説明

情報処理装置および方法、並びに、情報処理システム

【課題】コンテンツのデータ転送において、容易に、不要な遅延時間の増大を抑制するとともに、コンテンツとしての品質の不要な低下も抑制することができるようにする。
【解決手段】バッファに蓄積されているプレシンクトの数が所定の閾値を越えた場合、出力禁止部285は、プレシンクト数判定部284からの通知に基づいて、バンクオーバ制御を行い、現在出力中のプレシンクトの次のプレシンクトであるプレシンクトの符号化データの出力を禁止させる。本発明は、例えば、デジタルトライアックスシステムに適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および方法、並びに情報処理システムに関し、特に、コンテンツのデータ転送において、容易に、不要な遅延時間の増大を抑制するとともに、コンテンツとしての品質の不要な低下も抑制することができるようにした情報処理装置および方法、並びに情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオ映像の送受信装置として、放送局やスタジアムでのスポーツ中継等に使用されているトライアックスシステムというものがある。これまでのトライアックスシステムは、アナログ映像を対象とするものが主流であったが、近年の画像処理のデジタル化に伴い、今後はデジタル映像を対象とするデジタルトライアックスシステムが普及するものと考えられている。
【0003】
一般的なデジタルトライアックスシステムでは、カメラヘッドにおいてビデオ映像がキャプチャされて伝送路に送出され(本線ビデオ映像)、カメラコントロールユニットにより、その本線ビデオ映像が受信されて、映像が画面に出力される。カメラコントロールユニットのユーザは、その映像を確認しながら、カメラヘッドのユーザに撮影に関する指示を出す。カメラヘッドのユーザは、その指示に基づいて撮影を行う。
【0004】
カメラコントロールユニットは、また、この本線ビデオ映像とは別系統で、リターンビデオ映像をカメラヘッド側に送信する。このリターンビデオ映像は、カメラヘッドより供給された本線ビデオ映像を変換したものであってもよいし、カメラコントロールユニットにおいて外部から入力されたビデオ映像であってもよい。カメラヘッドはこのリターンビデオ映像を例えば画面に出力させる。カメラヘッドのユーザは、このリターンビデオ映像を参照することにより、例えば、自分自身が撮影した撮影画像がカメラコントロールユニットにおいてどの様に受信されているかを確認することができる。
【0005】
一般的には、カメラヘッドとカメラコントロールユニットとの間の伝送路は帯域が限られており、その伝送路を伝送させるためにビデオ映像は圧縮することが必要になる。例えば、カメラヘッドからカメラコントロールユニットに向かって伝送される本線ビデオ映像がHDTV(High Definition Television)信号(現信号は1.5Gbps程度)である場合、これを約10分の1の150Mbps程度に圧縮することが現実的である。
【0006】
このような映像の圧縮方法は、様々なものがあり、例えば、MPEG(Moving Picture Experts Group)等がある(例えば特許文献1参照)。
【0007】
以上がデジタルトライアックスシステムの基本構成と動作である。このようなデジタルトライアックスシステムにおいて、圧縮ストリームの伝送路である本線やリターン回線は、一般的に、同軸ケーブル等により構成され、圧縮ストリームは、デジタル信号として伝送される。従って、圧縮ストリームは、略一定のビットレートで伝送されるようにするのが望ましい。
【0008】
一般的な符号化方法においては、符号化により得られる符号化データのビットレート、すなわち符号化レートは、符号化される画像データの画像の内容によって(符号化の難しさによって)変化する。したがって、符号化データを略一定のビットレートで伝送するためには、符号化により得られた符号化データを一度バッファに蓄積し、そのバッファに蓄積された符号化データを一定のビットレートで読み出すようにすることにより、ビットレートを平滑化する必要がある。
【0009】
このとき、符号化データの伝送時のビットレートをより安定化させる(平滑化する)ためには、より多くの符号化データをバッファに蓄積させることが望ましい。また、より多くの符号化データをバッファに蓄積させることにより圧縮効率も向上する。
【0010】
【特許文献1】特開平9−261633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、バッファに蓄積させるデータ量が増大する程、遅延時間が増大してしまう恐れがあった。上述したようなデジタルトライアックスシステムの場合、画像データ(符号化データ)のデータ転送の即時性が重要になる。例えば、カメラヘッドからカメラコントロールユニットへの符号化データの転送の遅延時間が増大すると、本線ビデオ映像を確認してから行われる、カメラコントロールユニットのユーザからのカメラヘッドのユーザに対する指示が遅すぎてしまう恐れがある。また、カメラコントロールユニットのユーザと、カメラヘッドのユーザが同時刻において見ている映像のタイムラグが大きくなり(つまり、互いに異なる映像を見ている恐れがあり)、カメラコントロールユニットのユーザによる指示を、カメラヘッドのユーザが理解することが困難になる恐れがある。さらに、リターンビデオ映像の伝送においても大きな遅延が生じると、同様の理由から、そのリターンビデオ映像を確認するカメラヘッドのユーザは、さらに、カメラコントロールユニットのユーザによる指示を理解することが困難になる恐れがある。
【0012】
以上のような理由から、特にスポーツ中継のように動的な被写体を撮影する場合、カメラコントロールユニットのユーザからのカメラヘッドのユーザに対する指示のタイミングは重要になる。つまり、上述したようなデジタルトライアックスシステムの場合、データ伝送に遅延時間が不要に増大するのは望ましくない。
【0013】
しかしながら、バッファでの符号化データの蓄積量を単純に低減させると、上述したように伝送時のビットレートが不安定になる恐れがあり、画質劣化が増大する恐れがあった。
【0014】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、コンテンツのデータ転送において、容易に、不要な遅延時間の増大を抑制するとともに、コンテンツとしての品質の不要な低下も抑制することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の側面は、蓄積部に蓄積されているデータを、所定のデータ単位毎に、所定の順序で、所定のビットレートで読み出す読み出し手段と、前記蓄積部における前記データの蓄積状況に関するパラメータが、所定の条件を満たすか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、前記所定の順序において、現在前記読み出し手段により読み出されている前記データ単位のデータの次に読み出される予定の前記データ単位のデータの読み出しを禁止する禁止手段とを備え、前記読み出し手段は、前記禁止手段により読み出しが禁止された前記データ単位のデータの読み出しを省略し、前記所定の順序において、さらに次に読み出しが予定されている、前記禁止手段により読み出しが禁止されていない前記データ単位のデータの読み出しを行う情報処理装置である。
【0016】
前記パラメータは、前記蓄積部に蓄積されているデータの、前記データ単位の数であるようにし、前記判定手段は、前記データ単位の数が所定の閾値以上であるか否かを判定するようにすることができる。
【0017】
前記パラメータは、前記読み出し手段が前記蓄積部に蓄積されているデータを全て読み出すのに必要な時間であるようにし、前記判定手段は、前記時間を算出し、前記読み出し手段が、所定の時間内に、前記蓄積部に蓄積されているデータを全て読み出すことができるか否かを判定するようにすることができる。
【0018】
前記禁止手段は、前記判定手段により前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、前記データ単位のデータの読み出しを、前記所定の順序において、現在前記読み出し手段により読み出されている前記データ単位のデータの、次に読み出される予定の前記データ単位のデータから連続して、前記判定手段により前記パラメータが前記所定の条件を満たさないと判定されるのに必要な数以上禁止することができる。
【0019】
前記禁止手段は、前記判定手段により前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、前記所定の順序において、現在前記読み出し手段により読み出されている前記データ単位のデータの、次に読み出される予定の前記データ単位のデータを削除することにより、前記データの読み出しを禁止することができる。
【0020】
前記データは画像データを所定の方法で符号化して得られる符号化データであり、前記データ単位は、前記画像データの符号化における処理単位であるようにすることができる。
【0021】
画像データを符号化する符号化手段と、前記符号化手段により前記画像データが符号化されて得られた符号化データを、前記データ単位毎に前記蓄積部に書き込んで蓄積させる書き込み手段とをさらに備えることができる。
【0022】
前記読み出し手段により読み出された前記データをパケット化するパケット化手段をさらに備えることができる。
【0023】
前記パケット化手段によりパケット化された前記データを他の情報処理装置に送信する送信手段をさらに備えることができる。
【0024】
本発明の第1の側面はまた、蓄積部に蓄積されているデータの入出力を制御する情報処理装置の情報処理方法であって、前記蓄積部における前記データの蓄積状況に関するパラメータが、所定の条件を満たすか否かを判定し、前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、現在読み出されている所定のデータ単位のデータの次に読み出される予定の前記データ単位のデータの読み出しを禁止し、読み出しが禁止された前記データ単位のデータの読み出しを省略し、読み出しが禁止されていない前記データ単位のデータのみを、前記データ単位毎に、所定の順序で、所定のビットレートで前記蓄積部より読み出すステップを含む情報処理方法である。
【0025】
本発明の第2の側面は、蓄積部に蓄積されているデータの欠損を所定のデータ単位毎に確認する確認手段と、前記確認手段により、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認されていない場合、前記蓄積部に蓄積されているデータを、前記データ単位毎に、所定の順序で読み出す読み出し手段と、前記確認手段により、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、代替用のデータを出力して補完する補完手段とを備える情報処理装置である。
【0026】
予め定められた所定のデータを、前記代替用のデータとして保持する保持手段をさらに備えるようにし、前記補完手段は、前記確認手段により前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、前記保持手段より前記データを読み出して出力するようにすることができる。
【0027】
前記蓄積部に蓄積されるデータと同一のデータを保持する保持手段をさらに備えるようにし、前記補完手段は、前記確認手段により前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、過去に前記読み出し手段によって前記蓄積部より読み出されたデータと同一のデータを前記保持手段より読み出して出力するようにすることができる。
【0028】
他の装置より伝送された、前記データを含むパケットを解読し、前記データを抽出するパケット解読手段と、前記パケット解読手段により抽出された前記データを前記蓄積部に書き込んで蓄積させる書き込み手段とをさらに備えることができる。
【0029】
前記データは符号化データであるようにし、前記読み出し手段により前記蓄積部より読み出された符号化データ、および、前記補完手段により補完された符号化データを復号する復号手段をさらに備えることができる。
【0030】
本発明の第2の側面はまた、蓄積部に蓄積されているデータの入出力を制御する情報処理装置の情報処理方法であって、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損を所定のデータ単位毎に確認し、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認されていない場合、前記蓄積部に蓄積されているデータを、前記データ単位毎に、所定の順序で読み出し、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、代替用のデータを出力して補完するステップを含む情報処理方法である。
【0031】
本発明の第3の側面は、送信装置より受信装置にデータを伝送する情報処理システムであって、前記送信装置は、送信用蓄積部における前記データの蓄積状況に関するパラメータが、所定の条件を満たすか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により、前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、現在読み出されている所定のデータ単位のデータの次に読み出される予定の前記データ単位のデータの読み出しを禁止する禁止手段と、前記禁止手段により読み出しが禁止された前記データ単位のデータの読み出しを省略し、読み出しが禁止されていない前記データ単位のデータのみを、前記データ単位毎に、所定の順序で、所定のビットレートで前記送信用蓄積部より読み出す第1の読み出し手段と、前記第1の読み出し手段により読み出された前記データを前記受信装置に送信する送信手段とを備え、前記受信装置は、前記送信装置より供給される前記データを受信する受信手段と、前記受信手段により受信された前記データを受信用蓄積部に書き込み蓄積させる書き込み手段と、前記書き込み手段により書き込まれ、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損を所定のデータ単位毎に確認する確認手段と、前記確認手段により、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認されていない場合、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータを、前記データ単位毎に、所定の順序で読み出す第2の読み出し手段と、前記確認手段により、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、代替用のデータを出力して補完する補完手段とを備える情報処理システムである。
【0032】
本発明の第1の側面においては、蓄積部におけるデータの蓄積状況に関するパラメータが、所定の条件を満たすか否かが判定され、パラメータが所定の条件を満たすと判定された場合、現在読み出されている所定のデータ単位のデータの次に読み出される予定のデータ単位のデータの読み出しが禁止され、読み出しが禁止されたデータ単位のデータの読み出しが省略されて、読み出しが禁止されていないデータ単位のデータのみが、データ単位毎に、所定の順序で、所定のビットレートで蓄積部より読み出される。
【0033】
本発明の第2の側面においては、蓄積部に蓄積されているデータの欠損が所定のデータ単位毎に確認され、蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認されていない場合、蓄積部に蓄積されているデータが、データ単位毎に、所定の順序で読み出され、蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、代替用のデータが出力されて補完される。
【0034】
本発明の第3の側面においては、送信装置において、送信用蓄積部におけるデータの蓄積状況に関するパラメータが所定の条件を満たすか否かが判定され、パラメータが所定の条件を満たすと判定された場合、現在読み出されている所定のデータ単位のデータの次に読み出される予定のデータ単位のデータの読み出しが禁止され、読み出しが禁止されたデータ単位のデータの読み出しが省略されて、読み出しが禁止されていないデータ単位のデータのみが、データ単位毎に、所定の順序で、所定のビットレートで送信用蓄積部より読み出され、その読み出されたデータが受信装置に送信され、受信装置において、送信装置より供給されるデータが受信され、その受信されたデータが受信用蓄積部に書き込まれて蓄積され、その受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損が所定のデータ単位毎に確認され、受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認されていない場合、受信用蓄積部に蓄積されているデータが、データ単位毎に、所定の順序で読み出され、受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータの読み出しの代わりに、代替用のデータが出力されて補完される。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、データを伝送することができる。特に、コンテンツのデータ転送において、容易に、不要な遅延時間の増大を抑制するとともに、コンテンツとしての品質の不要な低下も抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書または図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書または図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書または図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0037】
