説明

弁およびトロイダル型無段変速機

【課題】油内で油に対して開放された形状で、油中の異物の噛み込みを防止できる弁、およびこの弁を変速制御弁として備えるトロイダル型無段変速機を提供する。
【解決手段】変速制御弁85は、ハウジング弁孔89を備える弁孔部としてのバルブハウジング86と、ハウジング弁孔89内に挿入されるとともに、ハウジング弁孔89内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体としてのスリーブ87を備える。また、変速制御弁85は、スリーブ弁孔90を備える弁孔部としてのスリーブ87と、スリーブ弁孔90内に挿入されるとともに、スリーブ弁孔90内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体としてのスプール88を備える。ハウジング86のハウジング弁孔89の開口部99は油中に開放されている。バルブハウジング86の開口部99の周囲に、環状の磁石100が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中で好適に用いられる弁、およびこの弁を変速制御弁として用いているトロイダル型無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図8および図9に示すように構成されている。図8に示すように、ケーシング50の内側には入力軸(中心軸)1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面)2a,2aと出力側ディスク3,3の内側面(凹面)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図9参照)が回転自在に挟持されている。
【0005】
図8中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図8の右面)がローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
【0006】
図9は、図8のA−A線に沿う断面図である。図9に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図9においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、支持板部16の長手方向(図9の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
【0007】
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
【0008】
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図9の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図8の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は球状凹面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
【0009】
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図9で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0010】
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0011】
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
【0012】
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図9の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
【0013】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
【0014】
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図9の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
【0015】
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の変速比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0016】
このようなトロイダル型無段変速機の駆動装置32には、図10に一部の概略を示す油圧回路により圧油が供給されている。
なお、駆動装置32の駆動シリンダ31は、駆動ピストン33により、2つの油圧室31a、31bに分離されている。
【0017】
この油圧回路には、圧油を供給するオイルポンプ71と、オイルポンプ71から供給された圧油を前記油圧室31aまたは油圧室31bのいずれかに切り替えて供給する変速制御弁72と、この変速制御弁72の後述のスプール73の移動を制御するプリセスカム74およびリンク部材75と、変速制御弁72のスリーブ76をその軸方向に変位させるステッピングモータ77および差圧シリンダ78とを有するスリーブ制御部79とが設けられている。
変速制御弁72は、バルブハウジング80と、ステッピングモータ77または差圧シリンダ78によりバルブハウジング80内で軸方向に変位させられるスリーブ76と、スリーブ76内でプリセスカム74およびリンク部材75の動きにより軸方向に変位するスプール73とを備える。
【0018】
変速制御弁72には、オイルポンプ71から圧油が供給される流路72aと、2つの油圧室31a,31bのうちの一方の(上側の)油圧室31aに連通する流路72bと、他方の(下側の)油圧室31bに連通する流路72cと、油圧室31a,31bから排出された圧油を例えばオイルパン81に排出する排出路72dとが接続されている。
【0019】
変速制御弁72は、バルブハウジング80とスリーブ76とスプール73との相対的な変位に基づき、以下の3つの状態のいずれかになる。
すなわち、1つ目の状態では、一方の油圧室31aに接続された流路72bとオイルポンプ71に接続された流路72aとを連通するとともに、他方の油圧室31bに接続された流路72cと排出路72dとを連通させる。
【0020】
2つ目の状態では、他方の油圧室31bに接続された流路72cとオイルポンプ71に接続された流路72aとを連通するとともに、一方の油圧室31aに接続された流路72bと排出路72dとを連通させる。
3つ目の状態では、オイルポンプ71に接続された流路72aと、両方の油圧室31a,31bの流路72b,72cとの間が遮断される。
【0021】
1つ目の状態では、上側の油圧室31aに圧油が供給されるとともに下側の油圧室31bの圧油が排出され、駆動ピストン33に接続された駆動ロッド29を図中下側に移動させることになる。
【0022】
2つ目の状態では、下側の油圧室31bに圧油が供給されるとともに上側の油圧室31aの圧油が排出され、駆動ピストン33に接続された駆動ロッド29を図中上側に移動させることになる。
3つ目の状態では、駆動ロッド29が移動しない。なお、1つ目および2つ目の状態において、スリーブ76とスプール73とが少し変位することによって、連通部分の面積が変化し、圧油の流速を変更可能となっている。
【0023】
各トラニオン15と駆動装置32の駆動ピストン33とを連結する駆動ロッド29のうち、何れか1個のトラニオン15の駆動ロッド29の端部にプリセスカム74が固定されている。このプリセスカム74とリンク部材75とを介して、駆動ロッド29の動き、すなわち、軸方向の変位と回転方向の変位との合成値をスプール73に伝達する。
この機構が、駆動装置32への圧油の供給に基づくトラニオン15の変位を圧油の供給を制御する変速制御弁72にフィードバックするフィードバック機構になっている。
