説明

微細構造を製造するための方法及び装置

【課題】中間担体1を使用して、材料6を基材7上に局所的に堆積させるための方法及び装置を提供すること。
【解決手段】中間担体1からの材料6の局所的堆積が、放射線によるエネルギー印加によって行われる。中間担体1は微細構造を備え、この微細構造によって材料6が中間担体1から基材7上に微細構造化されて転写される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造化された中間担体(マスク)を使用して、材料を基材上に微細構造化して局所的に堆積させるための方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、材料を基材上に微細構造化して局所的に堆積させるための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
材料を基材上に微細構造化して堆積させることは、今日でも大変な難題である。コスト低減のために製造において高いスループットを求める場合は特にそうである。したがって、所望の最小構造幅に応じて、スループットを最大にするためのさまざまなリソグラフィ法が開発された。例えば最小構造幅が1〜10μm向けのレーザアブレーションは、1×10−4/s〜1×10−3/sのスループットで使用される。これに対して、最小構造幅10〜50μm及び1×10m/sから1×10/sのスループットには、オフセット印刷が使用される。
【0004】
さらに有機材料では、OLED製造の枠内で、さまざまな構造化方法が公知である。画像の再現性が優れていること並びに技術的構造が簡単なことから、有機発光ダイオード(OLED)をディスプレイに使用することが、LCD又はプラズマディスプレイの後続技術と見なされている。例えばLCDは一般的に、1つの白色光源と、光スイッチとしての液晶からなる層と、1つの後置されたカラーフィルタから構成されている。これに対してOLEDはそれ自体が特定の色で発光し、外部光源もカラーフィルタも必要としない。
【0005】
湾曲可能な支持材料(可撓性の基材、フィルム)を使用することにより、OLEDは、巻くことが可能で軽量なディスプレイを製造する可能性を開く。
【0006】
厚さが数百nmと僅かであるため、OLEDは、小型で携行可能な機器、例えばノートPC、携帯デバイス及びMP3プレーヤに容易に使用することができる。
【0007】
別の利点は、LCDと比べてOLEDディスプレイの回路速度が何倍も高いことであり、このため高速のビデオシーケンスのリアリスティックな再生が可能になる。OLEDディスプレイ及びOLEDテレビ機器は、体積が僅かで重量が非常に軽いので、運搬コストの点でも現在のLCD及びプラズマ機器よりもはるかに良い成果をあげる。
【0008】
いわゆる「低分子」(分子量が約100〜1000uの有機材料)を有機材料としてOLEDに使用する場合は、それらの低分子がほとんどの場合に酸素及び水に対して非常に反応しやすいため、半導体エレクトロニクスにおいて典型的な構造化方法、特に光リソグラフィを使用することができないことに留意されたい。
【0009】
SMOLED(Small Molecule Organic Light Emitting Diode 低分子有機発光ダイオード)を備える小型ディスプレイの大量生産には、光リソグラフィの代替方法としてシャドウマスクが使用される。その例は、携帯電話、MP3プレーヤ、又はパームトップである。その場合、製造コストが高いこと、保守に手間がかかること、並びに大型のディスプレイ又は一般的に基材へのスケーリングが技術的に未解決(基材とマスクの熱膨張率に差があること、非常に薄いマスクが湾曲することなど)であることが欠点である。大きな基材へスケーリングするのが困難なことが、コンピュータディスプレイ又はテレビ機器の大量生産が未だ存在しない主な理由である。
【0010】
米国特許出願公開第2009/0038550号(特許文献1)には、大面積の有機層を局所的に蒸発させることによる、小さな熱源を含む方法が記載されている。この方法は、パッシブマトリクスディスプレイのように構成されているマスクからなる。このマスクの製造は、熱源のために電気導線が必要なため非常に煩雑である。特に、蒸発には比較的高いエネルギーが必要であり、拡散過程が絶縁体又は電気抵抗の特性を変化させ、あるいは熱膨張率が異なるためにフィルムの解離をもたらすので、高温の場合の信頼性が重大であると判断される。前述の、ポリアミドのような材料は比較的低い蒸発温度でしか使用することができない。
【0011】
有機ベーパージェット・プリンティング(OVJP)(M Shtein他、J. Appl. Phys. 96、4500 (2004)を参照)(非特許文献1)の使用も公知であり、この場合は、真空中で1つ又は複数の小さな蒸気ノズルが、インクジェットプリンタと同じように基材のごく近傍で移動する。
【0012】
例えばLITI(Laser Induced Thermal Imaging レーザ熱転写法)のような別の方法は、これに関連する技術的な問題と、高いコストのために、今の時点では大量生産には適さないことが明らかになっている。
【0013】
特にレーザアブレーションは電子ビームプリンタに類似する走査方法であるが、この方法は光リソグラフィのような多くの他の並存する印刷方法に比べて達成可能なスループットがはるかに少ない。
【0014】
米国特許出願公開第2007/0151659号(特許文献2)は、LITI処理による印刷方法を使用した、基材上に構造を作製するための走査方法を開示している。
【0015】
さらに、OLED製造において有機材料を微細構造化して堆積させるための、レーザに基づく類似の方法が公知である。
【0016】
したがって、上述のLITI法と並んで、RIST法(Radiation Induced Sublimation Transfer 放射誘起昇華転写法)(Non-Contact OLED Color Patterning by Radiation-Induced Sublimation Transfer (RIST)、M. Boroson、Eastman Kodak Co.、Rochester、NY、USA、SID International Symposium 2005)(非特許文献2)及びLILT法 (Laser Induced Local Transfer レーザ誘起局所転写法)(M. Kroeger、Device and Process Technology for Full-Color Active-Matrix OLED Displays、71〜102ページ、Cuvillier-Verlag、(19. November 2007)(非特許文献3)の分野でもレーザが使用される。
【0017】
色素拡散パターニングの分野でもレーザが使用される(Patterned dye diffusion using transferred photoresist for polymer OLED displays、Proceedings Vol. 4105、Organic Light-Emitting Materials and Devices IV、59〜68ページ(非特許文献4)、Three-color organic light-emitting diodes patterned by masked dye diffusion、Applied Physics Letters、74 (13)、1913〜1915ページ(非特許文献5))。