本発明の第1の側面は、蓄積部(例えば、図10のYバッファ253およびCバッファ254)に蓄積されているデータを、所定のデータ単位(例えばプレシンクト)毎に、所定の順序で、所定のビットレートで読み出す読み出し手段(例えば、図11の読み出し指示部294)と、前記蓄積部における前記データの蓄積状況に関するパラメータが、所定の条件を満たすか否かを判定する判定手段(例えば、図11の送出時間確認部283またはプレシンクト数判定部284)と、前記判定手段により前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、前記所定の順序において、現在前記読み出し手段により読み出されている前記データ単位のデータの次に読み出される予定の前記データ単位のデータの読み出しを禁止する禁止手段(例えば、図11の出力禁止部285)とを備え、前記読み出し手段は、前記禁止手段により読み出しが禁止された前記データ単位のデータの読み出しを省略し、前記所定の順序において、さらに次に読み出しが予定されている、前記禁止手段により読み出しが禁止されていない前記データ単位のデータの読み出しを行う情報処理装置である。
【0038】
前記パラメータは、前記蓄積部に蓄積されているデータの、前記データ単位の数であるようにし、前記判定手段(例えば、図11のプレシンクト数判定部284)は、前記データ単位の数が所定の閾値以上であるか否かを判定するようにすることができる。
【0039】
前記パラメータは、前記読み出し手段が前記蓄積部に蓄積されているデータを全て読み出すのに必要な時間であるようにし、前記判定手段(例えば、図11の送出時間確認部283)は、前記時間を算出し、前記読み出し手段が、所定の時間内に、前記蓄積部に蓄積されているデータを全て読み出すことができるか否かを判定するようにすることができる。
【0040】
前記禁止手段は、前記判定手段により前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、前記データ単位のデータの読み出しを、前記所定の順序において、現在前記読み出し手段により読み出されている前記データ単位のデータの、次に読み出される予定の前記データ単位のデータから連続して、前記判定手段により前記パラメータが前記所定の条件を満たさないと判定されるのに必要な数以上禁止する(例えば、図13)ことができる。
【0041】
画像データを符号化する符号化手段(例えば、図2の符号化部201)と、前記符号化手段により前記画像データが符号化されて得られた符号化データを、前記データ単位毎に前記蓄積部に書き込んで蓄積させる書き込み手段(例えば、図10のYデータ書き込み制御部251およびCデータ書き込み制御部252)とをさらに備えることができる。
【0042】
前記読み出し手段により読み出された前記データをパケット化するパケット化手段(例えば、図2のパケット生成部203)をさらに備えることができる。
【0043】
前記パケット化手段によりパケット化された前記データを他の情報処理装置(例えば、図1のカメラ制御部112)に送信する送信手段(例えば、図1のビデオ分離/合成部126)をさらに備えることができる。
【0044】
本発明の第1の側面はまた、蓄積部(例えば、図10のYバッファ253およびCバッファ254)に蓄積されているデータの入出力を制御する情報処理装置(例えば、図1の送信ユニット110)の情報処理方法であって、前記蓄積部における前記データの蓄積状況に関するパラメータが、所定の条件を満たすか否かを判定し(例えば、図24のステップS33またはステップS35)、前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、現在読み出されている所定のデータ単位のデータの次に読み出される予定の前記データ単位のデータの読み出しを禁止し(例えば、図24のステップS34またはステップS36)、読み出しが禁止された前記データ単位のデータの読み出しを省略し、読み出しが禁止されていない前記データ単位のデータのみを、前記データ単位毎に、所定の順序で、所定のビットレートで前記蓄積部より読み出す(例えば、図25のステップS54またはステップS56)ステップを含む情報処理方法である。
【0045】
本発明の第2の側面は、蓄積部(例えば、図17のYバッファ422およびCバッファ423)に蓄積されているデータの欠損を所定のデータ単位毎に確認する確認手段(例えば、図18のプレシンクト番号確認部464)と、前記確認手段により、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認されていない場合、前記蓄積部に蓄積されているデータを、前記データ単位毎に、所定の順序で読み出す読み出し手段(例えば、図18の読み出し指示部466)と、前記確認手段により、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、代替用のデータを出力して補完する補完手段(例えば、図18の補完処理部468)とを備える情報処理装置である。
【0046】
予め定められた所定のデータを、前記代替用のデータとして保持する保持手段(例えば、図18のダミーデータ保持部467)をさらに備えるようにし、前記補完手段は、前記確認手段により前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、前記保持手段より前記データを読み出して出力するようにすることができる。
【0047】
前記蓄積部に蓄積されるデータと同一のデータを保持する保持手段(例えば、図30の1ピクチャ符号化データ保持部567)をさらに備えるようにし、前記補完手段は、前記確認手段により前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、過去に前記読み出し手段によって前記蓄積部より読み出されたデータと同一のデータを前記保持手段より読み出して出力するようにすることができる。
【0048】
他の装置より伝送された、前記データを含むパケットを解読し、前記データを抽出するパケット解読手段(例えば、図16のパケット解読部401)と、前記パケット解読手段により抽出された前記データを前記蓄積部に書き込んで蓄積させる書き込み手段(例えば、図18の書き込み指示部452)とをさらに備えることができる。
【0049】
前記データは符号化データであるようにし、前記読み出し手段により前記蓄積部より読み出された符号化データ、および、前記補完手段により補完された符号化データを復号する復号手段(例えば、図16の復号部403)をさらに備えることができる。
【0050】
本発明の第2の側面はまた、蓄積部(例えば、図17のYバッファ422およびCバッファ423)に蓄積されているデータの入出力を制御する情報処理装置(例えば、図1のカメラ制御部112)の情報処理方法であって、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損を所定のデータ単位毎に確認し(例えば、図27のステップS93)、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認されていない場合、前記蓄積部に蓄積されているデータを、前記データ単位毎に、所定の順序で読み出し(例えば、図27のステップS95およびステップS96)、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、代替用のデータを出力して補完する(例えば、図27のステップS97)ステップを含む情報処理方法である。
【0051】
本発明の第3の側面は、送信装置(例えば、図1の送信ユニット110)より受信装置(例えば、図1のカメラ制御部112)にデータを伝送する情報処理システム(例えば、図1のデジタルトライアックスシステム100)であって、前記送信装置は、送信用蓄積部(例えば、図10のYバッファ253およびCバッファ254)における前記データの蓄積状況に関するパラメータが、所定の条件を満たすか否かを判定する判定手段(例えば、図11の送出時間確認部283またはプレシンクト数判定部284)と、前記判定手段により、前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、現在読み出されている所定のデータ単位(例えばプレシンクト)のデータの次に読み出される予定の前記データ単位のデータの読み出しを禁止する禁止手段(例えば、図11の出力禁止部285)と、前記禁止手段により読み出しが禁止された前記データ単位のデータの読み出しを省略し、読み出しが禁止されていない前記データ単位のデータのみを、前記データ単位毎に、所定の順序で、所定のビットレートで前記送信用蓄積部より読み出す第1の読み出し手段(例えば、図11の読み出し指示部294)と、前記第1の読み出し手段により読み出された前記データを前記受信装置に送信する送信手段(例えば、図1のビデオ分離/合成部126)とを備え、前記受信装置は、前記送信装置より供給される前記データを受信する受信手段(例えば、図1のビデオ分離/合成部130)と、前記受信手段により受信された前記データを受信用蓄積部(例えば、図17のYバッファ422およびCバッファ423)に書き込み蓄積させる書き込み手段(例えば、図18の書き込み指示部452)と、前記書き込み手段により書き込まれ、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損を所定のデータ単位毎に確認する確認手段(例えば、図18のプレシンクト番号確認部464)と、前記確認手段により、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認されていない場合、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータを、前記データ単位毎に、所定の順序で読み出す第2の読み出し手段(例えば、図18の読み出し指示部466)と、前記確認手段により、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、代替用のデータを出力して補完する補完手段(例えば、図18の補完処理部468)とを備える情報処理システムである。
【0052】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0053】
図1は、本発明を適用したデジタルトライアックスシステムの構成例を示すブロック図である。図1において、デジタルトライアックスシステム100は、テレビジョン放送局や制作スタジオなどにおいて使用されるシステムであり、送信ユニット110、トライアックスケーブル111、およびカメラ制御部112等よりなる。
【0054】
スタジオ収録やスポーツ中継などのようなテレビジョン番組等のコンテンツの制作においては、撮影を行うビデオカメラと、そのビデオカメラによる撮影により得られた画像データを記録したり、入出力する画像データの切り替えをしたり、または画像データを編集したりする中央制御システムとにより構成されるシステムが用いられることがある。
【0055】
通常の場合、撮影には複数のビデオカメラが用いられる。それらの複数のビデオカメラは、デジタルトライアックスシステム100を介して中央制御システムに接続される。各ビデオカメラは、撮影者によって操作され、撮像素子などを利用して画像を取り込み、その画像データを生成する。中央制御システムは、コンテンツの制作を制御(管理)するシステムであり、1つまたは複数の装置により構成され、コンテンツの記録や、入出力の切り替えや、コンテンツの編集等の機能を有する。この中央制御システムは、例えば、ディレクタ等のような撮影の指示を出す指示者、若しくはその指示者の指示を受ける者等により操作される。
【0056】
コンテンツの制作において、指示者は、各ビデオカメラを操作する撮影者に対して撮影に関する指示を行う。指示者の指示に従って撮影された画像データは、各ビデオカメラから中央制御システムに供給されて処理される。
【0057】
図1のデジタルトライアックスシステム100は、このような、ビデオカメラ側と中央制御システム側との間で行われる、撮影指示やコンテンツ(映像や音声)等の授受を行うシステムである。換言すれば、上述したビデオカメラや中央制御システムは、図1のデジタルトライアックスシステム100を介してコンテンツや指示の授受を行う。
【0058】
デジタルトライアックスシステム100は、例えば、ビデオカメラにおいて撮影されて得られた画像データや音声データを、実際に放映されたり素材として用いられたりする本線データ(画像データを本線映像データと称し、音声データを本線音声データと称する。また、本線映像データの画像を本線ビデオ映像と称する。)として、中央制御システムに伝送する。また、デジタルトライアックスシステム100は、例えば、中央制御システムより供給される、指示者の指示等を含む音声データや制御コマンド等をビデオカメラに伝送する。さらに、デジタルトライアックスシステム100は、例えば、ビデオカメラより中央制御システムに伝送した本線映像データを、確認用の画像データであるリターン映像データ(リターン映像データの画像をリターンビデオ映像と称する)として、中央制御システムからビデオカメラに伝送する。
【0059】
次に、デジタルトライアックスシステム100の構成について説明する。
【0060】
このデジタルトライアックスシステム100においては、送信ユニット110とカメラ制御部112とが同軸ケーブルであるトライアックスケーブル111を介して接続される。
【0061】
送信ユニット110は、ビデオカメラ側の伝送に関する処理を行う処理部である。図1においては、撮影に関する機能を有するビデオカメラ部113に接続される。送信ユニット110は、ビデオカメラに内蔵されるようにしてもよいし、ビデオカメラに対する外部装置として、ビデオカメラと所定の方法で接続されるようにしてもよい。つまり、図1のビデオカメラ部113と送信ユニット110が互いに異なる装置として構成されるようにしてもよいし、ビデオカメラ部113と送信ユニット110が1つの装置として構成されるようにしてもよい。
【0062】
カメラ制御部112は、例えば一般的にCCU(Camera Control Unit)と呼ばれる処理部であり、中央制御システム側の伝送に関する処理を行う。カメラ制御部112は、中央制御システムの所定の装置に内蔵されるようにしてもよいし、中央制御システムに対する外部装置として、中央制御システムの所定の装置と所定の方法で接続されるようにしてもよい。
【0063】
なお、図1においては、デジタルトライアックスシステム100が、送信ユニット110、トライアックスケーブル111、およびカメラ制御部112だけでなく、ビデオカメラ部113や、その周辺装置(後述する)も含むものとして説明する。
【0064】
また、実際には、ビデオカメラ部113は、撮影時に集音も行う。つまり、ビデオカメラ部113は、画像データだけでなく音声データも生成する。この音声データは、画像データとともに、デジタルトライアックスシステム100を介して、デジタルオーディオ信号としてカメラ制御部112に伝送される。しかしながら、この音声データついては、この発明の主旨と関わりが少ないので、以下においては、煩雑さを避けるために、音声データについての説明を適宜省略する。
【0065】
ビデオカメラ部113は、レンズ、フォーカス機構、ズーム機構、アイリス調整機構などを有する光学系150を介して入射された被写体からの光を、CCD(Charge Coupled Device)などからなる図示せぬ撮像素子で受光する。撮像素子は、受光された光を光電変換で電気信号に変換し、さらに所定の信号処理を施してベースバンドのデジタルビデオ信号(画像データ)を出力する。このデジタルビデオ信号は、例えばHD-SDI(High Definition-Serial Data Interface)のフォーマットにマッピングして出力される。
【0066】
また、ビデオカメラ部113には、モニタとして用いられる表示部151と、外部と音声によるやりとりを行うためのインカム152が接続される。
【0067】
送信ユニット110は、ビデオ信号符号化部120およびビデオ信号復号部121、デジタル変調部122およびデジタル復調部123、アンプ124およびアンプ125、並びに、ビデオ分離/合成部126を有し、ビデオカメラ部113に接続される。
