説明

引上げ開放式窓のロック装置

【課題】開位置にある窓が突然、閉位置に向かってスライドしてしまう不具合を防止する安全性の実現と、操作性及び耐久性の向上とを実現できる引上げ開放式窓のロック装置を提供する。
【解決手段】引上げ開放式窓のロック装置1において、第1、2フォーク10、20は、ベース部材50にそれぞれ独立して揺動可能に支持される。第1フォーク10は、窓99が閉位置に移動した場合、閉側ストライカ95Aに係合して閉側進入口51Aとともに閉側ストライカ95Aの変位を禁止する一方、窓99が開位置に移動した場合、開側ストライカ95Bに係合して第1開側進入口51Bとともに開側ストライカ95Bの変位を所定の範囲内に規制するように構成されている。第2フォーク20は、窓99が開位置に移動した場合、開側ストライカ95Bに係合して第2開側進入口52Bとともに開側ストライカ95Bの変位を禁止するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は引上げ開放式窓のロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の引上げ開放式窓のロック装置が開示されている。このロック装置は、産業車両等のキャビン本体と窓との間に設けられている。キャビン本体は、前面に形成された開口と、開口から天井に向かって伸びる左右一対のガイドレールと、開口側に設けられた左右一対の閉側ストライカと、天井側に設けられた左右一対の開側ストライカとを有している。窓は、各ガイドレールに沿って移動可能に設けられ、閉位置で開口を閉鎖し、開位置で天井に位置して開口を開放するようになっている。
【0003】
ロック装置は、窓の上端縁における右端と左端とに固定される左右一対のベース部材と、各ベース部材に揺動可能に支持された左右一対のフォークと、搭乗者によって操作可能に各ベース部材に支持された左右一対の操作レバーとを備えている。
【0004】
左右のフォークはそれぞれ、窓が閉位置に移動した場合、左右の閉側ストライカに係合して各閉側ストライカの変位を禁止する一方、窓が開位置に移動した場合、左右の開側ストライカに係合して各開側ストライカの変位を禁止するように構成されている。
【0005】
このロック装置では、窓が閉位置に移動した場合、左右のフォークがそれぞれ、左右の閉側ストライカに係合して各閉側ストライカの変位を禁止する。これにより、左右のフォークが閉側フルラッチ状態となるので、このロック装置は、窓を閉位置で確実にロックできる。その一方、窓が開位置に移動した場合、左右のフォークがそれぞれ、左右の開側ストライカに係合して各開側ストライカの変位を禁止する。これにより、左右のフォークが開側フルラッチ状態となるので、このロック装置は、窓を開位置で確実にロックできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3889180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の引上げ開放式窓のロック装置では、窓を開閉するために左右のフォークの揺動を規制又は解除する場合、搭乗者は、窓の上端縁における左端に左手を伸ばして左の操作レバーに操作するとともに、窓の上端縁における右端に右手を伸ばして右の操作レバーに操作しなければならないので、操作性の向上が難しい。
【0008】
また、このロック装置では、左右のフォークが両方とも窓を閉位置と開位置とでロックする。このため、左右のフォークはそれぞれ、閉位置と開位置とにおいて左右の閉側ストライカ又は開側ストライカから大きな負荷や衝撃を受け易い。その結果、左右のフォークにガタが発生し易いので、耐久性の向上が難しい。
【0009】
さらに、このロック装置では、左右のフォーク及び左右の開側ストライカ等により、窓の左右両端に配設された2組のロック機構が構成されている。このため、開位置に移動する窓がガイドレール内でガタ付いた場合には、各フォークと開側ストライカとの相対位置関係が大きく変動してしまい、一方のフォークが一方の開側ストライカの変位を禁止できない状況(フルラッチしない状況)が発生し易い。その結果、開位置にある窓が突然、閉位置に向かってスライドしてしまうという安全性能上の問題が生じるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、開位置にある窓が突然、閉位置に向かってスライドしてしまう不具合を防止する安全性の実現と、操作性及び耐久性の向上とを実現できる引上げ開放式窓のロック装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の引上げ開放式窓のロック装置は、キャビン本体と窓との間に設けられる引上げ開放式窓のロック装置であって、
前記キャビン本体は、側面に形成された開口と、前記開口から天井に向かって伸びるガイドレールと、前記開口側に設けられた閉側ストライカと、前記天井側に設けられた開側ストライカとを有し、
前記窓は、前記ガイドレールに沿って移動可能に設けられ、閉位置で前記開口を閉鎖し、開位置で前記天井に位置して前記開口を開放し、
前記ロック装置は、前記閉側ストライカを進入させる閉側進入口と、前記開側ストライカを進入させる第1開側進入口及び第2開側進入口とが形成され、前記窓の上端縁における中央部に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に揺動可能に支持された第1フォークと、
前記ベース部材に前記第1フォークとは独立して揺動可能に支持された第2フォークと、
搭乗者によって操作可能に前記ベース部材に支持され、前記第1フォーク及び前記第2フォークの揺動を規制又は解除可能なポールとを備え、
