説明

弾球式遊技機および遊技球発射装置

【課題】遊技球に糸を付けることにより不正行為が行なわれるのを防止する。
【解決手段】(a)の状態から球送りソレノイド41がONになると、(b)のように球送りレバー43が上がり、球送りレバー43の凹部43aと球排出口49の位置が整合し、遊技球15は凹部43aへ移動する。この状態から球送りソレノイド41がOFFになると、球送りレバー43が下がって遊技球15は発射台47に載置されるが、遊技球15に糸77が付いていると、糸77がシャッター45に引っ掛かり、(c)のように球送りレバー43が下がりきらない状態になる。この状態を糸不正検出センサ74により発射制御装置が検出し、長期間この状態が続くと遊技球15の発射を停止するので、不正行為が行なわれるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾球式遊技機およびその弾球式遊技機に用いられる遊技球発射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より弾球式遊技機(パチンコ遊技機、パチンコ機または単に遊技機ともいう)においては、発射された遊技球が入賞口に入ると、賞球が払い出される。これを悪用して、糸を付けた遊技球を用いる不正行為(糸付き球ゴトという)が行なわれることがある。これは、糸の一端を遊技球に固定し、他端を左手などに持ち、この遊技球を通常どおりに発射するという行為である。そしてこの糸付きの遊技球が入賞口に入って、入賞口内に設けられた球センサに検出される(賞球が払い出される)と、糸の前記他端を引っ張って、球センサに検出されない位置まで遊技球を引っ張り出し、再び糸を緩めてこの遊技球を前記球センサに検出させる(賞球が払い出される)ということを繰り返す。これにより、球センサは複数の遊技球が入賞口に入った、と誤認識をし、この不正行為者に賞球を付与してしまう。
【0003】
こうした不正行為を防止するために特許文献1では、玉通路に段差を設け、遊技球がこの段差を降りる際(遊技球の通常の流れ方向)には遊技球を検出し、遊技球がこの段差を上る際(遊技球の異常な流れ方向。不正の疑いあり)には、その段差を構成する壁部分に突出するレバーに遊技球が突き当たり、前記レバーを変位させたことをセンサで検出することにより、不正を検出する技術が開示されている。なお、特許文献1の装置は遊技機ではなくパチンコ玉計数機であるが、遊技機と同様の不正行為への対策に関する発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−85441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、糸付き球を用いた不正行為には、前記した以外のものも存在する。例えば、糸付き球を遊技領域の所定の場所に位置させることにより、いわゆるワープルートへと他の遊技球を誘導するというものである。ワープルートは通常、液晶表示装置を囲むセンターケースの左側面に入口が形成されており、ここに入った遊技球は、液晶表示装置の下方に形成されたステージと呼ばれる部位に誘導され、このステージの下方に設けられた始動口に高い確率で入球する。遊技球が始動口に入球すると乱数が発生され、この乱数の値に基づいて当否判定が行なわれる。当否判定の結果が当りであれば大当り遊技が発生し、遊技者に大量(例えば1000個以上)の賞球をもたらす。従って、ワープルートへ遊技球を誘導すると、前記乱数が発生し易くなり、これにより大当り遊技も発生し易くなる。「所定の位置」の具体例としては、ワープルートの入口の左方が挙げられ、ここに糸付き球を位置させることにより、糸付き球に衝突した遊技球がワープルートの入口へ向かうようにする。
【0006】
更にこれ以外の不正行為として、糸付き球を用いて遊技領域内の遊技球の流下を妨害して、ブドウと呼ばれる遊技球の滞留物を発生させ、この滞留物により、所望の位置(例えば始動口)へそれ以外の遊技球を導くという行為も挙げられる。
これらいずれの不正行為も、糸付き球が玉センサに検出される訳でも、玉センサの前後を往復するわけではないので、特許文献1に記載の技術では、これらの不正を検出することも防止することも困難である。
本発明は係る課題に鑑みなされたものであり、糸付き球を用いた不正行為を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の請求項1記載の弾球式遊技機は、遊技領域に発射するための遊技球を保持する皿部と、遊技球を1個ずつ前記遊技領域に向けて発射する遊技球発射装置と、前記皿部から前記遊技球発射装置へと遊技球を誘導するための遊技球通路とを備えた弾球式遊技機において、前記遊技球通路、及び前記遊技球発射装置の少なくとも一方に、糸が引っ掛かることにより変位する変位部を設け、該変位部が変位したことを検出する糸不正検出手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで「糸が引っ掛かる」とは、糸が変位部に絡まって取れなくなる状態のみを指すのではなく、糸が変位部に接触したことを通じて変位部が変位する事象全般を指すものとする。例えば、変位部が糸に押さえつけられて変位部が変位することも「糸が変位部に引っ掛かった」と言うものとする。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、遊技領域に発射するための遊技球を保持する皿部と、遊技球を1個ずつ前記遊技領域に向けて発射する遊技球発射装置と、前記皿部から前記遊技球発射装置へと遊技球を誘導するための遊技球通路とを備えた弾球式遊技機において、前記遊技球通路、及び前記遊技球発射装置の少なくとも一方に、遊技球の流れを遮るシャッターを設け、該シャッターを駆動して該シャッターを開閉させるシャッター駆動部と、該シャッター駆動部が前記シャッターを閉塞させる駆動を行なったにも拘らず、前記シャッターが閉塞されていないことを検出する糸不正検出手段とを設けたことを特徴とする弾球式遊技機をその要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または2に記載の弾球式遊技機において、前記糸不正検出手段により、前記検出が行なわれた場合には、前記遊技球発射装置による遊技球の発射を停止させる発射制御手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
