説明

微生物発生防止粉体、その製造方法、微生物発生防止繊維及び微生物発生防止シート

【課題】組成比が一定で、微生物発生防止効果を安定して確保することができ、表面積が大きく微生物発生防止効果が大きく、粉体であることで、パッケージに封入して空気及び/又は水の微生物発生の防止に用いることができ、又は他の素材に混練し微生物発生防止作用を与える等に応用することができる微生物発生防止粉体、その製造方法、微生物発生防止繊維及び微生物発生防止シートを提供する。
【解決手段】電解めっきにより形成されためっき皮膜を粉砕して得られた微生物発生防止粉体であって、この微生物発生防止粉体は、ニッケル又はクロムを含有する微生物発生防止金属の金属元素間に、リン、イオウ、塩素、コバルト及び銀のいずれか1つ以上を含有する微生物発生防止元素が均一に分散してなる微生物発生防止粉体、その製造方法、微生物発生防止繊維及び微生物発生防止シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、藻又は黴等の微生物の発生を防止する微生物発生防止粉体、その製造方法及びそれを用いた素材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生上の観点から、各種の材料表面や水における細菌、藻又は黴等の発生を防止する抗菌・防黴等の微生物発生防止技術が開発されている。こうした微生物発生防止技術には、例えば特許文献1及び2に示すものがある。
【0003】
特許文献1には、Pを1〜10質量%含むNi−P系合金皮膜が素地金属表面に被覆されたものであり、このNi−P系合金皮膜中の水素含有量が0.00001〜0.005質量%である耐久性、微生物発生防止作用、防藻性及び抗黴性を有する表面処理金属材料が開示されている。合金皮膜を素地金属表面に被覆する方法としては、電気めっきが示されている。この表面処理金属材料は、強い微生物発生防止作用、防藻性及び抗黴性を全て備え、耐久性の点でも優れ、従来耐久性不足や、微生物発生防止作用、防藻性及び抗黴性不足等の理由により適用することができなかった様々な分野に適用しようとするものである。
【0004】
特許文献2には、Ni又はNi合金部分のNi含量が20質量%以上であり、水素含量が1〜10000ppmであるNi又はNi合金粉末の表面に、P及び/又はS含有化合物が付着しており、このP及び/又はS含有化合物の付着量が粉末全体中に占める比率で1質量%以下であり、且つ該化合物中のP及び/又はSの合計含量が、粉末全体中に占める比率で0.001質量%以上である抗菌・防かび性に優れたNi系粉末が開示されている。Ni又はNi合金粉末の表面にP又はSを付着させる方法としては、Ni系粉末をP又はSを含む水溶液槽に浸漬する方法が示されている。このNi系粉末はNiイオンの溶出に加えて含有水素による表面活性化効果、更には表面に付着したP又はS含有化合物の作用が相俟って、卓越した抗菌・防かび活性を示す粉末を得、このNi粉末を抗菌・防かび性付与剤として各種材料に配合することによって、様々の材料に抗菌・防かび性を与え得る他、抗菌・防かび性に優れた部材を得ようとするものである。
【0005】
一方で、特許文献3には、基板表面に離型剤層を設ける工程、離型剤層表面に触媒を付与し活性化する工程、所望の無電解めっき液と接触させて厚さ0.01〜0.5μmの無電解めっき被膜を生成させる工程、無電解めっき皮膜付きの基板を溶媒と接触させて離型剤を溶解除去して無電解めっき被膜と基板とを分離する工程、分離した無電解めっき被膜を粉砕して径が1〜300μmの顔料用フレーク状金属粉を得る工程からなる顔料用フレーク状金属粉の製造方法が開示されている。無電解めっき被膜を粉砕する手段としては、超音波やホモジナイザによる粉砕が示されている。この顔料用フレーク状金属粉の製造方法は、金属のめっき被膜を剥離し粉砕することで、化学的に安定した金属粉を安価に得ようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3902329号公報
【特許文献2】特許第3691004号公報
【特許文献3】特開2006−328270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、微生物発生防止作用を有し、様々な用途に応用できる素材について検討した。しかしながら、特許文献1の表面処理金属材料は、めっきのできない樹脂や繊維などに対して表面金属処理を行うことができない等、一部のめっきの可能な材料以外には微生物発生防止の効果を付与することができないため、応用できる分野に限りがある。また、このめっき皮膜にはニッケルにリン、硫黄、又は塩素が分散しているが、めっき皮膜の表面に露出していないニッケル、リン、硫黄又は塩素は微生物発生防止作用を発揮できないので、使用する微生物発生防止の物質の量とめっきに要するエネルギに比して、微生物発生防止効果が高くないという問題があった。
【0008】
そこで本発明者らは、微生物発生防止作用を持つ粉末状の素材であれば、めっき処理を施すことのできない素材にも付着及び/又は配合できるなど応用が可能であることに着目した。しかしながら、特許文献2の粉末は、特定の粒径の粉体以外の素材を製造しようとすると製造が困難になり、また、微生物発生防止作用に問題が生じることがあった。
【0009】
