廃水処理方法および廃水処理装置
【課題】 膜分離にて固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得つつ、濾過膜の目詰まりの虞を少なくすることができる廃水処理方法を提供することにある。
【解決手段】 活性汚泥及び廃水を混合し生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水を得る廃水処理方法であって、
槽内又は槽外に配された膜ユニットにより汚泥含有生物処理水を膜分離して前記生物処理槽としての膜濃縮槽内の活性汚泥濃度を高めてMLSS濃度を10,000mg/L以上、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)を0.2kgBOD/kgSS/d以下とする高濃度化工程と、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部を前記膜濃縮槽外に排出して固液分離槽に供給し、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水を得る浄化水生成工程とを実施することを特徴とする廃水処理方法を提供する。
【解決手段】 活性汚泥及び廃水を混合し生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水を得る廃水処理方法であって、
槽内又は槽外に配された膜ユニットにより汚泥含有生物処理水を膜分離して前記生物処理槽としての膜濃縮槽内の活性汚泥濃度を高めてMLSS濃度を10,000mg/L以上、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)を0.2kgBOD/kgSS/d以下とする高濃度化工程と、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部を前記膜濃縮槽外に排出して固液分離槽に供給し、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水を得る浄化水生成工程とを実施することを特徴とする廃水処理方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理方法および廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃水処理方法では、活性汚泥及び廃水を混合し生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水を得ている。
【0003】
ところで、斯かる廃水処理方法では、通常、汚泥含有生物処理水の固液分離性を高めるという観点(固液分離性の指標である活性汚泥沈降率(SV30)は、汚泥体積指標(SVI)に活性汚泥の濃度(MLSS濃度)を掛けたものであり、斯かる関係式から、MLSS濃度を低下させるとSV30も低下させることができると考えられる。)から、前記汚泥含有生物処理水のMLSS濃度を8,000mg/L以下にしつつ、処理スペース効率の観点から前記活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)を通常0.2kgBOD/kgSS/dよりも大きく0.4kgBOD/kgSS/d以下に設定している(例えば、非特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】下水道施設計画・設計指針と解説 後編 2001年版,社団法人日本下水道協会,p82-83
【非特許文献2】水処理工学−理論と応用−,井出哲夫編著,p25,技宝堂出版(株),1976年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の廃水処理方法では、汚泥含有生物処理水を十分に固液分離することができず、固液分離処理水たる浄化水を十分に得ることができないという問題がある。
【0006】
これに対して、本発明者らが鋭意研究したところ、汚泥含有生物処理水の活性汚泥の濃度(MLSS濃度)を10,000mg/L以上にしつつ、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)が0.2kgBOD/kgSS/d以下となるようにすることにより、固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を生成し得ることを見出した。
【0007】
ところで、汚泥含有生物処理水のMLSS濃度は通常8,000mg/L以下であり、斯かる通常のMLSS濃度の汚泥含有生物処理水からMLSS濃度が10,000mg/L以上の汚泥含有生物処理水を効率良く得るには、膜ユニットにより汚泥含有生物処理水(例えば、MLSS濃度が8,000mg/L以下のもの)を膜分離して生物処理槽としての膜濃縮槽内における活性汚泥濃度を高める高濃度化を実施することが考えられる。
【0008】
しかるに、斯かる方法に於いては、膜ユニットの濾過膜の目詰まりの原因物質である溶解性微生物代謝物(SMP:Soluble Microbial Products)が膜濃縮槽内において濃縮され、該溶解性微生物代謝物(SMP)により濾過膜に目詰まりが生じてしまう。
そして、斯かる目詰まりにより、汚泥含有生物処理水を十分に膜分離することができず、浄化水を得ることが困難となる虞がある。一方で、濾過膜を目詰まりさせる溶解性微生物代謝物(SMP)を除去するには、薬品等で膜を洗浄する必要等があり、手間がかかったり、薬品により濾過膜が損傷されてしまう等の問題も生じ得る。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、膜分離にて固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得つつ、濾過膜の目詰まりの虞の少ない廃水処理方法および廃水処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、活性汚泥及び廃水を混合し生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水を得る廃水処理方法であって、
槽内又は槽外に配された膜ユニットにより汚泥含有生物処理水を膜分離して前記生物処理槽としての膜濃縮槽内の活性汚泥濃度を高めてMLSS濃度を10,000mg/L以上、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)を0.2kgBOD/kgSS/d以下とする高濃度化工程と、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部を前記膜濃縮槽外に排出して固液分離槽に供給し、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水を得る浄化水生成工程とを実施することを特徴とする廃水処理方法にある。
【0011】
斯かる廃水処理方法によれば、前記高濃度化工程を実施することにより、膜分離にて固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得ることができる。
また、斯かる廃水処理方法によれば、前記浄化水生成工程を実施することにより、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部を前記膜濃縮槽外に排出することにより、前記膜濃縮槽内の溶解性微生物代謝物(SMP)の一部を該膜濃縮槽外に排出することができるため、前記膜濃縮槽内にSMPが蓄積されてしまうのを抑制でき、濾過膜の目詰まりを抑制することができる。
従って、斯かる廃水処理方法によれば、膜分離にて固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得つつ、濾過膜の目詰まりの虞を少なくすることができる。
【0012】
また、本発明に係る廃水処理方法においては、好ましくは、前記膜濃縮槽と別体の槽となるように形成された収容槽を用い、該膜分離槽と該収容槽とそれぞれに移送される廃水の移送割合を調節して廃水を該膜分離槽と該収容槽とに供給する廃水供給工程と、該収容槽に前記膜濃縮槽より排出された汚泥含有生物処理水を収容し且つ固液分離により得られた汚泥濃縮水を加えて生物処理し、生成した汚泥含有生物処理水を前記固液分離槽に供給する汚泥含有生物処理水供給工程とを実施する。
【0013】
斯かる廃水処理方法によれば、前記廃水供給工程を実施することにより、流入する廃水の有機物濃度や水量が変動しても、固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得るために適正な廃水量を前記膜濃縮槽に注入することが可能であるため固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を効率よく得ることができる。
また、斯かる廃水処理方法によれば、該収容槽の汚泥含有生物処理水が汚泥濃縮水により活性汚泥濃度を高められたものであることから、前記膜分離槽に移送されなかった残りの廃水が前記収容槽に多量に移送されても、該廃水に含まれる有機物を十分に分解し得るため、汚泥含有生物処理水に含まれる活性汚泥濃度をより一層高め得る。
