説明

微小試料の加工方法

【課題】微小試料を加工する際のユーザの負担を効果的に低減できる微小試料の加工方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る微小試料の加工方法は、微小試料の断面のSEM画像を取得するステップと、取得したSEM画像の一部の領域を指定するステップと、指定した領域の濃淡度を指定するステップと、集束イオンビームを照射して、微小試料を加工するステップと、加工した微小試料の断面のSEM画像を取得するステップと、取得したSEM画像の指定した領域の濃淡度を算出するステップと、算出した濃淡度が、指定した濃淡度を満たすかどうかを判定するステップとを具備し、算出した濃淡度が指定した濃淡度を満たすまで、微小試料を加工するステップから濃淡度を算出するステップまでを繰り返すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体デバイスなどの微小試料の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの微小試料をSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)やTEMで観察する場合、電子の透過方向に観察したい対象物のみ含むように、数十から百nmの厚さまで薄く加工する必要がある。しかし半導体デバイスの微細化に伴い、微小試料(TEMサンプル)の加工も薄片化が進み、解析したい構造物のみを薄片化した微小試料内に収めることが非常に困難になってきた。そこで近年、FIB(Focused Ion Beam)カラムにSEM(Scanning Electron Microscope)カラムを搭載したDualBeamFIBが開発され、FIB加工面を直接SEMで観察することができる(特許文献1参照)。なお、FIB加工途中で、SEM画像により微小試料を観察する機能を一般にスライスアンドビューもしくはカットアンドシーと呼ぶ。
DualBeamFIBでは、ユーザは、観察したい断面(所望断面)が現れるまでFIBを用いて、微小試料の加工(以下、FIB加工)とSEMによる撮像を繰り返した後、TEMにより上記断面を撮像する。しかし、試料の加工および観察の全てを手動(マニュアル)で行うため、ユーザの負担が非常に大きい。
このため、微小試料の加工方法として、所望断面をSEMで撮像したリファレンス画像(参照画像)を予め登録し(微小試料のFIB加工および撮像はユーザが行う)、この登録した参照画像と同じ画像が得られるまで、微小試料のFIB加工と撮像を自動(オート)で繰り返す方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−213936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、STEM画像やTEM画像による観察は、不具合を解析する場合などに行う。このため、現実的には、同一の参照画像を何度も使用することは考えにくい。さらに、参照画像は、ユーザが自ら微小試料を加工する必要がある。このため、従来の観察装置では、ユーザの負担を効果的に低減できなかった。
この発明は、かかる従来の問題を解消するためになされたもので、微小試料を加工する際のユーザの負担を効果的に低減できる微小試料の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る微小試料の加工方法は、微小試料の断面のSEM画像を取得するステップと、取得したSEM画像の一部の領域を指定するステップと、指定した領域の濃淡度を指定するステップと、集束イオンビームを照射して、微小試料を加工するステップと、加工した微小試料の断面のSEM画像を取得するステップと、取得したSEM画像の指定した領域の濃淡度を算出するステップと、算出した濃淡度が、指定した濃淡度を満たすかどうかを判定するステップとを具備し、算出した濃淡度が指定した濃淡度を満たすまで、微小試料を加工するステップから濃淡度を算出するステップまでを繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、微小試料を加工する際のユーザの負担を効果的に低減できる微小試料の加工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る観察装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る観察装置の詳細観察系の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る制御装置の機能構成を示す図である。
【図5】グレイスケールの測定領域の一例を示すSEM画像である。
【図6】終了条件とオーバー量の設定画面の一例を示す図である。