【0068】
送信ユニット110において、ビデオカメラ部113から、例えばHD-SDIのフォーマットにマッピングされたベースバンドのデジタルビデオ信号(画像データ)が供給される。このデジタルビデオ信号は、放映されたり素材として用いられたりする本線映像データの信号(本線デジタルビデオ信号)であり、ビデオ信号符号化部120において圧縮符号化され、符号化データ(符号化ストリーム)とされ、パケット化されてデジタル変調部122に供給される。デジタル変調部122は、供給された符号化ストリームのパケットを、トライアックスケーブル111を介した伝送に適した形式の信号に変調して出力する。デジタル変調部122から出力された信号は、アンプ124を介してビデオ分離/合成部126に供給される。ビデオ分離/合成部126は、供給された信号をトライアックスケーブル111に送出する。この信号は、トライアックスケーブル111を介してカメラ制御部112に供給される。
【0069】
また、そのカメラ制御部112から出力された信号が、トライアックスケーブル111を介して送信ユニット110に供給されて受信される。その受信された信号は、ビデオ分離/合成部126に供給され、デジタルビデオ信号の部分とその他の信号の部分とが分離される。受信信号のうちデジタルビデオ信号の部分は、アンプ125を介してデジタル復調部123に供給され、カメラ制御部112側でトライアックスケーブル111を介した伝送に適した形式の信号に変調された信号を復調し、符号化ストリームのパケットを復元する。
【0070】
この符号化ストリームのパケットはビデオ信号復号部121に供給される。ビデオ信号復号部121は、符号化ストリームのパケットを解読して符号化ストリームを抽出し(デパケタイズし)、抽出した符号化ストリームの圧縮符号を復号し、ベースバンドのデジタルビデオ信号を復元する。この復号されたデジタルビデオ信号は、HD-SDIのフォーマットにマッピングされて出力され、リターン映像データの信号(リターンデジタルビデオ信号と称する)としてビデオカメラ部113に供給される。このリターンデジタルビデオ信号は、ビデオカメラ部113に接続される表示部151に供給され、撮影者のためのリターンビデオ映像のモニタなどに利用される。
【0071】
なお、表示部151には、ビデオカメラ部113において撮影された、中央制御システムへ転送する前の本線ビデオ映像も表示させるようにしてもよい。ただし、この本線ビデオ映像のデータは上述したように圧縮されて転送されるので、画質劣化等により転送前の映像と転送後の映像とで互いに同じタイミングのフレーム画像であっても視覚的に大きく異なる場合がある。従って、撮影者が、本線映像データが中央制御システムにおいてどの様な状態で受け取られているかを容易に把握することができるようにするために、カメラ制御部112側より供給されるリターンビデオ映像は、表示部151に表示されるようにすることが望ましい。
【0072】
本線映像データは、中央制御システムに転送された後、その中央制御システムにおいて記録されたり、編集されたり、モニタにその画像を表示されたり、若しくは外部の装置に出力されたりする。つまり、本線映像データは、中央制御システムにおいて利用されるので、撮影者は、その利用時の画像の状態を把握しながら撮影を行うことが望ましい。例えば、転送前の本線ビデオ映像においては視認可能であった被写体が、転送後の本線ビデオ映像においては画質劣化により視認することができなくなっていることも考えられる。表示部151にリターンビデオ映像を表示させることにより、撮影者は、画質劣化によって被写体が視認できなくなっていることを容易に把握することができるので、例えば、転送後でもその被写体が視認可能であるように撮影方法を変更することができる。
【0073】
また、中央制御システムを操作する指示者は、本線ビデオ映像を確認しながら撮影者に対して撮影に関する指示を行うが、このとき、撮影者が確認する画像と指示者が確認する画像とが互いに異なると、撮影者が指示者からの指示の意味を理解することができない恐れもある。そこで、表示部151に、カメラ制御部112側より供給される、リターンビデオ映像を表示させるようにすることにより、撮影者は、指示者がどの様な画像に基づいて指示を出したかを容易に把握することができ、指示者からの指示の意味をより正しく理解することができるようになる。
【0074】
カメラ制御部112は、ビデオ分離/合成部130、アンプ131およびアンプ132、フロントエンド部133、デジタル復調部134およびデジタル変調部135、並びに、ビデオ信号復号部136およびビデオ信号符号化部137を有する。
【0075】
送信ユニット110から出力された信号は、トライアックスケーブル111を介してカメラ制御部112に供給されて受信される。その受信された信号は、ビデオ分離/合成部130に供給される。ビデオ分離/合成部130は、供給された信号を、アンプ131およびフロントエンド部133を介してデジタル復調部134に供給する。なお、フロントエンド部133は、入力信号のゲインを調整するゲイン制御部や、入力信号に対して所定のフィルタ処理を施すフィルタ部などを有する。
【0076】
デジタル復調部134は、送信ユニット110側でトライアックスケーブル111を介した伝送に適した形式の信号に変調された信号を復調し、符号化ストリームのパケットを復元する。この符号化ストリームのパケットはビデオ信号復号部136に供給される。ビデオ信号復号部136は、ビデオ信号復号部121と同様に、符号化ストリームのパケットを解読して符号化ストリームを抽出し(デパケタイズし)、抽出した符号化ストリームの圧縮符号を復号し、ベースバンドのデジタルビデオ信号を復元する。この復号されたデジタルビデオ信号は、HD-SDIのフォーマットにマッピングされて出力され、本線デジタルビデオ信号として外部の中央制御システムに出力され、例えば、モニタに映像が表示されたり、編集されたりする。
【0077】
外部からカメラ制御部112に対して、デジタルオーディオ信号が供給される。デジタルオーディオ信号は、例えば、撮影者のインカム152に供給され、指示者から撮影者に対する音声による指示を伝達するのに用いられる。また、ビデオ信号復号部136は、復号されたデジタルビデオ信号を、リターン用としてビデオ信号符号化部137にも供給する。ビデオ信号符号化部137は、ビデオ信号復号部136より供給されたベースバンドのデジタルビデオ信号を、ビデオ信号符号化部120と同様に圧縮符号化し、得られた符号化データ(符号化ストリーム)をパケット化して、そのパケットをデジタル変調部135に供給する。
【0078】
デジタル変調部135は、供給された符号化ストリームを、トライアックスケーブル111を介した伝送に適した形式の信号に変調して出力する。デジタル変調部135から出力された信号は、フロントエンド部133およびアンプ132を介してビデオ分離/合成部130に供給される、ビデオ分離/合成部130は、この信号を他の信号と多重化し、トライアックスケーブル111に送出する。この信号は、リターンデジタルビデオ信号としてトライアックスケーブル111を介して送信ユニット110に供給される。
【0079】
このようなデジタルトライアックスシステム100には、データ伝送時の即時性(リアルタイム性)が求められる。例えば、指示者は、ビデオカメラ部113より転送されてきた本線ビデオ映像を参照しながら撮影者に対して指示を行うので、本線映像データが、ビデオカメラ部113において生成されてから、デジタルトライアックスシステム100により伝送され、中央制御システムにおいて画像が表示されるまでの遅延時間が増大すると、指示者からの撮影者への指示が遅すぎてしまう恐れがある。さらに、送信ユニット110よりカメラ制御部112に転送された本線映像データが、再度送信ユニット110に転送され、その画像(本線ビデオ映像)が表示部151に表示されるまでの遅延時間も増大すると、本線ビデオ映像に基づいて行われた指示が、リターンビデオ映像とのタイミングが合わず、撮影者がその指示の意味を理解することが困難になる恐れもある。
【0080】
以上のような理由から、特にスポーツ中継のように動的な被写体を撮影する場合、カメラコントロールユニットのユーザからのカメラヘッドのユーザに対する指示のタイミングが重要になってくる。つまり、デジタルトライアックスシステム100においては、データ伝送の遅延時間を可能な限り低減させることが望ましい。
【0081】
そこで、ビデオ信号符号化部120やビデオ信号符号化部137は、後述するように、より低遅延で画像データを符号化するようになされている。また、ビデオ信号復号部121およびビデオ信号復号部136も、後述するように、より低遅延で符号化データを復号するようになされている。しかしながら、符号化処理や復号処理以外にも、さらなる遅延時間の短縮が求められている。
【0082】
ところで、デジタルトライアックスシステム100においては、伝送経路の帯域は有限であるので、符号化データは略一定のビットレートで伝送されるようにすることが望ましい。例えば、デジタルトライアックスシステム100において、本線映像データの符号化データが伝送される回線である本線、および、リターン映像データの符号化データが伝送されるリターン回線の帯域幅がそれぞれ150Mbpsであるとすると、ビデオ信号符号化部120やビデオ信号符号化部137は、本線映像データやリターン映像データを、150Mbpsのビットレートに圧縮する必要がある。
【0083】
しかしながら、一般的には、画像データを構成するピクチャ(インタレース方式の画像ではフィールド、プログレッシブ方式の画像ではフレーム)によって、圧縮の難易度が異なるため、発生符号量は、ピクチャ毎に変動する可能性が高い。
【0084】
そこで、ビデオ信号符号化部120やビデオ信号符号化部137は、後述するように、符号化データの伝送時のビットレート(伝送レート)を安定させるために、符号化により生成された符号化データをバッファに蓄積し、そのバッファより符号化データを所定のビットレートで読み出して伝送することにより、伝送レートを平滑化する。このバッファの容量、すなわち、バッファに蓄積するデータ量が多いほど、ビデオ信号符号化部120やビデオ信号符号化部137は、より安定的に符号化データを伝送させることができる。つまり、ビデオ信号符号化部120やビデオ信号符号化部137は、バッファに蓄積するデータ量が多いほど、発生符号量がより大きな幅で変動しても、符号化データを略一定の伝送レートで伝送させることができるようになる。
【0085】
しかしながら、バッファに蓄積するデータ量が多いほど、伝送に要する遅延時間は増大する。そこで、ビデオ信号符号化部120、ビデオ信号復号部121、ビデオ信号復号部136、およびビデオ信号符号化部137は、後述するように、不要な遅延時間の増大を抑制するとともに、コンテンツとしての品質の不要な低下も抑制するように平滑化処理や受信処理を行うようになされている。
【0086】
なお、図1において、トライアックスケーブル111は、同軸ケーブルであるように説明したが、符号化データを伝送可能な伝送媒体であれば何でもよく、有線であってもよいし、無線であってもよいし、有線と無線の両方を含むものであってもよい。また、1つまたは複数のネットワークを含むようにしてもよい。
【0087】
また、図1においては、送信ユニット110とカメラ制御部112が1対1に接続されるように示されているが、1つのカメラ制御部112に対して複数の送信ユニット110が接続されるようにしてももちろんよい。
【0088】
次に、各部の詳細について説明する。
【0089】
図2は、図1のビデオ信号符号化部120の詳細な構成例を示すブロック図である。なお、図1のビデオ信号符号化部137は、ビデオ信号符号化部120と同様の構成を有し、同様の処理を行うので、ビデオ信号符号化部120に対する説明を適用することができる。従って、説明の簡略化のため、必要な場合を除き、ビデオ信号符号化部137の説明は省略する。
【0090】
図2において、ビデオ信号符号化部120は、符号化部201、送信用バッファ制御部202、およびパケット生成部203を有する。
【0091】
符号化部201は、ビデオカメラ部113より供給される本線映像データを所定の符号化方法で符号化し、得られた符号化データを送信用バッファ制御部202に供給する。送信用バッファ制御部202は、供給された符号化データを内蔵するバッファに蓄積し、その符号化データを所定のビットレートで読み出してパケット生成部203に供給することにより符号化データの伝送レートを平滑化する。パケット生成部203は、送信用バッファ制御部202より供給される符号化データを所定のデータ単位毎にヘッダ情報を付加してパケット化する。パケット生成部203は、このように生成した符号化データのパケットを本線映像データとしてデジタル変調部122に供給する。
【0092】
詳細については後述するが、このとき、送信用バッファ制御部202は、容易に、不要な遅延時間の増大を抑制するとともに、コンテンツとしての品質の不要な低下も抑制することができるような方法で、符号化データの伝送レートを平滑化する。
【0093】
なお、ビデオ信号符号化部137の場合、符号化部201は、ビデオ信号復号部136より供給されるリターン映像データを符号化し、パケット生成部203は、送信用バッファ制御部202より供給された符号化データをパケット化し、そのパケットをリターン映像データとしてデジタル変調部135に供給する。
【0094】
図3は、図2の符号化部201の詳細な構成例を示すブロック図である。
【0095】
図3において、符号化部201は、ウェーブレット変換部221、途中計算用バッファ部222、係数並び替え用バッファ部223、係数並び替え部224、量子化部225、レート制御部226、およびエントロピ符号化部227を有する。
【0096】
符号化部201に入力された画像データは、ウェーブレット変換部221を介して途中計算用バッファ部222に一時的に溜め込まれる。ウェーブレット変換部221は、途中計算用バッファ部222に溜め込まれた画像データに対してウェーブレット変換を施す。すなわち、ウェーブレット変換部221は、途中計算用バッファ部222から画像データを読み出して分析フィルタによりフィルタ処理を施して低域成分および高域成分の係数のデータを生成し、生成された係数データを途中計算用バッファ部222に格納する。ウェーブレット変換部221は、水平分析フィルタと垂直分析フィルタとを有し、画像データ群に対して、画面水平方向と画面垂直方向の両方について分析フィルタ処理を行う。ウェーブレット変換部221は、途中計算用バッファ部222に格納された低域成分の係数データを再度読み出し、読み出した係数データに対して分析フィルタによるフィルタ処理を施して、高域成分および低域成分の係数のデータをさらに生成する。生成された係数データは、途中計算用バッファ部222に格納される。
【0097】
ウェーブレット変換部221は、この処理を繰り返して分解レベルが所定レベルに達したら、途中計算用バッファ部222から係数データを読み出し、読み出された係数データを係数並び替え用バッファ部223に書き込む。
【0098】
係数並び替え部224は、係数並び替え用バッファ部223に書き込まれた係数データを所定の順序で読み出し、量子化部225に供給する。
【0099】
レート制御部226は、エントロピ符号化部227において発生する符号量(生成される符号化データのデータ量)が、例えば外部より指定される、若しくは予め設定された目標符号量に適合(一致または近似)するように、量子化部225において行われる量子化処理で用いられる量子化ステップサイズを算出し、その量子化ステップサイズを指定する指示情報を、量子化部225に供給する。
【0100】
量子化部225は、係数並び替え部224より供給される係数データを、その供給順に、レート制御部226より供給される指示情報により指定される量子化ステップサイズで量子化し、それをエントロピ符号化部227に供給する。エントロピ符号化部227は、供給された係数データを、例えばハフマン符号化や算術符号化といった所定のエントロピ符号化方式で符号化し、符号化データを生成する。エントロピ符号化部227は、生成した符号化データを図2の送信用バッファ制御部202に供給する。
【0101】
次に、図3のウェーブレット変換部221で行われる処理について、より詳細に説明する。先ず、ウェーブレット変換について、概略的に説明する。画像データに対するウェーブレット変換では、図4に概略的に示されるように、画像データを空間周波数の高い帯域と低い帯域とに分割する処理を、分割の結果得られる空間周波数の低い帯域のデータに対して再帰的に繰り返す。こうして、空間周波数の低い帯域のデータをより小さな領域に追い込んでいくことで、効率的な圧縮符号化を可能とする。
【0102】
なお、図4は、画像データの最低域成分領域に対する低域成分の領域Lおよび高域成分の領域Hへの分割処理を3回、繰り返し、分割レベル=3とした場合の例である。図4において、"L"および"H"は、それぞれ低域成分および高域成分を表し、"L"および"H"の順序は、前側が横方向に分割した結果の帯域を示し、後側が縦方向に分割した結果の帯域を示す。また、"L"および"H"の前の数字は、その領域の分割レベルを示す。
【0103】
