説明

強化繊維プリフォームの作製方法及び強化繊維プリフォーム

【課題】 強度の高いフランジ付の強化繊維プリフォームを容易に作製することができる、ブレイダー装置を用いた強化繊維プリフォームの作製方法及び、強化繊維プリフォームを提供する。
【解決手段】 少なくとも第1筒状部21と第2筒状部22とを含む組成物12を、ブレイダー装置BRを用いて継ぎ目無く作製する工程と、第1筒状部21を変形させ、第1筒状部21の壁を第2筒状部22に対して突出させてフランジ部31を形成する工程と、を備える強化繊維プリフォームの作製方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレイダー装置を用いた強化繊維プリフォームの作製方法及び、強化繊維プリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレイダー装置を用いてカーボン繊維やガラス繊維、セラミックス系繊維等の強化繊維でプリフォームを作製し、この強化繊維プリフォームに母材となる樹脂やセラミックス等を複合一体化させることで、例えば、T形ジョイント構造体の他、I形、H形、Y形、十字形、テトラポット形等種々の構造体を作製する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
これらの構造体は、プリフォームを構成する強化繊維が分断されていると強度が低くなる。このため、複数の筒状部で構成されるT形やH形等の複雑な形状の構造体であっても、強化繊維プリフォームを筒状部の接続部(分岐部)において分断せずに、継ぎ目無く作製することが求められている。
【0004】
一方、フランジ付の強化繊維プリフォームをブレイダー装置によって継ぎ目無く作製する技術も開発されているが(例えば特許文献2)、フランジ付の強化繊維プリフォームを作製する技術は、T形やH形等の強化繊維プリフォームを作製する技術とは本質的に異なる技術であり、T形やH形等の強化繊維プリフォームと同じ方法で作製することはできない。このため、フランジ付の強化繊維プリフォームを作製する場合は、筒状部とフランジ部を予め別個に作製しておき、両者間を接着手段や縫成手段等で接合して、フランジ付の強化繊維プリフォームとすることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−167121号公報
【特許文献2】特開2003−278061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、筒状部とフランジ部とを接合したフランジ付の強化繊維プリフォームは、筒状部とフランジ部とで強化繊維が分断されているため、強度が低く、また、強度のバラつきも大きいものであり、構造体が筒状部とフランジ部の接合部で破壊する虞がある。また、筒状部とフランジ部の接合は、作業者による手作業が多いため、自動化が難しく大量生産に向かないという問題もある、
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、強度の高いフランジ付の強化繊維プリフォームを容易に作製することができる、ブレイダー装置を用いた強化繊維プリフォームの作製方法及び、強化繊維プリフォームの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、第1の発明は、強化繊維プリフォームの作製方法であって、
少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、
前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、
を備える強化繊維プリフォームの作製方法とした。
【0010】
第2の発明は、強化繊維プリフォームの作製方法であって、
少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、
前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、
少なくとも第3筒状部と第4筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、
前記第3筒状部を変形させ、前記第3筒状部の壁を前記第4筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、
前記第2筒状部と前記第4筒状部とを接合する工程と、
を備える強化繊維プリフォームの作製方法とした。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において
前記第2筒状部と前記第4筒状部とを接合する工程は、
前記第2筒状部と前記第4筒状部の一方を他方に嵌合させる工程、
を含む強化繊維プリフォームの作製方法とした。
【0012】
第4の発明は、強化繊維プリフォームの作製方法であって、
少なくとも第1筒状部と、第2筒状部と、前記第1筒状部と前記第2筒状部とを接続する第3筒状部と、を含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、
前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、
前記第2筒状部を変形させ、前記第2筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、
を備える強化繊維プリフォームの作製方法とした。
【0013】
第5の発明は、第1から第4の発明において、
前記フランジ部を形成する工程は、
一方の筒状部が他方の筒状部に連続した状態を保ちつつ、前記一方の筒状部の壁を切断する工程と、
前記一方の筒状部の壁を前記他方の筒状部に対して展開する工程と、
を含む強化繊維プリフォームの作製方法とした。
【0014】
第6の発明は、第1から第4の発明において、
前記フランジ部を形成する工程は、
一方の筒状部の壁を空洞部が無くなる方向に変形する工程、
を含む強化繊維プリフォームの作製方法とした。
【0015】
第7の発明は、強化繊維プリフォームであって、
少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させて形成したフランジ部、
を備える強化繊維プリフォームとした。
【0016】
