説明

弁装置

【課題】フロート弁とチェック弁とを備え、装置の小型化が図れると共に、チェック弁の動作が確実になされるようにした弁装置を提供する。
【解決手段】この弁装置10は、隔壁23を介して、下方に燃料タンク内に連通するフロート室R1、上方にタンク外部に連通する通気室R2が設けられた弁ケース15と、前記フロート室に昇降可能に配置されたフロート弁50と、前記通気室に配置されたチェック弁60とを有する。また、前記隔壁には、前記フロート室と前記通気室とを連通させ、下面周縁が前記フロート弁が接離する第1弁座27をなし、上面周縁が前記チェック弁が接離する第2弁座71をなす連通口が設けられている。そして、前記隔壁の前記通気室側の上面には、前記連通口を囲む筒状壁70が形成され、前記チェック弁は、多角形状の板状をなしていると共に、前記筒状壁の内側に昇降可能に配置され、常時は前記第2弁座に当接するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、自動車の旋回や傾きによって揺動した燃料が燃料タンク外に漏れることを防止するフロート弁と、燃料タンク内の圧力に応じて燃料蒸気をキャニスタに送るチェック弁とを備えた弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の燃料タンクには、自動車の旋回や傾きによって揺動した燃料がタンク外に漏れることを防止するカット弁が取付けられている。そして、このカット弁によって開閉される連通口は、チェック弁を介して、タンク外部に配置されたキャニスタに連通されている。
【0003】
チェック弁として、例えば、下記特許文献1には、燃料タンク内に連通する連通口と、該連通口の外周に形成された円筒状壁と、該円筒状壁の内側に配置された球状のチェック弁とを備えた弁装置が開示されている。この弁装置では、常時は球状のチェック弁が燃料タンクに連通する連通口に当接して連通口を閉じる。そして、燃料タンク内の圧力が所定値以上に高まると、球状のチェック弁が連通口から浮き上がり、燃料タンク内で発生した燃料蒸気は、連通口を通ってキャニスタへと送られるので、燃料タンク内の圧力を正常に保つことができるようになっている。
【0004】
また、カット弁とチェック弁とを兼ね備えた弁装置も知られている。例えば、下記特許文献2には、内部にフロート弁が収容されたハウジングの上壁に開口を設け、この開口を囲むように、外部に連通するノズルを有するマウントを取付け、マウント内周に円盤状のチェック弁を配置し、前記開口の下面周縁にフロート弁が接離し、前記開口の上面周縁に前記チェック弁が接離するように構成した燃料蒸気制御弁が開示されている。この弁装置では、燃料液面が上昇したときには、フロート弁によって開口が閉じて燃料がタンク外に漏れることを防止し、タンク内の燃料蒸気圧が上昇したときには、チェック弁が開いて燃料蒸気を、ノズルを通してキャニスタ等に送るようになっている。
【特許文献1】米国特許5,253,668号公報
【特許文献2】米国特許6,758,235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
弁装置において、上記特許文献1に開示されているような球状弁をチェック弁として用いた場合、高さ方向の厚みが増すので弁装置の小型化が困難であった。また、チェック弁が球状をなしているので、チェック弁外周と、該チェック弁を保持する周壁との隙間を十分確保できず、燃料蒸気を燃料タンクからスムーズに排出できない問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2の弁装置は、円盤状のチェック弁を用いることにより、高さ方向の厚さを薄くできるメリットがあるが、チェック弁とそれを囲む周壁との隙間を小さくした場合、自動車の旋回や傾きによってチェック弁が傾いたとき、周壁にチェック弁が噛み込んでしまい、スムーズに上下スライドしなくなる恐れがあった。