説明

微多孔膜ならびにかかる膜の製造および使用方法

本発明は、電池セパレータフィルムとしての使用に好適な微多孔性ポリマー膜に関する。本発明はまた、かかる膜の製造方法、電池セパレータとしてかかる膜を含む電池、かかる電池の製造方法、およびかかる電池の使用方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年11月17日出願の米国仮特許出願番号第61/115405号、2008年11月17日出願の米国仮特許出願番号第61/115410号、2009年1月26日出願の欧州特許出願第09151320.0号および2009年1月26日出願の欧州特許出願第09151318.4号の優先権を主張し、それぞれの内容は参照によりその全体が組み入れられたものとする。
【0002】
本発明は、電池セパレータフィルムとしての使用に好適な微多孔性ポリマー膜に関する。本発明はまた、かかる膜の製造方法、電池セパレータとしてかかる膜を含む電池、かかる電池の製造方法およびかかる電池の使用方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
微多孔膜は、例えば、リチウム一次電池および二次電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛二次電池等における電池セパレータとして用いることができる。微多孔性ポリオレフィン膜を電池セパレータ、特にリチウムイオン電池セパレータに用いる場合、膜の特徴が、電池の特性、生産性および性能に大きく影響する。したがって、微多孔膜が、特に高温において、熱による収縮に対して耐性を有することが望ましい。耐熱収縮性がなければ、高温においてセパレータが収縮して電池の電極の端部から離れるため内部短絡が起こるおそれがあるが、耐熱収縮性によって、内部短絡に対する電池の防御性を向上させることができる。
【0004】
欧州特許出願公開第1905586号(2008年2月2日公開)には、電池セパレータフィルムとして有用な多層ポリマー膜が開示されている。例示されている膜の1つは、2%の105℃における横方向の熱収縮率を有する。
【0005】
日本公開特許第2000−198866号(2000年7月18日公開)には、10%の熱収縮値を有する多層電池セパレータフィルムが開示されている。この膜は、α−オレフィン/一酸化炭素コポリマーと無機種(架橋シリコーンパウダー)とを含有する層を含む。
【0006】
PCT公開WO2007−049568(2007年5月3日公開)にはまた、4%の機械方向の熱収縮値、および3%の横方向の熱収縮値を有する多層電池セパレータフィルムが開示されている。この文献のフィルムは、耐熱性ポリマーまたは無機充填剤を含有するコア層を含む。
【0007】
米国特許公開第2007/0218271号には、4%以下の機械方向および横方向の熱収縮値を有する単層微多孔性フィルムが開示されている。この文献のフィルムは、2×10〜4×10の重量平均分子量を有し、分子量1×10以下の分子5重量%以下、および分子量1×10以上の分子5重量%以下を含有する高密度ポリエチレンから製造される。
【0008】
日本公開特許第2001−192467号には、1.8%と低い横方向の熱収縮値を有する単層微多孔膜が開示されているが、これは比較的低い透気度(ガーレー値:684秒)においてである。同様に、日本公開特許第2001−172420号には、1.1%と低い横方向の熱収縮値を有する単層微多孔膜が開示されているが、これはガーレー値が800超においてである。
【0009】
改善されてきてはいるが、耐熱収縮性が向上した電池セパレータフィルムに対するニーズが依然として存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ひとつの実施形態において、本発明は、
(a)希釈剤およびMw>1.0×10のポリオレフィンを含む押出物をMDまたはTDの少なくとも1つの方向に延伸し、次いで延伸押出物から希釈剤の少なくとも一部を除去して、MDに沿った第1の長さおよびTDに沿った第1の幅を有する膜を形成し、
(b)膜を、MDに第1の長さから、約1.1〜約1.5の範囲の倍率で第1の長さより長い第2の長さへ延伸し、かつ、TDに第1の幅から、約1.1〜約1.3の範囲の倍率で第1の幅より広い第2の幅へ延伸し、次いで
(c)第2の幅を、第1の幅から第1の幅の約1.1倍までの範囲である、第3の幅に縮小させる工程、
を含む微多孔膜の製造方法に関する。
【0011】
別の実施形態においては、本発明は、Mw>1.0×10のポリオレフィンを含む単層微多孔膜であって、正規化透気度が4.0×10秒/100cm/20μm以下、および、少なくとも1つの平面方向への130℃における熱収縮率が15%以下である単層微多孔膜に関する。
【0012】
さらに別の実施形態においては、本発明は、負極、正極、電解質、およびMw>1.0×10のポリオレフィンを含む単層微多孔膜であって、膜が、正規化透気度4.0×10秒/100cm/20μm以下、および、少なくとも1つの平面方向への130℃における熱収縮率15%以下を有し、少なくとも負極と正極が該微多孔膜によって隔てられている電池に関する。電池は、例えば、リチウムイオン一次電池または二次電池であってもよい。電池は、電荷のソースまたはシンクとして、例えば、電気自動車またはハイブリッド電気自動車用の電源として用いることができる。
【0013】
別の実施形態においては、本発明は、Mw>1.0×10のポリオレフィンを含む単層微多孔膜であって、(a)第1の平面方向への第1の大きさから第2の大きさへの延伸であり、第2の大きさがおよそ(第1の大きさの1.1倍)からおよそ(第1の大きさの1.5倍)の範囲である延伸、(b)第2の平面方向への第3の大きさから第4の大きさへの延伸であり、第1および第2の平面方向によって平面角が60°〜120°の範囲に定められ、第4の大きさが(第3の大きさの1.1倍)から(第3の大きさの1.3倍)の範囲である延伸、および(c)第2の方向への第4の大きさから第5の大きさへの延伸であり、第5の大きさが(i)第4の大きさ未満、かつ(ii)第3の大きさから(第3の大きさの1.1倍)の範囲である延伸が施されている膜に関する。所望により、膜は、第1の方向が機械方向であり第2の方向が横方向である押出膜である。所望により、延伸膜は、4.0×10秒/100cm/20μm以下の正規化透気度、および少なくとも1つの平面方向への130℃における熱収縮率15%以下を有する。所望により、延伸は、膜を、ポリオレフィンの最低融解ピーク以下の温度、例えば、(a)ポリオレフィンの最低結晶分散温度の30℃下から(b)ポリオレフィンの最低融解ピークまでの範囲、例えば70.0℃〜約135℃、例えば膜がポリエチレンまたはポリエチレンとポリプロピレンの混合物を含む場合は約80.0℃〜約132℃の範囲の温度にさらして行う。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の電極アセンブリを備えた円筒型リチウムイオン二次電池の一例を示す断面斜視図である。
【0015】
【図2】図2は、図1の電池を示す断面図である。
【0016】
【図3】図3は、図2の部分Aを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ひとつの実施形態においては、本発明は、高温での耐熱収縮性が向上した微多孔性フィルムに関する。別の実施形態においては、本発明は、高温での耐熱収縮性、高い多孔性等の重要な特性と、好適な機械的強度、透過度および耐圧縮性との良好なバランスを有する微多孔膜に関する。膜は、常圧で液体(例えば、水または極性電解液)を透過させるため、電池セパレータフィルムとして使用することができる。
【0018】
ある電池の故障モードでは、電池セパレータフィルムとして用いる膜の高温軟化を伴い、その結果、特に膜の端の付近で寸法安定性が失われる。仮に、膜の幅が膜のシャットダウン温度(通常は105℃よりもはるかに高い)より高い温度で縮小したとすると、負極、正極、およびセパレータの間の空間が狭いと、電池内の内部短絡につながるおそれがある。これは特に角柱型および円筒型電池の場合に当てはまり、それらの場合、膜幅が少しでも変化すると、電池の端またはその付近で負極と正極が接触する可能性がある。
【0019】
本発明は、例えば向上した熱収縮特性等の、高温でのよりよい寸法安定性を有する微多孔膜の発見に関する。熱収縮特性の向上は、比較的低い温度(例えば、従来のリチウムイオン電池の作動温度範囲内である、約110℃未満)においてのみならず、比較的高温(例えば、125℃超または135℃超、例えば、リチウムイオン電池用の従来の電池セパレータフィルムのシャットダウン温度より上)においても認められる。
【0020】
電池セパレータフィルムは、105℃では、十分に軟化せず熱収縮が不十分である可能性があるため、105℃におけるフィルムの熱収縮性能は、必ずしも、電池の内部短絡の可能性を示す信頼できる指標ではない。これに対し、溶融状態におけるフィルムの最大TD方向熱収縮率は、膜のシャットダウン温度よりも高い温度で測定するため、このタイプの内部短絡のよりよい指標となり得る。溶融状態におけるTD方向熱収縮率は、通常、105℃における膜の熱収縮性能のみからは予測出来ない。
[1]微多孔膜の組成および構造
【0021】
ひとつの実施形態においては、微多孔膜は、重量平均分子量(「Mw」)>1.0×10のポリオレフィンを含む。ポリオレフィンは、例えば、(a)重量平均分子量(「Mw」)≦1.0×10の第1のポリエチレン(「第1のポリエチレン」という)、および(b)Mw>1.0×10のポリプロピレンまたは(c)Mw>1.0×10の第2のポリエチレンの少なくとも1つを含むことができる。ひとつの実施形態においては、微多孔膜は単層膜であり、すなわち、追加の層が積層されていたり、追加の層と共押出しされたりはしてはいない。押出物から製造される膜は、実質的に、またはまさに、ポリエチレン、またはポリエチレンおよびポリプロピレンを含む単層からなっていてよい。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、用語「ポリマー」は、複数の高分子を含む組成物を意味し、これらの高分子は1種または複数のモノマーに由来する繰返し単位を含む。高分子は、大きさ、分子構造、原子含有量等が異なっていてよい。用語「ポリマー」は、コポリマー、ターポリマー等の高分子を含み、個々のポリマー成分および/または反応器ブレンドを包含する。「ポリプロピレン」は、例えば、繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がプロピレン単位であるポリプロピレンホモポリマーおよび/またはポリプロピレンコポリマー等の、プロピレン由来の繰返し単位を含むポリオレフィンを意味する。「ポリエチレン」は、例えば、繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がエチレン単位であるポリエチレンホモポリマーおよび/またはポリエチレンコポリマー等の、エチレン由来の繰返し単位を含むポリオレフィンを意味する。
