説明

微生物を処理するための被覆金属ピリチオン粒子

一価及び多価ピリチオン塩、及びそれらの組合せからなる群から選択されたピリチオン塩の、親油性剤で部分的又は完全に被覆された被覆粒子を含む組成物。この組成物は、シャンプーで増大した抗真菌及びふけ防止効能を特徴とする。局所的キャリヤー、及び一価及び多価ピリチオン塩、及びそれらの組合せからなる群から選択されたピリチオン塩の、親油性剤で部分的又は完全に被覆された被覆粒子を含む人のケアー組成物、好ましくはシャンプーも開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆されたピリチオン塩粒子で、その被覆によりピリチオン部分の効能が改良され、それによりその組成物により与えられる抗菌効能の持続時間を増大した被覆ピリチオン塩粒子に関する。前記組成物は、人のケアー組成物、特にシャンプー中に配合すると、抗菌、特に抗真菌効能を与えるのに有用である。
【背景技術】
【0002】
シャンプーでは、被覆の親油性が、頭皮、特に、ふけを生ずることが知られている親油性酵母のような親油性微生物を含む頭皮の部位への標的送達を達成し易くする。本発明の被覆粒子を含むシャンプーは、被覆されていないピリチオン塩粒子を含むシャンプーと比較して、増大した抗真菌効能を示す。
【0003】
亜鉛及び銅ピリチオンのような金属ピリチオンは、効果的な抗菌剤としてよく知られている。亜鉛ピリチオンは、シャンプーのふけ防止及び抗真菌成分として活性であることがよく知られており、広く用いられている。
【0004】
PTC特許出願WO 03/007900には、ふけを処理するため皮膚及び頭皮中の脂質のレベルを増大するように、亜鉛ピリチオンと共にセラミドのような親油性剤を使用することが記載されている。しかし、シャンプー配合物中に脂質とピリチオン塩との混合物を使用することは、頭皮の或る場所に脂質を優先的到達させ、別の場所にピリチオン塩が送達されたりすることがある欠点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ピリチオン粒子の上に脂質被覆を用いて、単一のパッケージとして脂質及びピリチオンを標的送達し易くすることにより、前記欠点に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様として、本発明は、部分的又は完全に親油性剤で被覆された、一価及び多価ピリチオン塩、及びそれらの組合せからなる群から選択されたピリチオン塩の被覆された粒子を含む組成物に関する。この組成物は、シャンプーに増大した抗真菌及びふけ防止効能を与える。
【0007】
別の態様として、本発明は、局所的なキャリヤー、及び部分的又は完全に親油性剤で被覆された、一価及び多価ピリチオン塩、及びそれらの組合せからなる群から選択されたピリチオン塩の被覆された粒子を含む人のケアー組成物、好ましくはシャンプーに関する。
【0008】
更に別の態様として、本発明は、固体亜鉛ピリチオン粒子で、その外側表面上に固体パーム油被覆を有する固体亜鉛ピリチオン粒子の水性分散物を製造する方法において、
(a) 固体亜鉛ピリチオン粒子の水性分散物を、約50℃〜約80℃の上昇させた温度へ加熱し、高温水性分散物を与える工程、
(b) 固体パーム油を、約50℃〜約80℃の上昇させた温度へ加熱し、液体パーム油を与え、そして
(c) 前記液体パーム油と、前記高温水性分散物とを混合して混合物を与え、前記混合物を冷却して前記固体パーム油の被覆を有する固体亜鉛ピリチオン粒子の水性分散物を与える工程、
を含む製造方法に関する。得られた分散物は、その分散物の全重量に基づき、約40%〜約50%の量で、適切に被覆された亜鉛ピリチオン粒子を含む。
【0009】
