説明

廃棄フィルムのリサイクル方法およびそれから製造される製品

本発明は、フィルム材料のリサイクルプロセスに関し、詳しくはラベル用の使用済み剥離ライナーを回収し、その使用済材料から新た剥離ライナー原料を構築するプロセスに関する。使用済みフィルムを使用するために、フィルムに固有粘度を増加させるためのプロセスを施す。更に、黄変を隠すために、着色剤を加えてもよい。ある実施態様において、多層複合フィルムが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム材料のリサイクルプロセスに関し、詳しくは、ラベル用の使用済み剥離ライナーを回収し、その使用済材料から新た剥離ライナー原料を構築するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのラベルなどの積層体は、製品として又は他の基材として適用する前に、最初に剥離ライナー上に配置される。剥離ライナーはポリマーフィルムから作ることも出来る。例えば、ある実施態様において、剥離ライナーはシリコン被覆ポリエステルフィルムから成る。そのようなシリコン被覆フィルムは、ラベル、感圧テープ、化粧板、転写テープ等の剥離ライナーとして一般的に使用される。基材ポリマーフィルムの上のシリコン被覆は、使用前に、積層体の接着面をフィルムから容易に取り除かれるようにする。
【0003】
ポリエステルフィルム等のポリマーフィルムから作られる剥離ライナーは、商業的に成功しており、多量に使用されている。残念ながら、ポリマーフィルムから作られる剥離ライナーは、一般的に1回使用されたらば廃棄される。今まで、使用済みのライナー材料(used liner material)の商業的なリサイクルは実在しない。それどころか、使用済み剥離ライナー(spent release liner)のほとんどはゴミとして埋め立て地に捨てられる。単独使用のみで廃棄処分される使用済み剥離ライナーは、年間3500万ポンドを超えると見積もられる。剥離ライナーは、一時的にラベル又は積層体に保持されて使用される付帯物であって、それ自身が最終製品中に取り込まれている物ではないので、上記の廃棄量は非常に問題である。
【0004】
使用済み剥離ライナーのリサイクル方法や再使用法の発展が当分野で必要とされているが、使用済み剥離ライナーの再使用問題の解決を難しくする種々の障害が存在しする.例えば、使用済み剥離ライナーは、特にポリエステルフィルムから作られたライナーは、再加工されフィルム製品に再形成するにはあまり適さない。剥離ライナー中に含まれるポリエステルは、例えば、質が低下して光学的および機械的特性が劣る傾向にあるため、多量に原料として再使用することは難しい。例えば、ポリエステルフィルムは水分を吸収する傾向があり、分子量の実質的低下をもたらし、それは固有粘度の低下によって示される。ポリマーの分子量がある程度低下すると、市販の装置によりフィルムを再形成することがもはや出来なくなる。更に、再加工ポリエステルは顕著な黄変化を被る傾向があり、得られたフィルムのヘーズは消費者にとって望ましくないほど増加する。
【0005】
使用済み剥離ライナーをリサイクルするにおいての別の問題は、一旦使用した材料を回収することが出来るかである。例えば、一線を超えて拡大した供給プロセスは、材料を回収することを困難にする。例えば、ポリエステルフィルムは通常フィルム製造メーカーによって製造され、ついで積層メーカーに送られる。積層メーカーはフィルムに表面材料を張り付ける。積層体は、次いで印刷会社および変換会社に送られ、剥離ライナーの上にラベルを印刷しダイカットする。そして、印刷会社および変換会社から、積層体は、元のフィルム製造メーカーとは何の関係も持たないエンドユーザーに送られる。エンドユーザーは剥離ライナーからラベルを取り外し、ライナーは埋め立て地に廃棄されるか、スクラップ材として発展途上国に売られる。フィルム製造メーカーは使用済み剥離ライナーを回収し、原料として利用したいと思っても、使用済み剥離ライナーは、通常他の産業廃棄物やスクラップと一緒になってしまっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の観点から、上記の問題や欠点を克服する使用済み剥離ライナーを回収するためのプロセス及びライナーの再利用プロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、大まかに、新しいフィルム、特に新しい剥離ライナーを製造するために使用されるための、使用済み剥離ライナーの回収およびライナーのリサイクルのためのプロセスに関する。本発明は、更に、少なくとも一部が使用済みライナー原料から形成されている剥離ライナー製品に関する。ある実施態様において、例えば、剥離ライナー製品は、使用済みライナー原料を中間層に含有し、フィルムに特徴的な外観を付与したり、フィルムが既に一度被っている黄変などを隠すために更に着色剤を含有した多層フィルムから成っていてもよい。