【0023】
以下、選ばれた実施形態についてより詳細に説明するが、本明細書は、本発明のより広い範囲内の他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0024】
ひとつの実施形態においては、微多孔膜は、50.0重量%以下の量のポリプロピレン、99.0重量%以下の量の第1のポリエチレン、および50.0重量%以下の量の第2のポリエチレンを含む。重量パーセントは微多孔膜の重量が基準であり、微多孔膜は、ポリプロピレンまたは第2のポリエチレンの少なくとも1つを含むものとする。例えば、一実施形態において微多孔膜は、(a)例えば約2.0重量%〜約40.0重量%、例えば約5.0重量%〜約30.0重量%といった約1.0重量%〜約50.0重量%のポリプロピレン、(b)例えば約50.0重量%〜約90.0重量%、例えば約60.0重量%〜約80.0重量%といった約25.0重量%〜約99.0重量%の第1のポリエチレン、および(c)例えば約5.0重量%〜約30.0重量%、例えば約10.0重量%〜約20.0重量%といった約0.0重量%〜約50.0重量%の第2のポリエチレンを含む。
【0025】
別の実施形態においては、微多孔膜は、第1のポリエチレンおよび第2のポリエチレンを含み、第1のポリエチレンは60.0重量%以上の量で存在し、第2のポリエチレンは40.0重量%以下の量で存在する。重量パーセントは微多孔膜の重量が基準である。膜は、例えば、ポリプロピレンが、膜の重量を基準として、例えば0.0重量%〜約0.1重量%といった約1.0重量%未満である、有意な量のポリプロピレンを含まないポリエチレン膜であってよい。例えば、一実施形態において微多孔膜は、例えば約10.0重量%〜約30.0重量%といった約1.0重量%〜約40.0重量%の第2のポリエチレンと、例えば約70.0重量%〜約90.0重量%といった約60.0重量%〜約99.0重量%の第1のポリエチレンとを含むポリエチレン膜である。
【0026】
ひとつの実施形態においては、本発明は単層微多孔膜の製造方法に関する。この製造方法において、最初の方法工程には、ポリエチレン樹脂等のポリマー樹脂と希釈剤とを混合した後、希釈剤を押し出して押出物を製造することが含まれる。この最初の工程における処理条件は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開番号WO2008/016174に記載の条件と同じであってよい。
【0027】
以下、ポリプロピレン、第1および第2のポリエチレン、ならびに押出物および微多孔膜の製造に用いる希釈剤について、さらに詳細に説明する。
[2]微多孔膜の製造に用いる材料
【0028】
ひとつの実施形態においては、押出物は、少なくとも1種の希釈剤と、Mw>1.0×10のポリオレフィン、例えば第1のポリエチレンおよびポリプロピレンまたは第2のポリエチレンの少なくとも1つとから製造する。所望により、無機種(ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種、例えば、TiO)、および/またはPCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174(共に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーを、押出物の製造に用いてよい。ひとつの実施形態においては、これらの任意である種は使用しない。
A.第1のポリエチレン
【0029】
第1のポリエチレンは、例えば約1.0×10〜約9.0×10、例えば約4.0×10〜約8.0×10の範囲といった1.0×10以下のMwを有する。所望により、ポリエチレンは、例えば約1.2〜約25、例えば約3.0〜約15の範囲といった50.0以下の分子量分布(「MWD」)を有する。例えば、第1のポリエチレンは、高密度ポリエチレン(「HPDE」)、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンの1種または複数であってよい。
【0030】
ひとつの実施形態においては、第1のポリエチレンは、例えば炭素原子1.0×10個当たり5以上、例えば炭素原子1.0×10個当たり10以上といった炭素原子1.0×10個当たり0.2以上の末端不飽和基量を有する。末端不飽和基量は、例えばPCT公開WO97/23554に記載の手順に従って測定できる。
【0031】
ひとつの実施形態においては、第1のポリエチレンは、(i)エチレンホモポリマー、または(ii)エチレンと、モル比で100%のコポリマーを基準として10.0モル%以下のα−オレフィン等のコモノマーとのコポリマーの少なくとも1つである。このようなポリマーまたはコポリマーは、シングルサイト触媒を用いて製造できる。コモノマーは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレンの一種または複数であってよい。
【0032】
第1のポリエチレンのMwおよび分子量分布(「MWD」、Mwを数平均分子量「Mn」で割った値と定義される)は、示差屈折計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトグラフ、すなわち「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて決定する。3本のPLgel Mixed-Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いる。公称流量は0.5cm/分であり、公称注入量は300μLである。トランスファーライン、カラムおよびDRI検出器が、145℃に維持されたオーブン内に入っている。測定は、“Macromolecules, Vol. 34, No. 19, pp. 6812-6820 (2001)”に開示されている手順に従って行う。
【0033】
使用するGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済のアルドリッチ社製試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。TCBは、SECに導入する前にオンライン脱気装置で脱気する。ポリマー溶液を、乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量の上記TCB溶媒を加え、次いでこの混合物を160℃で継続的に撹拌しながら約2時間加熱することにより調製する。UHMWPE溶液の濃度は0.25〜0.75mg/mlである。試料溶液は、GPCに注入する前に、モデルSP260 Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて2μmフィルターでオフラインろ過する。
【0034】
Mp(「Mp」はMwにおけるピークと定義される)が約580〜約10,000,000の範囲の17種のそれぞれのポリスチレン標準を用いて作成した検量線でカラムセットの分離効率を較正し、これを検量線の作成に用いる。ポリスチレン標準はポリマーラボラトリーズ社(マサチューセッツ州アマースト)より入手する。各PS標準についてDRI信号のピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを二次多項式に当てはめることによって、検量線(logMp対保持容量)を作成する。ウェーブメトリクス社(Wave Metrics, Inc.)製IGOR Proを用いて試料を分析する。
B.第2のポリエチレン
【0035】
第2のポリエチレンは、例えば1.1×10〜約5.0×10、例えば約1.2×10〜約3.0×10の範囲、例えば約2.0×10といった1.0×10超のMwを有する。所望により、第2のポリエチレンは、例えば約1.5〜約25、例えば約4.0〜約20.0または約4.5〜10.0といった50.0以下のMWDを有する。例えば、第2のポリエチレンは、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)であってよい。ひとつの実施形態においては、第2のポリエチレンは、(i)エチレンホモポリマー、または(ii)エチレンと、モル比で100%のコポリマーを基準として10.0モル%以下のα−オレフィン等のコモノマーとのコポリマーの少なくとも1つである。コモノマーは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレンの一種または複数であってよい。このようなポリマーまたはコポリマーは、シングルサイト触媒を用いて製造できる。
C.ポリプロピレン
【0036】
