説明

微細可動構造体の製造方法および微細可動構造体

【課題】可動電極構造体に安定した状態で接点電極が形成できるようにする。
【解決手段】第2電極103の上部の後述する接点部が形成される接点部形成領域において、第2開口部105aを有する密着膜105を犠牲膜104の上に形成し、次に、第2開口部105aを覆って密着膜105の上に接点電極膜106を形成する。密着膜105は、例えば、チタン、クロム、ジルコニウム、タンタルなどの遷移金属、およびこれらの酸化物から構成することができる。接点電極膜106は、例えば、ルテニウム,ロジウム,パラジウム,オスミウム,イリジウム,および白金などの白金属の金属および金などから構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な可動部を備える微細可動構造体の製造方法および微細可動構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜形成技術,フォトリソグラフィ技術,および各種のエッチング技術を用いた微細加工により立体的な構造を形成することで、マイクロスイッチなどの微細可動構造体を作製するMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術が開発されている(非特許文献1参照)。このような微細可動構造体の一例を図4A,図4Bに示す。図4Aは断面図であり、図4Bは、平面図である。図4Aは、図4BのXX’線の断面を示している。
【0003】
この微細可動構造体は、基板401の上に形成された下部電極402、配線電極403、および可動電極構造体406を備える。可動電極構造体406は、可動電極構造体406を支持する支持部461、上部電極462,および接点部463を備える。また、上部電極462は、可撓性を有する梁部464により支持部461に連結している。また、接点部463の配線電極403と対向する箇所には、接点電極405が設けられている。
【0004】
この微細可動構造体は、配線電極403と接点電極405との接触/非接触により、スイッチとしての機能を発現する。例えば、上部電極462と下部電極402との間に電圧を印加すると、静電引力によって上部電極462が下部電極402の側に引き寄せられる。この力により梁部464が変形し、図4Cに示すように、接点電極405が配線電極403に接する。この接触によって、例えば、配線電極403と上部電極462とが導通し、スイッチがオン状態となる。
【0005】
一方、上部電極462と下部電極402との間への電圧の印加を停止すると、梁部464の復元力によって上部電極462は元の位置に戻り、接点電極405と配線電極403が離間する。これにより、配線電極403と上部電極462との接続が解消され、スイッチはオフ状態となる。このようにして、上述した微細可動構造体において、スイッチとしての機能が実現される。
【0006】
上述した接点電極405を備えた微細可動構造体について、一般的な製造方法について、概略を説明する。
【0007】
まず、図5Aに示すように、基板401の上に金属からなる配線電極403および下部電極402を形成する。次に、図5(b)に示すように、基板401の上に下部電極402および配線電極403を覆う犠牲膜504を形成する。犠牲膜504は、支持部となる領域に基板401に到達する開口部504aが形成されている。次に、図5Cに示すように、配線電極403上部の犠牲膜504の上に、接点電極405を形成する。次に、図5Dに示すように、開口部504aを充填して接点電極405の上に連続する可動電極構造体406を形成する。
【0008】
この後、犠牲膜504を選択的に除去することで、図5Eに示すように、上部電極462および接点電極405が、下部電極402および配線電極403の上に離間して配置される状態となる。ここで、接点電極405は、接点電極405と配線電極403が接触したときに、良好な導通状態を得るために用いられるものである。このため、一般には、金や白金属などの、低い抵抗率および高い化学的安定性を備えた金属から、接点電極405は構成される。このような金属から構成することで、製造過程において接点電極405表面に酸化膜が形成されることなく、良好な電気的接続が維持できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】A.P.De Silva et al. , "Motorola MEMS Switch Technology for High Frequency Applications", Microelectromechanical Systems Conference, pp.22-24, 2001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、接点電極405と犠牲膜504との間の密着力が十分ではないため、例えば、可動電極構造体406を形成する前に接点電極405が剥がれ、可動電極構造体406に接点電極405を形成することができないという問題が発生する場合がある。上述したように、接点電極405は、製造過程などにおける酸化膜などの形成を抑制するために、主に、金や白金属から構成している。しかしながらこれらの金属材料は、酸化物を形成しないなど化学的に安定であるため、よく知られているように、犠牲膜504として用いられる有機材料や酸化シリコンなどとの密着力が低い。このため、犠牲膜504の上に安定して接点電極405を形成することが容易ではなく、可動電極構造体406に接点電極405を安定して形成することが容易ではないという問題があった。