すなわち、特許文献2の粉末は、ニッケルの粉末をリン又はイオウを含有する水溶液に浸漬することによって製造を行っている。この製造方法では、リン又はイオウはニッケルの粉末の表面にのみ付着しているので、ニッケルとリン又はイオウとの組成の比は粉末の表面積と付着割合によって大きく異なる。そのため、粉末の粒径に応じて浸漬、分離、乾燥及び熱処理等の工程を行い、その最適な条件をすべて検討する必要があり、粉末を設計するごとに精密な検討に手間と時間を要する。また製造した粉体は、粒径を整える等の目的のためにさらに粉砕等を行うと、粉末の付着している表面積の割合が大きく減少し、微生物発生防止作用が減少するので、製造後に粒径を整えることができない。特許文献2には平均粒径1μmでの製造方法が記載されているが、それ以外の望む粒径の粉体を製造することは手間と時間を要する。またこの製造方法では工程数が多く、大量生産がしにくいという問題がある。さらに、リン又はイオウが粉体の表面にのみ付着しているので、衝撃や経時によって剥離することで微生物発生防止効果が低下する可能性がある。
【0010】
そこで本発明者らは、微生物発生防止作用を持つニッケル等の金属とリン等の元素を一定割合で含有するめっき皮膜を形成し、そのめっき皮膜を粉砕して粉体を製造すれば、一定の微生物発生防止効果を有する粉体を製造できる可能性に着目した。しかしながら、特許文献3の技術は無電解めっきによって皮膜を形成するため、皮膜は非晶質となり、規則正しい配列にならず一定割合の金属と元素を含有させることは困難で、皮膜が物理的に脆く一定粒径の粉体を製造することが困難となる。まためっき皮膜を剥離するために離型剤を使用しなくてはならないので、コストが高騰するという問題があった。
【0011】
そこで本発明者らは、特許文献1の電気めっきによる皮膜を剥離して粉砕し粉体を得ることを試みたが、このめっき皮膜は強固に被めっき物に密着し、剥離することが困難であった。さらに、特許文献3にはめっき皮膜を粉砕する方法として超音波及びホモジナイザが示されているが、これらの方法では凝集状態の物質を分離させるなど非晶質の皮膜をある程度粉砕することはできるものの、電気めっきにより生じる結晶質の皮膜を粉砕することはできなかった。
【0012】
従って本発明の目的は、組成比が一定で、微生物発生防止効果を安定して確保することができる微生物発生防止粉体及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、表面積が大きく微生物発生防止効果が大きい微生物発生防止粉体及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、粉体であることで、パッケージに封入して空気及び/又は水の微生物発生の防止に用いることができ、又は他の素材に混練し微生物発生防止作用を与える等に応用することができる微生物発生防止粉体、その製造方法及びそれを用いた素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の微生物発生防止粉体は、電解めっきにより形成されためっき皮膜を粉砕して得られた微生物発生防止粉体であって、この微生物発生防止粉体は、ニッケル又はクロムを含有する微生物発生防止金属の金属元素間に、リン、イオウ、塩素、コバルト及び銀のいずれか1つ以上を含有する微生物発生防止元素が均一に分散してなる。
【0016】
微生物発生防止金属と微生物発生防止元素とを含み粉砕される皮膜を電解めっきにより形成しためっき皮膜としていることで、微生物発生防止金属と微生物発生防止元素との組成比が一定で緻密かつ結合力の強い結晶からなり、微生物発生防止金属に微生物発生防止元素が略均一に分散している。そのため組成比による微生物発生防止粉体の微生物発生防止を安定して確保することができ、微生物発生防止粉体の径や形状などの条件によらず微生物発生防止金属と微生物発生防止元素との組成比が一定に保たれることで微生物発生防止を確保できる。粉体であることで、パッケージに封入して空気及び/又は水の微生物発生の防止に用いることができ、又は他の素材に混練し微生物発生防止の作用を与える等に応用することができる。
【0017】
めっき皮膜は金属めっきされた被めっき物に対して電解めっきされたものであることが好ましい。微生物発生防止金属は被めっき物に対しては強固に結合せず、かつ金属めっきされた金属上に緻密に配列されて結晶を形成するので、被めっき物からは剥がれやすく、剥がす際にめっき皮膜の形を保ったまま容易に剥がすことができ、化学的に安定しためっき皮膜が形成される。
【0018】
金属めっきがクロムめっきであることが好ましい。微生物発生防止金属としてニッケルを選択したとき、クロムめっきされた上にめっき皮膜を形成すると、特に剥がれやすく化学的に安定しためっき皮膜が形成される。
【0019】
めっき皮膜が鏡面処理された被めっき物に対して電解めっきされたものであることが好ましい。鏡面処理によって被めっき物の凹凸が少なく、めっき皮膜との間の接触面積が最小となるので、めっき皮膜が被めっき物上に剥離しやすい状態で形成される。
【0020】
微生物発生防止元素の含有量が0.001〜10.0重量%であることが好ましい。0.001重量%以上とすることで、微生物発生防止元素による微生物発生防止作用を確保でき、10重量%以下とすることで、微生物発生防止金属による微生物発生防止作用を確保でき、複合めっき皮膜を有効に形成しやすく、微生物発生防止粉体の靭性や強度が確保されるので微生物発生防止粉体が崩壊することなく、微生物発生防止金属と微生物発生防止元素の組成比が一定に保たれる。