【0018】
したがって、「低分子」をベースとするOLED、OSC(Organic Solar Cells 有機太陽電池)及び有機TFT(Thin Film Transistors 薄膜トランジスタ)に使用できる、低コストのリソグラフィ法を開発することに、基本的に大きな関心が向けられている。さらに、開発される方法は、大量生産での使用を可能にするために高いスループットを有していなければならない。その際に、開発される方法が、有機材料のみならず無機材料をも基材上に構造化して堆積させることを可能にすることが極めて望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0038550号
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0151659号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】M Shtein他、J. Appl. Phys. 96、4500 (2004)
【非特許文献2】Non-Contact OLED Color Patterning by Radiation-Induced Sublimation Transfer (RIST)、M. Boroson、Eastman Kodak Co.、Rochester、NY、USA、SID International Symposium 2005
【非特許文献3】M. Kroeger、Device and Process Technology for Full-Color Active-Matrix OLED Displays、71〜102ページ、Cuvillier-Verlag、(19. November 2007)
【非特許文献4】Patterned dye diffusion using transferred photoresist for polymer OLED displays、Proceedings Vol. 4105、Organic Light-Emitting Materials and Devices IV、59-68ページ
【非特許文献5】Three-color organic light-emitting diodes patterned by masked dye diffusion、Applied Physics Letters、74 (13)、1913〜1915ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の課題は、公知の製造方法の欠点を克服する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この課題は請求項1に記載の方法によって解決される。有利な変形形態は関連する従属項に示されている。
【0023】
さらなる課題は請求項17による装置によって解決される。有利な変形形態は関連する従属項に示されている。
【0024】
本発明によれば、材料を基材上に局所的に堆積させることは中間担体を使用して行われる。この場合、中間担体(マスク)は微細構造をもつ。転写される材料(転写材料)がこの微細構造上に全面に堆積される。続いて、中間担体から基材上に、材料の一部分が、放射線によるエネルギー印加によって転写される。その際、材料は、中間担体上の微細構造に対応して中間担体から基材へ転写される。本発明において、転写とは、中間担体から基材上への材料の移動と言う意味に理解され、その際に、例えば蒸発及び堆積、接触スタンピングといった移動の種類は、材料が微細構造に対応して基材上に転写される限りにおいて重要ではない。
【0025】
本発明の一実施形態では、微細構造化された中間担体からの材料の局所的堆積が、放射線によるエネルギーの印加によって行われ、その際、中間担体上の材料が加熱され、蒸発し、続いて基材上に微細構造化されて堆積される。この場合、中間担体上の微細構造は、放射線を反射する領域及び吸収する領域の形で形成され、材料の蒸発は中間担体の吸収領域で局所的に行われる。蒸発は放射線の形でのエネルギー印加によって行われる。
【0026】
本発明の一実施形態では、微細構造化された中間担体からの局所的蒸発は、転写材料とは反対側からの中間担体への放射線によるエネルギー印加によって行われ、その際に、微細構造は放射線反射領域及び吸収領域から形成され、蒸発は中間担体の放射線吸収領域で局所的に起こる。この場合、反射領域及び吸収領域によって形成される微細構造は、中間担体の基材に向いた側に配置することも、基材とは反対の側に配置することもできる。いずれにせよ、微細構造化された表面の反射領域内では放射線によるエネルギー印加が阻止され、これにより中間担体上に堆積された材料が局所的に蒸発することが妨げられる。微細構造の吸収領域内でのみ局所的蒸発が生じる。この結果、転写材料が、微細構造が反転した形で基材上に堆積され、これによりネガスタンプ効果(negativer Stempeleffekt)が得られる。
【0027】
本発明のさらなる実施形態では、まず微細構造化された中間担体が作製される。その際に、微細構造化された放射線反射層は中間担体上の基材に向いた側に堆積される。中間担体の表面が部分的に被覆されるため、溝と隆起部を有する微細構造が生じ、隆起部は放射線反射層によって形成される。この放射線反射層及び被覆されていない微細構造化された表面上に、放射線吸収層の第2の堆積が行われ、任意選択でこの層はさらに保護層で被覆される。微細構造化された中間担体が完成した後に、続いて保護層を、堆積すべき材料で被覆する。最後に、中間担体から基材上に転写すべき材料の局所的蒸発が、中間担体の被覆された側とは反対側からの放射線によるエネルギー印加によって行われる。このエネルギー印加によって、微細構造の非反射領域で、転写材料の局所的加熱及び蒸発が生じる。基材への蒸着を実施した後、微細構造化された中間担体は、さらなる蒸着ステップに供することができる。
【0028】
本発明の一実施形態では、微細構造化された中間担体からの局所的蒸発は、転写材料がある側とは反対側から中間担体への放射線によるエネルギー印加によって行われ、この場合、微細構造は放射線反射領域から形成され、微細構造化された中間担体からの放射線吸収材料の局所的な蒸発が起こり、これによって、有機材料が基材上に微細構造に対応して位置合わせして堆積される。
【0029】
本発明の一実施形態では、微細構造化された中間担体からの局所的蒸発は、転写材料とのある側とは反対側からの中間担体への放射線によるエネルギー印加によって行われ、この場合、微細構造は放射線吸収領域から形成され、微細構造化された中間担体からの転写材料の局所的な蒸発が起こり、これによって基材上に有機材料が、微細構造に対応して位置合わせして堆積される。
【0030】
本発明の一実施形態では、中間担体からの局所的蒸発は、転写材料がある側とは反対側からの中間担体への放射線による微細構造化されたエネルギー印加、例えばレーザビーム又はキセノン閃光管によって行われ、微細構造化された放射に対応して、中間担体からの転写材料の局所的蒸発が生じ、これによって基材上に材料が微細構造に対応して位置合わせして堆積される。この場合、転写材料は放射線吸収層の上に堆積される。あるいは、材料が放射吸収性であってもよい。