前記第1フォークは、前記窓が前記閉位置に移動した場合、前記閉側ストライカに係合して前記閉側進入口とともに前記閉側ストライカの変位を禁止する一方、前記窓が前記開位置に移動した場合、前記開側ストライカに係合して前記第1開側進入口とともに前記開側ストライカの変位を所定の範囲内に規制するように構成され、
前記第2フォークは、前記窓が前記開位置に移動した場合、前記開側ストライカに係合して前記第2開側進入口とともに前記開側ストライカの変位を禁止するように構成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0012】
本発明の引上げ開放式窓のロック装置では、窓が閉位置に移動した場合、第1フォークが閉側ストライカに係合して閉側進入口とともに閉側ストライカの変位を禁止する。これにより、第1フォークが閉側フルラッチ状態となるので、このロック装置は、窓を閉位置で確実にロックできる。
【0013】
その一方、窓が開位置に移動した場合、第1フォークが開側ストライカに係合して第1開側進入口とともに開側ストライカの変位を所定の範囲内に規制する。これにより、第1フォークは、開側ハーフラッチ状態となる。そして、第2フォークが開側ストライカに係合して第2開側進入口とともに開側ストライカの変位を禁止する。これにより、第2フォークは、開側フルラッチ状態となる。その結果、このロック装置は、窓を開位置で確実にロックできる。
【0014】
そして、窓や開口のゆがみ等により、万が一、第2フォークが開側フルラッチ状態にならない場合でも、第1フォークが開側ハーフラッチ状態となっていることにより、窓が開位置から外れる不具合を防止する。また、この際、窓がガタつくので、開位置で窓が完全にロックされていないことを搭乗者が容易に認識できる。
【0015】
ここで、本発明のロック装置では、窓の上端縁における中央部にベース部材が固定され、そのベース部材に、第1フォーク、第2フォーク及びポールが支持されている。このため、搭乗者は、窓の上端縁における中央部に片手を伸ばして、ポールを操作することにより、第1フォーク及び第2フォークの揺動を規制又は解除することができる。その結果、このロック装置では、閉側フルラッチ状態、開側ハーフラッチ状態又は開側フルラッチ状態の切り替えや解除を容易に行うことができる。このため、搭乗者が右端側の操作レバーに右手を伸ばし、かつ左端側の操作レバーに左手を伸ばして操作しなければならない上記従来技術と比較して、操作性が向上する。
【0016】
また、このロック装置では、第1フォークは閉位置に移動した窓をロックするが、開位置に移動した窓に対しては開位置から外れることを防止するだけである。その一方、第2フォークは開位置に移動した窓をロックするだけである。このため、第1フォークは、閉位置においては閉側ストライカから大きな負荷や衝撃を受け易いが、開位置においては開側ストライカから大きな負荷や衝撃を受け難い。また、第2フォークは、開位置においては開側ストライカから大きな負荷や衝撃を受け易いが、閉位置においては閉側ストライカから負荷や衝撃を受けない。このように、このロック装置では、第1フォーク及び第2フォークが閉側ストライカ及び開側ストライカからの大きな負荷や衝撃を分担して受けるので、それぞれが受ける負荷や衝撃を大幅に減らすことができる、その結果、第1フォーク及び第2フォークのガタの発生を防止でき、耐久性が向上する。
【0017】
さらに、このロック装置では、第1フォーク、第2フォーク及び開側ストライカ等により、窓の上端縁における中央部に配設された2組のロック機構が構成されている。このため、開位置に移動する窓がガイドレール内でガタ付いた場合であっても、第1フォーク及び第2フォークと、開側ストライカとの相対位置関係があまり変動しないので、第1フォークが開側ストライカの変位を所定の範囲内に確実に規制できるとともに、第2フォークが開側ストライカの変位を確実に禁止できる。このため、第2フォークがフルラッチしない状況が発生し難く、その結果、開位置にある窓が突然、閉位置に向かってスライドしてしまうという安全性能上の問題が生じ難い。
【0018】
したがって、本発明の引上げ開放式窓のロック装置は、開位置にある窓が突然、閉位置に向かってスライドしてしまう不具合を防止する安全性の実現と、操作性及び耐久性の向上とを実現できる。
【0019】
ポールは、第1フォーク用ポールと、第2フォーク用ポールとからなっていてもよい。第1フォーク及び第2フォークは、1個の開側ストライカに係合してもよい。また、第1フォークは、第1フォーク用の開側ストライカに係合し、第2フォークは、第2フォーク用の開側ストライカに係合してもよい。
【0020】
ベース部材は、互いに対向する第1壁部及び第2壁部を有するチャンネル形状又はハット形状とされていることが好ましい。そして、第1フォークは、閉側ストライカに係合する第1閉側凹部と、開側ストライカに係合する第1開側凹部とを有して、第1壁部に揺動可能に支持されていることが好ましい。また、第2フォークは、開側ストライカに係合する第2開側凹部を有して、第2壁部に揺動可能に支持されていることが好ましい。さらに、ポールは第1壁部及び第2壁部に揺動可能に支持されていることが好ましい(請求項2)。
【0021】
上記構成によれば、単純な形状であるベース部材を板金の折り曲げ加工や、アルミの押し出し成形等により容易に製造できる。この際、第1、2フォーク及びポールを支持する第1、2壁部も同時に形成できる。また、第1、2壁部の一部を切り欠くことにより、閉側進入口及び第1、2開側進入口を容易に形成できる。このため、簡素化及び部品点数の削減を実現できる。
【0022】