【0008】
ある実施態様において、例えば、本発明のプロセスは、最初に使用済みライナー原料をチップ状に変換する工程を含む。ここで、「使用済みライナー原料(spent liner stock)」とは、積層材と組合せて形成される剥離ライナーフィルムである。使用済みライナー原料は、更に詳しくは、積層材を取り外した後の剥離ライナーフィルムである。それ故、使用済みライナー原料は、装置立上げ時に生じるフィルム、ビーズやトリミングしたフィルム及び不合格フィルムなどのフィルム製造工程中に蓄積するスクラップに代表されるような「再生」ライナー原料とは区別される。
【0009】
使用済みライナー原料を一旦チップ形状に変換し、ライナー原料粒子の固有粘度を、約0.58以上、好ましくは約0.59以上、より好ましくは約0.60以上に増加させる。例えば、ある実施態様において、ライナー原料チップ(liner stock chip)の固有粘度を約0.58〜0.7、好ましくは約0.6〜0.64に増加させる。ある実施態様において、例えば、ライナー原料チップの固有粘度を約0.61〜0.63に増加させる。ライナー原料粒子(liner stock particle)の固有粘度を増加させる方法は、特定の方法による。例えば、ある実施態様において、固有粘度は固相重合法により増加させる。また、別の実施態様において、鎖延長剤ライナー原料チップに添加して固有粘度を増加させる。
【0010】
本発明に従えば、使用済みライナー原料に着色剤を添加し、使用済みライナー原料を加熱し、フィルムとして押出す。得られるフィルムは、例えば、新しいライナー原料製品として使用してもよい。その際、フィルムは積層材のための剥離ライナー機能を有するように設計された剥離表面を有してもよい。
【0011】
上述のように、着色剤がライナー原料にそのまま添加されてフィルムが製造される。着色剤は後でフィルムの黄変を隠せるような好ましい色を有する。ある実施態様において、例えば、着色剤は青色または緑色着色剤である。例えば、ある実施態様において、着色剤は顔料から成っていてもよく(分散体として含有される)、フィルムに約0.01〜1重量%の量で存在させてもよい。
【0012】
ある実施態様において、使用済みライナー原料から製造されたフィルムは、多層押出フィルムから成っていてもよい。多層フィルムは、少なくとも第1の外層と、第2の外層と、その間に配置される中間層とから成る。使用済みライナー原料は、全て中間層に含有される。
【0013】
ある実施態様において、例えば、多層フィルムの第1の外層および第2の外層は、未使用ポリエチレンテレフタレート等の未使用ポリマー材料から成る。一方、中間層は使用済みライナー原料と未使用または再生ポリエチレンテレフタレートとを組合せて成ってもよい。中間層は使用済みライナー原料を約1〜100重量%含んでいてもよい。例えば、中間層は、使用済みライナー原料を約20重量%以上、好ましくは約40重量%以上、より好ましくは約60重量%以上含んでもよい。
【0014】
本発明に従った多層フィルムのある実施態様において、第1の外層および第2の外層は、それぞれフィルムの重量の約5〜15%を構成する。中間層はフィルムの重量の約70〜90%を構成する。
【0015】
本発明のフィルムは、積層体用の剥離ライナーとしての機能するように構成される剥離面を含む。ある実施態様において、剥離面は、フィルムに剥離コーティング剤を塗布することにより形成される。例えば、剥離コーティング剤はシリコン塗布剤から成る。ある実施態様において、本発明の方法は更に、フィルムの剥離表面に積層材を付けて積層体を形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法は、特別な利点として、使用済みライナーは、本発明のプロセスで何回もリサイクルする事が出来る。特に、使用済みライナー原料は回収され、加工処理して固有粘度を増加させ、新しいライナー原料を製造するために使用される。同じく、繰返し回収され、加工され、ライナー原料製品を更に作ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に従ったプロセスの一実施態様を図示しているフローチャートの平面図。