ここで「前記検出」とは、請求項1を引用する場合には、変位部が変位したことの検出、請求項2を引用する場合には、シャッター駆動部が前記シャッターを閉塞させる駆動を行なったにも拘らず、前記シャッターが閉塞されていないことの検出を、それぞれ指すものとする(以下の「前記検出」も同様)。いずれにせよ、糸付き球が用いられたことを検出することを目的としている。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の弾球式遊技機において、前記糸不正検出手段により、前記検出が行なわれた場合には、該検出結果を報知する不正報知手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の本発明は、弾球式遊技機に用いられ、遊技領域に遊技球を発射する遊技球発射装置であって、当該遊技球発射装置へ遊技球が流入するための導入口と、遊技領域へと発射される遊技球が載置される発射台と、該発射台に載置された遊技球を打撃して遊技領域へと発射するためのハンマーと、該ハンマーを駆動して遊技球を打撃するハンマー駆動部と、前記導入口から当該遊技球発射装置内へと流入した遊技球を1個ずつ前記発射台へと供給するための球供給機構と、前記球供給機構を駆動して遊技球を1個ずつ前記発射台へと供給する球供給機構駆動部と、該球供給機構駆動部による前記球供給機構の駆動と前記ハンマー駆動部による前記ハンマーの駆動とを同期させることにより、前記発射台へと供給された遊技球を1個ずつ遊技領域へと発射する発射制御部と、前記導入口から前記発射台に至る遊技球の通路に設けられ、糸が引っ掛かることにより変位する変位部と、該変位部が変位したことを検出する糸不正検出手段とを備えたことを特徴とする遊技球発射装置をその要旨とする。
【0014】
請求項6に記載の本発明は、弾球式遊技機に用いられ、遊技領域に遊技球を発射する遊技球発射装置であって、当該遊技球発射装置へ遊技球が流入するための導入口と、遊技領域へと発射される遊技球が載置される発射台と、該発射台に載置された遊技球を打撃して遊技領域へと発射するためのハンマーと、該ハンマーを駆動して遊技球を打撃するハンマー駆動部と、前記導入口から当該遊技球発射装置内へと流入した遊技球を1個ずつ前記発射台へと供給するための球供給機構と、前記球供給機構を駆動して遊技球を1個ずつ前記発射台へと供給する球供給機構駆動部と、該球供給機構駆動部による前記球供給機構の駆動と前記ハンマー駆動部による前記ハンマーの駆動とを同期させることにより、前記発射台へと供給された遊技球を1個ずつ遊技領域へと発射する発射制御部と、前記導入口から前記発射台に至る遊技球の通路に設けられ、遊技球の流れを遮るシャッターと、該シャッターを駆動して該シャッターを開閉させるシャッター駆動部と、該シャッター駆動部が前記シャッターを閉塞させる駆動を行なったにも拘らず、前記シャッターが閉塞されていないことを検出する糸不正検出手段と、を備えたことを特徴とする遊技球発射装置をその要旨とする。
【0015】
請求項7に記載の本発明は、請求項6に記載の遊技球発射装置において、前記シャッター駆動部は、前記発射制御部により、前記球供給機構駆動部、及び前記ハンマー駆動部と同期して前記シャッターを駆動するものであることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の本発明は、請求項5〜7の何れか1項に記載の遊技球発射装置において、前記糸不正検出手段により、前記検出が行なわれた場合には、前記遊技球発射装置による遊技球の発射を停止させる発射制御手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の本発明は、請求項5〜8の何れか1項に記載の遊技球発射装置において、前記糸不正検出手段により、前記検出が行なわれた場合には、該検出結果を報知する不正報知手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の本発明は、請求項5〜9の何れか1項に記載の遊技球発射装置を備えたことを特徴とする弾球式遊技機をその要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の弾球式遊技機によれば、遊技球通路および遊技球発射装置の少なくとも一方に変位部が設けられており、糸が変位部に引っ掛かって変位部が変位すると、糸不正検出手段がこの変位を検出するので、糸付き球が用いられたことを検出することができる。従って、遊技球を球センサの前後で繰り返し往復させて賞球を得るという不正行為だけでなく、前述したワープルートへ遊技球を誘導する不正行為、及びブドウを発生させる不正行為も防ぐことができる。
【0020】
請求項2に記載の弾球式遊技機によれば、遊技球通路および遊技球発射装置の少なくとも一方にシャッターが設けられており、シャッター駆動部により開閉される。そしてシャッター駆動部によりシャッターを閉塞する駆動が行なわれたにも拘らず、シャッターが閉塞されないと、糸不正検出手段がこの状態を検出する。これは、糸がシャッターに挟まったことにより、シャッターが閉塞されなかったと判定している。従って、この弾球式遊技機によれば、糸付き球が用いられたことを検出することができる。これにより、遊技球を球センサの前後で繰り返し往復させて賞球を得るという不正行為だけでなく、前述したワープルートへ遊技球を誘導する不正行為、及びブドウを発生させる不正行為も防ぐことができる。
【0021】
請求項3に記載の弾球式遊技機によれば、糸不正検出手段により前記検出がされた場合には、発射停止手段が遊技球の発射を停止するので、糸付き球により遊技場などが不利益を被るのを防止できる。但し、糸付き球を入賞口の玉センサに繰り返し検出させる不正に対しては効力を期待できない。こうした不正に対しては次のようにすると良い。
【0022】
すなわち請求項4に記載の弾球式遊技機においては、糸不正検出手段により前記検出がされた場合には、不正報知手段がこれを報知する。この報知動作が行なわれた弾球式遊技機を、遊技場の店員などが点検すればよい。従って、この弾球式遊技機によれば、糸付き球を入賞口の玉センサに繰り返し検出させる不正により遊技場などが不利益を被るのも防止することができる。
【0023】
請求項5に記載の遊技球発射装置においては、導入口から発射台に至る遊技球の通路に変位部が設けられており、糸が変位部に引っ掛かって変位部が変位すると、糸不正検出手段がこの変位を検出するので、糸付き球が用いられたことを検出することができる。従って、この遊技球発射装置によれば、遊技球を球センサの前後で繰り返し往復させて賞球を得るという不正行為だけでなく、前述したワープルートへ遊技球を誘導する不正行為、及びブドウを発生させる不正行為も防ぐことができる。
【0024】
請求項6に記載の遊技球発射装置においては、導入口から発射台に至る遊技球の通路にシャッターが設けられており、シャッター駆動部により開閉される。そしてシャッター駆動部によりシャッターを閉塞する駆動が行なわれたにも拘らず、シャッターが閉塞されないと、糸不正検出手段がこの状態を検出する。この遊技球発射装置によれば、糸付き球が用いられたことを検出することができる。従って、遊技球を球センサの前後で繰り返し往復させて賞球を得るという不正行為だけでなく、前述したワープルートへ遊技球を誘導する不正行為、及びブドウを発生させる不正行為も防ぐことができる。
【0025】