また、チェック弁と周壁との隙間を大きくすると、ガタつきが生じて、異音発生の原因となると共に、ハウジングの摩耗や破損が生じやすくなるという問題があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、フロート弁とチェック弁とを備え、装置の小型化が図れると共に、チェック弁の動作が確実になされるようにした弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、隔壁を介して、下方に燃料タンク内に連通するフロート室、上方にタンク外部に連通する通気室が設けられた弁ケースと、前記フロート室に昇降可能に配置されたフロート弁と、前記通気室に配置されたチェック弁と、前記フロート室と前記通気室とを連通するように前記隔壁に形成され、下面周縁が前記前記フロート弁が接離する第1弁座をなし、上面周縁が前記チェック弁が接離する第2弁座をなす連通口とを備え、前記隔壁の前記通気室側の上面には、前記連通口を囲む筒状壁が形成され、前記チェック弁は、多角形状の板状をなしていると共に、前記筒状壁の内側に昇降可能に配置され、常時は前記第2弁座に当接するように構成されている弁装置を提供するものである。
【0009】
上記発明によれば、燃料タンク内の燃料が揺動して燃料液面が上昇すると、フロート弁が浮き上がって第1弁座に当接して連通口を閉じ、燃料の外部への漏れが防止される。また、燃料タンク内の圧力が高まると、チェック弁が連通口の下方からの圧力で押し上げられて筒状壁内で上昇し、第2弁座から離れて連通口が開き、燃料タンク内の燃料蒸気が通気室を通って、キャニスタに連通する外部流路に排出されて、燃料タンク内の圧力が所定値に保持される。そして、本発明においては、チェック弁が多角形の板状をなしているので、筒状壁内周に対する接触面積が小さい。このため、チェック弁が筒状壁内にて昇降動作する際の摺動抵抗が小さくなると共に、筒状壁の内周にチェック弁が噛み込みにくくなる。これによって、チェック弁をスムーズにかつ確実に昇降させることができる。また、チェック弁が筒状壁内を昇降動作する際、筒状壁内周やチェック弁自体の摩耗が少なくなり、更に、自動車の旋回や傾きによって、チェック弁が筒状壁内で回転したりガタ付いたりすることが少なくなるので、筒状壁やチェック弁自体の摩耗や損傷を抑制できる。そして、チェック弁が多角形の板状をなしていることにより、同チェック弁の外周と筒状壁の内周との隙間を比較的大きく確保することができるので、燃料蒸気の通気抵抗を小さくしてスムーズに流動させることができる。
【0010】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記チェック弁は、多角形の板状をなしていると共に、その外周の上下角部がテーパ状に面取りされている弁装置を提供するものである。
【0011】
上記発明によれば、チェック弁外周の上下角部がテーパ状に面取りされているので、チェック弁の筒状壁内周に対する接触面積がより小さくなる。その結果、リブ内にチェック弁が噛み込みにくくなり、更には、チェック弁の摺動抵抗がより小さくなって、スムーズに昇降させることができ、筒状壁内周やチェック弁自体の摩耗がより低減する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の弁装置によれば、燃料タンク内の燃料液面が上昇したときには、フロート弁によって連通口が閉じ、燃料タンク内の圧力が高まったときには、チェック弁が開いて燃料蒸気を外部に逃がすことができる。そして、チェック弁が多角形の板状をなしていることにより、筒状壁の内周との接触面積が小さくなるので、摺動抵抗が低減すると共に、該内周に噛み込みにくくなり、昇降動作をスムーズかつ確実に行わせることができる。また、チェック弁と筒状壁との隙間を広くとることができるので、燃料蒸気をスムーズに流動させることができる。更に、チェック弁が板状をなすので、弁装置をコンパクト化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1〜7を参照して、本発明の弁装置の一実施形態について説明する。
【0014】