【0031】
本発明の一実施形態では、中間担体上に有機材料を堆積する前に、保護層の堆積が行われる。この場合、この保護層は透明であると同時に、堆積される有機材料に対して化学的に不活性であり、これにより中間担体上で、有機材料と放射線反射層又は放射線吸収層との間で起こる可能性のある反応が阻止される。
【0032】
放射線吸収層又は放射線反射層が、転写すべき材料に対して化学的に不活性である場合は、このような保護層は無くてもよい。例えば放射線吸収層がSiC又はCrNからなる層である場合がそうである。
【0033】
本発明の一実施形態では、転写材料を基材上に堆積した後に残留した材料を、その表面の材料が被覆された側に配置された加熱装置によって加熱し、蒸発する。この結果、均一な蒸気分布が生じ、最終的に、微細構造化された中間担体上に、蒸発した材料が均一に堆積する。これにより、微細構造化された中間担体の表面全体にわたって、材料の新しい層が実現される。この後、この層は、基材のさらなる被覆に使用可能である。これにより、使用されたすべての材料が基材の被覆のために利用される。
【0034】
本発明のさらなる実施形態では、表面の転写材料で被覆された側に配置される加熱装置が、熱放射器として構成される。
【0035】
本発明のさらなる実施形態では、中間担体の表面の非反射領域に残留した材料を、中間担体を加熱することによって加熱し、蒸発する。中間担体の冷却後、蒸発した材料は中間担体上に均一な層として堆積される。
【0036】
本発明のさらなる実施形態では、放射線源の放射線印加がシャッタによって調節される。
【0037】
本発明のさらなる実施形態では、中間担体の微細構造が、放射線反射層を構造化されて堆積させることによって形成される。
【0038】
本発明のさらなる実施形態では、放射線反射層の構造化された堆積がリソグラフィによって行われる。
【0039】
さらなる実施形態では、中間担体は加熱可能にできている。
【0040】
さらなる実施形態では、中間担体は冷却装置によって冷却される。
【0041】
本発明のさらなる実施形態では、微細構造化された中間担体が微細構造化された円筒として作られる。
【0042】
本発明のさらなる実施形態では、円筒として作られた微細構造化された中間担体が、連続被覆設備の真空チャンバ内に配置され、真空チャンバは材料の加熱及び蒸発のための蒸発装置を備え、さらに基材を蒸発装置から隔離する遮蔽部が設けられており、この遮蔽部は微細構造化された中間担体を囲う。
【0043】
本発明のさらなる実施形態では、この遮蔽部は加熱可能にできている。
【0044】
本発明のさらなる実施形態では、放射線源が、微細構造化された中間担体の内部に配置される。
【0045】
本発明のさらなる実施形態では、放射線源が赤外線源として構成される。
【0046】
本発明のさらなる実施形態では、放射線源が光源として構成される。
【0047】
本発明のさらなる実施形態では、光源がハロゲンランプとして構成される。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、光源が閃光管、例えばキセノン閃光管として構成される。これによって有利なことに大きなエネルギー量が短時間で中間担体上に伝達され、したがって最小構造幅が縮小され、かつ基材の熱負荷が低減される。
【0049】
本発明のさらなる実施形態では、放射線源がマイクロ波源として構成される。
【0050】
本発明のさらなる実施形態では、転写材料が有機材料、例えば低分子(「Small Molecules」)の部類の有機材料である。
【0051】
本発明のさらなる実施形態では、転写材料が無機材料、例えば金属である。これは、有機層を備える構成要素の製造にとって特に有利であり、この場合、基材上に既に堆積された有機材料上に、金属の堆積によって接点層を形成することができる。
【0052】
本発明のさらなる実施形態では、RGBディスプレイの製造のために、第1のステップで、緑色に発光する有機材料が上述の方法で堆積される。RGBディスプレイを完全なものにするために、同じ方法が、赤色及び青色に発光する有機材料の場合にも同様に繰り返される。色の順序は任意に選択可能である。
【0053】
本発明のさらなる実施形態では、材料の堆積中に、中間担体上の微細構造の隆起部の領域で中間担体を直接載置することにより、基材を接触させる。これは、微細構造のために中間担体上に隆起部及び溝が形成され、それにより、中間担体上に基材を載置することによる接触の際に、隆起部のために閉じられた蒸発チャンバが形成される場合には、特に有利である。このような蒸発チャンバの形成によって、基材及び中間担体によって形成される蒸発チャンバの全面にわたって基材が完全に被覆されることが保証される。さらに中間担体の材料の蒸発が生じない場所から中間担体が載置された領域の基材へ材料が転写されることが回避される。
【0054】
本発明のさらなる実施形態では、基材は、堆積中に、照射の際に蒸発する中間担体上の材料とは接触しない。
【0055】
本発明のさらなる実施形態では、基材は、堆積中に、照射の際に蒸発する中間担体上の材料とだけでなく、照射の際に蒸発しない材料とも接触しない。
【0056】
前述の実施形態の一変形形態では、中間担体の石英ガラスが、石英ガラス上に溝と隆起部からなる構造を形成するために、湿式化学エッチングで前処理される。続いて、放射線吸収層及び放射線反射層が設けられる。この結果、溝内の放射線吸収層を、隆起部内の放射線吸収−又は放射線反射領域から完全に隔離することを可能にする中間担体の表面の構造が生じる。中間担体上に基材を載置する場合、溝として形成された中間担体の領域と基材とで形成される、孤立された蒸発チャンバが生じる。この蒸発チャンバ内で石英ガラス上に堆積されている放射線吸収層が、エネルギー印加によって加熱され、これによって放射線吸収層上に堆積されている材料が蒸発し、基材上に堆積する。孤立された蒸発チャンバの形成によって、材料の正確な局所的転写、並びに完全な転写の点で利点が生じる。その他に、高温の放射線吸収層が基材と直接接触することが回避され、その結果、例えば高温で蒸発する銅のような材料を、低い最高使用温度をもつプラスチックフィルムのような基材上に供することができる。
【0057】
本発明のさらなる実施形態では、堆積中、基材は、それを載置することにより、中間担体上の材料に接触する。この際、この中間担体は、放射線吸収領域及び放射線反射領域から形成される微細構造を備える。その際に、第1のステップでは、放射線吸領域が微細構造に対応して中間担体上に配置され、これによって溝及び隆起部を有する微細構造が生じる。第2のステップではこの微細構造上に放射線反射層が被覆される。これによって、放射線吸収構成要素を備える隆起部が生じる。この時点で、この層構成上に、転写材料が堆積される。この材料は隆起部の領域でエネルギー印加によって加熱され、蒸発し、基材上に堆積される。放射線反射層を放射線吸収層の上に反転して配置することにより、放射線吸収領域を備える中間担体の領域内でのみエネルギー印加が可能となる。
【0058】