請求項7に記載の本発明は、シャッター駆動部は、シャッターがハンマーや球供給機構と同期して駆動されるため、適切なタイミング(例えば、ハンマーにより遊技球が発射される直前にシャッターを駆動する、逆に、ハンマーにより遊技球が発射されてからシャッターを駆動する、球供給機構が発射台に遊技球を供給する直前にシャッターを駆動する、逆に、球供給機構が発射台に遊技球を供給してからシャッターを駆動する等)で遊技球の通路を閉塞することが可能となる。また、態様によっては、シャッターを球供給機構の一部として構成することも可能となる。例えば、シャッターが発射タイミングに同期して遊技球の通路を遮断することにより、遊技球を1個ずつ発射台に供給可能にするといったことも考えられる。
【0026】
請求項8に記載の弾球式遊技機によれば、糸不正検出手段により前記検出がされた場合には、発射停止手段が遊技球の発射を停止するので、糸付き球により遊技場などが不利益を被るのを防止できる。但し、糸付き球を入賞口の玉センサに繰り返し検出させる不正に対しては効力を期待できない。こうした不正に対しては次のようにすると良い。
【0027】
すなわち請求項9に記載の遊技球発射装置においては、糸不正検出手段により前記検出がされた場合には、不正報知手段がこれを報知する。この報知動作が行なわれた遊技球発射装置を、遊技場の店員などが点検すればよい。従って、この遊技球発射装置によれば、糸付き球を入賞口の玉センサに繰り返し検出させる不正により遊技場などが不利益を被るのも防止することができる。
【0028】
請求項10に記載の弾球式遊技機によれば、請求項5〜9の何れか1項に記載の遊技球発射装置と同じ効果を有するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施例のパチンコ機50の正面図
【図2】パチンコ機50の遊技盤1の正面図
【図3】パチンコ機50の背面図
【図4】パチンコ機50の電気構成図
【図5】上皿55の遊技球15が発射装置19に供給される様子を示す説明図
【図6】発射ハンドル64の説明図
【図7】発射装置19の外観図
【図8】球送りカセット44の背面図
【図9】球送り装置の動作説明図
【図10】糸付き不正検出処理のフローチャート
【図11】第2実施例のパチンコ機50の電気構成図
【図12】第2実施例の球送り装置の動作説明図
【図13】第2実施例のシャッター装置および球送り装置の動作を示すタイムチャート
【図14】第3実施例のパチンコ機50の電気構成図
【図15】第3実施例の球送りカセット44の背面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の好適な実施形態について説明する。尚、本発明の実施の形態は下記の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する種々の形態を採ることができ、各実施例に記載された内容を適宜組み合わせることが可能なことはいうまでもない。
[実施例1]
【0031】
図1に示すように、弾球遊技機の一種であるパチンコ機50は、縦長の固定外郭保持枠をなす外枠51にて構成の各部を保持する構造である。外枠51の左側上下には、ヒンジ53が設けられており、該ヒンジ53の他方側には図3に記載する内枠70が取り付けられており、内枠70は外枠51に対して開閉可能な構成になっている。前枠52には、板ガラス61が取り外し自在に設けられており、板ガラス61の奥には図2に記載する遊技盤1が内枠70に取り付けられている。
【0032】
前枠52の上側左右には、スピーカ66が設けられており、パチンコ機50から発生する遊技音が出力され、遊技者の趣向性を向上させる。また、遊技者の趣向性を向上させるために前枠52に遊技状態に応じて発光する枠側装飾ランプ65も複数設けられている。前枠52の下方には、上皿55と下皿63が一体に形成されている。下皿63の右側には発射ハンドル64が取り付けられており、該発射ハンドル64を時計回りに回動操作することによって発射装置(後述)が稼働して、上皿55から供給された遊技球が遊技盤1に向けて発射される。
【0033】
上皿55の上部ほぼ中央には、遊技者が操作可能な演出ボタン67が備えられており、この演出ボタン67は、周囲にジョグダイヤル68を備えたものとなっている。遊技者が所定期間中に、演出ボタン67やジョグダイヤル68を操作することで後述する演出図柄表示装置6に表示される内容が変化したり、スピーカ66より出力される遊技音が変化したりする。また、このパチンコ機50はいわゆるCR機であって、プリペイドカードの読み書き等を行うためのプリペイドカードユニット(CRユニット)56が付属しており、パチンコ機50には、球貸スイッチ57、精算スイッチ58及び残高表示器59を有するCR精算表示装置が備わっている。
【0034】
図2は、本実施例のパチンコ機の遊技盤1の正面図である。なお、このパチンコ機の全体的な構成は公知技術に従っているので図示及び説明は省略する。図2に示すように遊技盤1には、公知のガイドレール2a、2bによって囲まれた略円形の遊技領域3が設けられている。この遊技領域3には多数の遊技釘4が打ち付けられている。
【0035】
遊技領域3のほぼ中央部には、センターケース5が配されている。センターケース5は、公知のものと同様に、ワープ入口、ワープ通路、ステージ、演出図柄表示装置6(液晶表示装置であり擬似図柄を表示する。)の画面を臨ませる窓等を備えている。センターケース5の下には、第1始動口11と第2始動口12とがユニット化された複合入賞装置が配置されている。第2始動口12は開閉可能な翼片を供えた普通電動役物を備えており、この翼片が開放しないと遊技球は第2始動口12に入球できない構成となっている。遊技領域の右下部には、複数個のLEDからなる普通図柄表示装置7と、普通図柄保留数表示装置8と、特別図柄保留数表示装置18と、7セグメント表示装置からなる特別図柄表示装置9とが配置されている。なお、前記翼片は、普通図柄表示装置7に特定の普通図柄が表示される(「普通図柄が当る」ともいう)と開放される。普通図柄は、演出図柄表示装置6の左方に設けられたゲート17を遊技球が通過すると変動が開始され、所定時間経過後に停止される。この変動時間および停止される普通図柄は、ゲート通過を契機として抽出された乱数に基づいて決定され、ゲート17を遊技球が通過した際に普通図柄が変動中などの場合により、普通図柄の変動を開始できない場合には、これらの乱数が記憶され、その個数が普通図柄保留数表示装置8に表示される。
【0036】
複合入賞装置の下方にはアタッカー式の大入賞口14が配置されている。また、第1始動口11の左方には、第1左入賞口31、第2左入賞口32、第3左入賞口33及び第4左入賞口34が設けられている。なお、この第1左入賞口31、第2左入賞口32、第3左入賞口33、第4左入賞口34が、常時、入球率が変化しない普通入賞口である。
【0037】
パチンコ遊技機50の裏面は図3に示すとおり、前述した遊技盤1を脱着可能に取り付ける内枠70が前述した外枠51に収納されている。この内枠70には、上方から、球タンク71、タンクレール72及び払出装置73が設けられている。この構成により、遊技盤1上の入賞口に遊技球の入賞があれば球タンク71からタンクレール72を介して所定個数の遊技球を払出装置73により前述した上皿55に排出することができる。また、パチンコ機50の裏側には(図4も参照のこと)、主制御装置80、払出制御装置81、演出図柄制御装置82、サブ統合制御装置83、発射制御装置84、電源基板85が設けられている。なお、演出図柄制御装置82、サブ統合制御装置83がサブ制御装置に該当する。