【図2】発明に従って製造される多層フィルムの一実施態様の断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の他の特徴および要旨は、以下に詳細に記述する。当業者に対しベストモードを含む本発明の全ての開示および開示可能な内容は、添付の図面を含む以下の明細書に詳細に記載する。なお、本明細書および図面で繰返して使用される参照文字は、本発明の同一または類似の機構または要素を意図する。
【0019】
以下に示す本発明の説明は、本発明の例示の記載であって、より広い本発明の要旨がこれらの記載に限定されるわけではないと当業者に理解されるべきである。
【0020】
本発明は大まかに、ポリマー、特にポリエステルポリマーのリサイクルプロセスに関する。ある実施態様において、例えば、そのプロセスは、使用済み又は廃棄ポリエステルフィルムを回収し、ポリエステルフィルムの分子量を増加させ、使用済みフィルムを再加工して、新しいフィルム製品を製造することに関する。新しいフィルム製品の製造中、フィルムの使用前または使用中に生じるかもしれない欠陥や黄変を隠すために、着色剤を製品に添加することが出来る。
【0021】
ある実施態様において、例えば、本発明のプロセスは、特に使用済みライナー原料を回収することに関する。使用済みライナー原料は、ラベル等の積層材用の剥離層として使用されてもよい。使用済みライナー原料は、新しいライナー原料製品を作るために回収され、使用される。特別な利点として、本発明のプロセスは、何度も繰返して同じポリマーをリサイクルすることが出来る。このように、本発明のプロセスは、環境に優しく、固体廃棄物に入れられてしまうポリマーの廃棄量を顕著に低減するために使用できる。
【0022】
本発明は、回収された使用済みライナー原料から形成することが出来る複合フィルム製品にも関する。ある実施態様において、例えば、共押出により多層ポリエステルフィルムを形成できる。表面は剥離性能の働きを有するため、使用済みライナー含有量を高レベルにしても、外層に未使用の原料を使用することにより製品性能は保たれる。フィルムの中間層において、使用済みライナー原料は単独で用いても、他のポリマーと組合せて用いてもよい。積層材に剥離層を設けるために種々の塗布をフィルムに行うことが出来る。
【0023】
図1は、本発明に従ったプロセスの一実施態様を示す。図示するように、プロセスの第1の工程は、ユーザーから使用済みライナー原料(spent or waste liner stock)を回収することである。ある実施態様において、例えば、ライナー原料は、ラベル用剥離ライナーとして使用されてもよい。ライナー原料から一旦ラベルを取出し、例えば、飲料容器等の製品容器にラベルが貼付される。ラベルを一旦ライナー原料から取ると、ライナー原料は固体廃棄物として廃棄され、他の廃棄物と分離されない。
【0024】
本発明のある実施態様において、回収装置および/または回収プログラムは、他の廃棄物と著しく混入することなく使用済みライナー原料を回収するために、ライナー原料のユーザーの施設において実施される。例えば、ある実施態様において、回収装置は、再加工又は再使用のための使用済みライナー原料を回収するためのライナー原料のユーザーの施設において配置される。回収装置は、例えば、ラベルが取り外されたら自動的に使用済みのライナー原料を回収する装置から成っていてもよい。回収装置は、例えば、使用済みライナー原料で満たされた時は定期的に取り除かれ、空の回収装置に交換されるような容器から成っていてもよい。
【0025】
一旦、使用済みライナー原料を回収すると、使用済みフィルムはそのサイズを小さくし、使用済みライナー原料粒子またはチップ(spent liner stock particles or chips)を形成する。ある実施態様において、使用済みライナー原料は粉砕装置に供給され、ライナー原料をフレーク状に細かくする。通常、種々の好適な粉砕装置または切断装置が、ポリマーフィルムのサイズを小さくすることに使用される。
【0026】
更なる加工を行う前に、使用済みライナー原料粒子は、他の混入物質を除去する種々のプロセスに付されてもよい。例えば、ある実施態様において、使用済みライナー原料フレークは水溶液または非水溶液中で洗浄されてもよい。例えば、ある実施態様において、埃やその他のごみを取り除きフレークをきれいにするために、フレークを水または水に洗浄剤を加えた溶液で洗浄してもよい。
【0027】