ポリプロピレンは、例えば約1.05×10〜約2.0×10、例えば約1.1×10〜約1.5×10といった1.0×10超のMwを有する。所望により、ポリプロピレンは、例えば約1.2〜約25、または約2.0〜約6.0といった50.0以下のMWD、および/または、例えば110J/g〜120J/g、例えば約113J/g〜119J/gまたは114J/g〜約116J/gといった100.0J/g以上の融解熱(「ΔHm」)を有する。ポリプロピレンは、例えば、(i)プロピレンホモポリマー、または(ii)プロピレンと、モル比で100%の全コポリマーを基準として10.0モル%以下のα−オレフィン等のかかるコモノマーとのコポリマーの1つまたは複数であってよい。コポリマーは、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってよい。コモノマーは、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチルおよびスチレン等の、α−オレフィン、ならびにブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンの1種または複数であってよい。所望により、ポリプロピレンは以下の特性の1つまたは複数を有する:(i)ポリプロピレンは、アイソタクチックである、(ii)ポリプロピレンは、230℃の温度および25sec−1のひずみ速度において少なくとも約50,000Pa秒の伸張粘度を有する、(iii)ポリプロピレンは、少なくとも約160.0℃の融解ピーク(第2融解)を有する、かつ/または(iv)ポリプロピレンは、約230℃の温度および25sec−1のひずみ速度において測定した場合に少なくとも約15のトルートン比を有する。
【0037】
ポリプロピレンのΔHm、MwおよびMWDは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第WO2007/132942号に開示されている方法により決定する。
【0038】
希釈剤は、通常、押出物の製造に用いるポリマーと相溶する。例えば、希釈剤は、押し出し温度にて樹脂と合わさって単相を形成することが可能ないずれの種であってよい。希釈剤としては、ノナン、デカン、デカリンおよびパラフィン油等の脂肪族または環状炭化水素、ならびにフタル酸ジブチルおよびフタル酸ジオクチル等のフタル酸エステルが挙げられる。それらの中でも好ましいのはパラフィン油であるが、パラフィン油は、人体に無害であり、沸点が高く、かつ少量の揮発性成分を含有する。40℃での動粘度が20〜200cStであるパラフィン油を用いることができる。希釈剤は、共にその全体が参照により組み込まれる、米国特許公開第2008/0057388号および同20098/0057389号に記載のものと同じであってよい。
【0039】
ひとつの実施形態においては、押出物中のポリオレフィンは、例えば約2.5重量%〜約40.0重量%、例えば約5.0重量%〜約30.0重量%といった約1.0重量%〜約50.0重量%の量で存在するポリプロピレンを含む。押出物の製造に用いる第1のポリエチレンの量は、例えば約50.0重量%〜約90.0重量%、例えば60.0重量%〜約80.0重量%といった約25重量%〜約99.0重量%の範囲であってよい。押出物の製造に用いる第2のポリエチレンの量は、例えば約5.0重量%〜約30.0重量%、例えば約10.0重量%〜約20.0重量%といった0.0重量%〜約50.0重量%の範囲であってよい。ポリプロピレンならびに第1および第2のポリエチレンの重量パーセントは、押出物の製造に用いるポリマーの重量を基準とする。膜が、2.0重量%超、特に2.5重量%超の量でポリプロピレンを含む場合、膜は、通常、有意な量のポリプロピレンを含まない膜のメルトダウン温度よりも高いメルトダウン温度を有する。
【0040】
別の実施形態においては、膜は有意な量のポリプロピレンを含まない。この実施形態においては、押出物の製造に用いるポリオレフィンは、ポリオレフィンが、ポリエチレンからなるか、または本質的にポリエチレンからなる場合等では、0.1重量%未満のポリプロピレンを含む。この実施形態においては、押出物の製造に用いる第2のポリエチレンの量は、例えば約10.0重量%〜約50.0重量%といった約1.0重量%〜約40.0重量%の範囲であってよく、押出物の製造に用いる第1のポリエチレンの量は、例えば約70.0重量%〜約90.0重量%といった約60.0重量%〜約99.0重量%の範囲であってよい。第1および第2のポリエチレンの重量パーセントは、押出物の製造に用いるポリマーの重量を基準とする。
【0041】
押出物は、ポリマーと少なくとも1種の希釈剤とを混合することにより製造する。押出物の製造に用いる希釈剤の量は、例えば、押出物の重量を基準として約25.0重量%〜約99.0重量%の範囲であってよく、押出物の重量の残りの部分は、例えば、第1のポリエチレンと第2のポリエチレンとの混合物等の、押出物の製造に用いるポリマーである。
【0042】
押出物および微多孔膜は、コポリマー、無機種(ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種等、例えば、SiO、TiO、Al等)、および/またはPCT公開WO2008/016174に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーを含有していてよいが、これらは必須ではない。ひとつの実施形態においては、押出物および膜はかかる物質を実質的に含まない。この文脈における実質的に含まないとは、微多孔膜中のかかる物質の量が、押出物の製造に用いるポリマーの総重量を基準として1.0重量%未満、0.1重量%未満または0.01重量%未満であることを意味する。
【0043】
微多孔膜は、通常、押出物の製造に用いるポリオレフィンを含む。処理中に導入する少量の希釈剤または他の種もまた、通常、微多孔膜の重量を基準として1.0重量%未満の量で存在してよい。処理中にポリマーの分子量が少量低下することがあるが、これは許容可能なものである。ひとつの実施形態においては、処理中に分子量の低下があったとしても、それにより生じる、膜中のポリマーのMWと膜の製造に用いるポリマーのMWとの差は、わずか50.0%、わずか約1.0%、またはわずか0.1%以下にしかならない。
【0044】
ひとつの実施形態においては、本発明は、(a)例えば約2.0重量%〜約40.0重量%、例えば約5.0重量%〜約30.0重量%といった約1.0重量%〜約50.0重量%のポリプロピレン、(b)例えば約50.0重量%〜約90.0重量%、例えば60.0重量%〜約80.0重量%といった約25.0重量%〜約99.0重量%の第1のポリエチレン、および(c)例えば約5.0重量%〜約30.0重量%、例えば約10.0重量%〜約20.0重量%といった約0.0重量%〜約50.0重量%の第2のポリエチレンを含む微多孔膜であって、膜が、例えば約1.0%〜約2.3%の範囲といった105.0℃におけるTD方向熱収縮率約2.5%以下、例えば約5.0%〜約14.0%の範囲といった130.0℃におけるTD方向熱収縮率約15.0%以下、および、例えば約1.0%〜約9.0%の範囲といった溶融状態における最大TD方向熱収縮率10.0%以下を有し、第1のポリエチレンが、例えば約1.0×10〜約9.0×10、例えば約4.0×10〜約8.0×10の範囲といった1.0×10以下のMw、および、例えば約1.2〜約25、例えば約3.0〜約15の範囲といった50.0以下のMWDを有し、第2のポリエチレンが、例えば約1.1×10〜約5.0×10、例えば約1.2×10〜約3.0×10の範囲といった1.0×10超のMw、および、例えば約1.5〜約25、例えば約4.0〜約20.0といった50.0以下のMWDを有し、ポリプロピレンが、例えば約1.05×10〜約2.0×10、例えば約1.1×10〜約1.5×10といった1.0×10超のMw、例えば約1.2〜約25、例えば約2〜約6といった50.0以下のMWD、および、例えば約110J/g〜約120J/g、例えば約114J/g〜約116J/gといった100.0J/g以上のΔHmを有する微多孔膜に関する。
【0045】
別の実施形態においては、微多孔膜は、微多孔膜の重量を基準として0.1重量%未満の量でポリプロピレンを含有する。かかる膜は、例えば、(a)例えば約10.0重量%〜約30.0重量%といった約1.0重量%〜約40.0重量%の第1のポリエチレン、および(b)例えば約70.0重量%〜約90.0重量%といった約60.0重量%〜約99.0重量%の第2のポリエチレンを含んでいてもよく、膜は、例えば約20.0秒/100cm/20μm〜約400.0秒/100cm/20μmの範囲といった正規化透気度4.0×10秒/100cm/20μm以下、例えば約0.25%〜約1.5%の範囲といった105℃におけるTD方向熱収縮率1.9%未満、例えば約5.0%〜15%の範囲といった130℃におけるTD方向熱収縮率15%以下、および、例えば約1.0%〜約7.0%の範囲といった溶融状態における最大TD方向熱収縮率10.0%以下を有し、第1のポリエチレンは、例えば約1.0×10〜約9.0×10、例えば約4.0×10〜約8.0×10の範囲といった1.0×10以下のMw、および、例えば約1.2〜約25、例えば約3.0〜約15の範囲といった50.0以下のMWDを有し、第2のポリエチレンは、例えば1.1×10〜約5.0×10、例えば約1.2×10〜約3.0×10の範囲といった1.0×10超のMw、および、例えば約1.2〜約25、例えば約4.0〜約20.0といった50.0以下のMWDを有する。
【0046】
ひとつの実施形態においては、膜中の、1.0×10超の分子量を有するポリオレフィンの画分は、膜中のポリオレフィンの重量を基準として、例えば少なくとも2.5重量%、例えば約2.5重量%〜50.0重量%の範囲といった少なくとも1.0重量%である。
【0047】
以下、微多孔膜を製造するための選択された実施形態についてさらに詳細に説明するが、本明細書は、本発明のより広い範囲内の他の実施形態を除外することを意図するものではない。
[3]微多孔膜の製造方法
【0048】
ひとつの実施形態においては、微多孔膜は、ポリマーと希釈剤とから製造される単層(すなわち、一層)膜である。
【0049】
例えば、微多孔膜は、以下の工程を含むプロセスにより製造できる:例えば、ポリマーと希釈剤を混合し、このポリマーと希釈剤との混合物をダイを通して押し出して押出物を形成することにより、ポリマー物品を製造する工程、所望により、押出物を冷却して、ゲル状シート等の冷却押出物を形成する工程、冷却押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程、押出物または冷却押出物から希釈剤の少なくとも一部を除去し、膜を形成する工程、および所望により、残留したいずれかの揮発性種をこの乾燥膜から除去する工程。乾燥膜には、例えば、(a)第1の平面方向への第1の大きさから第2の大きさへの延伸であり、第2の大きさがおよそ(第1の大きさの1.1倍)からおよそ(第1の大きさの1.5倍)の範囲である延伸、(b)第2の平面方向への第3の大きさから第4の大きさへの延伸であり、第1および第2の平面方向によって平面角が60°〜120°の範囲に定められ、第4の大きさが(第3の大きさの1.1倍)から(第3の大きさの1.3倍)の範囲である延伸、および(c)第2の方向への第4の大きさから第5の大きさへの延伸であり、第5の大きさが(i)第4の大きさ未満、かつ(ii)第3の大きさから(第3の大きさの1.1倍)の範囲である延伸を施す。