図1,2に示すように、この弁装置10は、ケース本体20と、ケース本体20の下方開口部に装着される下部キャップ30と、ケース本体20の上方に装着される上部キャップ40とからなる弁ケース15を有している。ケース本体20及びその下方に装着される下部キャップ30により画成される内部空間が、後述するフロート弁50が昇降可能に配置されるフロート室R1をなしており、ケース本体20及びその上方に装着される上部キャップ40により画成される内部空間が、後述するチェック弁60が昇降可能に配置される通気室R2をなしている。そして、フロート室R1は、燃料タンク内に連通し、通気室Rは、キャニスタに至る外部流路に連通する構成とされている。以下、各構成部分について説明する。
【0015】
ケース本体20は、円筒状の周壁21と、その上面を閉塞する隔壁23とを有しており、前記隔壁23の中央には、連通口25が貫通して形成されている。連通口25の下面周縁からは、フロート弁50の弁頭51が接離する、円筒状の第1弁座27が突設し、同連通口25の上面周縁からは、チェック弁60が接離すると共に、外周の一部が切欠かれた円筒状の第2弁座71が突設している。すなわち、連通口25の上下周縁は、チェック弁60及びフロート弁50が接離する弁座をなしている。また、この通連口25により、フロート室R1及び通気室R2の両者が連通されている。周壁21には、燃料及び燃料蒸気の通路となる、複数の透孔21aが形成されている。また、周壁21の下方には、後述する下部キャップ30の係合孔33aに係合する爪部21bが、周方向に沿って複数個形成されている。
【0016】
ケース本体20の下方開口部に装着される下部キャップ30は、ケース本体20の周壁21と同様に、燃料の通過を許す透孔31aが形成された円形状の底板31と、該底板31の周縁から立設して、ケース本体20の周壁21の下方外周に被さるカバー壁33とから形成されている。底板31の中央には、フロート弁用スプリング55の一端部を安定して支持するための、支持突起34が形成されている。また、カバー壁33には、ケース本体20の周壁21に形成された爪部21bが係合する、係合孔33aが形成されており、これによりケース本体20の下方開口部に、下部キャップ30が装着されようになっている。また、カバー壁33の外周一箇所には、上方に立ち上がる立壁35が形成されていて、この立壁35の上部外側にストッパ壁37が形成されている。このストッパ壁37は、下部キャップ30をケース本体20に装着したときに、図2に示すように、ケース本体20に形成された弁体収容部90の下方に位置するようになっていて、弁体収容部90に設けた開口部91への異物混入等を防止する役割をなしている。また、ストッパ壁37には、燃料を通過させるための通孔37aが形成されている。
【0017】
ケース本体20の内部には、フロート弁50がスライド可能に収容されている。該フロート弁50は、略円柱形状をなしていて、その上面中央から弁頭51が突設しており、弁頭51が前記ケース本体20に形成された連通口25に接離するようになっている。また、フロート弁50の外周には、周方向に沿って均等な間隔で上下に伸びるリブ53が複数形成されており、このリブ53がケース本体20の周壁21の内周に摺接して、フロート弁50の上下スライド動作をガイドする部分となっている。
【0018】
フロート弁50は、底面から所定高さで設けられた凹部54内に、フロート弁用スプリング55を挿入した状態で、フロート弁50を前記ケース本体20内に収容し、その後、下部キャップ30の係合孔33aに、周壁21の下方外周に形成された爪部21bを係合させることにより、ケース本体20の下方に下部キャップ30が装着される。こうして、フロート弁50と下部キャップ30の底板31との間に、フロート弁50に上向きの付勢力を与える、フロート弁用スプリング55が介装される。また、前記フロート弁50は、燃料に浸漬されない状態では、その自重によりフロート弁用スプリング55を圧縮させて、下部キャップ30の底板31に載置された状態となっている。そして、車両の傾き等により燃料が上昇し、フロート弁50が燃料に浸漬されると、その浮力と前記フロート弁用スプリング55の付勢力とによって、フロート弁50が浮き上がり、前記弁頭51がケース本体20の連通口25の下方内周縁に当接し、連通口25を閉塞するようになっている。