別の実施態様において、接着剤被覆層および/または紙ラベルを除去することが出来る溶液で、フレークを洗浄してもよい。例えば、苛性ソーダを含む溶液などのアルカリ溶液でフレークを洗浄してもよい。他の実施態様において、炭化水素溶媒などの溶剤でフレークを洗浄してもよい。
【0028】
更なる工程として、または洗浄工程に代えて、使用済みライナー原料フレークを他の種々の不純物除去プロセス及び方法に付することも出来る。例えば、ある実施態様において、フレークを浮遊プロセス又は沈降プロセスに供給し、より重い金属物質などを取り除くことも出来る。他の実施態様において、フレークをサイクロン分級機に供給してより重い金属物質などを取り除いてもよく、また、静電気分離装置および/または磁力分離装置に供給して分離してもよい。
【0029】
しかしながら、ある実施態様において、使用済みライナー原料フレークの前処理や洗浄は必要無いことは、理解されるべきである。例えば、使用後に使用済みライナー原料を直ちに捕捉するような上述の回収装置を組込めば、汚染物質の混入を顕著に減少させることが出来る。
【0030】
図1に示すように、一旦、使用済みライナー原料は粉砕されてチップ又はフレークにする。ある実施態様において、フレークは必要であればペレット化される。特に、フレークは押出機に供給され、溶融し、ペレット形状のチップ等の異なる大きさを有する製品に変換される。しかしながら、チップのペレット化はある用途において必ずしも必要ではないことを理解すべきである。
【0031】
一旦使用済みライナー原料を粉砕してフレークにし、必要であればペレット化し、得られたチップに、ポリマーの分子量を増加させ、ポリマーの固有粘度を上昇させるプロセスが施される。一旦、ポリエステルフィルムを製造すると、例えば、フィルムが水を吸収する傾向がある。吸収された水は分子量の実質的低下要因となり、それ故固有粘度も実質的に低下する。固有粘度の低下は、更に、標準的なフィルム製造装置で溶融、再使用することを困難にする。それ故、使用済みライナー原料を回収して新しいライナー原料に変換するために、主として使用済みライナー原料の固有粘度を増加させる必要がある。
【0032】
例えば、回収された使用済みライナー原料の固有粘度は0.56未満である。本発明に従い、使用済みライナー原料の固有粘度は、ある実施態様において、約0.58よりも大きく、好ましくは約0.59よりも大きく、更に好ましくは約6.0よりも大きく増加させることが出来る。例えば、ある実施態様において、本発明の製造方法により、使用済みライナー原料チップまたはフレークの固有粘度は約0.58〜0.70の範囲、好ましくは約0.6〜0.64の範囲、更に好ましくは約0.61〜0.63の範囲に増加する。
【0033】
使用済みライナー原料チップの分子量および固有粘度を増加させるために、種々の異なる方法が使用できる。ある実施態様において、例えば、鎖延長剤をポリマーに添加してもよい。鎖延長剤としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から成る。鎖延長剤は、ポリマーの分子量および固有粘度を増加させるためにポリマー鎖中に導入する。ある実施態様において、例えば、鎖延長剤は、新しいフィルムの形成中に使用済みライナー原料チップに組合せる。鎖延長剤は、使用済みライナー原料チップに対し、約0.5重量%未満、好ましくは約0.1重量%未満の割合で添加する。例えば、ある実施態様において、鎖延長剤約0.01〜0.1重量を使用済みライナー原料チップと組合せる。
【0034】
別の実施態様において、ポリマーチップの固有粘度を固相重縮合法として知られる固相重合法を介して増加させる。固相重合法中に、使用済みライナー原料粒子またはチップがdevolatizer(脱揮発機)などの反応器に導入される。反応器内では、チップは加熱脱気される。ある実施態様において、不活性ガスを反応器に導入して不活性雰囲気下を維持する。チップは反応器内で重縮合が十分に生じるように所定の温度で所定時間維持される。特に、反応器内で、ポリマー中の触媒残渣が反応を生じさせ、それによりポリマーが重合する。反応中、水およびグリコールがポリマーから放出され、最終的に、ポリマーの分子量が増加する。
【0035】
ある実施態様において、例えば、約0.5〜5mbarの減圧下、約210〜230℃の温度で、反応器を約4〜8時間維持する。
【0036】
