被燃焼物の燃焼を助成する活性バイオ物質を供給する手段を備えたことを特徴とする廃タイヤの燃焼装置が提案されている(特許文献1)。また、乾留して得た廃タイヤ乾留チャー中の酸化亜鉛を還元ガスによって亜鉛に還元し、この亜鉛を蒸発させることからなる廃タイヤ乾留チャーの亜鉛除去方法が提案されている(特許文献2)。
【0008】
また、スチールを含む廃タイヤを乾留して炭化物とスチールを容易に分離できる乾留式燃焼炉において、乾留炉の炉床下に複数の火格子を上下に回動可能に並設した乾留式燃焼装置が提案されている(特許文献3)。更に、その他にも、廃タイヤ等の乾留処理装置(特許文献4)、乾留式ガス化燃焼炉(特許文献5)、廃タイヤ焼却ボイラ(特許文献6)、乾留炉と、廃タイヤを熱分解可能な乾留熱を打ち込み可能にする加熱装置とを有する廃タイヤ処理器(特許文献7)、第1燃焼炉と第2燃焼炉とを有し、第1燃焼炉に、原料燃焼室の底部で原料をその原料層の下部から直火によって略450〜600℃で燃焼させる燃焼装置が設けられている廃タイヤ等乾留炭化装置(特許文献8)、等が提案されている。
【0009】
このように、従来、廃タイヤを乾留燃焼により処理する技術については、数多くの先行技術が報告されているが、スチール線を酸化させないで取り出し、リサイクル可能にすること、炭化物を完全燃焼させ、焼却灰中に鉄酸化物が残ることなく、焼却灰を最小量に抑えて、しかも、これらの処理を連続運転で高効率に行うことを実現できる廃タイヤの連続的処理技術は未だ確立されていないのが実情であり、当技術分野においては、小規模の連続廃タイヤ乾留燃焼装置により、廃タイヤからスチール線を酸化させずに分離、回収して、リサイクル化することが可能な、廃タイヤの新しいサーマルリサイクル技術を開発することが強く要請されていた。
【0010】
【特許文献1】特開平7−19435号公報
【特許文献2】特開平8−48511号公報
【特許文献3】特開平8−94044号公報
【特許文献4】特開平8−104879号公報
【特許文献5】特開平11−270820号公報
【特許文献6】特開2003−4217号公報
【特許文献7】特開2003−65524号公報
【特許文献8】特開2003−176483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上述の廃タイヤの新しいサーマルリサイクル技術を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、乾留装置本体に、廃タイヤ投入部と、廃タイヤ乾留部と、トレイ回収部、炭化物燃焼部及び焼却灰取り出し部とを特定の配置形態で配設して構成した新しい乾留式連続燃焼装置を使用することで所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、小規模装置による連続廃タイヤ乾留燃焼が可能で、酸化していないスチール線を連続的に取り出してリサイクル化することを実現できる新規廃タイヤサーマルリサイクル技術としての乾留式廃タイヤ連続燃焼方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
すなわち、本発明は、比較的小規模燃焼で、連続焼却が可能なこと、廃タイヤの切断などチップ化が不要で、タイヤ丸ごと乾留が可能なこと、乾留と同時にスチール線が連続的に分離でき、スチール線の完全なリサイクルが可能なこと、燃焼後の焼却灰中に鉄酸化物や未燃炭化物を含まず、焼却灰を最小量にすることができること、定点温度測定による乾留ガス生成量の制御が容易であること、を満たす廃タイヤ連続燃焼炉を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)廃タイヤ乾留燃焼炉に廃タイヤを投入して廃タイヤを処理する方法であって、(a)廃タイヤをトレイに載せて乾留炉内に送り込む工程、(b)廃タイヤを乾留し、炭化物とスチール線を分離すると共に炭化物をトレイから落下させる工程、(c)トレイ上の残渣(スチール線)を回収する工程、を含むことを特徴とする廃タイヤの処理方法。
(2)廃タイヤを載せたトレイを乾留炉内に送り込んで、該廃タイヤ及びトレイを積み重ねた状態で乾留を行い、炭化した下部のタイヤを上方に積み込まれたタイヤの重みによって破砕することで炭化物とスチール線を分離する、前記(1)に記載の方法。
(3)炭化物を落下させる空隙を形成したトレイに廃タイヤを載せて乾留を行う、前記(1)に記載の方法。
(4)落下させた炭化物を燃焼させ、生じた熱風を廃タイヤの乾留熱源として利用する、前記(1)に記載の方法。
(5)スチール線を回収したトレイを乾留部からトレイ回収部へ落下又は移動させ、トレイを順次回収する、前記(1)に記載の方法。