【0019】
ケース本体20の隔壁23の上方には、燃料タンク内に固着された固定金具等に固定されて、弁装置10を燃料タンク内に固定するための、ブラケット100が一体に形成されている。このブラケット100は、ケース本体20の隔壁23の上面から立設した、枠状の外壁部101を有している。図1に示すように、この外壁部101は、後述する接続管95の方向に長く伸びており、後述する弁体収容部90の上部開口をも囲むように形成されている。また、外壁部101の接続管95の反対側は、薄板状をなしてケース本体20の外方に向かって延出され、その先端に係合爪105が形成されている。
【0020】
図2、4を併せて参照すると、ブラケット100の外壁部101の内側には、筒状壁70が形成されている(この実施形態では、環状に形成されている)。この筒状壁70は、その上端70aの少なくとも一部が外壁部101の上端よりも低くなっており、後述する上部キャップ40をブラケット100に装着したとき、筒状壁70の内側の空間と、外側の空間とが連通するようになっている。
【0021】
筒状壁70の内側には、前述した隔壁23に形成された連通口25が位置しており、ケース本体20の内部と、筒状壁70の内部とが連通した状態となっている。隔壁23の連通口25の外周からは、前述した略円筒状の第2弁座71が突設しており、この第2弁座71の外周一部には、軸方向に沿って切欠き部73が形成されている(図4(a)参照)。この切欠き部73により、チェック弁60が第2弁座71上端に当接した状態で、連通口25を完全に閉塞させないようになっている。また、隔壁23の上面側には、第2弁座71の外周であって筒状壁70の内周に、周方向に均等な間隔を設けて複数の凸部72が突設されている。また、各凸部72は、第2弁座71よりも低い高さで形成されている。この凸部72を設けることで、チェック弁60をスライドした際、チェック弁60が筒状壁70内で傾いたとしても、凸部72によって傾斜角度が制限されるので、チェック弁60が筒状壁70内周に噛みこみにくくなり、確実にスライドさせることができる。
【0022】
また、チェック弁60は、常時はチェック弁60の一方の平坦面63が第2弁座71に当接している。燃料タンク内に燃料蒸気が発生し、燃料タンク内の圧力が上昇して所定の圧力を超えると、該圧力によってチェック弁60が徐々に押し上げられ、第2弁座71とチェック弁60との間に隙間Sが生じ、最終的には、上部キャップ40の天井板41の下面まで押し上げられる(図6、7参照)。
【0023】
上記の筒状壁70に関連して、その内周にスライド可能に配置されるチェック弁60について説明する。図3(a)は、チェック弁60の正面図であり、同図(b)は、チェック弁60の平面図であり、同図(c)は、チェック弁60のB−B線断面図であり、同図(d)は、チェック弁60の斜視図である。
【0024】
図3に示すように、このチェック弁60は、周方向に沿って複数の平面部65が形成された、多角形状の板状をなしている。本発明において、チェック弁60の形状は、多角形状であれば特に限定はないが、筒状壁70の内周との接触面積を小さくでき、また、筒状壁70の内周と、チェック弁60の外周との間の隙間を十分確保できるという理由から、8〜32角の正多角形をなしていることが好ましい。すなわち、図4(b)に示すように、本発明のように、チェック弁60が多角形の板状の場合は、同図の想像線S1で示す円盤状のチェック弁に比べて、筒状壁70の内周と、チェック弁60の外周との隙間を、大きく確保することができる。
【0025】
また、この実施形態では、チェック弁60の上下角部61,61は、上下端面に向かって次第に縮径するようにテーパ状に面取りされている。したがって、図3(b)に示すように、チェック弁60の厚さ方向中間の外周は、周方向に沿って複数の平面部65が形成された、多角形状をなしていると共に、同チェック弁60の厚さ方向の上下角部は、その綾線Lが円形状をなしている。このように面取りを施したことにより、図3(a)に示すように、チェック弁60の外周の複数の平面部65は、厚さ方向に沿って伸びる一対の側縁65a,65aと、周方向に沿って円弧状にカーブを描いて伸び、一対の側縁65a,65aの両端に連結された周縁65b,65bとからなる、略小判形状をなしている。