上述の実施形態の一発展形態においては、中間担体と基材との接触が、基材を中間担体上に載置することによって行われ、その際、接触は隆起部の領域で生じ、したがって放射線吸収層を含む領域で生じる。この領域がエネルギー印加によって加熱され、これにより中間担体上に堆積された材料が加熱され、蒸発し、基材上の載置ゾーンに転写される。基材としてフィルムを使用する場合は、この変形形態により、熱エンボスの形で中間担体から基材上に材料を転写する可能性が開かれる。
【0059】
本発明のさらなる実施形態では、基材が、材料の堆積中、持続的に動かされる。特に連続被覆設備内で使用する場合がそうである。この場合、基材は例えば平坦な基材又はテープとして形作ることができる。
【0060】
さらなる実施形態では、基材が持続的に動かされ、かつ可撓性に形成される。これは例えば金属テープ又はプラスチックテープの場合がそうであり、これらは例えばエンドレスロールの形で被覆される。この場合、基材上の被覆の厚さは、基材の搬送速度によって調整することができる。
【0061】
本発明のさらなる実施形態では、中間担体が持続的に動かされる。これは特に円筒状の中間担体を使用する場合がそうである。この場合、微細構造に対応する材料の堆積を、中間担体の搬送速度によって調整することができる。この場合、この実施形態の一変形形態では、基材と中間担体の搬送速度を適合させることによって、微細構造の形態を必要に応じて適合させることができる。
【0062】
本発明のさらなる実施形態では、転写材料の堆積される層厚を基材上で局所的に変化させる。層厚の変化は、転写材料の粒子を、中間担体から基材上への転写中に散乱させることによって行われ、これにより、基材上に堆積された材料の層厚の局所的変化が生じる。この場合、転写すべき微細構造は、基礎構造(サブストラクチャー)の形で中間担体上に作られ、この際、このサブストラクチャーは放射線吸収領域を有する。この場合、このサブストラクチャーは、転写すべき微細構造の面積の少なくとも一部分を覆う。続いて、中間担体上に転写材料が堆積される。放射線源によって後からエネルギーを印加する際に、蒸発した材料の蒸気粒子が散乱し、その際、散乱の強度は微細構造化された中間担体と基材との間隔、並びに周囲圧に依存する。さまざまな大きさのサブストラクチャーを使用するか又はサブストラクチャーの数を変えることにより、転写材料の任意の層厚を基材上に得ることが可能となり、その際、最大で、中間担体上に堆積された層厚を基材上に転写可能である。
【0063】
材料転写中の粒子の散乱は、材料転写中の中間担体と基材との間隔の変化及び/又は周囲圧に応じて起こる。
【0064】
本発明による対応するサブストラクチャーは、多数の技術的応用例に、例えば転写される微細構造の形で局所的カラーフィルタを製造する場合、又はフレネルレンズなどの製造の場合に使用することができる。
【0065】
本発明のさらなる実施形態では、第1の転写材料の上に、第1の材料とは異なる蒸発温度をもつ別の材料が堆積される。これにより、さまざまな材料を組み合わせて基材上に堆積することができる。ここで、例えば、有機材料と無機材料、例えば金属の堆積が考えられる。この場合に何よりも重要なのは、第1の材料が第2の材料とは異なる蒸発温度を有することである。両者の蒸発温度が相互に100K以上相違すると有利である。これにより、エネルギー印加を制御することによって目標とする材料の堆積が可能となる。
【0066】
本発明のさらなる実施形態では、第1の材料を、第2の材料から時間的間隔をおいて、第1の材料の蒸発温度に対応する選択的なエネルギー印加によって蒸発させる。印加されるエネルギー量を制御することにより、第1の材料の蒸発を狙い通りに調整することができる。加えて、閃光時間に比例する、印加されるエネルギー量を制御することによって、堆積された材料の構造化の形態に影響を与えることができる。
【0067】
本発明のさらなる実施形態では、まず高い蒸発温度をもつ第1の材料が、続いて低い蒸発温度をもつ第2の材料が、微細構造化された中間担体上に堆積される。その後、例えばキセノン閃光の形でのエネルギーの低い第1のエネルギー印加により、第2の材料が中間担体から基材上に堆積される。続いて基材と中間担体との間隔が変更される。続いて、第1の材料を中間担体から蒸発させるために、エネルギーの高い第2のエネルギー印加が行われ、その結果、第1の材料は基材上の第2の材料を覆うだけでなく、中間担体の基材からの間隔が変化したことによって蒸気粒子が散乱するため、第2の材料を完全に覆う。これは、第2の材料を第1の材料でいわばカプセル化することに相当する。
【0068】
前述の実施形態の一変形形態では、第2の材料が、中間担体上に配置されているサブストラクチャーから基材上に堆積され、その際、蒸発した材料の蒸気粒子の散乱を阻止し又は僅かに保つために、中間担体と基材との間隔を可能な限り小さくする。これにより、サブストラクチャーが基材上に転写される。続いて中間担体と基材との間隔が拡大される。続いて、さらなるエネルギー印加が例えばキセノン閃光の形で行われる。第1の材料が蒸発する第2のエネルギー印加中に、基材と中間担体との拡大された間隔が、蒸発した材料の蒸気粒子を互いに散乱させる。この蒸気粒子の散乱により、サブストラクチャーによって形成された微細構造全体が被覆される。蒸発が高真空条件又は常圧条件下で行われる場合、散乱は存在する残留ガス量にも依存する。というのも残留ガスが散乱に直接寄与するからである。あるいは、まず第1の材料を、比較的大きな間隔をおいて堆積させることができ、これによって蒸発した粒子が散乱し、したがって、サブストラクチャーによって形成された微細構造が堆積される。続いて、中間担体と基材との間隔が減少され、第2の材料が転写される。これにより、第2の材料がサブストラクチャーの形で基材上に堆積され、それによって基材上に微細構造化された層システムを形成することができる。
【0069】
本発明のさらなる利点及び特徴は、実施形態の例についての以下の詳細な説明、並びに添付の図面から理解される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による蒸発装置の概略図である。
【図2】有機材料の目標とする蒸発、及び基材上への有機材料の位置合わせされた堆積の概略図である。
【図3】残留した有機材料の本発明による蒸発の概略図である。
【図4】本発明による蒸発装置を備える連続被覆設備の概略図である。
【図5】円筒状中間担体の本発明による例示的実施形態の概略断面図である。
【図6】中間担体が基材と接触する、本発明による蒸発装置の概略図である。
【図7】転写すべき微細構造がサブストラクチャーから構成されている、本発明による蒸発装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
実施形態の例
図1の第1の例示的実施形態では、微細構造化された中間担体1が、薄い光反射層3(例えば厚さ100nmのAl又はAg)又は薄い光吸収層4(例えば厚さ100nmのCrN又はW-WO)の領域をもつ石英ガラス基材2から製造され、この結果マスクが生じる。加えて、有機材料6(図2を参照)が、形成されたフィルム4と化学反応を起こすのを阻止するために、保護層5(例えば50nmの厚さのSiO)が設けられる。続いて、微細構造化された中間担体1の保護層5が、真空チャンバ13内で、有機材料6、例えば40nmの緑色に発光する色素Alqで被覆される。