また、仮に、第1フォークに1個の凹部しか形成されておらず、その凹部に、閉側ストライカ及び開側ストライカが係合する場合には、閉側フルラッチ状態と開側ハーフラッチ状態とを実現するために装置構成が複雑化し易い。具体例としては、閉側フルラッチ状態と開側ハーフラッチ状態とで、第1フォークの揺動方向が正反対となる構成が挙げられる。この点、上記構成によれば、第1閉側凹部と第1開側凹部との役割分担により、閉側フルラッチ状態と開側ハーフラッチ状態とを実現するための装置構成を簡素化し易い。例えば、閉側フルラッチ状態と開側ハーフラッチ状態とで、第1フォークの揺動方向を一方向に統一した構成を採用できる。
【0023】
第1フォークは、第1揺動軸芯周りに揺動可能に支持され、第2フォークは、第1揺動軸芯と同芯の第2揺動軸芯周りに揺動可能に支持されていることが好ましい(請求項3)。この場合、第1フォークの揺動軸芯と、第2フォークの揺動軸芯とが交差していたり、ずれていたりする場合と比較して、ロック装置全体の小型化を実現できる。
【0024】
ポールは、第1揺動軸芯及び第2揺動軸芯と平行なポール用軸芯周りに揺動可能に支持されていることが好ましい(請求項4)。この場合、ポールが第1揺動軸芯及び第2揺動軸芯と交差する軸芯周りに揺動可能に支持されている場合と比較して、小型化し易い。
【0025】
ポールは、第1フォークの揺動を規制又は解除可能な第1揺動部と、第2フォークの揺動を規制又は解除可能な第2揺動部と、第1揺動部と第2揺動部とを一体に連結し、搭乗者による操作を受けるレバー部とからなることが好ましい(請求項5)。この場合、ポールが第1フォーク用ポールと第2フォーク用ポールとからなる場合と比較して、搭乗者のレバー部に対する1回の操作により、閉側フルラッチ状態、開側ハーフラッチ状態又は開側フルラッチ状態の切り替え又は解除ができる。その結果、このロック装置は、操作性の一層の向上を実現できる。また、第1揺動部、第2揺動部及びレバー部が一体化されているので、部品点数を削減できる。また、板金の折り曲げ加工等により、ポールを容易に製造できる。
【0026】
本発明の引上げ開放式窓のロック装置は、第1フォークが第1開側進入口とともに開側ストライカの変位を所定の範囲内に規制した状態において、第2フォークが第2開側進入口とともに開側ストライカの変位を禁止した場合と、禁止していない場合とでレバー部の位置又は姿勢が相違し、その位置又は姿勢の相違を搭乗者が視認可能になっていることが好ましい(請求項6)。この場合、搭乗者がレバー部を見ることにより、開側フルラッチ状態と開側ハーフラッチ状態とを容易に見分けることができるので、安全性の一層の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例の引上げ開放式窓のロック装置が適用されるキャビン本体及び窓の斜視図である。
【図2】実施例の引上げ開放式窓のロック装置が適用されるキャビン本体及び窓に係り、閉位置にある窓を示す断面図である。
【図3】実施例の引上げ開放式窓のロック装置が適用されるキャビン本体及び窓に係り、開位置にある窓を示す断面図である。
【図4】実施例の引上げ開放式窓のロック装置の斜視図である。
【図5】実施例の引上げ開放式窓のロック装置の下面図である。
【図6】実施例の引上げ開放式窓のロック装置に係り、(a)及(b)は、窓が閉位置でロックが解除された場合における閉側ストライカ、閉側進入口、第1、2開側進入口、第1、2フォーク及びポールの相対関係を示す説明図である。
【図7】実施例の引上げ開放式窓のロック装置に係り、(a)及(b)は、窓が閉位置でロックされた場合における閉側ストライカ、閉側進入口、第1、2開側進入口、第1、2フォーク及びポールの相対関係を示す説明図である。
【図8】実施例の引上げ開放式窓のロック装置に係り、(a)及(b)は、窓が開位置でロックが解除された場合における開側ストライカ、閉側進入口、第1、2開側進入口、第1、2フォーク及びポールの相対関係を示す説明図である。
【図9】実施例の引上げ開放式窓のロック装置に係り、(a)及(b)は、窓が開位置でロックされる途中における開側ストライカ、閉側進入口、第1、2開側進入口、第1、2フォーク及びポールの相対関係を示す説明図である。
【図10】実施例の引上げ開放式窓のロック装置に係り、(a)及(b)は、窓が開位置でロックされた場合における開側ストライカ、閉側進入口、第1、2開側進入口、第1、2フォーク及びポールの相対関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。なお、図1に示すように、キャビン本体90の前面91側を前側とし、キャビン本体90内の搭乗者が前方を向いた状態における左側を左側と規定して、前後方向、左右方向及び上下方向を表示する。そして、図2以降の各図に示す前後方向、左右方向及び上下方向は、全て図1の各方向に対応している。
【0029】
(実施例)
図1に示すように、実施例の引上げ開放式窓のロック装置1(以下、単に「ロック装置1」と呼ぶ。)は、建設機械等の産業車両において、略直方体形状のキャビン本体90と、キャビン本体90の前面91に形成された開口92を閉鎖又は開放可能な窓99との間に設けられている。
【0030】
図示は省略するが、キャビン本体90内には、搭乗者が座る座席、操作レバー、計器類等が設けられている。開口92は、キャビン本体90内の座席に座った搭乗者が前方を広く見渡せるように、搭乗者の腰の高さ辺りから天井近くまで略矩形状に開口している。
【0031】
図1及び図2に示すように、キャビン本体90内において、開口92の左右端縁より左右方向の外側には、一対のガイドレール94L、94Rが設けられている。ガイドレール94L、94Rは、開口92の左右端縁に沿って略垂直に立ちあがった後、天井93の前端側から後方に向かって略水平に伸びている。
【0032】
図1及び図2に示すように、窓99の上端縁の左右両端には、一対の第1カムフォロワ98L、98Rが設けられている。また、窓99の下端縁の左右両端にも、一対の第2カムフォロワ97L、97Rが設けられている。第1、2カムフォロワ98L、98R、97L、97Rはガイドレール94L、94Rに案内される。これにより、窓99は、ガイドレール94L、94Rに沿って移動可能となっている。