【0024】
また、変速比の制御は、エンジンコントロールユニット(ECU)からの制御により、ステッピングモータ77を回転させ、ギアやねじなどにより回転運動を変換し、スリーブ76をその軸方向に移動させることによって行う。
また、差圧シリンダ78により、トロイダル型無段変速機を通過するトルクに応じて、変速比を補正するようにスリーブ76をその軸方向に移動させる。
また、ステッピングモータ77と、差圧シリンダ78とは、上述のスリーブ制御部79のリンク79aにより、スリーブ76に連結されている。
【0025】
上述のスプール弁である変速制御弁72は、上述のようにバルブハウジング80と、スリーブ76と、スプール73とを備えるものである。このバルブハウジング80に設けられた貫通孔にスリーブ76が貫通孔の軸方向に移動自在に挿入されている。
また、スリーブ76に設けられた貫通孔に、スプール73が貫通孔の軸方向に移動自在に挿入されている。これらスリーブ76およびスプール73は油に浸かった状態とされる。
【0026】
このようなスプール弁としての変速制御弁72おいては、スプール73が弁体として機能するとともに、スリーブ76もスプール73に対して移動することによって弁の開閉の切替を行うことが可能であり、スリーブ76も弁体として機能している。
したがって、バルブハウジング80の貫通孔が、弁体としてのスリーブ76が挿入されるとともに、弁の開閉を切り替える方向に移動自在にスリーブ76を保持する弁孔である。また、スリーブ76の貫通孔が、弁体としてのスプール73が挿入されるとともに、弁の開閉を切り替える方向に移動自在にスプール73を保持する弁孔である。
【0027】
また、上述のようにスプール73は、外部のリンク部材75に連結され、スリーブ76は外部のステッピングモータ77等に接続されるためバルブハウジング80の貫通孔の両端部の開口部がそれぞれ油内に開放された状態となっている。また、スリーブ76の貫通孔の両端部の開口部がそれぞれ油内に開放された状態となっている。
【0028】
この変速制御弁72が浸かった状態の油は、例えばオイルパン81に溜まった油もしくは、オイルパン81から供給される油である。
ここで、オイルパンには、変速機内で各部材の接触により発生した金属片(鉄片)が溜まっている。したがって、オイルパンにおけるオイルポンプの吸い込みにより発生する油の流れにより、金属片がオイルパン内を浮遊しながら移動した状態となっている。
この浮遊する金属片(鉄片)が開放された状態の変速制御弁72に入ると、スリーブ76やスプール73に噛み込む虞があり、バルブ・スティックの原因になる虞がある。
【0029】
そこで、スプール弁において、上述のような金属片等の異物の噛み込みを防止するために、バルブハウジング内に設けられたスプール孔の内周面に摺接するスプールのランド部の外周の摺接面に、V溝もしくはU溝等の凹溝を設け、異物としてのコンタミをこの凹溝内に溜まるようにすることによって、コンタミによってスプールが円滑に移動できなくなるのを抑制することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0030】
また、スプール弁において、異物が内部に侵入した場合に、スプールの外周面の形状を金属片等の異物が噛み込みにくい形状とすることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2001−241559号公報
【特許文献2】特開2002−48252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
ところで、上述の特許文献1および特許文献2の発明では、スプール弁のスプールが配置されたバルブハウジングの内部への異物の侵入は防止されておらず、異物がスプールに至った際に、スプールの形状に基づいて、バルブ・スティックの発生を防止している。
【0033】
しかしながら、異物がバルブハウジングのスプールの部分にまで侵入していることから、必ずしも十分にバルブ・スティックの発生を防止することができない。
例えば、特許文献1の発明では、凹溝より大きな異物の侵入や、凹溝を溢れるような多量の異物の侵入に対応できない。
また、特許文献2の発明では、スプールの形状が異物を噛み込み難い形状となっていても、異物の形状によっては、スプールが異物を噛み込み易くなってしまう虞がある。
【0034】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、油内で油に対して開放された形状で、油中の異物の噛み込みを防止できる弁、およびこの弁を変速制御弁として備えるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の弁は、弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
前記弁孔部の前記弁孔の開口部の近傍に磁力発生手段が設けられていることを特徴とする。
【0036】
請求項1に記載の発明においては、油中に開放された開口部を有する弁孔があることにより、油中の金属片が弁孔に侵入して弁の作動を阻害する虞があるが、磁石や電磁石等の磁力発生手段により、鉄片や鉄粉等の磁石に吸着する磁性体である異物を磁力発生手段により捕集することによって、これら磁性体からなる異物により弁の円滑な作動が阻害されるのを防止することができる。
【0037】
請求項2に記載の弁は、弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
前記弁体には、前記弁孔の内径と略同径の外径を有して、前記弁孔の軸方向に沿って、前記弁孔の内周面に摺動する摺動部と、前記弁孔の軸方向に沿った端部に設けられ、前記弁孔の内径に対して外径が小さいことにより、前記弁孔の内周面に対して離れて配置される外周面を備えた小径部と備え、前記弁体の端部の小径部に磁力発生手段が設けられていることを特徴とする。
【0038】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明と同様に、弁孔内に金属片が侵入して弁の作動を阻害する虞があるが、上述の磁力発生手段により、鉄片や鉄粉等の磁石に吸着する磁性体である異物を捕集することができる。よって、これら磁性体からなる異物により弁の円滑な作動が阻害されるのを防止することができる。なお、弁体の摺動部(大径部)の外周面と弁孔の内周面との間に異物が噛み込むことにより問題が発生する虞があるが、磁力発生手段が、弁孔の開口部に近い弁体の端部の小径部に設けられているので、弁体の磁力発生手段に異物が捕集されることにより、摺動部の外周面と弁孔の内周面との間に磁性体からなる異物が噛み込むのを防止できる。
【0039】
請求項3に記載の弁は、弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
オイルポンプから供給される圧油を用いた油圧回路に用いられ、前記弁孔部の弁孔の開口部近傍に前記オイルポンプの吸入口が設けられていることを特徴とする。
【0040】
請求項3に記載の発明においては、弁孔部の弁孔の開口部近傍にオイルポンプの吸入口があることにより、弁孔の開口部近傍の異物が吸入口に吸われ、異物の弁孔内部への侵入が阻害される。これにより、異物を噛み込むことなどによる弁の作動不良の発生を抑制することができる。
なお、異物がオイルポンプ内まで至ると問題が生じるので、吸入口とオイルポンプとの間のいずれかにフィルタを配置する必要があるが、吸入する油に異物が混入している虞がある場合に、基本的にオイルポンプの吸入側にはフィルタが配置されている。
【0041】
請求項4に記載の弁は、弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
オイルポンプから供給される圧油を用いた油圧回路に用いられ、前記弁孔部の弁孔の開口部近傍に前記油圧回路から戻る油を排出するドレン口が設けられていることを特徴とする。
【0042】