固相重合法については、例えば、米国特許第3586647号、米国特許第3657388号、米国特許第3969324号、米国特許第3953404号、米国特許第4092458号、米国特許第4165420号、米国特許第4255295号、米国特許第4532319号、米国特許第4755587号、米国特許第4876326号、米国特許第4977196号、米国特許第5225130号、米国特許第5407624号、米国特許第5408035号、米国特許第5449701号、米国特許第5955569号、米国特許第6056901号、米国特許第7358328各明細書に記載されており、参照により本発明で引用される。上記公報の中の幾つかのプロセスは、プレポリマーの分子量を直接増加させる方法もあれば、又、別のプロセスにおいて、プロセス中に同時にポリマーを溶融状態に変換する方法もある。本発明で使用する固相重合法は、しかしながら、チップを溶融するかどうか、又は、サイズや形状が大きく違うかどうかは関係なくポリマーチップの固有粘度を増加させる。
【0037】
ある実施態様において、使用済みライナー原料チップの固相重合は、先ずチップを予備加熱容器に導入し、チップの熱処理容器に搬送する前に予備加熱を行うことから始まる。予備加熱容器は、約0.1〜10mbarの減圧下で操作される。予備加熱容器内で、ポリマーチップは連続的な撹拌により撹拌されながら、約160〜180℃の温度に加熱される。
【0038】
ポリマーチップは予備加熱容器から熱処理容器に導入される。熱処理容器も又上記と同じ圧力の減圧に維持される。チップは、ポリマーの分子量が十分なレベルに増加するまで、熱処理容器内で約3〜10時間反応させる。
【0039】
図1に示すように、使用済みライナー原料チップの固有粘度を、望ましいレベルまで一旦増加させ、次いでチップ又は粒子は押出機に供給されてフィルムに形成される。例えポリマーの分子量および固有粘度が増加したとしても、使用済みポリマーは、新しいフィルムとして押出した際に、なお実質的に黄変している傾向にあり、ヘーズ特性も良好ではない。この点において、図1に示すように、フィルム形成中に、着色剤をポリマー粒子に添加する。具体的には着色剤は、得られるフィルム製品の性質に悪影響を及ぼさない範囲で、黄変フィルムをマスキング(隠蔽)出来るように選択される。それ故、着色剤を選択する際に考慮されるファクターは、フィルムに付与される特定の色を含むこと、フィルムが特定の色を示すのに必要な着色剤の添加量およびポリマーと着色剤との相溶性である。他の考慮すべきファクターとしては、着色剤の効果が、得られたフィルムの美学的な性質を有するか、それ故フィルムが消費者により好ましくなるかどうかである。
【0040】
着色剤の選択において、例えば、一般的に白色顔料および黒色含量は避ける。一方、より望ましい色は、黄色と混ぜて良好な色である。そのような色は、例えば、緑色、青色および赤色である。
【0041】
ある実施態様において、例えば、緑色または青色着色剤が、緑色に着色されたフィルムを製造するのに選択される。着色剤は、例えば、溶液または分散体の形状で押出プロセス中にポリマーと混合される。フィルム中に混合される好ましい着色剤は、ColorMatrix Corporation社から市販品として入手できる。
【0042】
フィルム形成中に使用済みライナー原料チップに添加する着色剤の添加量は、種々のファクターにより変化できる。ある実施態様において、着色剤の添加量は、得られるフィルムの重要の2%未満である。例えば、着色剤は、約0.01〜1重量%の量で添加することが出来る。
【0043】
ある実施態様において、使用済みライナー原料チップに着色剤を添加してもよく、その添加量は、得られたフィルムの黄変指数が約1.5未満、好ましくは約1.25未満、更に好ましくは約1未満となるに十分な量である。黄変指数はASTM D 1925に従って決定される。
【0044】
上述のように、ある実施態様において、緑色または青色着色剤を選択して緑色フィルムを製造してもよい。緑色フィルムの製造は種々の利点や利益をもたらす。例えば、緑色フィルムは、フィルムの環境に優しい性質を象徴する。特に、本発明のプロセスは、固形廃棄物処理に供給される廃棄物を減少する地球環境に優しい製品を製造する。緑色製品は、フィルムのこれらの属性の意図を消費者や使用者に伝える。
【0045】
フィルムを着色することは使用後にフィルムを再度回収した際に種々の利点や利益がある。フィルムの着色は、例えば、回収プロセス中に他の混入異物からフィルムを容易に分離できる。フィルムの色により、回収プロセス中に他の廃棄物と一緒にフィルムを廃棄することを防ぐことが出来る。
【0046】
結果的に得られる着色フィルムを提供するのに加え、着色剤は、更に種々の他の成分を含むことが出来る。例えば、着色剤は鎖延長剤、帯電防止剤、離型剤、UV安定剤などの他の添加剤を含むことが出来る。
【0047】