【0038】
主制御装置80、演出図柄制御装置82、サブ統合制御装置83は遊技盤1に設けられており、払出制御装置81、発射制御装置84、電源基板85が内枠70に設けられている。なお、図3では、発射制御装置84が描かれていないが、発射制御装置84は払出制御装置81の下に設けられている。また、球タンク71の右側には、外部接続端子板78が設けられており、この外部接続端子板78より、遊技状態や遊技結果を示す信号が図示しないホールコンピュータに送られる。
【0039】
このパチンコ機50の電気的構成は、図4のブロック図に示すとおり、主制御装置80を中心にして構成されている。なお、このブロック図には、単に信号を中継するだけのためのいわゆる中継基板及び電源回路等は記載していない。また、詳細の図示は省略するが、主制御装置80、払出制御装置81、演出図柄制御装置82、サブ統合制御装置83のいずれもCPU、ROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えているが、本実施例では発射制御装置84にはCPU、ROM、RAMは設けられていない。しかし、これに限るわけではなく、発射制御装置84にCPU、ROM、RAM等を設けてもよい。
【0040】
主制御装置80には、第1始動口11に入球した遊技球を検出する第1始動口スイッチ11a、第2始動口12に入球した遊技球を検出する第2始動口スイッチ12a、ゲート17に進入した遊技球を検出する普通図柄作動スイッチ17a、大入賞口14に入球した遊技球を計数するための第1カウントスイッチ14a、第1左入賞口31、第2左入賞口32、第3左入賞口33、及び第4左入賞口34に入球した遊技球を検出する左入賞口スイッチ31a等の検出信号が入力される。
【0041】
主制御装置80は搭載しているプログラムに従って動作して、上述の検出信号などに基づいて遊技の進行に関わる各種のコマンドを生成して払出制御装置81及びサブ統合制御装置83に出力する。
また主制御装置80は、図柄表示装置中継端子板90を介して接続されている特別図柄表示装置9及び普通図柄表示装置7の表示、特別図柄保留数表示装置18、及び普通図柄保留数表示装置8の点灯を制御する。
【0042】
更に、主制御装置80は、大入賞口ソレノイド14bを制御することで大入賞口14の開閉を制御し、普通電動役物ソレノイド(図4では普電役物ソレノイドと表記)12bを制御することで第2始動口12の開閉を制御する。主制御装置80からの出力信号は試験信号端子にも出力される他、図柄変動や大当り(特別遊技ともいう)等の管理用の信号が、裏中継端子板75、払出制御装置81および外部接続端子板78を介してホールコンピュータ87に送られる。主制御装置80と払出制御装置81とは双方向通信が可能である。
【0043】
払出制御装置81は、主制御装置80から送られてくるコマンドに応じて払出モータ20を稼働させて賞球を払い出させる。本実施例においては、賞球として払い出される遊技球を計数するための払出センサ21の検出信号は払出制御装置81に入力され、払出制御装置81で賞球の計数が行われる構成を用いる。この他にも主制御装置80と払出制御装置81に払出センサ21の検出信号が入力され、主制御装置80と払出制御装置81の双方で賞球の計数を行う構成を用いることも考えられる。
【0044】
なお、払出制御装置81はガラス枠開放スイッチ35、内枠開放スイッチ36、満杯スイッチ22、球切れスイッチ23からの信号が入力され、満杯スイッチ22により下皿63が満タンであることを示す信号が入力された場合及び球切れスイッチ23により球タンクに遊技球が少ないあるいは無いことを示す信号が入力されると払出モータ20を停止させ、賞球の払出動作を停止させる。なお、満杯スイッチ22、球切れスイッチ23も、その状態が解消されるまで信号を出力し続ける構成になっており、払出制御装置81は、その信号が出力されなくなることに起因して払出モータ20の駆動を再開させる。
【0045】
また、払出制御装置81はCRユニット端子板24を介してCRユニット56と交信することで払出モータ20を作動させ、貸し球を排出する。払出された貸し球は払出スイッチ21に検出され、検出信号は払出制御装置81に入力される。なお、CRユニット端子板24は精算表示装置25とも双方向通信可能に接続されており、精算表示装置25には、遊技球の貸出しを要求するための球貸スイッチ57、精算を要求するための精算スイッチ58、残高表示器59(図1参照)が接続されている。
【0046】
また、払出制御装置81は、外部接続端子板78を介して賞球に関する情報、枠(内枠、前枠)の開閉状態を示す情報などをホールコンピュータ87に送信するほか、発射制御装置84に対して発射停止信号を送信する。なお、払出制御装置81には、糸不正検出センサ74の出力信号が入力されるが、これについては後述する。
【0047】
発射制御装置84は発射ソレノイド30を制御して、遊技球を遊技領域3に遊技球を発射させる。また、発射制御装置84は球送りソレノイド41を制御して、発射台(後述)に1個ずつ遊技球を供給する。なお、発射制御装置84には払出制御装置81以外に発射ハンドル64(図1参照)からの回動量信号、タッチスイッチ28からのタッチ信号、発射停止スイッチ29から発射停止信号が入力される。
【0048】
回動量信号は、遊技者が発射ハンドル64を操作することで出力され、タッチ信号は遊技者が発射ハンドル64を触ることで出力され、発射停止スイッチ信号は、遊技者が発射停止スイッチ29を押すことで出力される。なお、タッチ信号が発射制御装置84に入力されていなければ、遊技球は発射できないほか、発射停止スイッチ信号が入力されているときには、遊技者が発射ハンドル64を触っていても遊技球は発射できないようになっている。
【0049】
サブ統合制御装置83はサブ制御装置に該当し、主制御装置80から送信されてくるデータ及びコマンドを受信し、それらを演出表示制御用、音制御用及びランプ制御用のデータに振り分けて、演出表示制御用のコマンド等は演出図柄制御装置82に送信し、音制御用及びランプ制御用は自身に含まれている各制御部位(音声制御装置及びランプ制御装置としての機能部)に分配する。そして、音声制御装置としての機能部は、音声制御用のデータに基づいて音LSIを作動させることによってスピーカ66からの音声出力を制御し、ランプ制御装置としての機能部はランプ制御用のデータに基づいてランプドライバを作動させることによって各種LED、ランプ26を制御する。 また、サブ統合制御装置83には、演出ボタン67、ジョグダイヤル68が接続されており、遊技者がこれら67、68を操作した際には、その信号がサブ統合制御装置83に入力される。
【0050】
サブ統合制御装置83と演出図柄制御装置82とは双方向通信が可能である。