さらに、斯かる廃水処理方法によれば、濃縮された汚泥含有生物処理水を収容槽において収容し且つ固液分離により得られた汚泥濃縮水を収容槽に加えて生物処理することにより、該収容槽において汚泥含有生物処理水のMLSS濃度を10,000mg/L以上にして、収容槽においても固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を効率良く得ることができる。
従って、斯かる廃水処理方法によれば、固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得つつ、濾過膜の目詰まりの虞をより一層少なくすることができるという利点がある。
【0014】
さらに、本発明に係る廃水処理方法においては、好ましくは、前記活性汚泥として、担体により凝集されたものを用いる。
【0015】
また、本発明は、活性汚泥及び廃水を混合し該生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得る生物処理部と、該汚泥含有生物処理水を固液分離する固液分離部とを備え、前記生物処理部及び前記固液分離部により浄化水を得るように構成されてなる廃水処理装置であって、
前記生物処理部が、汚泥含有生物処理水を膜分離する膜ユニットを備え、該膜ユニットにより汚泥含有生物処理水が膜分離されて前記生物処理槽としての膜濃縮槽内の活性汚泥濃度が高まるように構成されてなり、
前記膜ユニットが、槽内又は槽外に配されてなり、
前記生物処理部により汚泥含有生物処理水の活性汚泥濃度が高められてMLSS濃度が10,000mg/L以上となるようにしつつ、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)が0.2kgBOD/kgSS/d以下となるように構成され、更に、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部が前記膜濃縮槽外に排出され固液分離槽に供給され、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水を得るように構成されてなることを特徴とする廃水処理装置にある。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、膜分離にて固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得つつ、濾過膜の目詰まりの虞を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図2】図1のAA矢視断面図。
【図3】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図4】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図5】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図6】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図7】一実施形態に係る生物凝集槽の概略図。
【図8】一実施形態に係る生物凝集槽の概略図。
【図9】一実施形態に係る生物凝集槽の概略図。
【図10】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図11】試験例1で実施した混合水の生物処理におけるMLSS濃度とBOD汚泥負荷との組み合わせ。
【図12】試験例2で実施した混合水の生物処理におけるMLSS濃度とBOD汚泥負荷との組み合わせ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
まず、本実施形態に係る廃水処理装置について説明する。
【0020】
本実施形態の廃水処理装置は、活性汚泥及び廃水が混合されて混合水が生成され、該混合水が生物処理されて汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水を得るように構成されてなる。
【0021】
前記廃水としては、生物分解することができる有機物等を含有する廃水であれば、特に限定されるものではないが、例えば、生活廃水や、食品工場、化学工場、電子産業工場、パルプ工場等の工場の廃水等が挙げられる。
【0022】
前記生物処理としては、具体的には、廃水処理等を挙げることができる。
前記廃水処理は、細菌、原生動物、後生動物等の生物種を有する活性汚泥と、有機物を含む廃水とを曝気しながら混合して、該有機物を前記生物種で分解する処理である。
【0023】
具体的には、図1に示すように、本実施形態の廃水処理装置1は、活性汚泥及び廃水Aを混合して混合水を生成し該混合水を生物処理槽21にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得る生物処理部2と、該汚泥含有生物処理水から、固液分離により、活性汚泥の含有率が前記汚泥含有生物処理水よりも少ない固液分離処理水と活性汚泥が前記汚泥含有生物処理水よりも濃縮された汚泥濃縮水Cとを生成する固液分離槽31を有する固液分離部3とを備えてなる。
【0024】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、前記生物処理部2及び前記固液分離部3により浄化水Bを得るように構成されてなる。
【0025】
さらに、本実施形態の廃水処理装置1は、生物処理部2に原水Aが供給されるように構成されてなる。また、本実施形態の廃水処理装置1は、生物処理部2で生成された汚泥含有生物処理水が固液分離部3に、固液分離部3で生成された固液分離処理水が浄化水Bとして浄化水貯留部(図示せず)に、固液分離部3で生成された汚泥濃縮水Cが汚泥濃縮水貯留部(図示せず)及び/又は生物処理部2に移送されるように構成されてなる。
具体的には、本実施形態の廃水処理装置1は、原水Aを供給する原水供給経路4aと、汚泥含有生物処理水を固液分離部3に移送する汚泥含有生物処理水移送経路4bと、浄化水Bを浄化水貯留部(図示せず)に移送する浄化水移送経路4cと、汚泥濃縮水Cを汚泥濃縮水貯留部(図示せず)に移送する汚泥濃縮水移送経路4dと、汚泥濃縮水Cを生物処理部2に移送する(返送する)汚泥濃縮水返送経路4eとを備えてなる。
【0026】
前記生物処理部2は、汚泥含有生物処理水を膜濾過する膜ユニット24と、該膜濃縮槽21内を曝気する膜濃縮槽曝気手段23とを備え、該膜ユニット24により汚泥含有生物処理水が膜分離されて前記生物処理槽21としての膜濃縮槽21内の活性汚泥濃度が高まるように構成されてなる。該膜濃縮槽21は、原水供給経路4aを介して原水Aが供給されるように構成されてなる。
【0027】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、膜ユニット24により活性汚泥の濃度が高められた汚泥含有生物処理水に汚泥濃縮水Cが汚泥濃縮水返送経路4eを介して加えられるように構成されてなる。
【0028】
さらに、本実施形態の廃水処理装置1は、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部が前記膜濃縮槽21外に排出され固液分離槽31に供給され、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水Bを得るように構成されてなる。
【0029】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、前記膜ユニット24により得られた透過水を浄化水Bとして浄化水貯留部(図示せず)に移送するように構成されてなる。
具体的には、本実施形態の廃水処理装置1は、前記膜ユニット24により得られた透過水を浄化水Bとして浄化水貯留部(図示せず)に移送する透過水移送経路4fを備えてなる。
【0030】
前記膜ユニット24は、槽内に配されてなり、具体的には、膜濃縮槽21内の液面下に浸漬膜として設置されてなる。また、膜ユニット24は、濾過膜を濾過膜を常時あるいは間欠的に曝気して該濾過膜に付着した凝集汚泥体等の汚れを取り除く膜曝気手段(図示せず)を備えてなる。
【0031】
前記膜ユニット24の濾過膜の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、限外濾過膜(UF膜)、精密濾過膜(MF膜)等が挙げられる。
【0032】
前記濾過膜の構造としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニールアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどの素材により形成された直径数mmの中空糸状に形成されたいわゆる中空糸膜などと呼ばれるタイプのものや、薄い板状の膜たる平膜と呼ばれるタイプのものなど従来公知のものを採用することができる。
【0033】
また、前記生物処理部2は、必要に応じて、活性汚泥を凝集させる担体22を備えてなる。
具体的には、前記生物処理部2は、担体22により活性汚泥を凝集させ、前記担体22から凝集した活性汚泥(凝集汚泥体)を分離するように構成されてなる。さらに、前記生物処理部2は、凝集した活性汚泥(凝集汚泥体)及び廃水Aを混合して混合水を生成するように構成されてなる。