【0021】
微生物発生防止元素が1.0〜5.0重量%のリンであることが好ましい。リンの含有量によって特に有効な微生物発生防止作用が得られる。
【0022】
微生物発生防止粉体は径が1〜300μmであることが好ましい。表面積が大きく高い微生物発生防止作用を示す。この径であることでさらに径が小さく微生物発生防止作用が大きい粉体を製造することができる。
【0023】
本発明の微生物発生防止粉体の製造方法は、ニッケル又はクロムを含有する微生物発生防止金属と、リン、イオウ、塩素、コバルト及び銀のいずれか1つ以上を含有する微生物発生防止元素とを被めっき体に対して電解めっきする皮膜形成工程と、この電解めっきにより得られためっき皮膜を被めっき体から剥離する剥離工程と、剥離した剥離めっき皮膜を粉砕し微生物発生防止粉体とする粉砕工程とを含み、微生物発生防止金属の金属元素間に微生物発生防止元素が均一に分散してなる微生物発生防止粉体を得る。
【0024】
電解めっきによる皮膜形成工程によって、微生物発生防止金属と微生物発生防止元素との組成比が一定で緻密かつ結合力の強い結晶からなり、微生物発生防止金属内部に微生物発生防止元素が略均一に分散しためっき皮膜が得られる。このめっき皮膜を剥離工程によって剥離し、剥離しためっき皮膜を粉砕工程によって粉体とすることで、微生物発生防止粉体の径や形状などの条件によらず微生物発生防止金属と微生物発生防止元素との組成比が一定に保たれることで微生物発生防止を確保でき、パッケージに封入して空気、水の微生物発生の防止に用いることができ、又は他の素材に混練し微生物発生防止の作用を与える等に応用することができる粉体が得られる。
【0025】
皮膜形成工程は金属めっきを行った被めっき物に対して電解めっきを行うことが好ましい。被めっき物が微生物発生防止金属に対しては強固に結合せず、めっき皮膜は緻密に結晶を形成するので、剥がれやすく化学的に安定しためっき皮膜が形成される。めっきされた皮膜が被めっき物と仮想的に密着されるので、めっき皮膜を被めっき物から剥離する際にめっき皮膜に衝撃を与え、又は一部皮膜を破断することにより、薄膜状態で剥離することが容易となる。
【0026】
金属めっきはクロムめっきであることが好ましい。微生物発生防止金属としてニッケルを選択しためっき皮膜を形成したときは、特に有効に仮想的な密着を行うことができる。
【0027】
皮膜形成工程は鏡面処理を行った被めっき物に対して電解めっきを行うことが好ましい。鏡面処理によって被めっき物の凹凸が少なく、めっき皮膜との間の接触面積が最小となるので、めっき皮膜が剥離しやすい状態で形成される。化学的作用及び高コストな物理的作用を必要としないため、低コストで皮膜を剥離することができる。
【0028】
皮膜形成工程は、めっき皮膜の微生物発生防止元素の含有量が0.001〜10重量%となるよう行うことが好ましい。0.001重量%以上とすることで、微生物発生防止元素による微生物発生防止作用を確保でき、10重量%以下とすることで、微生物発生防止金属による微生物発生防止作用を確保でき、複合めっき皮膜を有効に形成しやすく、微生物発生防止粉体の靭性や強度が確保されるので微生物発生防止粉体が崩壊することなく、微生物発生防止金属と微生物発生防止元素との組成比が一定に保たれる。
【0029】
皮膜形成工程は、めっき皮膜の微生物発生防止元素が2.0〜5.0重量%のリンとなるよう行うことが好ましい。リンの含有量によって特に有効な微生物発生防止作用が得られる。
【0030】
皮膜形成工程は、1.0〜10μmの厚みのめっき皮膜を形成することが好ましい。めっき皮膜はある程度の厚みと金属の硬さがあることで、この後の剥離の工程が容易で、せん断や衝撃を加えられた際に硬さによって破砕されやすく効果的に粉砕することができ、また、分厚すぎないことで粉砕が困難となることがない。
【0031】
剥離工程は、めっき皮膜に外力を与えて行うことが好ましい。めっき皮膜が結晶を形成して被めっき物に対して弱い結合力で形成されているので、機械的な外力を加えると皮膜の形を保ったまま容易に被めっき物から剥離することができ、手間とコストを要さず容易に剥離を行うことができる。
【0032】
粉砕工程は、剥離めっき皮膜をカッターミルにより粉砕し200〜2000μmの径のせん断粉砕物とするせん断粉砕工程と、せん断粉砕物をミキサーにより粉砕し80〜800μmの径の衝撃粉砕物とする衝撃粉砕工程と、衝撃粉砕物を媒体ミルにより粉砕し1〜300μmの径の微生物発生防止粉体とする複合粉砕工程を含むことが好ましい。カッターミルはせん断刃の間に相互に隙間を持ち、このカッターミルにめっき皮膜に対して連続的にせん断力を付与するため、金属である程度の硬度と大きさのある薄膜を低い粉砕負荷によって粉砕することができ、2000μm程度までの径の粉体にまで有効に粉砕することができる。ミキサーは刃によって粉体に対して直接衝撃力を付与するため、数千μmの径の粉体を、800μm程度までの径の粉体にまで有効に粉砕することができる。媒体ミルは粉砕容器内でめっき皮膜と粉砕媒体とに運動エネルギを加えて、めっき皮膜と粉砕媒体及び容器内壁との間でせん断力、圧縮力及び摩擦力等を加えるので、これらの複合する力によって数百μmの径の粉体を、300μm程度までの径の粉体にまで有効に粉砕することができる。めっき皮膜及びめっき皮膜を粉砕した粉体を、形状や径等の状態に応じてそれぞれこれらの工程によって粉砕することで、めっき皮膜を効果的に微細な径まで粉砕することができる。