請求項4に記載の発明においては、弁孔部の弁孔の開口部の近傍のドレン口から油が排出されることにより、異物を含む虞のある油の弁孔への侵入を防止できる。なお、基本的に異物を吸い込む虞のあるオイルポンプの吸入側にはフィルタが設けられているので、オイルポンプからはフィルタを通過したオイルが油圧回路に供給される。したがって、油圧回路から戻って弁のドレン口から排出されるオイルは、オイルポンプでフィルタを通過しており、フィルタを通過する微細なものを除いて、異物を含んでいない。この異物が除かれた油が弁孔の開口部近傍に供給されることによって、弁孔の周囲の異物を含む油が遠ざけられる。これにより、異物を噛み込むことなどによる弁の作動不良の発生を抑制することができる。
【0043】
請求項5に記載の弁は、弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
前記弁体の前記弁孔の開口部近傍に配置される部分の外周面と、前記弁孔の内周面との間に設けられて、前記弁体の外周面もしくは前記弁孔の内周面に摺動するシールリングを備えていることを特徴とする。
【0044】
請求項5に記載の発明においては、シールリングにより、弁体の外周面と弁孔の内周面との間に異物を含む油が侵入するのを抑制することができる。これにより、異物を噛み込むことなどによる弁の作動不良の発生を抑制することができる。なお、弁体の外周面と弁孔の内周面との間には、油が満たされた状態となっている。
【0045】
請求項6に記載の弁は、請求項5に記載の発明において、オイルポンプから供給される圧油を用いた油圧回路に用いられ、前記弁体の前記弁孔の開口部側に前記油圧回路から戻る油を排出するドレン口が設けられ、前記ドレン口と外部とがフィルタにより仕切られていることを特徴とする。
【0046】
請求項6の記載の発明においては、シールリングにより弁体の外周面と弁孔の内周面との間への異物を含む油の流入が阻止されるとともに、ドレン口から弁体内に異物を含む油が侵入(逆流)するのを防止することができる。これにより、異物を噛み込むことなどによる弁の作動不良の発生を抑制することができる。
【0047】
請求項7に記載の弁は、弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
バルブハウジングと、スリーブと、スプールとを備え、
前記バルブハウジングが、前記弁体としての前記スリーブが挿入される弁孔を備えた弁孔部とされ、
前記スリーブが、前記弁体としての前記スプールが挿入される弁孔を備えた弁孔部とされ、
オイルポンプから供給される圧油を用いた油圧回路に用いられ、前記弁体としての前記スリーブに前記油圧回路から戻る油を排出するドレン口が設けられ、
前記バルブハウジングの前記弁孔の端部の内周面と、この内周面に対向する前記スリーブの外周面との間に隙間が設けられ、
前記スリーブの前記弁孔の端部の内周面と、この内周面に対向する前記スプールの外周面との間に隙間が設けられ、
前記ドレン口から排出される油が、両方の前記隙間のそれぞれを通って排出されることを特徴とする。
【0048】
請求項7に記載の発明においては、バルブハウジングとスリーブとの隙間およびスリーブとスプールとの隙間から上述のように異物が除かれた油が外部に排出されることによって、上述の隙間から異物を含む油が侵入するのを防止することができる。これにより、異物を噛み込むことなどによる弁の作動不良の発生を抑制することができる。
【0049】
請求項8に記載のトロイダル型無段変速機は、それぞれの内側面同士を互いに対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、前記入力側ディスクと前記出力側ディスクとの間に挟持されたパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に傾転し、かつ、前記パワーローラを回転自在に支持するトラニオンと、トラニオンを枢軸の軸方向に駆動する駆動手段とを備え、
前記駆動手段には、前記トラニオンの一端部に枢軸の軸方向に沿って設けられる駆動ロッドと、前記駆動ロッドに設けられるとともに駆動シリンダ内に配置される駆動ピストンと、駆動シリンダ内の駆動ピストンにより仕切られる2つの油圧室に圧油を供給するオイルポンプと、前記オイルポンプから供給される圧油を油圧回路を介して2つの油圧室のいずれかに切り替えて供給する変速制御弁とが設けられているトロイダル型無段変速機において、
前記変速制御弁として、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の弁を用いることを特徴とする。
【0050】
請求項8に記載の発明においては、トロイダル型無段変速機の変速制御弁において、弁孔内に配置されるとともに油中に浸かった状態の弁体部分に、弁孔の開口部から異物を含む油が侵入するのを抑制し、変速制御弁を円滑に作動させることができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明の弁およびトロイダル型無段変速機によれば、弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備える弁において、弁孔の開口部からたとえばオイルパン内の異物を含むオイルが侵入するのを抑制し、弁を円滑に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係る弁を示す概略断面図である。
【図2】前記弁の変形例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る弁を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る弁を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る弁を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る弁を示す断面図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る弁を示す概略断面図である。
【図8】従来から知られているハーフトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。
【図9】図8のA−A線に沿う断面図である。
【図10】前記ハーフトロイダル型変速機の変速制御弁を備えた油圧回路の一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
なお、この実施形態のトロイダル型無段変速機は、弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁である変速制御弁を備えるものである。以下に説明する実施形態のトロイダル型無段変速機の特徴は、前記変速制御弁の構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、実施形態の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、説明を省略する。
【0054】
図1に示すように、第1実施形態の変速制御弁85は、バルブハウジング86、スリーブ87およびスプール88を備えるスプール弁であり、基本的なスプール弁としての構造は、従来と同様のものとなっている。
バルブハウジング86にはバルブハウジング86を貫通する貫通孔としてのハウジング弁孔89が設けられている。このハウジング弁孔89は、円柱状に形成され、このハウジング弁孔89内に概略円柱状のスリーブ87が挿入されている。
【0055】
バルブハウジング86には、その軸方向の中央部にオイルポンプ71からの圧油が供給される流路72aが接続される元圧ポート(図示略)、ハウジング弁孔89に沿って元圧ポートの一方側に並んで設けられ、駆動シリンダ31の一方(上側)の油圧室31aに連通する流路72bが接続される上ポート(図示略)と、ハウジング弁孔89に沿って元圧ポートの他方側に設けられ、駆動シリンダ31の他方(下側)の油圧室31bに連通する流路72cが接続される下ポート(図示略)が形成されている。