また、図4の例から分かるように、画面の右下の領域から左上の領域にかけて段階的に処理がなされ、低域成分が追い込まれていく。すなわち、図4の例では、画面の右下の領域が最も低域成分の少ない(高域成分が最も多く含まれる)領域3HHとされる、画面が4分割された左上の領域は、さらに4分割され、この4分割された領域のうち左上の領域がさらに4分割される。最も左上隅の領域は、最も低域成分を多く含む領域0LLとされる。
【0104】
低域成分に対して繰り返し変換および分割を行うのは、画像のエネルギが低域成分に集中しているためである。このことは、図5Aに一例が示される分割レベル=1の状態から、図5Bに一例が示される分割レベル=3の状態のように分割レベルを進めていくに従って、図5Bに示されるようにしてサブバンドが形成されていくことからも、理解される。例えば、図4におけるウェーブレット変換の分割レベルは3であり、この結果、10個のサブバンドが形成されている。
【0105】
ウェーブレット変換部221は、通常、低域フィルタと高域フィルタとから構成されるフィルタバンクを用いて、上述のような処理を行う。なお、デジタルフィルタは、通常、複数タップ長のインパルス応答すなわちフィルタ係数を持っているため、フィルタ処理を行えるだけの入力画像データまたは係数データを予めバッファリングしておく必要がある。また、ウェーブレット変換を多段にわたって行う場合も同様に、前段で生成したウェーブレット変換係数を、フィルタ処理が行える数だけバッファリングしておく必要がある。
【0106】
このウェーブレット変換の具体的な例として、5×3フィルタを用いた方法について説明する。この5×3フィルタを用いた方法は、従来技術で既に説明したJPEG(Joint Photographic Experts Group)2000規格でも採用されており、少ないフィルタタップ数でウェーブレット変換を行うことができる点で、優れた方法である。
【0107】
5×3フィルタのインパルス応答(Z変換表現)は、次の式(1)および式(2)に示すように、低域フィルタH0(z)と、高域フィルタH1(z)とから構成される。式(1)および式(2)から、低域フィルタH0(z)は、5タップで、高域フィルタH1(z)は、3タップであることが分かる。
【0108】
0(z)=(−1+2z-1+6Z-2+2Z-3−z-4)/8 ・・・(1)
1(z)=(−1+2Z-1−Z-2)/2 ・・・(2)
【0109】
これら式(1)および式(2)によれば、低域成分および高域成分の係数を、直接的に算出することができる。ここで、リフティング(Lifting)技術を用いることで、フィルタ処理の計算を減らすことができる。
【0110】
次に、このウェーブレット変換方法について、より具体的に説明する。図6は、5×3フィルタのリフティングによるフィルタ処理を、分解レベル=2まで実行した例を示している。なお、図6において、図の左側に分析フィルタとして示される部分は、符号化部201におけるウェーブレット変換部221のフィルタである。また、図の右側に合成フィルタとして示される部分は、後述する復号部403におけるウェーブレット逆変換部484(図22)のフィルタである。
【0111】
なお、以下の説明では、例えば表示デバイスなどにおいて画面の左上隅の画素を先頭として、画素が画面の左端から右端に向けて走査されて1ラインが構成され、ライン毎の走査が画面の上端から下端に向けて行われて1画面が構成されるものとする。
【0112】
図6において、左端列は、原画像データのライン上の対応する位置にある画素データが縦方向に並べられて示されている。すなわち、ウェーブレット変換部221におけるフィルタ処理は、垂直フィルタを用いて画面上を画素が縦に走査されて行われる。左端から1列目乃至3列目が分割レベル=1のフィルタ処理を示し、4列目乃至6列目が分割レベル=2のフィルタ処理を示す。左端から2列目は、左端の原画像データの画素に基づく高域成分出力、左端から3列目は、原画像データおよび高域成分出力に基づく低域成分出力を示す。分割レベル=2のフィルタ処理は、左端から4列目乃至6列目に示されるように、分割レベル=1のフィルタ処理の出力に対して処理がなされる。
【0113】
分解レベル=1のフィルタ処理において、第1段階のフィルタ処理として、原画像データの画素に基づき高域成分の係数データが算出され、第2段階のフィルタ処理として、第1段階のフィルタ処理で算出された高域成分の係数データと、原画像データの画素とに基づき低域成分の係数データが算出される。分解レベル=1の一例のフィルタ処理を、図6における左側(分析フィルタ側)の第1列目乃至第3列目に示す。算出された高域成分の係数データは、図3で説明した係数並び替え用バッファ部223に格納される。また、算出された低域成分の係数データは、途中計算用バッファ部222に格納される。
【0114】
図6においては、一点鎖線で囲まれているデータが係数並び替え用バッファ部223に一時的に保存され、点線で囲まれているデータが途中計算用バッファ部222に一時的に保存される。
【0115】
途中計算用バッファ部222に保持された分解レベル=1のフィルタ処理の結果に基づき、分解レベル=2のフィルタ処理が行われる。分解レベル=2のフィルタ処理では、分解レベル=1のフィルタ処理において低域成分の係数として算出された係数データを、低域成分および高域成分を含んだ係数データと見做して、分解レベル=1と同様のフィルタ処理を行う。分解レベル=2のフィルタ処理により算出された、高域成分の係数データおよび低域成分の係数データは、図3で説明した係数並び替え用バッファ部223に格納される。
【0116】
ウェーブレット変換部221では、上述したようなフィルタ処理を、画面の水平方向および垂直方向にそれぞれ行う。例えば、先ず、分解レベル=1のフィルタ処理を水平方向に行い、生成された高域成分および低域成分の係数データを途中計算用バッファ部222に格納する。次に、途中計算用バッファ部222に格納された係数データに対して、垂直方向に分解レベル=1のフィルタ処理を行う。この分解レベル=1の水平および垂直方向の処理により、高域成分をさらに高域成分および低域成分に分解した係数データのそれぞれによる領域HHおよび領域HLと、低域成分をさらに高域成分および低域成分に分解した係数データのそれぞれによる領域LHおよび領域LLとの4領域が形成される。
【0117】
そして、分解レベル=2では、水平方向および垂直方向のそれぞれについて、分解レベル=1で生成された低域成分の係数データに対してフィルタ処理が行われる。すなわち、分解レベル=2では、分解レベル=1で分割されて形成された領域LLがさらに4分割され、領域LL内にさらに領域HH、領域HL、領域LHおよび領域LLが形成される。
【0118】
ウェーブレット変換部221は、ウェーブレット変換によるフィルタ処理を、画面の縦方向について、数ライン毎の処理に分割して、複数回に分けて段階的に行うようにしている。図6の例では、画面上の第1ラインからの処理になる1回目の処理は、7ラインについてフィルタ処理を行い、8ライン目からの処理になる2回目以降の処理は、4ライン毎にフィルタ処理を行っている。このライン数は、高域成分と低域成分とに2分解した後に、1ライン分の最低域成分が生成されるために必要なライン数に基づく。
【0119】
なお、以下において、この最低域成分の1ライン分(最低域成分のサブバンドの1ライン分の係数データ)を生成するために必要な、他のサブバンドも含めたラインの集まりを、プレシンクト(Precinct)(またはラインブロック)と称する。ここでラインとは、ウェーブレット変換前の画像データに対応するピクチャ若しくはフィールド内、または各サブバンド内において形成される1行分の画素データ若しくは係数データのことを示す。すなわち、プレシンクト(ラインブロック)とは、ウェーブレット変換前の元の画像データにおける、ウェーブレット変換後の最低域成分のサブバンド1ライン分の係数データを生成するために必要なライン数分の画素データ群、または、その画素データ群をウェーブレット変換して得られる各サブバンドの係数データ群のことを示す。
【0120】
図6によれば、分解レベル=2のフィルタ処理結果で得られる係数C5は、係数C4および途中計算用バッファ部222に格納された係数Caに基づき算出され、係数C4は、途中計算用バッファ部222に格納された係数Ca、係数Cb及び係数Ccに基づき算出される。さらに、係数Ccは、係数並び替え用バッファ部223に格納される係数C2および係数C3、並びに、第5ラインの画素データに基づき算出される。また、係数C3は、第5ライン乃至第7ラインの画素データに基づき算出される。このように、分割レベル=2における低域成分の係数C5を得るためには、第1ライン乃至第7ラインの画素データが必要とされる。
【0121】
これに対して、2回目以降のフィルタ処理においては、前回までのフィルタ処理で既に算出され係数並び替え用バッファ部223に格納されている係数データを用いることができるので、必要なライン数が少なくて済む。
【0122】
すなわち、図6によれば、分解レベル=2のフィルタ処理結果で得られる低域成分の係数のうち、係数C5の次の係数である係数C9は、係数C4および係数C8、並びに、途中計算用バッファ部222に格納された係数Ccに基づき算出される。係数C4は、上述した1回目のフィルタ処理により既に算出され、係数並び替え用バッファ部223に格納されている。同様に、係数Ccは、上述の1回目のフィルタ処理により既に算出され、途中計算用バッファ部222に格納されている。したがって、この2回目のフィルタ処理においては、係数C8を算出するためのフィルタ処理のみが、新たになされることになる。この新たなフィルタ処理は、第8ライン乃至第11ラインがさらに用いられてなされる。
【0123】
このように、2回目以降のフィルタ処理は、前回までのフィルタ処理により算出され途中計算用バッファ部222および係数並び替え用バッファ部223に格納されたデータを用いることができるので、それぞれ4ライン毎の処理で済むことになる。
【0124】
なお、画面上のライン数が符号化のライン数と合致しない場合は、原画像データのラインを所定の方法で複製してライン数を符号化のライン数と合わせて、フィルタ処理を行う。
【0125】
このように、最低域成分1ライン分の係数データが得られるだけのフィルタ処理を段階的に、画面全体のラインに対して複数回に分けて(プレシンクト単位で)行うことで、符号化データを伝送した際に低遅延で復号画像を得ることを可能としている。
【0126】
ウェーブレット変換を行うためには、ウェーブレット変換そのものを実行するために用いられる第1のバッファと、所定の分割レベルまで処理を実行する間に生成される係数を格納するための第2のバッファとが必要とされる。第1のバッファは、途中計算用バッファ部222に対応し、図6においては点線で囲まれているデータが一時的に保存される。また、第2のバッファは、係数並び替え用バッファ部223に対応し、図6においては一点鎖線に囲まれているデータが一時的に保存される。第2のバッファに格納された係数は、復号の際に用いられるため、後段のエントロピ符号化処理の対象とされる。
【0127】
係数並び替え部224の処理について説明する。上述したように、ウェーブレット変換部221で算出された係数データは、係数並び替え用バッファ部223に格納され、係数並び替え部224により順序を並び替えられて読み出され、量子化部225に送出される。
【0128】
既に説明したように、ウェーブレット変換においては、高域成分側から低域成分側へと係数が生成されていく。図6の例では、1回目において、原画像の画素データにより、分解レベル=1のフィルタ処理で、高域成分の係数C1、係数C2および係数C3が順次生成される。そして、分解レベル=1のフィルタ処理で得られた低域成分の係数データに対して分解レベル=2のフィルタ処理を行い、低域成分の係数C4および係数C5が順次生成される。すなわち、第1回目では、係数C1、係数C2、係数C3、係数C4、係数C5の順に、係数データが生成される。この係数データの生成順は、ウェーブレット変換の原理上、必ずこの順序(高域から低域の順)になる。
【0129】
これに対して、復号側では、低遅延で即座に復号を行うためには低域成分から画像の生成および出力を行う必要がある。そのため、符号化側で生成された係数データを最低域成分側から高域成分側に向けて並び替えて復号側に供給することが望ましい。
【0130】
図6の例を用いて、より具体的に説明する。図6の右側は、ウェーブレット逆変換を行う合成フィルタ側を示す。復号側の、出力画像データの第1ライン目を含む1回目の合成処理(ウェーブレット逆変換処理)は、符号化側の1回目のフィルタ処理で生成された最低域成分の係数C4および係数C5と、係数C1とを用いて行われる。
【0131】
すなわち、1回目の合成処理においては、係数C5、係数C4、係数C1の順に符号化側から復号側に係数データを供給し、復号側では、分解レベル=2に対応する合成処理である合成レベル=2の処理で、係数C5および係数C4に対して合成処理を行って係数Cfを生成し、バッファに格納する。そして、分解レベル=1に対応する合成処理である合成レベル=1の処理で、この係数Cfと係数C1に対して合成処理を行って、第1ラインを出力する。
【0132】
このように、第1回目の合成処理においては、符号化側で係数C1、係数C2、係数C3、係数C4、係数C5の順に生成され係数並び替え用バッファ部223に格納された係数データが、係数C5、係数C4、係数C1、・・・の順に並び替えられて復号側に供給される。
【0133】
なお、図6の右側に示す合成フィルタ側では、符号化側から供給される係数について、括弧内に符号化側での係数の番号を記し、括弧外に合成フィルタのライン順を記す。例えば係数C1(5)は、図6の左側の分析フィルタ側では係数C5であって、合成フィルタ側では第1ライン目であることを示す。
【0134】
符号化側の2回目以降のフィルタ処理で生成された係数データによる復号側の合成処理は、前回の合成処理の際に合成あるいは符号化側から供給された係数データを用いて行うことができる。図6の例では、符号化側の2回目のフィルタ処理で生成された低域成分の係数C8および係数C9を用いて行う、復号側の2回目の合成処理は、符号化側の1回目のフィルタ処理で生成された係数C2および係数C3がさらに必要とされ、第2ライン乃至第5ラインが復号される。
【0135】
すなわち、2回目の合成処理においては、係数C9、係数C8、係数C2、係数C3の順に符号化側から復号側に係数データを供給する。復号側では、合成レベル=2の処理において、係数C8および係数C9と、1回目の合成処理の際に符号化側から供給された係数C4とを用いて係数Cgを生成し、バッファに格納する。この係数Cgと、上述の係数C4と、1回目の合成処理により生成されバッファに格納された係数Cfとを用いて係数Chを生成し、バッファに格納する。
【0136】
そして、合成レベル=1の処理において、合成レベル=2の処理で生成されバッファに格納された係数Cgおよび係数Chと、符号化側から供給された係数C2(合成フィルタでは係数C6(2)と示されている)および係数C3(合成フィルタでは係数C7(3)と示されている)とを用いて合成処理が行われ、第2ライン乃至第5ラインが復号される。
【0137】
このように、第2回目の合成処理においては、符号化側で係数C2、係数C3、(係数C4、係数C5)、係数C6、係数C7、係数C8、係数C9の順に生成された係数データが、係数C9、係数C8、係数C2、係数C3、・・・の順に並び替えられて復号側に供給される。
【0138】
3回目以降の合成処理においても、同様にして、係数並び替え用バッファ部223に格納された係数データが所定の順序に並び替えられて復号部に供給され、4ラインずつ、ラインが復号される。
【0139】
なお、符号化側において画面の下端のラインを含むフィルタ処理(以下、最後の回と呼ぶ)に対応する復号側の合成処理では、それまでの処理で生成されバッファに格納された係数データを全て出力することになるため、出力ライン数が多くなる。図6の例では、最後の回に8ラインが出力される。
【0140】
なお、係数並び替え部224による係数データの並び替え処理は、例えば、係数並び替え用バッファ部223に格納された係数データを読み出す際の読み出しアドレスを、所定の順序に設定することでなされる。
【0141】
図7を用いて、上述までの処理をより具体的に説明する。図7は、5×3フィルタを用いて、分解レベル=2までウェーブレット変換によるフィルタ処理を施した例である。ウェーブレット変換部221において、図7Aに一例が示されるように、入力画像データの第1ラインから第7ラインに対して1回目のフィルタ処理が水平および垂直方向にそれぞれ行われる(図7AのIn−1)。
【0142】
1回目のフィルタ処理の分解レベル=1の処理において、係数C1、係数C2、および係数C3の3ライン分の係数データが生成され、図7Bに一例が示されるように、分解レベル=1で形成される領域HH、領域HLおよび領域LHのそれぞれに配置される(図7BのWT−1)。
【0143】
また、分解レベル=1で形成される領域LLは、分解レベル=2による水平および垂直方向のフィルタ処理でさらに4分割される(領域LLL,LLH,LHL,LHH)。分解レベル=2で生成される係数C5および係数C4は、分解レベル=1による領域LL内において、領域LLLに係数C5による1ラインが配置され、領域LHH、領域LHLおよび領域LLHのそれぞれに、係数C4による1ラインが配置される。