【0033】
図1及び図2に示すように、キャビン本体90内には、開口92の上端縁に沿って左右方向に延びる梁部材96Aが配設されている。梁部材96Aにおける左右方向の中央部には、閉側ストライカ95Aが後方に向けて凸設されている。
【0034】
また、キャビン本体90内には、天井93の後端縁に沿って左右方向に延びる梁部材96Bが配設されている。図1及び図2に示すように、梁部材96Bにおける左右方向の中央部には、開側ストライカ95Bが前方に向けて凸設されている。
【0035】
窓99の上端縁における左右方向の中央部には、詳細を後述するロック装置1が設けられている。図2に示すように、搭乗者が窓99をガイドレール94L、94Rに沿って最前端まで移動させると、窓99は、略垂直な姿勢でキャビン本体90内から開口92に対向する状態となる。そして、搭乗者が窓99の上端縁に設けられたハンドル99Aを前方に押すことにより、窓99は開口92を閉鎖する。図1に実線で示す窓99の位置、及び図2に示す窓99の位置が閉位置である。この閉位置では、閉側ストライカ95Aが後述する第1フォーク10と係合することにより、ロック装置1が窓99をロックする。
【0036】
その一方、搭乗者がロック装置1を操作して、閉位置にある窓99のロックを解除し、図3に示すように、窓99をガイドレール94L、94Rに沿って最後端まで移動させると、窓99は、略水平な姿勢で天井93に沿う状態となって、開口92を開放する。図1に二点鎖線で示す窓99の位置、及び図3に示す窓99の位置が開位置である。この開位置では、開側ストライカ95Bが後述する第1フォーク10及び第2フォーク20と係合することにより、ロック装置1が窓99をロックする。
【0037】
次に、図4〜図10を示しながら、ロック装置1について詳しく説明する。なお、図6(a)、図7(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)は、後述する閉側進入口51A、第1開側進入口51B、第1フォーク10及び第1揺動部31を抜き出して示している。第1フォーク10に対して、閉側進入口51A及び第1開側進入口51Bは、紙面奥側に位置している。また、図6(b)、図7(b)、図8(b)、図9(b)、図10(b)は、後述する閉側進入口52A、第2開側進入口52B、第2フォーク20、第2揺動部32及びレバー部33を抜き出して示している。第2フォーク20に対して、閉側進入口52A及び第2開側進入口52Bは、紙面手前側に位置している。
【0038】
図4に示すように、ロック装置1は、ベース部材50と、第1フォーク10と、第2フォーク20と、ポール30とを備えている。なお、図4は、窓99が閉位置に移動した場合(図2参照)におけるロック装置1の姿勢を示している。図3に示すように、窓99が開位置に移動した場合には、ロック装置1は図2に示す姿勢から後方に略90°回転した姿勢となる。
【0039】
図4及び図5に示すように、ベース部材50は、略平板状の上壁部53と、上壁部53の左右両端縁から下方にそれぞれ延びて、互いに対向する略平板状の第1壁部51及び第2壁部52と、第1壁部51及び第2壁部52の下端縁から左右方向外側にそれぞれ延びる略平板状の脚部54L、54Rとを有するハット形状とされている。
【0040】
図2に示すように、窓99の上端縁における左右方向の中央部には台座99Bが設けられている。台座99Bに脚部54L、54Rを上から当接させた状態で、台座99Bと脚部54L、54Rとをねじ止めすることにより、ベース部材50が窓99の上端縁における左右方向の中央部に固定されている。
【0041】
図4に示すように、第1壁部51及び第2壁部52は、上壁部53の前端縁に対して大きく前方にせり出している。第1壁部51には、閉側進入口51Aと、第1開側進入口51Bとが形成されている。第2壁部52には、閉側進入口52Aと、第2開側進入口52Bとが形成されている。
【0042】
閉側進入口51A及び閉側進入口52Aはそれぞれ、第1壁部51及び第2壁部52のせり出した部位の前端縁下方から後方に向けて溝状に切り欠かれて、前方に開いている。閉側進入口51Aと閉側進入口52Aとは同一形状とされており、ロック装置1を側面視した場合、双方が重なっている。
【0043】
そして、閉側進入口51A、52Aは、窓99を閉位置でロックする際、図6及び図7を示して後述するように、閉側ストライカ95Aを進入させるようになっている。図4に示すように、閉側ストライカ95Aは、軸体が略「U」形状に折り曲げられてなる。閉側ストライカ95Aの左右方向に直線状に延びる部位の長さは、第1壁部51と第2壁部52との間隔より長くなっている。図示は省略するが、開側ストライカ95Bも、図4に示す閉側ストライカ95Aと同一形状とされている。これにより、閉側ストライカ95Aと開側ストライカ95Bとを共通部品とすることができ、部品点数を削減できる。なお、閉側進入口52Aを設けず、閉側ストライカ95Aを開側ストライカ95Bより小型の別部品として、閉側ストライカ95Aが閉側進入口51Aだけに進入する構成とすることもできる。
【0044】
第1開側進入口51B及び第2開側進入口52Bはそれぞれ、第1壁部51及び第2壁部52のせり出した部位の上端縁から下方に向けて溝状に切り欠かれて、上方に開いている。第1開側進入口51Bと第2開側進入口52Bとは同一形状とされており、ロック装置1を側面視した場合、双方が重なっている。
【0045】
そして、第1、2開側進入口51B、52Bは、窓99を閉位置でロックする際、図8〜図10を示して後述するように、略90°後方に回転した姿勢で開側ストライカ95Bを進入させるようになっている。
【0046】