【図7】FIB加工量とグレイスケール値との関係を示す図である。
【図8A】終了条件とオーバー量の関係を示す図である。
【図8B】終了条件とオーバー量の関係を示す図である。
【図9A】FIB加工前のSEM画像である。
【図9B】FIB加工後のSEM画像である。
【図10】第1の実施形態に係る観察装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】グレイスケールの測定ラインの一例を示す図である。
【図12】終了条件とオーバー量の設定画面の一例を示す図である。
【図13A】コンタクトの断面図である。
【図13B】コンタクトの断面図である。
【図14A】コンタクト断面図のグレイスケール値を示す図である。
【図14B】コンタクト断面図のグレイスケール値を示す図である。
【図15A】ゲートの断面図である。
【図15B】ゲートの断面図である。
【図16A】ゲート断面図のグレイスケール値を示す図である。
【図16B】ゲート断面図のグレイスケール値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る観察装置1の構成を示す図である。図1には、観察装置1の具体例としてDualBeamFIB装置を示した。観察装置11は、大きく分けて、処理装置10および制御装置20から構成される。処理装置10は、ウェハWから観察対象である微小試料を切り出す。そして、切り出した微小試料をFIBにより50nm程度の厚さに加工(以下、FIB加工)し、STEMもしくはTEM(以下、単にTEM)により微小試料の断面を撮像する。制御装置20は、処理装置10全体を制御する。
【0010】
処理装置10は、搬送ロボット101、ハッチ102、載置台103、搬送ロボット104、試料台105、第1のカラム106、第2のカラム107、真空試料室108、真空ポンプ109などを具備する。搬送ロボット101は、カセット台30上に置かれたカセット40内に収容されている半導体基板(以下、ウェハ)Wを真空試料室108内の載置台103へと搬送する。
【0011】
ハッチ102は、搬送ロボット101が載置台103へウェハWを搬送する際にオープン(Open)する。ウェハWが載置台103へ搬送され、搬送ロボット101が安全位置へ退避すると、ハッチ102は、クローズ(Close)する。搬送ロボット104は、載置台103上のウェハWを試料台105上へ搬送する。試料台105は、図示しないステップモータ等により高精度で前後左右へ移動する。試料台105は、ウェハW上の指定箇所が第1のカラム106の真下に来るよう移動する。
【0012】
第1のカラム106および第2のカラム107は、それぞれの中心軸がウェハW表面付近で一点に交わるように真空試料室108へ取り付けられる。第1のカラム106は、内部にイオン源、このイオン源から放出されるイオンビームを集束するレンズおよびイオンビーム走査偏向器等を具備する。第1のカラム106は、試料台105に載置されたウェハW上へイオンビームを照射する。第1のカラム106から照射されるイオンビームは、ウェハWからの微小試料の切り出しや、切り出した微小試料の加工に用いられる。
【0013】
第2のカラム107は、内部に電子銃、この電子銃から放出される電子線を集束する電子レンズおよび電子ビーム走査偏向器等を具備する。第2のカラム107は、切り出した微小試料へ電子線を照射する。第2のカラム107から照射される電子線は、観察対象である微小試料のSEM画像もしくはTEM画像を得るために用いられる。
【0014】
真空ポンプ109は、真空試料室108内を真空引きし、真空試料室108内を適切な圧力に維持する。尚、第1のカラム106、第2のカラム107にも排気系(図示せず)を個別に具備し、第1のカラム106内、および第2のカラム107内を適切な圧力に維持する。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る観察装置の観察系の詳細構成を示す図である。
図2に示すように、試料台105の周りには、二次電子検出器110、X線検出器111、プローブ112、ガス供給装置113が配置される。また、真空試料室108の外部には、プローブ112を制御するプローブ制御装置114が配置される。
【0016】
二次電子検出器110は、ウェハWから放出される二次電子を検出する。二次電子検出器110で検出された二次電子を利用して、微小試料のSEM画像が生成される。X線検出器111は、第2のカラム107から電子線を微小試料へ照射した際に得られるX線(特性X線)を検出する。X線検出器111で検出されたX線を利用して、微小試料のTEM画像が生成される。ガス供給装置113は、ウェハWから切り出した微小試料を固定するための堆積性ガス(例えば、W(タングステン))を供給する。プローブ制御装置114は、プローブ112を制御する。