【0033】
本発明の微生物発生防止繊維は、上記のいずれかに記載の微生物発生防止粉体を含有する。微生物発生防止粉体を含有することにより、微生物発生防止金属に微生物発生防止元素が略均一に分散して微生物発生防止の作用が安定して確保された繊維となる。
【0034】
微生物発生防止粉体は繊維は合成樹脂を紡糸した繊維内に練りこまれていることが好ましい。合成樹脂への練りこみにより製造することにより微生物発生防止繊維を容易に製造でき、微生物発生防止粉体の脱落が起こりにくいので長期間微生物発生を防止することができる。
【0035】
合成樹脂はナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン又はポリプロピレンであることが好ましい。合成樹脂の供給及び加工が容易なので、繊維への加工、微生物発生防止粉体の練りこみを容易に行うことができる。
【0036】
微生物発生防止シートは、微生物発生防止繊維を織り、編み又は不織布に形成してなる。微生物発生の防止を行うことができる素材となり、応用範囲が広い微生物発生防止シートとなる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の微生物発生防止粉体及びその製造方法によれば、微生物発生防止金属と微生物発生防止元素とを含み粉砕される皮膜を電解めっきにより形成しためっき皮膜としていることで、微生物発生防止金属と微生物発生防止元素との組成比が一定で緻密かつ結合力の強い結晶からなり、微生物発生防止金属に微生物発生防止元素が略均一に分散している。そのため組成比による微生物発生防止粉体の微生物発生防止を安定して確保することができ、微生物発生防止粉体の径や形状などの条件によらず微生物発生防止金属と微生物発生防止元素との組成比が一定に保たれることで微生物発生防止を確保できる。粉体であることで、パッケージに封入して空気及び/又は水の微生物発生の防止に用いることができ、又は他の素材に混練し微生物発生防止の作用を与える等に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る微生物発生防止粉体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る微生物発生防止粉体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1の実施形態)
以下、本発明の一実施形態を具体的に説明する。本実施形態の微生物発生防止粉体は、ニッケル又はクロムを含有する微生物発生防止金属の金属元素間に、リン、イオウ、塩素、コバルト及び銀のいずれか1つ以上を含有する微生物発生防止元素が均一に分散してなる。
【0040】
微生物発生防止金属は、水中に溶出することで抗菌性、防藻性及び/又は防かび性といった性質を発揮することが知られている金属、又はそれらの金属を含有する合金である。それらの金属には、ニッケルの他には銅、金、銀、亜鉛、クロム、若しくはコバルト等、又はこれらの1つ以上を含有する合金が知られている。本実施形態では、後述の微生物発生防止元素を含有することにより微生物発生防止作用を大きく高めることができるニッケルを少なくとも含有しているものとし、特に、めっき皮膜の主成分であるものとしている。
【0041】
微生物発生防止元素は、微生物発生防止金属と共に含有することで微生物発生防止作用を強くすることができる元素である。ニッケルと共に含有することで微生物発生防止の作用を強くする元素としては、リン、イオウ、塩素、コバルト及び銀等が知られている。本実施形態では、微生物発生防止元素は特に高い効果が得られる元素としてリンを用いている。
【0042】
微生物発生防止元素の含有量は0.001重量%を下回ると微生物発生防止効果が確保できず、10.0重量%を上回ると微生物発生防止金属に対する含有量が多すぎて微生物発生防止粉体が脆くなり、粒径の調整や維持に支障がある場合がある。最も優れた微生物発生防止の性能を発揮できる最適な量は微生物発生防止元素によって異なるが、およそ1.0〜10.0重量%であり、リンの場合は2.0〜5.0重量%である。
【0043】
微生物発生防止粉体は、この両方を含有するめっき皮膜を形成し、そのめっき皮膜を粉砕して得られているので、微生物発生防止元素は、微生物発生防止金属に対して略均一に分散されている。
【0044】
微生物発生防止粉体は粉体であればいかなる径であっても微生物発生防止作用を発揮できるため、用途に応じて径を調整できる。ここで径とは、粉体の最も大きい径の長さを指し、特にめっき皮膜を粉砕して得られた粉体においては、皮膜の厚さ方向に対して垂直な皮膜の平面方向の長さのひとつ、その最も大きいものである。微生物発生防止粉体は、めっき皮膜を剥離しているので、被めっき物にめっきされている状態の皮膜に比べて、同じ微生物発生防止金属及び微生物発生防止元素の重量あたりの表面積が少なくとも2倍を超えており、高い微生物発生防止作用を発揮できる。
【0045】
次に、本発明の微生物発生防止粉体の製造方法について説明する。まず、ニッケル又はクロムを含有する微生物発生防止金属と、リン、イオウ、コバルト及び銀のいずれか1つ以上を含有する微生物発生防止元素とを被めっき体に対してめっきする、皮膜形成工程を行う(S1)。
【0046】