【0072】
続いて、有機材料6で被覆された、微細構造化された中間担体1の表面が、基材7、例えばTFTモニタに対して近接距離(光リソグラフィで典型的である、例えば30μm)に、又は直接接触して配置される。続いて、有機材料6が、真空チャンバ13の他のセグメント内の放射線源8、例えばハロゲンランプを用いて、石英ガラス2を通して露光される。その際に放射線吸収層4を備える領域のみが十分に強く加熱され、その結果この位置にある有機材料6のみが蒸発し、基材7の表面の、この場所に対向する領域に沈着する(図2)。吸収層の熱容量が小さいので、蒸発温度への加熱はサブ秒領域で行うことができる。放射線源をシャッタ9でオフにした後、比較的高い熱容量をもつ中間担体への熱的な接続(thermische Anbindung)によって、吸収層が速やかに冷却される。
【0073】
光リソグラフィの場合と同様に、シャッタ9を介して光源8をオン及びオフにすることができる。中間担体1の微細構造化された表面と基材7との間隔が小さいほど、散乱蒸気の割合、すなわち意図しない場所に凝結する有機材料6の量も少なくなる。シャッタの代わりに、スキャナと同様に、微細構造化された中間担体(マスク)1の上で相対的に光源を移動させることもできる。
【0074】
3色画面では有機材料6当たりの材料収量が僅か約30%なので、図3のさらなるステップで、有機材料6を、微細構造化された中間担体1の被覆された表面から、つまり石英ガラス2を通した光の印加によってではなく、蒸発させ、したがって表面全体を加熱する。このために加熱装置10、例えば熱放射器が使用される。残り70%がコーティングチャンバ内で蒸発した後、加熱装置10はオフにされ、その結果、新たに蒸気が、微細構造化された中間担体1の表面上に均一に沈着することができる。
【0075】
上述の例示的実施形態のさらなる変形形態では、微細構造化された中間担体1は、薄い光反射層3(例えば厚さ100nmのAg)又は薄い光吸収層4(例えば厚さ100nmのSiC)の領域を有する石英ガラス基材2からなり、その結果マスクが生じる。SiCは化学的に不活性なので、この場合は保護層5なし済ませることができ、その結果、放射線吸収層4を材料6で被覆することができる。
【0076】
図6のさらなる例示的実施形態では、微細構造化された中間担体1は、薄い光反射層3(例えば厚さ100nmのAg)又は薄い光吸収層4(例えば厚さ100nmのCrN)の領域を有する石英ガラス基材2から製造され、その結果マスクが生じる。続いて、微細構造化された中間担体1が有機材料6、例えば40nmの緑色に発光する色素Alqで被覆される。
【0077】
その後、基材7が、微細構造化された中間担体1の有機材料6で被覆された表面上に載置され、それにより、中間担体1上の微細構造の隆起部の領域との直接接触が行われる。これにより、中間担体1の微細構造の溝と基材7によって形成される、孤立した蒸発チャンバ29が生じる。この蒸発チャンバ29の形成によって、有機材料6が中間担体から基材7上に完全に局所的に転写される。蒸発チャンバ29の形成によって高真空条件での被覆が不必要となることがさらなる利点である。というのも、蒸発した材料の粒子が残留ガスにより散乱して構造の拡幅を招くということがないからである。
【0078】
続いて、有機材料6が、放射線源8、例えばキセノン閃光管を用いて石英ガラス2を通して間接的に加熱される。この場合、放射線吸収層4を備える領域のみが十分に強く加熱され、その結果この場所にある有機材料6のみが蒸発し、基材7の表面の、この場所に対向する領域に沈着する。マスク上の加熱された領域が基材と直接接触しないことから、基材上への熱印加は非常に僅かである。したがって、熱に脆弱な基材を被覆することが可能である。
【0079】
前述の例示的実施形態の一代替形態では、中間担体上に、放射線吸収層4(例えば厚さ100nmのSiC)から形成される微細構造が設けられる。この場合、この光吸収層4は石英ガラス2上に隆起部を形成する。続いて光反射層3(例えば厚さ100nmのAg)による被覆が行われ、光反射層が溝内、及び隆起部を形成する光吸収層4上に堆積される。続いて、基材7を載置することにより、中間担体1が直接接触される。少なくとも基材7と中間担体1の載置領域で行われる、放射線源8、例えばキセノン閃光管によるエネルギー印加により、光吸収層4のみが、したがって隆起部のみが加熱される。この領域内でのみ、材料6が加熱され、蒸発し、接触している基材7上に堆積させることができる。従って、基材7がフィルムとして作られている場合は、材料6の転写の際に熱エンボス効果(Heisspraegeeffekt)が生じる。
【0080】
さらなる例示的実施形態では、転写される材料が無機材料、例えばAl、Ag、Cuなどの金属である。
【0081】
さらなる例示的実施形態では、放射線源8としてキセノン閃光管が使用される。これは特に、短時間で、約80MW/mの大きなエネルギー量を提供するのに適している。この場合の照射時間は約1msであり、その結果、吸収領域から反射領域への熱伝導は最小に低減され、したがって非常に小さな構造幅が作製可能である。
【0082】
さらなる例示的実施形態では、基材上で、第1の堆積すべき材料6、例えば有機材料上に、第2の材料19、例えばアルミニウムのような金属が堆積される。そのために、まず第1のエネルギー印加が、例えばキセノン閃光の形の放射線源8によって行われ、それによって中間担体1上の第1の材料6が加熱され、蒸発する。第1の材料がこうして基材7に堆積する。続いて第2のエネルギー印加が行われ、それにより第2の材料19が加熱され、蒸発する。この場合、第1の材料6と第2の材料19はその蒸発温度に差があると有利である。これにより、印加されるエネルギー量の制御によって、選択的蒸発を実施することができる。
【0083】
さらなる例示的実施形態では、印加されるエネルギー量の時間的変化が実施される。これにより、蒸発する材料6、19の量を相応して制御することができ、それによって基材7上に堆積される材料6、19の層厚を調整することができる。
【0084】
図7のさらなる例示的実施形態では、基材7上に堆積された材料6、19の層の層厚が局所的に変えられる。これは、所望の構造30内に規則的に配置されたサブストラクチャー31によって達成される。例えば転写材料6、19が、一辺の長さが100μmの正方形の形で層厚50nmで基材7上に堆積される。これに対して、基材7上の他の構造は層厚100nmである。加えて中間担体1上の正方形内に、光吸収層4をもつ複数の小さな微細構造化された面が設けられるが、これは、正方形の形の転写すべき微細構造の面積の50%しか占めない。続いて、転写材料6、19が100nmの層厚で中間担体1上に堆積される。続いて、例えばキセノン閃光管として構成される放射線源8によりエネルギー印加が行われる。照射過程における粒子の散乱によって、マスクのサブストラクチャー31上の材料から、層厚が僅かに50nmの正方形が基材7上に生じる。蒸発した材料6、19の蒸気粒子の散乱の度合いは、中間担体1と基材7との間隔及び周囲圧によって調整することができる。サブストラクチャーの数又はサブストラクチャーの総面積によって、基材7上に堆積される材料6、19の任意の層厚を生じさせることができる。生じさせることが可能な最大層厚は、中間担体1上に堆積された、転写材料6,19の層に相当する。