(6)廃タイヤの投入及び乾留を連続運転により連続的に行う、前記(1)に記載の方法。
(7)廃タイヤを乾留式連続燃焼により処理する装置であって、乾留装置本体と、該本体の上部に配置された廃タイヤ投入部と、その下部に位置する廃タイヤ乾留部と、乾留部の下に配置されたトレイ回収部、炭化物燃焼部、及び焼却灰取り出し部とを有することを特徴とする廃タイヤの処理装置。
(8)廃タイヤをトレイに載せて乾留炉内に投入する投入手段を有する、前記(7)に記載の装置。
(9)トレイが炭化物を落下させる空隙を有する、前記(7)に記載の装置。
(10)乾留炉内に投入されたトレイを固定するためのストッパー手段を有する、前記(7)に記載の装置。
(11)トレイ回収部からトレイを炉外に押し出すための押出し手段を有する、前記(7)に記載の装置。
(12)トレイを乾留部から所定のガイドに沿って落下又は移動させるための案内手段を炉内に配置した、前記(7)に記載の装置。
【0014】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、廃タイヤ乾留燃焼炉に廃タイヤを投入して廃タイヤを処理する方法であって、廃タイヤをトレイに載せて乾留炉内に送り込む工程、廃タイヤを乾留し、炭化物とスチール線を分離すると共に炭化物をトレイから落下させる工程、トレイ上の残渣(スチール線)を回収する工程、を含む廃タイヤの処理方法及びその処理装置の点に特徴を有するものである。
【0015】
本発明では、上記廃タイヤの処理方法において、廃タイヤを載せたトレイを乾留炉内に送り込んで、該廃タイヤ及びトレイを積み重ねた状態で乾留を行い、炭化した下部のタイヤを上方に積み込まれたタイヤの重みによって破砕することで炭化物とスチール線を分離すること、また、その場合、放射状に配置させたリブを有するトレイ等の炭化物を落下させる空隙を形成したトレイに廃タイヤを載せて乾留を行うこと、が好ましい実施の態様として例示される。上記トレイとしては、放射状に配置させたリブを有するトレイに制限されるものではなく、これと同等ないし類似の機能を有するものであればその種類、形状及び構造に制限されることなく同様に使用することができる。
【0016】
次に、本発明では、上記処理方法において、廃タイヤを乾留し、炭化物とスチール線を分離すると共に、炭化物をトレイから落下させ、落下させた炭化物を燃焼させ、生じた熱風を廃タイヤの乾留熱源として利用すること、スチール線を回収したトレイを乾留部からトレイ回収部へ落下(移動)させ、トレイを順次回収すること、また、上記処理方法において、廃タイヤの投入及び乾留を連続運転により連続的に行うこと、が好適な方法として例示される。
【0017】
本発明において、上記乾留炉の熱源は、特に制限されるものではなく、例えば、紙、木材、炭、等、適宜の燃料を使用することができる。廃タイヤを乾留、燃焼させる加熱温度条件としては、400〜500℃が好ましく、スケールの著しい酸化が起らない温度範囲である。発生する乾留ガス量は、この乾留温度で決まる。また、廃タイヤの投入、トレイの落下(移動)、廃タイヤを積み重ねるトレイの段数、トレイの押出し及び回収、連続運転の処理速度等の条件設定については、乾留燃焼の状況に応じて好適な範囲に任意に設定及び変更することが可能であり、それらの条件については特に制限されるものではない。
【0018】
次に、上記処理方法で使用される本発明の廃タイヤの処理装置について説明する。本発明の廃タイヤの乾留式連続燃焼装置は、基本的には、乾留装置本体と、該本体の上部に配置された廃タイヤ投入部と、その下部に位置する廃タイヤ乾留部と、該乾留部の下に配置されたトレイ回収部、炭化物燃焼部、及び焼却灰取り出し部とから構成される。
【0019】
上記廃タイヤ投入部には、廃タイヤをトレイに載せて乾留炉内に投入する廃タイヤの投入手段が設置される。上記トレイとしては、好適には、例えば、放射状に配置されたリブを有するもの、あるいはそれと同等ないし類似の機能を有するものが使用されるが、これらに制限されるものではなく、炭化物を落下させることが可能な任意の形状及び構造の空隙を形成したものが使用される。また、上記乾留部には、乾留炉内に投入されたトレイを固定するためのストッパー手段が配置される。該ストッパー手段は、乾留炉内に投入されたトレイを固定し、あるいは固定を解除してトレイを落下(移動)させるため操作手段として使用される。
【0020】
上記乾留部には、トレイを炉壁等のガイドに沿って安定に落下(移動)させるための、上記トレイと連携して作動する任意の形態の案内棒等の案内手段が炉内に配置され、トレイを、該案内棒に沿って適宜落下(移動)させることができる。また、上記乾留部の下部に位置するトレイ回収部には、トレイを炉外に押し出すための、任意の形態の押出し手段が配置され、該押出し手段により使用済みのトレイを順次炉外に押出し、回収することができる。上述の各処理工程で使用される各処理手段の具体的構成は、特に制限されるものではなく、同様の機能を有する範囲でその形状、構造及び構成を任意に設計し、作製することができる。