演出図柄制御装置82は、サブ統合制御装置83から受信したデータ及びコマンド(共に主制御装置80から送信されてきたものとサブ統合制御装置83が生成したものとがある)に基づいて演出図柄表示装置6を制御して、擬似図柄等の演出画像を演出図柄表示装置6の画面6aに表示させる。
【0051】
上皿55の遊技球が発射装置に供給される様子を図5に示す。図5(a)は上皿55を上方から見た図である。上皿55にあった遊技球15は、上皿55の底面中ほどから右方手前に流れ、左折して奥方向(本図では上方)に流れ、更に左折して流入口55aから上皿55の底面の下方(本図では奥方向)に誘導される。図5(b)はパチンコ機50を一部断面にして、上皿55の右方から見た図である。図5(a)のように誘導された遊技球15は、上皿55の奥方向(本図では右方)に設けられた発射装置19に入り、発射ハンドル64(図1などを参照)が操作されると、1個ずつ遊技領域3に発射される。
【0052】
発射ハンドル64の説明図を図6に示す。図6(a)は発射レバー37が回動されていない状態、図6(b)は発射レバー37が回動された状態を示す。発射ハンドル64は、パチンコ機50に対して固定されたドーム状のタッチ部38の周りに発射レバー37が回動可能に設けられている。発射レバー37にはリブ39(通常はタッチ部38に覆われていて見えない)が設けられており、図6(a)に示す発射レバー37が回動されていない状態では、リブ39が発射停止ボタン40を押さえている。これにより発射停止スイッチ29がON状態、すなわち遊技球15の発射が行なわれない状態となっている。発射レバー37が回動されると、リブ39が発射停止ボタン40から離れ、発射停止スイッチ29がOFF状態となり、発射ソレノイド30、及び球送りソレノイド41が作動を開始する。
【0053】
発射装置19の外観を図7に示す。図7(a)は発射装置19をパチンコ機50の正面側から見た図であり、図7(b)は発射装置19の斜視図である。球送りソレノイド41は、球送りレバー43と共に球送りカセット44の内部に設けられており、球送りソレノイド41が稼働する(「ONになる」ともいう)と球送りレバー43がPを軸として時計回りに揺動される。発射ソレノイド30は、図7(b)に示すように発射装置19の背面側に設けられており、発射ソレノイド30が稼働されると、ハンマー46を揺動させ、発射台47に載置された遊技球を発射する。なお、符号48は、上皿55から誘導された遊技球15が球送りカセット44に入るための導入口である。
【0054】
球送りソレノイド41の動作について図8に示す。図8(a)は球送りカセット44の背面図(図7(a)と逆方向から見た図)であり、図8(b)、図8(c)は図8(a)の前面を透視した図である。なお、図8(b)は球送りソレノイド41が稼働した状態、図8(c)は球送りソレノイド41が稼働していない状態(「OFF状態」または単に「OFF」ともいう)を示している。
【0055】
球排出口49は、球送りカセット44から発射台47(図7(b)などを参照)に流れ出る遊技球15の出口であり、略長方形をした孔となっている。導入口48から球送りカセット44内に入って来た遊技球15は、図8(b)に示すように球送りソレノイド41が稼働した状態では、位置Pを軸として反時計回りに揺動された球送りレバー43の凹部(図9なども参照)に入り込む。これは球送りレバー43の凹部と導入口48の位置が整合していることによる。なお、図8(b)の状態では、導入口48に別の遊技球15が上皿55から流れ込む可能性があるが、図が煩雑になるのを避けるために図示していない。この状態は、上皿55が空になっている場合などに発生する。なお、符号45は球送りレバー43に設けられたシャッターである。また、導入口48の左縁と球排出口49の右縁との間には距離aの間隔(間隔aという)が設定されている。
【0056】
この状態から球送りソレノイド41がOFFになると、図8(c)に示すように球送りレバー43が元の位置に戻り(具体的には、位置Pを軸として時計回りに揺動し)、球送りレバー43の凹部と球排出口49の位置が整合し、遊技球15は本図の手前方向に転動して球排出口49から流出し、図示しない発射台47に載置される。なお、図8(c)の状態では、球送りレバー43の凹部と球排出口49の位置がずれているので、遊技球15が球排出口49から流出しても、別の遊技球15が球送りレバー43の凹部に入り込むことはなく、発射台47に載置される遊技球15は1個のみとなる。そして、糸が遊技球15についていれば、糸は間隔aを確実に通過し、シャッター45の下縁を押し上げるので、シャッタ−45が図8(c)のような位置まで下降するのが糸により妨げられる。なお、以下の説明では、球送りレバー43が図8(b)の姿勢(遊技球15が凹部にあるか否かは問わない)にあることを「上がった状態」、図8(c)の姿勢(遊技球15が凹部にあるか否かは問わない)にあることを「下がった状態」ともいう。
【0057】
球送り動作を、別方向から見たものを図9に示す。図9(a)は図8(c)の直後の状態から球送りソレノイド41、球送りレバー43、導入口48、発射台47などを取り出し、同図の逆方向(つまりパチンコ機50の正面側)から見た図であり、図9(b)は図9(a)の状態をA−A断面(図7(a)参照)にて示したものである。「直後の状態」とは、凹部43aにあった遊技球15が発射台47に流出し、凹部43aが空になった状態である。そして導入口48には「別の遊技球15」(以下、単に遊技球15という)が上皿55から供給されている。なお、図9(b)では発射台47に流出した遊技球15は図示されていない。
【0058】
図9(a)、図9(b)の状態では、球送りレバー43が下がった状態となっているので、導入口48と凹部43aの位置がずれ、導入口48内の遊技球15は球送りレバー43の上部に当接して、凹部43aに入ることができない。球送りカセット44内には、糸不正検出センサ74が設けられている。糸不正検出センサ74は、球送りレバー43が下がった状態にあることを検出するためのフォトインタラプタである。球送りレバー43が下がった状態になると、球送りレバー43の凹部43aの下部に設けられた突起76が、糸不正検出センサ74の光路を遮るように配置されている。この状態から球送りソレノイド41が稼働した様子を示したのが図9(c)、そのA−A断面が図9(d)である。図9(c)、図9(d)の状態では、球送りレバー43が上がった状態となり、導入口48と凹部43aの位置が整合し、導入口48にあった遊技球15が凹部43aに入り込む。そして突起76は、糸不正検出センサ74の光路から離脱して、糸不正検出センサ74の出力電圧が変化する。図9(c)には描かれていないが、たとえ導入口48に遊技球15が存在しても、球送りレバー43の凹部43aは遊技球15が1個だけ入る大きさとなっているために、2個以上の遊技球15が凹部43aに入り込んで、共に球送りレバー43により発射台47に送られることはない。
【0059】