【0026】
上記のように、チェック弁60の上下角部をテーパ状に面取りすることで、筒状壁70内にチェック弁が噛み込みにくくなり、更には、チェック弁60の摺動抵抗がより小さくなって、筒状壁70内をスムーズに昇降させることができる。
【0027】
また、この実施形態では、上下端面に向かって次第に広くなるテーパ62aを有する貫通孔62が複数個(この実施形態では3個)設けられている。貫通孔62を設けることで、燃料蒸気を、筒状壁70の内周と、チェック弁60の外周との間の隙間のみならず、貫通孔62からも燃料タンクから排出できるので、燃料タンク内の圧力をより速やかに所定値にすることができる。
【0028】
また、チェック弁60は、筒状壁70の内側にスライド可能に収容されているので、その大きさは筒状壁70の内径よりも小径であることが必要であり、チェック弁60の外径と、筒状壁70の内径との差が0.1〜0.5mmであることが好ましい。前記値が0.5mmを超えると、自動車の旋回や傾きによって、チェック弁60が筒状壁70内でガタつき易くなり、異音の発生が増大したり、チェック弁60や筒状壁70が破損したり、摩耗したりし易くなる。また、前記値が0.1mm未満であると、チェック弁60をスライドする際の摺動抵抗が大きくなって、筒状壁70内をスムーズに昇降させにくくなり、また、筒状壁70の内周とチェック弁60の外周との間の隙間を十分確保できないので、燃料蒸気を速やかに燃料タンクから排出しにくくなる。
【0029】
チェック弁60の材質は、特に限定はないが、燃料蒸気によって変形、腐食しにくい材質であればよく、例えば、ステンレス等の金属材料、セラミック材料などが挙げられる。また、その成形方法としては、金属粉末やセラミック材料を所定の鋳型に充填し焼結する方法や、板状に成形されたものを切削する等の方法を採用することができる。
【0030】
再び、弁装置10の構成について説明すると、この実施形態では、ブラケット100の外壁部101の接続管95側の部分は、ケース本体20の外方に突出しており、この突出部の下方に枠状をなした弁体収容部90が設けられ、その内部に弁体80が昇降可能に収容されている。この弁体収容部90の下端には、開口部91が形成されており、開口部91の上部周縁に上記弁体80が接離して、開口部91が開閉するように構成されている。また、弁体収容部90内には、弁体80を開口部91に向けて押圧し、常時は開口部91を閉じるように弾性付勢するスプリング81が収容されていて、燃料タンク内の圧力が所定値以上に高まったときに、燃料蒸気を燃料タンク外へ排出する機能を果たす、リリーフ弁を構成している。
【0031】
また、弁体収容部90からは、図示しないキャニスタに連結される配管を接続するための接続管95が一体的に突設されている。接続管95は、図2に示すように、弁体収容部90の内部空間に連通しており、燃料タンクの内外を連通させる燃料蒸気の排出通路の一部を構成している。
【0032】
ブラケット100の上方開口部には、上部キャップ40が装着される。上部キャップ40は、ブラケット100の外壁部101の外形に適合する形状をなす天井板41と、該天井板41の下面周縁から、外壁部101の内周に適合するように延設された外周リブ43とから構成されており、ブラケット100の上方開口部に、超音波溶着、熱板溶着等の固着手段により装着される。また、この上部キャップ40によりブラケット100は閉塞されるが、前述したように、筒状壁70の内部空間と外部空間とは連通し、更にはその前方下方に設けた弁体収容部90の内部空間も連通した状態となっている。このため、隔壁23の連通口25から流れ込んだ燃料蒸気は、隔壁23と筒状壁70と上部キャップ40とで囲まれた空間を通って、弁体収容部90内にまで流入する。
【0033】