更に別の態様として、本発明は、分散物の全重量に基づき、水、及び約25重量%〜約50重量%の固体ピリチオン塩粒子を含む水性抗菌分散濃厚物に関する。固体ピリチオン塩粒子は、その外側表面に親油性被覆を有する被覆された粒子である。それら被覆粒子は、比較コルネオファンジメトリー(corneofungimetry)生物検定試験で、前記ピリチオン塩の被覆されていない粒子の分散物の前記生物検定試験での抗菌効能と比較して、少なくとも25%の抗菌効能改良を示す。別の態様は、人のケアー組成物で、その人のケアー組成物の全重量に基づき、局所的キャリヤー及び約0.5%〜約5%の前記濃厚物を含む人のケアー組成物に関する。人のケアー組成物は、比較コルネオファンジメトリー生物検定試験で、前記ピリチオン塩の被覆されていない粒子の分散物を同じ量で含む人のケアー組成物の前記生物検定試験での抗菌効能と比較して、少なくとも15%の抗菌効能改良を示す。
【0010】
これら及び他の態様は、本発明についての次の詳細な記述を読むことにより明らかになるであろう。
【0011】
本発明の詳細な記述
今回、親油性脂肪油被覆を含む被覆されたピリチオン粒子が、頭皮の希望の親油性部位にピリチオンを送達するのに効果的な伝達手段を与えることが思いがけなく発見された。これらの部位では、ふけを生ずることが知られている親油性Malassezia sp イーストのような親油性微生物が見出される傾向がある。これらの部位を標的とする送達は、これらの被覆ピリチオン粒子を含有するシャンプーの抗真菌及びふけ防止効能を、被覆されていないピリチオン粒子を含むシャンプーと比較して増大する。
【0012】
本発明で用いられるピリチオン粒子は、亜鉛、銅、銀、ジルコニウムの塩、及びそれらの組合せからなる群から選択されるのが好ましい。一層好ましいピリチオン塩は、亜鉛及び銅の塩から選択され、最も好ましくは亜鉛塩である。亜鉛塩は、粒状分散物、スラリー、又は粉末の形で適切に用いられる。亜鉛ピリチオンは、例えば、板状子、棒状、針状、ブロック状、球状、及び無定形、規則的又は不規則な形をした粒子のような結晶形態を含むどのような粒子形態で用いてもよい。亜鉛ピリチオン粒子の平均粒子直径(最大寸法)が、例えばホリバ(Horiba)LA−910レーザー散乱粒径分布分析器を用いて決定して、典型的には、約0.1〜約50μmであり、好ましくは約0.1μm〜約10μm、一層好ましくは約0.1μm〜約5μmである。
【0013】
本発明の被覆粒子上の親油性被覆は、室温で固体又は液体である合成又は天然の脂肪油を含む。従って、ここで用いられる用語「親油性剤」とは、油及びワックスの両方を包含するものとする。脂肪油は、約150〜約1500の範囲内の数平均分子量、及び8〜22の範囲内の炭素数を有する脂肪酸又は脂肪酸エステル、又はそれらの混合物を含む。脂肪酸エステルは、モノ−、ジ−、又はトリ−グリセリド、又はそれらの混合物を含むことができる。好ましい被覆材料は、パーム油である。
【0014】
親油性被覆成分が占める割合は、被覆ピリチオン粒子の全重量に基づき、好ましくは0.01重量%より大きく、好ましくは1重量%より大きく、一層好ましくは3重量%より大きい。典型的には、被覆粒子中の親油性剤含有量は、約3〜15%の範囲にある。1重量%の亜鉛ピリチオンを含有するシャンプーでは、親油性被覆薬剤の量は、シャンプーの重量に基づき、一般に約0.001重量%〜約0.15重量%、好ましくは約0.01重量%〜約0.15重量%、一層好ましくは約0.03重量%〜約0.15重量%である。
【0015】
適当な脂肪酸及び脂肪酸エステルには、炭化水素油、ワックス、ジ−、及びトリ−グリセリド油が含まれ、例えば、ワセリン、鉱油ワックス、水素化及び非水素化ポリアルケン、水素化油、パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレン及びポリブテンパーム油、ひまし油、大豆油、誘導体化大豆油、例えば、ひまわり油、綿実油、コーン油、くるみ油、落花生油、胡麻油、植物油、植物油誘導体、ココナッツ油、ココナッツ油誘導体が含まれる。
【0016】