この状態から球送りソレノイド41がOFFとなると、図8(c)のようになり、球送りレバー43が下がった状態となり、凹部43aと球排出口49の位置が整合し、図9(c)で凹部43aに入っていた遊技球15が発射台47へと排出される。ただし図9(e)、及びそのA−A断面である図9(f)では、遊技球15に糸77が付いていた状態を示している。この状態では、シャッター45に糸77が引っかかり、球送りレバー43が下がった状態とならず、突起76が糸不正検出センサ74の光路を遮らない状態となる。なお、糸付き球を用いた不正行為を行なう者は、糸付き球を遊技領域3に発射する必要があるので、糸付き球が発射されるまでは糸77を弛ませて、発射後に糸を引っ張るなどの操作を行なう。従って、実際に球送りレバー43が下がりきらない状態になるのは、糸付き球が発射された後である可能性が高い。
【0060】
払出制御装置81にて実行される糸付き不正検出処理の概要を図10に示す。本処理が起動されると、まずS5にて糸不正フラグが0か否かを判定する。糸不正フラグについては後述する。否定判断(S5:no)であれば、そのまま当処理を終了(リターン)する。肯定判定(S5:yes)であれば、糸不正検出センサ74がオフか否かを判定する。糸不正検出センサ74がオフとは、糸不正検出センサ74の光路が遮られていない状態(例えば図9(c)、図9(e)の状態)である。肯定判定(S10:yes)であれば、不正タイマ更新処理を行なう(S15)。続くS20で不正タイマによる更新の結果、1秒が経過したか否かを判定する。否定判断(S20:no)であれば、そのまま当処理を終了する。肯定判断(S20:yes)であれば、S25にて糸不正フラグを1にする。つまり糸不正フラグとは、1秒以上、糸不正検出センサ74がオフになっていると1になり、それ以外の場合は0になる。糸不正フラグを1にすると、発射停止制御処理(S30)を行なう。発射停止制御処理とは、発射制御装置84に指令を発し、発射停止スイッチ29の状態に関わらず発射を禁止する処理である。そして糸付き不正検出信号を外部接続端子板78を介してホールコンピュータ87に送信し(S35)、当処理を終了する。糸付き不正検出信号とは、糸付き不正が発生した旨を外部に報知するための信号である。
【0061】
S10において、糸不正検出センサ74がONであると判定された場合(S10:no)は、S40に移行して、不正タイマを更新中か否かを判定し、否定判断(S40:no)ならそのまま当処理を終了する。肯定判断(S40:yes)なら不正タイマをクリア(S45)してから当処理を終了する。
つまり、糸付き不正検出処理は、糸不正検出センサ74が1秒以上連続してOFFとなった場合に、遊技球15の発射を停止して、ホールコンピュータ87に糸付き不正が発生した旨を報知する処理となっている。なお、球送りソレノイド41の起動周期は601.125msとなっており、これにより1分間に約99.8発の遊技球15を発射する仕様となっている。つまり1秒より短い周期で遊技球15を発射する。従って、1秒以上、糸不正検出センサ74がオフになっていることは、何らかの異常が発射装置に起きていると考えられる。その一因が遊技球15に糸がついていることである。この状態では、1秒以上、突起76が糸不正検出センサ74を遮らないので、遊技球15の発射が停止され、ホールコンピュータ87に糸付き不正検出信号が送信される。
【0062】
以上のように構成された発射装置19によれば、遊技球15に糸がついていると、球送りレバー43が下がりきらず、糸不正検出センサ74がOFFの状態となる時間が通常よりも長くなる。これを検出することにより、遊技球の発射を停止するので、糸付き球を用いた不正行為により遊技場が不利益を被るのを防止することができる。また、糸付き不正検出信号をホールコンピュータ87に送信するので、不正行為の摘発に役立てることができる。また、糸77の存在自体を検出するので、遊技球15を球センサの前後で繰り返し往復させて賞球を得るという不正行為だけでなく、前述したワープルートへ遊技球15を誘導する不正行為、及びブドウを発生させる不正行為も防止できる。その不正行為を行なった者が逃走した場合にも、異常状態(球送りレバー43が下がりきらない状態)になった発射装置19を、正常な状態に速やかに復旧することができる。
【0063】
ここで本実施例の構成と、本発明の構成要件との対応関係を示す。上皿55が本発明の「皿部」に相当し、発射装置19が本発明の「遊技球発射装置」に相当し、流入口55aから発射装置19に至る流路が本発明の「遊技球通路」に相当し、シャッターソレノイド42が本発明の「シャッター駆動部」に相当し、発射ソレノイド30が本発明の「ハンマー駆動部」に相当し、球送りレバー43が本発明の「球供給機構」に相当し、球送りソレノイド41が本発明の「球供給機構駆動部」に相当し、発射制御装置84が本発明の「発射制御部」に相当し、糸不正検出センサ74および突起76が本発明の「糸不正検出手段」に相当し、S30の処理が本発明の「発射停止手段」に相当し、S35の処理が本発明の「不正報知手段」に相当する。
【0064】
なお、本実施例の球供給機構は、「前記導入口と前記発射台の間で揺動される球送りレバーと、該球送りレバーに設けられ、遊技球を1個だけ保持可能な遊技球保持部と、を備え、前記球供給機構駆動部にて前記球送りレバーが揺動されるものであり、前記球送りレバーが前記導入口の位置に揺動された状態で該導入口から当該遊技球発射装置に流入してきた遊技球を前記遊技球保持部に保持し、前記発射台の位置に揺動されると前記遊技球保持部に保持された遊技球を前記発射台に排出するもの」と表現できる。凹部43aは遊技球保持部に相当する。
[実施例2]
【0065】
本発明の第2実施例について図11〜13を用いて説明する。なお、本実施例は実施例2と共通点が多いため、異なる点のみを重点的に説明する。まず図11は、本実施例のパチンコ機50の電気的構成を示すブロック図であり、シャッター装置94を設けた点が第1実施例とは異なる。なお、糸不正検出センサ74はフォトインタラプタであるが、第1実施例とは異なる箇所(後述)にて検出を行なう。
【0066】
シャッター装置94と、糸不正検出センサ74について図12を用いて説明する。図12(a)は球送りカセット44の背面図であり、図12(b)、図12(c)は図12(a)の前面を透視した図である。この実施例では、シャッター45は球送りレバー43ではなく、球送りカセット44の発射台47側に設けられている。シャッター45の幅は球排出口49の幅よりやや広くされている。シャッター45には略L字型のロッド91が固定されており、このロッド91の他端は、球送りカセット44に形成された長孔93を通してシャッターソレノイド42のプランジャ42aと接続されている(図12(b)参照)。図12(b)はシャッターソレノイド42が稼働していない状態であり、シャッター45はロッド91と共に下降しており、球排出口49はシャッター45により閉鎖された状態となっている。ロッドには検出片95が設けられており、シャッター45が下降された状態では、糸不正検出センサ74の光路を検出片95が遮る。シャッターソレノイド42が稼働すると、プランジャ42aと共にロッド91が上昇して図12(c)のようにシャッター45が上昇する。シャッター45が上昇すると球排出口49が開放された状態となり、遊技球15が発射台に流出可能な状態となる。この状態では検出片95が糸不正検出センサ74の光路を遮らない状態(糸不正検出センサ74のOFF状態)となる。