第8の発明は、強化繊維プリフォームであって、
少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、
少なくとも第3筒状部と第4筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第3筒状部を変形させ、前記第3筒状部の壁を前記第4筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、を備え、
前記第2筒状部と前記第4筒状部とを接合して形成した、強化繊維プリフォームとした。
【0017】
第9の発明は、強化繊維プリフォームであって、
少なくとも第1筒状部と、第2筒状部と、前記第1筒状部と前記第2筒状部とを接続する第3筒状部と、を含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、前記第2筒状部を変形させ、前記第2筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、
を備える強化繊維プリフォームとした。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
第1の発明によれば、少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、を備えるため、筒状部とフランジ部とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォームとすることができる。また、ブレイダー装置を用いて作製した組成物を変形させるだけでフランジ部を形成することができるため、強度の高いフランジ付の強化繊維プリフォームを容易に作製することができる。
【0020】
第2の発明によれば、少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、少なくとも第3筒状部と第4筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、前記第3筒状部を変形させ、前記第3筒状部の壁を前記第4筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、を備えるため、筒状部とフランジ部とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォームとすることができる。
また、前記第2筒状部と前記第4筒状部とを接合する工程を備えるため、筒状部を接合するだけで、強度の高い2つのフランジ付の強化繊維プリフォームを容易に作製することができる。
【0021】
第3の発明によれば、前記第2筒状部と前記第4筒状部とを接合する工程は、前記第2筒状部と前記第4筒状部の一方を他方に嵌合させる工程を含むため、第2筒状部と第4筒状部をより確実に接合することができ、強度の高い強化繊維プリフォームとすることができる。
【0022】
第4の発明によれば、少なくとも第1筒状部と、第2筒状部と、前記第1筒状部と前記第2筒状部とを接続する第3筒状部と、を含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、前記第2筒状部を変形させ、前記第2筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、を備えるため、筒状部と2つのフランジ部とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォームとすることができる。また、第1筒状部と第2筒状部とを変形させるだけで2つのフランジ部を形成することができるため、強度の高い2つのフランジ付の強化繊維プリフォームを容易に作製することができる。
【0023】
第5の発明によれば、前記フランジ部を形成する工程は、一方の筒状部が他方の筒状部に連続した状態を保ちつつ、前記一方の筒状部の壁を切断する工程と、前記一方の筒状部の壁を前記他方の筒状部に対して展開する工程と、を含むため、筒状部とフランジ部とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォームとすることができる。また、ブレイダー装置を用いて作製した組成物の一部を切断し、展開するだけでフランジ部を形成することができるため、強度の高いフランジ付の強化繊維プリフォームを容易に作製することができる。
【0024】
第6の発明によれば、前記フランジ部を形成する工程は、一方の筒状部の壁を空洞部が無くなる方向に変形する工程、を含むため、筒状部とフランジ部とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォームとすることができる。また、ブレイダー装置を用いて作製した筒状部の壁を空洞部が無くなる方向に変形するだけでフランジ部を形成することができるため、強度の高いフランジ付の強化繊維プリフォームを容易に作製することができる。
【0025】
第7の発明によれば、少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させて形成したフランジ部を備えるため、筒状部とフランジ部とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォームとすることができる。また、ブレイダー装置を用いて作製した組成物を変形させて形成したフランジ部を備えるため、強度の高いフランジ付の強化繊維プリフォームとすることができる。
【0026】
第8の発明によれば、少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、少なくとも第3筒状部と第4筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第3筒状部を変形させ、前記第3筒状部の壁を前記第4筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、を備えるため、筒状部とフランジ部とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォームとすることができる。また、前記第2筒状部と前記第4筒状部とを接合して形成するため、筒状部を接合するだけで、強度の高い2つのフランジ付の強化繊維プリフォームを容易に作製することができる。