発明に従った新しいフィルム製品を形成するにおいて、フィルムはリサイクルされた使用済みライナー原料から全て作られていてもよく、又、リサイクルされた使用済みライナー原料と1つ以上の未使用ポリマーとを組合せて成っていてもよい。更に、フィルムは、単層フィルムであっても多層フィルムから成っていてもよい。
【0048】
本発明の方法は、種々の異なるポリマー材料に適用してもよい。例えば、本発明の方法は、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリカーボネート等から成る再生フィルムに適用してもよい。本発明において、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレート/イソフタレート等の共重合ポリエステル等のポリエステルから成る再生フィルムも適用できる。
【0049】
ある実施態様において、使用済みライナーチップは新しいライナー原料製品を形成するために使用される。新しいライナー原料製品は図2に示す多層フィルムから成っていてもよい。図2は、本発明に従った複合フィルム10の一実施態様の断面図の例を示す。複合フィルム10は、第1の外層フィルム層12及び第2の外層フィルム層16の間に配置される中間フィルム層14を含む。しかしながら、複合フィルム10は2層のみから成っていてもよく、又1層以上の中間層を含んでいてもよいと理解すべきである。本発明のある実施態様において、使用済みライナー原料は中間層14にのみ含まれる。特に、使用済みライナー原料チップの性質は多様であり、特に色、黄変およびヘーズに関して多様であるため、複合フィルムの中間層内に使用済みライナー原料を含ませることがフィルムの表面粗度を含む性状の変化を最小に出来る。
【0050】
個々の層構成は、個々の応用形態によって大きく異なるが、ある実施態様において、第1の外層12及び第2の外層16tは未使用ポリエステルポリマー等の未使用ポリマーから成る。外層12及び16の重量は、それぞれフィルムの重量の約5〜15重量%を占める。例えば、ある実施態様において、外層の重量は、それぞれフィルムの重量の約10〜12重量%を占める。
【0051】
一方、中間層の重量は、フィルムの重量の約70〜90重量%、好ましくは約75〜85重量%を占める。中間層14は、もっぱら使用済みライナー原料チップ又は使用済みライナー原料チップと他のポリマーとの組合せから成る。ある実施態様において、例えば、中間層14は、使用済みライナー原料約1〜100重量%、好ましくは約35〜55重量から成る。中間層14の残余の部分は、未使用ポリエステルポリマー又は再使用ポリエステルポリマーから成っていてもよい。
【0052】
本発明の複合フィルムを製造するために、ある実施態様において、各フィルム層を一緒に共押出しすることも出来る。例えば、各層に使用される各ポリマー又はポリマーブレンドを別々に溶融し、そして、鏡面回転キャストドラム上に、積層された単シートとして一緒に押出し、多層製膜フィルムを形成する。複合フィルムは急冷され、そして1方向以上に延伸され、複合フィルムに機械的強度および強靭性を付与する。複合フィルムは、例えば、一軸延伸または二軸延伸される。通常、延伸は、ポリエステルポリマーの二次転移温度からポリマーの軟化および溶融温度未満の間で生じる。必要であれば、延伸後に、複合フィルムを熱処理し、フィルムの結晶化によりポリエステルフィルム層の性質を「ロックイン」することも出来る。結晶化により、複合フィルムに安定性および優れた引張特性を付与する。そのようなフィルムの熱処理は通常、温度が約190〜240℃において行われる。例えば、ある実施態様において、複合フィルムは、約215〜約225℃の温度で約1〜20秒間、好ましくは約2〜10秒間熱に曝される。
【0053】
熱処理前のフィルムの延伸比は種々のファクターによる。一軸延伸の場合、フィルムは、一方向(長手方向またはそれと直角方向)に元の長さの約1〜4倍、好ましくは約3〜4倍に延伸される。二軸延伸の場合、フィルムは、垂直方向に元の長さの約1〜4倍、好ましくは約3〜4倍に延伸される
【0054】
フィルムの各層を共押出する場合、各層を構成するのに使用されるポリマー樹脂の固有粘度(IV)は約0.6〜約0.7である。例えば、各層に使用するポリマー樹脂の固有粘度(IV)は約0.61〜約0.63である。
【0055】
複合フィルムの最終的な厚さは、フィルムの製造法や最終用途などの種々のファクターや状況によって大きく変更できる。一般的に、例えば複合フィルムの厚さは約0.5〜約7ミル又はそれ以上である。ある特定の実施態様において、複合フィルムの厚さは約0.8〜約2ミル、好ましくは約0.8〜約1.8ミルである。上記の実施態様において、中間層14の厚さは、例えば、約0.5〜約1.3ミルである。