皮膜形成工程は、微生物発生防止金属と微生物発生防止元素のそれぞれの元素の化合物を含有するめっき浴を用いて行うことが望ましい。本実施形態では、めっき浴にニッケル水和物、リン酸及び亜リン酸を含有するものを用いている。化合物の濃度は目的とするめっき皮膜の組成や厚みに応じて適宜調整できる。この他にめっき浴の成分として、めっきが有効に行われるためのpH緩衝剤、応力緩衝剤、又は界面活性剤などを含有していてもよい。
【0047】
被めっき物は、めっき皮膜の組成に応じてめっきを行いやすく、後述する剥離を行いやすいものであれば適宜選択できる。具体的には、電極としてニッケル、ステンレスやチタン等通電可能な部材を使用できる。被めっき物は、剥離を行いやすいよう表面処理を行う。具体的には、表面に金属めっきや、鏡面処理等を施してもよい。これらを併用し、金属めっきを行った後に鏡面処理を行うと、被めっき物の表面の凹凸が少なくなり、めっき皮膜とグリップせず、弱い力で剥離可能に密着するので最適である。金属めっきは、クロム、スルファミン酸ニッケル又は無電解ニッケル(Ni−B、Ni−P)等を使用できる。ステンレス又はニッケルの電極をめっきする場合は、クロムを選択するのが最適である。鏡面処理は、目安として機械研磨であれば0.1〜2.0Sで行うのが望ましく、0.2〜0.8Sで行うのがさらに望ましい。サンドペーパーであれば#400〜2000の条件で行い、#500〜#1000で行うのがさらに望ましい。本実施形態では、被めっき物をステンレスの電極として、クロムめっきの金属めっきを行い、その金属めっき面を鏡面処理している。
【0048】
めっきの電流密度、温度、処理時間、及び攪拌等の条件は、めっき皮膜の組成及び厚みに応じて適宜選択できる。めっき皮膜は1〜10μmの厚みに形成する。めっき皮膜の厚みがこれより薄すぎると剥離が困難となり、厚すぎると金属皮膜の硬度のために粉砕できなくなる。特に剥離後に薄膜として作業しやすくするためには3〜5μmが望ましい。この範囲では形成されためっき皮膜を後述する粉砕工程で最小限の時間とエネルギによって、径が150μmのスケールまで粉砕することができる。
【0049】
次いで、複合めっきにより得られためっき皮膜を被めっき体から剥離する剥離工程を行う(S2)。皮膜形成工程のめっきによって析出された皮膜は、被めっき物の表面処理によって被めっき物と仮想的に密着されているので、めっき皮膜に対して機械的な外力を加えることで剥離することができる。具体的には、めっき皮膜の不特定の箇所を破断しそこから機械的に剥がす、めっき皮膜に衝撃を与える、被めっき物を折り曲げる、又はこれらを組み合わせた操作によって、容易に剥離を行うことができる。この実施例では、被めっき物の皮膜のほかの箇所を破らないよう竹製の刃物で皮膜の一部を破断させ、その破断部分から手動で剥離することで、皮膜を破らずに連続して剥離して薄膜状態の剥離めっき皮膜を得ている。
【0050】
次いで、剥離した剥離めっき皮膜をせん断力により粉砕しせん断粉砕物とするせん断粉砕工程を行う(S3)。せん断とは、平行な別方向から2以上の力を加えることによって切断することで、本実施形態では対向する複数の刃同士によって力を加えるもの、特に、刃が互いに密接したはさみ等ではなく隙間を設けた刃同士の間でせん断するものを指す。
【0051】
本実施形態では、複数の刃によって連続的にせん断力を付与するカッターミルによりせん断粉砕工程を行う。
【0052】
このせん断粉砕工程では、刃同士の間、本実施形態ではカッターミルの回転により、徐々に圧縮とせん断の力を増幅させ、厚み数μmのめっき皮膜が折り曲げられ圧縮されている状態でせん断力を付与させることで、めっき皮膜を一気に細かく切断することができる。なお、はさみ等の接触する刃同士によって切断する手段を用いると、金属の硬度が高いためめっき皮膜を有効に径2000μm未満に粉砕することができず、刃同士の間にクリアランスがないため、金属の硬度による刃の磨耗及びコンタミが生じるおそれがある。本発明では、刃同士に隙間を設けてめっき皮膜を相互にすりつぶすように対してせん断力を加えているので、めっき皮膜を切断でき、刃の磨耗やコンタミが生じるおそれがない。
【0053】
このせん断粉砕工程によって、目的とする粉体の径となるまでせん断を行う。せん断粉砕工程では、めっき皮膜が目安として刃同士の間隔未満に粉砕されると、刃同士の間で保持されず、それ以上せん断されなくなる。この時点の粉砕物をせん断粉砕物とする。せん断粉砕物の径は、ニッケルを主成分とするめっき皮膜についてせん断によって粉砕可能な径としては200〜2000μmとなっている。本実施形態のカッターミルでは、400〜1000μm前後である。
【0054】
この後に微生物発生防止粉体を目的粒子径の篩にかけ、目的粒子径よりも大きいものは粒径に応じて各工程に戻し、粉砕に供する(S4)。
【0055】
本発明の微生物発生防止粉体は、他の素材に混合する、樹脂などの素材に混練する、繊維に織り込む、塗料に添加して塗布する等によって、様々な素材に対して容易に微生物発生防止効果を付与することができる。また、様々な大きさのパッケージ、例えば微生物発生防止粉体の径よりメッシュの小さいフィルタ(茶漉し等)に封入し、気体中に置く、水などの液体中に投入することで、気体や液体中の微生物の発生を抑えることができる。そのため、主に排水や水道に水カビや藻などが生ずるのを抑える他、水を扱うあらゆる分野に応用できる。
【0056】