【0011】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、可動電極構造体に安定した状態で接点電極が形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る微細可動構造体の製造方法は、基板の上に犠牲膜を形成する犠牲膜形成工程と、接点部が形成される接点部形成領域の外側の犠牲膜の上に密着膜を形成する密着膜形成工程と、接点部形成領域および密着膜の上に接点電極膜を形成する接点電極膜形成工程と、接点部形成領域を含む犠牲膜の上に離間電極構造体を形成する離間電極構造体形成工程と、犠牲膜を除去し、基板の上に支持部で支持された離間電極,および接点部を備える離間電極構造体が形成され、接点部に密着膜および接点電極膜が配置され、露出する接点電極膜からなる接点電極が基板の側に向いて形成された状態とする接点電極形成工程と、接点電極に対向して配置される対向電極を形成する対向電極形成工程とを少なくとも備える。
【0013】
上記微細可動構造体の製造方法において、接点電極膜を形成する前に、接点部形成領域における犠牲膜に凹部を形成する工程を備えるようにしてもよい。
【0014】
また、上記微細可動構造体の製造方法において、密着膜は、リフトオフ法により形成してもよい。
【0015】
また、上記微細可動構造体の製造方法において、密着膜の形成では、密着膜である第1密着膜を形成し、加えて、第1密着膜の上に第2密着膜を形成し、接点電極膜は、第2密着膜の上に形成するようにしてもよい。この場合、第1密着膜および第2密着膜は、真空中で連続して形成するとよい。
【0016】
上記微細可動構造体の製造方法において、密着膜は、遷移金属およびこれらの酸化物の中より選択された材料から構成し、接点電極膜は、白金属および金の中より選択された材料から構成すればよい。また、第1密着膜は、遷移金属およびこれらの酸化物の中より選択された材料から構成し、第2密着膜は、白金属および金の中より選択された材料から構成し、接点電極膜は、白金属および金の中より選択された材料から構成すればよい。
【0017】
また、本発明の微細可動構造体は、基板の上に支持部により支持されて基板と離間して配置される離間電極および接点部を備える離間電極構造体と、接点部に形成された接点電極膜と、接点電極膜に少なくとも一部が接触して形成された密着膜と、露出する接点電極膜からなる接点電極と、接点電極に対向して配置される対向電極とを少なくとも備える。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、密着膜の上に密着膜に接して接点電極膜を形成するようにしたので、可動電極構造体などの基板と離間して配置される離間電極に安定した状態で接点電極が形成できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、本発明の実施の形態1における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図1B】図1Bは、本発明の実施の形態1における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図1C】図1Cは、本発明の実施の形態1における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図1D】図1Dは、本発明の実施の形態1における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図1E】図1Eは、本発明の実施の形態1における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図1F】図1Fは、本発明の実施の形態1における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図1G】図1Gは、本発明の実施の形態1における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す平面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の実施の形態2における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の実施の形態2における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図2C】図2Cは、本発明の実施の形態2における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