【0144】
ウェーブレット変換部221による2回目以降のフィルタ処理では、4ライン毎にフィルタ処理が行われ(図7AのIn−2・・・)、分解レベル=1で2ラインずつの係数データが生成され(図7BのWT−2)、分解レベル=2で1ラインずつの係数データが生成される。
【0145】
図6の2回目の例では、分解レベル=1のフィルタ処理で係数C6および係数C7の2ライン分の係数データが生成され、図7Bに一例が示されるように、分解レベル1で形成される領域HH、領域HLおよび領域LHの、1回目のフィルタ処理で生成された係数データの次から配置される。同様に、分解レベル=1による領域LL内において、分解レベル=2のフィルタ処理で生成された1ライン分の係数C9が領域LLLに配置され、1ライン分の係数C8が領域LHH、領域LHLおよび領域LLHにそれぞれ配置される。
【0146】
図7Bのようにウェーブレット変換されたデータを復号した際には、図7Cに一例が示されるように、符号化側の第1ライン乃至第7ラインによる1回目のフィルタ処理に対して、復号側の1回目の合成処理による第1ラインが出力される(図7CのOut−1)。以降、符号化側の2回目から最後の回の前までのフィルタ処理に対して、復号側で4ラインずつが出力される(図7CのOut−2・・・)。そして、符号化側の最後の回のフィルタ処理に対して、復号側で8ラインが出力される。
【0147】
ウェーブレット変換部221で高域成分側から低域成分側へと生成された係数データは、係数並び替え用バッファ部223に順次格納される。係数並び替え部224は、上述した係数データの並び替えが可能となるまで係数並び替え用バッファ部223に係数データが蓄積されると、係数並び替え用バッファ部223から合成処理に必要な順に並び替えて係数データを読み出す。読み出された係数データは、量子化部225に順次、供給される。
【0148】
量子化部225は、係数並び替え部224から供給された係数データに対して、量子化を行う。この量子化の方法としてはどのようなものを用いても良く、例えば、一般的な手段、つまり、以下の式(3)に示されるような、係数データWを量子化ステップサイズΔで除算する手法を用いれば良い。
【0149】
量子化係数=W/Δ ・・・(3)
【0150】
なお、この量子化ステップサイズΔは、上述したように、レート制御部226により指定される。
【0151】
エントロピ符号化部227は、以上のように量子化されて供給された係数データに対してエントロピ符号化を施す。エントロピ符号化された符号化データは、復号側に供給される。符号化方式としては、既知の技術であるハフマン符号化や算術符号化などが考えられる。勿論、これらに限らず、可逆的な符号化処理が可能であれば、他の符号化方式を用いてもよい。
【0152】
図6および図7を用いて説明したように、ウェーブレット変換部221は、画像データの複数ライン毎(プレシンクト毎)にウェーブレット変換処理を行う。エントロピ符号化部227では符号化された符号化データは、このプレシンクト毎に出力される。すなわち、上述の、5×3フィルタを用い、分解レベル=2まで処理を行った場合には、1画面のデータの出力において、最初が1ライン、2回目以降最後の回の前までが4ラインずつ、最後の回が8ラインの出力が得られる。
【0153】
なお、係数並び替え部224で並び替えられた後の係数データをエントロピ符号化する場合、例えば図6で示した1回目のフィルタ処理では、最初の係数C5のラインをエントロピ符号化する際には、未だ過去のラインすなわち既に係数データが生成されたラインが存在していない。したがって、この場合には、この1ラインだけをエントロピ符号化する。これに対して、係数C1のラインを符号化する際には、係数C5および係数C4のラインが過去のラインとなっている。これら近接する複数ラインは、似たデータで構成されていることが考えられるので、これら複数ラインを纏めてエントロピ符号化することは、有効である。
【0154】
また、上述では、ウェーブレット変換部221において、5×3フィルタを用いてウェーブレット変換によるフィルタ処理を行う例について説明したが、これはこの例に限られない。例えば、ウェーブレット変換部221では、例えば9×7フィルタといった、さらにタップ数の長いフィルタを用いることができる。この場合、フィルタのタップ数が長ければ、フィルタに蓄積されるライン数も多くなるので、画像データの入力から符号化データの出力までの遅延時間が長くなることになる。
【0155】
また、上述では、説明のためウェーブレット変換の分解レベルを分解レベル=2としたが、これはこの例に限られず、さらに分解レベルを上げることができる。分解レベルを上げるほど、より高圧縮率を実現することができる。例えば、一般的には、ウェーブレット変換においては、分解レベル=4までフィルタ処理が繰り返される。なお、分解レベルが上がれば、遅延時間も増大することになる。
【0156】
したがって、実際のシステムにこの発明を適用する際には、当該システムに要求される遅延時間や復号画像の画質などに応じて、フィルタのタップ数や、分解レベルを決めることが好ましい。このフィルタのタップ数や、分解レベルは、固定値とせずに、適応的に選択するようにすることもできる。
【0157】
以上のようにウェーブレット変換されて、並び替えられた係数データは、量子化部225において量子化され、エントロピ符号化部227により符号化される。そして、得られた符号化データは、送信用バッファ制御部202に供給される。
【0158】
エントロピ符号化部227において生成された符号化データは、その生成された順、すなわちプレシンクト毎に符号化部201より出力され、送信用バッファ制御部202に供給される。
【0159】
つまり、例えば、図8Aに示されるように、符号化部201のウェーブレット変換部221において、分割レベル=2のウェーブレット変換が行われ、1プレシンクトの画像データから、LLL,LHL,LLH,LHH,HL,LH,HHの7つの領域の係数データが生成される。図8Aにおいて、1LLL,1LHL,1LLH,1LHH,1HL,1LH、および1HHは、ピクチャの上から1番目のプレシンクトの画像データから生成された各領域の係数データを示しており、2LLL,2LHL,2LLH,2LHH,2HL,2LH、および2HHは、ピクチャの上から2番目のプレシンクトの画像データから生成された各領域の係数データを示している。
【0160】
これらの係数データは、プレシンクト毎に、その低域成分から高域成分に向かう順に符号化され、送信用バッファ制御部202に供給される。
【0161】
つまり、図8Bに示されるように、係数データは、ピクチャの上から1番目のプレシンクトの、1LLL,1LHL,1LLH,1LHH,1HL,1LH、1HHが、この順に符号化されて、送信用バッファ制御部202に供給され、次に、ピクチャの上から2番目のプレシンクトの、2LLL,2LHL,2LLH,2LHH,2HL,2LH、および2HHの順に符号化されて、送信用バッファ制御部202に供給され、次に、3番目のプレシンクトの係数データ、4番目のプレシンクトの係数データ、・・・・のようにプレシンクト毎に係数データが符号化され、送信用バッファ制御部202に供給される。
【0162】
つまり、係数データは、各プレシンクト内においては、矢印241に示されるように、低域成分から高域成分に向かう順に符号化され、送信用バッファ制御部202に供給され、プレシンクト単位では、矢印242に示されるように、ピクチャの上から1番目のプレシンクトから1つずつ下に向かう順に符号化され、送信用バッファ制御部202に供給される。
【0163】
符号化部201における発生符号量は、通常の場合ピクチャ毎に異なり、図9Aのグラフに示されるようになる。図9Aは、ピクチャ毎の発生符号量の例を示すグラフである。図9Aのグラフにおいて、縦軸は発生符号量を示し、横軸は時間を示している。つまり、各棒グラフは各ピクチャの発生符号量を示している。図9Aに示されるように、通常の場合、各ピクチャの発生符号量は互いに一致せず、偏りが生じる。
【0164】
もちろん、発生符号量はピクチャ単位だけでなく、プレシンクト単位でも変化する。つまり、図9Aにおいて、各棒グラフがプレシンクト単位の発生符号量を示しているとすることもできる。
【0165】
送信用バッファ制御部202は、符号化データを一時的に蓄積し、一定のビットレートで読み出すことにより、このようなピクチャ毎(またはプレシンクト毎)の符号量を、図9Bに示されるグラフように略一定となるように平滑化する。図9Bのグラフは、図9Aと同様にピクチャ毎(またはプレシンクト毎)の符号量の例を示している。
【0166】
図10は、図2の送信用バッファ制御部202の詳細な構成例を示すブロック図である。
【0167】
図10において、送信用バッファ制御部202は、Yデータ書き込み制御部251、Cデータ書き込み制御部252、Yバッファ253、Cバッファ254、ストリーム出力制御部255、およびプレシンクト情報制御部261を有する。
【0168】
Yデータ書き込み制御部251は、プレシンクト情報制御部261に制御され、符号化部201より供給される輝度成分Yの符号化データであるYデータを取得し、Yバッファ253に書き込む。
【0169】
Cデータ書き込み制御部252は、プレシンクト情報制御部261に制御され、符号化部201より供給される色差成分Cの符号化データであるCデータを取得し、Cバッファ254に書き込む。
【0170】
ビデオカメラ部113において得られる画像データは、輝度成分Yと色差成分Cとにより構成される。符号化部201は、上述した処理を、輝度成分Yと色差成分Cのそれぞれについて行う。つまり、符号化部201は、YデータとCデータを送信用バッファ制御部202に供給する。
【0171】
なお、実際には、色差成分にはCbとCrとがあるが、ここでは説明の簡略化のため、CbとCrをまとめてCとする。また、以下においては輝度成分Yと色差成分CよりなるYC(YCbCr)コンポーネントについて説明するが、R成分、G成分、およびB成分よりなるRGBコンポーネントの場合も同様である。
【0172】
Yバッファ253は、記憶媒体を内蔵し、Yデータ書き込み制御部251より供給されるYデータを蓄積する。また、Yバッファ253は、プレシンクト情報制御部261に制御されて、蓄積されているYデータを、書き込み順に読み出し、ストリーム出力制御部255に供給する。
【0173】
Cバッファ254は、記憶媒体を内蔵し、Cデータ書き込み制御部252より供給されるCデータを蓄積する。また、Cバッファ254は、プレシンクト情報制御部261に制御されて、蓄積されているCデータを、書き込み順に読み出し、ストリーム出力制御部255に供給する。
【0174】
ストリーム出力制御部255は、プレシンクト情報制御部261に制御されて、プレシンクト情報制御部261より供給されるプレシンクトヘッダやピクチャヘッダと、Yバッファ253より供給されるYデータおよびCバッファ254より供給されるCデータとを多重化して出力し、パケット生成部203(図2)に供給する。
【0175】
プレシンクトヘッダは、例えば、プレシンクト等の識別情報、フラグ情報、および量子化係数等の、符号化データ(元の画像データ)のプレシンクトに関連する各種情報により構成される。このプレシンクトヘッダは、符号化データにプレシンクト毎に付加される。
【0176】
ピクチャヘッダは、例えば、各種フラグ情報、データ構成、フレームレート、アスペクト比、垂直方向有効画素開始位置や水平方向有効画素開始位置等を示す情報等の、符号化データ(元の画像データ)のピクチャに関連する各種情報により構成される。このピクチャヘッダは、符号化データにピクチャ毎に付加される。
【0177】
プレシンクト情報制御部261は、上述したような構成の、Yデータ書き込み制御部251乃至ストリーム出力制御部255の各部の動作を制御したり、プレシンクトヘッダやピクチャヘッダ等を生成してストリーム出力制御部255に供給したりする。
【0178】
つまり、符号化部201より供給された輝度成分Yの符号化データであるYデータは、Yデータ書き込み制御部251により所定のタイミングでYバッファ253に書き込まれ、略一定のビットレートでYバッファ253より読み出されてストリーム出力制御部255に供給される。同様に、符号化部201より供給された色差成分Cの符号化データであるCデータは、Cデータ書き込み制御部252により所定のタイミングでCバッファ254に書き込まれ、略一定のビットレートでCバッファ254より読み出されてストリーム出力制御部255に供給される。ストリーム出力制御部255に供給されたYデータおよびCデータは、プレシンクト情報制御部261により生成されたプレシンクトヘッダやピクチャヘッダ等と多重化され、パケット生成部203に出力される。
【0179】
プレシンクト情報制御部261は、このようなYデータおよびCデータのビットレートの平滑化に関する各種処理を制御する。
【0180】
符号化データが蓄積されるYバッファ253およびCバッファ254の記憶容量を大きくすると、すなわち、Yバッファ253およびCバッファ254により多くの符号化データを蓄積させるようにすると、送信用バッファ制御部202の、符号化データのプレシンクト毎の符号量のばらつきに対する耐性が強くなる。つまり、ビットレートを平滑化可能なばらつきの範囲がより大きくなる。このように、送信用バッファ制御部202は、符号化データが蓄積されるYバッファ253およびCバッファ254の記憶容量を大きくするほど、より安定的に(ビットレートを平滑化させて)符号化データを送出することができるが、同時に、符号化データが送信用バッファ制御部202に入力されてから出力されるまでの遅延時間が増大してしまう。また、コストや回路規模の増大を抑制するためにも、Yバッファ253およびCバッファ254の記憶容量の不要な増大は望ましくない。
【0181】
プレシンクト情報制御部261は、YデータおよびCデータのビットレートの平滑化の際に、Yバッファ253およびCバッファ254の入出力を制御することにより、不要な遅延時間の増大を抑制するとともに、コンテンツとしての品質の不要な低下も抑制するように転送が行うことができるようにする。詳細については後述する。
【0182】
図11は、図10のプレシンクト情報制御部261の詳細な構成例を示すブロック図である。
【0183】
図11に示されるように、プレシンクト情報制御部261は、送信用バッファ書き込み制御処理部271および送信用バッファ読み出し制御処理部272を有する。
【0184】
送信用バッファ書き込み制御処理部271は、送信用バッファであるYバッファ253およびCバッファ254(ともに図10)への符号化データの書き込みに関する処理を制御する処理部である。送信用バッファ読み出し制御処理部272は、送信用バッファであるYバッファ253およびCバッファ254からの符号化データの読み出しに関する処理を制御する処理部である。
【0185】
送信用バッファ書き込み制御処理部271は、書き込み制御部281、書き込み指示部282、送出時間確認部283、プレシンクト数判定部284、および出力禁止部285を有する。
【0186】
書き込み制御部281は、書き込み指示部282乃至出力禁止部285の各部が実行する処理を制御する。書き込み指示部282は、書き込み制御部281に制御され、所定のタイミングで、Yデータ書き込み制御部251に対して、YデータをYバッファ253に書き込む(蓄積させる)ように書き込み指示を供給する。Yデータ書き込み制御部251は、この書き込み指示部282より供給される書き込み指示に基づいて、符号化部201より供給されるYデータをYバッファ253に供給して蓄積させる。
【0187】
同様に、書き込み指示部282は、書き込み制御部281に制御され、所定のタイミングで、Cデータ書き込み制御部252に対して、CデータをCバッファ254に書き込む(蓄積させる)ように書き込み指示を供給する。Cデータ書き込み制御部252は、この書き込み指示部282より供給される書き込み指示に基づいて、符号化部201より供給されるCデータをCバッファ254に供給して蓄積させる。
【0188】
YデータおよびCデータを蓄積させると、書き込み指示部282は、書き込みが終了した旨を送出時間確認部283及びプレシンクト数判定部284に供給する。
【0189】
送出時間確認部283は、書き込み指示部282より書き込みの終了が通知されると、書き込み制御部281に制御され、Yバッファ253に蓄積されたYデータを全て読み出すまでに要する時間(送出時間)を、Yバッファ253に蓄積されたYデータのデータ量と、YデータのYバッファ253からの読み出し速度(ビットレート)に基づいて算出し、その送出時間を、予め定められている送出時間の最大値(最大送出時間)と比較して、送出時間が最大送出時間より短いことを確認する。仮に、送出時間が最大送出時間以上である場合、送出時間確認部283は、出力禁止部285にその旨を通知する。
【0190】
同様に、送出時間確認部283は、書き込み指示部282より書き込みの終了が通知されると、書き込み制御部281に制御され、Cバッファ254に蓄積されたCデータを全て読み出すまでに要する時間(送出時間)を、Cバッファ254に蓄積されたCデータのデータ量と、CデータのCバッファ254からの読み出し速度(ビットレート)に基づいて算出し、その送出時間を、予め定められている最大送出時間と比較して、送出時間が最大送出時間より短いことを確認する。仮に、送出時間が最大送出時間以上である場合、送出時間確認部283は、出力禁止部285にその旨を通知する。