本実施形態の変更態様として、硬質粒子、自己潤滑粒子又は光触媒機能粒子等の粒子を含有する微生物発生防止粉体とすることができる。この微生物発生防止粉体は、皮膜形成工程において複合めっきによってこれらの粒子を含有させ、その他は上述と同様の工程を行うことによって製造することができる。微生物発生防止粉体によって、これらの含有させた粒子による効果が得られる。
【0057】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の微生物発生防止粉体は、径が1〜300μmであることの他は、第1の実施形態と同様である。
【0058】
径を1〜300μmとすると表面積が大きく、微生物発生防止金属及び微生物発生防止元素が周囲の環境に触れる面積が大きいので、優れた微生物発生防止性能を発揮できる。特に1〜150μmのさらに表面積が大きい粉末が容易に製造でき、150μm以下の規模の粉末は、さらに1回以上の工程を加えるのみによって細かい粉末へと粉砕することも容易である。
【0059】
次に、本実施形態の微生物発生防止粉体の製造方法について図2に示して説明する。なお、皮膜形成工程(S1)、剥離工程(S2)、せん断粉砕工程(S3)及び篩い分けの工程(S4)については第1の実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0060】
本実施形態では、せん断粉砕物に対し、衝撃により粉砕し衝撃粉砕物とする衝撃粉砕工程を行う(S5)。衝撃により粉砕するとは、運動する刃やミル等を粉砕させる物に衝突させ直接衝撃を加えて粉砕することを指す。この工程では特に、回転する粉砕刃によってせん断粉砕物に衝撃を加えるものを指す。具体的には、回転する粉砕刃を有するミキサーにより行うことができる。
【0061】
本実施形態では、高速回転するロータリーミキサーにより行う。粉砕条件は回転刃の回転条件を最大で20000rpm程度とし、せん断粉砕物をロータリーミキサーの粉砕容器の1/3程度充填して行うことで、せん断粉砕物が粉砕刃に頻繁に衝突し、せん断粉砕物同士が衝突するので、効果的に衝撃が加えられる。
【0062】
衝撃粉砕工程では、粒子がある程度の径未満に粉砕されると、粉砕刃との衝突の頻度が少なくなり、それ以上衝撃により粉砕されなくなる。この時点の粉砕物を衝撃粉砕物とする。衝撃粉砕物の径は、ニッケルを主成分とするめっき皮膜について衝撃によって粉砕可能な径としては80〜800μmとなっている。本実施形態のロータリーミキサーでは、100〜400μm前後である。
【0063】
次いで、この衝撃粉砕物をせん断力と摩擦力とにより粉砕し前記微生物発生防止粉体とする複合粉砕工程を行う(S6)。特に、媒体ミルを用いることでせん断力、圧縮力及び摩擦力の複合力を加えることができる。媒体ミルとは、容器内にボールやビーズなどの硬質の粒状固体からなる媒体(メディア)を被粉砕物と共に密閉し、外部から運動エネルギを加えて被粉砕物を粉砕するものである。媒体は主に球体のものが用いられる。外部からの運動エネルギは重力、遠心力又は振動などいずれの外力でもありえる。こうした媒体ミルには、ビーズミルやボールミル等がある。特に有効なものはボールミルで、振動ボールミル、転動ボールミル又は遊星ボールミル等の各種のものを使用できる。
【0064】
本実施形態では、遊星ボールミルで、重力の10倍程度の運動エネルギを付与できるものを使用している。媒体はステンレス球で径約5mmのものを使用している。この工程における遊星ボールミル容器に対する充填量は、容器の容積(cc)に対して、媒体のステンレス球は1/2〜9/10(g)、衝撃粉砕物が1/10〜1/2(g)となるよう充填するのが好ましい。
【0065】
この複合粉砕工程で、衝撃粉砕物を1〜300μmの径まで粉砕できる。本発明の遊星ボールミルでは、1〜150μmまで粉砕できる。この複合粉砕工程での粉砕物を微生物発生防止粉体とする。
【0066】
この後に微生物発生防止粉体を目的粒子径の篩にかけ、目的粒子径よりも大きいものは粒径に応じて各工程に戻し、粉砕に供する(S4)。
【0067】
なお、本発明者らの検証によると、せん断粉砕工程、衝撃粉砕工程又は複合粉砕工程のいずれかの工程のうち1つ又は2つを用いても、めっき皮膜から粒径の小さい粉体まで1又は2工程で粉砕することができず、1000μm以上の大きい径を含む径のばらついた粉体となるため、300μm以下の径まで有効に粉砕することはできない。
【0068】
(第3の実施形態)
本実施形態の微生物発生防止繊維は、他素材の繊維と微生物発生防止粉体とを含有している。微生物発生防止粉体については、第1又は第2の実施形態の微生物発生防止粉体と同様のものである。
【0069】
他素材としては、本実施形態では樹脂を用いる。樹脂は天然樹脂、合成樹脂をいずれも用いることができる。合成樹脂としてはナイロン、ポリエステル、ポリエチレン又はポリプロピレン等、いずれの樹脂も用いることができる。特に、繊維に用いられる樹脂としてナイロン又はポリエステルが望ましい。さらに、ナイロンは蒸気発泡が起こりにくいので本発明では後述の紡糸などを行いやすい利点がある。繊維は糸状にしたものやそれを縒ったもの、編み上げたもので、糸状にしたものとしては紡糸したものを使用できる。本実施形態では特に、他素材は合成樹脂のナイロンで、繊維はそれを紡糸したものである。
【0070】