図2D】図2Dは、本発明の実施の形態2における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図2E】図2Eは、本発明の実施の形態2における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図2F】図2Fは、本発明の実施の形態2における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図2G】図2Gは、本発明の実施の形態2における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図2H】図2Hは、本発明の実施の形態2における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図2I】図2Iは、本発明の実施の形態2における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図2J】図2Jは、本発明の実施の形態2における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施の形態3における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の実施の形態3における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図3C】図3Cは、本発明の実施の形態3における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図4A】図4Aは、微細可動構造体の構成を示す断面図である。
【図4B】図4Bは、微細可動構造体の構成を示す断面図である。
【図4C】図4Cは、微細可動構造体の構成を示す断面図である。
【図5A】図5Aは、微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図5B】図5Bは、微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図5C】図5Cは、微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図5D】図5Dは、微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【図5E】図5Eは、微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0021】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について説明する。図1A〜図1Gは、本発明の実施の形態1における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【0022】
まず、図1Aに示すように、基板101の上に第1電極102および第2電極103を形成する。例えば、スパッタ法などの公知の金属膜形成技術で金属膜を形成し、この金属膜を、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術によりパターニングすることで、第1電極102および第2電極103が形成できる。また、めっき法により、第1電極102および第2電極103を形成してもよい。なお、基板101は、各電極を形成する表面が、絶縁性を備えているものであればよい。
【0023】
次に、図1Bに示すように、基板101の上に、第1電極102および第2電極103を覆う犠牲膜104を形成する。また、後述する可動電極構造体の支持部となる部分が形成される領域の犠牲膜104に基板101に到達する第1開口部104aを形成する。犠牲膜104は、例えば、有機樹脂を塗布することで形成すればよい。また、犠牲膜104は、酸化シリコンから構成してもよい。この場合、例えば、よく知られた化学的気相成長(CVD)法により酸化シリコンを堆積することで、犠牲膜104を形成すればよい。
【0024】
なお、第1開口部104aは、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により犠牲膜104をパターニングすることで形成すればよい。また、有機樹脂を用いる場合、感光性を有する有機樹脂を用いれば、この有機樹脂の膜をフォトリソグラフィ技術でパターニングすることで、第1開口部104aが形成できる。
【0025】
次に、図1Cに示すように、第2電極103の上部の後述する接点部が形成される接点部形成領域において、第2開口部105aを有する密着膜105を犠牲膜104の上に形成する。密着膜105は、上述した接点部形成領域より広く形成する。密着膜105は、例えば、チタン、クロム、ジルコニウム、タンタルなどの遷移金属、およびこれらの酸化物から構成することができる。例えば、これらの材料の膜をスパッタ法などにより堆積して形成し、形成した膜を公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術によりパターニングすることで、密着膜105が形成できる。また、いわゆるリフトオフ法により密着膜105を形成してもよい。上述した材料で構成された密着膜105は、犠牲膜104に対して高い密着性(密着力)を備えている。