脂肪酸/脂肪酸エステルは、天然産又はそれらの誘導体にすることができる。被覆の炭素鎖の長さは、一般にC8〜C22であり、それらの混合物が含まれる。脂肪酸は、飽和及び不飽和、線状及び分岐鎖脂肪酸にすることができる。それらは、脂肪酸及びそれらからの誘導体の化学的及び物理的性質に基づき選択される。
【0017】
脂肪酸及びそれらの誘導体の適当な天然及び合成源には、動物及び植物起源のもの、例えば、ラノリン油、魚油、動物油、ココナッツ油、パーム油、バター脂肪、大豆油、ひまわり油、綿実油、コーン油、及びそれらの混合物が含まれる。好ましい脂肪酸源は、パーム油、部分的及び完全に水素化した脂肪油、脂肪酸、例えば、水素化大豆油、パーム油、パームカーネル油、魚油、ポリオール脂肪酸エステルである。
【0018】
一つの別の仕方として、親油性被覆剤は室温で固体であり、上昇させた温度で液体になり、冷却してフィルムを形成する。固体被覆材料は、約40〜100℃で液体になり、次に冷却する間にフィルムを形成することができるのが望ましい。別法として、親油性被覆剤は、適当に溶媒に溶解し、それを乾燥させるとフィルムを形成する。例として被覆剤を有機溶媒、例えば、メタノール及びエタノールのようなアルキルアルコール、アセトン、エーテル、ハロゲン化炭化水素、及び芳香族溶媒の中に適当に溶解し、次にその溶媒を蒸発させる間にフィルムを形成する。
【0019】
本発明で水中での粒子被覆には、被覆材料が液体状態になっているか、又は溶液状態になっている条件下で、被覆材料を存在させたスラリー又は懸濁状態の金属ピリチオン又はピリチオン粒子の多価塩の被覆が含まれる。被覆した粒子の大きさ、形、及び厚さは、スラリー又は懸濁物中の元の粒子の大きさ及び形、温度、及び用いた被覆材料の量に依存する。この方法は、液体状態の(望ましくは約90℃より低い融点温度で)被覆材料を、その被覆材料が液体状態になっている温度でスラリー又は懸濁物中へ適当な速度で撹拌しながら添加し、次に金属ピリチオンスラリーと被覆成分との混合物、又は被覆材料の混合物を冷却するか、又は用いた被覆材料の最も高い融点温度に加熱し、次に冷却するものとして簡単に記述することができる。
【0020】
有機溶媒中での粒子被覆は、金属ピリチオン又はピリチオン粉末の多価塩を、室温以上の温度で有機溶媒に入れた被覆材料(一種又は多種)の溶液へ添加し、次に撹拌しながら溶媒を蒸発させることを含んでいる。被覆された粒子の大きさ、形、及び厚さは、元の粒子の大きさ、金属ピリチオンの形、及び被覆材料の量及び性質に依存する。
【0021】
重合体被覆材料の融点以上の温度でピリチオンを被覆するのに粉末被覆も適切に用いることができる。液体被覆材料は、冷却する間に、粒子上にフィルム又は被覆層を形成する。被覆した量の大きさ、形、及び被覆の厚さは、金属ピリチオン粒子の元の大きさ及び形、及び用いた被覆材料の量及び性質に依存する。この方法は、低い(好ましくは約90℃より低い)融点を有する材料で粒子を被覆するのに特に適している。
【0022】
本発明の被覆ピリチオン粒子は、局所的キャリヤーを含む人のケアー組成物に用いるのに適している。局所的キャリヤーは、形成される組成物の種類により、慣用的人のケアーキャリヤーの広い範囲から選択するのが適切である。相容性キャリヤーを適切に選択することにより、ヘヤーリンスのような日常の皮膚又は毛髪用製品、ヘヤーローション、ヘヤースプレー、ヘヤートニック、コンディショニング・トリートメント、及びドレッシングのような日常の毛髪手入れ用品等の形態で、本発明の抗菌組成物を調製できるようにすることが考えられている。
【0023】
液体ヘヤー組成物中の局所的キャリヤーは、水、一般的有機溶媒、又はそれらの混合物にすることができる。適当な一般的有機溶媒は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリンのようなC2−C3アルキルアルコールである。脂肪アルコール及びエステルのような他の溶媒も用いることができる。
【0024】
本発明の抗菌組成物は、組成物の重量で、約40%〜約92%、好ましくは約50%〜約85%、一層好ましくは約60%〜約80%の水を含む水性系でもよい。
