説明

建築パネルおよびそれを用いた断熱壁体

【課題】 建築基準法第77条に基づく指定性能評価機関の防耐火性能試験・評価業務方法書により1時間の加熱を実施したとき、試験終了時まで試験体の裏面温度上昇が平均140K以下、最高で180K以下の耐火性能をもち、火災時にパネル接合部からの火炎侵入の原因となるパネル接続部の熱による変形分離を防止し得る建築パネルおよびそれを用いた断熱壁体を提案する。
【解決手段】 表側外装材と裏側外装材を対向させ両外装材間に断熱材を充填させてなる、本体と接続体から構成される建築パネルであって、前記接続体は、前記本体の両端部に設けられ、該本体の表側外装材および裏側外装材がそれぞれ、隣接する建築パネルの本体の表側外装材および裏側外装材と嵌合連結部を介して接続可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家屋や簡易建築物等の外壁や間仕切り、屋根などを構成する建築パネルおよびそれを用いた断熱壁体に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋や簡易建築物等の外壁に使用される建築パネルは耐火性に優れていることが必要である。その規制値は、近年では、たとえば外壁の耐火構造においては、建築基準法第77条に基づく指定性能評価機関の防耐火性能試験・評価業務方法書により1時間の加熱を実施し、試験終了時まで試験体の裏面温度上昇が平均140K以下、最高で180K以下であることが要求されている。このような断熱性は基本的には、パネル本体を表側外装材と裏側外装材を対向させ、両外装材間に断熱材を充填させる際に断熱材の厚さを増加させることにより対応できる。
【0003】
しかしながら、建築パネルは一般に上下、左右に連結されて使用されるものであり、そのため、家屋や簡易建築物等の全体の断熱性は、単にパネル本体の断熱性のみでなく、パネル接続部の断熱性能、特にパネル接合部からの火炎侵入の防止性能の良否によって大きく左右される。このような問題に対処するため、特許文献1には、表側外皮と裏側外皮とを平行に対向させ、両外皮間に断熱材を充填させてパネルを一体形成し、このパネルの一方端部に凸状の雄実部を突設すると共に他方端部に雌実部を凹設して隣合うパネルの雄実部と雌実部とを実結合し、表側外皮及び裏側外皮にビスのような固着具を貫通させて雌実部の近傍を取付け下地に固定し、パネル表面の雄実部側の端部から隣合うパネルの表面に向けてカバー部を延出させ、このカバー部により前記固着具を覆うという建築用パネルの取付け構造が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特公平6-84672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の手段におけるパネル接合部からの火炎侵入の防止手段は、パネル厚さ方向の中央部に設けた雄実部と雌実部による嵌合部で行なわれており、一方のパネルの表面材と他方のパネルの表側外皮と裏側外皮(表側外装材と裏側外装材)がそれぞれ外皮ごとには噛み合っていないため、これらの隙間から実結合部に火炎が入る危険がある。また、特許文献1記載の鋼板パネルは火災時に火炎により加熱される側の外皮(鋼板)が熱膨張する一方、火炎の当たらない側の熱膨張が少なく、これにより生ずる熱膨張量の差により加熱される側に外皮(鋼板)が反り返る。この反り返り量は、パネル接合部間の剛性の違いにより差があるので、結局パネル接合部に隙間が生じ、火災時にはその隙間からさらに火炎が侵入することになる。
【0006】
本発明は、上記建築基準法第77条に基づく指定性能評価機関の防耐火性能試験・評価業務方法書により1時間の加熱を実施したとき、試験終了時まで試験体の裏面温度上昇が平均140K以下、最高で180K以下の耐火性能をもち、火災時にパネル接合部からの火炎侵入の原因となるパネル接続部の熱による変形分離を防止し得る建築パネルおよびそれを用いた断熱壁体を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表側外装材と裏側外装材を対向させ両外装材間に断熱材を充填させてなる、本体と接続体から構成される建築パネルであって、前記接続体は、前記本体の両端部に設けられ、該本体の表側外装材および裏側外装材がそれぞれ、隣接する建築パネルの本体の表側外装材および裏側外装材と嵌合連結部を介して接続可能に構成されている。上記発明において、本体の表側外層材と裏側外装材との間に充填された断熱材は、石膏ボードを介して接続体により長手方向に挟持されていることとするのが好ましい。