【0026】
次に、図1Dに示すように、第2開口部105aを覆って密着膜105の上に接点電極膜106を形成する。接点電極膜106は、例えば、ルテニウム,ロジウム,パラジウム,オスミウム,イリジウム,および白金などの白金属の金属および金などから構成することができる。例えば、これらの材料の膜を、スパッタ法および蒸着法などの成膜技術とリフトオフ法とによりパターニングすることで、接点電極膜106が形成できる。
【0027】
接点電極膜106は、第2開口部105aでは、犠牲膜104に接触して形成されているが、この周囲では、密着膜105が犠牲膜104との間に設けられていることになる。従って、密着膜105が形成されている箇所では、接点電極膜106は、密着膜105に接触して形成されている。密着膜105は、接点電極膜106に対して高い密着性(密着力)を備えている。また、前述したように、密着膜105は、犠牲膜104に対しても高い密着性を有している。また、第2開口部105aにおける接点電極膜106は、密着膜105の上の接点電極膜106と連続して一体に形成されている。この結果、接点電極膜106は、密着膜105を介することで、犠牲膜104の上に剥離などが抑制された状態で安定して形成された状態となる。このため、後述する可動電極構造体の形成などの以降の工程で、接点電極膜106が犠牲膜104より剥がれるなどの問題が抑制されるようになる。
【0028】
次に、図1Eに示すように、第1開口部104aを充填して接点電極膜106が形成されている接点部形成領域の上に連続する可動電極構造体107を形成する。例えば、よく知られためっき法を用いることで所望とする領域に選択的に金属膜を形成することで、可動電極構造体107を形成すればよい。
【0029】
以上のように可動電極構造体107を形成した後、犠牲膜104を除去すれば、図1Fに示すように、基板101の上に支持部171で支持された片持ち梁状の可動電極構造体107が形成される。可動電極構造体107は、図1Gの平面図にも示すように、支持部171,可動電極172,および接点部173を備え、可動電極172が、梁部174で支持部171に連結している。なお、図1Fは、図1GのXX’線の断面を示している。
【0030】
また、可動電極172が第1電極102の上に離間して配置されている。また、接点部173の第2電極103との対向面に、接点電極膜106および密着膜105が形成されている。また、密着膜105の第2開口部105aに露出する接点電極膜106により、接点電極108が構成される。また、接点電極108は、第2電極103の上に離間して配置される。
【0031】
上述したように、本実施の形態では、まず、基板の上に第1電極および第2電極を形成し、次に、基板の上に第1電極および第2電極を覆う犠牲膜を形成し、次に、可動電極の支持部が形成される領域の犠牲膜に基板に到達する第1開口部を形成し、次に、第2電極の上部の接点部が形成される接点部形成領域より広く接点部形成領域に第2開口部を有する密着膜を犠牲膜の上に形成し、第2開口部を覆って密着膜の上に接点電極膜を形成し、第1開口部を充填して接点部形成領域の上に連続する可動電極構造体を形成し、この後、犠牲膜を除去し、支持部,可動電極,および接点部を備える可動電極構造体が支持部で基板の上に支持され、可動電極が第1電極の上に離間して配置され、接点部に密着膜および接点電極膜が配置され、密着膜の第2開口部で露出する接点電極膜からなる接点電極が第2電極の上に離間して配置された状態とするようにしている。このようにした本実施の形態によれば、可動電極構造体に安定した状態で接点電極が形成できるようになる。
【0032】
なお、上述しように形成された微細可動構造体は、可撓性を有する梁部174の弾性変形により、可動電極172および接点部173は、基板101の側に変位可能とされている。例えば、可動電極172と第1電極102との間に電圧を印加すると、静電引力によって可動電極172が第1電極102の側に引き寄せられる。この力により梁部174が変形し、接点電極108が第2電極103に接する。この接触によって、例えば、第2電極103と可動電極172とが導通し、スイッチがオン状態となる。
【0033】
一方、可動電極172と第1電極102との間への電圧の印加を停止すると、梁部174の復元力によって可動電極172は元の位置に戻り、接点電極108と第2電極103が離間する。これにより、第2電極103と可動電極172との接続が解消され、スイッチはオフ状態となる。このようにして、上述した微細可動構造体において、スイッチとしての機能が実現される。
【0034】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図2A〜図2Jは、本発明の実施の形態2における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。
【0035】