【0085】
さらなる例示的実施形態では、まず高い蒸発温度をもつ第1の材料6、例えばAgのような金属が、続いて低い蒸発温度をもつ第2の材料19、例えば有機材料が、微細構造化された中間担体1上に堆積される。その後、キセノン閃光として構成されている放射線源8によりエネルギー印加が行われる。その場合、エネルギーの低い第1の閃光で第2の材料19が中間担体1から基材7上に堆積される。第1の閃光の間はマスクと基材の表面は接触している。続いて、基材7と中間担体1との間隔が、光リソグラフィに使用される場合のように、例えば50μmだけ拡大される。その後に、中間担体1上に残留する第1の材料6を蒸発させるために、エネルギーのより高い第2の閃光が続き、その結果、第1の材料6は、基材7上の第2の材料19を覆うだけでなく、中間担体1に対する間隔の故に蒸発した第1の材料6の蒸気粒子が散乱するため、それを完全に覆う。これは、第2の材料19を第1の材料6でカプセル化することに相当する。
【0086】
前述の例示的実施形態の一変形形態では、中間担体1上にサブストラクチャーの形で微細構造上に堆積されている第1の材料6は、キセノン閃光として構成される放射線源8によるエネルギー印加によって、基材7上に堆積される。この場合、第1の材料6の堆積は、基材7と中間担体1との間隔が比較的僅かな状態で実施され、その結果、第1の材料6の蒸発した粒子は全く又は僅かにしか散乱せず、そのため、基材7上に堆積された材料6は転写されたサブストラクチャーの形で可視である。続いて、基材7と、第2の材料19で被覆されている中間担体1との間隔が拡大される。第2の材料19が蒸発する、キセノン閃光8による第2の放射線の印加中は、基材7と中間担体1との間隔が比較的大きいため、蒸発した第2の材料の19の蒸気粒子が相互にまた場合によっては残留ガスにより散乱し、その結果、基材7上で、サブストラクチャーによって形成される微細構造の面全体が材料19で被覆される。これにより、第1の材料6が第2の材料19によってカプセル化される。
【0087】
図4のさらなる例示的実施形態は、連続被覆設備内における本発明による蒸発装置の変形を示す。この場合、微細構造化された中間担体1は、石英製円筒として作られている。微細構造は、有利には石英製円筒の表面上に例示的実施形態1に従って設けられる。基材7を被覆するための連続被覆設備11では、例えばエンドレスローラとして設備11中を案内されるフィルムが、第1の真空チャンバ13内で、赤色に発光する色素である有機材料6で被覆される。そのために、有機材料6が蒸発装置12で加熱され、蒸発する。その結果、有機材料6が、微細構造化された中間担体1上に堆積される。蒸発装置12と基材の間の領域は遮蔽部14で隔てられ、その結果、有機材料6が、蒸気チャンバ17から基材7上に、意図せずに導入されることがなくなる。この場合、有機材料6が遮蔽部14に凝結するのを阻止するために、遮蔽部14の蒸発装置12に向いた側が、蒸発温度に維持される。
【0088】
中間担体1の連続的な回転運動15の結果、堆積された有機材料6は、基材7に対向する位置に到達するまで、基材7の方向に移動する。この場所で、有機材料6は、中間担体1の内部に配置され、基材の方向に中間担体の表面上に集束される光源8によって加熱され、蒸発する。第1の例示的実施形態と同様に、この場合も加熱及び蒸発は、中間担体1の光反射層3のない領域内でのみ起こる。その結果、有機材料6の基材7への蒸着は、微細構造に応じて起こる。
【0089】
中間担体1の連続的な回転運動15の結果、中間担体1上の光反射領域3内に残留する有機材料6は遮蔽部14の方向に移動する。その際、中間担体1は蒸気チャンバ17内の第1の領域を通過し、この領域で一本の線上に集束された光線によって表面が強く熱せられ、その結果残留した有機材料が蒸発する。この場合、光線のこの線は回転軸に平行に配置されている。続いて中間担体1は、蒸気チャンバ内で、有機材料がその表面に新たに凝結するまでに冷却する。この線を形成するための放射線源は、放射線源8と同様に中間担体の内部に存在してよく、蒸気チャンバ17内の右側で中間担体1と遮蔽部14が落ち合う領域上に集束される。放射線源8も中間担体1の表面上に集束されるが、ただし基材の垂線方向に集束される。
【0090】
基材7は、その連続的な運動16の結果、次の被覆装置へと搬送される。次の被覆装置では、第1の被覆と同様に、緑に発光する有機材料6によるさらなる被覆が行われる。最終的に、最後の被覆ステップで、青に発光する有機材料6による被覆が行われる。これにより、連続被覆設備11内で完全なRGB被覆を実施することができる。
【0091】
図5のさらなる例示的実施形態では、テープ状の基材7を被覆するための円筒状の中間担体1が示されており、このテープ状の基材7は回転軸26周りを回転方向25に連続的に搬送される。この場合、円筒状の中間担体1は例えば石英製の円筒でよく、この円筒はCrN/SiOからなる吸収層による被覆を備え、SiO層はCrN層が酸化される可能性を回避するためのものである。あるいは、SiCからなる吸収層を使用することもできる。石英製円筒の外径はこの例示的実施形態では300mmである。石英製円筒の壁厚は10mmである。円筒状の中間担体1は、回転軸26周りを回転方向25に一定速度で回転する。
【0092】
第1の材料6による中間担体1の被覆は、第1の位置で、第1の蒸発装置の蒸気管23を用いて行われる。この場合、蒸気管23は、例えばSiCからなるものでよく、長方形の箱形アタッチメント(Kastenaufsatz)をもつ線状線源(Linienquelle)を備える。第1の位置で中間担体1が第1の材料6で被覆された後、中間担体1が連続運動するので、中間担体1の表面の第1の材料6で被覆された領域は、第2の位置にある第2の蒸発装置の第2の蒸気管24へと回転する。そこで第2の材料19による被覆が同様に実施される。この場合、第2の材料19の蒸発温度が、第1の位置における第1の材料6の蒸発温度よりも低くなければならないことに留意されたい。さもなければ、より高い蒸発温度をもつ第2の材料19のより熱い蒸気管24が中間担体1を強く加熱することになり、その結果、既に蒸気管23下で堆積された、より低い蒸発温度をもつ材料6が、望ましくないことに第2の位置で蒸発してしまう恐れがある。第1の蒸気管23及び第2の蒸気管24の熱的影響を最小限にするために、放射熱を低減させる遮蔽金属板22が設けられている。これによって、両方の蒸気管23、24の相互に独立した調節、及びその結果として堆積速度の調節が可能となる。
【0093】
中間担体1の連続的な回転運動25の結果、第1及び第2の材料6、19で被覆された中間担体1の表面の領域は第3の位置にある放射線源8へと移動する。この放射線源は、石英製円筒の内部で、中間担体1の被覆された表面に対向する側に配置される。中間担体1の被覆された表面は、この位置で基材と接触し、中間担体1の横を通過して基材搬送方向16に連続的に移動する。
【0094】
基材7上に材料6、19を堆積するために、材料は放射線源8で加熱され、蒸発する。その結果、材料6、19が基材7上に堆積する。中間担体の温度が上がり続けるのを最小限に抑えるために、中間担体1を放射線源8の領域で冷却装置28によって冷却するのが有利である。冷却装置28だけでなく、放射線源8も真空チャンバの外にあってよい。ここで、放射線源8は例えばハロゲン管状ランプ又はキセノン閃光管とすることができる。