【0034】
また、前記担体22は、図2に示すように、膜濃縮槽21内の水面下に設けられてなる。また、前記担体22は、前記活性汚泥が付着される付着体22aと該付着体22aを支持する支持部22bとを備えてなる。さらに、前記担体22は、曝気によって生じる水流で前記付着体22aが揺動するように構成されてなる。
【0035】
前記付着体22aは、糸状に形成されてなる。
前記付着体22aを構成する材料は、前記活性汚泥が付着しやすいものであれば特に限定されるものではないが、該材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、炭素繊維等が挙げられる。
【0036】
前記支持部22bを構成する材料は、該付着体22aを支持するものであれば特に限定されるものではないが、該材料としては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン等の樹脂あるいはステンレス等の金属が挙げられる。
【0037】
さらに、前記生物処理部2は、図1に示すように、前記膜濃縮槽21と別体の槽となるように形成され、前記膜濃縮槽21より排出された汚泥含有生物処理水を収容する収容槽25と、該収容槽25内を曝気する収容槽曝気手段26と、前記膜濃縮槽21外に排出された汚泥含有生物処理水を収容槽25に移送する汚泥含有生物処理水移送経路4gとを備えてなる。
【0038】
さらに、本実施形態の廃水処理装置1は、収容槽25内の汚泥含有生物処理水に汚泥濃縮水Cが汚泥濃縮水返送経路4eにより加えられ生物処理され、生成された汚泥含有生物処理水が前記固液分離槽31に供給されるように構成される。
【0039】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、原水供給経路4aにより前記収容槽25に原水Aが供給されるように構成され、また、汚泥含有生物処理水移送経路4bにより収容槽25の汚泥含有生物処理水が固液分離部3に移送されるように構成されてなる。
【0040】
さらに、本実施形態の廃水処理装置1は、膜分離槽21と収容槽25とそれぞれに移送される廃水Aの移送割合を調節して廃水Aを該膜分離槽21と該収容槽25とに供給するように構成されてなる。
【0041】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、前記生物処理部2により汚泥含有生物処理水の活性汚泥濃度が高められてMLSS(浮遊する活性汚泥)濃度が10,000mg/L以上となるようにしつつ、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)が0.2kgBOD/kgSS/d以下に設定されてなる。
【0042】
前記固液分離槽31は、汚泥含有生物処理水から、重力沈降により、固液分離処理水と汚泥濃縮水Cが生成されるように構成されてなる。
【0043】
本実施形態の廃水処理装置は、上記の如く構成されてなるが、次ぎに、本実施形態の廃水処理方法について説明する。
【0044】
本実施形態の廃水処理方法では、活性汚泥及び廃水Aを混合し生物処理して汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水Bを得る。
【0045】
また、本実施形態の廃水処理方法では、前記膜ユニット24により前記膜濃縮槽21内で汚泥含有生物処理水を膜分離して該汚泥含有生物処理水の活性汚泥濃度を高めてMLSS濃度を10,000mg/L以上、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)を0.2kgBOD/kgSS/d以下とする高濃度化工程と、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部を前記膜濃縮槽21外に排出して前記固液分離槽31に供給し、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水Bを得る浄化水生成工程とを実施する。
【0046】
前記汚泥含有生物処理水のMLSS濃度は、好ましくは、10000〜30000mg/Lにし、より好ましくは、15000〜20000mg/Lにする。
【0047】
前記BOD汚泥負荷は、好ましくは、0.10〜0.19kgBOD/kgSS/dにし、より好ましくは、0.05〜0.15kgBOD/kgSS/dにする。
【0048】
BOD容積負荷は、好ましくは、0.1〜6kgBOD/m3 /dにし、より好ましくは、1〜3kgBOD/m3 /dにする。
【0049】
本実施形態の廃水処理方法では、好ましくは、継続的に1日以上の継続時間で、前記汚泥含有生物処理水のMLSS濃度を10,000mg/L以上にしつつ、前記BOD汚泥負荷を0.2kgBOD/kgSS/d以下にする。
尚、「継続的に1日以上の継続時間で、前記汚泥含有生物処理水のMLSS濃度を所定範囲内にしつつ、前記BOD汚泥負荷を所定範囲内にする」には、“継続期間のうち一時的に、該MLSS濃度が所定範囲から外れた状態、及び/又は該BOD汚泥負荷が所定範囲から外れた状態”の場合も含まれる。例えば、“継続期間のうち合計1/20の期間、該MLSS濃度が所定範囲から外れた状態、及び/又は該BOD汚泥負荷が所定範囲から外れた状態”の場合も含まれる。更には、“継続期間のうち合計1/10の期間、該MLSS濃度が所定範囲から外れた状態、及び/又は該BOD汚泥負荷が所定範囲から外れた状態”の場合も含まれる。
【0050】
前記継続期間は、好ましくは、2日以上、より好ましくは、7日以上、さらに好ましくは、30日〜20年である。
【0051】
また、本実施形態の廃水処理方法では、収容槽25を用い、膜分離槽21と該収容槽25とそれぞれに移送される廃水Aの移送割合を調節して廃水Aを膜分離槽21と収容槽25とに供給する廃水供給工程と、収容槽25に膜濃縮槽21より排出された汚泥含有生物処理水を収容し且つ固液分離により得られた汚泥濃縮水Cを加えて生物処理し、生成した汚泥含有生物処理水を固液分離槽31に供給する汚泥含有生物処理水供給工程とを実施する。
【0052】
さらに、本実施形態の廃水処理方法では、前記活性汚泥として、担体22により凝集されたものを用いる。
【0053】
尚、本実施形態の廃水処理装置および廃水処理方法は、上記構成を有するものであったが、本発明の廃水処理装置および廃水処理方法は、上記構成に限定されず、適宜設計変更可能である。
【0054】
即ち、本実施形態の廃水処理装置1は、収容槽25を備えてなるが、図3に示すように、本発明の廃水処理装置1は、収容槽25を備えない態様であってもよい。
【0055】
斯かる廃水処理装置1は、膜濃縮槽21より排出された汚泥含有生物処理水が汚泥含有生物処理水移送経路4bにより固液分離部3に移送されるように構成されてもよい。
【0056】
また、斯かる廃水処理装置1は、膜濃縮槽21内の汚泥含有生物処理水に汚泥濃縮水Cが加えられるように構成されてもよい。
【0057】
さらに、本実施形態の廃水処理装置1は、固液分離処理水が浄化水Bとして浄化水貯留部(図示せず)に移送されるように構成されてなるが、本発明の廃水処理装置は、図4に示すように、固液分離部3に固液分離処理水を膜濾過する膜ユニット32が備えられ、前記固液分離処理水から膜ユニット32による膜濾過によって透過水たる浄化水Bを得るように構成されてもよい。この場合、本実施形態の廃水処理装置1は、膜ユニット32の非透過水を一部放流するように構成されてもよい。斯かる廃水処理装置1は、固液分離槽31にSMPが蓄積されるのを抑制して、濾過膜の目詰まりを抑制することができる。
【0058】
前記膜ユニット32は、前記固液分離槽31内の液面下に浸漬膜として設置されてなる。また、膜ユニット32は、濾過膜を常時あるいは間欠的に曝気して該濾過膜に付着した凝集汚泥体等の汚れを取り除く膜曝気手段(図示せず)を備えてなる。
【0059】
前記膜ユニット32は、図4に示すように、浸漬膜として設置されてなるが、図5に示すように、膜ユニット32が容器に濾過膜が収納されたタイプであり、固液分離槽31の槽外に設置され、且つ固液分離処理水がポンプ33を介して加圧されてから該膜ユニット32に供給されるように構成されてもよい。この場合も、本実施形態の廃水処理装置1は、前記の理由により膜ユニット32の非透過水の一部を放流するように構成されてもよい。
【0060】
前記膜ユニット32が固液分離槽31の槽外に設置されてなる廃水処理装置は、前記膜ユニット32により生成される非透過水が混合水の一部として生物処理部2に移送されるように構成されてなる。具体的には、該非透過水を移送する非透過水移送経路4hを備えてなる。
【0061】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、膜濃縮槽21内で凝集汚泥体を生成するように構成されてなるが、本発明の廃水処理装置は、膜濃縮槽21の代わりに収容槽25内で凝集汚泥体を生成するように構成されてもよく、また、膜濃縮槽21及び収容槽25内で集汚泥体を生成するように構成されてもよい。