【0056】
ハウジング弁孔89と、スリーブ87は、同軸上に配置され、ハウジング弁孔89内のスリーブ87がバルブハウジング86に対してハウジング弁孔89およびスリーブ87の軸方向に移動自在となっている。
【0057】
スリーブ87には、バルブハウジング86の元圧ポートに連通可能なスリーブ側元圧ポート91とバルブハウジング86の上ポートに連通可能なスリーブ側上ポート92とバルブハウジング86の下ポートに連通可能なスリーブ側下ポート93とを備える。
スリーブ87は、スリーブ側の元圧ポート91、上ポート92および下ポート93の部分を除いて、その外周面がハウジング弁孔89の内周面に接触し、スリーブ87を軸方向に移動した場合に、スリーブ87の外周面がハウジング弁孔89の内周面に摺接するようになっている。
【0058】
また、スリーブ87は、スリーブ87を貫通する貫通孔としてのスリーブ弁孔90がスリーブ87本体と同軸になるように設けられている。このスリーブ弁孔90は、円柱状に形成され、このスリーブ弁孔90内に概略円柱状のスプール88が挿入されている。
【0059】
スリーブ弁孔90とスプール88は、同軸上に配置され、スリーブ弁孔90内のスプール88がスリーブ87に対してスリーブ弁孔90およびスプール88の軸方向に移動自在となっている。
したがって、スリーブ87とスプール88とは、同じ軸方向に沿って、それぞれ移動自在となっており、相対的に移動可能となっている。
【0060】
スプール88には、左右両端部の大径部(摺動部)94,95と、その間の中央小径部96と、左右の大径部94,95より外側に設けられた左端部小径部97および右端部小径部98とを備える。
大径部94,95の外径は、ハウジング弁孔89の内径と略同じ径で、スリーブ弁孔90にスプール88を挿入した状態で、スプール88を軸方向に移動した場合にスリーブ弁孔90の内周面にスプール88の外周面が摺接するようになっている。
【0061】
スプール88の図中左の大径部94は、スリーブ87の図中左側の上ポート92に対応し、図中右の大径部95は、スリーブ87の図中右側の下ポート93に対応する。
左の大径部94を上ポート92に重ねて配置すると、右の大径部95が下ポート93に重なるようになっている。この状態で、左右の大径部94、95が左右の上ポート92および下ポート93を閉塞した状態になる。また、この際に、スプール88の中央の小径部96の部分にスリーブ87の元圧ポート91が重なり、スプール88の小径部96の外周面とスリーブ弁孔90の内周面との間の隙間と元圧ポート91が連通した状態になる。
【0062】
但し、上述のように、上ポート92および下ポート93の部分で、左右の大径部94,95がこれら上ポート92および下ポート93を閉塞している。さらに、左右の大径部94,95の外周面がスリーブ弁孔90の内周面に当接することによって、互いに連通する元圧ポート91と小径部96とを、上ポート92および下ポート93から遮断するとともに、外部に対しても遮断している。
【0063】
スリーブ87に対してスプール88を相対的に図中左側に移動した場合に、左の大径部94が上ポート92を開放する。さらに、スプール88の中央の小径部96が上ポート92と元圧ポート91とを連通し、オイルポンプ71からの圧油を流路72bを介して上側の油圧室31aに供給する。この際に、下ポート93と右側の小径部98とが重なり、下側の油圧室31bから排出された圧油が流路72cを通った後に、下ポート93および小径部98を経て外部に排出される。
【0064】
スリーブ87に対してスプール88を相対的に図中右側に移動した場合に、右の大径部95が下ポート93を開放し、スプール88の中央の小径部96が下ポート93と元圧ポート91とを連通し、オイルポンプ71からの圧油を流路72cを介して下側の油圧室31bに供給する。この際に、左側の大径部94が上ポート92を開放するとともに、上ポート92と左側の小径部97とが重なり、上側の油圧室31aから排出された圧油が流路72bを通った後に、上ポート92および小径部97を経て外部に排出される。
【0065】
この変速制御弁85においては、上述のようにスリーブ87に対してハウジング弁孔89を有するバルブハウジング86が弁孔部であり、スリーブ87が弁体である。また、スプール88に対してスリーブ弁孔90を有するスリーブ87が弁孔部であり、スプール88が弁体である。なおバルブハウジング86を弁孔部として、スリーブ87およびスプール88を弁体とみなすこともできる。
【0066】
この例の弁としての変速制御弁85では、バルブハウジング86を貫通するハウジング弁孔89の左右の開口部99は、例えば、オイルパン81等の油中にあり、油中に開放した状態となっている。したがって、ハウジング弁孔89内にも油が満たされた状態となっており、弁体としてのスプール88およびスリーブ87は、油に浸かった状態となっている。
また、オイルポンプ71は、例えば、オイルパンに溜まる油を圧油として吸引する。
【0067】
この変速制御弁85のバルブハウジング86には、ハウジング弁孔89の左右両端部の開口部99より少し外側に、開口部99を囲むように環状の磁石100が磁力発生手段として設けられている。
磁石100は、磁性体として鉄片や鉄粉を吸着するようになっている。なお、磁石100を環状とせずに、バルブハウジング86の開口部99を囲むように、開口部99の周囲に複数の磁石100が並べて配置されていてもよい。基本的には、開口部99の周囲に磁石100が配置されていればよいが、開口部99の周囲を略隙間無く囲うように配置されていることが好ましい。
【0068】
この変速制御弁85にあっては、上述のようにハウジング弁孔89の左右の開口部99の周囲に設けられた磁石100により、鉄片等の磁石100に吸着される磁性体である異物が開口部99の外側で捕集される。これにより、ハウジング弁孔89内への磁性体である異物の侵入が抑制され、変速制御弁85において、スプール88、スリーブ87、バルブハウジング86等の部材同士の間等に異物を噛み込むのを防止することができる。
【0069】
基本的に、トロイダル型無段変速機等のこの実施形態の弁が配置される機械において、部品が鉄で構成されていれば、油中に混入する異物は、基本的に鉄片であり、磁石100により油中の異物を捕集することができる。
【0070】
また、弁が配置される機械に鉄以外のアルミ合金や合成樹脂の部材が含まれる場合に、異物には、アルミ片や樹脂片も含まれることになるが、弁としての変速制御弁85を鉄で構成することにより、変速制御弁85がアルミ片や樹脂片を噛み込んでも鉄に比較してアルミ片や樹脂片が柔らかいことからこれらが変形して噛み込みが解除され、問題が生じ難い。なお、変速制御弁85を、鉄でなく、アルミニウムに陽極酸化被膜処理(アルマイト処理)を施したものや、高硬度のアルミニウム材で構成してもよい。
【0071】
また、基本的に、変速制御弁85の貫通孔であるハウジング弁孔89や、スリーブ弁孔90内を流路として油が通過するわけではなく、スプール88やスリーブ87の動きにより、開口部99の近傍を油が行き来したり、オイルポンプ71の作動により流れが生じたりすることによって、異物がハウジング弁孔89やスリーブ弁孔90に入り込む可能性が生じるだけなので、磁力によって、十分に磁性体からなる異物の捕集が可能である。
【0072】
次に、第1実施形態の変形例を説明する。
図2に示すように、変形例の変速制御弁85aにおいては、バルブハウジング86aの磁石101の配置位置以外の構成は、図1に示す第1実施形態の変速制御弁85と同様の構成となっている。
変形例において磁石101は、バルブハウジング86aのハウジング弁孔89の開口部99に設けられている。すなわち、バルブハウジング86aのハウジング弁孔89の開口部99が磁石101により構成されており、環状の磁石101の内周側がハウジング弁孔89の内周面側に露出している。
【0073】
この変形例の変速制御弁85aにあっても、上述の第2実施形態の変速制御弁85と同様の作用効果を得ることができるともに、開口部99の中央部分に漂う異物をより捕集し易い状態とすることができる。