【0095】
石英製円筒1の表面の吸収層を冷却するために、さらなる水冷面14が設けられており、これは中間担体1の一部分を囲む。水冷面14はこの場合、冷却水が貫流する金属製部品として構成することができる。水冷面14により、熱放射が吸収されることによって、石英製円筒1が間接的に冷却される。
【0096】
さらに、例えば石英製円筒1を間接的に冷却するさらなる手段は冷却装置28からなるものでよく、この冷却装置は例えば固定された冷却水管からなり、この冷却水管は石英製円筒1内部に配置され、放射線を吸収する外壁を備えている。
【0097】
加えて、堆積される材料6、19の収量を最大にするために、加熱された蒸気シェード(Dampfblend)27を、第一及び第2の蒸発装置の蒸気管23、24の領域内で、第一及び第2の位置に設けることができる。石英製円筒1とシェード27との間隔は、石英製円筒1の移動方向におけるシェードの長さの半分の約1/10である。したがって、石英製円筒2とシェード27との間隔が2mmの場合、加熱された蒸気シェード27のシェード長さは約40mmである。
【0098】
中間担体1の駆動は駆動ローラ20によって行われ、駆動ローラはそれぞれ中間担体1の縁部領域に配置されている。これにより、駆動ローラ20が中間担体1の表面の被覆された領域と接触することが回避され、層の品質を損なうことが避けられる。中間担体1のこの場所の温度は明らかに100℃以下なので、駆動ローラ20は例えばゴムから作ることができる。
【0099】
この場合、堆積される材料6、19の量は、基材搬送速度と、蒸気管23、24を介して中間担体1上に堆積される蒸発した材料6、19の量との相互作用から生じる。したがって、基材7上に堆積される材料6、19の層厚を、前述のパラメータによって相応に調整することができる。
【0100】
前述の例示的実施形態の一変形形態では、基材7と円筒状の中間担体1が、少なくとも放射線源8の領域で直接接触する。テープ又はフィルムの形の可撓性基材7の場合、図5に示されているように、放射線源8の領域を越えて基材7が中間担体1と広範囲に接触することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 微細構造化された中間担体
2 中間担体
3 光反射層
4 光吸収層
5 保護層
6 第1の材料
7 基材
8 放射線源
9 シャッタ
10 加熱装置
11 連続被覆設備
12 蒸発装置
13 真空チャンバ
14 遮蔽部又は冷却部
15 中間担体の回転方向
16 基材搬送方向
17 蒸気チャンバ
18 遮蔽部の加熱装置
19 第2の材料
20 駆動ローラ又は支持ローラ
21 さらなる放射線源
22 遮蔽金属板
23 第1の蒸発装置の蒸気管
24 第2の蒸発装置の蒸気管
25 円筒状の中間担体の回転方向
26 円筒状の中間担体の回転軸
27 加熱された蒸気シェード
28 冷却装置
29 蒸発チャンバ
30 サブストラクチャーから形成された微細構造
31 サブストラクチャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間担体(1)を使用して、材料(6,19)を基材(7)上に局所的に堆積させる方法において、前記中間担体(1)からの前記材料(6,19)の局所的堆積が、放射線によるエネルギー印加によって行われ、その際に、前記中間担体(1)は微細構造を備え、前記微細構造によって前記材料(6,19)が前記中間担体(1)から前記基材(7)上に微細構造化されて転写されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記中間担体(1)からの前記材料(6,19)の局所的堆積が、放射線によるエネルギー印加によって行われ、その際に、前記中間担体(1)上の前記材料(6,19)が局所的に加熱され、蒸発し、続いて前記基材(7)上に微細構造化されて堆積されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
微細構造化された放射線反射層(3)を透明な中間担体(2)上へと堆積する第1の堆積と、放射線吸収層(4)を前記放射線反射層(3)上及び前記中間担体(2)の被覆されていない微細構造化された表面上へと堆積する第2の堆積とにより、微細構造化された中間担体(1)を作製するステップ、並びに
前記放射線吸収層(4)の上に材料(6,19)を堆積させるステップ、及び
転写すべき前記材料(6,19)を局所的に蒸発させ、それにより前記材料(6,19)を微細構造に対応して前記基材(7)上に位置合わせして堆積させるステップを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
微細構造化された放射線反射層(3)を透明な中間担体(2)上へと堆積する第1の堆積により、微細構造化された中間担体(1)を作製するステップ、並びに
放射線吸収材料(6,19)を、前記微細構造化された放射線反射層(3)上へと堆積する第2の堆積を行うステップ、及び
放射線吸収材料(6,19)を局所的に蒸発させ、それにより前記材料(6,19)を微細構造に対応して前記基材(7)上に位置合わせして堆積させるステップを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
微細構造化された放射線吸収層(4)を透明な中間担体(2)上へと堆積する第1の堆積により、微細構造化された中間担体(1)を作製するステップ、並びに
材料(6,19)を前記微細構造化された放射線吸収層(4)上へと堆積する第2の堆積を行うステップ、及び
前記放射線吸収層(4)から前記材料(6,19)を局所的に蒸発させ、それにより前記材料(6,19)を微細構造に対応して前記基材(7)上に位置合わせして堆積させるステップを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
放射線吸収層(4)を透明な中間担体(2)上へと堆積する第1の堆積により、中間担体(1)を作製するステップ、並びに
材料(6,19)を、放射線吸収層(4)上へと堆積する第2の堆積を行うステップ、及び
放射線源(8)による微細構造化されたエネルギー印加により、放射線吸収層(4)から前記材料(6,19)を局所的に蒸発させ、それにより前記材料(6,19)を微細構造に対応して前記基材(7)上に位置合わせして堆積させるステップを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記中間担体(1)上に前記材料(6,19)を堆積させる前に、透明な保護層(5)が設けられることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記基材(7)上に前記材料(6,19)を堆積させた後に、前記中間担体(1)上に残留した前記材料(6,19)を加熱装置(10)によって加熱し、蒸発させ、新たに前記中間担体(1)上に堆積させ、その際に、前記材料(6,19)が均一な層として堆積されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記放射線源(8)の放射線の印加がシャッタ(9)によって調節されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記中間担体(1)の微細構造が、前記放射線反射層(3)を構造化して堆積させることによって形成されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記放射線反射層(3)の微細構造化が、光リソグラフィによって行われることを特徴とする請求項8から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記基材(7)が、前記材料(6,19)の堆積中に、少なくとも前記材料(6,19)が前記中間担体(1)から前記基材(7)上に転写される領域において、微細構造化された前記中間担体(1)上に直接載置されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