【0191】
プレシンクト数判定部284は、書き込み指示部282より書き込みの終了が通知されると、書き込み制御部281に制御され、Yバッファ253に蓄積されたYデータのプレシンクト数をカウントし、Yバッファ253に蓄積されているYデータのプレシンクト数が所定の閾値を越えたか否かを判定する。仮に、Yバッファ253に蓄積されているYデータのプレシンクト数が所定の閾値より多いと判定された場合、プレシンクト数判定部284は、出力禁止部285にその旨を通知する。
【0192】
同様に、プレシンクト数判定部284は、書き込み指示部282より書き込みの終了が通知されると、書き込み制御部281に制御され、Cバッファ254に蓄積されたCデータのプレシンクト数をカウントし、Cバッファ254に蓄積されているCデータのプレシンクト数が所定の閾値を越えたか否かを判定する。仮に、Cバッファ254に蓄積されているCデータのプレシンクト数が所定の閾値より多いと判定された場合、プレシンクト数判定部284は、出力禁止部285にその旨を通知する。
【0193】
出力禁止部285は、送出時間確認部283によりYバッファ253またはCバッファ254の符号化データの送出時間が基準時間以上であると通知された場合、または、プレシンクト数判定部284によりYバッファ253またはCバッファ254に蓄積された符号化データのプレシンクト数が所定数より多いと通知された場合、書き込み制御部281に制御され、後述する送信用バッファ読み出し制御処理部272に対して、現在読み出し中のプレシンクトの次のプレシンクト以降の符号化データの読み出しを、プレシンクト単位で必要な分だけ禁止するように指示を供給する(バンクオーバ制御を行う)。
【0194】
送信用バッファ読み出し制御処理部272は、読み出し制御部291、プレシンクトヘッダ生成部292、ピクチャヘッダ生成部293、および読み出し指示部294を有する。
【0195】
読み出し制御部291は、プレシンクトヘッダ生成部292乃至読み出し指示部294の各部が実行する処理を制御する。
【0196】
プレシンクトヘッダ生成部292は、符号化部201より供給される情報等に基づいて、プレシンクト毎に符号化データに付加するプレシンクトヘッダを作成し、ストリーム出力制御部255に供給する。ピクチャヘッダ生成部293は、符号化部201より供給される情報等に基づいて、ピクチャ毎に符号化データに付加するピクチャヘッダを作成し、ストリーム出力制御部255に供給する。
【0197】
読み出し指示部294は、Yバッファ253およびCバッファ254に蓄積されている符号化データ(YデータまたはCデータ)を、プレシンクト単位毎に、蓄積順に、所定のビットレートで読み出して、ストリーム出力制御部255に供給するように、Yバッファ253およびCバッファ254に対して読み出し指示を供給する。Yバッファ253およびCバッファ254は、この読み出し指示部294より供給される読み出し指示に基づいて、自分自身に蓄積されている符号化データを、プレシンクト単位毎に、蓄積順に、所定のビットレートで読み出してストリーム出力制御部255に供給する。
【0198】
なお、読み出し制御部291は、出力禁止部285より読み出しの禁止を指示された場合、読み出し指示部294を制御し、その指示において指定されたプレシンクトの符号化データの読み出しを禁止させる。読み出し指示部294は、上述したように、プレシンクト単位で、蓄積順に、略一定のビットレートで符号化データをバッファより読み出すが、読み出しが禁止された場合、そのプレシンクトの符号化データの読み出しは省略し、Yバッファ253またはCバッファ254への蓄積順において次となる、読み出しが禁止されていないプレシンクトの符号化データの読み出しを行うように、Yバッファ253およびCバッファ254に対して読み出し指示を供給する。つまり、読み出し指示部294は、読み出しが禁止されていないプレシンクトの符号化データのみを、プレシンクト単位で、蓄積順に、略一定のビットレートで読み出すように、Yバッファ253およびCバッファ254に対して読み出し指示を供給する。
【0199】
つまり、Yバッファ253およびCバッファ254は、このような読み出し指示部294より供給される読み出し指示に基づいて、出力禁止部285より読み出しの禁止を指示された場合、そのプレシンクトの符号化データの読み出しを省略し、Yバッファ253またはCバッファ254への蓄積順において次となる、読み出しが禁止されていないプレシンクトの符号化データの読み出しを行う。
【0200】
図12および図13を参照して、送信用バッファ制御部202において行われる読み出しの制御の様子について説明する。
【0201】
図12および図13は、バッファ(Yバッファ253またはCバッファ254)に読み出し可能に蓄積される符号化データ(YデータまたはCデータ)のデータ量の時間的変化を模式的に示したものである。なお、以下に行う図12及び図13を用いた説明は、Yデータに対しても、Cデータに対しても適用可能であるので、ここでは、Yバッファ253とCバッファ254、並びに、YデータとCデータをそれぞれ特定せずに、バッファおよび符号化データとして説明する。
【0202】
図12および図13において、横軸は時刻を示し、縦軸はバッファに読み出し可能に蓄積された符号化データのデータ量(バッファ量)を示している。各棒グラフは、各時刻においてバッファに読み出し可能に蓄積されている符号化データを示している。また、棒グラフの各四角はプレシンクト毎の符号化データを示しており、各四角のアルファベットによってプレシンクトが識別されている。つまり時刻間で同じアルファベットの四角は、互いに同じプレシンクトの符号化データを示している。
【0203】
なお、図12および図13において、符号化データの蓄積順は下から上に示されている。例えば、図12の時刻T9の場合、プレシンクトA乃至プレシンクトIの内、プレシンクトAの符号化データが最も早くバッファに蓄積された最も古いデータであり、プレシンクトIの符号化データが最も遅く(最近に)バッファに蓄積された最も新しいデータである。つまり、バッファには、プレシンクトZ、プレシンクトA、プレシンクトB、プレシンクトC、・・・・、プレシンクトIの順に各プレシンクトの符号化データが蓄積される。
【0204】
また、棒グラフの縦軸方向の長さはその符号化データのデータ量を示している。換言すれば、各四角の縦軸方向の長さは、プレシンクト毎の符号化データのデータ量を示している。また、上述したように、バッファに読み出し可能に蓄積された符号化データは略一定のビットレートで読み出される。つまり、棒グラフの縦軸方向の長さは、バッファに、読み出し可能に蓄積されている全符号化データの読み出しに要する時間(送出時間)も示している。換言すれば、各四角の縦軸方向の長さは、プレシンクト毎の符号化データの送出時間を示している。
【0205】
なお、送出時間確認部283が許容する送出時間の最大値である最大送出時間は、「最大量」として点線で示される。また、プレシンクト数判定部284が、バッファに蓄積可能なプレシンクト数の最大値として予め定める閾値を「8」とする。
【0206】
なお、バッファの使用可能な記憶容量、すなわちハードウェアによる制限は、最大送出時間およびプレシンクト数の最大値の制限に対して十分大きいものとする。詳細については後述するが、送出時間確認部283による送出時間の制限、または、プレシンクト数判定部284によるプレシンクト数の制限により、バッファ溢れが生じないようになされている。
【0207】
図12は、プレシンクト数判定部284および出力禁止部285の制御による、バッファに読み出し可能に蓄積される符号化データのデータ量の時間的変化を模式的に示したものである。
【0208】
図12の例の場合、時刻T1において、バッファには、プレシンクトZの符号化データとその次のプレシンクトAの符号化データが読み出し可能に蓄積されており、先に蓄積されたプレシンクトZが略一定のビットレートで読み出されている。このとき、バッファに蓄積されているプレシンクト数は2であるので、出力禁止部285は符号化データの出力を禁止させない。
【0209】
時刻T1より所定の時間が経過した時刻T2においては、プレシンクトZの符号化データの読み出しは完了し、バッファには、プレシンクトAの符号化データと、その次のプレシンクトBの符号化データが読み出し可能に蓄積されており、先に蓄積されたプレシンクトAが略一定のビットレートで読み出されている。このとき、バッファに蓄積されているプレシンクト数は2であるので、出力禁止部285は符号化データの出力を禁止させない。
【0210】
時刻T2より所定の時間が経過した時刻T3においては、プレシンクトAの符号化データの読み出しが継続され、バッファには、プレシンクトAの残りの符号化データと、その次のプレシンクトBの符号化データと、さらに次のプレシンクトCの符号化データが読み出し可能に蓄積されている。このとき、バッファに蓄積されているプレシンクト数は3であるので、出力禁止部285は符号化データの出力を禁止させない。
【0211】
時刻T3より所定の時間が経過した時刻T4においては、プレシンクトAの符号化データの読み出しがさらに継続され、バッファには、プレシンクトAの残りの符号化データと、連続するプレシンクトB乃至プレシンクトDの符号化データが読み出し可能に蓄積されている。このとき、バッファに蓄積されているプレシンクト数は4であるので、出力禁止部285は符号化データの出力を禁止させない。
【0212】
時刻T4より所定の時間が経過した時刻T5においては、プレシンクトAの符号化データの読み出しがさらに継続され、バッファには、プレシンクトAの残りの符号化データと、連続するプレシンクトB乃至プレシンクトEの符号化データが読み出し可能に蓄積されている。このとき、バッファに蓄積されているプレシンクト数は5であるので、出力禁止部285は符号化データの出力を禁止させない。
【0213】
時刻T5より所定の時間が経過した時刻T6においては、プレシンクトAの符号化データの読み出しがさらに継続され、バッファには、プレシンクトAの残りの符号化データと、連続するプレシンクトB乃至プレシンクトFの符号化データが読み出し可能に蓄積されている。このとき、バッファに蓄積されているプレシンクト数は6であるので、出力禁止部285は符号化データの出力を禁止させない。
【0214】
時刻T6より所定の時間が経過した時刻T7においては、プレシンクトAの符号化データの読み出しがさらに継続され、バッファには、プレシンクトAの残りの符号化データと、連続するプレシンクトB乃至プレシンクトGの符号化データが読み出し可能に蓄積されている。このとき、バッファに蓄積されているプレシンクト数は7であるので、出力禁止部285は符号化データの出力を禁止させない。
【0215】
時刻T7より所定の時間が経過した時刻T8においては、プレシンクトAの符号化データの読み出しがさらに継続され、バッファには、プレシンクトAの残りの符号化データと、連続するプレシンクトB乃至プレシンクトHの符号化データが読み出し可能に蓄積されている。このとき、バッファに蓄積されているプレシンクト数は8であるので、出力禁止部285は符号化データの出力を禁止させない。
【0216】
時刻T8より所定の時間が経過した時刻T9においては、プレシンクトAの符号化データの読み出しがさらに継続され、バッファには、プレシンクトAの残りの符号化データと、連続するプレシンクトB乃至プレシンクトIの符号化データが読み出し可能に蓄積されている。
【0217】
このときのバッファに蓄積されているプレシンクトの数は9であり、閾値8を越えている。従って、出力禁止部285は、プレシンクト数判定部284からの通知に基づいて、バンクオーバ制御を行い、現在出力中のプレシンクトAの次のプレシンクトであるプレシンクトBの符号化データの出力を禁止させ、時刻T9’のようにする。つまり、この場合、時間がさらに経過してプレシンクトAの読み出しが終了すると、プレシンクトBの符号化データの読み出しは省略され、プレシンクトCの符号化データが読み出される。
【0218】
これは、プレシンクトAの符号化データのデータ量が多すぎるために発生する受信側におけるアンダーフローを短期に解消させるための処理である。詳細については後述するが、プレシンクトAのデータ量が多すぎることにより、プレシンクトAの転送時間が増大すると、受信側においてそのプレシンクトAの符号化データを全て受け取るまでの時間も増大する。これにより、プレシンクトAより前のプレシンクトの復号処理が終了してしまい、バッファが空になる、所謂アンダーフローが発生する場合がある。このようなアンダーフローが一度発生すると、次のプレシンクト以降もこのアンダーフローが解消せずに連鎖することが考えられ、画質劣化が不要に拡大する恐れがある。
【0219】
そこで、出力禁止部285等が上述したように制御して、読み出す符号化データのプレシンクトを1つ省略する(とばす)ことにより、受信側において、その次のプレシンクトの符号化データを蓄積する時間を確保させるようにし、このアンダーフローの連鎖が止められるようにする。詳細については後述する。
【0220】
バッファには、定期的にプレシンクト毎に符号化データが蓄積されるので、プレシンクトがバッファからの読み出しに長時間を要すると、その分、バッファに蓄積されるプレシンクト数が増大する。プレシンクト数判定部284は、このことを利用して、バッファに同時に蓄積される符号化データのプレシンクト数をカウントすることにより、バッファからの読み出しに、所定の基準以上の長時間を要するプレシンクトを検出し、受信側におけるアンダーフローの発生を予測する。
【0221】
このように、プレシンクト数判定部284は、各プレシンクトの送出時間を算出することなく、バッファに蓄積されている符号化データのプレシンクト数をカウントするのみで容易に受信側におけるアンダーフローの発生を予測することができる。
【0222】
また、このようなプレシンクト数に基づいて行うバンクオーバ制御処理によりプレシンクト数判定部284は、図12に示されるように1つのプレシンクト(プレシンクトA)のみ送出時間が長い場合であっても、そのプレシンクトを検出することができる。つまり、プレシンクト数判定部284は、符号化データのデータ量(送出時間)の変動の高周波成分も検出することができる。
【0223】
また、プレシンクト数判定部284が、送出時間の長いプレシンクトを1プレシンクトから検出することができるので、出力禁止部285は、1プレシンクトずつ出力を禁止することで、アンダーフローの連鎖を抑制することができる。つまり、プレシンクトの出力禁止を必要最小限に抑制することができる。これにより、出力禁止部285は、プレシンクトの出力禁止による画質劣化の不要な増大を抑制することができる。
【0224】
さらに、例えば、図12において、時刻T9’のようにバンクオーバ制御処理が行われると、プレシンクトBの出力が禁止され、プレシンクトCの符号化データが読み出されるが、この場合、プレシンクトAの受信に時間を要したことにより、受信側のバッファの蓄積量が低下しており、再度アンダーフローが発生しやすくなっている。各プレシンクトの送出時間を算出してバンクオーバ制御処理を行う場合、単純には受信側のこのような状況を把握することができないが、プレシンクト数判定部284が、バッファに蓄積された符号化データのプレシンクト数に基づいて受信側におけるアンダーフローの発生を予測するので、バッファに蓄積された符号化データのプレシンクト数に基づいて受信側のバッファの符号化データの蓄積量を推定することができる。
【0225】
つまり、受信側のバッファにおけるアンダーフローの発生しやすさが、送信側のバッファに蓄積された符号化データのプレシンクト数に表わされており、送信側のバッファに蓄積された符号化データのプレシンクト数が多いほど(閾値に近いほど)、受信側のバッファに蓄積された符号化データのプレシンクト数が少なく、アンダーフローが発生しやすい状態であるが、出力禁止部285も符号化データの出力を禁止しやすい状態にあると言える。
【0226】
具体的に説明すると、時刻T1の場合、バッファに蓄積された符号化データのプレシンクト数は2であるので、プレシンクトAの符号化データの送出時間がT2乃至T9(8区間)以上でないと、出力禁止部285は出力を禁止しないが、時刻T9’の場合、例えばプレシンクトCの符号化データの送出時間が2区間以上あると、時刻T1の場合、バッファに蓄積された符号化データのプレシンクト数が9になるので、出力禁止部285は次のプレシンクトDの出力を禁止する。
【0227】
このように、プレシンクト数判定部284および出力禁止部285は、容易に、プレシンクト数に基づいてバンクオーバ制御処理を行うことにより受信側のアンダーフローの発生しやすさに応じて、バンクオーバ制御処理の実行条件を実質的に変動させることができる。
【0228】