【0027】
第9の発明によれば、少なくとも第1筒状部と、第2筒状部と、前記第1筒状部と前記第2筒状部とを接続する第3筒状部と、を含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、前記第2筒状部を変形させ、前記第2筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、を備えるため、筒状部と2つのフランジ部とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォームとすることができる。また、第1筒状部と第2筒状部とを変形させるだけで2つのフランジ部を形成することができるため、強度の高い2つのフランジ付の強化繊維プリフォームを容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ブレイダー装置BRの正面図。
【図2】ブレイダー装置BRの側断面図。
【図3】実施例1における、T形マンドレル40の周囲にT形組成物12を作製する工程を示す図。
【図4】実施例1における、T形マンドレル40の周囲にT形組成物12を作製する工程を示す図。
【図5】実施例1における、フランジ部31を形成する工程を示す図。
【図6】実施例2における、フランジ部131を形成する工程を示す図。
【図7】実施例3における、第2筒状部222と第4筒状部224とを接合する工程を示す図。
【図8】実施例3における、第2筒状部222と第4筒状部224とを接合する工程の変更例を示す図。
【図9】実施例4における、H形マンドレル50の周囲にH形組成物314を作製する工程を示す図。
【図10】実施例4における、フランジ部331、332を形成する工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0030】
本発明の実施例1に係る強化繊維プリフォームの作製方法について、図1から図5を用いて説明する。
【0031】
実施例1に係る強化繊維プリフォームの作製方法は、第1筒状部21と第2筒状部22とで構成されるT形組成物12を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、T形組成物12の第1筒状部21を変形させ、第1筒状部21の壁を第2筒状部22に対して突出させてフランジ部31を形成する工程と、を備えている。
【0032】
まず、図を用いて、ブレイダー装置の一例について説明する。図1、図2に示すように、ブレイダー装置BRは、主としてブレイダー装置本体Bb及びマンドレル装置Bmから構成されている。尚、図1、図2では、図示の都合上、各構成要素を簡略して図示し、各構成要素の断面については平行斜線の図示を省略している
【0033】
ブレイダー装置本体Bbは、軸線が水平で一側に開口eを有する略円筒状の機台Fb、機台Fb内に配置された所定の曲率半径Rを有する曲面状の上板U、上板Uの周方向に穿設された軌道に沿って走行する複数のボビンキャリヤーC1、複数のボビンキャリヤーC1を上板Uの軌道に沿って走行させるための駆動装置D、及び組成位置安定ガイド部材G等から構成されている。マンドレル装置Bmは、機台Fm及び、マンドレルm(本実施例ではT形マンドレル40)を取り付けるマンドレル移動装置M等から構成されている。
【0034】
上板Uに配置された複数のボビンキャリアーC1は、各ボビンキャリアーC1に載置されたボビンから引き出される強化繊維(糸条Y)が上板Uの中心に集合するように構成され、また、マンドレル装置Bmに取り付けられたマンドレルmの位置は、マンドレルm上に形成される組成物の組成点Pが上板Uの中心に位置するように構成されている。マンドレル装置Bmは、マンドレルmの位置を一次元、二次元あるいは三次元的に制御できるように構成されている。
【0035】
複数のボビンキャリアーC1が駆動装置Dによって軌道に沿って走行させられるとともに、マンドレルmの位置がマンドレル装置Bmによって制御されることで、多数の糸条Yがマンドレルm上の組成点Pで交錯し、また、必要に応じて、機台FbのフレームFb’に配置されたボビンキャリアーC2からの強化繊維(糸条y)が、軌道に沿って走行するボビンキャリアーから巻き戻され組み上げられる糸条Yに交錯することにより、ブレイディングが行われてマンドレルm上に組成物が作製される。
【0036】
次に、ブレイダー装置BRを用いて、第1筒状部21と第2筒状部22とで構成されるT形組成物12を継ぎ目無く作製する工程について説明する。図3、図4は、T形マンドレル40の周囲にT形組成物12を作製する順序について示している。矢印は、T形組成物12を作製中のT形マンドレル40の移動方向を示しており、三角は、T形マンドレル40をマンドレル移動装置Mで把持する位置を示している。T形組成物12を作製するためのT形マンドレル40は、断面円形のマンドレル41とマンドレル42をT形に組み合わせた形状をしており、マンドレル41上に第1筒状部21が作製され、マンドレル42上に第2筒状部22が作製される。マンドレル41とマンドレル42を組み合わせた部分を接合部J1とする。
【0037】
図3Aに示すように、まず最初に、マンドレル41の一方の端部41aに組成点Pを位置させる。この状態からブレイダー装置BRを駆動させて作製を開始し、図3Bに示すように、T形マンドレル40の接合部J1に向けて第1筒状部21の1層目の作製を行う。T形マンドレル40の接合部J1まで作製した後、図3Cに示すように、T形マンドレル40を図示反時計方向に回動させながら接合部J1での作製を続けて、図3Dに示す状態にする。この状態から、図3Eに示すように、マンドレル42の端部42aに向けて第2筒状部22の1層目の作製を行う。
【0038】
図3Eに示すように、マンドレル42の端部42aまで第2筒状部22の1層目を作製したところで、ブレイダー装置BRの駆動を停止して、図3Fに示すように、マンドレル41の端部41aをマンドレル移動装置Mから取り外した後、T形マンドレル40を180度回転させて、マンドレル41の端部41aとは反対側の端部41bをマンドレル移動装置Mで把持する。
【0039】