また、図6に示すように、本実施形態の廃水処理装置1は、前記生物処理部2に、前記生物凝集手段により凝集汚泥体を生成する生物凝集槽27が備えられ、前記固液分離部3により生成された汚泥濃縮水Cが生物凝集槽27に移送され、前記生物凝集槽27により生成された凝集汚泥体が収容槽25に移送されるように構成されてもよい。尚、前記生物凝集槽27により生成された凝集汚泥体が膜濃縮槽21に移送されるように構成されてもよい。
斯かる廃水処理装置1は、活性汚泥が濃縮された汚泥濃縮水Cに含まれる活性汚泥が凝集されるように構成されてなることにより、より一層効率よく凝集汚泥体を生成し得るという利点がある。また、汚泥濃縮水Cを返送するためのエネルギーを有効利用することができるという利点もある。
【0062】
斯かる廃水処理装置1は、前記固液分離部3により生成された汚泥濃縮水Cを前記生物凝集槽27に移送する汚泥濃縮水移送経路4iと、前記生物凝集槽27で生成された凝集汚泥体を膜濃縮槽21に移送する凝集汚泥体移送経路4jとを備えてなる。
【0063】
また、斯かる廃水処理装置1は、必要に応じて、前記生物凝集槽27内を曝気する生物凝集槽曝気手段(図示せず)を備えてなるが、該生物凝集槽曝気手段(図示せず)を備えない態様であってもよい。
【0064】
さらに、斯かる廃水処理装置1は、前記生物凝集槽27が前記膜濃縮槽21及び収容槽25と別体の槽となるように形成されてなる。
【0065】
また、斯かる廃水処理装置1は、好ましくは、前記生物凝集手段が、担体22により前記活性汚泥を凝集させ前記担体22から前記凝集汚泥体を分離させて生成するものであり、前記担体22が、活性汚泥が付着される付着体22aと該付着体22aを支持する支持部22bとを備えてなり、前記汚泥濃縮水移送経路4iから前記生物凝集槽27に移送される汚泥濃縮水の水流によって前記付着体22aが揺動するように構成されてなる。
斯かる廃水処理装置1は、水流によって前記付着体22aが揺動するように構成されてなることにより、エネルギー効率良く凝集汚泥体が担体22から分離され得るという利点がある。また、効率よく凝集汚泥体を生成することができることから、凝集汚泥体の生成効率を低下させずに、担体22の大きさを小さくし得るという利点もある。
【0066】
また、斯かる廃水処理装置1は、生物凝集槽27が担体22により活性汚泥を凝集させるように構成されてなる代わりに、生物凝集槽27として、汚泥濃縮水Cが乱流で移送され得るように移送経路の長さが延長されたものや経路が細分化されたもの、具体的には、図7に示すような流路がジグザグにされたものや、図8に示すような多管状(ハニカム状)のものや、図9に示すようなスタティクミキサーが設けられてなるものを備えてもよい。斯かる廃水処理装置1によれば、高速に活性汚泥を壁様のものに衝突させることができるため、効率良く凝集汚泥体を生成し得るという利点がある。
【0067】
さらに、斯かる廃水処理装置1は、槽内に配されてなるが、槽外に配されてもよい。具体的には、図10に示すように、斯かる廃水処理装置1は、膜ユニット24が容器に濾過膜が収納されたタイプであり、膜濃縮槽21の槽外に設置され、且つ汚泥含有生物処理水がポンプ28を介して加圧されてから該膜ユニット24に供給されるように構成されてもよい。
【0068】
前記膜ユニット24が膜濃縮槽21の槽外に設置されてなる廃水処理装置1は、前記膜ユニット24により生成される非透過水が混合水の一部として膜濃縮槽21に移送されるように構成されてなる。具体的には、斯かる廃水処理装置1は、該非透過水を混合水の一部として膜濃縮槽21に移送する非透過水移送経路4kを備えてなる。
【実施例】
【0069】
次に、試験例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0070】
(試験例1)
槽(水収容可能容量:10L、内寸:0.15m(幅)×0.15m(奥行き)×0.45m(高さ))、担体としてのバイオフリンジ(登録商標)(エヌ・イー・ティ社製)、及び曝気手段としてのポンプを用いて、活性汚泥を凝集し、該凝集した活性汚泥(凝集汚泥体)と廃水とを混合して混合水を生成し該混合水を生物処理して汚泥含有生物処理水を得た。具体的には、汚泥含有生物処理水貯留槽内のMLSS濃度を所定値となるようにしつつ、槽内の活性汚泥に対するBOD負荷(BOD汚泥負荷)を所定値にとなるように30〜90日間以上維持して、混合水を生物処理して汚泥含有生物処理水を得た。
尚、汚泥含有生物処理水貯留槽内のMLSS濃度を所定値となるようにしつつ、汚泥含有生物処理水貯留槽内の活性汚泥に対するBOD負荷(BOD汚泥負荷)を所定値にとなるように維持する期間は、10日以上であれば、SV30、SVI、5C透過量に前記期間の違いによる影響はない。
試験例1で実施した混合水の生物処理におけるMLSS濃度とBOD汚泥負荷との組み合わせを図11に示す。
尚、MLSS濃度、及びBOD汚泥負荷は、JIS B 9944−1978に従って測定及び算出した。
【0071】
(試験例2)
担体を用いなかったこと以外は、試験例1と同様にして、汚泥含有生物処理水を得た。
試験例2で実施した混合水の生物処理におけるMLSS濃度とBOD汚泥負荷との組み合わせを図12に示す。
【0072】
試験例の汚泥含有生物処理水を下記の試験に供した。
【0073】
(SV30、SVIの測定)
試験例の汚泥含有生物処理水の活性汚泥沈降率(SV30)、及び汚泥体積指標(SVI)は、JIS B 9944−1978に従って測定及び算出した。
【0074】
(5C透過量の測定)
濾過器上に5種C(JIS P 3801)の濾紙(アドバンテック東洋社製、直径15cm)を載置し、該濾紙上に試験例の汚泥含有生物処理水を50mL滴下し、滴下してから5分経過した時に濾紙を透過した濾液(透過水)の量(5C透過量)を測定した。
【0075】
上記試験の結果を、試験例1に関しては表1に、試験例2に関しては表2に示す。尚、表1、表2において、SVI、MLSS濃度、SV30、5C透過量として、算出平均値が示されている。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
試験例1−4および2−4の汚泥含有生物処理水では、BOD汚泥負荷が0.2kgBOD/kgSS/dを超え且つMLSS濃度が10,000mg/L未満である条件の試験例1−1、MLSS濃度が10,000mg/L未満である条件の試験例1−2、BOD汚泥負荷が0.2kgBOD/kgSS/dを超えている条件の試験例1−3、および担体を用いなかった試験例2−1〜2−3に比して、SV30及びSVIが低い値を示した。
また、試験例1−4および2−4の汚泥含有生物処理水では、試験例1−1〜1−3、2−1〜2−3に比して、5C透過量が高い値を示した。
【符号の説明】
【0079】
1:廃水処理装置、2:生物処理部、3:固液分離部、4a:原水供給経路、4b:汚泥含有生物処理水移送経路、4c:浄化水移送経路、4d:汚泥濃縮水移送経路、4e:汚泥濃縮水返送経路、4f:透過水移送経路、4g:汚泥含有生物処理水移送経路、4h:非透過水移送経路、4i:汚泥濃縮水移送経路、4j:凝集汚泥体移送経路、4k:非透過水移送経路、21:生物処理槽(膜濃縮槽)、22:担体、22a:付着体、22b:支持部、23:膜濃縮槽曝気手段、24:膜ユニット、25:収容槽、26:収容槽曝気手段、27:生物凝集槽、28:ポンプ、31:固液分離槽、32:膜ユニット、33:ポンプ、A:廃水、B:浄化水、C:汚泥濃縮水
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理方法および廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃水処理方法では、活性汚泥及び廃水を混合し生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水を得ている。
【0003】
ところで、斯かる廃水処理方法では、通常、汚泥含有生物処理水の固液分離性を高めるという観点(固液分離性の指標である活性汚泥沈降率(SV30)は、汚泥体積指標(SVI)に活性汚泥の濃度(MLSS濃度)を掛けたものであり、斯かる関係式から、MLSS濃度を低下させるとSV30も低下させることができると考えられる。)から、前記汚泥含有生物処理水のMLSS濃度を8,000mg/L以下にしつつ、処理スペース効率の観点から前記活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)を通常0.2kgBOD/kgSS/dよりも大きく0.4kgBOD/kgSS/d以下に設定している(例えば、非特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】下水道施設計画・設計指針と解説 後編 2001年版,社団法人日本下水道協会,p82-83
【非特許文献2】水処理工学−理論と応用−,井出哲夫編著,p25,技宝堂出版(株),1976年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の廃水処理方法では、汚泥含有生物処理水を十分に固液分離することができず、固液分離処理水たる浄化水を十分に得ることができないという問題がある。
【0006】