【0074】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図3に示すように、第2実施形態の変速制御弁85bは、磁石102の配置位置がバルブハウジング86bではなく、スプール88bとされていること以外は、第1実施形態の変速制御弁85と同様の構成となっている。
第2実施形態においては、バルブハウジング86bではなく、スプール88bの左右端部にそれぞれ磁石102が設けられている。磁石102は、スプール88bの大径部(摺動部)94,95より外側の左右の端部の小径部97,98に設けられている。
【0075】
この第2実施形態の変速制御弁85bにあっては、磁石102により磁性体からなる異物が捕集され、変速制御弁85bに異物が噛み込むのを防止することができる。
また、スプール88の左右の端部の小径部97、98がハウジング弁孔89の開口部99より内側にあるので、異物がハウジング弁孔89内に入ることになるが、ハウジング弁孔89内に侵入した異物も捕集されることになり、異物の噛み込みを防止する上では、バルブハウジング86の開口部99もしくはその周囲に磁石100,101を設けた場合と同程度の効果を得ることができる。
【0076】
また、スプール88には、スプール88を軸方向に駆動するためのロッドが設けられる場合がある。このロッドが一方の小径部97,98に一体に接続された状態になる場合には、磁石102の取り付け位置は、基本的に大径部94,95より外側で、かつ、バルブハウジング86bのハウジング弁孔89の端より内側の位置になる。この場合に、磁石が取り付けられている側がスプール88で、磁石より外側が上述のロッドになる。
【0077】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図4に示すように、第3実施形態の変速制御弁85cは、磁力発生手段を設けずに、バルブハウジング86cのハウジング弁孔89の開口部99近傍にオイルポンプ71の吸入口103を設けた構成を有するものであり、それ以外の構成は、第1実施形態と同様の構成を有するものである。
【0078】
第3実施形態では、バルブハウジング86cのハウジング弁孔89の内周面の開口部99近傍に、オイルポンプ71の吸入口103が設けられている。変速制御弁85cは、上述のようにオイルパン81等の油溜にあり、バルブハウジング86cのハウジング弁孔89の開口部99が油中に開放しているので、ハウジング弁孔89からオイルポンプ71が油を吸引可能となっている。
【0079】
したがって、オイルポンプ71の作動中、すなわち、トロイダル型変速機が組み込まれた装置が作動中は、オイルポンプ71により吸入口103から油が吸引されている。また、オイルポンプ71は、トロイダル型無段変速機の変速制御弁85cだけではなく、トロイダル型無段変速機の他の場所にも油を供給しており、変速制御弁85cでオイルの供給が止まっている状態でも、オイルポンプ71は、オイルを吸引している。
【0080】
この第3実施形態の変速制御弁85cにあっては、例えば、湯溜内に異物があっても、吸入口103に異物が吸引されるので、異物の噛み込みが防止される。なお、上述のように変速制御弁85cのハウジング弁孔89内を油が流れているわけではないので、バルブハウジング86cに侵入する前の異物が吸入口103から吸引されることにより、変速制御弁85cにおいて、異物の噛み込みを抑制することができる。
【0081】
また、オイルポンプ71が異物を吸引することになるが、オイルポンプ71の吸入側には、フィルタが設けられており、吸引された異物はフィルタで捕集され、オイルポンプ71内に異物が吸引されるのが防止されている。
【0082】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
図5に示すように、第4実施形態の変速制御弁85dは、バルブハウジング86dに磁力発生手段を設けずに、バルブハウジング86dのハウジング弁孔89の開口部近傍にオイルポンプ71を備える油圧回路から戻る油を排出するドレン口104を設けた構成を有するものであり、それ以外の構成は、第1実施形態と同様の構成を有するものである。
【0083】
第4実施形態では、バルブハウジング86cのハウジング弁孔89の内周面の開口部99近傍に、オイルポンプ71から油圧回路に供給され、油圧回路から戻る油のドレン口104が設けられている。変速制御弁85cは、上述のようにオイルパン81等の油溜にあり、変速制御弁85の部分からオイルが排出されても問題がない。油圧回路から戻る油は、基本的には、変速制御弁85cと同様の圧力制御弁により例えばシリンダ装置の二つの油圧室の一方の油圧室に圧油を供給した際に、他方の油圧室から排出される油である。
【0084】
例えば、変速制御弁85dを備える油圧回路に設けられた、他の圧力制御弁のドレン配管を接続してドレン口104を設けている。なお、変速制御弁85dのバルブハウジング86dに、上述の駆動シリンダ31の油圧室31a、31bから排出される油の流路を設け、この流路をバルブハウジング86dのハウジング弁孔89の内周面の開口部99の近傍に設けたドレン口104に接続するようにしてもよい。
すなわち、油圧回路から排出される(戻される)油ならば、油圧回路どの部分から排出される油でもよく、この油の排出流路の末端であるドレン口104がバルブハウジング86のハウジング弁孔89の内周面の開口部99近傍に設けられていればよい。
【0085】
また、オイルポンプ71から油圧回路に供給される油はオイルポンプ71でフィルタを通過しており、フィルタを通過できない異物は含まれておらず、この異物が除かれた油が油圧回路を介して、ドレン口104から排出される。したがって、ドレン口104の設けられたハウジング弁孔89の開口部99の近傍は、異物を含まない油で満たされた状態になる。
【0086】
この第4実施形態の変速制御弁85dにあっては、上述のようにバルブハウジング86のハウジング弁孔89の内周面の開口部99近傍に設けられたドレン口104からオイルポンプ71のフィルタで異物が除かれた油が排出される。この異物が除かれた油がハウジング弁孔89内の開口部99の近傍に満たされた状態になる。よって、変速制御弁85dが異物を噛み込むのを防止することができる。
【0087】
次に、本発明の第5実施形態の変速制御弁85eを説明する。
図6に示すように、第5実施形態の変速制御弁85eは、基本的に第1実施形態の変速制御弁85と同様に、バルブハウジング86eと、スリーブ87eと、スプール88eとを備えている。また、第1実施形態と略同様にオイルポンプ71から供給される圧油を駆動シリンダ31の一方の油圧室31aに供給させるとともに、他方の油圧室31bの圧油を排出させる状態と、オイルポンプ71から供給される圧油を駆動シリンダ31の他方の油圧室31bに供給させるとともに、一方の油圧室31aの圧油を排出させる状態、駆動シリンダ31への油圧の供給および駆動シリンダ31からの油圧の排出を停止する状態とのいずれかになる。
【0088】
変速制御弁85eのバルブハウジング86eには、第1実施形態と同様に、スリーブ87eが挿入されるハウジング弁孔89eが設けられている。このハウジング弁孔89eの両端部はバルブハウジング86eの外部に開放される開口部99eが設けられている。また、元圧ポート105と、上ポート106と、下ポート107がハウジング弁孔89eの軸方向に並んで設けられている。また、バルブハウジング86eのハウジング弁孔89eは、その両端部と、上述の元圧ポート105と、上ポート106と、下ポート107の部分を除いて同径の円柱状の孔とされている。それに対して、ハウジング弁孔89eの両端部は、他の部分より少しだけ径が大きくされた拡径部115、116とされている。この拡径部115,116は、後述のシールリング118,120が摺動する部分となっている。
【0089】
また、スリーブ87eには、スプール88eが挿入されるスリーブ弁孔90eが設けられている。スリーブ弁孔90eもスリーブ87eの両端部で外部に開放されている。