【0017】
図3は、制御装置20の構成を示す図である。制御装置20は、本体部21、モニタ22、入力部23を具備する。本体部21は、PC(Personal Computer)やCPCI(Compact PCI:登録商標)などで構成される。
【0018】
本体部21は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、HDD(Hard Disk Drive)204、ユーザI/F205、I/F206を具備する。CPU201は、処理装置10全体を制御する。ROM202は、CPU201の動作コードを格納する。RAM203は、CPU201の動作時に使用される作業領域である。HDD204は、CPU201の動作プログラム等を記憶する。ユーザI/F205は、入力部23からの入力情報を受け付けるインターフェースである。I/F206は、処理装置10との間でデータを送受信するインターフェースである。モニタ22は、処理装置10の状態や微小試料のSEM画像およびTEM画像などを表示する。入力部23は、キーボードやマウス等の入力用デバイスである。ユーザは、入力部23を操作して所望の処理を実現する。
【0019】
図4は、第1の実施形態に係る制御装置20の機能構成を示す図である。
制御装置20は、記憶部301、算出部302、判定部303、制御部304、受信部305、送信部306を具備する。なお、CPU201が、ROM202の動作コードやHDD204に記憶されているプログラムをRAM203にロードして実行することにより、図4に示した機能が実現される。
【0020】
記憶部301には、ユーザにより入力部23から入力された設定が記憶される。以下は、記憶部301に記憶される設定項目である。
1.測定領域。
2.終了条件。
3.オーバー(Over)量。
【0021】
図5は、測定領域Pの設定の一例を示す図である。図5では、半導体デバイスのSTI(Shallow Trench Isolation)上に測定領域Pを設定している。測定領域Pは、グレイスケール値(画素の濃淡度)を測定する領域である。ユーザは、入力部23を操作して、モニタ22に映し出された微小試料のSEM画像の任意の領域を指定して測定領域Pを設定する。
【0022】
この測定領域Pは、画素が20から30程度含まれるように設定する。測定領域Pに含まれる画素は、ユーザが選択してもよく、ユーザがある一点(一画素)を選択すると、該選択した画素の周囲の画素を含む領域(縦横それぞれ5画素程度)が測定領域Pとして設定されるように構成してもよい。
【0023】
グレイスケール値は、画像の濃淡を数値化したものであり、白色のグレイスケール値を256、黒色のグレイスケール値を1と定義する。つまり、測定領域の各画素の色が、白色に近いほどグレイスケール値は高い値となる。なお、後述する終了条件を満たすかどうかの判定は、測定領域Pに含まれる各画素のグレイスケール値の平均値を用いる。複数の画素のグレイスケール値の平均値を用いることで終了条件の判定精度が安定する。
【0024】
図6は、終了条件とオーバー量の設定画面の一例を示す図である。ユーザは、モニタ22に映し出された図6の画像を参照しながら、入力部23を操作して、終了条件およびオーバー量を設定する。
【0025】
終了条件は、イオンビームにより微小試料をFIB加工する際の終了条件である。この終了条件は、「大小関係」および「グレイスケール値」で指定する。例えば、終了条件を「≦」「30」と指定すると、測定領域Pのグレイスケール値の平均値が30以下となったところで、イオンビームによる微小試料のFIB加工を停止する。
【0026】
オーバー量は、測定領域Pのグレイスケール値が終了条件を満たしたところから、さらにFIB加工を行う加工量である。この終了条件は、「μm」または「sec」で指定する。例えば、終了条件を「10sec」と指定すると、測定領域Pのグレイスケール値が終了条件を満たしたところから、さらに10秒間、微小試料がFIB加工される。
【0027】
算出部302は、所定の時間間隔もしくは所定の加工量間隔で、測定領域Pに対応する画素を取得するよう制御部204へ指示する。制御部304は、指示に基づき、測定領域Pに対応する画素を取得する。算出部302は、取得した測定領域Pに対応する画素のグレイスケール値の平均値を算出する。
【0028】
判定部303は、算出部302で算出したグレイスケール値の平均値が記憶部301に記憶されている終了条件を満たすかどうかを判定する。
【0029】
制御部304は、処理装置10全体を制御する。制御部304は、入力部23から入力される指示、算出部302からの指示、および判定部303での判定結果に基づいて、処理装置10全体を制御する。
【0030】
受信部305は、処理装置10から送信されるデータを受信する。送信部306は、処理装置10へ制御データを送信する。