続いて図4Aに示すように、ブレイダー装置BRの駆動を再開し、マンドレル42の端部42aから折り返して、第2筒状部22の2層目を作製する。T形マンドレル40の接合部J1まで組成した後、図4Bに示すように、T形マンドレル40を図示時計方向に回動させながら接合部J1での作製を続けて、図4Cに示す位置までT形マンドレル40を回動させる。この状態から、図4Dに示すように、マンドレル41の端部41bまで第1筒状部21の残りの部分を作製し、マンドレル41での第1筒状部21の1層目の作製を完了する。
【0040】
図4Dに示す状態から、再度、マンドレル41の端部41bから接合部J1に向けて第1筒状部21の2層目の作製を行い、更に、接合部J1を越えてマンドレル41の端部41aまで第1筒状部21の2層目の作製を行うことにより、第1筒状部21と第2筒状部22とで構成される2層のT形組成物12を継ぎ目無く作製することができる。尚、上記の作製工程を繰り返すことにより、2層以上の組成物を作製することもできる。
【0041】
ブレイダー装置BRにより第1筒状部21と第2筒状部22とで構成されるT形組成物12を作製後、T形マンドレル40を接合部J1で分解してT形組成物12を取り出す。尚、T形マンドレル40を適当な溶媒により溶解可能な樹脂で製造し、組成物の組成後に、T形マンドレル40を溶媒により溶かすことにより、T形組成物12を取り出すようにしてもよい。
【0042】
次に、T形組成物12の第1筒状部21を変形させ、第1筒状部21の壁を第2筒状部22に対して突出させてフランジ部31を形成する工程について説明する。本実施例では、第1筒状部21を変形させてフランジ部31を形成する工程は、第1筒状部21が第2筒状部22に連続した状態を保ちつつ、第1筒状部21の壁を切断する工程と、第1筒状部21の壁を第2筒状部22に対して展開する工程と、を含んでいる。
【0043】
図5Aの2点鎖線は、第1筒状部21の壁を切断する位置を示しており、図5Bは、2点鎖線に沿って第1筒状部21の壁を切断した状態を示している。第1筒状部21の壁を切断する位置は、第1筒状部21の中心軸に平行であり、かつ第1筒状部21の中心軸に対して第2筒状部22の反対側である。この位置で切断することで、第1筒状部21の壁を構成する強化繊維と、第2筒状部22を構成する強化繊維とが連続する状態を保つことができ、また、第1筒状部21の壁を第2筒状部22に対して展開することができる。尚、切断部の周辺部を接着剤等で仮止めすることで、切断部の強化繊維のほつれを防止することができる。
【0044】
図5Cは、第1筒状部21の壁を第2筒状部22に対して展開した状態を示している。第1筒状部21と第2筒状部22は強化繊維で構成されており、ある程度の変形が許容されるため、図5Cのように第1筒状部21の壁を略平坦に展開することができる。このように、第1筒状部21の壁を平坦にし、第2筒状部22に対して突出させることで、フランジ部31を形成し、フランジ付きの強化繊維プリフォーム11を作製することができる。フランジ部31は第1筒状部21を展開したものであるため、第1筒状部21の強化繊維が2層であれば、フランジ部31も強化繊維は2層となる。また、フランジ部31には、第2筒状部22が繋がっているため、第2筒状部22の穴がフランジ部31の表面に現れる。以上のようにして作製したフランジ付きの強化繊維プリフォーム11は、樹脂を含浸させた後、樹脂を硬化させることで、フランジ付きの構造体が成形される。
【0045】
本実施例では、第1筒状部21の壁を切断する位置は、第1筒状部21の中心軸に平行とし、第1筒状部21の中心軸に対して第2筒状部22の反対側としたが、第1筒状部21の壁を構成する強化繊維と、第2筒状部22を構成する強化繊維とが連続する状態を保つ範囲で切断する位置を変更してもよい。切断する位置を変更することで、フランジ部31の形状や、第2筒状部22に対するフランジ部31の突出量を変更することができる。
【0046】
第1筒状部21の直径及び軸方向の寸法は、フランジ部31に要求される寸法に応じて決定すればよく、また、展開した第1筒状部21の壁の周囲を適宜トリミングすることで形状を整えればよい。また、フランジ部31は平坦な形状に限定されず、種々の形状とすることができる。突出させる方向も、第2筒状部22の中心軸に直交する方向だけでなく、第2筒状部22の中心軸に交差する方向であればよい。また、フランジ部31は、図5に示すように第2筒状部22に対して全ての方向に突出していなくてもよく、所定の方向だけに突出する形状であってもよい。
【0047】
以上説明した実施例1に係る強化繊維プリフォームの作製方法によれば、次のような効果を有する。
【0048】
フランジ部31を形成する工程は、第1筒状部21が第2筒状部22に連続した状態を保ちつつ、第1筒状部21の壁を切断する工程と、第1筒状部21の壁を第2筒状部22に対して展開する工程とを含むため、第2筒状部22とフランジ部31とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォーム11とすることができる。また、ブレイダー装置BRを用いて作製したT形組成物12の一部を切断し、展開するだけでフランジ部31を形成することができるため、強度の高いフランジ付の強化繊維プリフォーム11を容易に作製することができる。
【実施例2】
【0049】
本発明の実施例2に係る強化繊維プリフォームの作製方法について、図6を用いて説明する。本実施例に係る強化繊維プリフォームの作製方法は、フランジ部131を形成する工程が実施例1とは大きく異なっている。第1筒状部121と第2筒状部122とで構成されるT形組成物112を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
本実施例におけるフランジ部131を形成する工程は、第1筒状部121の壁を空洞部が無くなる方向に変形する工程を含んでいる。図6Aにおいて、矢印は第1筒状部121の壁を圧縮して第1筒状部121の空洞部を無くす方向を示しており、2点鎖線は、空洞部を無くす方向への圧縮により第1筒状部121の壁が折り曲げられる位置を示している。第1筒状部121の壁が折り曲げられる位置は、第1筒状部121の中心軸を含み、かつ第2筒状部122の中心軸に直交する面と、第1筒状部121の壁とが交わる線上とする。
【0051】