【0025】
本発明の組成物がふけ防止シャンプーである場合、組成物のpHは、一般に約2〜約10、好ましくは約3〜約9、一層好ましくは約4〜約8、最も好ましくは約5.5〜約7.5の範囲にある。
【0026】
次の例は、本発明を例示するためであり、その範囲を何ら限定するものではない。全ての被覆粒子は、ESCA、SEM、及び粒径分布分析器により特徴付けられ、被覆粒径分布中の亜鉛ピリチオンの含有量は、標準滴定法を用いて決定された。
【0027】
例1
約3.4μのメジアン粒径を有する亜鉛ピリチオン粉末(約200g)を、小さな粒化機中へ入れた。パーム油(約24g)を、ホットプレートの上で溶融し、70℃に維持した加熱供給物容器中に入れた。二つの流体ノズルを加熱追跡し、75℃に維持した。粒化機を始動させ、溶融被覆材料を撹拌粉末中へ噴霧した。
【0028】
被覆粒子は次の特徴を持っていた:
亜鉛ピリチオン分析値:85.8%
粒径〔ホリバ(Horriba)LA−910〕:メジアン(D50):7.44μm;比表面積:2分超音波処理後、17647cm/cm
【0029】
原子濃度のESCA分析及びZn及びS信号の減衰から誘導された被覆厚さは、被覆の存在が35Åであることを示していた。
被覆粒子のSEM像は、粒子が目で見て被覆されており、クラスターの特徴を有することを示していた。
【0030】
比較例A:
〜65℃のD.I.水150ml中に210.0gの48.0%亜鉛ピリチオン(メジアン粒径0.47μm)を入れた撹拌懸濁物に、60〜65℃のステアリルジメチコン4.1gからなる熱い液体油をゆっくり添加した。この温度で10分間500rpmで撹拌した後、分散物を、300rpmの撹拌速度で徐々に室温へ冷却した。
被覆粒子は、次の特徴を持っていた:
亜鉛ピリチオン分析値:32.0%
粒径(ホリバLA−910):メジアン(D50):0.478μm;平均:0.507μm;比表面積:2分超音波処理後、136981cm/cm
【0031】
原子濃度のESCA分析及びZn及びS信号の減衰から誘導された被覆厚さは、表1に示したように、被覆の存在が15Åであることを示していた。被覆粒子のSEM像は、粒子が薄く被覆されていることを示していた。亜鉛ピリチオン粒子(0.1〜1μm、ブロック及び板状子の混合物)は、幾らかの散乱した被覆パッチを有し明確な輪郭をもち、粒子の縁は見かけ上軟化していた。微細亜鉛ピリチオン粒子について見られたように、真っすぐ又は角度のある特徴よりもむしろ湾曲した特徴を有するこれらの被覆に関連した特徴は、元の微細粒子の一部であり、ESCAで見られたように丁度薄い被覆である可能性がある。
【0032】
被覆粒子は、Malassezia furfurに対する定性的阻止帯(Zone of Inhibition)(ZOI)試験で活性を示し、被覆は寒天を通って亜鉛ピリチオンが移動するのを阻止しなかったことを実証していた。
【0033】
比較例B〜D:
例1−(I)部の手順に従い、48.0%の亜鉛ピリチオン(メジアン粒径0.47μm)の懸濁物中に入れた亜鉛ピリチオン粒子を、アミノ官能性ポリジメチルシロキサン〔アモジメチコン(Amodimethicon)、ダウ・コーニング2−8566アミノ流体、例B〕、レシチン〔セントロミクス(Centromix)LP250、例C〕、及びビス−PEG−12ジメチコン蜜蝋(シリコニル蜜蝋、例D)を用いてその場で被覆した。これらの被覆した亜鉛ピリチオン粒子の特性データーを、表1に記載する。
【0034】
【表1】

【0035】
最初の性能試験では、例1及び比較例の全てが、Malassezia furfurに対する定性的阻止帯(ZOI)試験で被覆粒子抗菌活性を示し、被覆は亜鉛ピリチオンが移動するのを阻止しなかったことを実証していた。
【0036】