まず、図2Aに示すように、基板201の上に、シード層202を形成する。基板201は、表面に酸化膜が形成されているシリコン基板であればよい。シード層202は、めっき法で金蔵膜を形成するために形成するものであり、例えば、スパッタ法および蒸着法などにより、チタンおよび金などの金属を堆積することで形成すればよい。シード層202は、例えば、層厚0.1μmのチタン層と層厚0.1μm程度の金層との積層構造とすればよい。
【0036】
次に、図2Bに示すように、めっき法により、金属パターン204および金属パターン205を形成する。例えば、公知のフォトリソグラフィ技術により、開口部203aおよび開口部203bを備えるレジストパターン203を、シード層202の上に形成する。レジストパターン203は、膜厚1μm程度に形成すればよい。この後、開口部203aおよび開口部203bに露出するシード層202の上に、よく知られためっき法により金膜を膜厚0,5μm程度に堆積することで、金属パターン204および金属パターン205を形成すればよい。
【0037】
次に、レジストパターン203を除去し、引き続いて、金属パターン204および金属パターン205をマスクとしてシード層202を選択的にエッチング除去することで、図2Cに示すように、基板201の上に第1電極241および第2電極251を形成する。例えば、ヨウ素,ヨウ化アンモニウム,水,およびエタノールからなるエッチング液を用いることで、シード層202の上層の金をエッチングできる。このエッチングでは、金属パターン204および金属パターン205もエッチングされるが、エッチング量が少ないため、第1電極241および第2電極251の形成には影響を与えない。また、フッ化水素水溶液によるエッチング液を用いることで、シード層202の下層のチタンをエッチングできる。
【0038】
次に、図2Dに示すように、基板201の上に、第1電極241および第2電極251を覆う犠牲膜206を形成する。また、後述する可動電極構造体の支持部となる部分が形成される領域の犠牲膜206に基板201に到達する開口部(第1開口部)206aを形成する。犠牲膜206は、例えば、有機樹脂を塗布することで形成すればよい。有機樹脂としては、ポリアミド、ポリアミド酸、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾールの前駆体などのベース樹脂に、ポジ型感光剤を添加したものを用いればよい。ポリベンゾオキサゾールをベース樹脂とするポジ型の感光性を有する樹脂としては、住友ベークライト株式会社製の「CRC8300」がある。
【0039】
このような樹脂を、回転塗布法により塗布して塗布膜を形成し、形成した塗布膜を公知のリソグラフィ技術によりパターニングすることで、犠牲膜206を形成し、また、犠牲膜206に開口部206aが形成できる。塗布膜は、例えば、膜厚1μm程度に形成すればよい。
【0040】
次に、図2Eに示すように、開口部206aの内部を含む犠牲膜206の上に、第1密着膜207を形成し、第1密着膜207の上に第2密着膜208を形成する。
【0041】
第1密着膜207は、例えば、蒸着法やスパッタ法によりチタンを堆積することで形成する。第1密着膜207は、チタンに限るものではなく、チタン、クロム、ジルコニウム、タンタルなどの遷移金属、およびこれらの酸化物などを用いることができる。第1密着膜207の膜厚は0.1μm程度とすればよい。
【0042】
第2密着膜208は、例えば、蒸着法やスパッタ法により金を堆積することで形成する。第2密着膜208は、金に限るものではなく、ルテニウム,ロジウム,パラジウム,オスミウム,イリジウム,および白金などの白金属などの金属材料を用いることができる。第2密着膜208の膜厚は0.1μm程度とすればよい。
【0043】
ここで、第1密着膜207は、犠牲膜206との密着力に優れており、一方、第2密着膜208は、化学的安定に優れ、かつ以降の工程で形成する接点電極膜との密着力に優れている。犠牲膜206との密着性に優れる第1密着膜207は、化学的安定性が不十分であるため、大気中に晒されることによる酸化などの反応などにより、第2密着膜208との密着力が低下する場合がある。このため、第2密着膜208は、第1密着膜207の形成に引き続いて真空中で連続して堆積するとよい。第2密着膜208は、化学的に安定であるため、例えば、大気などの酸化雰囲気に晒しても、接点電極膜との高い密着力が維持できる。
【0044】
次に、図2Fに示すように、第2密着膜208の上に、開口部209aを備えるレジストパターン209を形成する。開口部209aは、第2電極251の上部にあたる接点部形成領域に形成する。接点部形成領域は、後述するように、可動電極構造体の接点部が形成される領域である。また、レジストパターン209をマスクとし、第1密着膜207および第2密着膜208を選択的にエッチング除去し、開口部(第2開口部)207aおよび開口部208aを形成する。本実施の形態では、第2密着膜208から第1密着膜207を貫通して犠牲膜206に到達する開口部を形成することで開口部207aおよび開口部208aを形成する。
【0045】