【0021】
本発明の連続燃焼炉では、乾留燃焼炉に、特定の廃タイヤ投入手段、トレイ落下(移動)手段、トレイ回収手段、炭化物落下手段、及び残渣(スチール線)回収手段を特定の配置形態で配設することにより、炭化物とスチール線の確実な分離、炭化物の完全燃焼、酸化されないリサイクル可能なスチール線の回収、それらの連続運転による高効率の廃タイヤ処理を実現することが可能であり、本発明は、それによって、廃タイヤの新しいサーマルリサイクル技術を提供することを実現可能にしたものである。
【0022】
本発明では、特定のトレイに廃タイヤを乗せ、そのトレイを連続的に乾留炉に外界と遮断しながら挿入し、乾留炉内に積み重ね充填する。積み重ねられたタイヤは、炉内下部からの熱風によって乾留される。乾留によってタイヤの炭化が進行すると、積み重ねられたタイヤとトレイの自重によって、炭化物が破砕され、スチール線と分離する。タイヤ中のスチール線は、トレッドワイヤー及びビードワイヤー共に、タイヤの円周上に配列されており、また、タイヤは丸ごと投入であるので、ワイヤーが短く切断されていることはない。
【0023】
従って、例えば、トレイのリブが放射状に配置されていれば、ワイヤーは、トレイ上に残り、破砕された炭化物は、更に下部に向かって落下する。ここで、ワイヤーのみを乗せたトレイを引き出すことで、ワイヤーが酸化する前に取り出すことが可能となる。また、落下した炭化物は、ワイヤーが残っていないので、空気を送り込むことで、完全燃焼が容易となる。この時、発生する燃焼熱は、タイヤの乾留用熱源として用いることができる。
【0024】
ここで、トレイを引き出すのに、タイヤが積み重なっているので、特別な工夫が必要となるが、本発明では、例えば、ピン機構を使って、トレイを炉下部に向かって一個ずつ落下させ、トレイ上に残留している炭化物を篩い落とすと共に、トレイの引き出しを可能にすることが好適な方法として例示される。
【0025】
以上のような構成を採用することで、廃タイヤの丸ごと投入で、タイヤ切断コストも要せず、連続投入・連続燃焼の連続運転、酸化しないスチール線の取り出し、鉄酸化物に邪魔されない炭化物の完全燃焼、発生乾留ガス量の容易な制御等を達成することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)上述したように、本発明では、小規模の連続廃タイヤ乾留燃焼が可能である。
(2)また、タイヤ丸ごと燃焼であるので、チップ化などタイヤ切断の手間やコストを要しない。
(3)バッチ式では不可能な乾留後のスチール線の連続取り出しが可能であり、酸化していないスチール線を取り出すことができる。
(4)スチール線を分離した後、乾留残渣(炭化物)を燃焼するので、スチール線が炭化物燃焼を妨げることなく、炭化物の完全燃焼が実現できる。
(5)焼却灰中にも鉄酸化物などが残らず、焼却灰を最小量に抑えることができる。
(6)連続運転中は、炉内の燃焼状態は定常状態が保たれるので、定点の温度制御で発生ガス量の制御が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
次に、本発明の「乾留式廃タイヤ連続燃焼炉」の好適な実施例について、図面に基づき説明する。図1に、本発明の連続乾留装置の断面を示す。1は、ほぼ筒状の乾留装置本体である。また、本体は上部より、タイヤ連続投入装置部2、タイヤ乾留部3、トレイ回収部4、炭化物燃焼部(熾き火燃焼部)5、焼却灰取り出し部6より構成される。以下に順を追って、装置の構成と操作について説明する。
【0029】
開閉扉9、シャッター10及び11を完全に開く。続いて円盤状トレイ7にタイヤ8を載せ、これをタイヤ乾留部3中に積み重ねる。積み重ねた後、開閉扉9及びシャッター10、11を閉じる。次に、熾き火燃焼部のロストル12上に、紙、木材、炭等の着火物に着火し、同時に送風管13から空気を送って、着火物の燃焼を促進すると共に、タイヤ乾留部3の、積み重ねたタイヤの乾留を下部より開始する。
【0030】
乾留が進行し、炭化した下部のタイヤは、上方に積み込まれたタイヤの重みによって破砕され、炭化物とスチール線が分離する。殆どのスチールラジアルタイヤでは、トレッド部のスチール線は、長さが数十センチで、しかもタイヤの円周上に配列されている。従って、破砕された後のスチール線は、円周方向に沿ってトレイ上に落下する。この時、トレイのリブが放射状に配列されていれば、炭化物は、トレイをすり抜け下方へ落下するが、スチール線は、トレイ上に残る。タイヤがチップ化等で切断されていないので、短いスチール線は含まれず、従って、短いスチール線が炭化物と一緒にトレイをすり抜け落下することはない。