図6Bは、第1筒状部121の壁を矢印方向に圧縮することで2点鎖線に沿って折り曲げられた状態を示している。第1筒状部121と第2筒状部122は強化繊維で構成されており、ある程度の変形が許容されるため、図6Bのように第1筒状部121の壁を略平坦に変形することができる。このように、第1筒状部121の壁を平坦にし、第2筒状部122に対して突出させることで、フランジ部131を形成し、フランジ付きの強化繊維プリフォーム111を作製することができる。フランジ部131は第1筒状部121を折り曲げて重ねたものであるため、第1筒状部121の強化繊維が2層であれば、フランジ部131の強化繊維は4層となる。また、フランジ部131には、第2筒状部122が繋がっているが、第2筒状部122の穴はフランジ部131の表面に現れない。以上のようにして作製したフランジ付きの強化繊維プリフォーム111は、樹脂を含浸させた後、樹脂を硬化させることで、フランジ付きの構造体が成形される。
【0052】
本実施例では、第1筒状部121の壁が折り曲げられる位置は、第1筒状部121の中心軸を含み、かつ第2筒状部122の中心軸に直交する面と、第1筒状部121の壁とが交わる線上としたが、第1筒状部121の壁が折り曲げられる位置はこの位置に限定されない。実施例2では、実施例1のように第1筒状部121の壁を切断しないため、どの位置で折り曲げられるようにしても、第1筒状部121の壁を構成する強化繊維と、第2筒状部122を構成する強化繊維とが連続する状態を保ちながら、第1筒状部121の壁を第2筒状部122に対して突出させてフランジ部131を形成することができる。第1筒状部121の壁を圧縮する方向を変更し、第1筒状部121の壁が折り曲げられる位置を変更することで、フランジ部131の形状や、第2筒状部122に対するフランジ部131の突出量を変更することができる。
【0053】
第1筒状部121の直径及び軸方向の寸法は、フランジ部131に要求される寸法に応じて決定すればよく、また、第1筒状部121の壁の周囲を適宜トリミングすることで形状を整えればよい。第1筒状部121の壁を折り曲げた部分を全て切断すると、フランジ部131の第2筒状部122側の2層と反対側の2層の強化繊維が分断されるため、第1筒状部121の壁を折り曲げた部分を全て切断せずに少なくとも一部を残すことが好ましい。
【0054】
フランジ部131は平坦な形状に限定されず、種々の形状とすることができる。突出させる方向も、第2筒状部122の中心軸に直交する方向だけでなく、第2筒状部122の中心軸に交差する方向であればよい。また、フランジ部131は第2筒状部122に対して全ての方向に突出していなくてもよく、所定の方向だけに突出する形状であってもよい。
【0055】
以上説明した実施例2に係る強化繊維プリフォームの作製方法によれば、次のような効果を有する。
【0056】
フランジ部131を形成する工程は、第1筒状部121の壁を空洞部が無くなる方向に変形する工程を含むため、第2筒状部122とフランジ部131とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォーム111とすることができる。また、ブレイダー装置BRを用いて作製した第1筒状部121の壁を空洞部が無くなる方向に変形するだけでフランジ部131を形成することができるため、強度の高いフランジ付の強化繊維プリフォーム111を容易に作製することができる。
【実施例3】
【0057】
本発明の実施例3に係る強化繊維プリフォームの作製方法について、図7、図8を用いて説明する。本実施例に係る強化繊維プリフォームの作製方法は、2つのフランジ部231、232を備えた強化繊維プリフォーム211を作製する方法である点で実施例1、実施例2とは大きく異なっている。
【0058】
本実施例における強化繊維プリフォームの作製方法は、第1筒状部221と第2筒状部222とで構成されるT形組成物212(図示省略)を、ブレイダー装置BRを用いて継ぎ目無く作製する工程と、T形組成物212の第1筒状部221を変形させ、第1筒状部221の壁を第2筒状部222に対して突出させてフランジ部231を形成する工程と(図7参照)、第3筒状部223と第4筒状部224とで構成されるT形組成物213(図示省略)を、ブレイダー装置BRを用いて継ぎ目無く作製する工程と、T形組成物213の第3筒状部223を変形させ、第3筒状部223の壁を第4筒状部224に対して突出させてフランジ部232を形成する工程と(図7参照)、第2筒状部222と第4筒状部224とを接合する工程と、を含んでいる。
【0059】
このうち、第1筒状部221と第2筒状部222とで構成されるT形組成物212を、ブレイダー装置BRを用いて継ぎ目無く作製する工程と、第3筒状部223と第4筒状部224とで構成されるT形組成物213を、ブレイダー装置BRを用いて継ぎ目無く作製する工程については、それぞれ実施例1と同様の手順で行えばよいため、詳しい説明を省略する。
【0060】
また、T形組成物212の第1筒状部221を変形させ、第1筒状部221の壁を第2筒状部222に対して突出させてフランジ部231を形成する工程と、T形組成物213の第3筒状部223を変形させ、第3筒状部223の壁を第4筒状部224に対して突出させてフランジ部232を形成する工程については、実施例1において説明したフランジ部31を形成する工程と同様の手順、あるいは、実施例2において説明したフランジ部131を形成する工程と同様の手順で行えばよいため、これらの工程についても詳しい説明を省略する。尚、第1筒状部221の壁を第2筒状部222に対して展開して作製したものをフランジ付の強化繊維プリフォーム211aとし、第3筒状部223の壁を第4筒状部224に対して展開して作製したものをフランジ付の強化繊維プリフォーム211bとする(図7参照。)。
【0061】
以下では、第2筒状部222と第4筒状部224とを接合する工程について説明する。図7では、強化繊維プリフォーム211aの第2筒状部222と、強化繊維プリフォーム211bの第4筒状部224とを接合する工程を示している。
【0062】
図7Aでは、強化繊維プリフォーム211aの第2筒状部222と、強化繊維プリフォーム211bの第4筒状部224とを対向させた状態を示し、図7Bでは、第2筒状部222に第4筒状部224を嵌合させ、接合させて筒状部225とした状態を示している。嵌合後は、接着手段や縫着手段等により第2筒状部222と第4筒状部224とを固定する。
【0063】