これに対して、本発明者らが鋭意研究したところ、汚泥含有生物処理水の活性汚泥の濃度(MLSS濃度)を10,000mg/L以上にしつつ、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)が0.2kgBOD/kgSS/d以下となるようにすることにより、固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を生成し得ることを見出した。
【0007】
ところで、汚泥含有生物処理水のMLSS濃度は通常8,000mg/L以下であり、斯かる通常のMLSS濃度の汚泥含有生物処理水からMLSS濃度が10,000mg/L以上の汚泥含有生物処理水を効率良く得るには、膜ユニットにより汚泥含有生物処理水(例えば、MLSS濃度が8,000mg/L以下のもの)を膜分離して生物処理槽としての膜濃縮槽内における活性汚泥濃度を高める高濃度化を実施することが考えられる。
【0008】
しかるに、斯かる方法に於いては、膜ユニットの濾過膜の目詰まりの原因物質である溶解性微生物代謝物(SMP:Soluble Microbial Products)が膜濃縮槽内において濃縮され、該溶解性微生物代謝物(SMP)により濾過膜に目詰まりが生じてしまう。
そして、斯かる目詰まりにより、汚泥含有生物処理水を十分に膜分離することができず、浄化水を得ることが困難となる虞がある。一方で、濾過膜を目詰まりさせる溶解性微生物代謝物(SMP)を除去するには、薬品等で膜を洗浄する必要等があり、手間がかかったり、薬品により濾過膜が損傷されてしまう等の問題も生じ得る。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、膜分離にて固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得つつ、濾過膜の目詰まりの虞の少ない廃水処理方法および廃水処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、活性汚泥及び廃水を混合し生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水を得る廃水処理方法であって、
槽内又は槽外に配された膜ユニットにより汚泥含有生物処理水を膜分離して前記生物処理槽としての膜濃縮槽内の活性汚泥濃度を高めてMLSS濃度を10,000mg/L以上、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)を0.2kgBOD/kgSS/d以下とする高濃度化工程と、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部を前記膜濃縮槽外に排出して固液分離槽に供給し、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水を得る浄化水生成工程とを実施することを特徴とする廃水処理方法にある。
【0011】
斯かる廃水処理方法によれば、前記高濃度化工程を実施することにより、膜分離にて固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得ることができる。
また、斯かる廃水処理方法によれば、前記浄化水生成工程を実施することにより、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部を前記膜濃縮槽外に排出することにより、前記膜濃縮槽内の溶解性微生物代謝物(SMP)の一部を該膜濃縮槽外に排出することができるため、前記膜濃縮槽内にSMPが蓄積されてしまうのを抑制でき、濾過膜の目詰まりを抑制することができる。
従って、斯かる廃水処理方法によれば、膜分離にて固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得つつ、濾過膜の目詰まりの虞を少なくすることができる。
【0012】
また、本発明に係る廃水処理方法においては、好ましくは、前記膜濃縮槽と別体の槽となるように形成された収容槽を用い、該膜分離槽と該収容槽とそれぞれに移送される廃水の移送割合を調節して廃水を該膜分離槽と該収容槽とに供給する廃水供給工程と、該収容槽に前記膜濃縮槽より排出された汚泥含有生物処理水を収容し且つ固液分離により得られた汚泥濃縮水を加えて生物処理し、生成した汚泥含有生物処理水を前記固液分離槽に供給する汚泥含有生物処理水供給工程とを実施する。
【0013】
斯かる廃水処理方法によれば、前記廃水供給工程を実施することにより、流入する廃水の有機物濃度や水量が変動しても、固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得るために適正な廃水量を前記膜濃縮槽に注入することが可能であるため固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を効率よく得ることができる。
また、斯かる廃水処理方法によれば、該収容槽の汚泥含有生物処理水が汚泥濃縮水により活性汚泥濃度を高められたものであることから、前記膜分離槽に移送されなかった残りの廃水が前記収容槽に多量に移送されても、該廃水に含まれる有機物を十分に分解し得るため、汚泥含有生物処理水に含まれる活性汚泥濃度をより一層高め得る。
さらに、斯かる廃水処理方法によれば、濃縮された汚泥含有生物処理水を収容槽において収容し且つ固液分離により得られた汚泥濃縮水を収容槽に加えて生物処理することにより、該収容槽において汚泥含有生物処理水のMLSS濃度を10,000mg/L以上にして、収容槽においても固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を効率良く得ることができる。
従って、斯かる廃水処理方法によれば、固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得つつ、濾過膜の目詰まりの虞をより一層少なくすることができるという利点がある。
【0014】
さらに、本発明に係る廃水処理方法においては、好ましくは、前記活性汚泥として、担体により凝集されたものを用いる。
【0015】
また、本発明は、活性汚泥及び廃水を混合し該生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得る生物処理部と、該汚泥含有生物処理水を固液分離する固液分離部とを備え、前記生物処理部及び前記固液分離部により浄化水を得るように構成されてなる廃水処理装置であって、
前記生物処理部が、汚泥含有生物処理水を膜分離する膜ユニットを備え、該膜ユニットにより汚泥含有生物処理水が膜分離されて前記生物処理槽としての膜濃縮槽内の活性汚泥濃度が高まるように構成されてなり、
前記膜ユニットが、槽内又は槽外に配されてなり、
前記生物処理部により汚泥含有生物処理水の活性汚泥濃度が高められてMLSS濃度が10,000mg/L以上となるようにしつつ、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)が0.2kgBOD/kgSS/d以下となるように構成され、更に、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部が前記膜濃縮槽外に排出され固液分離槽に供給され、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水を得るように構成されてなることを特徴とする廃水処理装置にある。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、膜分離にて固液分離性に優れた汚泥含有生物処理水を得つつ、濾過膜の目詰まりの虞を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図2】図1のAA矢視断面図。
【図3】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図4】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図5】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図6】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図7】一実施形態に係る生物凝集槽の概略図。
【図8】一実施形態に係る生物凝集槽の概略図。
【図9】一実施形態に係る生物凝集槽の概略図。
【図10】一実施形態に係る廃水処理装置の概略図。
【図11】試験例1で実施した混合水の生物処理におけるMLSS濃度とBOD汚泥負荷との組み合わせ。
【図12】試験例2で実施した混合水の生物処理におけるMLSS濃度とBOD汚泥負荷との組み合わせ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
まず、本実施形態に係る廃水処理装置について説明する。
【0020】
本実施形態の廃水処理装置は、活性汚泥及び廃水が混合されて混合水が生成され、該混合水が生物処理されて汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水を得るように構成されてなる。
【0021】