【0056】
図2に示すポリマー層に加えて、複合フィルム10は種々の処理や被覆を含むことが出来る。例えば、ある実施態様において、複合フィルム10は、積層体用の剥離ライナーとして機能するように構成された剥離面を含んでいてもよい。剥離面は、異なる方法および異なる技術を使用して形成することが出来る。ある実施態様において、例えば、剥離面は、複合フィルムの表面に塗布液を塗布することによって形成出来る。
【0057】
ある実施態様において、例えば、複合フィルムはシリコン被覆を含んでいてもよい。シリコン被覆は、例えば、溶剤架橋性型シリコン塗布剤、無溶剤型シリコン塗布剤、無溶剤UV又は電子線硬化型シリコン塗布剤、水性シリコン塗布剤等で形成する。ある実施態様において、シリコン被覆は、白金触媒を有しシリコンエマルションの形体の熱硬化型シリコン塗布剤から形成される。
【0058】
ある実施態様において、シリコン塗布剤は、フィルムが形成される間にフィルムに塗布される。例えば、塗布剤は、フィルムが二軸延伸されている間に塗布される。必要であれば、シリコン塗布剤の塗布の前に、フィルムの表面をコロナ処理する。
【0059】
剥離コーティングに加えて、複合フィルムに滑性制御コーティングを塗布してもよい。滑性制御コーティングは、例えば、フィルムの剥離コーティングの反対側に塗布してもよい。
【0060】
滑性制御コーティングは、例えば、バインダー、カップリング剤、ウイッキンング助剤および/または界面活性剤から成る。バインダーとしては、スルホモノマー、イソフタル酸および脂肪族ジカルボン酸から形成される共重合ポリエステルから成っていてもよい。また、バインダーは、ポリビニルピロリドンから成っていてもよい。カップリング剤はシランから成り、ウイッキンング助剤は二酸化ケイ素などの酸化物粒子から成る。
【実施例】
【0061】
以下の実施例を参照することによって、本発明を更に良く理解できるであろう。
【0062】
実施例1:
本発明に従った多層複合フィルム及び種々の性質を比較するための他の多層フィルムを作成した。
【0063】
本発明のフィルムとして、3層フィルムを作成した(サンプル1)。中間層は使用済みライナー原料100重量%から形成されその厚みは17μmであった。2つの外層は未使用のポリエステル100重量%から成っていた。
【0064】
比較のために、上記と同様の各層厚さを有する3層の複合フィルムを作成した(サンプル2)。このフィルムは全て未使用ポリエチレンテレフタレートから成っていた。
【0065】
更に、上記と同様の各層厚さを有する3層の複合フィルムを作成した(サンプル3)。2つの外層は未使用のポリエステル100重量%から成っていた。一方中間層は再生ライナー原料100重量%から成っていた。
【0066】
上記の3サンプルのフィルムについて、ゲル個数、ヘーズ、黄変度および輝度について評価した。ヘーズはASTM試験No.D1003に基づいて測定した。黄変指数および輝度はASTM試験No.D1925に基づいて測定した。固有粘度はASTM試験No.D4603に基づいて測定した。ゲル個数は目視検査により測定した。以下に得られた測定結果を示す。
【0067】
【表1】

【0068】
上記に示すように、使用済みライナー原料を含む多層フィルムは他のフィルムに匹敵するような特性を有する。
【0069】
本発明のこれら及び他の改良および変更は、添付の請求の範囲により詳細に記載される本発明の思想および範囲を逸脱することなく、当業者によって実施可能である。更に、種々の実施形態の要旨は、全部または一部に関し相互に交換可能であると理解すべきである。更に、当業者に理解されるように、上記記載は単に例示であって、本発明を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離ライナーの製造方法であって、当該製造方法は、ある固有粘度を有する使用済みライナー原料をチップに粉砕する工程と、ライナー原料チップの固有粘度を0.58〜0.7の範囲に増加させる工程と、ライナー原料に着色剤を混合する工程と、ライナー原料を加熱し、押出してフィルムとする工程とから成り、フィルムは、積層材料の剥離ライナーとして機能する構成を有する剥離面を有することを特徴とする剥離ライナーの製造方法。
【請求項2】
使用済みライナー原料が、ポリエチレンテレフタレートポリマーから成る請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