【0031】
図7は、FIB加工量とグレイスケール値との関係を示す図である。図7の横軸は、微小試料のFIB加工量、縦軸は、測定領域Pのグレイスケール値の平均値である。なお、図7中の符号AないしCについては、図8A、図8Bにおいて述べる。
【0032】
半導体デバイスのメモリ部分は、トランジスタが一定の周期で配列している。このため、そのメモリ部分をイオンビームでFIB加工すると、加工面には一定の周期で同じ構造物が出現する。つまり、メモリ部分をFIB加工する際、所定の間隔で測定領域PのSEM画像を取得し、この取得した測定領域PのSEM画像のグレイスケール値をプロットする。すると、図7に示す加工量(スライス量)とグレイスケール値との関係が得られる。
【0033】
図8A、図8Bは、終了条件とオーバー量の関係を示す図である。図8A、図8Bの横軸は、微小試料のFIB加工量、縦軸は、測定領域Pのグレイスケール値である。図8A、図8B中の一点鎖線は、終了条件で設定されたグレイスケール値を示している。
【0034】
図8Aは、グレイスケール値が図7のA点からB点へと変化する場合の関係を示している。図8Aでは、終了条件の「大小関係」を「≧」、「グレイスケール値」を「80」と設定したものとする。微小試料のFIB加工の開始当初は、グレイスケール値が低く、終了条件を満たさない。このため、微小試料のFIB加工は、継続される。微小試料のFIB加工が進むに従い、測定領域Pのグレイスケール値が変化し、測定領域Pのグレイスケール値の平均値が終了条件を満たす(グレイスケール値が80以上となる)と、オーバー量で設定された時間もしくは距離だけ微小試料をFIB加工して処理を終了する。
【0035】
図8Bは、グレイスケール値が図7のB点からC点へと変化する場合の関係を示している。図8Bでは、終了条件の「大小関係」を「≦」、「グレイスケール値」を「30」と設定したものとする。微小試料のFIB加工の開始当初は、グレイスケール値が高く、終了条件を満たさない。このため、微小試料のFIB加工は、継続される。微小試料のFIB加工が進むに従い、測定領域Pのグレイスケール値が変化し、測定領域Pのグレイスケール値の平均値が終了条件を満たす(グレイスケール値が30以下となる)と、オーバー量で設定された時間もしくは距離だけ微小試料をFIB加工して処理を終了する。
【0036】
図9A、図9Bは、実際に図8Bで説明した条件で、微小試料をFIB加工した際のSEM画像である。図9Aは、FIB加工開始前のSEM画像である。図9Bは、FIB加工開始後のSEM画像である。図9A、図9Bに示すように、測定領域Pのグレイスケール値がFIB加工前後で変化していることがわかる。
【0037】
次に、第1の実施形態に係る観察装置1の動作について説明する。図10は、第1の実施形態に係る観察装置1の動作を説明するフローチャートである。
【0038】
搬送ロボット101および搬送ロボット104は、カセット40に収容されたウェハWが試料台105上へ搬送する。ウェハWの搬送後、ハッチ102がクローズし、真空ポンプ109が真空試料室108を真空引きする(ステップS101)。ここまでの作業は、ユーザが処理装置10の入力部23を用いて手動で操作してもよく、自動でウェハWを搬送してもよい。自動で行う場合は、制御部304から動作に必要な指示信号が処理装置10へ送信される。
【0039】
ユーザは、入力部23を操作して、第1のカラム106からイオンビームをウェハWへ照射し、ウェハWから観察対象を切り出す。ユーザは、プローブ112を使用して微小試料をウェハWから取り外し、図示しない試料台へ移動させる。次に、ガス供給装置113から堆積性ガスを真空試料室108内へ供給し、第1のカラム106からイオンビームを照射して、微小試料を試料台へ接合する(ステップS102)。
【0040】
ユーザは、モニタ22に表示される微小試料のSEM画像(図5参照)および設定画面(図6参照)を参照して、測定領域P、終了条件およびオーバー量を設定する(ステップS103)。設定後、ユーザは、入力部23を操作して、微小試料のFIB加工をスタートさせる。
【0041】
制御部304は、第1のカラム106からイオンビームを一定時間照射して微小試料をFIB加工する(ステップS104)。制御部304は、第2のカラム107から電子線を照射して、微小試料の測定領域PのSEM画像を取得する。算出部302は、取得した測定領域PのSEM画像からグレイスケール値の平均値を算出する(ステップS105)。判定部303は、算出したグレイスケール値の平均値が、終了条件を満たしているかどうか判定する(ステップS106)。
【0042】
制御部304は、判定結果が終了条件を満たさない場合(ステップS106のNo)、ステップS104の動作へ戻る。制御部304は、判定結果が終了条件を満たしている場合(ステップS106のYes)、設定されたオーバー量分だけ微小試料をFIB加工する(ステップS107)。