【0050】
PCT公開WO2008/016174に記載されている、任意の熱溶媒処理工程、任意の熱処理工程、任意の電離放射線による架橋工程、および任意の親水性処理工程等を所望により行ってよい。これらの任意の工程の数も順序も重要ではない。
ポリマーと希釈剤との混合
【0051】
上記のポリマーを、例えば、乾燥混合または溶融ブレンドにより混合してよく、次いで、混合したポリマーを、少なくとも1種の希釈剤(例えば膜形成溶媒)と混合し、ポリマーと希釈剤との混合物、例えばポリマー溶液を調製できる。あるいは、ポリマー(1つまたは複数)と希釈剤とは単一の工程で混合できる。このポリマー−希釈剤混合物は、1種または複数の酸化防止剤等の添加剤を含有していてよい。ひとつの実施形態においては、かかる添加剤の量は、ポリマー溶液の重量を基準として1重量%を超えることはない。
【0052】
押出物の製造に用いる希釈剤の量は重要ではなく、例えば、希釈剤とポリマーとの混合物の重量を基準として約25重量%〜約99重量%の範囲であってよく、残りが、例えば第1および第2のポリエチレンの混合物等のポリマーである。
押出し
【0053】
ひとつの実施形態においては、ポリマーと希釈剤との混合物を押出機からダイへと導く。
【0054】
押出物または冷却押出物は、延伸工程後に望ましい厚さ(通常3μm以上)を有する最終膜を製造するのに適切な厚さを有しているべきである。例えば、押出物は、約0.1mm〜約10.0mm、または約0.5mm〜5.0mmの範囲の厚さを有していてよい。押出しは、通常、溶融状態の、ポリマーと希釈剤との混合物を用いて行う。シート形成ダイを使用する場合、ダイリップを、通常、例えば140℃〜250℃の範囲の高温に加熱する。押出しを実行するための好適な処理条件は、PCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174に開示されている。機械方向(「MD」)は、押出物がダイから製造される方向と定義される。横方向(「TD」)は、MDおよび押出物の厚さ方向の両方に対して垂直な方向と定義される。押出物はダイから連続的に製造することもできるし、または、例えば、(バッチ処理の場合のように)ダイから少量ずつ製造することもできる。TDおよびMDの定義は、バッチ処理および連続処理のどちらにおいても同じである。
冷却押出物の形成
【0055】
押出物を、15.0℃〜25.0℃の範囲の温度にさらして、冷却押出物を形成できる。冷却速度はとくに重要ではない。例えば、押出物は、押出物の温度(冷却した温度)が押出物のゲル化温度とほぼ同じ(またはそれ以下)になるまで、最低でも約30.0℃/分の冷却速度で冷却してよい。冷却の処理条件は、例えば、PCT公開番号WO2008/016174および同WO2007/132942に開示されている条件と同じであってよい。
押出物の延伸
【0056】
押出物または冷却押出物を、少なくとも一つの方向に延伸する。押出物は、例えばPCT公開番号WO2008/016174に記載されている、例えばテンター法、ロール法、インフレーション法、またはそれらの組合せにより延伸できる。延伸は、一軸に、または二軸に行ってよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸または多段階延伸(例えば、同時二軸延伸と逐次延伸の組合せ)のいずれを用いてよいが、同時二軸延伸が好ましい。二軸延伸を用いる場合、倍率の大きさは各延伸方向で同じである必要はない。
【0057】
延伸倍率は、一軸延伸の場合、例えば2倍以上、好ましくは3〜30倍であってよい。二軸延伸の場合、延伸倍率は、例えば、いずれの方向にも3倍以上であってよく、すなわち、面積倍率が、例えば16倍以上、例えば25倍以上といった9倍以上であってよい。この延伸工程の例としては、面積倍率が約9倍〜約49倍の延伸が挙げられる。各方向への延伸の量は、やはり同じである必要はない。倍率はフィルムの大きさに乗法的に影響する。例えば、最初の幅(TD)が2.0cmであるフィルムは、TDに4倍の倍率まで延伸されて、最終幅が8.0cmとなる。
【0058】
必須ではないが、延伸は、押出物をおよそTcd温度からTmの範囲の温度にさらしながら行ってよい。
【0059】
TcdおよびTmは、結晶分散温度、および押出物の製造に用いるポリエチレンの中で最も融点の低いポリエチレン(すなわち、第1および第2のポリエチレン)の融点と定義される。結晶分散温度は、ASTM D 4065に従って動的粘弾性の温度特性を測定することにより決定する。Tcdが約90.0℃〜100.0℃の範囲である実施形態においては、延伸温度は、例えば約100.0℃〜125.0℃、例えば105.0℃〜125.0℃といった約90.0℃〜125.0℃であってよい。
【0060】
ひとつの実施形態においては、延伸押出物は、希釈剤除去の前に所望により熱処理にかけられる。熱処理では、延伸押出物は、押出物が延伸中にさらされる温度より高い(温かい)温度にさらされる。延伸押出物がそのより高い温度にさらされている間、延伸押出物の平面寸法(MDの長さおよびTDの幅)は一定に保つことができる。押出物はポリマーおよび希釈剤を含有しているため、その長さおよび幅は、「湿潤」長さおよび「湿潤」幅と呼ばれる。ひとつの実施形態においては、延伸押出物は、押出物を熱処理するのに十分な時間、例えば1.0秒〜1.0×10秒の範囲の時間、120.0℃〜125℃の範囲の温度にさらされるが、その間は、例えば、テンタークリップを用いて延伸押出物をその外周に沿って保持することにより、湿潤長さおよび湿潤幅は一定に保たれる。言い換えれば、熱処理の間、MDまたはTDへの延伸押出物の拡大または縮小(すなわち、寸法変化)はない。
【0061】
この工程、および試料(例えば、押出物、乾燥押出物、膜等)を高温にさらす乾燥延伸および熱処理等のその他の工程において、こうした暴露は、空気を熱し、次いでこの加熱空気を試料の近くに運ぶことにより行うことができる。加熱空気の温度は、通常は所望の温度と等しい設定値に制御され、次いでプレナム等を通して試料に向けて導かれる。試料を加熱面にさらす方法、オーブンでの赤外線加熱等の従来の方法を含む、試料を高温にさらすその他の方法を、加熱空気とともに、または加熱空気の代わりに用いてよい。
希釈剤の除去
【0062】
ひとつの実施形態においては、希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去(または置換)し、乾燥膜を形成する。例えば、PCT公開番号WO2008/016174に記載のように、置換(または「洗浄」)溶媒を用いて希釈剤を除去(洗浄、または置換)してよい。
【0063】
ひとつの実施形態においては、残留したいずれかの揮発性種(例えば、洗浄溶媒)の少なくとも一部を、希釈剤除去後に乾燥膜から除去する。加熱乾燥、風乾(空気を動かすこと)等の従来の方法を含む、洗浄溶媒を除去することが可能ないずれの方法を用いてよい。洗浄溶媒等の揮発性種を除去するための処理条件は、例えば、PCT公開番号WO2008/016174に開示されている条件と同じであってよい。
膜の延伸(乾燥延伸)
【0064】
乾燥膜を少なくともMDに延伸する(希釈剤の少なくとも一部が除去または置換されているため「乾燥延伸」と呼ばれる)。乾燥延伸した乾燥膜は、「延伸」膜と呼ばれる。乾燥延伸の前には、乾燥膜は、MDの最初の大きさ(第1の乾燥長さ)およびTDの最初の大きさ(第1の乾燥幅)を有する。ここで用いる用語「第1の乾燥幅」は、乾燥延伸開始前における乾燥膜の横方向への大きさを指す。用語「第1の乾燥長さ」は、乾燥延伸開始前における乾燥膜の機械方向への大きさを指す。例えば、WO2008/016174に記載の種類のテンター延伸装置を用いることができる。
【0065】
乾燥膜は、第1の乾燥長さから、約1.1〜約1.5の範囲の第1の倍率(「MD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥長さより長い第2の乾燥長さへ、MDに延伸してよい。TD乾燥延伸を用いる場合、乾燥膜は、第1の乾燥幅から、第2の倍率(「TD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥幅より広い第2の乾燥幅へ、TDに延伸してよい。所望により、TD乾燥延伸倍率はMD乾燥延伸倍率以下であり、例えば、第1の倍率は第2の倍率よりも大きい。TD乾燥延伸倍率は、約1.1〜約1.3の範囲であってよい。乾燥延伸(希釈剤を含有した押出物をすでに延伸しているため再延伸とも呼ばれる)は、MDおよびTDに逐次的または同時的であってよい。通常、TD熱収縮率はMD熱収縮率よりも電池の特性に与える影響が大きいため、TD倍率の大きさは、通常、MD倍率の大きさを超えることはない。TD乾燥延伸を用いる場合、乾燥延伸は、MDおよびTDに同時的、または逐次的であってもよい。乾燥延伸が逐次的の場合、通常はMD延伸を最初に行い、続いてTD延伸を行う。
【0066】
乾燥延伸は、乾燥膜を、例えばおよそTcd−30℃〜Tmの範囲といったTm以下の温度にさらしながら行ってよい。ひとつの実施形態においては、乾燥延伸は、例えば約80.0℃〜約132.0℃といった約70.0℃〜約135.0℃の範囲の温度にさらした膜で行う。ひとつの実施形態においては、MD延伸はTD延伸の前に行い、
(i)MD延伸は、膜を、例えば70.0℃〜約125.0℃、または約80.0℃〜約120.0℃といった、Tcd−30.0℃〜およそTm−10.0℃の範囲の第1の温度にさらしながら行い、
(ii)TD延伸は、膜を、例えば約70.0℃〜約135.0℃、約127.0℃〜約132.0℃または約129.0℃〜約131.0℃といった第1の温度より高いがTmよりは低い第2の温度にさらしながら行う。
【0067】