【0008】
また、上記建築パネルは、隣接する建築パネルと嵌合連結部を形成するために、建築パネルの嵌合連結方向に対して直角方向に延在する凸条部を一端に備え、かつ、他端に凹溝部を備えるものであることとするのが好ましい。
【0009】
上記建築パネルの表側外装材の凸条部は、表側外装材の一端に形成され、建築パネルの本体から表側外装材を延長して内側に屈曲させた段部と該段部に続いて形成された前記表側外装材と平行な立上り部と、該立上り部の先端を外側に折り返して形成した係合片及び折り返し部からなる凸条とからなり、裏側外装材の凸条部は、裏側外装材の一端に形成され、建築パネルの本体から延長して内側に屈曲させた段部と、該段部に続いて形成された前記裏側外装材と平行な立上り部と、該立上り部の先端を外側に折り返して形成した係合片及び折り返し部からなる凸条とからなり、表側外装材の凹溝部は、前記表側外装材の凸条部の他端に形成され、建築パネルの本体から表側外装材を延在させた上で内側に折り返して形成された二重折返し部と、該二重折返し部に続いて形成された係合溝及びその折返し部から構成される凹溝とからなり、裏側外装材の凹溝部は、前記裏側外装材の凸条部の他端に形成され、建築パネルの本体から裏側外装材を延在させた上で内側に折り返して形成された二重折返し部と該二重折返し部に続いて形成された係合溝及びその折返し部から構成される凹溝と、からなるものとするのが好ましい。
【0010】
上記建築パネルの表側外装材の凸条部の立上り部には、建築パネル固定用ビスのガイド溝を設けるとともに、裏側外装材を延長・折り返して形成した段部を裏側外装材から立上り部に至る斜辺とし、該斜辺を前記建築パネル固定用ビスの誘導斜辺とすることが好ましい。また、係合片及び折り返し部からなる凸条は、断面が山形であるのも好ましい。
【0011】
また、上記建築パネルの本体の表側外層材には、該表側外装材端部を内側に屈曲させて形成した段部と該段部に続く立上り部からなる隠し壁が形成されていることとすることが好ましい。
【0012】
上記各発明に係る記載の建築パネルを下地に固定し、隣接する建築パネルを順次連結して断熱壁体とすることができる。その際、嵌合連結部の凸条部を上方になるように配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る建築パネルは、表側外装材および裏側外装材が、それぞれの端部に、隣接する建築パネルの表側外装材および裏側外装材との嵌合連結部を有しており、外装材が建築パネルの表側および裏側において互いにそれぞれ嵌合連結され、直接噛み合うことができるので、火災時に火炎により加熱されても、これら嵌合連結での熱膨張の差は生ずることがなく、この部位から火炎が侵入する危険がない。
【0014】
また、本発明の建築パネルには固定用ビスのガイド溝と誘導斜辺が設けられているので、常に所定個所にビスを打ち込むことができ、かつ、ビスを下地内に所定深さに打ち込むことができる。
【0015】
さらに、本発明の建築パネルを利用して嵌合連結部の凸条部を上方になるように断熱壁体を構築すれば、凹溝部を形成するための外装材の延長部が下方に延在していて、前記ビス打ち込み部を覆うので、ビス打ち込み部が隠蔽されて美観上好ましくなるとともに、嵌合接続部からの風雨の侵入を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明に係る建築パネルの第1実施例の構造を示す断面図である。ここに示すように、本発明の建築パネル1は、本体Mの部分と接続体Jの部分,Kの部分から構成されている。本体Mは、表側外装材11に対向してほぼ平行に配置された裏側外装材21とその間に充填された断熱材31からなっている。この建築パネル1を構成する本体Mの端部に、隣接する建築パネルとの接続体Jの部分,Kの部分がつながるように構成されている。
【0017】