また、スリーブ87eには、バルブハウジング86eの元圧ポート105と連通するスリーブ側元圧ポート91eと、バルブハウジング86eの上ポート106と連通するスリーブ側上ポート92eと、バルブハウジング86eの下ポート107と連通するスリーブ側下ポート93eとを備えている。また、これら元圧ポート91e、上ポート92e、下ポート93eは、円筒状のスリーブ87eの軸方向に沿って並んで設けられるとともに、元圧ポート91eが上ポート92eおよび下ポート93eの間に配置される。
【0090】
また、スリーブ87eには、このスリーブ87eの軸方向に沿って、上ポート92eに対して元圧ポート91eの反対側の位置(上ポート92eより外側の位置)と、下ポート93eに対して元圧ポート91eの反対側の位置(下ポート93eより外側の位置)とに、それぞれドレンポート108,109が設けられている。
【0091】
また、スリーブ87eの外周面と、バルブハウジング86eのハウジング弁孔89eの内周面とは、それぞれの上述の各ポート部分を除いて互いに略接触し、スリーブ87eが移動する際に摺接する状態になる。また、スリーブ87eの一方の端部は、バルブハウジング86eのハウジング弁孔89eより外部に延出している。このスリーブ87eのバルブハウジング86eの外部に延出した部分には、上述のリンク79aが接続されるようになっている。
【0092】
スリーブ87eの上述の一方の端部には、上述のバルブハウジング86eのハウジング弁孔89eの図中右側の端部に形成された拡径部115と重なる位置に、径が大きくなったフランジ状の鍔部117が形成されている。この鍔部117の外周部分にシールリング118が設けられている。シールリング118は、拡径部115の内周面に当接するとともに、ハウジング弁孔89eに対して、その軸方向にスリーブ87eが移動した際に、シールリング118が拡径部115の内周面に摺動するようになっている。したがって、スリーブ87eがリンク79aに接続される側の端部においては、スリーブ87eとバルブハウジング86eとの間がシールリング118によりシールされ、外部から油が侵入しないようになっている。なお、スリーブ87eの外周面とハウジング弁孔89eの内周面との間は油で満たされた状態となっている。
【0093】
また、スリーブ87eのスリーブ弁孔90eのリンク79aが接続される側の端部の内部には、フィルタ123が設けられている。したがって、スリーブ87eの外部に延出する一方の端部側において、スリーブ弁孔90eがフィルタ123により外部と仕切られた状態となっている。後述のスプール88eの大径部112に形成されたドレンポート121から排出される油は、スリーブ弁孔90eを通って外部に排出されるが、この排出される油はフィルタ123を通過して外部に排出される。また、ドレンポート121からドレンが排出されていない状態で、かつ、スプール88eやスリーブ87eの移動によりバルブハウジング86eのハウジング弁孔89e内の容積が変化(増加)し、スリーブ弁孔90e内に油が逆流して侵入する場合に、スリーブ弁孔90e内に侵入する油はフィルタ123を通過することになる。
【0094】
スプール88eには、中央部に大径部(摺動部)110が設けられ左右端部に大径部(摺動部)111,112が設けられている。また、中央部の大径部110と図中左の大径部111との間に小径部113が設けられ、中央部の大径部110と図中右の大径部112との間に小径部114が設けられている。
また、スプール88eの図中左側端部は、上述のプリセスカム74に接するリンク部材75に連結されるロッド(図示略)が接続される。
【0095】
また、リンク部材75に連結される側の端部の大径部111には、ハウジング弁孔89eの図中左側の端部に形成された拡径部116と重なる位置に、大径部111よりさらに径が大きくなったフランジ状の鍔部119が形成されている。この鍔部119の外周部分にシールリング120が設けられている。シールリング120は、拡径部116の内周面に当接するとともに、ハウジング弁孔89eに対して、その軸方向にスプール88eが移動した際に、シールリング120が拡径部116の内周面に摺動するようになっている。したがって、スプール88eとバルブハウジング86eとの間がシールリング120によりシールされ、外部から油が侵入しないようになっている。なお、スプール88eの外周面とスリーブ弁孔90eの内周面との間、スリーブ87eの外周面とハウジング弁孔89eの内周面との間には、それぞれ油が満たされた状態となっている。
【0096】
また、大径部111には、スリーブ87eの図中左側のドレンポート108に連通可能で、排出される油をスプール88eの大径部111側の端部に流出させるためのドレンポート122が設けられている。ドレンポート122は、大径部111の略中心線に沿って形成される本体部分と、本体部分のスプール88eの中央側に向う端部に本体部分と交差するように設けられるとともに、スリーブ87eのドレンポート108と連通可能な連通部と、本体部分のスプール88eの端部側の端部に交差するように設けられるとともに、スプール88eの外周面に開口するドレン口部とを備える。
【0097】
このドレンポート122は、スリーブ87eの図中左側のドレンポート108から排出された油を変速制御弁85eの外部に導出するものとなっている。
また、このドレンポート122の端部には、外部と仕切るようにフィルタ124が設けられている、したがって、ドレンポート122から排出されるオイルは、フィルタ124を通過して外部に排出されるようになっている。
【0098】
また、ドレンポート122からドレンが排出されていない状態で、かつ、スプール88eやスリーブ87eの移動によりバルブハウジング86eのハウジング弁孔89e内の容積が変化(増加)し、ドレンポート122内に油が逆流して侵入する場合にも、ドレンポート122内に侵入する油はフィルタ124を通過することになる。
【0099】
また、大径部111のスリーブ87eから露出した部分の周囲には、コイルスプリング125が設けられている。コイルスプリング125は、一方の端部がスプール88eの鍔部119に係合し、他方の端部がスリーブ87eのリンク79aに連結される端部と逆の端部に係合している。このコイルスプリング125は、スリーブ87eに対してスプール88eをリンク部材75と係合する側に付勢している。また、コイルスプリング125は、スプール88eに対してスリーブ87eをリンク79aと係合する側に付勢している。
【0100】
また、スプール88eの右側の大径部112には、スリーブ87eの図中右側のドレンポート109に連通可能で、排出される油をスリーブ87eの外部に延出する側の端部内(スリーブ弁孔90e内)に排出するドレンポート121が設けられている。ドレンポート121は、大径部112の中心軸に沿うとともに、スプール88eの図中右側の端部に開口する本体部分と、本体部分と交差して大径部112の外周面に開口してドレンポート109と連通可能な連通部分とを備えている。上述のようにこのドレンポート121から排出された油はフィルタ123を通過して変速制御弁85eの外部に排出される。
【0101】
この変速制御弁85eにおいては、上述のように、バルブハウジング86eの元圧ポート105、上ポート106、下ポート107がそれぞれ、スリーブ87eの元圧ポート91e、上ポート92e、下ポート93eに連通した状態で、スリーブ87eの元圧ポート91eをスプール88eの中央の大径部110が閉塞した状態では、駆動シリンダ31の二つの油圧室31a、31bのいずれにも油圧が送られることがなく、駆動装置32が停止した状態になる。
【0102】
この状態に対して、スプール88eの中央の大径部110を図中右側に移動させ、大径部110の図中左側の小径部113が元圧ポート91eと上ポート92eとに跨って重なるようにすると、小径部113により元圧ポート91eと上ポート92eとが連通される。この際には、元圧ポート91eと元圧ポート105とが連通し、上ポート92eと上ポート106とが連通していることから、バルブハウジング86eの元圧ポート105と上ポート106が連通する。これにより、オイルポンプ71から駆動シリンダ31の上側の油圧室31aに圧油が供給される状態になる。