【0067】
シャッター装置および球送り装置の動作を示すタイムチャートを図13に示す。遊技者が発射ハンドル64を時計回りに回動させると、発射停止スイッチ29(図6参照)がOFF状態となり、発射ONの状態となる(時点t1 )。なお、上皿55及び発射装置19内に遊技球15が一切ない状態で発射ハンドル64が回動されることも考えられるが、以下の説明では、上皿55にはふんだんに遊技球15があり、その遊技球15は滞りなく発射装置19へと供給されるものとする。発射ONの状態になると、発射制御装置84が球送りソレノイド41を稼働させる。すると球送りレバー43が上がった状態となり、導入口48の遊技球15を凹部43aに受け入れる(図8(b)参照)。なお、図13では球送りソレノイド41および球送りレバー43を総称して「球送り装置」と表現している。同様に、シャッターソレノイド42、シャッター45、ロッド91を総称して「シャッター装置」と表現している。そして時点t2 で発射制御装置84が球送りソレノイド41をOFFにすると共に、シャッターソレノイド42をONにする。この結果、球排出口49は開放された状態となり、凹部43aの遊技球15は発射台47へと排出される。上昇されたシャッター45は時点t3 にてシャッターソレノイド42がOFFとなることにより下降される。
【0068】
なお、本図には示されていないが、これら球送りソレノイド41、及びシャッターソレノイド42の動作に連動して、発射ソレノイド30も発射制御装置84により稼働される。そのタイミングは、時点t2 と時点t3 の中間であり、より詳しくは、時点t2 から、凹部43a内の遊技球15が発射台47に移動するのに要する時間よりも長い時間だけ後の時点で発射ソレノイド30がONとなる。これにより、ハンマー46を揺動させて、発射台47に載置された遊技球15を打撃し、遊技領域3へと発射する。以下、発射停止スイッチ29がON状態となる(時点t12)まで、球送り、シャッター45の開閉、発射が繰り返される。なお、球送りソレノイド41、シャッターソレノイド42、発射ソレノイド30の駆動周期はいずれも601.125msとなっている。
【0069】
糸が遊技球15についていると、シャッター45が下降した際に糸に引っ掛かり、シャッター45が下がりきらなくなる。この結果、糸不正検出センサ74の光路が長時間(t3 −t2 、t6 −t5 などの糸不正検出センサ74がOFFとなっているはずの時間よりも、長い時間)検出片95によって遮られない状態となる。これを検出するために図13の糸付き不正検出処理を行なう。
【0070】
以上のように構成された発射装置19によれば、遊技球15に糸がついていると、シャッター45が下がりきらない。つまり、第1実施例では球送りレバー43が下がりきらないことを検出していたのを、シャッター45自体の異常を検出することにより、糸付き球を検出している。従って、第1実施例の発射装置19と同様の効果を奏するものとなる。しかも第2実施例のシャッター45は、下がった際には球排出口49を完全に塞ぐものであるため、細い糸が挟まっただけでも検出することを期待できる。
[実施例3]
【0071】
本発明の第3実施例について図14,15を用いて説明する。なお、本実施例は第2実施例と共通点が多いため、異なる点のみを重点的に説明する。まず図14は、本実施例のパチンコ機50の電気的構成を示すブロック図であり、シャッター装置94を廃した点が第2実施例とは異なる。なお、シャッター装置はないが、シャッターは備えている。これについて図15に示す。
【0072】
図15(a)は球送りカセット44の背面図であり、図15(b)、図15(c)は図15(a)の前面の、シャッター45の周辺を透視した図である。この実施例でも、シャッター45は球送りレバー43ではなく、球送りカセット44に関して発射台47側に設けられている。ただしシャッター45の縦方向の長さは第2実施例のそれよりも短くされており、シャッター45が降りた状態でも遊技球15は球排出口49を通過可能な程度の長さにされている。なお、図15(a)、図15(b)、図15(c)はいずれも球送りレバー43がさがった状態となっているが、シャッター45は自由に上下可能に設置されているため、糸付き球などが用いられていない正常の状態においては、図15(a)、図15(b)のような位置にある。シャッター45には略L字型のロッド91が固定されているが、第2実施例のロッド91よりも短いものとなっている。このロッド91の他端は、球送りカセット44に形成された長孔93を通して球送りカセット44の内側(本図において裏側)に導入されている。
【0073】
ロッド91の前記他端には、検出片95が設けられており、シャッターが下りた状態では検出片95が、球送りカセット44に設けられた糸不正検出センサ74の光路を遮らないように配置されている。糸が付けられた遊技球15が球排出口49を通って図示しない発射台47から発射されると、図15(c)のような状態になる。この状態では、糸付き球が遊技領域3に発射されたことにより糸77が斜め上(本図は裏側から見ているため、左上ではなく右上方に糸77は伸びることになる)に引っ張られ、シャッター45が上がった状態となる。これにより検出片95が糸不正検出センサ74の光路を遮る。これによる糸不正検出センサ74の出力信号の変化を払出制御装置81が検出し、糸付き球が発射されたことを認識する。
【0074】
そして糸付き不正検出処理(図10)に代えて、糸不正検出センサ74の光路が遮られたことが検出されると払出制御装置81が発射動作を停止させ(発射停止制御処理(S30)に相当)、ホールコンピュータ87に糸付き不正検出信号を送信する(糸付き不正検出信号送信処理(S35)に相当)。
【0075】
以上のように構成された発射装置19によれば、遊技球15に糸がついていても、第1実施例、第2実施例と同様の効果を奏するものとなる。また、シャッター45を駆動する機構を備えていないことにより、シャッターソレノイド42も、シャッターソレノイド42を駆動するための制御も不要となるので、簡素な発射装置19とすることができる。なお、第3実施例のシャッター45は本発明の変位部に相当し、検出片95および糸不正検出センサ74が糸不正検出手段に相当する。
[他の実施例]
【0076】
前記いずれの実施例においても、遊技球15の発射周期は601.125msであったが、これ以外の周期で遊技球15を発射する構成としてもよい。また、第3実施例における糸付き不正検出信号は、ホールコンピュータ87以外の外部施設(例えば、警察庁、パチンコホールを経営する企業など)にも送信されるように構成してもよい。こうすれば、パチンコホールの外部においても、糸付き球による不正行為が発生したことを知ることができる。また、糸付き球が用いられていることが検出された際には、発射停止制御処理(S30)により発射を停止させ、更に糸付き不正検出信号送信処理(S35)により外部(ホールコンピュータ87)に糸付き不正検出信号を送信していたが、発射停止制御処理・糸付き不正検出信号送信処理の内、一方のみを行なってもよい。