他素材の繊維と微生物発生防止粉体とを含有する形態としては、微生物発生防止粉体を繊維の樹脂内に練りこみによって含有させたもの、繊維の表面に微生物発生防止粉体を付着させたもの等を用いることができる。このうち、練りこみを行うと製造や使用の過程で微生物発生防止粉体が脱落しにくいので望ましい。練りこみの方法としては、樹脂の重合前に微生物発生防止粉体を分散した後に重合させる方法、樹脂のチップに対して微生物発生防止粉体を直接練りこむ方法、樹脂と生物発生防止粉体を混合した後チップ化し、マスターバッチ化する方法などがある。マスターバッチ化する方法が、マスターバッチを紡糸して得られる繊維の物性や色調を優れたものとすることができ、短時間で精製でき生産性が安定するので望ましい。本実施形態では、マスターバッチ化によって微生物発生防止粉体の繊維への練りこみを行っている。
【0071】
微生物発生防止粉体の、微生物発生防止繊維に対する含有量は、0.05〜20重量%が望ましい。
【0072】
マスターバッチからの紡糸は、従来知られたスクリュー押し出し機などを用いた方法により行うことができる。
【0073】
この微生物発生防止繊維は、微生物発生防止粉体を含有し、この微生物発生防止粉体による防菌、防かび等の効果を持つ。この繊維を編んだ布や不織布のようなシート状の素材、その他の形態の素材に加工することで、防菌、防かび等の効果を持つこれらの各種素材を得ることができる。この素材は衣類、衛生用品又は清掃用具等の、防菌又は防かびが特に必要とされる物に広く応用できる。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
(微生物発生防止粉体の製造)
微生物発生防止金属としてニッケル、微生物発生防止元素をリン、被めっき体をクロムめっきしたステンレス材として、皮膜形成工程を行った。めっき浴の組成を表1、めっき条件を表2に示す。
【0075】
【表1】



【0076】
【表2】



【0077】
被めっき物の陰極板は、ステンレス材に対して処理を行ってから、めっき皮膜を製造する予定の面に対してあらかじめ以下の条件でクロムめっきを行った。
【0078】
めっき液浴組成
・無水クロム酸(CrO):200〜300g/L
・ 三価クロム酸(Cr):1〜5g/L
・硫酸(HSO):2〜3g/L
めっき温度:40〜55℃
めっき電圧:4〜15V
電流密度:10〜80A/dm
電解時間:3〜20H
【0079】
そのクロムめっき面を、表面粗さ0.1〜0.8S、磨き番定#400〜1000で鏡面処理を行った。皮膜形成工程は治具の取り付けの後、脱脂し、水洗を2回行った後、めっき操作を行った。この工程で形成されためっき皮膜は、厚みが1〜3μmで、微生物発生防止元素であるリンの含有量がおよそ1〜5重量%であった。
【0080】
被めっき物に生じためっき皮膜のある一部を竹製の刃物で成膜を破断し、成膜の結合がその部分から崩れ浮いている状態の部分を、手動で剥がして皮膜を回収した。剥離しためっき皮膜を、せん断粉砕工程でカッターミルにより粉砕して径が平均約1000μmのせん断粉砕物とし、このせん断粉砕物を衝撃粉砕工程でロータリーミキサーにより粉砕して径が平均約400μmの衝撃粉砕物とし、この衝撃粉砕物を複合粉砕工程で媒体ミルにより粉砕して径が平均約150μmの微生物発生防止粉体とした(実施例1)。
【0081】
(微生物発生防止試験)
JIS Z 2801:2000「抗菌加工試験方法・抗菌効果」5.2 プラスチック製品などの試験方
法を参考にして、実施例1の微生物防止発生粉体の抗菌力試験を行った。
【0082】
試験は、Escherichia coli NBRC 3972(大腸菌)及びStaphylococcus aureussubsp.sureus. NBRC 13275(黄色ブドウ球菌)の2菌株で実施した。50mm×50mm×0.09mmのポリエチレンフィルムにこれらの菌液を滴下し、その上から40mm×40mm×0.09mmのポリエチレンフィルムを被覆し、無加工(抗菌処理なし)と抗菌加工(抗菌処理あり)のそれぞれを35℃で24時間保持した。24時間後、無加工(抗菌処理なし)と抗菌加工(抗菌処理あり)の生菌数を測定し、下記計算式より抗菌活性値を算出した。
【0083】
抗菌活性値=[log(B/A)−log(C/A)]=log (B/C)
A:無加工試験片の接種直後の生菌数の平均値(個)
B:無加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)
C:抗菌加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)
【0084】
その結果、大腸菌については抗菌活性値が3.3、黄色ブドウ球菌については4.3といずれも抗菌効果を有とする2.0以上を示しており、抗菌効果が確認された。
【0085】
以上述べた実施形態及び実施例は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の微生物発生防止粉体は、様々な素材や液体中に微生物の発生を抑え、低コストで衛生効果を高めるために応用することができるので、工業上施設や家庭まで幅広い場で応用が可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解めっきにより形成されためっき皮膜を粉砕して得られた微生物発生防止粉体であって、