一層進んだ試験として、「コルネオファンジメトリー」を用いて、例及び比較例に従って調製した粒子を評価した。この試験は、良好な前臨床スクリーニング法である。なぜなら、それは、自然の環境を一層よく代表する基質上でのMalassezia furfur spの増殖を必要とするからである。皮膚層を採取するのにシアノアクリレートを用い、これらの皮膚表面の剥離物をオリーブオイルで処理し、皮脂に類似させる。調製した皮膚試料を、研究中の活性剤で処理し、問題の微生物を接種し、培養した。この研究では、活性剤は、被覆した亜鉛ピリチオン粒子であり、用いた試験有機体はMalassezia furfurであった。処理の相対的効能を、対照と比較して増殖の阻止を探すことにより決定し、このデーターをコンピューターによる画像解析及び生体染色を用いて収集した。それは、被覆亜鉛ピリチオンがMalassezia furfurに対し、被覆していない材料よりも一層効能が高いことを示している。亜鉛ピリチオンの効能を試験するため、1%水性分散物、及びシャンプー配合物中に1%入れた両方を用いた。下の表3に試験結果を示した配合シャンプーは、次の成分を含んでいた:ステパノール(STEPANOL)AM−V陰イオン性表面活性剤、68.3%;ステパン(STEPAN)SAB−2懸濁剤、5%;ニノール(NINOL)40−CO非イオン性発泡剤、2%;被覆亜鉛ピリチオン粒子、ピリチオン含有量に基づき1%;グリダント(GLYDANT)防腐剤、0.3%;100%にするための残余の脱イオン水;全ての重量%はシャンプーの全重量に基づく。
【0037】
シアノアクリレート接着剤を用いて20人の健康なボランティアから採取した正常な角膜層(stratum corneum)でコルネオファンジメトリー生物検定を行った。試料をオリーブ油中に浸漬し、殺菌環境中に3日間保存した。オリーブ油を含浸させた角膜層試料を、第二段階で亜鉛ピリチオンの1%分散水又は1%の亜鉛ピリチオンを含有するシャンプー中に浸漬した。「コルネオファンジメトリー」試験による更に別の情報が、「臨床及び実験的皮膚病学」(Clinical and Experimental Dermatology)(1989)、第14巻、第425頁〜第428頁に見られるA.ルランギルワ(Rurangirwa)、C.ペイラルド−フランチモント(Peirard-Franchimont)、及びG.E.ピラルド(Pierard)Cによる「シアノアクリレート皮膚表面剥離物上の真菌培養−抗真菌薬剤を評価するための定量的生物検定」(Culture of fungi on cyanoacrylate skin surface strippings-a quantitative bioassay for evaluating antifungal drugs)と題する技術雑誌論文で入手することができる。
【0038】
Malassezia furfurを、MLMA〔変性リーミング(Modified Leeming)及びノットマン(Notman)寒天〕媒地で培養した。真菌細胞の懸濁物を生理的食塩水(10〜10細胞/ml)に入れて調製した。これらの懸濁物250μl部分を、角膜層試料上に付着させ、27℃で9日間湿潤状態で培養した。試料を、生体染色として天然赤色を用いて染色し、人間の角膜層上に増殖した生きた真菌を同定した。コンピューターによる画像解析(アナリシス・オリンパス)を用いてmm単位で陽性真菌細胞数を計算した。メジアン及び範囲を決定した。一対の非パラメーター・フリードマン(Friedman)試験を用い、次にダン(Dunn)試験を用いて生成物間比較を行なった。
【0039】
表2及び3に示したデーターに示されるように、11.7%のパーム油で被覆した試料(例1)は、最もよい抗真菌効能結果(%)を与えることを実証していた。比較として4.0%のステアリルジメチコン(比較例A)は、水分散物及び配合したシャンプーの両方で、被覆していない対照よりも中程度の効能を示したのに対し、7.5%のアミノシリコーンで被覆した試料(比較例B)は、水分散物では幾らか良好な効能の改良を示したが、配合シャンプーでは僅かな改良しか示さなかった。驚いたことに、レシチン(比較例C)及びシリコニル蜜蝋(比較例D)で被覆した試料は、水懸濁物では負の効能改良を示している。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