第2密着膜208を金から構成した場合、ヨウ素,ヨウ化アンモニウム,水,およびエタノールからなるエッチング液を用いることで、第2密着膜208をエッチングできる。また、第1密着膜207をチタンから構成した場合、フッ化水素水溶液によるエッチング液を用いることで、第1密着膜207をエッチングできる。
【0046】
次に、レジストパターン209を除去した後、図2Gに示すように、第1密着膜207および第2密着膜208をマスクとして犠牲層206を選択的にエッチングし、凹部206bを形成する。凹部206bは、第2電極251の上部にあたる接点部形成領域に形成する。
【0047】
例えば、フッ化炭素および酸素よりなる混合ガスのプラズマ種としたドライエッチングにより、犠牲膜206を選択的にエッチングすることができる。エッチング量は、0.1μm程度とし、深さ0.1μm程度の凹部206bを形成する。この処理により、開口部207aにおける金属材料の残渣を除去できる。開口部207aにおける犠牲膜206上の金属材料の残渣は、後述する接点電極の接点に悪影響を与えるため、上述したように除去しておくとよい。
【0048】
次に、図2Hに示すように、第2密着膜208の上に、接点電極膜210を形成する。
接点電極膜210は、凹部206bも覆うように形成する。接点電極膜210は、例えば、蒸着法およびスパッタ法などにより、金を堆積して形成すればよい。接点電極膜210は、金に限るものではなく、ルテニウム,ロジウム,パラジウム,オスミウム,イリジウム,および白金などの白金属などの金属材料を用いればよい。また、接点電極膜210は、膜厚0.1μm程度に形成すればよい。
【0049】
上述したように形成する接点電極膜210は、凹部206b以外の領域では第2密着膜208の上に形成され、ほとんどの領域が第2密着膜208に接して形成される。前述したように、第1密着膜207は、犠牲膜206と高い密着性を有して密着し、第2密着膜208は、第1密着膜207と高い密着性を有して密着している。また、同様の材料から構成されている接点電極膜210と第2密着膜208とも、高い密着性を有して密着している。また、凹部206bの上の接点電極膜210は、第2密着膜208の上の接点電極膜210と連続して一体に形成されている。このため、後述する可動電極構造体の形成などの以降の工程で、接点電極膜210が剥がれるなどの問題が抑制されるようになる。
【0050】
次に、図2Iに示すように、開口部206aを充填して凹部206bが形成されている接点部形成領域の上に連続する可動電極構造体212を形成する。例えば、まず、接点電極膜210の上に、開口部211aを備えるレジストパターン211を形成する。次いで、開口部211aに露出している接点電極膜210をシード層として金をめっきすれば、可動電極構造体212が形成できる。このとき、金のめっき膜は、膜厚0.5μm程度とすればよい。
【0051】
以上のようにして可動電極構造体212を形成した後、レジストパターン211を除去し、可動電極構造体212をマスクとして接点電極膜210,第2密着膜208,および第1密着膜207を選択的に除去する。これにより、接点電極膜210,第2密着膜208,および第1密着膜207は、可動電極構造体212の下部にのみ形成された状態となる。この後、犠牲膜206を除去すれば、図2Jに示すように、基板201の上に支持部213で支持された片持ち梁状の可動電極構造体212が形成される。犠牲膜206は、例えば、オゾン雰囲気で250〜300℃に加熱することで除去可能である。
【0052】
可動電極構造体212は、支持部213,可動電極214,および接点部215を備え、可動電極214が、梁部216で支持部213に連結している。例えば、可動電極214の部分は、幅2μm程度に形成されている。また、可動電極構造体212は、支持部213から接点部215にかけて、例えば、長さ5μm程度に形成されている。また、可動電極214が第1電極241の上に離間して配置されている。また、接点部215において、第1密着膜207の開口部(第2開口部)207aに露出する接点電極膜210により、接点電極220が構成される。また、接点電極220は、第2電極251の上に離間して配置される。
【0053】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、可動電極構造体212に安定した状態で接点電極220が形成できるようになる。
【0054】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図3A〜図3Cは、本発明の実施の形態3における微細可動構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す断面図である。本実施の形態は、図2E,図2F,図2Gを用いて説明した実施の形態2における工程を他の方法で実施した変形例である。
【0055】
まず、図2Dを用いて説明したように、基板201の上に、第1電極241および第2電極251を覆う犠牲膜206を形成する。この後、本実施の形態では、この次に、図3Aに示すように、第2電極251の上部にあたる接点部形成領域に、レジストパターン301を形成する。