【0043】
なお、ユーザは、所望断面が得られるように微小試料を手動で追加工する。そして、所望断面が得られたところで、TEM画像を取得する。
【0044】
以上のように、第1の実施形態に係る観察装置1は、微小試料のFIB加工を行う際に、設定された測定領域Pのグレイスケール値を所定の間隔で測定する。そして、測定領域Pのグレイスケール値の平均値が終了条件を満たすと、オーバー量で設定された時間または距離だけ微小試料をFIB加工して動作を終了する。
【0045】
このため、作業時間が最も長い微小試料のFIB加工を自動で行うことができる。また、所望断面のリファレンス画像(参照画像)を予め作成しておく必要がない。その結果、ユーザの作業負担を効果的に軽減できる。さらに、グレイスケール値を算出するために、測定領域Pの部分だけを撮像すればよい。つまり、参照画像と比較するために、微小試料の断面全体を撮像する必要がない。このため、作業時間を効果的に短縮できる。また、測定領域Pに含まれる複数の画素のグレイスケール値の平均値を用いて終了条件を判定しているので、誤検知を効果的に防止できる。
【0046】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、グレイスケール値を点で測定する実施形態について説明した。この第2の実施形態では、グレイスケール値を線(以下、ライン)で測定する実施形態について説明する。グレイスケール値の測定をラインとすることで、半導体デバイスの構造変化を2次元的にとらえることができ、より効果的にFIB加工の終点を検出できる。なお、第2の実施形態に係る観察装置2の構成は、第1の実施形態に係る観察装置1と同様であるため重複した説明を省略する。
【0047】
この第2の実施形態に係る観察装置2では、以下の設定項目が、ユーザにより設定されて記憶部301に記憶される。
1.測定ラインL。
2.終了条件。
3.オーバー(Over)量。
以下、各設定項目について説明するが、オーバー量については、第1の実施形態と同じであるため重複した説明を省略する。
【0048】
図11は、測定ラインLの設定の一例を示す図である。測定ラインLは、後述するラインプロファイルを測定するためのライン(線)である。ユーザは、モニタ22に映し出された微小試料のSEM画像を参照して測定ラインLを設定する。測定ラインLは、SEM画像上の1点を指定すると、該1点を含み横方向に延びる直線を測定ラインLとしてもよいし、SEM画像上の2点を指定して、該2点を含む直線を測定ラインLとしてもよい。
【0049】
なお、ユーザにより設定された測定ラインLを中心として上下にそれぞれ15画素分(計30画素)のグレイスケール値の平均値をラインプロファイルとする。ラインプロファイルを終了条件の判定に使用することで、第1の実施形態と同様に、終了条件の判定精度が安定する。また、15画素は一例であり、その数は15画素に限られない。例えば、測定ラインLを中心として上下にそれぞれ20画素分(計40画素)のグレイスケール値の平均値をラインプロファイルとして用いてもよい。
【0050】
図12は、第2の実施形態に係る観察装置2の終了条件とオーバー量の設定画面の一例を示す図である。ユーザは、モニタ22に映し出された図12の画像を参照しながら、入力部23を操作して、各項目を設定する。
【0051】
初期値は、「グレイスケール値」と「取込画素数」から構成される。グレイスケール値は、微小試料のFIB加工の終了条件設定の際に使用する値であり、ユーザが指定する。取込画素数は、指定したグレイスケール値と同じ値を有するラインプロファイル数である。この取込画素数は、算出部302が算出する。
【0052】
終了条件は、イオンビームにより微小試料をFIB加工する際の終了条件である。この終了条件は、「係数(倍)」または「画素数」で指定する。例えば、終了条件の係数を「1.5」と指定すると、グレイスケール値が60であるラインプロファイルの画素数が、取込画素数の1.5倍となったところで、イオンビームによる微小試料のFIB加工を停止する。また、終了条件の画素数を「900」と指定すると、グレイスケール値が60であるラインプロファイルの画素数が900なったところで、イオンビームによる微小試料のFIB加工を停止する。
【0053】
図13Aから図16Bは、グレイスケール値をラインで測定する場合のパターンを説明するための図である。図13A,図13Bは、微小試料のFIB加工が進むに従い、断面構造(形状)が横方向に変化するパターンを示す。図13A,13B中の一点鎖線は、グレイスケール値の測定ラインLである。図14A,図14Bは、図13A,13Bの測定ラインLのラインプロファイルの変化をそれぞれ示す。図14A,図14Bの縦軸は、グレイスケール値、横軸は、測定ラインLの左端からの画素数である。