図7では第2筒状部222は第4筒状部224より大径としたが、第2筒状部222と第4筒状部224はそれぞれ強化繊維で構成されており、ある程度の変形が許容されるため、第2筒状部222と第4筒状部224が略同径であっても両者を嵌合させることが可能である。従って、強化繊維プリフォーム211aと強化繊維プリフォーム211bを同じT形マンドレルで作製し、両者を嵌合により接合させることが可能である。このように、フランジ付の強化繊維プリフォーム211aの第2筒状部222と、フランジ付の強化繊維プリフォーム211bの第4筒状部224とを接合することで、2つのフランジ部231、232を備えた強化繊維プリフォーム211を作製することができる。
【0064】
また、図8に示すように、強化繊維プリフォーム211aのフランジ部231には穴が現れているため、第2筒状部222に第4筒状部224を嵌合させる方向を図7とは逆の方向としてもよい。図7に示す方向に嵌合させれば、筒状部225の両端にフランジ部231、232を備えることになるが、図8に示す方向に嵌合させれば、筒状部225の中途部にフランジ部231を形成することができる。
【0065】
また、本実施例では2つの強化繊維プリフォーム211a、211bを接合したが、3つ以上の強化繊維プリフォームを直列に接合してもよい。
【0066】
以上説明した実施例3に係る強化繊維プリフォームの作製方法によれば、次のような効果を有する。
【0067】
本実施例に係る強化繊維プリフォームの作製方法は、第1筒状部221と第2筒状部222とで構成されるT形組成物212を、ブレイダー装置BRを用いて継ぎ目無く作製する工程と、T形組成物212の第1筒状部221を変形させ、第1筒状部221の壁を第2筒状部222に対して突出させてフランジ部231を形成する工程と、第3筒状部223と第4筒状部224とで構成されるT形組成物213を、ブレイダー装置BRを用いて継ぎ目無く作製する工程と、T形組成物213の第3筒状部223を変形させ、第3筒状部223の壁を第4筒状部224に対して突出させてフランジ部232を形成する工程と、を備えるため、筒状部225とフランジ部231、232とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォーム211とすることができる。
【0068】
また、第2筒状部222と第4筒状部224とを接合する工程を備えるため、第2筒状部222と第4筒状部224とを接合するだけで、強度の高い2つのフランジ付の強化繊維プリフォーム211を容易に作製することができる。
【実施例4】
【0069】
本発明の実施例4に係る強化繊維プリフォームの作製方法について、図9、図10を用いて説明する。本実施例に係る強化繊維プリフォームの作製方法は、実施例3のように第2筒状部222と第4筒状部224とを接合することなく、筒状部323と2つのフランジ部331、332とが全て連続した強化繊維で繋がった強化繊維プリフォーム311を作製する方法である点で実施例3とは大きく異なっている。
【0070】
実施例4に係る強化繊維プリフォームの作製方法は、第1筒状部321と、第2筒状部322と、第1筒状部321と第2筒状部322とを接続する第3筒状部323とで構成されるH形組成物314を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、H形組成物314の第1筒状部321を変形させ、第1筒状部321の壁を第3筒状部323に対して突出させてフランジ部331を形成する工程と、第2筒状部322を変形させ、第2筒状部322の壁を第3筒状部323に対して突出させてフランジ部332を形成する工程と、を備えている。
【0071】
まず、ブレイダー装置BRを用いて、第1筒状部321と、第2筒状部322と、第1筒状部321と第2筒状部322とを接続する第3筒状部323とで構成されるH形組成物314を継ぎ目無く作製する工程について説明する。ブレイダー装置BRについては実施例1において説明したため、説明は省略する。
【0072】
図9は、H形マンドレル50の周囲にH形組成物314を作製する順序について示している。矢印は、強化繊維(糸条Y)を交錯させて各筒状部を組み上げていく組成点Pの移動方向を示している。H形組成物314を作製するためのH形マンドレル50は、断面円形のマンドレル51とマンドレル52とマンドレル53とをH形に組み合わせた形状をしており、マンドレル51上に第1筒状部321が作製され、マンドレル52上に第2筒状部322が作製され、マンドレル53上に第3筒状部323が作製される。マンドレル51とマンドレル53を組み合わせた部分を接合部J2とし、マンドレル52とマンドレル53を組み合わせた部分を接合部J3とする。
【0073】
図9に示すように、まず最初に、マンドレル51の一方の端部51aに組成点Pを位置させる。この状態からブレイダー装置を駆動させて作製を開始し、マンドレル51の他方の端部51bに向けて第1筒状部321の1層目の作製を行う(矢印A)。次に、マンドレル51の端部51bから折り返して接合部J2まで第1筒状部321の2層目の作製を行い、接合部J2から他方の接合部J3まで第3筒状部323の1層目の作製を行い、接合部J3からマンドレル52の端部52bまで第2筒状部322の1層目の作製を行う(矢印B)。
【0074】
この状態から、マンドレル52の端部52bから折り返して接合部J3まで第2筒状部322の2層目の作製を行い、接合部J3からマンドレル52の端部52aまで第2筒状部322の1層目の作製を行う(矢印C)。次に、マンドレル52の端部52aから折り返して接合部J3まで第2筒状部322の2層目の作製を行い、接合部J3から他方の接合部J2まで第3筒状部323の2層目の作製を行い、接合部J2からマンドレル51の端部51aまで第1筒状部321の2層目の作製を行う(矢印D)。以上の手順により、第1筒状部321と、第2筒状部322と、第1筒状部321と第2筒状部322とを接続する第3筒状部323とで構成される2層のH形組成物314を継ぎ目無く作製することができる。尚、上記の作製工程を繰り返すことにより、2層以上の組成物を作製することもできる。
【0075】
ブレイダー装置BRにより第1筒状部321と第2筒状部322と第3筒状部323とで構成されるH形組成物314を作製後、H形マンドレル50を接合部J2、J3で分解してH形組成物314を取り出す。尚、H形マンドレル50を適当な溶媒により溶解可能な樹脂で製造し、組成物の組成後に、H形マンドレル50を溶媒により溶かすことにより、H形組成物314を取り出すようにしてもよい。