前記廃水としては、生物分解することができる有機物等を含有する廃水であれば、特に限定されるものではないが、例えば、生活廃水や、食品工場、化学工場、電子産業工場、パルプ工場等の工場の廃水等が挙げられる。
【0022】
前記生物処理としては、具体的には、廃水処理等を挙げることができる。
前記廃水処理は、細菌、原生動物、後生動物等の生物種を有する活性汚泥と、有機物を含む廃水とを曝気しながら混合して、該有機物を前記生物種で分解する処理である。
【0023】
具体的には、図1に示すように、本実施形態の廃水処理装置1は、活性汚泥及び廃水Aを混合して混合水を生成し該混合水を生物処理槽21にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得る生物処理部2と、該汚泥含有生物処理水から、固液分離により、活性汚泥の含有率が前記汚泥含有生物処理水よりも少ない固液分離処理水と活性汚泥が前記汚泥含有生物処理水よりも濃縮された汚泥濃縮水Cとを生成する固液分離槽31を有する固液分離部3とを備えてなる。
【0024】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、前記生物処理部2及び前記固液分離部3により浄化水Bを得るように構成されてなる。
【0025】
さらに、本実施形態の廃水処理装置1は、生物処理部2に原水Aが供給されるように構成されてなる。また、本実施形態の廃水処理装置1は、生物処理部2で生成された汚泥含有生物処理水が固液分離部3に、固液分離部3で生成された固液分離処理水が浄化水Bとして浄化水貯留部(図示せず)に、固液分離部3で生成された汚泥濃縮水Cが汚泥濃縮水貯留部(図示せず)及び/又は生物処理部2に移送されるように構成されてなる。
具体的には、本実施形態の廃水処理装置1は、原水Aを供給する原水供給経路4aと、汚泥含有生物処理水を固液分離部3に移送する汚泥含有生物処理水移送経路4bと、浄化水Bを浄化水貯留部(図示せず)に移送する浄化水移送経路4cと、汚泥濃縮水Cを汚泥濃縮水貯留部(図示せず)に移送する汚泥濃縮水移送経路4dと、汚泥濃縮水Cを生物処理部2に移送する(返送する)汚泥濃縮水返送経路4eとを備えてなる。
【0026】
前記生物処理部2は、汚泥含有生物処理水を膜濾過する膜ユニット24と、該膜濃縮槽21内を曝気する膜濃縮槽曝気手段23とを備え、該膜ユニット24により汚泥含有生物処理水が膜分離されて前記生物処理槽21としての膜濃縮槽21内の活性汚泥濃度が高まるように構成されてなる。該膜濃縮槽21は、原水供給経路4aを介して原水Aが供給されるように構成されてなる。
【0027】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、膜ユニット24により活性汚泥の濃度が高められた汚泥含有生物処理水に汚泥濃縮水Cが汚泥濃縮水返送経路4eを介して加えられるように構成されてなる。
【0028】
さらに、本実施形態の廃水処理装置1は、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部が前記膜濃縮槽21外に排出され固液分離槽31に供給され、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水Bを得るように構成されてなる。
【0029】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、前記膜ユニット24により得られた透過水を浄化水Bとして浄化水貯留部(図示せず)に移送するように構成されてなる。
具体的には、本実施形態の廃水処理装置1は、前記膜ユニット24により得られた透過水を浄化水Bとして浄化水貯留部(図示せず)に移送する透過水移送経路4fを備えてなる。
【0030】
前記膜ユニット24は、槽内に配されてなり、具体的には、膜濃縮槽21内の液面下に浸漬膜として設置されてなる。また、膜ユニット24は、濾過膜を濾過膜を常時あるいは間欠的に曝気して該濾過膜に付着した凝集汚泥体等の汚れを取り除く膜曝気手段(図示せず)を備えてなる。
【0031】
前記膜ユニット24の濾過膜の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、限外濾過膜(UF膜)、精密濾過膜(MF膜)等が挙げられる。
【0032】
前記濾過膜の構造としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニールアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどの素材により形成された直径数mmの中空糸状に形成されたいわゆる中空糸膜などと呼ばれるタイプのものや、薄い板状の膜たる平膜と呼ばれるタイプのものなど従来公知のものを採用することができる。
【0033】
また、前記生物処理部2は、必要に応じて、活性汚泥を凝集させる担体22を備えてなる。
具体的には、前記生物処理部2は、担体22により活性汚泥を凝集させ、前記担体22から凝集した活性汚泥(凝集汚泥体)を分離するように構成されてなる。さらに、前記生物処理部2は、凝集した活性汚泥(凝集汚泥体)及び廃水Aを混合して混合水を生成するように構成されてなる。
【0034】
また、前記担体22は、図2に示すように、膜濃縮槽21内の水面下に設けられてなる。また、前記担体22は、前記活性汚泥が付着される付着体22aと該付着体22aを支持する支持部22bとを備えてなる。さらに、前記担体22は、曝気によって生じる水流で前記付着体22aが揺動するように構成されてなる。
【0035】
前記付着体22aは、糸状に形成されてなる。
前記付着体22aを構成する材料は、前記活性汚泥が付着しやすいものであれば特に限定されるものではないが、該材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、炭素繊維等が挙げられる。
【0036】
前記支持部22bを構成する材料は、該付着体22aを支持するものであれば特に限定されるものではないが、該材料としては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン等の樹脂あるいはステンレス等の金属が挙げられる。
【0037】
さらに、前記生物処理部2は、図1に示すように、前記膜濃縮槽21と別体の槽となるように形成され、前記膜濃縮槽21より排出された汚泥含有生物処理水を収容する収容槽25と、該収容槽25内を曝気する収容槽曝気手段26と、前記膜濃縮槽21外に排出された汚泥含有生物処理水を収容槽25に移送する汚泥含有生物処理水移送経路4gとを備えてなる。
【0038】
さらに、本実施形態の廃水処理装置1は、収容槽25内の汚泥含有生物処理水に汚泥濃縮水Cが汚泥濃縮水返送経路4eにより加えられ生物処理され、生成された汚泥含有生物処理水が前記固液分離槽31に供給されるように構成される。
【0039】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、原水供給経路4aにより前記収容槽25に原水Aが供給されるように構成され、また、汚泥含有生物処理水移送経路4bにより収容槽25の汚泥含有生物処理水が固液分離部3に移送されるように構成されてなる。
【0040】
さらに、本実施形態の廃水処理装置1は、膜分離槽21と収容槽25とそれぞれに移送される廃水Aの移送割合を調節して廃水Aを該膜分離槽21と該収容槽25とに供給するように構成されてなる。
【0041】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、前記生物処理部2により汚泥含有生物処理水の活性汚泥濃度が高められてMLSS(浮遊する活性汚泥)濃度が10,000mg/L以上となるようにしつつ、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)が0.2kgBOD/kgSS/d以下に設定されてなる。
【0042】
前記固液分離槽31は、汚泥含有生物処理水から、重力沈降により、固液分離処理水と汚泥濃縮水Cが生成されるように構成されてなる。
【0043】
本実施形態の廃水処理装置は、上記の如く構成されてなるが、次ぎに、本実施形態の廃水処理方法について説明する。
【0044】
本実施形態の廃水処理方法では、活性汚泥及び廃水Aを混合し生物処理して汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水Bを得る。
【0045】
また、本実施形態の廃水処理方法では、前記膜ユニット24により前記膜濃縮槽21内で汚泥含有生物処理水を膜分離して該汚泥含有生物処理水の活性汚泥濃度を高めてMLSS濃度を10,000mg/L以上、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)を0.2kgBOD/kgSS/d以下とする高濃度化工程と、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部を前記膜濃縮槽21外に排出して前記固液分離槽31に供給し、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水Bを得る浄化水生成工程とを実施する。
【0046】