【0054】
形状変化のパターンとして、微小試料のFIB加工が進むに従い、図13Aから図13Bへと変化するパターンと、図13Bから図13Aへと変化するパターンとが考えられる。このように断面構造(形状)が横方向に変化する構造として、半導体デバイスのコンタクト等がある。
【0055】
図15A,図15Bは、微小試料のFIB加工が進むに従い、断面構造(形状)が縦方向に変化するパターンを示す。図15A,15B中の一点鎖線は、グレイスケール値の測定ラインLである。図16A,図16Bは、図15A,15Bの測定ラインLのラインプロファイルの変化をそれぞれ示す。図16A,図16Bの縦軸は、グレイスケール値、横軸は、測定ラインLの左端からの画素数である。
【0056】
形状変化のパターンとして、微小試料のFIB加工が進むに従い、図15Aから図15Bへと変化するパターンと、図15Bから図15Aへと変化するパターンとが考えられる。このように断面構造(形状)が縦方向に変化する構造として、半導体デバイスのゲート等がある。なお、第2の実施形態に係る観察装置2の動作については、図10で説明した第1の実施形態に係る観察装置1の動作と同様であるため重複した説明を省略する。
【0057】
以上のように、第2の実施形態に係る観察装置2は、微小試料のFIB加工を行う際に、設定された測定ラインLのラインプロファイルを所定の間隔で測定する。そして、測定結果が終了条件を満たすと、オーバー量で設定された時間または距離だけ微小試料をFIB加工して動作を終了する。
【0058】
このため、半導体デバイスの構造変化を2次元的にとらえることができ、より効果的にFIB加工の終点を検出できる。その他の効果は、第1の実施形態と同じである。
【符号の説明】
【0059】
1…観察装置、10…処理装置、20…制御装置、21…本体部、22…モニタ、23…入力部、30…カセット台、40…カセット、101…搬送ロボット、102…ハッチ、103…載置台、104…搬送ロボット、105…試料台、106…第1のカラム、107…第2のカラム、108…真空試料室、109…真空ポンプ、110…二次電子検出器、111…X線検出器、112…プローブ、113…ガス供給装置、114…プローブ制御装置、201…CPU、202…ROM、203…RAM、204…HDD、205…ユーザI/F、206…I/F、301…記憶部、302…算出部、303…判定部、304…制御部、305…受信部、306…送信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小試料の断面へ集束イオンビームを照射して加工する微小試料の加工方法であって、
微小試料の断面のSEM画像を取得するステップと、
前記取得したSEM画像の一部の領域を指定するステップと、
前記指定した領域の濃淡度を指定するステップと、
前記集束イオンビームを照射して、前記微小試料を加工するステップと、
前記加工した微小試料の断面のSEM画像を取得するステップと、
前記取得したSEM画像の前記指定した領域の濃淡度を算出するステップと、
前記算出した濃淡度が、前記指定した濃淡度を満たすかどうかを判定するステップと
を具備し、
前記算出した濃淡度が前記指定した濃淡度を満たすまで、前記微小試料を加工するステップから前記濃淡度を算出するステップまでを繰り返すことを特徴とする微小試料の加工方法。
【請求項2】
前記領域を指定するステップでは、前記SEM画像を構成する複数の画素のうちの一部を指定することを特徴とする請求項1に記載の微小試料の加工方法。
【請求項3】
前記領域を指定するステップでは、前記SEM画像を構成する複数の画素から直線状に複数の画素を指定することを特徴とする請求項1に記載の微小試料の加工方法。
【請求項4】
前記微小試料の加工量を指定するステップと、
前記算出した濃淡度が前記指定した濃淡度を満たした後、前記指定された加工量だけ前記微小試料をさらに加工するステップと、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の微小試料の加工方法。
【請求項5】
前記加工量は、時間または距離で指定することを特徴とする請求項4に記載の微小試料の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図5】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2011−80771(P2011−80771A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230822(P2009−230822)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】