【0103】
また、この状態では、スプール88eの中央の大径部110の図中右側の小径部114が下ポート93eと図中右側のドレンポート109とに跨って重なるように配置される。この際には、小径部114によって、下ポート93eとドレンポート109が連通される。これにより、上述のように上側の油圧室31aに圧油が供給されることによって、駆動ピストン33に押圧される下側の油圧室31bの油が下ポート107に連通する下ポート93eからドレンポート109に至る。さらに、排出される油は、ドレンポート109に連通するスプール88eのドレンポート121に至り、このドレンポート121からスリーブ87eのスリーブ弁孔90eの図中左側端部に排出される。この排出された油は、上述のように、フィルタ123を通って、変速制御弁85eの外部に排出される。
【0104】
上述の駆動装置32が停止した状態に対して、スプール88eの中央の大径部110を図中左側に移動させ、大径部110の図中右側の小径部114が元圧ポート91eと下ポート93eとに跨って重なるようにすると、小径部114により元圧ポート91eと下ポート93eとが連通される。この際には、元圧ポート91eと元圧ポート105とが連通し、下ポート93eと下ポート107とが連通していることから、バルブハウジング86eの元圧ポート105と下ポート107が連通する。これにより、オイルポンプ71から駆動シリンダ31の下側の油圧室31bに圧油が供給される状態になる。
【0105】
また、この状態では、スプール88eの中央の大径部110の図中左側の小径部113が上ポート92eと図中右側のドレンポート108とに跨って重なるように配置される。この際には、小径部113によって、上ポート92eとドレンポート108が連通される。これにより、上述のように下側の油圧室31bに圧油が供給されることによって、駆動ピストン33に押圧される上側の油圧室31aの油が上ポート106に連通する上ポート92eからドレンポート108に至る。さらに、排出される油は、ドレンポート108に連通するスプール88eのドレンポート122に至り、このドレンポート122からフィルタ124を通過して変速制御弁85eの外部に排出される。
【0106】
この変速制御弁85eにあっては、ハウジング弁孔89e内のスリーブ87eが外部の部材(リンク79a)に連結されるために、ハウジング弁孔89eの外側に延出させられている。このスリーブ87eが外部に延出するハウジング弁孔89eの一方の端部側においては、スリーブ87e外周面と、ハウジング弁孔89eの内周面との間がシールリング118によりシールされ、外部の異物を含む油の侵入が阻止されている。
【0107】
また、ハウジング弁孔89e内(スリーブ弁孔90e内)のスプール88eが外部の部材(リンク部材75)に連結されるために、ハウジング弁孔89eの外側に延出させられている。このスプール88eが外部に延出するハウジング弁孔89eの他方の端部側においては、スプール88eの外周面と、ハウジング弁孔89eの内周面との間がシールリング120によりシールされ、外部の異物を含む油の侵入が阻止されている。
【0108】
これら二つのシールリング118,120により、ハウジング弁孔89eの内周面とスリーブ87eの外周面との間、および、スリーブ弁孔90eの内周面とスプール88eの外周面との間に異物を噛み込むのを防止することができる。
さらに、スリーブ87eのスリーブ弁孔90eの一方の端部がフィルタ123が設けられ、他方の端部側がスプール88eの他方の端部側の大径部111に閉塞されている。また、スプール88eの大径部111に形成され、スリーブ弁孔90e内部と外部を連通するドレンポート122は、フィルタ124が設けられている。したがって、スリーブ弁孔90e内に、異物を含む油が侵入するのが防止される。
したがって、スリーブ弁孔90e側からスリーブ弁孔90e内周面と、スプール88e外周面との間に異物が浸入して異物が噛み込まれてしまうのを防止することができる。
なお、変速制御弁85eにおいては、スリープ87eとスプール88eとの軸方向位置が相対的に変化することにより、油の流速が変化する。
【0109】
次に、本発明の第6実施形態を説明する。
図7に示すように、第6実施形態の変速制御弁85fは、第5実施形態の変速制御弁85eと同様の基本構成を有するが、鍔部117,119、シールリング118,120、フィルタ123,124およびドレンポート121、122が設けられておらず、代わりに、ハウジング弁孔89fの端部の内周面とスリーブ87fの端部の外周面との間、スリーブ弁孔90fの端部の内周面と、スプール88eの端部の大径部111,112との間に油を排出する隙間である連通部126,127,128,129が形成され、かつ、スプール88eに、スリーブ87eのドレンポート108,109に連通するドレン小径部130,131が設けられている。なお、第6実施形態のバルブハウジング86eは、第5実施形態の場合と同じ構成となっている。
【0110】
この変速制御弁85fでは、圧油の供給および油の排出の切替は、第5実施形態の変速制御弁85eと同様に行われ、そのための構成も略同様となっている。但し、油の排出においては、第5実施形態の変速制御弁85eにおいて、スプール88eの両端部のドレンポート121,122から排出されていたが、この例では、油圧室31a、31bから排出される油がドレンポート108,109または、ドレンポート108、109およびドレン小径部130,131を介して、上述の連通部126,127,128,129から排出されるようになっている。
【0111】
連通部126は、スリーブ87fの図中左側のドレンポート108に隣接して設けられている。また、連通部126は、スリーブ87fの径が少しだけ小さくされることにより、ドレンポート108からスリーブ87fの左端まで、ハウジング弁孔89fの内周面と、スリーブ87fの外周面との間に設けられた隙間である。この隙間である連通部126からドレンポート108を出た油を排出可能となっている。
【0112】
連通部127は、スリーブ87fの図中右側のドレンポート109に隣接して設けられている。連通部127は、スリーブ87fの径が少しだけ小さくされることにより、ドレンポート109からスリーブ87fの右端まで、ハウジング弁孔89fの内周面と、スリーブ87fの外周面との間に設けられた隙間である。この隙間である連通部127からドレンポート109を出た油を排出可能となっている。
【0113】
連通部128は、スプール88fの図中左側のドレン小径部130に隣接して設けられている。また、連通部128は、スプール88fの大径部111の径が少しだけ小さくされることにより、ドレン小径部130からスリーブ87fの左端まで、スリーブ弁孔90fの内周面と、スリーブ87fの大径部111の外周面との間に設けられた隙間である。この隙間である連通部128からは、ドレンポート108を経てドレン小径部130に流出した油を排出可能となっている。
【0114】
連通部129は、スプール88fの図中右側のドレン小径部131に隣接して設けられている。また、連通部128は、スプール88fの大径部112の径が少しだけ小さくされることにより、ドレン小径部130からスリーブ87fの右端まで、スリーブ弁孔90fの内周面と、スリーブ87fの大径部112の外周面との間に設けられた隙間である。この隙間である連通部129からは、ドレンポート108を経てドレン小径部131に流出した油を排出可能となっている。
【0115】
このような変速制御弁85fにおいては、下側の油圧室31bから油が排出される状態では、スプール88fの小径部114がスリーブ87fの下ポート93fと、ドレンポート109を連通させることにより、下ポート107とドレンポート109が連通する。これにより、ドレンポート109に油圧室31bから排出された油が流入する。その油の一部は、ドレンポート109からこのドレンポート109に隣接する連通部127に流入し、この油が連通部127から外部に排出される。