図4及び図5に示すように、第1壁部51における第2壁部52と対向する面には、左右方向と平行な第1揺動軸芯X1を軸芯とする第1支持軸19が凸設されている。一方、第2壁部52における第1壁部51と対向する面には、第1揺動軸芯X1と同芯の第2揺動軸芯X2を軸芯とする第2支持軸29が凸設されている。第1支持軸19及び第2支持軸29は、閉側進入口51A、52Aの底部に対いて後方、かつ第1、2開側進入口51B、52Bの底部に対して上方に位置している。
【0047】
また、第1壁部51及び第2壁部52における互いに対向する面には、第1、2揺動軸芯X1、X2と平行なポール用軸芯X3を軸芯とする一対のポール用支持軸39L、39Rが凸設されている。ポール用支持軸39L、39Rは、第1、2支持軸19、29に対して後方に位置している。
【0048】
第1フォーク10は、第1支持軸19に支持されて、第1揺動軸芯X1周りに揺動可能とされている。第1支持軸19には、捩じりコイルバネ18が第1フォーク10に隣接して装着されている。捩じりコイルバネ18は、一端が上壁部53に係止され、他端が第1フォーク10に係止されることにより、第1フォーク10を回転方向R1に付勢している。
【0049】
図4及び図6(a)に示すように、第1フォーク10は、第1閉側凹部10A及び第1開側凹部10Bを有している。第1閉側凹部10A及び第1開側凹部10Bはそれぞれ、第1フォーク10の外周縁の離れた部位から第1揺動軸芯X1に向かって溝状に切り欠かれている。第1閉側凹部10A及び第1開側凹部10Bの切り欠き方向は略90°ずれている。第1閉側凹部10Aは、閉側ストライカ95Aに係合するためのものであり、第1開側凹部10Bは、開側ストライカ95Bに係合するためのものである。
【0050】
また、第1フォーク10は、図6(a)に示すように、第1揺動軸芯X1を挟んで、第1閉側凹部10A及び第1開側凹部10Bとは反対側に、ストッパ部10Sと、円弧部10Cとを有している。ストッパ部10Sは、第1揺動軸芯X1の径外方向に延びる形状とされている。円弧部10Cは、ストッパ部10Sの先端から第1開側凹部10Bに向かって延びる円弧形状とされている。
【0051】
図4及び図5に示すように、第2フォーク20は、第2支持軸29に支持されて、第2揺動軸芯X2周りに揺動可能とされている。第2支持軸29には、捩じりコイルバネ28が第2フォーク20に隣接して装着されている。捩じりコイルバネ28は、一端が上壁部53に係止され、他端が第2フォーク20に係止されることにより、第2フォーク20を回転方向R1に付勢している。
【0052】
図4及び図6(b)に示すように、第2フォーク20は、第2開側凹部20Bを有している。第2開側凹部20Bは、第2フォーク20の外周縁から第2揺動軸芯X2に向かって溝状に切り欠かれている。第2開側凹部20Bは、開側ストライカ95Bに係合するためのものである。
【0053】
また、第2フォーク20は、図6(b)に示すように、第2揺動軸芯X2を挟んで、第2開側凹部20Bとは反対側に、ストッパ部20Sと、円弧部20Cとを有している。ストッパ部20Sは、第2揺動軸芯X2の径外方向に延びる形状とされている。円弧部20Cは、ストッパ部20Sの先端から第2開側凹部20Bに向かって延びる円弧形状とされている。
【0054】
図4及び図5に示すように、ポール30は、第1揺動部31と、第2揺動部32と、レバー部33とからなる。第1揺動部31は、第1フォーク10の後方でポール用支持軸39Rに支持されている。第2揺動部32は、第2フォーク20の後方でポール用支持軸39Lに支持されている。レバー部33は、第1揺動部31と第2揺動部32とを一体に連結するとともに、下方に延びて後方に屈曲する形状とされている。これにより、ポール30は、ポール用軸芯X3周りに揺動可能とされている。
【0055】
ポール用支持軸39Lには、捩じりコイルバネ38が第2揺動部32に隣接して装着されている。捩じりコイルバネ38は、一端が第2揺動部32に係止され、他端がレバー部33に係止されることにより、第1、2揺動部31、32を回転方向R2に付勢している。なお、後述するように、搭乗者がレバー部33を前方に押す操作により、第1、2揺動部31、32は、捩じりコイルバネ38の付勢力に抗して、回転方向R2とは反対方向に一体に揺動する。
【0056】
図6(a)に示すように、第1揺動部31は、ポール用軸芯X3の上方に位置して第1フォーク10に向けて突出する突起部31Aを有している。図6(b)に示すように、第2揺動部32も、ポール用軸芯X3の上方に位置して第2フォーク20に向けて突出する突起部32Aを有している。ロック装置1を側面視した場合、突起部31Aと突起部32Aとは重なっている。また、第2揺動部32は、突起部32Aに隣接して上方に突出するストッパ部32Sを有している。
【0057】
図7(a)及び図9(a)に示すように、突起部31Aがストッパ部10Sと係合する場合、第1揺動部31は、第1フォーク10の揺動を規制して、回転方向R1への第1フォーク10の揺動を禁止する。その一方、突起部31Aがストッパ部10Sから離反する場合、第1揺動部31は、第1フォーク10に対する揺動の規制を解除する。
【0058】
図10(b)に示すように、突起部32Aがストッパ部20Sと係合する場合、第2揺動部32は、第2フォーク20の揺動を規制して、回転方向R1への第2フォーク20の揺動を禁止する。その一方、突起部32Aがストッパ部20Sから離反する場合、第2揺動部32は、第2フォーク20に対する揺動の規制を解除する。
【0059】