前記汚泥含有生物処理水のMLSS濃度は、好ましくは、10000〜30000mg/Lにし、より好ましくは、15000〜20000mg/Lにする。
【0047】
前記BOD汚泥負荷は、好ましくは、0.10〜0.19kgBOD/kgSS/dにし、より好ましくは、0.05〜0.15kgBOD/kgSS/dにする。
【0048】
BOD容積負荷は、好ましくは、0.1〜6kgBOD/m3 /dにし、より好ましくは、1〜3kgBOD/m3 /dにする。
【0049】
本実施形態の廃水処理方法では、好ましくは、継続的に1日以上の継続時間で、前記汚泥含有生物処理水のMLSS濃度を10,000mg/L以上にしつつ、前記BOD汚泥負荷を0.2kgBOD/kgSS/d以下にする。
尚、「継続的に1日以上の継続時間で、前記汚泥含有生物処理水のMLSS濃度を所定範囲内にしつつ、前記BOD汚泥負荷を所定範囲内にする」には、“継続期間のうち一時的に、該MLSS濃度が所定範囲から外れた状態、及び/又は該BOD汚泥負荷が所定範囲から外れた状態”の場合も含まれる。例えば、“継続期間のうち合計1/20の期間、該MLSS濃度が所定範囲から外れた状態、及び/又は該BOD汚泥負荷が所定範囲から外れた状態”の場合も含まれる。更には、“継続期間のうち合計1/10の期間、該MLSS濃度が所定範囲から外れた状態、及び/又は該BOD汚泥負荷が所定範囲から外れた状態”の場合も含まれる。
【0050】
前記継続期間は、好ましくは、2日以上、より好ましくは、7日以上、さらに好ましくは、30日〜20年である。
【0051】
また、本実施形態の廃水処理方法では、収容槽25を用い、膜分離槽21と該収容槽25とそれぞれに移送される廃水Aの移送割合を調節して廃水Aを膜分離槽21と収容槽25とに供給する廃水供給工程と、収容槽25に膜濃縮槽21より排出された汚泥含有生物処理水を収容し且つ固液分離により得られた汚泥濃縮水Cを加えて生物処理し、生成した汚泥含有生物処理水を固液分離槽31に供給する汚泥含有生物処理水供給工程とを実施する。
【0052】
さらに、本実施形態の廃水処理方法では、前記活性汚泥として、担体22により凝集されたものを用いる。
【0053】
尚、本実施形態の廃水処理装置および廃水処理方法は、上記構成を有するものであったが、本発明の廃水処理装置および廃水処理方法は、上記構成に限定されず、適宜設計変更可能である。
【0054】
即ち、本実施形態の廃水処理装置1は、収容槽25を備えてなるが、図3に示すように、本発明の廃水処理装置1は、収容槽25を備えない態様であってもよい。
【0055】
斯かる廃水処理装置1は、膜濃縮槽21より排出された汚泥含有生物処理水が汚泥含有生物処理水移送経路4bにより固液分離部3に移送されるように構成されてもよい。
【0056】
また、斯かる廃水処理装置1は、膜濃縮槽21内の汚泥含有生物処理水に汚泥濃縮水Cが加えられるように構成されてもよい。
【0057】
さらに、本実施形態の廃水処理装置1は、固液分離処理水が浄化水Bとして浄化水貯留部(図示せず)に移送されるように構成されてなるが、本発明の廃水処理装置は、図4に示すように、固液分離部3に固液分離処理水を膜濾過する膜ユニット32が備えられ、前記固液分離処理水から膜ユニット32による膜濾過によって透過水たる浄化水Bを得るように構成されてもよい。この場合、本実施形態の廃水処理装置1は、膜ユニット32の非透過水を一部放流するように構成されてもよい。斯かる廃水処理装置1は、固液分離槽31にSMPが蓄積されるのを抑制して、濾過膜の目詰まりを抑制することができる。
【0058】
前記膜ユニット32は、前記固液分離槽31内の液面下に浸漬膜として設置されてなる。また、膜ユニット32は、濾過膜を常時あるいは間欠的に曝気して該濾過膜に付着した凝集汚泥体等の汚れを取り除く膜曝気手段(図示せず)を備えてなる。
【0059】
前記膜ユニット32は、図4に示すように、浸漬膜として設置されてなるが、図5に示すように、膜ユニット32が容器に濾過膜が収納されたタイプであり、固液分離槽31の槽外に設置され、且つ固液分離処理水がポンプ33を介して加圧されてから該膜ユニット32に供給されるように構成されてもよい。この場合も、本実施形態の廃水処理装置1は、前記の理由により膜ユニット32の非透過水の一部を放流するように構成されてもよい。
【0060】
前記膜ユニット32が固液分離槽31の槽外に設置されてなる廃水処理装置は、前記膜ユニット32により生成される非透過水が混合水の一部として生物処理部2に移送されるように構成されてなる。具体的には、該非透過水を移送する非透過水移送経路4hを備えてなる。
【0061】
また、本実施形態の廃水処理装置1は、膜濃縮槽21内で凝集汚泥体を生成するように構成されてなるが、本発明の廃水処理装置は、膜濃縮槽21の代わりに収容槽25内で凝集汚泥体を生成するように構成されてもよく、また、膜濃縮槽21及び収容槽25内で集汚泥体を生成するように構成されてもよい。
また、図6に示すように、本実施形態の廃水処理装置1は、前記生物処理部2に、前記生物凝集手段により凝集汚泥体を生成する生物凝集槽27が備えられ、前記固液分離部3により生成された汚泥濃縮水Cが生物凝集槽27に移送され、前記生物凝集槽27により生成された凝集汚泥体が収容槽25に移送されるように構成されてもよい。尚、前記生物凝集槽27により生成された凝集汚泥体が膜濃縮槽21に移送されるように構成されてもよい。
斯かる廃水処理装置1は、活性汚泥が濃縮された汚泥濃縮水Cに含まれる活性汚泥が凝集されるように構成されてなることにより、より一層効率よく凝集汚泥体を生成し得るという利点がある。また、汚泥濃縮水Cを返送するためのエネルギーを有効利用することができるという利点もある。
【0062】
斯かる廃水処理装置1は、前記固液分離部3により生成された汚泥濃縮水Cを前記生物凝集槽27に移送する汚泥濃縮水移送経路4iと、前記生物凝集槽27で生成された凝集汚泥体を膜濃縮槽21に移送する凝集汚泥体移送経路4jとを備えてなる。
【0063】
また、斯かる廃水処理装置1は、必要に応じて、前記生物凝集槽27内を曝気する生物凝集槽曝気手段(図示せず)を備えてなるが、該生物凝集槽曝気手段(図示せず)を備えない態様であってもよい。
【0064】
さらに、斯かる廃水処理装置1は、前記生物凝集槽27が前記膜濃縮槽21及び収容槽25と別体の槽となるように形成されてなる。
【0065】
また、斯かる廃水処理装置1は、好ましくは、前記生物凝集手段が、担体22により前記活性汚泥を凝集させ前記担体22から前記凝集汚泥体を分離させて生成するものであり、前記担体22が、活性汚泥が付着される付着体22aと該付着体22aを支持する支持部22bとを備えてなり、前記汚泥濃縮水移送経路4iから前記生物凝集槽27に移送される汚泥濃縮水の水流によって前記付着体22aが揺動するように構成されてなる。
斯かる廃水処理装置1は、水流によって前記付着体22aが揺動するように構成されてなることにより、エネルギー効率良く凝集汚泥体が担体22から分離され得るという利点がある。また、効率よく凝集汚泥体を生成することができることから、凝集汚泥体の生成効率を低下させずに、担体22の大きさを小さくし得るという利点もある。
【0066】
また、斯かる廃水処理装置1は、生物凝集槽27が担体22により活性汚泥を凝集させるように構成されてなる代わりに、生物凝集槽27として、汚泥濃縮水Cが乱流で移送され得るように移送経路の長さが延長されたものや経路が細分化されたもの、具体的には、図7に示すような流路がジグザグにされたものや、図8に示すような多管状(ハニカム状)のものや、図9に示すようなスタティクミキサーが設けられてなるものを備えてもよい。斯かる廃水処理装置1によれば、高速に活性汚泥を壁様のものに衝突させることができるため、効率良く凝集汚泥体を生成し得るという利点がある。
【0067】
さらに、斯かる廃水処理装置1は、槽内に配されてなるが、槽外に配されてもよい。具体的には、図10に示すように、斯かる廃水処理装置1は、膜ユニット24が容器に濾過膜が収納されたタイプであり、膜濃縮槽21の槽外に設置され、且つ汚泥含有生物処理水がポンプ28を介して加圧されてから該膜ユニット24に供給されるように構成されてもよい。
【0068】
前記膜ユニット24が膜濃縮槽21の槽外に設置されてなる廃水処理装置1は、前記膜ユニット24により生成される非透過水が混合水の一部として膜濃縮槽21に移送されるように構成されてなる。具体的には、斯かる廃水処理装置1は、該非透過水を混合水の一部として膜濃縮槽21に移送する非透過水移送経路4kを備えてなる。
【実施例】
【0069】
次に、試験例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0070】
(試験例1)
槽(水収容可能容量:10L、内寸:0.15m(幅)×0.15m(奥行き)×0.45m(高さ))、担体としてのバイオフリンジ(登録商標)(エヌ・イー・ティ社製)、及び曝気手段としてのポンプを用いて、活性汚泥を凝集し、該凝集した活性汚泥(凝集汚泥体)と廃水とを混合して混合水を生成し該混合水を生物処理して汚泥含有生物処理水を得た。具体的には、汚泥含有生物処理水貯留槽内のMLSS濃度を所定値となるようにしつつ、槽内の活性汚泥に対するBOD負荷(BOD汚泥負荷)を所定値にとなるように30〜90日間以上維持して、混合水を生物処理して汚泥含有生物処理水を得た。