本発明を、その特別な態様に関連して上に記述してきたが、多くの変化、修正、及び変更を、ここに記載した本発明の概念から離れることなく行うことができることは明らかである。従って、添付の特許請求の範囲の本質及び広い範囲内に入るそのような変化、修正、及び変更は全て包含されるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一価及び多価ピリチオン塩、及びそれらの組合せからなる群から選択されたピリチオン塩の、親油性剤で部分的又は完全に被覆された被覆粒子を含む組成物。
【請求項2】
ピリチオン塩が、亜鉛、銅、銀、及びジルコニウム塩、及びそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
親油性剤が、約150〜約1,500の範囲内の数平均分子量を有する天然又は合成脂肪酸、脂肪酸エステル、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
天然又は合成脂肪酸エステルが、主鎖内に8〜22個の炭素原子を有する、モノ−、ジ−、及びトリ−グリセリド、及びそれらの組合せからなる群から選択されたグリセリドを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ピリチオン塩が、被覆粒子の重量に基づき、約10%〜約99%の重量%で前記被覆粒子内に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
親油性剤が、被覆粒子の重量に基づき、約0.01%〜約90%の重量%で前記被覆粒子内に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
被覆粒子が、親油性剤によりその表面が個々に完全に被覆されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
被覆粒子が、10〜100Åの厚さを有する被覆を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
親油性剤が、ラノリン油、魚油、動物油、ココナッツ油、パーム油、バター脂肪、大豆油、ひまわり油、綿実油、コーン油、及びそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
親油性剤がパーム油である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
更に水又は有機溶媒を含み、但し親油性剤が前記有機溶媒に不溶性であるものとする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
親油性剤がパーム油である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
更に水又は有機溶媒を含み、但し親油性剤が前記有機溶媒に可溶性であるものとする、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトン、エーテル、ハロゲン化炭化水素、及び芳香族溶媒からなる群から選択されている、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
局所的キャリヤー、及び一価及び多価ピリチオン塩、及びそれらの組合せからなる群から選択されたピリチオン塩の、親油性剤で部分的又は完全に被覆された被覆粒子を含む、人のケアー組成物。
【請求項16】
被覆粒子のメジアン粒径が、約0.1〜約50μmである、請求項15に記載の人のケアー組成物。
【請求項17】
ピリチオンの金属塩が、ブロック、板状子、球、棒、針、及びそれらの組合せからなる群から選択された形態で組成物中に存在する、請求項15に記載の人のケアー組成物。