微細構造化された前記中間担体(1)からの前記材料(6,19)の転写が、載置されている前記基材の領域で行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記基材(7)が、前記材料(6,19)の堆積中に、少なくとも前記材料(6,19)が前記中間担体(1)から前記基材(7)上に転写される領域において、微細構造化された前記中間担体(1)上に直接載置され、その際に、前記基材(7)と微細構造化された前記中間担体(1)によって蒸発チャンバ(29)が形成され、前記材料(6,19)の転写が前記蒸発チャンバ(29)内で行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記基材(7)が、前記材料(6,19)を前記基材(7)上に堆積させる間中、持続的に動かされることを特徴とする請求項1から14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
転写すべき第1の材料(6)上に、前記第1の材料(6)とは異なる蒸発温度を有するさらなる材料(19)が堆積されることを特徴とする請求項1から15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
前記基材(7)上への前記材料(6,19)の選択的堆積が、印加されたエネルギー量及びそれに結びついている前記材料(6,19)の加熱及び蒸発によって行われ、その際に、エネルギー印加の調節が放射線の出力を介して行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材(7)上での転写すべき材料(6,19)の堆積される層厚の局所的な変化が、前記転写すべき材料(6,19)の粒子を、前記中間担体(1)から前記基材(7)上への転写中に散乱させることによって、行われることを特徴とする請求項1から17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
前記材料(6,19)の転写中の粒子の散乱が、材料(6,19)の転写中に前記中間担体(1)と前記基材(7)との間隔を変えることにより及び/又は周囲圧に応じて、行われることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
材料(6)を基材(7)上に微細構造化して局所的に堆積させるための装置であって、透明な中間担体(2)と、微細構造化された放射線反射層(3)と、転写すべき材料(6)が上に堆積される放射線吸収層(4)とからなる層システム、並びに、前記中間担体(1)の堆積された前記材料(6)に対向する側に配置されている放射線源(8)を含む装置。
【請求項21】
前記放射線吸収層(4)上に保護層(5)が配置され、前記保護層上に、転写すべき前記材料(6)が堆積されることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記放射線吸収層(4)が、微細構造化された前記放射線反射層(3)上に配置されることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記放射線反射層(3)が、微細構造化された前記放射線吸収層(4)上に配置されることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項24】
加熱装置(10)が、前記中間担体(1)の前記材料(6)で被覆されている側に配置されることを特徴とする請求項20から23のいずれか一つに記載の装置。
【請求項25】
微細構造化されている前記中間担体(1)が冷却装置を備えることを特徴とする請求項20から24のいずれか一つに記載の装置。
【請求項26】
微細構造化されている前記中間担体(1)が円筒として作られていることを特徴とする請求項20から25のいずれか一つに記載の装置。
【請求項27】
微細構造化されている前記中間担体(1)が円筒として作られており、前記中間担体が持続的に動かされることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
円筒として作られている微細構造化された前記中間担体が、連続被覆設備の真空チャンバ(13)内に配置され、その際に、前記真空チャンバ(13)は、前記材料(6)の加熱及び蒸発のための蒸発装置(12)を備え、さらに遮蔽部(14)が設けられ、前記遮蔽部は前記基材(7)を前記蒸発装置(12)から隔離し、その際に前記遮蔽部(14)が微細構造化された前記中間担体(1)を囲むことを特徴とする請求項26又は27に記載の装置。
【請求項29】
前記遮蔽部(14)が加熱可能であることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記放射線源(8)が微細構造化された前記中間担体(1)の内部に配置されることを特徴とする請求項26から29のいずれか一つに記載の装置。
【請求項31】
前記放射線源(8)が閃光管として構成されることを特徴とする請求項20から30のいずれか一つに記載の装置。
【請求項32】
閃光管として構成されている前記放射線源(8)が、キセノン閃光管であることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項33】
微細構造化されている前記中間担体(1)上の前記微細構造(30)がサブストラクチャー(31)から構成され、前記サブストラクチャーが、前記中間担体(1)上の転写すべき微細構造(30)の面積の少なくとも一部分を覆うことを特徴とする請求項20から32のいずれか一つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−23731(P2011−23731A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−183699(P2010−183699)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(595160477)フオン・アルデンネ・アンラーゲンテヒニク・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (16)
【Fターム(参考)】