【0056】
次に、図3Bに示すように、開口部206aの内部を含む犠牲膜206の上に、第1密着膜207を形成し、第1密着膜207の上に第2密着膜208を形成する。これらの膜は、前述したように、スパッタ法や蒸着法により形成すればよい。第1密着膜207および第2密着膜208は、レジストパターン301の上にも形成される。
【0057】
次に、レジストパターン301を除去すれば、図3Cに示すように、第1密着膜207および第2密着膜208に、開口部207aおよび開口部208aが形成できる。本実施の形態では、犠牲膜206に凹部を形成する必要はない。この後、凹部の形成以外は、図2H〜図2Jを用いて説明した前述した実施の形態2と同様にする。本実施の形態では、上述するように、いわゆるリフトオフ法により、開口部207aおよび開口部208aを備える状態で、第1密着膜207および第2密着膜208を形成する。このため、犠牲膜206の上に接点部形成領域には、密着膜を構成する金属材料が堆積されることがなく、これらの材料の残渣が残ることがない。このため、本実施の形態では、凹部を形成する必要がない。
【0058】
上述した実施の形態においても、前述した実施の形態と同様に、可動電極構造体212に安定した状態で接点電極220が形成できるようになる。
【0059】
ところで、上述では、可動電極に接続する電極(第2電極103)を、可動電極の下の基板の上に形成したが、これに限るものではない。例えば、基板側から見て可動電極より上に可動電極に接続する配線などの電極(離間電極構造体)が配置されていてもよい。この場合、可動電極より上の電極(上部固定電極)の、基板側の面(下面)に接点電極を形成することになる。この場合、可動電極の上の上部固定電極は、犠牲膜を用いて形成するため、前述同様に、上部固定電極の下面に接点電極を形成しようとすると、犠牲膜の上に接点電極となる金属膜を形成することになり、前述同様に、密着性の問題が発生する。
【0060】
これに対し、上述した実施の形態と同様に、上部固定電極の下面の位置の犠牲膜上に、密着膜を介して接点電極膜を形成して接点電極を形成すれば、密着性の問題を解消することができる。このように、本発明は、犠牲膜の上に形成する電極の下面に接点電極を形成する構成に適用することで、上述した効果を奏するものである。
【0061】
従って、本発明の微細可動構造体の製造方法は、次に示す工程を備えることが特徴となる。
【0062】
基板の上に犠牲膜を形成する犠牲膜形成工程と、接点部が形成される接点部形成領域の外側の犠牲膜の上に密着膜を形成する密着膜形成工程と、接点部形成領域および密着膜の上に接点電極膜を形成する接点電極膜形成工程と、接点部形成領域を含む犠牲膜の上に離間電極構造体を形成する離間電極構造体形成工程と、犠牲膜を除去し、基板の上に支持部で支持された離間電極,および接点部を備える離間電極構造体が形成され、接点部に密着膜および接点電極膜が配置され、露出する接点電極膜からなる接点電極が基板の側に向いて形成された状態とする接点電極形成工程と、接点電極に対向して配置される対向電極を形成する対向電極形成工程とを少なくとも備える。
【0063】
また、上述した製造方法で形成される微細可動構造体は、基板の上に支持部により支持されて基板と離間して配置される離間電極および接点部を備える離間電極構造体と、接点部に形成された接点電極膜と、接点電極膜に少なくとも一部が接触して形成された密着膜と、露出する接点電極膜からなる接点電極と、接点電極に対向して配置される対向電極とを少なくとも備えるものとなる。
【0064】
ここで、前述した実施の形態1では、可動電極構造体107が上記離間電極構造体に対応し、接点部173が上記離間電極に対応し、第2電極103が上記対向電極に対応している。また、実施の形態1では、開口部(第2開口部)を備えて密着膜を形成し、接点電極膜の周囲のほぼ全域が、密着膜に接触する構成としているため、犠牲膜からの接点電極膜の剥離が、より効果的に抑制できるようになる。
【0065】
以上に説明したように、本発明によれば、犠牲膜の上に密着膜を形成し、密着膜と一部が接触するようにして接点電極膜を形成することで、接点電極を形成した。この結果、電気特性や化学的安定性に優れた接点電極を形成するための接点電極膜を、犠牲膜の上に安定性して形成することが可能となり、低抵抗で安定な接点電極を備えた微細可動構造体を作製することができるようになる。
【0066】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、支持部は、離間電極構造体(可動電極)と一体に形成する必要はなく、別体に形成してもよい。例えば、支持部を予め形成しておき、この状態で犠牲膜を形成し、犠牲膜の上に、形成されている支持部に連結する離間電極構造体を形成してもよい。
【0067】
また、前述した実施の形態1において、接点部形成領域(第2開口部105a)の犠牲膜104に、前述した実施の形態2と同様に、凹部を形成してもよい。これは、基板側から見て可動電極より上に可動電極に接続する電極が配置されている形態においても適用できる。例えば、可動電極上部に配置する電極を形成するための犠牲膜の接点ぶ形成領域に凹部を形成すればよい。