着色剤が、緑色フィルムを製造するための緑色または青色着色剤から成る請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
フィルムの黄変指数が1.25未満である請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
使用済みライナー原料をチップの固有粘度を固相重合を介して増加させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
使用済みライナー原料をチップの固有粘度を0.6〜0.64の範囲に増加させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
更に、積層材料にフィルムを積層する工程を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
積層材料がラベルから成る請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
押出して形成されたフィルムが多層フィルムであり、多層フィルムが少なくとも第1の外層と第2の外層とそれらの間に位置する中間層とから成り、上記ライナー原料が全て中間層に含まれている請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
フィルムの各層が共押出しされている請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
第1の外層と第2の外層とが未使用のポリエチレンテレフタレートポリマーを含む請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
中間層が上記ライナー原料と未使用のポリエチレンテレフタレートポリマーとから成る請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
中間層の40重量%以上が上記ライナー原料から成る請求項13に記載の製造方法。
【請求項14】
着色剤が含量分散系から成り、フィルム中に1重量%未満で含まれる請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
フィルムの剥離面が、フィルムに剥離コーティングを塗布することによって形成される請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
剥離コーティングがシリコンコーティングから成る請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
第1の外層と第2の外層と、それぞれ共押出フィルムの重量の5〜15重量%を構成し、中間層が共押出フィルムの重量の70〜90重量%を構成し、中間層は上記ライナー原料を40〜70重量%含有する請求項13に記載の製造方法。
【請求項18】
使用済みライナー原料をチップの固有粘度を0.61〜0.63の範囲に増加させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項19】
使用済みライナー原料がポリエステルポリマーから成り、ライナー原料の固有粘度がポリエスエステルポリマーに鎖延長剤を加えることによって増加させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項20】
更に、フィルムの形成中に二軸延伸する工程を含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項21】
請求項1に記載の製造方法により製造された剥離ライナー。
【請求項22】
更に、ライナー原料チップの固有粘度を増加させる前に、使用済みライナー原料をペレット化する工程を含む請求項1に記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−517157(P2013−517157A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549020(P2012−549020)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2011/020943
【国際公開番号】WO2011/088084
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(598053374)ミツビシ ポリエステル フィルム インク (5)
【Fターム(参考)】