接続体Jは、本体Mを構成している表側外装材11と裏側外装材21の、図1でいえば上側の両端部に設けられ、接続体Kは、本体Mを構成している表側外装材11と裏側外装材21の、図でいえば下側の両端部に設けられ、これにより図2に示すように、一方の建築パネル1Aの端部に設けられた凸条部12、22が、表側外装材11と裏側外装材21側で、それぞれ他方の建築パネル1Bの端部に設けられた凹溝部13、23の中に入り込み、嵌合連結部(表側外装材側の嵌合連結部C1、裏側外装材側の嵌合連結部C2)が完成され、これにより一方の建築パネル1Aの表側外装材は他方の建築パネル1Bの表側外装材と、また、建築パネル1Aの裏側外装材は他方の建築パネル1Bの裏側外装材と、互いに結合することとなる。具体的には、表側外装材側の嵌合連結部C1は、一方の建築パネル1Aの嵌合連結方向に対して紙面垂直方向に延在する凸条部12と、これに接続される他方の建築パネル1Bの凹溝部18の結合部であり、裏側外装材側の嵌合連結部C2は、一方の建築パネル1Aの嵌合連結方向に対して紙面垂直方向に延在する凸条部22とこれに接続される他方の建築パネル1Bの凹溝部23の結合部である。なお、接続体Jの内側には石膏ボード32、クッション性断熱材33が充填されている。
【0018】
このような嵌合連結部C1、C2を形成するための凸条部12、22及び凹溝部13、23の形状は、嵌合連結関係が形成できる限り自由に選択できるものであり、本発明の技術的範囲はそれに拘束されるものではないが、その代表的な例を示すと、図1(第1実施例)、図2(第2実施例)のようになる。
【0019】
図1に示す第1実施例について説明する。この例では、凸条部12は、建築パネルの本体Mから延長された外装材11を内側に屈曲させた段部14、この段部14から表側外装材11と平行に立上げた立上り部15、この立上り部15の先端を外側に折り返して形成した係合片16およびこの係合片16の先端を本体M側に折り返した折り返し部121からなっている。そして、立上り部15、係合片16および折り返し部121により凸条122が形成されている。
【0020】
一方、裏側外装材21に形成される凸条部22は、建築パネルの本体Mから延長された外装材21を内側に屈曲させた段部25、この段部25に続く裏側外装材21と平行に立ち上げた立上り部26、立上り部26の先端を外側に折り返して形成した係合片27およびこの係合片27の先端を本体M側に折り返した折り返し部221からなっている。そして、立上り部26、係合片27および折り返し部221により凸条222が形成されている。
【0021】
図1に示す例では、凸条122、222は平坦な係合片16、27とその本体側への折り返し部121、221からなっている。しかしながら、凸条の構成はこれに限るものではない。たとえば折り返し部121、221を省略することもできる。
【0022】
表側外装材11に形成される凹溝部13は、建築パネル1の本体Mから表側外装材11が前記凸条部12と反対側に延長され、凸状部22の他端にて、さらに内側に折り返されて形成された二重折返し部18、この二重折返し部18を内方に折り曲げて形成した係合溝19およびその折り返し部131からなっている。この場合において、係合溝19は断熱材31を支持するようになっており、また、二重折返し部18、係合溝19および折り返し部131により凹溝132が形成されている。凹溝部23の構成も上記と同様である。
【0023】
なお、図1に示す例では、上側の接続体Jの内側にはクッション性断熱材33が充填され、下側の接続体Kの内側には石膏ボード32が充填されているが、本発明の建築パネルの構成はこれに限るものではなく、両方にクッション性断熱材のほかの断熱材が充填されるようにしてもよい。
【0024】
本発明の基本である接続体J,Kの構造は、上記に説明したとおりである。そして、この構造をとることにより、表側外装材および裏側外装材が、それぞれの端部において、隣接する建築パネルの表側外装材および裏側外装材と嵌合連結され、特許文献1記載の発明と異なり、各外装材はそれぞれ直接噛み合うことになる。それにより、火災時に火炎により加熱されてもこれら嵌合連結部で火炎により加熱される側とそうでない側の熱膨張量の差からくる表裏の外装材の反り返り量は低減されるとともにその表裏での差も小さくなり、この部位から火炎が侵入する危険が避けられる。
【0025】
このように構成された建築パネル1は、図2に示すように下地材3に取付けられ、壁体とされる。この例では、基礎材2の上に間柱4、下地材3を立設し、この下地材4に対して建築パネル1を建築パネル固定用ビス34(以下単にビス)によって固定し、これを下から上に向けて順次嵌合連結して断熱壁体を構築するようになっている。
【0026】