上部キャップ40の天井板41の下面であって、ブラケット100の上方開口部に装着した時にチェック弁60の上方に位置する場所には、凸部44が形成されており(図2参照)、この凸部44の外周には、チェック弁60の外径よりも小径の凹部45が形成されている。そして、チェック弁60が燃料蒸気によって天井板41の下面にまで押し上げられたとき、チェック弁60が凸部44に当接するので、チェック弁60が天井板41の下面に貼りつきにくくなる。
【0034】
また、上部キャップ40の天井板41の下面には、ブラケット100に装着されたときに、弁体収容部90内に入り込む、円柱状の支持突起46が突設している。具体的には、この支持突起46は、その軸中心が、弁体収容部90の開口部91のほぼ中心に位置するように設けられており、更に、下方に向かってやや縮径する形状をなして、所定長さで伸びている。この支持突起46は、弁体80を押圧するスプリング81の内周に挿入され、その基部周縁の天井板41にスプリング81の一端部が当接し、これによりスプリング81が安定して支持されるようになっている。また、スプリング81の付勢力に抗して、弁体80が所定距離だけ上方にスライドしたときに、その上部に支持突起46の先端部が突き当たって、弁体80がそれ以上スライドしないように規制し、弁体80のスライド動作を安定させる部分ともなっている。
【0035】
次に、図5〜7を用いて、この弁装置10の作用を説明する。
【0036】
この弁装置10は、燃料タンク内の上方に設けられた図示しない固定金具に、係合爪105を嵌合させて燃料タンク内に固着される。そして、車両が揺れず、燃料タンク内の燃料の液面が傾かずに、フロート弁50が燃料に浸漬されていない状態では、フロート弁50の重さによってフロート弁用スプリング55が圧縮されて、フロート弁50の弁頭51が連通口25から離れている。一方、チェック弁60の一方の平坦面63は、第2弁座71に当接しており、連通口25は切欠き部73を除いて閉塞されている。これによって、燃料蒸気が燃料タンクから常時無制限に放出されるのを防止している。なお、温度低下などにより、燃料タンク内の圧力が低下すると、第2弁座71に設けられた切欠き部73から燃料タンク内に空気が流入するので、燃料タンク内の負圧化を防止できる。
【0037】
上記状態で、車両が旋回したり大きく傾いたりして、燃料の液面が上昇して、フロート弁50に燃料が所定高さ以上浸漬すると、フロート弁50に浮力が作用すると共に、フロート弁用スプリング55の付勢力によって、フロート弁50が浮き上がり、弁頭51が連通口25の下方内周縁に当接して、連通口25を閉塞する。その結果、燃料が連通口25を通って、筒状壁70の内部空間に流入することが阻止されて、燃料タンクの外部への、燃料の漏れを確実に防止することができる。
【0038】
また、上記状態で、車両の走行等によって燃料蒸気が多量に発生して燃料タンク内の圧力が高まった場合には、該圧力によってチェック弁60が徐々に押し上げられ、第2弁座71とチェック弁60との間に隙間Sが生じる(図6参照)。また、燃料タンク内の圧力が更に高まった場合には、チェック弁60は、上部キャップ40の天井板41の下面まで押し上げられる(図7参照)。そして、燃料蒸気は、チェック弁60外周と筒状壁70内周との間の隙間、及び、チェック弁60に設けられた貫通孔62を通って筒状壁70の外部空間に移動し、弁体収容部90の内部空間、接続管95を通って、図示しないキャニスタに送られて、燃料タンクの外部に排出される。
【0039】
このとき、本発明においては、チェック弁60が多角形の板状をなしているので、筒状壁70内周との接触面積が小さくなり、チェック弁60が筒状壁70をスライドする際の摺動抵抗を小さくすることができ、チェック弁60の摺動をスムーズにすると共に、筒状壁70やチェック弁60の摩耗を少なくすることができる。
【0040】
また、チェック弁60が筒状壁70をスライドする際、自動車の振動、旋回、傾き等によって、チェック弁60が筒状壁70に対して傾いたとしても、筒状壁70の内周に噛み込みにくくなり、チェック弁60の昇降動作が阻害されることを抑制して、チェック弁60を確実に昇降させることができる。
【0041】
更に、チェック弁60が多角形の板状をなしていることにより、チェック弁60の外周と筒状壁70の内周との隙間を比較的大きく確保することができるので、燃料蒸気の通気抵抗をより小さくして燃料蒸気をスムーズに流動させることができる。