なお、以上においては、プレシンクト数判定部284は、プレシンクト数「8」を閾値とし、プレシンクト数が9以上になる場合において出力禁止部285にバンクオーバ制御処理を実行させるように説明したが、この閾値の値は任意である。閾値が小さいほど、バッファに蓄積される符号化データのデータ量は少なくなるので、遅延時間の増大が抑制される。逆に、閾値が大きいほど、バンクオーバ制御処理の頻度を低減させることができるので、画質の劣化が低減する。ただし、符号化データの蓄積によりバッファ溢れが生じないように閾値を設定するのが望ましい。
【0229】
図13は、送出時間確認部283および出力禁止部285の制御による、バッファに読み出し可能に蓄積される符号化データのデータ量の時間的変化を模式的に示したものである。
【0230】
この図13の場合、時刻T1乃至時刻T6は図12の例と同様であるが、時刻T7において、バッファに蓄積された符号化データのデータ量の総和が、両矢印に示される分だけ、最大量を超えている。従って、出力禁止部285は、送出時間確認部283からの通知に基づいてバンクオーバ制御を行い、図13において両矢印で示される、データ量の許容範囲からの超過分を減らすように、現在出力中のプレシンクトAの次のプレシンクトから、プレシンクト単位で必要な分だけ符号化データの出力を禁止させる。図13の例においては、両矢印に示されるように、プレシンクトBの符号化データの出力を禁止するだけでは超過分を解消できないので、出力禁止部285は、プレシンクトBに続いてプレシンクトCの符号化データの出力も禁止させ、時刻T7’のようにさせる。
【0231】
この場合、プレシンクトAのデータが出力された後、時間がさらに経過し、プレシンクトAの読み出しが終了すると、次に、プレシンクトBやプレシンクトCの符号化データの読み出しは省略され、プレシンクトDの符号化データが読み出される。
【0232】
つまり、送出時間確認部283および出力禁止部285は、バッファに蓄積された符号化データの送出時間(つまりデータ量)に基づいてバンクオーバ制御を行う。このようにバンクオーバ制御を行うことにより、送出時間確認部283および出力禁止部285は、バッファに蓄積される符号化データの総データ量(総送出時間)の制限によってバッファ溢れの発生を抑制することができる。これにより、バッファの使用可能な記憶容量をより有効に利用することができる。
【0233】
例えば、図12の例のように、プレシンクト数に基づくバンクオーバ制御の場合、プレシンクト数の制限は可能なものの、データ量(送出時間)の制限を行うことができない。従って、プレシンクト数が少なくてもデータ量(送出時間)が極端に多いとバッファ溢れが生じる可能性もある。そこで、閾値は、予め想定可能な現実的な発生符号量(送出時間)とバッファのハードウェア制限に基づいて、バッファ溢れが生じないように設定される必要がある。そのため、各プレシンクトの符号化データのデータ量(送出時間)の変動が大きいほど、バッファのハードウェア制限に対して閾値を小さく設定してより大きな余裕を持たせる必要があり、その場合、バッファの使用効率が低減してしまう。
【0234】
これに対して、図13の例のように、データ量(送出時間)に基づくバンクオーバ制御の場合、最大量を定義することができるので、各プレシンクトの符号化データのデータ量(送出時間)の変動率に関わらず、バッファの使用効率の低減を抑制することができる。
【0235】
なお、最大量は、現実的な発生符号量(送出時間)に基づいて、符号化データの最大量からの超過分が、バッファのハードウェア制限を越えないように設定するのが望ましい。
【0236】
データ量(送出時間)に基づくバンクオーバ制御処理の場合、プレシンクト毎の符号化データのデータ量(送出時間)の変動を検出することはできない。従って、送出時間確認部283は、プレシンクト数に基づいて行うバンクオーバ制御処理の場合よりも、符号化データのデータ量(送出時間)の変動の低周波の成分しか検出することができない。
【0237】
また、データ量(送出時間)に基づくバンクオーバ制御処理の場合、図13に示されるように、複数のプレシンクトの出力がまとめて禁止される場合があり、プレシンクト数に基づいて行うバンクオーバ制御処理の場合よりも、受信側の出力画像において、画質が劣化する部分(プレシンクト)の位置が集中し、画質劣化が視覚的に目立つ場合もある。
【0238】
なお、送出時間確認部283および出力禁止部285は、データ量(送出時間)に基づいてバンクオーバ制御処理を行うことにより、プレシンクト数に基づいて行うバンクオーバ制御処理の場合と同様に、受信側のアンダーフローの発生しやすさに応じて、バンクオーバ制御処理の実行条件を実質的に変動させることができる。
【0239】
以上に説明した、プレシンクト数に基づくバンクオーバ制御処理と、データ量(送出時間)に基づくバンクオーバ制御処理とを併用することにより、送信用バッファ書き込み制御処理部271は、符号化データのデータ量(送出時間)の変動の高周波成分を容易に検出することができるとともに、バッファの使用効率の低減を抑制することができる。つまり、両者のデメリットを抑制し、両者のメリットを享受することができる。
【0240】
図11の送信用バッファ読み出し制御処理部272の制御により、図10のストリーム出力制御部255より出力された符号化データは、図2のパケット生成部203に供給される。パケット生成部203は、ピクチャヘッダやプレシンクトヘッダ等の情報に基づいてヘッダ情報を生成し、所定のデータ単位の符号化データ毎に、そのヘッダ情報を付加することにより、符号化データのパケットを生成する。
【0241】
図14は、パケット生成部203が符号化データに付加するヘッダ情報の構成例を示す模式図である。
【0242】
図14に示されるように、ヘッダ情報には、そのパケットに含まれるプレシンクトのプレシンクト番号、そのプレシンクトの各サブバンドの符号量情報(バイト表示)、並びに使用された量子化ステップサイズ(Q_step)の情報が含まれる。そのパケットのペイロードに、複数のプレシンクトの符号化データが含まれる場合には、各プレシンクトについての上述した情報が連続して並べられて多重化される。
【0243】
以上のようにパケット化されると、符号化データは、図1のデジタル変調部122、アンプ124、ビデオ分離/合成部126を介して、トライアックスケーブル111に出力される。このように送信ユニット110より送出されたパケット(符号化データ)は、トライアックスケーブル111を介してカメラ制御部112に伝送される。
【0244】
図15は、その符号化データの授受の様子の例を説明する模式図である。上述したように画像データ351は、プレシンクト毎に、所定のライン数分だけ入力されながらウェーブレット変換される。そして、所定のウェーブレット変換分解レベルまで達した際に、最低域サブバンドから最高域サブバンドまでの係数ラインが、生成された順序とは逆に、つまり低域から高域の順番に並び替えられる。
【0245】
図15の画像データ351はサブバンド毎に分割して示されており、各サブバンドの、斜め線、縦線、および波線の模様分けされた部分は、それぞれ異なるプレシンクトである(矢印で示されるように、画像データ351の白ヌキ部分も同様にプレシンクト毎に分割して処理される)。並び替えられた後のプレシンクトの係数が上述した様にエントロピ符号化され、符号化データが生成される。
【0246】
例えば、送信ユニット110は、図15に示されるように、1番目のプレシンクト(プレシンクト−1)の符号化データ(エンコードデータ)を生成すると、それをパケット化し、送信パケット361としてカメラ制御部112に送出する。カメラ制御部112は、そのパケットを受信すると(受信パケット371)、そのパケットをデパケタイズして符号化データを取り出し、その符号化データを復号(デコード)する。
【0247】
同様に、送信ユニット110は、2番目のプレシンクト(プレシンクト−2)の符号化データを生成すると、それをパケット化し、送信パケット362としてカメラ制御部112に送出する。カメラ制御部112は、そのパケットを受信すると(受信パケット372)、その符号化データを復号(デコード)する。さらに同様に、送信ユニット110は、3番目のプレシンクト(プレシンクト−3)の符号化データを生成すると、それをパケット化し、送信パケット363としてカメラ制御部112に送出する。カメラ制御部112は、そのパケットを受信すると(受信パケット373)、その符号化データを復号(デコード)する。
【0248】
送信ユニット110およびカメラ制御部112は、以上のような処理を、X番目の最終プレシンクト(プレシンクト−X)まで繰り返す(送信パケット364、受信パケット374)。以上のようにしてカメラ制御部112において復号画像381が生成される。
【0249】
テレビジョン放送では、例えば、インタレース画像が採用されており、1秒間に60枚のフィールドが存在している。従って、1フィールドの時間=1/60sec(=16msec)である。これに対して、送信ユニット110は、上述したように、プレシンクト毎に符号化して伝送する。これにより、送信ユニット110が1番目のプレシンクトであるプレシンクト−1を符号化して送出し、カメラ制御部112が受信して復号し、中央制御システムにおいて画像が出力されるまでの時間T(遅延時間)を、1フィールドの時間よりも短くすることが出来る。
【0250】
次に、受信側であるビデオ信号復号部について説明する。
【0251】
図16は、図1のビデオ信号復号部136の詳細な構成例を示すブロック図である。なお、図1のビデオ信号復号部121は、ビデオ信号復号部136と同様の構成を有し、同様の処理を行うので、ビデオ信号復号部136に対する説明を適用することができる。従って、説明の簡略化のため、必要な場合を除き、ビデオ信号復号部121の説明は省略する。
【0252】
図2において、ビデオ信号復号部136は、パケット解読部401、受信用バッファ制御部402、および復号部403を有する。
【0253】
パケット解読部401は、デジタル復調部134(図1)において復調された送信ユニット110より伝送されたパケットの解読を行い、ヘッダ情報や、ペイロードに含まれる符号化データを抽出する。パケット解読部401は、抽出したヘッダ情報および符号化データを受信用バッファ制御部402に供給する。パケット解読部401は、パケットが供給される度に、そのパケットよりヘッダ情報および符号化データを抽出し、受信用バッファ制御部402に供給する。
【0254】
受信用バッファ制御部402は、パケット解読部401より供給される符号化データを内蔵するバッファに蓄積し、所定のタイミングでその符号化データをプレシンクト毎に読み出して復号部403に供給する。
【0255】
復号部403は、受信用バッファ制御部402より供給される符号化データを、図2の符号化部201の符号化方法に対応する所定の復号方法で復号し、得られた係数データを逆量子化してウェーブレット逆変換を行い、ベースバンドの画像データを中央制御システムや、ビデオ信号符号化部137に出力する。
【0256】
図17は、図16の受信用バッファ制御部402の詳細な構成例を示す図である。
【0257】
図17において、受信用バッファ制御部402は、パケットヘッダ解読部411、入力制御部421、Yバッファ422、Cバッファ423、出力制御部424、およびプレシンクト情報制御部431を有する。
【0258】
パケットヘッダ解読部411は、プレシンクト情報制御部431に制御されて、パケット解読部401より供給されるヘッダ情報を取得して保持し、所定のタイミングで、そのヘッダ情報を解読して、処理対象プレシンクトのパラメータ情報を抽出する。パケットヘッダ解読部411は、抽出したパラメータ情報を復号部403に供給し、復号処理に利用させる。
【0259】
入力制御部421は、プレシンクト情報制御部431に制御されて、パケット解読部401より供給される符号化データを取得し、Yデータ(輝度成分Yの符号化データ)をYバッファ422に書き込み、Cデータ(色差成分Cの符号化データ)をCバッファ423に書き込む。
【0260】
Yバッファ422は、記憶媒体を内蔵し、入力制御部421より供給されるYデータを蓄積する。また、Yバッファ422は、プレシンクト情報制御部431に制御されて、蓄積されているYデータを、書き込み順に読み出し、出力制御部424に供給する。
【0261】
Cバッファ423は、記憶媒体を内蔵し、入力制御部421より供給されるCデータを蓄積する。また、Cバッファ423は、プレシンクト情報制御部431に制御されて、蓄積されているCデータを、書き込み順に読み出し、出力制御部424に供給する。
【0262】
出力制御部424は、プレシンクト情報制御部431に制御されて、Yバッファ422より供給されるYデータおよびCバッファ423より供給されるCデータとを多重化して出力し、復号部403(図16)に供給する。
【0263】
プレシンクト情報制御部431は、上述したような構成の、パケットヘッダ解読部411、入力制御部421、Yバッファ422、Cバッファ423、および出力制御部424の各部の動作を制御したり、損失した符号化データの代替用のデータであるダミーデータを生成して復号部403に供給したりする。
【0264】
つまり、YデータおよびCデータは、パケット解読部401より略一定のビットレートで供給され、入力制御部421によってYバッファ422またはCバッファ423に書き込まれ、一時的に保持された後、プレシンクト単位で読み出され、出力制御部424により多重化されて復号部403に出力される。
【0265】
プレシンクト情報制御部431は、このようなYデータおよびCデータの、タイミング調整のためのバッファリングに関する各種処理を制御する。
【0266】
符号化データが蓄積されるYバッファ422およびCバッファ423の記憶容量を大きくすると、すなわち、Yバッファ422およびCバッファ423により多くの符号化データを蓄積させるようにすると、出力画像の画質を向上させることができるものの、遅延時間が増大する。また、コストや回路規模の増大を抑制するためにも、Yバッファ422およびCバッファ423の記憶容量の不要な増大は望ましくない。
【0267】
プレシンクト情報制御部431は、YデータおよびCデータの復号処理の前のタイミング調整の際に、Yバッファ422およびCバッファ423の入出力を制御することにより、不要な遅延時間の増大を抑制させるとともに、コンテンツとしての品質の不要な低下も抑制させる。詳細については後述する。
【0268】
図18は、図17のプレシンクト情報制御部431の詳細な構成例を示す図である。
【0269】
図18に示されるように、プレシンクト情報制御部431は、受信用バッファ書き込み制御処理部441および受信用バッファ読み出し制御処理部442を有する。
【0270】
受信用バッファ書き込み制御処理部441は、受信用バッファであるYバッファ422およびCバッファ423(ともに図17)への符号化データの書き込みに関する処理を制御する処理部である。受信用バッファ読み出し制御処理部442は、受信用バッファであるYバッファ422およびCバッファ423からの符号化データの読み出しに関する処理を制御する処理部である。
【0271】
受信用バッファ書き込み制御処理部441は、書き込み制御部451および書き込み指示部452を有する。
【0272】
書き込み制御部451は、書き込み指示部452の処理を制御する。書き込み指示部452は、書き込み制御部451に制御され、所定のタイミングで、入力制御部421に対して、YデータをYバッファ422に書き込み(蓄積させ)、CデータをCバッファ423に書き込む(蓄積させる)ように書き込み指示を供給する。入力制御部421は、この書き込み指示部452より供給される書き込み指示に基づいて、パケット解読部401より供給されるYデータをYバッファ422に供給して蓄積させ、CデータをCバッファ423に供給して蓄積させる。
【0273】
受信用バッファ読み出し制御処理部442は、読み出し制御部461、プレシンクト番号確認部464、パラメータ抽出指示部465、読み出し指示部466、ダミーデータ保持部467、および補完処理部468を有する。
【0274】
読み出し制御部461は、プレシンクト番号確認部464乃至補完処理部468の各部が実行する処理を制御する。
【0275】
プレシンクト番号確認部464は、読み出し制御部461に制御されて、Yバッファ422およびCバッファ423に蓄積されている符号化データのプレシンクトの中から、最も古いプレシンクトを処理対象プレシンクトとして選択し、そのプレシンクトのプレシンクト番号が、前回処理されたプレシンクトのプレシンクト番号と連続するか否かを確認することにより、プレシンクトの損失の有無を確認する。
【0276】
バッファ(Yバッファ422およびCバッファ423)に蓄積された符号化データは、基本的に古いものから順にプレシンクト毎に読み出される。符号化データは、図8を参照して説明したように、プレシンクト毎に順番(プレシンクト順に)にビデオ信号符号化部120より供給されるので、符号化データ(プレシンクト)の損失が無ければ、処理対象プレシンクトのプレシンクト番号は、1ずつインクリメントされるはずである。仮に、今回、処理対象プレシンクトとして選択されたプレシンクトのプレシンクト番号が、前回バッファより読み出された(または、後述するように補完処理された)プレシンクトのプレシンクト番号と連続していない場合、これらのプレシンクトの間に存在するはずの1または複数のプレシンクトが欠損していることになる。
【0277】