次に、ロック装置1の動作について詳しく説明する。ロック装置1は、窓99が閉位置に移動する場合、前方に位置する閉側ストライカ95Aに対して、後方から略水平に接近する。そうすると、閉側ストライカ95Aは、図6(a)に示す状態から、第1閉側凹部10Aを押しながら、閉側進入口51Aに進入する。そうすると、図7(a)に示すように、第1フォーク10が回転方向R1とは反対方向に揺動し、突起部31Aが円弧部10Cに沿って摺動した後、ストッパ部10Sと係合する。その結果、第1揺動部31は、回転方向R1への第1フォーク10の揺動を禁止する。この状態では、第1閉側凹部10Aが閉側進入口51Aの底部で閉側ストライカ95Aに係合することにより、閉側ストライカ95Aの変位を禁止する。これにより、第1フォーク10が閉側フルラッチ状態となるので、このロック装置1は、窓99を閉位置で確実にロックできる。
【0060】
同時に、閉側ストライカ95Aは、図6(b)に示す状態から、閉側進入口52Aにも進入するが、図7(b)に示すように、回転方向R1に付勢された状態の第2フォーク20と係合することはない。この際、突起部32Cが円弧部20Cに当接することにより、第1フォーク10が閉側フルラッチ状態となった場合におけるレバー部33の姿勢P1が定まる。
【0061】
そして、レバー部33が図7(b)に示す状態から、搭乗者により前方に押されると、図6(a)及び(b)に示すように、第1、2揺動部31、32が回転方向R2とは反対方向に一体に揺動して、突起部31Aがストッパ部10Sから離反する。そうすると、第1フォーク10は、捩じりコイルバネ18に付勢されて回転方向R1に揺動し、閉側ストライカ95Aを前方に押して、閉側進入口51Aから離脱させる。これにより、窓99が閉位置でロックが解除される。その結果、搭乗者は、窓99を閉位置から開位置に向けてスライドさせることができる。この際、突起部31Cが円弧部10Cに当接することにより、図6(b)に示すように、窓99が閉位置でロックが解除された場合におけるレバー部33の姿勢P2が定まる。
【0062】
また、ロック装置1は、窓99が開位置に移動する場合、後方に略90°回転した姿勢となり、後方に位置する開側ストライカ95Bに対して、前方から略水平に接近する。そうすると、開側ストライカ95Bは、図8(a)に示す状態から、第1開側凹部10Bを押しながら、第1開側進入口51Bに進入する。そうすると、図9(a)に示すように、第1フォーク10が回転方向R1とは反対方向に揺動し、突起部31Aが円弧部10Cに沿って摺動した後、ストッパ部10Sと係合する。その結果、第1揺動部31は、回転方向R1への第1フォーク10の揺動を禁止する。この状態では、第1開側凹部10Bが第1開側進入口51Bの中間部で開側ストライカ95Bに係合することにより、閉側ストライカ95Aが第1開側進入口51B内に保持される。しかしながら、この状態では、第1揺動部31は、回転方向R1とは反対方向への第1フォーク10の揺動を禁止しない。このため、閉側ストライカ95Aが第1開側進入口51Bの底部まで変位することができる。これにより、第1フォーク10は、開側ハーフラッチ状態となる。
【0063】
同時に、開側ストライカ95Bは、図8(b)に示す状態から、第2開側凹部20Bを押しながら、第2開側進入口52Bに進入する。そうすると、図9(b)に示すように、第2フォーク20が回転方向R1とは反対方向に揺動する。この際、突起部31Aがストッパ部10Sと係合し、突起部32Cが円弧部20Cに当接することにより、第1フォーク10が開側ハーフラッチ状態となった場合におけるレバー部33の姿勢P3が定まる。
【0064】
そして、開側ストライカ95Bは、図9(b)に示す状態から、さらに第2開側凹部20Bを押しながら、第2開側進入口52Bの底部まで進入する。そうすると、図10(b)に示すように、第2フォーク20が回転方向R1とは反対方向にさらに揺動し、突起部32Aが円弧部20Cに沿って摺動した後、ストッパ部20Sと係合する。その結果、第2揺動部32は、回転方向R1への第2フォーク20の揺動を禁止する。この状態では、第2開側凹部20Bが第2開側進入口52Bの底部で開側ストライカ95Bに係合することにより、開側ストライカ95Bの変位を禁止する。これにより、第2フォーク20が開側フルラッチ状態となるので、このロック装置1は、窓99を開位置で確実にロックできる。
【0065】
同時に、開側ストライカ95Bは、図9(a)に示す状態から、さらに第1開側凹部10Bを押しながら、第1開側進入口51Bの底部まで進入する。そうすると、図10(a)に示すように、第1フォーク10が回転方向R1とは反対方向にさらに揺動して、開側ストライカ95Bの変位を許容する。
【0066】
この際、図10(b)に示すように、突起部32Aがストッパ部20Sと係合し、ストッパ部32Sが円弧部20Cに当接することにより、第2フォーク20が開側フルラッチ状態となった場合におけるレバー部33の姿勢P4が定まる。
【0067】
そして、レバー部33が図10(b)に示す状態から、搭乗者により、図9(b)に示す姿勢P3よりさらに前方に押されると、第1、2揺動部31、32が回転方向R2とは反対方向に一体に揺動して、図9(b)に示すように、突起部32Aがストッパ部20Sから離反し、さらに、図8(a)に示すように、突起部31Aがストッパ部10Sから離反する。そうすると、第1、2フォーク10、20は、捩じりコイルバネ18、28に付勢されて回転方向R1に揺動し、開側ストライカ95Bを前方に押して、第1、2開側進入口51B、52Bから離脱させる。これにより、窓99が開位置でロックが解除される。その結果、搭乗者は、窓99を開位置から閉位置に向けてスライドさせることができる。この際、突起部31Cが円弧部10Cに当接することにより、図8(b)に示すように、窓99が開位置でロックが解除された場合におけるレバー部33の姿勢P5が定まる。
【0068】