【0068】
また、実施の形態1では、第2開口部105aを備えて密着膜105を形成し、接点電極膜106の周囲のほぼ全域が、密着膜105に接触するようにしたが、これに限るものではない。例えば、接点電極となる領域の周囲の3箇所に密着膜を形成し、接点部形成領域の周囲の3箇所で接点電極膜と密着膜が接触することで、接点電極膜の剥離を抑制するようにしてもよい。
【0069】
また、例えば、第1電極、第2電極、および可動電極構造体などを金から構成したが、これに限定されるものではない。これらの構造体は、アルミニウム,ニッケル,銅,銀などの金属材料、シリコン,ポリシリコン,シリコンゲルマニウムなどの半導体材料、シリコン酸化膜,シリコン窒素膜などの絶縁材料などを用いるようにしてもよい。これらの材料を用い、公知の微細加工技術を用いて加工すれば、各構造体を形成することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
101…基板,102…第1電極,103…第2電極,104…犠牲膜,104a…第1開口部,105…密着膜,105a…第2開口部,106…接点電極膜,107…可動電極構造体,171…支持部,172…可動電極,173…接点部,174…梁部,108…接点電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に犠牲膜を形成する犠牲膜形成工程と、
接点部が形成される接点部形成領域の外側の前記犠牲膜の上に密着膜を形成する密着膜形成工程と、
前記接点部形成領域および前記密着膜の上に接点電極膜を形成する接点電極膜形成工程と、
前記接点部形成領域を含む前記犠牲膜の上に離間電極構造体を形成する離間電極構造体形成工程と、
前記犠牲膜を除去し、前記基板の上に支持部で支持された前記離間電極,および前記接点部を備える前記離間電極構造体が形成され、前記接点部に前記密着膜および前記接点電極膜が配置され、露出する前記接点電極膜からなる接点電極が前記基板の側に向いて形成された状態とする接点電極形成工程と、
前記接点電極に対向して配置される対向電極を形成する対向電極形成工程と
を少なくとも備えることを特徴とする微細可動構造体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の微細可動構造体の製造方法において、
前記接点電極膜を形成する前に、前記接点部形成領域における前記犠牲膜に凹部を形成する工程を備えることを特徴とする微細可動構造体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の微細可動構造体の製造方法において、
前記密着膜は、リフトオフ法により形成することを特徴とする微細可動構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細可動構造体の製造方法において、
前記密着膜の形成では、
前記密着膜である第1密着膜を形成し、
加えて、前記第1密着膜の上に第2密着膜を形成し、
前記接点電極膜は、前記第2密着膜の上に形成する
ことを特徴とする微細可動構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の微細可動構造体の製造方法において、
前記第1密着膜および前記第2密着膜は、真空中で連続して形成することを特徴とする微細可動構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細可動構造体の製造方法において、
前記密着膜は、遷移金属およびこれらの酸化物の中より選択された材料から構成し、
前記接点電極膜は、白金属および金の中より選択された材料から構成することを特徴とする微細可動構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項4または5記載の微細可動構造体の製造方法において、
前記第1密着膜は、遷移金属およびこれらの酸化物の中より選択された材料から構成し、
前記第2密着膜は、白金属および金の中より選択された材料から構成し、
前記接点電極膜は、白金属および金の中より選択された材料から構成することを特徴とする微細可動構造体の製造方法。
【請求項8】
基板の上に支持部により支持されて前記基板と離間して配置される離間電極および接点部を備える離間電極構造体と、
前記接点部に形成された接点電極膜と、
前記接点電極膜に少なくとも一部が接触して形成された密着膜と、
露出する前記接点電極膜からなる接点電極と、
前記接点電極に対向して配置される対向電極と
を少なくとも備えることを特徴とする微細可動構造体。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【公開番号】特開2012−86315(P2012−86315A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235289(P2010−235289)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】