さらに、ドレンポート109に流入した油の残りは、ドレンポート109からドレン小径部131に至り、さらにこの油はドレン小径部131に隣接する連通部129から外部に排出される。
【0116】
したがって、この状態では、バルブハウジング86eの図中右側において、オイルポンプ71でフィルタを通過して異物が除かれた油がバルブハウジング86eとスリーブ87fとの間、および、スリーブ87fとスプール88fとの間から流出することになる。これにより、バルブハウジング86eとスリーブ87fとの間、および、スリーブ87fとスプール88fとの間に異物を噛み込むことが防止される。
【0117】
また、変速制御弁85fにおいては、上側の油圧室31aから油が排出される状態では、スプール88fの小径部113がスリーブ87fの上ポート92fと、ドレンポート109を連通させることにより、上ポート106とドレンポート108が連通する。これにより、ドレンポート108に油圧室31aから排出された油が流入する。その油の一部は、ドレンポート108からこのドレンポート108に隣接する連通部126に流入し、この油が連通部126から外部に排出される。
さらに、ドレンポート108に流入した油の残りは、ドレンポート108からドレン小径部130に至り、さらにこの油はドレン小径部130に隣接する連通部128から外部に排出される。
【0118】
したがって、この状態では、バルブハウジング86eの図中左側において、オイルポンプ71でフィルタを通過して異物が除かれた油がバルブハウジング86eとスリーブ87fとの間、および、スリーブ87fとスプール88fとの間から流出することになる。これにより、バルブハウジング86eとスリーブ87fとの間、および、スリーブ87fとスプール88fとの間に異物を噛み込むことが防止される。
【0119】
なお、上述のように状況に応じて各連通部126,127,128,129で異物を除かれた油が排出されたり、排出されなかったりする。そこで、各連通部126,127,128,129において、油が排出されていない状況の際に、各連通部126,127,128,129に異物が侵入しないように、各連通部126,127,128,129である隙間の間隔を0.5mm程度から1mm程度とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、シングルキャビティ型やダブルキャビティ型などの様々なハーフトロイダル型無段変速機や各種変速機、一般産業機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
14 枢軸
15 トラニオン
29 駆動ロッド
31 駆動シリンダ
31a 油圧室
31b 油圧室
32 駆動装置(駆動手段)
33 駆動ピストン
71 オイルポンプ
85,85a,85b,85c,85d,85e,85f 変速制御弁
86,86a,86b,86c,86d,86e バブルハウジング(弁孔部)
87,87e,87f スリーブ(弁体、弁孔部)
88,88b,88e,88f スプール(弁体)
89,89e,89f ハウジング弁孔(弁孔)
90,90e,90f スリーブ弁孔
94,95 大径部(摺動部)
97,98 小径部
99 開口部
99e 開口部
100,101,102 磁石(磁力発生手段)
103 吸入口
104 ドレン口
108,109 ドレンポート(ドレン口)
118,120 シールリング
121,122 ドレンポート(ドレン口)
123,124 フィルタ
126,127,128,129 連通部(隙間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
前記弁孔部の前記弁孔の開口部の近傍に磁力発生手段が設けられていることを特徴とする弁。
【請求項2】
弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
前記弁体には、前記弁孔の内径と略同径の外径を有して、前記弁孔の軸方向に沿って、前記弁孔の内周面に摺動する摺動部と、前記弁孔の軸方向に沿った端部に設けられ、前記弁孔の内径に対して外径が小さいことにより、前記弁孔の内周面に対して離れて配置される外周面を備えた小径部と備え、前記弁体の端部の小径部に磁力発生手段が設けられていることを特徴とする弁。
【請求項3】
弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
オイルポンプから供給される圧油を用いた油圧回路に用いられ、前記弁孔部の弁孔の開口部近傍に前記オイルポンプの吸入口が設けられていることを特徴とする弁。
【請求項4】
弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
オイルポンプから供給される圧油を用いた油圧回路に用いられ、前記弁孔部の弁孔の開口部近傍に前記油圧回路から戻る油を排出するドレン口が設けられていることを特徴とする弁。
【請求項5】
弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
前記弁体の前記弁孔の開口部近傍に配置される部分の外周面と、前記弁孔の内周面との間に設けられて、前記弁体の外周面もしくは前記弁孔の内周面に摺動するシールリングを備えていることを特徴とする弁。
【請求項6】
オイルポンプから供給される圧油を用いた油圧回路に用いられ、前記弁体の前記弁孔の開口部側に前記油圧回路から戻る油を排出するドレン口が設けられ、前記ドレン口と外部とがフィルタにより仕切られていることを特徴とする請求項5に記載の弁。
【請求項7】
弁孔を備える弁孔部と、前記弁孔内に挿入されるとともに、前記弁孔内に満たされた油中に浸かった状態で作動する弁体とを備え、前記弁孔の開口部が油中に開放されている弁であって、
バルブハウジングと、スリーブと、スプールとを備え、
前記バルブハウジングが、前記弁体としての前記スリーブが挿入される弁孔を備えた弁孔部とされ、
前記スリーブが、前記弁体としての前記スプールが挿入される弁孔を備えた弁孔部とされ、
オイルポンプから供給される圧油を用いた油圧回路に用いられ、前記弁体としての前記スリーブに前記油圧回路から戻る油を排出するドレン口が設けられ、
前記バルブハウジングの前記弁孔の端部の内周面と、この内周面に対向する前記スリーブの外周面との間に隙間が設けられ、
前記スリーブの前記弁孔の端部の内周面と、この内周面に対向する前記スプールの外周面との間に隙間が設けられ、
前記ドレン口から排出される油が、両方の前記隙間のそれぞれを通って排出されることを特徴とする弁。
【請求項8】
それぞれの内側面同士を互いに対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、前記入力側ディスクと前記出力側ディスクとの間に挟持されたパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に傾転し、かつ、前記パワーローラを回転自在に支持するトラニオンと、トラニオンを枢軸の軸方向に駆動する駆動手段とを備え、
前記駆動手段には、前記トラニオンの一端部に枢軸の軸方向に沿って設けられる駆動ロッドと、前記駆動ロッドに設けられるとともに駆動シリンダ内に配置される駆動ピストンと、駆動シリンダ内の駆動ピストンにより仕切られる2つの油圧室に圧油を供給するオイルポンプと、前記オイルポンプから供給される圧油を油圧回路を介して2つの油圧室のいずれかに切り替えて供給する変速制御弁とが設けられているトロイダル型無段変速機において、
前記変速制御弁として、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の弁を用いることを特徴とするトロイダル型無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−87854(P2012−87854A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234263(P2010−234263)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】