【請求項18】
局所的キャリヤーが、水、有機溶媒、又はそれらの組合せを含むシャンプーである、請求項15に記載の人のケアー組成物。
【請求項19】
有機溶媒が、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリン、及びそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項18に記載の人のケアー組成物。
【請求項20】
固体亜鉛ピリチオン粒子で、その外側表面上に固体パーム油被覆を有する固体亜鉛ピリチオン粒子の水性分散物を製造する方法において、
(a) 固体亜鉛ピリチオン粒子の水性分散物を、約50℃〜約80℃の上昇させた温度へ加熱し、高温水性分散物を与える工程、
(b) 固体パーム油を、約50℃〜約80℃の上昇させた温度へ加熱し、液体パーム油を与え、そして
(c) 前記液体パーム油と、前記高温水性分散物とを混合して混合物を与え、前記混合物を冷却して前記固体パーム油の被覆を有する固体亜鉛ピリチオン粒子の水性分散物を与える工程、
を含む、上記製造方法。
【請求項21】
亜鉛ピリチオンの被覆粒子が、分散物の全重量に基づき約40%〜約50%の量で存在する、請求項17に記載の方法に従って製造された、固体パーム油被覆を有する固体亜鉛ピリチオン粒子の水性分散物。
【請求項22】
分散物の重量に基づき、約25重量%〜約50重量%のピリチオンの固体粒子、及び水を含む水性抗菌分散濃厚物であって、前記ピリチオン塩の前記固体粒子が、その外側表面に親油性被覆を有する被覆粒子であり、前記被覆粒子が、比較コルネオファンジメトリー生物検定試験で前記ピリチオン塩の未被覆粒子の分散物の抗菌効能と比較して、前記生物検定試験で少なくとも25%の抗菌効能改良を示す、上記水性抗菌分散濃厚物。
【請求項23】
局所的キャリヤー、及び人のケアー組成物の全重量に基づき、請求項19に記載の濃厚物を約0.5%〜約5%含む人のケアー組成物であって、同等の量の未被覆ピリチオン塩粒子分散物を含む人のケアー組成物の比較コルネオファンジメトリー生物検定試験での抗菌効能と比較して、前記生物検定試験で少なくとも15%の抗菌効能改良を示す、上記人のケアー組成物。
【請求項24】
約0.1μ〜約5μの平均粒径を有する固体亜鉛ピリチオン粒子の水性分散物であって、前記粒子が固体パーム油の被覆で被覆されており、前記被覆が被覆粒子の全重量に基づき3重量%〜15重量%を占め、前記被覆粒子が、分散物の全重量に基づき、約40重量%〜約50重量%の量で存在する、上記固体亜鉛ピリチオン粒子水性分散物。
【請求項25】
被覆された亜鉛ピリチオン粒子、及び水又は有機溶媒を含み、然も、前記被覆亜鉛ピリチオン粒子がパーム油で被覆されている、組成物。
【請求項26】
被覆材料でピリチオン粒子を被覆する方法において、
(a) 前記ピリチオン粒子を、有機溶媒中に溶解した被覆材料の溶液と接触させる工程、
(b) 前記ピリチオン粒子を、前記有機溶媒中に入れた前記被覆材料と混合する工程、及び
(c) 前記有機溶媒を蒸発して、前記被覆材料で被覆されたピリチオン粒子を与える工程、
を含むピリチオン粒子被覆方法。
【請求項27】
被覆材料がパーム油である、請求項26に記載の方法。


【公表番号】特表2007−508309(P2007−508309A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534294(P2006−534294)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/032943
【国際公開番号】WO2005/032489
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(500000175)アーチ ケミカルズ,インコーポレイテッド (19)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】