レバー部33の姿勢P1〜P5は、図6〜図10に示すように、大きく異なっている。これは、第1、2揺動軸芯X1、X2と円弧部10Cとの距離と、第1、2揺動軸芯X1、X2と円弧部20Cとの距離とが異なるように設定され、ポール用軸芯X3と突起部31A、32Aとの距離に対して、ポール用軸芯X3とレバー部33の下端との距離が長く設定されていることによって実現できている。このため、搭乗者は、レバー部33の姿勢が姿勢P1〜P5のいずれであるかを容易に視認できる。
【0069】
このロック装置1では、窓99や開口92のゆがみ等により、万が一、第2フォーク20が開側フルラッチ状態にならない場合でも、図9(a)に示すように、第1フォーク10が開側ハーフラッチ状態となっていることにより、窓99が開位置から外れる不具合を防止する。また、この際、窓99がガタつくので、開位置で窓99が完全にロックされていないことを搭乗者が容易に認識できる。
【0070】
ここで、実施例のロック装置1では、窓99の上端縁における中央部にベース部材50が固定され、そのベース部材50に、第1フォーク10、第2フォーク20及びポール30が支持されている。このため、搭乗者は、窓99の上端縁における中央部に片手を伸ばして、ポール30を操作することにより、第1フォーク10及び第2フォーク20の揺動を規制又は解除することができる。その結果、このロック装置1では、閉側フルラッチ状態、開側ハーフラッチ状態又は開側フルラッチ状態の切り替えや解除を容易に行うことができる。このため、搭乗者が右端側の操作レバーに右手を伸ばし、かつ左端側の操作レバーに左手を伸ばして操作しなければならない上記従来技術と比較して、操作性が向上する。
【0071】
また、このロック装置1では、第1フォーク10は閉位置に移動した窓99をロックするが、開位置に移動した窓99に対しては開位置から外れることを防止するだけである。その一方、第2フォーク20は開位置に移動した窓99をロックするだけである。このため、第1フォーク10は、閉位置においては、閉側ストライカ95Aから大きな負荷や衝撃を受け易いが、開位置においては開側ストライカ95Bから大きな負荷や衝撃を受け難い。また、第2フォーク20は、開位置においては開側ストライカ95Bから大きな負荷や衝撃を受け易いが、閉位置においては閉側ストライカ95Aから負荷や衝撃を受けない。このように、このロック装置1では、第1フォーク10及び第2フォーク20が閉側ストライカ95A及び開側ストライカ95Bからの大きな負荷や衝撃を分担して受けるので、それぞれが受ける負荷や衝撃を大幅に減らすことができる、その結果、第1フォーク10及び第2フォーク20のガタの発生を防止でき、耐久性が向上する。
【0072】
さらに、このロック装置1では、第1、2フォーク10、20及び開側ストライカ95B等により、窓99の上端縁における中央部に配設された2組のロック機構が構成されている。このため、開位置に移動する窓99がガイドレール94L、94R内でガタ付いた場合であっても、第1、2フォーク10、20と、開側ストライカ95Bとの相対位置関係があまり変動しないので、第1フォーク10が開側ストライカ95Bの変位を所定の範囲内に確実に規制できるとともに、第2フォーク20が開側ストライカ95Bの変位を確実に禁止できる。このため、第2フォーク20がフルラッチしない状況が発生し難く、その結果、開位置にある窓99が突然、閉位置に向かってスライドしてしまうという安全性能上の問題が生じ難い。
【0073】
したがって、実施例の引上げ開放式窓のロック装置1は、開位置にある窓が突然、閉位置に向かってスライドしてしまう不具合を防止する安全性の実現と、操作性及び耐久性の向上とを実現できる。
【0074】
また、このロック装置1において、ベース部材50は、互いに対向する第1壁部51及び第2壁部52を有するハット形状とされている。そして、第1フォーク10は、閉側ストライカ95Aに係合する第1閉側凹部10Aと、開側ストライカ95Bに係合する第1開側凹部10Bとを有して、第1壁部51に揺動可能に支持され、第2フォーク20は、開側ストライカ95Bに係合する第2開側凹部20Bを有して、第2壁部52に揺動可能に支持されている。さらに、ポール30は第1、2壁部51、52に揺動可能に支持されている。このような構成により、このロック装置1では、単純な形状であるベース部材50を板金の折り曲げ加工や、アルミの押し出し成形等により容易に製造できる。この際、第1、2フォーク10、20及びポール30を支持する第1、2壁部51、52も同時に形成できる。また、第1、2壁部51、52の一部を切り欠くことにより、閉側進入口51A、52A及び第1、2開側進入口51B、52Bを容易に形成できる。このため、簡素化及び部品点数の削減を実現できる。
【0075】
また、仮に、第1フォーク10に第1、2閉側凹部10A、10Bの代わりに1個の凹部しか形成されておらず、その凹部に、閉側ストライカ95A及び開側ストライカ95Bが係合する場合には、例えば、閉側フルラッチ状態と開側ハーフラッチ状態とで、第1フォーク10の揺動方向が正反対となる複雑な構成を採用することが考えられる。この点、上記構成によれば、第1閉側凹部10Aと第1開側凹部10Bとの役割分担により、閉側フルラッチ状態と開側ハーフラッチ状態とで、第1フォーク10の揺動方向を方向R1に統一して、装置構成を簡素化できる。
【0076】
さらに、このロック装置1において、第1フォーク10は、第1揺動軸芯X1周りに揺動可能に支持され、第2フォーク20は、第1揺動軸芯X1と同芯の第2揺動軸芯X2周りに揺動可能に支持されている。この構成により、第1揺動軸芯X1と、第2揺動軸芯X2とが交差していたり、ずれていたりする場合と比較して、ロック装置1全体の小型化を実現できる。
【0077】
また、このロック装置1において、ポール30は、第1、2揺動軸芯X1、X2と平行なポール用軸芯X3周りに揺動可能に支持されている。このため、ポール30が第1、2揺動軸芯X1、X2と交差する軸芯周りに揺動可能に支持されている場合と比較して、小型化し易い。