この取付けの際、ビス34が確実に下地材にねじ込まれるようにするためには、図1に示すように、表側外装材の凸条部12の立上り部15に、ビス34のガイド溝17を設けるとともに、裏側外装材を延長・折り返して形成した段部25を裏側外装材21から立上り部26にかけた斜辺とし、この斜辺を前記建築パネル固定用ビスの誘導斜辺とすることが望ましい。これにより、建築パネル1を下地材3に取付ける際のビス34の打込み位置を一定にすることができ、また打込みの際にビス34が斜行しても、その先端が誘導斜辺によって誘導され、下地3内に正しく固定されることになる(図2参照)。したがって、誘導斜辺には、裏側外装材の延在部24から比較的緩い立上り角(たとえば図1中のθ=30°)を持たせるとともに、その存在範囲を前記ガイド溝17に対応する位置よりも嵌合するもう一つの建築パネル1Bとの接続部側にとるのがよい。なお、以上の説明では、便宜上、斜辺という言葉で表現しているが、実物では面になっていることはいうまでもない。
【0027】
上記の図1に示す形態の建築パネル1を用いて断熱壁体を構築するためには、表側外装材側の凸条部12の高さH1をその凹溝部13の深さH2よりわずかだけ大きく、一方、裏側外装材側の凸条部22の高さH3をその凹溝部23の深さH4よりわずかだけ大きくとり、さらに、表側外装材側の凸条部12における係合片16の幅、裏側外装材側の凸条部22における係合片27の幅を、それぞれ表側外装材側の凹溝部13の幅、裏側外装材側の凹溝部23とほぼ同じかそれよりわずかだけ小さくとるのがよい。
【0028】
具体的には、表側外装材側の凸条部12の高さH1と凹溝部13の深さH2、裏側外装材側の凸条部22の高さH3と凹溝部23の深さH4の間に以下のような関係をもたせるのがよい。
H1-H2=1〜7mm
H3-H4=1〜7mm
【0029】
これにより、図2に示すように、建築パネル1Aに隣接して建築パネル1Bを建築パネル1Aの凸条部12、22と建築パネル1Bの凹溝部13、23を介して確実に嵌合連結することができる。また、その際、表側凹溝部13の二重折返し部18が表側凸条部12を外部から遮蔽できるようになり、同様に裏側凹溝部21の二重折返し部28が裏側凸条部22を外部から遮蔽できるようになる。
【0030】
図3は、本発明に係る建築パネルの他の実施形態を示す断面図である。この例では、凸条部12の立上り部15、26の先端を断面が山形になるように折り曲げた形状の凸条122、222とし、その先端を係合片16、27としている。この場合、山形の幅を嵌合される凹溝部の幅よりやや大きくすれば、凸条部12が凹溝部13と嵌合するとき、嵌合作業を容易にするとともに、凸条122、222のスプリングバックの作用により両者の嵌合関係がより確実になるという利点がある。
【0031】
また、図3に示す例では、表側外装材11側に凸条部12を形成する立上り部15に凹溝151を設け、それにより裏側外装材の段部25と共同で石膏ボード32を支持するようにしている。また、表側外装材11の凹溝部13を形成する折り返し部131をさらに内側に折り返して石膏ボード支持片133を形成している。裏側外装材側の石膏ボード支持片233を形成して、共同で石膏ボード32を支持するようにしている。したがって、これら凸条部側の石膏ボード支持部(凹溝151と段部25)と凹溝部側の石膏ボード支持部(石膏ボード支持片133と石膏ボード支持片233)とにより、本体M表側外層材と裏側外装材との間に充填された断熱材31は石膏ボード32とともに長手方向に挟持されることになる。
【0032】
さらに、図3に示す例では、表面外装材11が、本体Mと接続体Jとの境界において内側に屈曲されて段部111を形成し、さらに段部111に続けて立上げる形で隠し壁112を形成している。これにより、図4に示すように、隣接する建築パネルと嵌合したとき、隠し壁112がビス34を外部の視線から遮り、組立てたときの美観が維持できるようになる。
【0033】
図2に示す形態の建築パネル1を用いて断熱壁体を構築し、本発明本来の機能とともに隠し壁としての機能を発揮させるためには、図4からも明らかなように、凹溝部13を形成する二重折返し部18を延長して、建築パネルの結合状態において隠し壁112をカバーするようにするのがよい。
【0034】
このような隠し壁112を有する建築パネルの各部寸法を具体的に示すと次のとおりである。
H5-H2=1〜7mm
H2-H1≧0mm
H3-H4=1〜7mm
なお、図3に示す例においても、石膏ボード32に代えてクッション性断熱材ほかの断熱材33が充填されるようにしてもよい。