【0031】
また、ビードワイヤーは、タイヤ中にリング上に入っており、分離後もリング形状を保ったまま残るので、トレイをすり抜け落下することはない。以上のように、炭化物を分離したトレッドワイヤー及びビードワイヤーを載せたトレイは、タイヤ乾留部3の最下層14部分に残る。次に、ストッパーピン15を引き抜き、トレイ一個のみをトレイ回収部4のロストル16上に落下させる。この落下法については後述する。落ちたトレイは、落下の衝撃によって付着していた炭化物を払うことになる。次に、トレイがロストル上に落ちたなら、仕切り板17を明け、プッシャー18によって、落下トレイをトレイ回収室19に押し出す。押し出し後は、プッシャーを元の位置に戻すと共に、仕切り板17を閉じて外部から遮断する。回収したトレイは、開閉扉20を明ければ、トレイとスチール線を取り出すことができる。
【0032】
前述の落下した炭化物は、目の粗いロストル16を素通りし、目の細かいロストル12上に堆積する。この堆積した炭化物21は、着火材と一緒に送風管13から空気を送り込みながら燃焼させ、生じた熱風は、タイヤ乾留の熱源とする。更に、焼却灰22は、焼却灰取り出し部6の炉床に堆積し、開閉扉23を明けて取り出す。
【0033】
連続燃焼のためには、タイヤを連続して投入することが必要である。そこで、タイヤを供給するための気密室24及び25を設け、開閉扉9、シャッター10及び11を交互に開平しながら、外気と遮断して、タイヤを供給する。なお、気密室25より乾留部3への落下の衝撃によって、乾留部3底部の炭化物がより細かく破砕される効果もある。
【0034】
乾留ガスの発生量制御は、トレイ取り出し部4の円周上に取り付けた熱電対26によって行う。連続運転の定常状態では、従来のバッチ式のタイヤ乾留進行度合いによる積み崩れや、炉下部から上部へ向かっての乾留の進行がなく、よって、本発明では、炉内温度分布の経時変化はないので、熱電対26の位置での定点温度制御で、高精度のガス量発生制御が可能となる。具体的には、温度制御は、送風管13からの送風量を制御することによって、熱電対26の温度を制御することが可能である。
【0035】
ちなみに、この位置での温度は、500℃程度が適当であり、乾留部3の乾留が効率よく進行すると共に、スチール線は、この温度では、まっすぐ剛性を保っており、酸化、よじれ、からみもなく、回収が容易である。発生したガスは、煙道27より外部へ導かれ、金属溶解やボイラー等に利用することができる。
【0036】
次に、乾留部よりトレイを一個ずつ落下させる方法について詳述する。図2に、トレイの一例を示す。中心部のハブ28より、リブ29が放射状に出ている。リブは外部リング30に接続されている。このトレイは、二種類用意されている。すなわち、一種は外部リングに三個のa部及びb部に切り欠きを持つもの(A)、他の一種はa部とc部に切り欠きを持つもの(B)である。
【0037】
このA、B両種のうちいずれもaの切り欠きは、乾留炉内で落下する際のガイドとなるもので、落下時は、トレイの切り欠きaは、乾留炉内に取り付けられた案内棒に沿って落下する。この案内棒に沿った落下によって、トレイがバランスを崩してタイヤをトレイから滑り落とすことや、炉内で回転することを防いでいる。
【0038】
次に、図1のストッパーピン15は、炉壁円周上六個所に取り付けられており、そのうち3個所(A種用ピン)のピン位置が、図2のトレイ上のb位置に、残りの3個所(B種用ピン)のピン位置がトレイ上のc位置に合致するよう取り付けられている。
【0039】
従って、A種用ピンが炉内に付き出しているときは、A種のトレイは通過できるが、B種のトレイは通過できない。また、B種用ピンが炉内につきだしているときは、B種のトレイは通過できるが、A種のトレイは通過できない。よって、乾留炉内に、A種及びB種のトレイを交互に積んでおき、ストッパーピンのA種用ピン及びB種用ピンの出し入れを交互に行えば、乾留部内に積層されているトレイを一個ずつ、トレイ回収部に落下させることができる。上記ストッパーピンの出し入れはもちろん、タイヤの装填、スチール線の回収、ガス発生の制御は自動で行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上詳述したように、本発明は、廃タイヤ連続燃焼炉に係るものであり、本発明により、小規模の連続廃タイヤ乾留燃焼が可能で、廃タイヤの連続投入、乾留後のスチール線の連続取り出しが可能であり、酸化していないスチール線を分離、回収して、再利用が可能な、廃タイヤの処理方法及びその装置を提供することができる。本発明では、焼却灰中に鉄酸化物などが残らず、焼却灰を最小量に抑えることが可能であり、また、連続運転中は、炭化物の完全燃焼と共に、炉内の燃焼状態は定常状態が保たれるので、定点の温度制御で発生ガス量の制御が容易となる利点がある。本発明は、発生するスチール線をリサイクル可能にすると共に、発生ガスを金属の溶解用などの適宜の熱源に用いることを可能にする廃タイヤのサーマルリサイクル技術に関する新技術・新製品を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の連続乾留装置の断面図を示す。