【0042】
以上のように、本発明によれば、チェック弁として多角形状のものを用いたことで、燃料タンク内の圧力が上昇しても速やかに所定値にすることができ、燃料タンクの破損や変形を防止できる。また、常時は、チェック弁60によって連通口25がほぼ閉塞されるので、燃料蒸気が常時漏えいすることを防止できる。更に、チェック弁が板状をなすので、弁装置をコンパクト化することができる。
【0043】
なお、燃料の液面が上昇して、フロート弁50により連通口25が閉塞された状態で、なおも燃料タンク内の圧力が高まる場合がある。この場合は、弁体収容部90の開口部91周縁に当接して開口部91を閉じている弁体80が、スプリング81の付勢力に抗して上方にスライドして開口部91を開かせる。すると、開口部91から流入した燃料蒸気が、弁体80外周と弁体収容部90内周との間の隙間を通って、弁体収容部90内に流れ込んでいき、更に、弁体収容部90の内部空間に連通した接続管95内を通って、図示しないキャニスタに送られて、燃料タンクの外部に排出される。その結果、燃料タンク内の圧力が所定値以上になることをより確実に抑制し、燃料タンクの内圧上昇による破裂等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のチェック弁が設けられた弁装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A矢視線における断面図である。
【図3】本発明のチェック弁を示しており、(a)は正面図であり、同図(b)は平面図であり、同図(c)はB−B線断面図であり、同図(d)は斜視図である。
【図4】(a)は図1のA−A矢視線における要部拡大断面図であり、(b)は(a)を平面方向から見た場合の概略説明図である。
【図5】本発明のチェック弁を構成する弁体の作用を説明するための説明図であって、燃料タンク内の圧力が所定値未満の状態を示す図である。
【図6】本発明のチェック弁を構成する弁体の作用を説明するための説明図であって、燃料タンク内の圧力が上昇した際の状態を示す図である。
【図7】本発明のチェック弁を構成する弁体の作用を説明するための説明図であって、燃料タンク内の圧力が所定値を超えた際の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10:弁装置
15:弁ケース
20:ケース本体
25:連通口
27:第1弁座
30:下部キャップ
40:上部キャップ
46:支持突起
50:フロート弁
51:弁頭
60:チェック弁
70:筒状壁
71:第2弁座
R1:フロート室
R2:通気室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁を介して、下方に燃料タンク内に連通するフロート室、上方にタンク外部に連通する通気室が設けられた弁ケースと、
前記フロート室に昇降可能に配置されたフロート弁と、
前記通気室に配置されたチェック弁と、
前記フロート室と前記通気室とを連通するように前記隔壁に形成され、下面周縁が前記前記フロート弁が接離する第1弁座をなし、上面周縁が前記チェック弁が接離する第2弁座をなす連通口とを備え、
前記隔壁の前記通気室側の上面には、前記連通口を囲む筒状壁が形成され、
前記チェック弁は、多角形状の板状をなしていると共に、前記筒状壁の内側に昇降可能に配置され、常時は前記第2弁座に当接するように構成されている弁装置。
【請求項2】
前記チェック弁は、多角形の板状をなしていると共に、その外周の上下角部がテーパ状に面取りされている、請求項1記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−168134(P2009−168134A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6539(P2008−6539)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】