【0035】
本発明の建築パネルにおいても、断熱機能は対向して配置された外装材間に充填された断熱材により発揮される。この断熱材の選択はパネルの使用個所、要求性能に応じて定めればよいが、およそ次のようにするのがよい。まず、パネル本体部の断熱材31はイソシアネレートやウレタン樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂の発泡体あるいはこれらにガラス繊維等の無機質繊維を混合分散させた発泡体、あるいはロックウール保温板等の板状の無機質繊維体とするのがよい。
【0036】
これに対し、接続体J,Kの内側、すなわち、凸条部12、22間および凹溝部13、23間に配置される断熱材32は、たとえば石膏ボードのような比較的硬質のものとして建築パネルを嵌合接続するときの相互の面圧によって変形し難くするのがよい。なお、この断熱材32は上記凸条部12、27側では、少なくとも裏側凸条部22にある段部25によって支持されるようにするのがよく、一方、上記凹溝部13、23側では、折り返し部133,233によって支持されるようにするのが好ましい。また、建築パネルの嵌合連結を円滑に行い、かつ嵌合接続部位における断熱性を確保するために前記硬質の断熱材32の表面側(接続面側)には、たとえばガラスウール、スラグウール、セラミックファイバーブランケットなどのクッション性断熱材33を配するのも好ましい。
【0037】
このように構成された建築パネル1は、図5に示すように下地材3に取付けられ、壁体とされる。この例では基礎材2上に間柱4、下地材3を立設し、この下地材4に対して建築パネル1をビス34によって固定し、これを下から上に向けて順次嵌合連結して断熱壁体を構築するようになっている。
【実施例1】
【0038】
図1に示す構造を有し、表1に記載の材料構成及び寸法を有する建築パネルを製作し、これを上下に連結して壁体として組立て、建築基準法第77条に基づく指定性能評価機関の防耐火性能試験・評価業務方法書により加熱を実施した。測温は、図1に示すように建築パネル裏面21の高さ方向中央部(A)及び建築パネル裏面の二重折返し部28の下端部近傍(B)にそれぞれ建築パネル紙面垂直方向8ヶ所に熱電対を取付けて行なった。
【0039】
その結果得られた耐火性能試験・評価結果は図6に示す試験時間に対する試験体の裏面上昇温度値の関係を示すグラフのとおりであった。図6に示すとおり、本発明による建築パネルは1時間の加熱を実施したとき、試験終了時まで試験体の裏面温度上昇が平均140K以下、最高で180K以下の耐火性能をもつことが確認できた。また、試験後、断熱壁体を解体して嵌合連結部の変形の有無を調査したところ、火災時にパネルの嵌合連結部からの火炎侵入の原因となる程度の大きな変形は認められず、火災時にもパネルの嵌合連結部での分離が十分防止し得る建築パネルであることが確認できた。
【0040】
【表1】

【実施例2】
【0041】
図3に示す構造を有し、実施例1と同様の材料構成を有する建築パネルを表2に示すパネル寸法により製作し、これを上下に連結して壁体として組立て、実施例1と同様の試験を行った。その結果得られた耐火性能試験・評価結果は図6に示す試験時間に対する試験体の裏面上昇温度値の関係を示すグラフのとおりであった。この場合においても、実施例1の場合と同様の効果を確認できた。
【0042】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の建築パネル第1実施例の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の建築パネル(第1実施例)の取付け、係合状態を示す断面図である。
【図3】本発明の建築パネル第2実施例の構造を示す断面図である。
【図4】本発明の建築パネル(第2実施例)の取付け、係合状態を示す断面図である。
【図5】本発明の建築パネルによる断熱壁体の組立て状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の建築パネルの耐火性能試験・評価結果を示すグラフ(試験時間に対する試験体の裏面上昇温度値の関係図)である。
【符号の説明】
【0044】
1:建築パネル
2:基礎材
3:下地材
4:間柱
11:表側外装材
111:段部
112:隠し壁
12:(表側外装材の)凸条部
121:折り返し部
122:凸条