【図2】トレイの一例を示す。
【符号の説明】
【0042】
1 乾留装置本体
2 タイヤ連続投入装置部
3 タイヤ乾留部
4 トレイ回収部
5 炭化物燃焼部
6 焼却灰取り出し部
7 円盤状トレイ
8 タイヤ
9 開閉扉
10 シャッター
11 シャッター
12 ロストル
13 送風管
14 最下層
15 ストッパーピン
16 ロストル
17 仕切り板
18 プッシャー
19 トレイ回収室
20 開閉扉
21 炭化物
22 焼却灰
23 開閉扉
24 気密室
25 気密室
26 熱電対
27 煙道
28 ハブ
29 リブ
30 外部リング
a 切り欠き
b 切り欠き
c 切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃タイヤ乾留燃焼炉に廃タイヤを投入して廃タイヤを処理する方法であって、(1)廃タイヤをトレイに載せて乾留炉内に送り込む工程、(2)廃タイヤを乾留し、炭化物とスチール線を分離すると共に炭化物をトレイから落下させる工程、(3)トレイ上の残渣(スチール線)を回収する工程、を含むことを特徴とする廃タイヤの処理方法。
【請求項2】
廃タイヤを載せたトレイを乾留炉内に送り込んで、該廃タイヤ及びトレイを積み重ねた状態で乾留を行い、炭化した下部のタイヤを上方に積み込まれたタイヤの重みによって破砕することで炭化物とスチール線を分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炭化物を落下させる空隙を形成したトレイに廃タイヤを載せて乾留を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
落下させた炭化物を燃焼させ、生じた熱風を廃タイヤの乾留熱源として利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
スチール線を回収したトレイを乾留部からトレイ回収部へ落下又は移動させ、トレイを順次回収する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
廃タイヤの投入及び乾留を連続運転により連続的に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
廃タイヤを乾留式連続燃焼により処理する装置であって、乾留装置本体と、該本体の上部に配置された廃タイヤ投入部と、その下部に位置する廃タイヤ乾留部と、乾留部の下に配置されたトレイ回収部、炭化物燃焼部、及び焼却灰取り出し部とを有することを特徴とする廃タイヤの処理装置。
【請求項8】
廃タイヤをトレイに載せて乾留炉内に投入する投入手段を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
トレイが炭化物を落下させる空隙を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
乾留炉内に投入されたトレイを固定するためのストッパー手段を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
トレイ回収部からトレイを炉外に押し出すための押出し手段を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
トレイを乾留部から所定のガイドに沿って落下又は移動させるための案内手段を炉内に配置した、請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−139363(P2007−139363A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336417(P2005−336417)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度、経済産業省「中小企業地域新生コンソーシアム研究開発事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】