ひとつの実施形態においては、MD延伸倍率は、例えば1.2〜1.4といった約1.1〜約1.5の範囲であり、TD乾燥延伸倍率は、例えば1.15〜1.25といった約1.1〜約1.3の範囲であり、MD乾燥延伸はTD乾燥延伸の前に行い、MD乾燥延伸は、膜を、80.0℃〜約120.0℃の範囲の温度にさらしながら行い、TD乾燥延伸は、膜を、129.0℃〜約131.0℃の範囲の温度にさらしながら行う。
【0068】
延伸率は、延伸方向(MDまたはTD)に3%/秒以上であることが好ましく、この率は、MDおよびTD延伸について独立して選択してよい。延伸率は、好ましくは5%/秒以上、より好ましくは10%/秒以上、例えば5%/秒〜25%/秒の範囲である。特に重要ではないが、延伸率の上限は、膜の破裂を防ぐために50%/秒であることが好ましい。
膜幅の制御された縮小
【0069】
乾燥延伸に続き、乾燥膜に、第2の乾燥幅から第3の幅への幅の制御された縮小を施すが、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅から第1の乾燥幅の約1.1倍の範囲である。通常、幅の縮小は、Tcd−30.0℃以上であるがTm以下である温度に膜をさらしながら行う。例えば、幅の縮小中に、膜を、例えば約127℃〜約132℃、例えば約129℃〜約131℃といった約70.0℃〜約135℃の範囲の温度にさらしてもよい。ひとつの実施形態においては、膜幅の減少は、膜をTmよりも低い温度にさらしながら行う。ひとつの実施形態においては、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅の1.0倍〜第1の乾燥幅の約1.1倍の範囲である。
【0070】
幅の制御された縮小中に、膜を、TD延伸中に膜がさらされた温度以上の温度にさらすと、最終膜の耐熱収縮性がより高くなると考えられている。
任意の熱処理
【0071】
所望により、例えば、乾燥延伸の後、幅の制御された縮小の後、またはその両方の後、希釈剤の除去に続いて、少なくとも1度、膜を熱的に処理(熱処理)する。熱処理により、結晶が安定化して膜中に均一な薄層が形成されると考えられている。ひとつの実施形態においては、熱処理は、例えば約100℃〜約135℃の範囲、例えば約127℃〜約132℃または約129℃〜約131℃といったTcdからTmの範囲の温度に膜をさらしながら行われる。通常、熱処理は、膜中に薄層を形成するのに十分な時間、例えば1〜100秒の範囲の時間行う。ひとつの実施形態においては、熱処理は、一般的な熱処理「熱固定」条件下で実施する。用語「熱固定」は、例えば熱処理中に膜の外周をテンタークリップで保持すること等によって膜の長さおよび幅を実質的に一定に維持しながら行う熱処理を指す。
【0072】
所望により、アニーリング処理は、熱処理工程の後に行ってよい。アニーリングは、膜には荷重をかけない加熱処理であり、例えばベルトコンベアを備えた加熱室またはエアフローティング型(air-floating-type)加熱室等を用いて行うことができる。アニーリングは、熱処理の後にテンターを緩めた状態で連続的に行うこともできる。アニーリング中、膜を、例えば約60.0℃〜およそTm−5℃の範囲といったTmまたはそれ以下の範囲の温度にさらしてよい。アニーリングによって微多孔膜の透過度および強度が向上すると考えられている。
【0073】
任意である、熱ローラー処理、熱溶媒処理、架橋処理、親水性処理およびコーティング処理を、例えば、PCT公開番号WO2008/016174に記載されているように、所望により行なってよい。
[4]微多孔膜の構造、特性、および組成
【0074】
ひとつの実施形態においては、膜は単層微多孔膜である。単層膜の厚さは、通常、例えば約5.0μm〜約30.0μmといった約1.0μm〜約1.0×10μmの範囲である。微多孔膜の厚さは、縦方向に1.0cm間隔で20.0cmの幅にわたって接触式厚さ計(contact thickness meter)により測定でき、次いで平均値を出して膜厚さを得ることができる。株式会社ミツトヨ製ライトマチック等の厚さ計が好適である。この方法は、後述の通り、熱圧縮後の厚さの変化を測定するのにも好適である。例えば光学的厚さ測定方法等の、非接触式厚さ測定方法もまた好適である。
【0075】
所望により、微多孔膜は、以下の特性の1つまたは複数を有する。
(a)正規化透気度≦4.0×10秒/100cm/20μm
【0076】
ひとつの実施形態においては、膜の正規化透気度(ガーレー値、同等の膜厚20μmに正規化)は、例えば約20.0秒/100cm/20μm〜約400.0秒/100cm/20μmの範囲といった400.0秒/100cm/20μm以下である。透気度値は、フィルム厚20μmに正規化するため、単位は「秒/100cm/20μm」で表す。ひとつの実施形態においては、正規化透気度は、100.0秒/100cm/20μm〜約375秒/100cm/20μmの範囲である。ひとつの実施形態においては、膜は、膜の重量を基準として0.1重量%未満のポリプロピレンを含み、膜の正規化透気度は、100.0秒/100cm/20μm〜約275秒/100cm/20μmの範囲である。正規化透気度は、JIS P8117に従って測定し、その結果を、式A=20μm*(X)/T(式中、Xは実厚さTを有する膜の透気度の測定値であり、Aは厚さ20μmにおける正規化透気度である)を用いて、厚さ20μmにおける値に正規化する。
(b)約25.0%〜約80.0%の範囲の空孔率
【0077】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば約25.0%〜約80.0%、または30.0%〜60.0%の範囲といった25.0%以上の空孔率を有する。膜の空孔率は、膜の実重量と、同じ組成の同等の非多孔性膜(同じ長さ、幅および厚さを有するという意味において同等)の重量とを比較することにより、従来法で測定する。次に、以下の式を用いて空孔率を求める:空孔率%=100×(w2−w1)/w2。式中、「w1」は微多孔膜の実重量であり、「w2」は、同じ大きさおよび厚さを有する、同等の非多孔性膜の重量である。
(c)正規化突刺強度≧3.0×10mN/20μm
【0078】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば3.5×10mN/20μm〜1.0×10mN/20μm、例えば3,750mN/20μm〜5,500mN/20μmの範囲といった、3.0×10mN/20μm以上の正規化突刺強度を有する。一実施形態においては、膜は、Mw>1.0×10のポリプロピレンを、膜の重量を基準として約0.1重量%以上(例えば1.0重量%以上、例えば約2.5重量%以上)の量で含む。この実施形態においては、膜は、例えば3500mN/20μm以上の正規化突刺強度を有し得る。突刺強度は、厚さTを有する微多孔膜を、末端が球面(曲率半径R:0.5mm)である直径1mmの針を用いて2mm/秒の速度で突き刺した時に測定した最大荷重と定義される。この突刺強度(「S」)を、式S=20μm*(S)/T(式中、Sは突刺強度の測定値であり、Sは正規化突刺強度であり、Tは膜の平均厚さである)を用いて、膜の厚さ20μmにおける値に正規化する。
(d)引張強さ≧4.0×10kPa
【0079】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば95,000〜110,000kPaの範囲といった、9.5×10kPa以上のMD引張強さ、および、例えば9.0×10kPa〜1.1×10kPaの範囲といった9.0×10kPa以上のTD引張強さを有する。引張強さは、ASTM D−882Aに従って、MDおよびTDにおいて測定する。
(e)100%以上の引張伸度
【0080】
引張伸度は、ASTM D−882Aに従って測定する。ひとつの実施形態においては、膜のMDおよびTD引張伸度はそれぞれ、例えば125.0%〜350.0%の範囲といった100.0%以上である。別の実施形態においては、膜のMD引張伸度は、例えば125.0%〜250.0%の範囲であり、TD引張伸度は、例えば140.0%〜300.0%の範囲である。
(f)熱圧縮後の厚さ変動率≦20%
【0081】
ひとつの実施形態においては、熱圧縮後の膜の厚さ変動率は、熱圧縮前の膜の厚さの20%以下、例えば5%〜10%の範囲である。熱圧縮後の厚さ変動は、膜を90℃の温度にさらしながら、厚さ方向に2.2MPa(22kgf/cm)で5分間圧縮することにより測定する。膜の厚さ変動率は、(圧縮後の平均厚さ−圧縮前の平均厚さ)/(圧縮前の平均厚さ)×100の絶対値と定義される。
(g)熱圧縮後の透気度≦7.0×10秒/100cm
【0082】
ひとつの実施形態においては、熱圧縮後の膜の透気度は、例えば100.0秒/100cm〜675秒/100cmといった7.0×10秒/100cm以下である。熱圧縮後の透気度は、膜を90℃の温度にさらしながら、厚さ方向に2.2MPa(22kgf/cm)で5分間圧縮した後、JIS P8117に従って測定する。ひとつの実施形態においては、膜は、膜の重量を基準として0.1重量%未満のポリプロピレンを含み、熱圧縮後の膜の透気度は、1.0×10秒/100cm〜約5.0×10秒/100cm/20μmの範囲である。
(h)シャットダウン温度≦140.0℃
【0083】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば132℃〜138℃といった140.0℃以下のシャットダウン温度を有する。微多孔膜のシャットダウン温度は、以下の通り、熱機械分析装置(TMA/SS6000 セイコーインスツル株式会社製)により測定する。3mm×50mmの長方形の試料を、試料の長軸が微多孔膜の横方向と一直線になり、かつ短軸が機械方向と一直線になるように、微多孔膜から切り出す。この試料を、チャック間距離10.0mmで、熱機械分析装置にセットする。すなわち、上部チャックから下部チャックまでの距離が10.0mmである。下部チャックを固定し、上部チャックで試料に19.6mNの荷重をかける。両チャックおよび試料を、加熱可能な管に封入する。30℃で開始し、管の内部の温度を5℃/分の速度で上昇させ、19.6mNの荷重下における試料の長さの変化を0.5秒間隔で測定し、温度の上昇とともに記録する。温度は200℃まで上昇させる。「シャットダウン温度」は、膜の製造に用いるポリマーの中で融点が最も低いポリマーの融点付近で観察される変曲点の温度と定義される。