尚、汚泥含有生物処理水貯留槽内のMLSS濃度を所定値となるようにしつつ、汚泥含有生物処理水貯留槽内の活性汚泥に対するBOD負荷(BOD汚泥負荷)を所定値にとなるように維持する期間は、10日以上であれば、SV30、SVI、5C透過量に前記期間の違いによる影響はない。
試験例1で実施した混合水の生物処理におけるMLSS濃度とBOD汚泥負荷との組み合わせを図11に示す。
尚、MLSS濃度、及びBOD汚泥負荷は、JIS B 9944−1978に従って測定及び算出した。
【0071】
(試験例2)
担体を用いなかったこと以外は、試験例1と同様にして、汚泥含有生物処理水を得た。
試験例2で実施した混合水の生物処理におけるMLSS濃度とBOD汚泥負荷との組み合わせを図12に示す。
【0072】
試験例の汚泥含有生物処理水を下記の試験に供した。
【0073】
(SV30、SVIの測定)
試験例の汚泥含有生物処理水の活性汚泥沈降率(SV30)、及び汚泥体積指標(SVI)は、JIS B 9944−1978に従って測定及び算出した。
【0074】
(5C透過量の測定)
濾過器上に5種C(JIS P 3801)の濾紙(アドバンテック東洋社製、直径15cm)を載置し、該濾紙上に試験例の汚泥含有生物処理水を50mL滴下し、滴下してから5分経過した時に濾紙を透過した濾液(透過水)の量(5C透過量)を測定した。
【0075】
上記試験の結果を、試験例1に関しては表1に、試験例2に関しては表2に示す。尚、表1、表2において、SVI、MLSS濃度、SV30、5C透過量として、算出平均値が示されている。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
試験例1−4および2−4の汚泥含有生物処理水では、BOD汚泥負荷が0.2kgBOD/kgSS/dを超え且つMLSS濃度が10,000mg/L未満である条件の試験例1−1、MLSS濃度が10,000mg/L未満である条件の試験例1−2、BOD汚泥負荷が0.2kgBOD/kgSS/dを超えている条件の試験例1−3、および担体を用いなかった試験例2−1〜2−3に比して、SV30及びSVIが低い値を示した。
また、試験例1−4および2−4の汚泥含有生物処理水では、試験例1−1〜1−3、2−1〜2−3に比して、5C透過量が高い値を示した。
【符号の説明】
【0079】
1:廃水処理装置、2:生物処理部、3:固液分離部、4a:原水供給経路、4b:汚泥含有生物処理水移送経路、4c:浄化水移送経路、4d:汚泥濃縮水移送経路、4e:汚泥濃縮水返送経路、4f:透過水移送経路、4g:汚泥含有生物処理水移送経路、4h:非透過水移送経路、4i:汚泥濃縮水移送経路、4j:凝集汚泥体移送経路、4k:非透過水移送経路、21:生物処理槽(膜濃縮槽)、22:担体、22a:付着体、22b:支持部、23:膜濃縮槽曝気手段、24:膜ユニット、25:収容槽、26:収容槽曝気手段、27:生物凝集槽、28:ポンプ、31:固液分離槽、32:膜ユニット、33:ポンプ、A:廃水、B:浄化水、C:汚泥濃縮水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥及び廃水を混合し生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水を得る廃水処理方法であって、
槽内又は槽外に配された膜ユニットにより汚泥含有生物処理水を膜分離して前記生物処理槽としての膜濃縮槽内の活性汚泥濃度を高めてMLSS濃度を10,000mg/L以上、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)を0.2kgBOD/kgSS/d以下とする高濃度化工程と、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部を前記膜濃縮槽外に排出して固液分離槽に供給し、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水を得る浄化水生成工程とを実施することを特徴とする廃水処理方法。
【請求項2】
前記膜濃縮槽と別体の槽となるように形成された収容槽を用い、該膜分離槽と該収容槽とそれぞれに移送される廃水の移送割合を調節して廃水を該膜分離槽と該収容槽とに供給する廃水供給工程と、該収容槽に前記膜濃縮槽より排出された汚泥含有生物処理水を収容し且つ固液分離により得られた汚泥濃縮水を加えて生物処理し、生成した汚泥含有生物処理水を前記固液分離槽に供給する汚泥含有生物処理水供給工程とを実施する請求項1記載の廃水処理方法。
【請求項3】
前記活性汚泥として、担体により凝集されたものを用いる請求項1又は2記載の廃水処理方法。
【請求項4】
活性汚泥及び廃水を混合し該生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得る生物処理部と、該汚泥含有生物処理水を固液分離する固液分離部とを備え、前記生物処理部及び前記固液分離部により浄化水を得るように構成されてなる廃水処理装置であって、
前記生物処理部は、汚泥含有生物処理水を膜分離する膜ユニットを備え、該膜ユニットにより汚泥含有生物処理水が膜分離されて前記生物処理槽としての膜濃縮槽内の活性汚泥濃度が高まるように構成されてなり、
前記膜ユニットは、槽内又は槽外に配されてなり、
前記生物処理部により汚泥含有生物処理水の活性汚泥濃度が高められてMLSS濃度が10,000mg/L以上となるようにしつつ、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)が0.2kgBOD/kgSS/d以下となるように構成され、更に、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部が前記膜濃縮槽外に排出され固液分離槽に供給され、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水を得るように構成されてなることを特徴とする廃水処理装置。
【請求項1】
活性汚泥及び廃水を混合し生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得、該汚泥含有生物処理水を固液分離して浄化水を得る廃水処理方法であって、
槽内又は槽外に配された膜ユニットにより汚泥含有生物処理水を膜分離して前記生物処理槽としての膜濃縮槽内の活性汚泥濃度を高めてMLSS濃度を10,000mg/L以上、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)を0.2kgBOD/kgSS/d以下とする高濃度化工程と、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部を前記膜濃縮槽外に排出して固液分離槽に供給し、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水を得る浄化水生成工程とを実施することを特徴とする廃水処理方法。
【請求項2】
前記膜濃縮槽と別体の槽となるように形成された収容槽を用い、該膜分離槽と該収容槽とそれぞれに移送される廃水の移送割合を調節して廃水を該膜分離槽と該収容槽とに供給する廃水供給工程と、該収容槽に前記膜濃縮槽より排出された汚泥含有生物処理水を収容し且つ固液分離により得られた汚泥濃縮水を加えて生物処理し、生成した汚泥含有生物処理水を前記固液分離槽に供給する汚泥含有生物処理水供給工程とを実施する請求項1記載の廃水処理方法。
【請求項3】
前記活性汚泥として、担体により凝集されたものを用いる請求項1又は2記載の廃水処理方法。
【請求項4】
活性汚泥及び廃水を混合し該生物処理槽にて生物処理して汚泥含有生物処理水を得る生物処理部と、該汚泥含有生物処理水を固液分離する固液分離部とを備え、前記生物処理部及び前記固液分離部により浄化水を得るように構成されてなる廃水処理装置であって、
前記生物処理部は、汚泥含有生物処理水を膜分離する膜ユニットを備え、該膜ユニットにより汚泥含有生物処理水が膜分離されて前記生物処理槽としての膜濃縮槽内の活性汚泥濃度が高まるように構成されてなり、
前記膜ユニットは、槽内又は槽外に配されてなり、
前記生物処理部により汚泥含有生物処理水の活性汚泥濃度が高められてMLSS濃度が10,000mg/L以上となるようにしつつ、活性汚泥に対するBODの負荷(BOD汚泥負荷)が0.2kgBOD/kgSS/d以下となるように構成され、更に、MLSS濃度が高められた汚泥含有生物処理水の一部が前記膜濃縮槽外に排出され固液分離槽に供給され、固液分離により、固液分離処理水たる浄化水を得るように構成されてなることを特徴とする廃水処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−25187(P2011−25187A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175296(P2009−175296)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】
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