【0076】
次に、H形組成物314の第1筒状部321を変形させ、第1筒状部321の壁を第3筒状部323に対して突出させてフランジ部331を形成する工程と、第2筒状部322を変形させ、第2筒状部322の壁を第3筒状部323に対して突出させてフランジ部332を形成する工程について説明する。この2つの工程は略同様の手順で行うことができるため、以下、これらの工程を合わせて説明する。
【0077】
本実施例では、第1筒状部321(第2筒状部322)を変形させてフランジ部331(フランジ部332)を形成する工程は、第1筒状部321(第2筒状部322)が第3筒状部323に連続した状態を保ちつつ、第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を切断する工程と、第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を第3筒状部323に対して展開する工程と、を含んでいる。これらの工程は、実施例1と同様の手順で行うことができる。尚、第1筒状部321(第2筒状部322)を変形させてフランジ部331(フランジ部332)を形成する工程は、実施例2と同様の手順で行うこともできる。
【0078】
図10Aの2点鎖線は、第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を切断する位置を示しており、図10Bは、2点鎖線に沿って第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を切断した状態を示している。第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を切断する位置は、第1筒状部321(第2筒状部322)の中心軸に平行であり、かつ第1筒状部321(第2筒状部322)の中心軸に対して第3筒状部323の反対側である。この位置で切断することで、第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を構成する強化繊維と、第3筒状部323を構成する強化繊維とが連続する状態を保つことができ、また、第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を第3筒状部323に対して展開することができる。尚、切断部の周辺部を接着剤等で仮止めすることで、切断部の強化繊維のほつれを防止することができる。
【0079】
図10Cは、第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を第3筒状部323に対して展開した状態を示している。第1筒状部321(第2筒状部322)と第3筒状部323は強化繊維で構成されており、ある程度の変形が許容されるため、図10Cのように第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を略平坦に展開することができる。このように、第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を平坦にし、第3筒状部323に対して突出させることで、フランジ部331(フランジ部332)を形成し、フランジ付きの強化繊維プリフォーム311を作製することができる。フランジ部331(フランジ部332)は第1筒状部321(第2筒状部322)を展開したものであるため、第1筒状部321(第2筒状部322)の強化繊維が2層であれば、フランジ部331(フランジ部332)も強化繊維は2層となる。また、フランジ部331(フランジ部332)には、第3筒状部323が繋がっているため、第3筒状部323の穴がフランジ部331(フランジ部332)の表面に現れる。以上のようにして作製したフランジ付きの強化繊維プリフォーム311は、樹脂を含浸させた後、樹脂を硬化させることで、フランジ付きの構造体が成形される。
【0080】
本実施例では、第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を切断する位置は、第1筒状部321(第2筒状部322)の中心軸に平行とし、第1筒状部321(第2筒状部322)の中心軸に対して第3筒状部323の反対側としたが、第1筒状部321(第2筒状部322)の壁を構成する強化繊維と、第3筒状部323を構成する強化繊維とが連続する状態を保つ範囲で切断する位置を変更してもよい。切断する位置を変更することで、フランジ部331(フランジ部332)の形状や、第3筒状部323に対するフランジ部331(フランジ部332)の突出量、突出位置を変更することができる。
【0081】
また、第1筒状部321(第2筒状部322)の直径及び軸方向の寸法は、フランジ部331(フランジ部332)に要求される寸法に応じて決定すればよく、また、展開した第1筒状部321(第2筒状部322)の壁の周囲を適宜トリミングすることで形状を整えればよい。また、フランジ部331(フランジ部332)は平坦な形状に限定されず、種々の形状とすることができる。突出させる方向も、第3筒状部323の中心軸に直交する方向だけでなく、第3筒状部323の中心軸に交差する方向であればよい。また、フランジ部331(フランジ部332)は、図10に示すように第3筒状部323に対して全ての方向に突出していなくてもよく、所定の方向だけに突出する形状であってもよい。
【0082】
以上説明した実施例4に係る強化繊維プリフォームの作製方法によれば、次のような効果を有する。
【0083】
本実施例に係る強化繊維プリフォームの作製方法は、第1筒状部321と、第2筒状部322と、第1筒状部321と第2筒状部322とを接続する第3筒状部323とで構成されるH形組成物314を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、第1筒状部321を変形させ、第1筒状部321の壁を第3筒状部323に対して突出させてフランジ部331を形成する工程と、第2筒状部322を変形させ、第2筒状部322の壁を第3筒状部323に対して突出させてフランジ部332を形成する工程と、を備えるため、第3筒状部323と2つのフランジ部331、332とが連続した強化繊維で繋がっており、強度の高い強化繊維プリフォーム311とすることができる。