【0078】
また、このロック装置1では、第1フォーク用ポールと、第1フォーク用ポールとは独立して動作する第2フォーク用ポールとを採用する場合と比較して、搭乗者のレバー部33に対する1回の操作により、ポール30が閉側フルラッチ状態、開側ハーフラッチ状態又は開側フルラッチ状態の切り替え又は解除を行える。その結果、このロック装置1は、操作性の一層の向上を実現できる。また、第1揺動部31、第2揺動部32及びレバー部33が一体化されているので、部品点数を削減できる。また、板金の折り曲げ加工等により、ポール30を容易に製造できる。
【0079】
また、このロック装置1では、搭乗者が開側フルラッチ状態に対応するレバー部33の姿勢P4と、開側ハーフラッチ状態に対応するレバー部33の姿勢P3とを容易に見分けることができるので、窓99が開位置で確実にロックされているか否かを確実に認識できる。その結果、このロック装置1は、安全性の一層の向上を実現できる。
【0080】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は車両等に利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
90…キャビン本体
99…窓
1…引上げ開放式窓のロック装置
91…キャビン本体の側面(前面)
92…開口
93…天井
94L、94R…ガイドレール
95A…閉側ストライカ
95B…開側ストライカ
51A…閉側進入口
51B…第1開側進入口
52B…第2開側進入口
50…ベース部材
10…第1フォーク
20…第2フォーク
30…ポール
51…第1壁部
52…第2壁部
10A…第1閉側凹部
10B…第1開側凹部
20B…第2開側凹部
X1…第1揺動軸芯
X2…第2揺動軸芯
X3…ポール用軸芯
31…第1揺動部
32…第2揺動部
33…レバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビン本体と窓との間に設けられる引上げ開放式窓のロック装置であって、
前記キャビン本体は、側面に形成された開口と、前記開口から天井に向かって伸びるガイドレールと、前記開口側に設けられた閉側ストライカと、前記天井側に設けられた開側ストライカとを有し、
前記窓は、前記ガイドレールに沿って移動可能に設けられ、閉位置で前記開口を閉鎖し、開位置で前記天井に位置して前記開口を開放し、
前記ロック装置は、前記閉側ストライカを進入させる閉側進入口と、前記開側ストライカを進入させる第1開側進入口及び第2開側進入口とが形成され、前記窓の上端縁における中央部に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に揺動可能に支持された第1フォークと、
前記ベース部材に前記第1フォークとは独立して揺動可能に支持された第2フォークと、
搭乗者によって操作可能に前記ベース部材に支持され、前記第1フォーク及び前記第2フォークの揺動を規制又は解除可能なポールとを備え、
前記第1フォークは、前記窓が前記閉位置に移動した場合、前記閉側ストライカに係合して前記閉側進入口とともに前記閉側ストライカの変位を禁止する一方、前記窓が前記開位置に移動した場合、前記開側ストライカに係合して前記第1開側進入口とともに前記開側ストライカの変位を所定の範囲内に規制するように構成され、
前記第2フォークは、前記窓が前記開位置に移動した場合、前記開側ストライカに係合して前記第2開側進入口とともに前記開側ストライカの変位を禁止するように構成されていることを特徴とする引上げ開放式窓のロック装置。
【請求項2】
前記ベース部材は、互いに対向する第1壁部及び第2壁部を有するチャンネル形状又はハット形状とされ、
前記第1フォークは、前記閉側ストライカに係合する第1閉側凹部と、前記開側ストライカに係合する第1開側凹部とを有して、前記第1壁部に揺動可能に支持され、
前記第2フォークは、前記開側ストライカに係合する第2開側凹部を有して、前記第2壁部に揺動可能に支持され、
前記ポールは前記第1壁部及び前記第2壁部に揺動可能に支持されている請求項1記載の引上げ開放式窓のロック装置。
【請求項3】
前記第1フォークは、第1揺動軸芯周りに揺動可能に支持され、
前記第2フォークは、前記第1揺動軸芯と同芯の第2揺動軸芯周りに揺動可能に支持されている請求項1又は2記載の引上げ開放式窓のロック装置。
【請求項4】
前記ポールは、前記第1揺動軸芯及び前記第2揺動軸芯と平行なポール用軸芯周りに揺動可能に支持されている請求項3記載の引上げ開放式窓のロック装置。
【請求項5】
前記ポールは、前記第1フォークの揺動を規制又は解除可能な第1揺動部と、前記第2フォークの揺動を規制又は解除可能な第2揺動部と、前記第1揺動部と前記第2揺動部とを一体に連結し、搭乗者による操作を受けるレバー部とからなる請求項4記載の引上げ開放式窓のロック装置。
【請求項6】
前記第1フォークが前記第1開側進入口とともに前記開側ストライカの変位を所定の範囲内に規制した状態において、前記第2フォークが前記第2開側進入口とともに前記開側ストライカの変位を禁止した場合と、禁止していない場合とで前記レバー部の位置又は姿勢が相違し、
前記位置又は前記姿勢の相違を搭乗者が視認可能になっている請求項5記載の引上げ開放式窓のロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−121366(P2012−121366A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271557(P2010−271557)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(591038587)株式会社アンセイ (48)
【Fターム(参考)】