【0077】
第2実施例において、シャッターが下がる時点(図13ではt3 、t6 、t9 など)は、球送りソレノイド41が稼働する時点(図10ではt4 、t7 、t10など)よりも前の時点となっていたが、後の時点としてもよい。前記実施例では、シャッター45を下げてから(例えば時点t3 )、球送りレバー43を上がった状態にしていた。これを、球送りレバー43を上がった状態にしてからシャッター45を下げるようにすることになる。
【0078】
なお、球供給機構として、発射装置19に用いた以外の構成を採用しても構わない。また、遊技球15はハンマー46により打撃されるものであったが、これ以外の構成にて発射されるもの(例えば、直動式のソレノイドのプランジャの動作で遊技球15を打撃するものや、バネの弾性力で遊技球を打撃するもの)に適用しても良い。こうした態様では、遊技球15を打撃する部材が本発明のハンマーに相当する。
【符号の説明】
【0079】
1:遊技盤 3:遊技領域
19:発射装置 26:ランプ
28:タッチスイッチ 29:発射停止スイッチ
37:発射レバー 38:タッチ部
39:リブ 40:発射停止ボタン
41:球送りソレノイド 42:シャッターソレノイド
43:球送りレバー 44:球送りカセット
45:シャッター 46:ハンマー
47:発射台 48:導入口
49:球排出口 50:パチンコ機
55:上皿 55a:流入口
63:下皿 64:発射ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技領域に発射するための遊技球を保持する皿部と、遊技球を1個ずつ前記遊技領域に向けて発射する遊技球発射装置と、前記皿部から前記遊技球発射装置へと遊技球を誘導するための遊技球通路とを備えた弾球式遊技機において、
前記遊技球通路、及び前記遊技球発射装置の少なくとも一方に、糸が引っ掛かることにより変位する変位部を設け、
該変位部が変位したことを検出する糸不正検出手段
を備えたことを特徴とする弾球式遊技機。
【請求項2】
遊技領域に発射するための遊技球を保持する皿部と、遊技球を1個ずつ前記遊技領域に向けて発射する遊技球発射装置と、前記皿部から前記遊技球発射装置へと遊技球を誘導するための遊技球通路とを備えた弾球式遊技機において、
前記遊技球通路、及び前記遊技球発射装置の少なくとも一方に、遊技球の流れを遮るシャッターを設け、
該シャッターを駆動して該シャッターを開閉させるシャッター駆動部と、
該シャッター駆動部が前記シャッターを閉塞させる駆動を行なったにも拘らず、前記シャッターが閉塞されていないことを検出する糸不正検出手段と、
を設けたことを特徴とする弾球式遊技機。
【請求項3】
前記糸不正検出手段により、前記検出が行なわれた場合には、前記遊技球発射装置による遊技球の発射を停止させる発射制御手段
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の弾球式遊技機。
【請求項4】
前記糸不正検出手段により、前記検出が行なわれた場合には、該検出結果を報知する不正報知手段
を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の弾球式遊技機。
【請求項5】
弾球式遊技機に用いられ、遊技領域に遊技球を発射する遊技球発射装置であって、
当該遊技球発射装置へ遊技球が流入するための導入口と、
遊技領域へと発射される遊技球が載置される発射台と、
該発射台に載置された遊技球を打撃して遊技領域へと発射するためのハンマーと、
該ハンマーを駆動して遊技球を打撃するハンマー駆動部と、
前記導入口から当該遊技球発射装置内へと流入した遊技球を1個ずつ前記発射台へと供給するための球供給機構と、
前記球供給機構を駆動して遊技球を1個ずつ前記発射台へと供給する球供給機構駆動部と、
該球供給機構駆動部による前記球供給機構の駆動と前記ハンマー駆動部による前記ハンマーの駆動とを同期させることにより、前記発射台へと供給された遊技球を1個ずつ遊技領域へと発射する発射制御部と、
前記導入口から前記発射台に至る遊技球の通路に設けられ、糸が引っ掛かることにより変位する変位部と、
該変位部が変位したことを検出する糸不正検出手段と、
を備えたことを特徴とする遊技球発射装置。
【請求項6】
弾球式遊技機に用いられ、遊技領域に遊技球を発射する遊技球発射装置であって、
当該遊技球発射装置へ遊技球が流入するための導入口と、
遊技領域へと発射される遊技球が載置される発射台と、
該発射台に載置された遊技球を打撃して遊技領域へと発射するためのハンマーと、
該ハンマーを駆動して遊技球を打撃するハンマー駆動部と、
前記導入口から当該遊技球発射装置内へと流入した遊技球を1個ずつ前記発射台へと供給するための球供給機構と、
前記球供給機構を駆動して遊技球を1個ずつ前記発射台へと供給する球供給機構駆動部と、
該球供給機構駆動部による前記球供給機構の駆動と前記ハンマー駆動部による前記ハンマーの駆動とを同期させることにより、前記発射台へと供給された遊技球を1個ずつ遊技領域へと発射する発射制御部と、
前記導入口から前記発射台に至る遊技球の通路に設けられ、遊技球の流れを遮るシャッターと、
該シャッターを駆動して該シャッターを開閉させるシャッター駆動部と、
該シャッター駆動部が前記シャッターを閉塞させる駆動を行なったにも拘らず、前記シャッターが閉塞されていないことを検出する糸不正検出手段と、
を備えたことを特徴とする遊技球発射装置。
【請求項7】
前記シャッター駆動部は、前記発射制御部により、前記球供給機構駆動部、及び前記ハンマー駆動部と同期して前記シャッターを駆動するものであることを特徴とする請求項6に記載の遊技球発射装置。
【請求項8】
前記糸不正検出手段により、前記検出が行なわれた場合には、前記遊技球発射装置による遊技球の発射を停止させる発射制御手段
を備えたことを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載の遊技球発射装置。
【請求項9】
前記糸不正検出手段により、前記検出が行なわれた場合には、該検出結果を報知する不正報知手段
を備えたことを特徴とする請求項5〜8の何れか1項に記載の遊技球発射装置。
【請求項10】
請求項5〜9の何れか1項に記載の遊技球発射装置を備えたことを特徴とする弾球式遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−228352(P2012−228352A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98110(P2011−98110)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(395018239)株式会社高尾 (550)
【Fターム(参考)】