(i)電解液吸収速度≧2.5
【0084】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば3.0〜5.0の範囲といった2.5以上の電解液吸収速度を有する。動的表面張力測定装置(英弘精機株式会社製、精密電子天秤付きDCAT21)を用いて、18℃に保持した電解液(電解質:1mol/LのLiPF、溶媒:容積比3/7のエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート)に微多孔膜試料を6.0×10秒間浸漬し、[浸漬後の微多孔膜の重量(グラム)/浸漬前の微多孔膜の重量(グラム)]の式により、電解液吸収速度を求める。電解液吸収速度は、比較例1の微多孔膜の電解液吸収速度を1.0として、相対値で表す。比較的高い電解液吸収速度(例えば、≧2.5)を有する電池セパレータフィルムが望ましいが、これは、電池製造中の、セパレータが電解質を吸収するために必要な時間が減り、それにより電池を製造することができる速度が上昇するためである。
(j)105℃におけるTD熱収縮率≦2.5%
【0085】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば1.0%〜2.3%といった2.5%以下の105℃におけるTD熱収縮率を有する。別の実施形態においては、膜は、膜の重量を基準として0.1重量%未満のポリプロピレンを含み、膜は、例えば0.25%〜1.5%といった例えば105℃におけるTD熱収縮率1.9%未満を有する。105℃における直交面方向(例えば、MDまたはTD)への膜の熱収縮率は、次のとおり測定する:
(i)微多孔膜の試験片の大きさを、室温にてMDおよびTDの両方向について測定し、(ii)この試験片を、荷重をかけずに、8時間105℃の温度にさらし、次いで(iii)膜の大きさをMDおよびTDの両方向について測定する。MDまたはTDのどちらの方向の熱(すなわち「熱による」)収縮率も、測定結果(i)を測定結果(ii)で割り、得られた商を百分率で表すことによって得ることができる。
【0086】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば1%〜8%といった10%以下の105℃におけるMD熱収縮率を有する。
(k)130℃におけるTD熱収縮率≦15%
【0087】
膜は、130℃において測定した熱収縮率値によって特徴付けることも出来る。測定値は、105℃における熱収縮率の測定値とはわずかに異なるが、これは、横方向と平行である膜の端が、通常は電池内で固定され、特に機械方向と平行である端の中心付近において、横方向への拡大または縮小(収縮)を可能にする自由度が限られているという事実を反映している。したがって、TDに沿って50mm、MDに沿って50mmの、正方形の微多孔性フィルムの試料を、TDと平行である端を(テープ等により)フレームに固定して、MDに35mmでTDに50mmの開放口を残し、フレームに設置する。次に、試料を取り付けたフレームを30分間130℃の温度にさらし、次いで冷却する。通常、TD熱収縮によって、MDと平行であるフィルムの端が、内側に(フレームの開口の中心に向かって)わずかに弓なりに曲がる。TDへの収縮率(パーセントで表す)は、加熱前の試料のTDの長さを、加熱後の試料のTDの(フレーム内の)最短長さで割り、100パーセントを掛けたものと等しい。
【0088】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば約3.0%〜約15%といった15%以下の130℃におけるTD熱収縮率を有する。別の実施形態においては、膜は5.0%〜13%の範囲の130℃におけるTD熱収縮率を有する。
(l)溶融状態における最大TD収縮率≦10.0%
【0089】
膜の平面方向への溶融状態における最大収縮率は、以下の手順で測定する。
【0090】
メルトダウン温度の測定において記載したTMA手順を用いて、135℃〜145℃の温度範囲で測定した試料の長さを記録する。膜が収縮し、チャック間の距離が、膜が収縮するにつれて減少する。溶融状態における最大収縮率は、23℃で測定したチャック間の試料の長さ(L1:10mmに等しい)から通常約135℃〜約145℃の範囲で測定した最小長さ(L2に等しい)を引き、L1で割ったもの、すなわち、[L1−L2]/L1*100%と定義される。TD最大収縮率を測定する場合、使用する3mm×50mmの長方形の試料を、微多孔膜が本プロセスで製造されている時に、試料の長軸が微多孔膜の横方向と一直線になり、かつ短軸が機械方向と一直線になるように、微多孔膜から切り出す。MD最大収縮率を測定する場合、使用する3mm×50mmの長方形の試料を、微多孔膜が本プロセスで製造されている時に、試料の長軸が微多孔膜の機械方向と一直線になり、かつ短軸が横方向と一直線になるように微多孔膜から切り出す。
【0091】
ひとつの実施形態においては、膜は、Mw>1.0×10のポリプロピレンを、膜の重量を基準として約0.1重量%以上(例えば1.0重量%以上、例えば約2.5重量%以上)の量で含む。この実施形態においては、溶融状態における膜の最大MD熱収縮率は、例えば1.0%〜25%、または2.0%〜20.0%の範囲といった例えば25%以下、または20.0%以下であってよい。この実施形態においては、溶融状態における膜の最大TD熱収縮率は、例えば約1.0〜約9.0%の範囲といった例えば10.0%以下であってよい。
【0092】
別の実施形態においては、膜は、膜の重量を基準として0.1重量%未満のポリプロピレンを含む。この実施形態においては、溶融状態における膜の最大MD熱収縮率は、例えば1.0%〜30.0%、または2.0%〜25%の範囲といった例えば35%以下、または30.0%以下であってよい。この実施形態においては、溶融状態における膜の最大TD収縮率は、例えば約1.0%〜約7.0%の範囲といった例えば10.0%以下であってよい。
(m)メルトダウン温度≧145℃
【0093】
メルトダウン温度は以下の手順で測定する。3mm×50mmの長方形の試料を、微多孔膜が本プロセスで製造される時に、試料の長軸が微多孔膜の横方向と一直線になり、かつ短軸が機械方向と一直線になるように、微多孔膜から切り出す。この試料を、チャック間距離10.0mmで、熱機械分析装置(TMA/SS6000 セイコーインスツル株式会社製)にセットする。すなわち、上部チャックから下部チャックまでの距離が10.0mmである。下部チャックを固定し、上部チャックで試料に19.6mNの荷重をかける。両チャックおよび試料を、加熱可能な管に封入する。30℃で開始し、管の内部の温度を5℃/分の速度で上昇させ、19.6mNの荷重下における試料の長さの変化を0.5秒間隔で測定し、温度の上昇とともに記録する。温度は200℃まで上昇させる。試料のメルトダウン温度は、試料が破壊する温度と定義され、通常は約170℃〜約200℃の範囲の温度である。
【0094】
ひとつの実施形態においては、膜は、Mw>1.0×10のポリプロピレンを、膜の重量を基準として約0.1重量%以上(例えば1.0重量%以上、例えば約2.5重量%以上)の量で含む。この実施形態においては、膜のメルトダウン温度は、例えば170.0℃〜180.0℃の範囲といった170.0℃以上であってよい。
【0095】
別の実施形態においては、膜は、膜の重量を基準として0.1重量%未満のポリプロピレンを含有する。この実施形態においては、メルトダウン温度は、例えば147℃〜152℃といった例えば145℃〜155℃の範囲であってよい。
微多孔膜の組成
ポリマー
【0096】
微多孔膜は、通常、ポリマー組成物の調製に使用する同一のポリマーを、通常は同一の相対量で含む。洗浄溶媒および/または処理溶媒(希釈剤)もまた、微多孔膜の重量を基準として通常約1重量%未満の量で存在していてよい。処理中にポリマーの分子量が少量低下することがあるが、これは許容できる。ポリマーがポリオレフィンであり、膜を湿式法で製造する実施形態においては、処理中に分子量の低下があったとしても、膜中のポリオレフィンのMwの値と膜の製造に用いるポリマーのMwとの違いは、わずか約50%、わずか約1%、またはわずか約0.1%にしかならない。
[5]電池
【0097】
本発明の微多孔膜は、例えばリチウムイオン一次電池および二次電池等における、電池セパレータとして有用である。かかる電池はPCT公開WO2008/016174に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。膜は、通常、約3.0μm〜約200.0μm、または約5.0μm〜約50.0μmの範囲の厚さを有する。例えば、選択する電解質にもよるが、セパレータの膨潤によって、最終厚さが200μm超の値に増加する可能性がある。
【0098】
図1は、2枚の電池セパレータを備える円筒型リチウムイオン二次電池の例を示す。本発明の微多孔膜は、このタイプの電池の電池セパレータとして使用するのに好適である。この電池は、第1のセパレータ10と、第2のセパレータ11と、正極シート13と、負極シート12とを備えた、巻回型電極アセンブリ1を有する。セパレータの厚さの縮尺は一定の比率ではなく、図示するために大きく拡大してある。巻回型電極アセンブリ1は、例えば、第2のセパレータ11が正極シート13の外側に配置され、第1のセパレータ10が正極シートの内側に配置されるようにして巻回されていてもよい。この例では、図2に示すように、第2のセパレータ11は巻回型電極アセンブリ1の内面側に配置されている。
【0099】
この例では、図3に示すように、負極活物質層12bが集電体12aの両側に形成されており、正極活物質層13bが集電体13aの両側に形成されている。図2に示すように、負極シート12の端部に負極リード20が取り付けられ、正極シート13の端部に正極リード21が取り付けられている。負極リード20は電池蓋27に接続され、正極リード21は電池缶23に接続されている。
【0100】
円筒型の電池について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明のセパレータは、例えば、積層された負極と正極の間に位置するセパレータと、平行に、交互に接続された負極(1つまたは複数)12および正極(3)13の積層プレートの形態の電極を含む電池等の、角柱型電池における使用に好適である。