13:(表側外装材の)凹溝部
14:段部
15:立上り部
151:凹溝
16:係合片
17:ガイド溝
18:二重折返し部
19:係合溝
131:折り返し部
132:凹溝
133:石膏ボード支持片
21:裏側外装材
22:(裏側外装材の)凸条部
221:折り返し部
222:凸条
23:(裏側外装材の)凹溝部
231:折り返し部
232:凹溝
233:石膏ボード支持片
24:(裏側外装材の)延在部
25:段部
26:立上り部
27:係合片
28:二重折返し部
29:係合溝
31:断熱材
32:石膏ボード
33:クッション性断熱材
34:建築パネル固定用ビス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側外装材と裏側外装材を対向させ両外装材間に断熱材を充填させてなる、本体と接続体から構成される建築パネルであって、
前記接続体は、前記本体の両端部に設けられ、該本体の表側外装材および裏側外装材がそれぞれ、隣接する建築パネルの本体の表側外装材および裏側外装材と嵌合連結部を介して接続可能に構成されているものであることを特徴とする建築パネル。
【請求項2】
本体の表側外層材と裏側外装材との間に充填された断熱材は、石膏ボードを介して接続体により長手方向に挟持されていることを特徴とする請求項1記載の建築パネル。
【請求項3】
隣接する建築パネルと嵌合連結部を形成するために、建築パネルの嵌合連結方向に対して直角方向に延在する凸条部を一端に備え、かつ、他端に凹溝部を備えるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の建築パネル。
【請求項4】
表側外装材の凸条部は、表側外装材の一端に形成され、建築パネルの本体から表側外装材を延長して内側に屈曲させた段部と該段部に続いて形成された前記表側外装材と平行な立上り部と、該立上り部の先端を外側に折り返して形成した係合片及び折り返し部からなる凸条とからなり、
裏側外装材の凸条部は、裏側外装材の一端に形成され、建築パネルの本体から延長して内側に屈曲させた段部と、該段部に続いて形成された前記裏側外装材と平行な立上り部と、該立上り部の先端を外側に折り返して形成した係合片及び折り返し部から構成される凸条とからなり、
表側外装材の凹溝部は、前記表側外装材の凸条部の他端に形成され、建築パネルの本体から表側外装材を延在させた上で内側に折り返して形成された二重折返し部と、該二重折返し部に続いて形成された係合溝及びその折返し部から構成される凹溝とからなり、
裏側外装材の凹溝部は、前記裏側外装材の凸条部の他端に形成され、建築パネルの本体から裏側外装材を延在させた上で内側に折り返して形成された二重折返し部と、該二重折返し部に続いて形成された係合溝及びその折返し部から構成される凹溝とからなるものであることを特徴とする請求項3記載の建築パネル。
【請求項5】
表側外装材の凸条部の立上り部には、建築パネル固定用ビスのガイド溝を設けるとともに、
裏側外装材を延長・折り返して形成した段部を裏側外装材から立上り部に至る斜辺とし、該斜辺を前記建築パネル固定用ビスの誘導斜辺としたことを特徴とする請求項3又は4記載の建築パネル。
【請求項6】
係合片及び折り返し部からなる凸条は、断面が山形であることを特徴とする請求項4記載の建築パネル。
【請求項7】
本体部の表側外装材には、該表側外装材端部を内側に屈曲させて形成した段部と該段部に続く立上り部からなる隠し壁が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の建築パネル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の建築パネルを下地に固定し、隣接する建築パネルを順次連結してなることを特徴とする断熱壁体。
【請求項9】
嵌合連結部の凸条部を上方になるように配置してなることを特徴とする請求項8記載の断熱壁体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−9564(P2006−9564A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104376(P2005−104376)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000200323)JFE鋼板株式会社 (77)
【Fターム(参考)】