【0084】
また、第1筒状部321と第2筒状部322とを変形させるだけで2つのフランジ部331、332を形成することができるため、強度の高い2つのフランジ付の強化繊維プリフォーム311を容易に作製することができる。
【0085】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、実施例ではT形マンドレル40、H形マンドレル50を用いてT形組成物12やH形組成物314を作製したが、T形やH形の他にY形、十字形、テトラポット形等種々のマンドレルを用いて組成物を作製してもよい。また、筒状体の断面は円形だけでなく、多角形等、円形以外であってもよい。また、筒状体は直管に限らず湾曲等していてもよく、外形は柱状に限らず錐状であってもよい。
【0086】
以上説明した本発明の技術的範囲は、上記実施例に限定されるものではなく、上記実施例の形状に限定されない。本発明の技術的範囲は、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【符号の説明】
【0087】
11 強化繊維プリフォーム
12 T形組成物
21 第1筒状部
22 第2筒状部
31 フランジ部
40 T形マンドレル
BR ブレイダー装置
Bb ブレイダー装置本体
Bm マンドレル装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維プリフォームの作製方法であって、
少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、
前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、
を備える強化繊維プリフォームの作製方法。
【請求項2】
強化繊維プリフォームの作製方法であって、
少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、
前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、
少なくとも第3筒状部と第4筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、
前記第3筒状部を変形させ、前記第3筒状部の壁を前記第4筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、
前記第2筒状部と前記第4筒状部とを接合する工程と、
を備える強化繊維プリフォームの作製方法。
【請求項3】
前記第2筒状部と前記第4筒状部とを接合する工程は、
前記第2筒状部と前記第4筒状部の一方を他方に嵌合させる工程、
を含む請求項2に記載の強化繊維プリフォームの作製方法。
【請求項4】
強化繊維プリフォームの作製方法であって、
少なくとも第1筒状部と、第2筒状部と、前記第1筒状部と前記第2筒状部とを接続する第3筒状部と、を含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製する工程と、
前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、
前記第2筒状部を変形させ、前記第2筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させてフランジ部を形成する工程と、
を備える強化繊維プリフォームの作製方法。
【請求項5】
前記フランジ部を形成する工程は、
一方の筒状部が他方の筒状部に連続した状態を保ちつつ、前記一方の筒状部の壁を切断する工程と、
前記一方の筒状部の壁を前記他方の筒状部に対して展開する工程と、
を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の強化繊維プリフォームの作製方法。
【請求項6】
前記フランジ部を形成する工程は、
一方の筒状部の壁を空洞部が無くなる方向に変形する工程、
を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の強化繊維プリフォームの作製方法。
【請求項7】
強化繊維プリフォームであって、
少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させて形成したフランジ部、
を備える強化繊維プリフォーム。
【請求項8】
強化繊維プリフォームであって、
少なくとも第1筒状部と第2筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第2筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、
少なくとも第3筒状部と第4筒状部とを含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第3筒状部を変形させ、前記第3筒状部の壁を前記第4筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、を備え、
前記第2筒状部と前記第4筒状部とを接合して形成した、
強化繊維プリフォーム。
【請求項9】
強化繊維プリフォームであって、
少なくとも第1筒状部と、第2筒状部と、前記第1筒状部と前記第2筒状部とを接続する第3筒状部と、を含む組成物を、ブレイダー装置を用いて継ぎ目無く作製し、前記第1筒状部を変形させ、前記第1筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、前記第2筒状部を変形させ、前記第2筒状部の壁を前記第3筒状部に対して突出させて形成したフランジ部と、
を備える強化繊維プリフォーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−183779(P2011−183779A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54478(P2010−54478)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【出願人】(510068013)
【Fターム(参考)】