【0101】
電池を組み立てる際、負極シート12、正極シート13、および第1および第2のセパレータ10、11に電解液を含浸させ、その結果セパレータ10、11(微多孔膜)にイオン透過性が付与される。含浸処理は、例えば電極アセンブリ1を室温で電解液に浸漬すること等により行うことができる。円筒型リチウムイオン二次電池は、底部に絶縁板22を有する電池缶23に巻回型電極アセンブリ1(図1参照)を挿入し、電池缶23に電解液を注入し、電極アセンブリ1を絶縁板22で覆い、ガスケット28を介して電池蓋(24、25、26および27)を電池缶23にかしめることにより製造できる。電池蓋は負極端子として機能する。
【0102】
図3(図1の電池蓋、すなわち負極端子が右側にあるものとする)は、電池の温度が上昇するにつれてTDへの熱収縮率が少ない傾向のセパレータを用いることの利点を図示している。セパレータの役割の1つに、負極活物質層と正極活物質層との接触を防ぐことがある。著しいTD熱収縮があった場合、セパレータ10および11の薄い端が電池蓋から剥がれ(図3の左側に動く)、それにより負極活物質層と正極活物質層とが接触するようになり、短絡が生じる。セパレータは、通常は200μm未満とかなり薄い場合があるため、負極活物質層と正極活物質層はかなり接近する場合がある。このため、電池が高温の時のセパレータのTD収縮量をほんの少し減少させるだけで、内部短絡に対する電池の耐性を大幅に向上させることができる。
【0103】
電池は、1つまたは複数の電気部品または電子部品用の電力源として有用である。かかる部品としては、例えば変圧器等を含む、抵抗器、コンデンサ、誘導器等の受動素子、電動機および発電機等の電動デバイス、ならびにダイオード、トランジスタおよび集積回路等の電子デバイスが挙げられる。これらの部品を、直列および/または並列電気回路にて電池に接続して電池システムを形成することができる。回路は、直接的または間接的に電池に接続してもよい。例えば、電池から流れる電気は、これらの部品の1つまたは複数の中で電気が消散または蓄積される前に、(例えば二次電池または燃料電池によって)電気化学的に、かつ/または(例えば発電機を動かしている電動機によって)電気機械的に変換することができる。電池システムは、例えば、電気自動車またはハイブリッド電気自動車を動かすための電源として用いることができる。ひとつの実施形態においては、電池は、電気自動車またはハイブリッド電気自動車に動力を供給するための電動機および/または発電機に電気的に接続されている。
【0104】
本発明を、本発明の範囲を制限することを意図することなく、下記実施例を参照してより詳細に説明する。
実施例1
【0105】
(a)5.6×10のMwおよび4.05のMWDを有する第1のポリエチレン樹脂70重量%と、(b)1.1×10のMw、5のMWD、および114J/gの融解熱を有するポリプロピレン樹脂30重量%との乾燥混合により、ポリオレフィン組成物を調製する。第1のポリエチレンは、135℃のTmおよび100℃のTcdを有する。
【0106】
ポリオレフィン溶液は、次のようにして調製する。ポリエチレンとポリプロピレンとの混合物(ポリオレフィン組成物)30重量%を、内径が58mmでL/Dが42である強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン希釈剤(40℃で50cst)70重量%を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給する。重量パーセントはポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融ブレンドを、210℃および200rpmにて行う。このポリオレフィン溶液を、二軸スクリュー押出機に付設されたT−ダイから押し出す。押出物を、40℃の表面温度を有する冷却ロ−ルに通過させながら冷却し、冷却押出物、すなわちゲル状シートを形成する。
【0107】
テンター延伸機を用い、押出物(ゲル状シート)を、117℃の温度にさらしながら、MDおよびTDのそれぞれに5倍の倍率に(MDおよびTDに同時に)二軸延伸する。延伸したゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御した塩化メチレン浴に浸漬して3分間の100rpmの振動で流動パラフィンを除去し、室温の気流で乾燥させる。乾燥延伸の開始時において、膜は、TDの最初の大きさ(第1の乾燥幅)およびMDの最初の大きさ(第1の乾燥長さ)を有する。まず、乾燥膜を、膜を110℃の温度にさらして膜の幅を一定に保ちながら、バッチ延伸機で1.4倍のMD倍率(第2の乾燥長さ)に延伸する。次に、乾燥膜を、膜を130℃の温度にさらして膜の長さを第2の乾燥長さに一定に保ちながら、バッチ延伸機で1.2倍のTD倍率(第2の乾燥幅)に延伸する。次いで、膜を130℃の温度にさらして膜の長さを第2の乾燥長さに一定に保ちながら、第2の乾燥幅から、第1の乾燥幅と等しい第3の乾燥幅へ、すなわち最終的な倍率が1.0倍になるまで、この膜に対して幅の制御された縮小を施す。換言すれば、膜の幅は、膜のMDの長さを第2の乾燥長さに一定に保ちながら、乾燥延伸の開始時における膜のTDの最初の大きさまで縮小される。膜の幅を最初の幅まで縮小した後、膜を129℃の温度に10分間さらすことにより膜を熱処理する。
実施例2
【0108】
ポリオレフィン組成物を、第1のポリエチレン70重量%、1.9×10のMwおよび5.09のMWDを有する第2のポリエチレン10重量%、およびポリプロピレン20重量%から調製し、MD乾燥延伸中に膜を90℃の温度にさらし、MD乾燥延伸倍率が1.3倍であり、熱処理温度が130℃であることを除き、実施例1を繰り返す。
実施例3
【0109】
ポリオレフィン組成物を、第1のポリエチレン60重量%、第2のポリエチレン20重量%およびポリプロピレン20重量%から調製し、MD乾燥延伸中に膜を115℃の温度にさらし、MD乾燥延伸倍率が1.2倍であることを除き、実施例2を繰り返す。
実施例4
【0110】
ポリオレフィン組成物を、第1のポリエチレン60重量%、第2のポリエチレン30重量%およびポリプロピレン10重量%から調製し、MD乾燥延伸中に膜を115℃の温度にさらすことを除き、実施例2を繰り返す。
実施例5
【0111】
ポリオレフィン組成物が70重量%の第1のポリエチレン樹脂および30%の第2のポリエチレン樹脂を含み、二軸延伸中に押出物を120℃の温度にさらし、熱処理中に膜を130℃の温度にさらすことを除き、実施例1を繰り返す。
実施例6
【0112】
ポリオレフィン組成物が80%の第1のポリエチレン樹脂および20%の第2のポリエチレン樹脂を含み、25重量%のポリオレフィン組成物を二軸スクリュー押出機内に充填し、押出物を116℃の温度にさらしながら同時二軸延伸を行い、MD乾燥延伸の倍率が1.3であり、TD乾燥延伸中および幅の縮小中に膜を129℃の温度にさらし、熱処理中に膜を129℃の温度にさらすことを除き、実施例5を繰り返す。
実施例7
【0113】
28.5重量%のポリオレフィン組成物を二軸スクリュー押出機内に充填し、同時二軸延伸中に押出物を117℃の温度にさらし、MD乾燥延伸の倍率が1.2であり、膜を120℃の温度にさらしながらMD乾燥延伸を行い、TD延伸中および幅の縮小中に膜を128℃の温度にさらし、熱処理中に膜を128℃の温度にさらすことを除き、実施例6を繰り返す。
実施例8
【0114】
MD乾燥延伸中に膜を90℃の温度にさらし、TD乾燥延伸中および幅縮小中に膜を130℃の温度にさらし、膜の幅を1.1倍の倍率に縮小し、熱処理中に膜を130℃の温度にさらすことを除き、実施例6を繰り返す。
比較例1
【0115】
ポリオレフィン組成物を、第1のポリエチレン70重量%および第2のポリエチレン30重量%(ポリプロピレン無し)から調製し、同時二軸延伸中に押出物を117℃の温度にさらし、膜に乾燥延伸を施さず、熱処理温度を127℃として、実施例2を繰り返す。
比較例2
【0116】
ポリオレフィン組成物を、第1のポリエチレン60重量%、第2のポリエチレン10重量%およびポリプロピレン30重量%から調製し、同時二軸延伸中に押出物を118℃の温度にさらし、膜にMD乾燥延伸を施さず、膜を125℃の温度にさらしながら1.3の倍率までTD乾燥延伸を行い、TD乾燥延伸後に幅の縮小はせず、(v)および熱処理温度を125℃として、実施例2を繰り返す。
比較例3
【0117】
膜にMD乾燥延伸を施し、その間膜を115℃の温度にさらし、MD乾燥延伸倍率を1.2倍とし、TD乾燥延伸中に膜を130℃の温度にさらし、熱処理温度を130℃として、比較例2を繰り返す。
比較例4
【0118】
ポリプロピレンのMwが1.5×10であり、MWDが3.2であり、融解熱が78J/gであり、(ii)膜に、1.2倍の倍率のTD乾燥延伸を施し、次いで、膜を130℃の温度にさらしながら、最終的な倍率が1.0倍となるまで幅の制御された縮小を施すことを除き、比較例3を繰り返す。
比較例5
【0119】
ポリプロピレンが、7×10のMw、11のMWD、および103J/gの融解熱を有し、押出物の二軸延伸中に押出物を113.5℃の温度にさらし、MD乾燥延伸中に膜を115℃の温度にさらし、MD乾燥延伸倍率が1.3倍であり、TD乾燥延伸中、幅の制御された縮小中、および熱処理中に膜を127℃の温度にさらすことを除き、実施例3を繰り返す。
比較例6
【0120】
ポリオレフィン組成物が、95重量%の第1のポリエチレン樹脂および5重量%の第2のポリエチレン樹脂を含み、40重量%のポリオレフィン組成物を二軸スクリュー押出機内に充填し、同時二軸延伸中に押出物を119℃の温度にさらし、MD乾燥延伸は行わず、TD乾燥延伸中に膜を119℃の温度にさらし、TD乾燥延伸を1.4倍の倍率まで行い、熱処理中に膜を130℃の温度にさらすことを除き、比較例1を繰り返す。幅縮小の工程は行わない。
比較例7
【0121】
ポリオレフィン組成物が、80重量%の第1のポリエチレン樹脂および20重量%の第2のポリエチレン樹脂を含み、MD乾燥延伸は行わず、TD乾燥延伸中に膜を115℃の温度にさらし、TD乾燥延伸を1.4倍の倍率まで行い、幅縮小を126℃で1.0倍の倍率まで行い、熱処理中に膜を126℃の温度にさらすことを除き、比較例1を繰り返す。
特性