前記微生物発生防止粉体は、ニッケル又はクロムを含有する微生物発生防止金属の金属元素間に、リン、イオウ、塩素、コバルト及び銀のいずれか1つ以上を含有する微生物発生防止元素が均一に分散してなることを特徴とする微生物発生防止粉体。
【請求項2】
前記めっき皮膜が金属めっきされた被めっき物に対して前記電解めっきされたものであることを特徴とする請求項1に記載の微生物発生防止粉体。
【請求項3】
前記金属めっきがクロムめっきであることを特徴とする請求項2に記載の微生物発生防止粉体。
【請求項4】
前記めっき皮膜が鏡面処理された被めっき物に対して前記電解めっきされたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の微生物発生防止粉体。
【請求項5】
前記微生物発生防止元素の含有量が0.001〜10.0重量%であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の微生物発生防止粉体。
【請求項6】
前記微生物発生防止元素が1.0〜5.0重量%のリンであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の微生物発生防止粉体。
【請求項7】
前記微生物発生防止粉体の径が1〜300μmであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の微生物発生防止粉体。
【請求項8】
ニッケル又はクロムを含有する微生物発生防止金属と、リン、イオウ、塩素、コバルト及び銀のいずれか1つ以上を含有する微生物発生防止元素とを被めっき体に対して電解めっきする皮膜形成工程と、前記電解めっきにより得られためっき皮膜を前記被めっき体から剥離する剥離工程と、該剥離した剥離めっき皮膜を粉砕し微生物発生防止粉体とする粉砕工程とを含み、前記微生物発生防止金属の金属元素間に前記微生物発生防止元素が均一に分散してなる微生物発生防止粉体を得ることを特徴とする微生物発生防止粉体の製造方法。
【請求項9】
前記皮膜形成工程は、金属めっきを行った被めっき物に対して電解めっきを行うことを特徴とする請求項8に記載の微生物発生防止粉体の製造方法。
【請求項10】
前記金属めっきがクロムめっきであることを特徴とする請求項9に記載の微生物発生防止粉体の製造方法。
【請求項11】
前記皮膜形成工程は、鏡面処理を行った被めっき物に対して電解めっきを行うことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の微生物発生防止粉体の製造方法。
【請求項12】
前記皮膜形成工程は、前記めっき皮膜の微生物発生防止元素の含有量が0.001〜10.0重量%となるよう行うことを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の微生物発生防止粉体の製造方法。
【請求項13】
前記皮膜形成工程は、前記めっき皮膜の前記微生物発生防止元素が1.0〜5.0重量%のリンとなるよう行うことを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載の微生物発生防止粉体の製造方法。
【請求項14】
前記皮膜形成工程は、1.0〜10.0μmの厚みのめっき皮膜を形成することを特徴とする請求項8から13のいずれか1項に記載の微生物発生防止粉体の製造方法。
【請求項15】
前記剥離工程は、前記めっき皮膜に外力を与えて行うことを特徴とする請求項8から14のいずれか1項に記載の微生物発生防止粉体の製造方法。
【請求項16】
前記粉砕工程が前記剥離めっき皮膜をカッターミルにより粉砕し200〜2000μmの径のせん断粉砕物とするせん断粉砕工程と、前記せん断粉砕物をミキサーにより粉砕し80〜800μmの径の衝撃粉砕物とする衝撃粉砕工程と、前記衝撃粉砕物を媒体ミルにより粉砕し1〜300μmの径の微生物発生防止粉体とする複合粉砕工程を含むことを特徴とする請求項8から15のいずれか1項に記載の微生物発生防止粉体の製造方法。
【請求項17】
請求項1から7のいずれか1項に記載の微生物発生防止粉体を含有することを特徴とする微生物発生防止繊維。
【請求項18】
前記微生物発生防止粉体が合成樹脂を紡糸した繊維に練りこまれていることを特徴とする請求項17に記載の微生物発生防止繊維。
【請求項19】
前記合成樹脂はナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン又はポリプロピレンであることを特徴とする請求項17又は18に記載の微生物発生防止繊維。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか1項に記載の微生物発生防止繊維を織り、編み又は不織布に形成してなることを特徴とする微生物発生防止シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−11015(P2013−11015A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−117161(P2012−117161)
【出願日】平成24年5月23日(2012.5.23)
【出願人】(000182476)寿産業株式会社 (47)
【出願人】(592001056)札幌エレクトロプレイティング工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】