【0122】
実施例および比較例で得た微多孔膜の特性を、上記の方法で測定する。以下の表に結果を示す。
【表1】

【表2】

【0123】
表1から、本発明の微多孔膜は、2.5%以下の105℃におけるTD熱収縮率、15%以下の130℃におけるTD熱収縮率、および10.0%以下の溶融状態における最大TD熱収縮率等の重要な特性と、良好な機械的強度および耐圧縮性との、良好なバランスを示していることがわかる。本発明の微多孔膜は、また、好適な透気度、突刺強度、引張破断強さおよび引張破断伸度も有し、厚さおよび透気度の熱圧縮後の変動もほとんど無い。一方、比較例の微多孔膜生成物は、全体的に、より高い透気度ガーレー値、より高い熱圧縮後の透気度ガーレー値、およびより高い溶融状態における最大TD熱収縮率を示している。
【0124】
本発明の微多孔性ポリオレフィン膜から形成される電池セパレータにより、好適な安全性、耐熱性、貯蔵性、および生産性を有する電池が提供される。
【0125】
優先権書類を含む、本明細書で引用した全ての特許、試験手順、およびその他の文献は、参照により、かかる開示が本発明に矛盾しない範囲で完全に組み込まれ、またかかる組込みが許容される全ての権限について、完全に組み込まれる。
【0126】
本明細書中に開示した例示的形態は特定のものについて記載しているが、種々の他の変形態様が、当業者にとっては明らかであり、かつ当業者によって本開示の精神および範囲から逸脱することなく容易に行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲は本明細書中に示した実施例および説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本開示が属する分野の当業者によってその等価物として扱われる全ての特徴を含む、本明細書に備わる特許可能な新規性のある特徴の全てを包含するものとして解釈されることが意図されている。
【0127】
数値の下限および数値の上限が本明細書中に列挙されている場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が想定されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mw>1.0×10のポリオレフィンを含む単層微多孔膜であって、正規化透気度が4.0×10秒/100cm/20μm以下、および、少なくとも1つの平面方向への130℃における熱収縮率が15%以下である単層微多孔膜。
【請求項2】
平面方向がTDであり、少なくとも1つの平面方向への105℃における熱収縮率が2.5%以下である請求項1に記載の微多孔膜。
【請求項3】
少なくとも1つの平面方向への溶融状態における最大収縮率が10.0%以下である請求項1または2に記載の膜。
【請求項4】
ポリオレフィンが、(a)第1のポリエチレンを含み、かつ(b)Mw>1.0×10のポリプロピレンまたは(c)Mw>1.0×10の第2のポリエチレンの少なくとも1つをさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項5】
第1のポリエチレンが1.0×10〜9.0×10の範囲のMwおよび3.0〜15の範囲のMWDを有し、第2のポリエチレンが1.1×10〜5.0×10の範囲のMwおよび4.0〜20.0の範囲のMWDを有し、ポリプロピレンが1.05×10〜約2.0×10の範囲のMw、2.0〜6.0の範囲のMWDおよび100.0J/g以上のΔHmを有する請求項4に記載の微多孔膜。
【請求項6】
ポリオレフィンが、60.0重量%〜99.0重量%の第1のポリエチレンおよび1.0重量%〜40.0重量%の第2のポリエチレンを含む請求項5に記載の微多孔膜。
【請求項7】
膜が、(1)1.0μm〜50.0μmの範囲の厚さ、(2)25.0%〜80.0%の範囲の空孔率、(3)3.0×10mN/20μm以上の正規化突刺強度、(4)4.0×10kPa以上の引張強さ、(5)100%以上のTD引張伸度、(6)145℃以上のメルトダウン温度、(7)140.0℃以下のシャットダウン温度、(8)20%以下の熱圧縮後厚さ変動、(9)7.0×10秒/100cm以下の熱圧縮後透気度、または(10)0.25%〜1.5%の範囲の105℃におけるTD熱収縮率、の1以上を有する請求項6に記載の微多孔膜。
【請求項8】
ポリオレフィンが、(a)1.0重量%〜50.0重量%のポリプロピレン、(b)25.0重量%〜99.0重量%の第1のポリエチレンおよび(c)0.0重量%〜50.0重量%の第2のポリエチレンを含む請求項4に記載の微多孔膜。
【請求項9】
ポリプロピレンが、1.1×10〜1.5×10の範囲のMwおよび110J/g〜120J/gの範囲のΔHmを有するアイソタクチックポリプロピレンである請求項8に記載の微多孔膜。
【請求項10】
膜が、(1)1.0μm〜50.0μmの範囲の厚さ、(2)25%〜80.0%の範囲の空孔率、(3)3.5×10mN/20μm以上の正規化突刺強度、(4)4.0×10kPa以上の引張強さ、(5)100%以上の引張伸度、(6)170.0℃以上のメルトダウン温度、(7)140.0℃以下のシャットダウン温度、(8)20%以下の熱圧縮後厚さ変動、(9)7.0×10秒/100cm以下の熱圧縮後透気度、または(10)1.0%〜2.3%の範囲の105℃におけるTD熱収縮率、の1以上を有する請求項9に記載の微多孔膜。
【請求項11】
微多孔膜の製造方法であって、
(a)希釈剤およびMw>1.0×10のポリオレフィンを含む押出物をMDまたはTDの少なくとも1つの方向に延伸し、次いで、希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去して、MDに沿った第1の長さおよびTDに沿った第1の幅を有する膜を形成すること、
(b)膜を、MDに第1の長さから、約1.1〜約1.5の範囲の第1の倍率で第1の長さより長い第2の長さへ延伸し、かつ、TDに第1の幅から、約1.1〜約1.3の範囲の第2の倍率で第1の幅より広い第2の幅へ延伸すること、次いで、
(c)第2の幅を、第1の幅から第1の幅の約1.1倍までの範囲である第3の幅に縮小させる工程、
を含む微多孔膜の製造方法。
【請求項12】
工程(a)のMDおよびTDの延伸が、延伸中に押出物をTcdからTmの範囲の温度にさらして、それぞれ3倍〜9倍の範囲の倍率まで行われる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)および/または(c)に続いて膜を熱処理することをさらに含む請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)中、MD延伸がTD延伸の前に行われ、第1の倍率が第2の倍率より大きく、
(i)MD延伸は、膜をTcd−30℃〜およそTm−10℃の範囲の第1の温度にさらして行われ、
(ii)TD延伸は、膜を第1の温度より高いが、Tmよりは低い第2の温度にさらして行われ、
工程(c)の縮小が、膜を第2の温度以上の温度にさらして行われる請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ポリオレフィンが、(a)第1のポリエチレンを含み、かつ(b)Mw>1.0×10のポリプロピレンまたは(c)Mw>1.0×10の第2のポリエチレンの少なくとも1つをさらに含む請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
第2のポリエチレンが1.1×10〜約5.0×10の範囲のMwおよび4.0〜20.0の範囲のMWDを有し、第1のポリエチレンが1.0×10〜9.0×10の範囲のMwおよび3.0〜15.0の範囲のMWDを有し、ポリプロピレンが1.05×10〜約2.0×10の範囲のMw、2.0〜6.0の範囲のMWDおよび100.0J/g以上のΔHmを有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ポリオレフィンが、60.0重量%〜99.0重量%の第1のポリエチレンおよび1.0重量%〜40.0重量%の第2のポリエチレンを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ポリオレフィンが、(a)1.0重量%〜50.0重量%のポリプロピレン、(b)25.0重量%〜99.0重量%の第1のポリエチレンおよび(c)0.0重量%〜50.0重量%の第2のポリエチレンを含む請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ポリプロピレンが、1.1×10〜1.5×10の範囲のMwおよび110J/g〜120J/gの範囲のΔHmを有するアイソタクチックポリプロピレンである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項11〜19のいずれかに記載の製造方法によって得られる生成物。
【請求項21】
負極、正極、電解質、およびMw>1.0×10のポリプロピレンを含む単層微多孔膜を含む電池であって、膜が、正規化透気度4.0×10秒/100cm/20μm以下、および、少なくとも1つの平面方向への105℃における熱収縮率2.5%以下を有し、少なくとも負極と正極が該微多孔膜によって隔てられている電池。
【請求項22】
電解質がリチウムイオンを含み、電池が二次電池である、請求項21に記載の電池。
【請求項23】
電池が、電気自動車またはハイブリッド電気自動車用の電源である、請求項21または22に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−508946(P2012−508946A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520256(P2011−520256)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国際出願番号】PCT/JP2009/069016
【国際公開番号】WO2010/055812
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(510157580)東レバッテリーセパレータフィルム合同会社 (31)
【Fターム(参考)】