例えば、図12や図13を参照して説明したように、ビデオ信号符号化部120においてバンクオーバ制御処理が行われた場合、ビデオ信号復号部136に供給される符号化データにおいてプレシンクトの損失が発生する。
【0278】
プレシンクト番号確認部464は、処理対象プレシンクトのプレシンクト番号を監視し、プレシンクト番号が1から順に1ずつインクリメントしていくか否かを確認することにより、このようなプレシンクトの欠損が発生したか否かを確認する。
【0279】
なお、プレシンクト番号確認部464は、任意の方法で処理対象プレシンクトのプレシンクト番号を確認するようにしてよい。例えば、プレシンクト番号確認部464が、符号化データがバッファに蓄積される際に、その符号化データのプレシンクト番号を取得することにより、バッファに蓄積されている全符号化データのプレシンクト番号を管理するようにしてもよい。また、例えば、バッファ(Yバッファ422およびCバッファ423)に符号化データとヘッダ情報の両方がプレシンクト毎に蓄積されるようにし、プレシンクト番号確認部464は、バッファに蓄積された処理対象のプレシンクトに対応するヘッダ情報に基づいてそのプレシンクト番号を特定するようにしてもよい。また、例えば、ヘッダ情報はパケットヘッダ解析部411に蓄積され、符号化データのみがバッファに蓄積さえるようにし、それらのヘッダ情報と符号化データとがプレシンクト毎に任意の方法で互いに関連付けられているようにし、プレシンクト番号確認部464は、そのヘッダ情報と符号化データの関係を示す情報を参照することにより、処理対象プレシンクトの符号化データに対応するヘッダ情報をパケットヘッダ解読部411より取得し、そのヘッダ情報を参照して処理対象のプレシンクトのプレシンクト番号を特定するようにしてもよい。もちろん、これら以外の方法であってもよい。
【0280】
パラメータ抽出指示部465は、読み出し制御部461に制御され、プレシンクト番号確認部464の確認結果に基づいて、プレシンクトの欠損が発生していない場合、処理対象プレシンクトのパラメータをヘッダ情報より抽出させるパラメータ抽出指示を、パケットヘッダ解読部411に対して供給する。
【0281】
読み出し指示部466は、読み出し制御部461に制御され、プレシンクト番号確認部464の確認結果に基づいて、プレシンクトの欠損が発生していない場合、処理対象プレシンクトの符号化データ(YデータまたはCデータ)を読み出して出力制御部424に供給すように、Yバッファ422およびCバッファ423に対して読み出し指示を供給する。
【0282】
ダミーデータ保持部467は、読み出し制御部461に制御され、欠損した符号化データの代替用のデータであるダミーデータを保持する。ダミーデータはプレシンクト単位の符号化データであれば何でもよい。例えば、白色、黒色、または灰色等の予め定められた所定の色の、1プレシンクト分のベースバンドの画像データを、符号化部201と同様の方法でウェーブレット変換して並び替えて量子化してエントロピ符号化して得られる符号化データでもよい。つまり、この場合のダミーデータは、復号部403の復号処理により、灰色等の所定の色の、1プレシンクト分のベースバンドの画像データが得られる符号化データである。ダミーデータは予め用意されたデータであれば何でもよい。つまり、ダミーデータとして使用する画像データの画像は、何色であってもよいし、複数の色により構成されるようにしてもよいし、図形、模様、文字、または絵柄等が含まれるようにしてもよい。
【0283】
補完処理部468は、読み出し制御部461に制御され、プレシンクト番号確認部464の確認結果に基づいて、プレシンクトの欠損が発生した場合、ダミーデータ保持部467よりダミーデータを取得し、そのダミーデータを、欠損した符号化データの代わりとして、その欠損した符号化データの読み出しタイミングで復号部403に出力する。
【0284】
図19を参照して、受信用バッファ制御部402において行われる、プレシンクト単位で行われる読み出しの制御の様子について説明する。
【0285】
図19は、バッファ(Yバッファ422またはCバッファ423)に読み出し可能に蓄積される符号化データ(YデータまたはCデータ)のデータ量の時間的変化を模式的に示したものである。図19の例は、図12の例に対応する例であり、図12の例のように制御されて、ビデオ信号符号化部120より出力された符号化データを蓄積したときの、データ量の時間的変化を模式的に示したものである。つまり、プレシンクトAの符号化データのデータ量は、他のプレシンクトの符号化データのデータ量と比較して極端に多い。また、プレシンクトBの符号化データは出力が禁止されたので、プレシンクトAに続いてプレシンクトCの符号化データが供給される。
【0286】
なお、以下に行う図19を用いた説明は、Yデータに対しても、Cデータに対しても適用可能であるので、ここでは、Yバッファ422とCバッファ423、並びに、YデータとCデータをそれぞれ特定せずに、バッファおよび符号化データとして説明する。
【0287】
図19においても、図12と同様に、横軸は時刻を示し、縦軸はバッファに読み出し可能に蓄積された符号化データのデータ量(バッファ量)を示している。各棒グラフは、各時刻においてバッファに読み出し可能に蓄積されている符号化データを示している。また、棒グラフの各四角はプレシンクト毎の符号化データを示しており、各四角のアルファベットによってプレシンクトが識別されている。また、符号化データの蓄積順は下から上に示されている。さらに、棒グラフの縦軸方向の長さはその符号化データのデータ量を示している。バッファの使用可能な記憶容量、すなわちハードウェアによる制限は十分大きいものとする。
【0288】
図19の例の場合、時刻T1において、バッファには、プレシンクトS乃至プレシンクトZの符号化データが読み出し可能に蓄積されている。このT1において、バッファに蓄積されている符号化データのプレシンクトの中で最初に蓄積されたプレシンクトSが処理対象プレシンクトに設定され、そのプレシンクト番号が前回処理されたプレシンクトのプレシンクト番号と連続するかが確認される。この確認によりプレシンクト(符号化データ)の欠損が生じていないと判定すると、パラメータ抽出指示部465は、処理対象プレシンクトであるプレシンクトSのパラメータを抽出して復号部403に供給する。また、読み出し指示部466は、プレシンクトSの符号化データを読み出して出力制御部424に供給するように読み出し指示をバッファに供給する。Yバッファ422より読み出されたYデータおよびCバッファ423より読み出されたCデータは、出力制御部424において多重化されて復号部403に供給される。
【0289】
従って、時刻T1より所定の時間が経過した時刻T2においては、プレシンクトSの符号化データがバッファより全て読み出されて無くなり、代わりに、プレシンクトAが所定の略一定のビットレートで入力制御部421より供給されて蓄積される。この時刻T2においては、処理対象プレシンクトがプレシンクトSの次のプレシンクトTに設定され、上述したプレシンクトSの場合と同様に、その符号化データが読み出される。
【0290】
時刻T2より所定の時間が経過した時刻T3においては、プレシンクトTの符号化データがバッファより全て読み出されて無くなる。また、プレシンクトAの所定のビットレートでの蓄積が引き続き行われる。この時刻T3においては、処理対象プレシンクトがプレシンクトTの次のプレシンクトUに設定され、上述したプレシンクトTの場合と同様に、その符号化データが読み出される。
【0291】
時刻T3より所定の時間が経過した時刻T4においては、プレシンクトUの符号化データがバッファより全て読み出されて無くなる。また、プレシンクトAの所定のビットレートでの蓄積が引き続き行われる。この時刻T4においては、処理対象プレシンクトがプレシンクトUの次のプレシンクトVに設定され、上述したプレシンクトUの場合と同様に、その符号化データが読み出される。
【0292】
時刻T4より所定の時間が経過した時刻T5においては、プレシンクトVの符号化データがバッファより全て読み出されて無くなる。また、プレシンクトAの所定のビットレートでの蓄積が引き続き行われる。この時刻T5においては、処理対象プレシンクトがプレシンクトVの次のプレシンクトWに設定され、上述したプレシンクトVの場合と同様に、その符号化データが読み出される。
【0293】
時刻T5より所定の時間が経過した時刻T6においては、プレシンクトWの符号化データがバッファより全て読み出されて無くなる。また、プレシンクトAの所定のビットレートでの蓄積が引き続き行われる。この時刻T6においては、処理対象プレシンクトがプレシンクトWの次のプレシンクトXに設定され、上述したプレシンクトWの場合と同様に、その符号化データが読み出される。
【0294】
時刻T6より所定の時間が経過した時刻T7においては、プレシンクトXの符号化データがバッファより全て読み出されて無くなる。また、プレシンクトAの所定のビットレートでの蓄積が引き続き行われる。この時刻T7においては、処理対象プレシンクトがプレシンクトXの次のプレシンクトYに設定され、上述したプレシンクトXの場合と同様に、その符号化データが読み出される。
【0295】
時刻T7より所定の時間が経過した時刻T8においては、プレシンクトYの符号化データがバッファより全て読み出されて無くなる。また、プレシンクトAの所定のビットレートでの蓄積が引き続き行われる。この時刻T8においては、処理対象プレシンクトがプレシンクトYの次のプレシンクトZに設定され、上述したプレシンクトYの場合と同様に、その符号化データが読み出される。
【0296】
時刻T8より所定の時間が経過した時刻T9においては、プレシンクトZの符号化データがバッファより全て読み出されて無くなる。この時刻T9において、ようやくプレシンクトAの蓄積が終了する。つまり、この場合のプレシンクトAの符号化データのデータ量は、他のプレシンクトの符号化データのデータ量に比べて極端に多い。このようなとき、時刻T9においては、処理対象プレシンクトがプレシンクトZの次のプレシンクトである、蓄積が終了したばかりのプレシンクトAに設定され、上述したプレシンクトZの場合と同様に、その符号化データが読み出される。
【0297】
時刻T8より所定の時間が経過した時刻T9においては、プレシンクトZの符号化データがバッファより全て読み出されて無くなる。この時刻T9において、ようやくプレシンクトAの蓄積が終了する。つまり、この場合のプレシンクトAの符号化データのデータ量は、他のプレシンクトの符号化データのデータ量に比べて極端に多い。このようなとき、時刻T9においては、処理対象プレシンクトがプレシンクトZの次のプレシンクトである、蓄積が終了したばかりのプレシンクトAに設定され、上述したプレシンクトZの場合と同様に、その符号化データが読み出される。
【0298】
上述したように、プレシンクトBの符号化データは、送信用バッファ制御部202において出力が禁止されたので、プレシンクトAに続いてプレシンクトCの符号化データが供給される。
【0299】
従って、時刻T9より所定の時間が経過した時刻T10においては、プレシンクトAの符号化データがバッファより全て読み出されて無くなるとともに、プレシンクトCの符号化データが所定のビットレートでバッファに蓄積される。この時刻T10においては、処理対象プレシンクトがプレシンクトAの次に供給されたプレシンクトCに設定されるが、本来プレシンクトBが処理対象プレシンクトに設定されるはずであり、プレシンクト番号が連続しない。従って、この欠損したプレシンクトBの代わりに、ダミーデータが読み出され、復号部403に供給される。その間、プレシンクトCの符号化データの所定のビットレートでの蓄積は継続され、終了する。
【0300】
プレシンクトCの符号化データの蓄積が終了すると、続いて供給されるプレシンクトDの符号化データの蓄積が開始される。
【0301】
従って、時刻T10より所定の時間が経過した時刻T11においては、プレシンクトBの符号化データがバッファより全て読み出されて無くなるとともに、プレシンクトCの符号化データの蓄積は終了し、プレシンクトDの符号化データが所定のビットレートでバッファに蓄積される。
【0302】
この時刻T11においては、処理対象プレシンクトがプレシンクトCのままであり、前回補完処理されたプレシンクトBからプレシンクト番号が連続するので、バッファよりプレシンクトCの符号化データが読み出され、復号部403に供給される。
【0303】
つまり、受信用バッファ制御部402からは、図20に示されるように、プレシンクトS、プレシンクトT、プレシンクトU、・・・、プレシンクトAの順に符号化データがプレシンクト毎に出力され、プレシンクトAの次に、損失したプレシンクトBの符号化データの代わりに予め用意された1プレシンクト分のダミーデータ(ダミーB)が出力される。つまり、損失した符号化データがダミーデータにより補完される。
【0304】
例えば、符号化データの損失が1フィールドの1プレシンクトのみであれば、出力画像においては、16msec程度の間、数ラインの画像が損失するのみであるので、画質劣化はあまり目立たない。また、灰色等の視覚的に目立たない色の画像の符号化データをダミーデータとすることにより、受信用バッファ制御部402は、符号化データの損失による画質劣化をさらに目立たなくすることができる。
【0305】
なお、図19に示されるように、ビデオ信号符号化部120においてバンクオーバ制御処理が行われてプレシンクトBの出力が禁止されているので、プレシンクトAに続いてプレシンクトCの符号化データが供給されるが、これにより、プレシンクトCの符号化データが、本来プレシンクトBの出力タイミングとなる時刻T10の時点で蓄積が行われている。従って、プレシンクトCの出力タイミングとなる時刻T11までに、プレシンクトCの符号化データの蓄積のための時間を十分に確保することができ、プレシンクトCの出力タイミングである時刻T11において、プレシンクトCの符号化データの蓄積が終了されているようにすることができる。つまり、時刻T11において、受信用バッファ制御部402は、プレシンクトCの符号化データを全て復号部403に供給することができる。
【0306】
仮に、ビデオ信号符号化部120が上述したようなバンクオーバ制御処理を行わないとすると、図21に示されるように、時刻T10においてプレシンクトBの符号化データが供給され、続いて、プレシンクトC、プレシンクトD、・・・、プレシンクトH、プレシンクトJ、プレシンクトKの順に供給される。
【0307】
上述したように時刻T10は、プレシンクトBの出力タイミングとなるが、プレシンクトBの符号化データは時刻T9から蓄積が開始されるので、時刻T10において必ずしもプレシンクトBの符号化データが全て蓄積されているとは限らない。つまり、図21の時刻T10のプレシンクトBにおいて斜線で示されるように、未蓄積の符号化データが存在する可能性がある。この段階(時刻T10)でプレシンクトBの符号化データを復号部403に供給すると、未蓄積の部分の符号化データが欠損するので出力画像の画質が劣化する恐れがある。
【0308】
そして、プレシンクトBの次のプレシンクトCのの符号化データは時刻T10から蓄積が開始されるので、プレシンクトBの場合と同様に、出力タイミングである時刻T11において必ずしもプレシンクトCの符号化データが全てバッファに蓄積されているとは限らず、斜線で示されるように未蓄積の符号化データが存在する恐れがある。この段階(時刻T11)でプレシンクトCの符号化データを復号部403に供給すると、未蓄積の部分の符号化データが欠損するので出力画像の画質が劣化する恐れがある。
【0309】
つまり、プレシンクトAのように伝送に時間を要するプレシンクトが存在する場合、受信側のバッファ(Yバッファ422およびCバッファ423)において、蓄積される符号化データが不足する、所謂アンダーフローが発生してしまう。このとき、ビデオ信号符号化部120が上述したようなバンクオーバ制御処理を行わない場合、図21のプレシンクトB乃至プレシンクトJのように、各プレシンクトにおいてアンダーフローが発生する恐れがある。つまり、各プレシンクトにおいて蓄積時間が短すぎることが原因で、読み出しタイミングにおいて斜線で示されるように見蓄積の部分が生じ、アンダーフローが長期間解消されない恐れがある。
【0310】
このようにアンダーフローの発生が拡大すると、出力画像において画質劣化するライン(範囲)が増大し、画質劣化が目立つようになる恐れがある。
【0311】
ビデオ信号符号化部120は、上述したようなバンクオーバ制御処理を行うことにより、アンダーフローの発生が1プレシンクトに制限され、不要なアンダーフローの発生の拡大を抑制することができるので、出力画像における画質劣化のライン(範囲)を抑制することができる。
【0312】
次に、図16の復号部403の詳細について説明する。図22は、復号部403の詳細な構成例を示すブロック図である。復号部403は、符号化部201(図2)に対応する復号部であり、図22に示されるように、エントロピ復号部481、逆量子化部482、係数バッファ部483、およびウェーブレット逆変換部484を有している。
【0313】
エントロピ復号部481は、受信用バッファ制御部402より符号化データを取得すると、ライン毎にその符号化データをエントロピ復号し、得られた係数データを逆量子化部482に供給する。逆量子化部482は、供給された係数データに対して、受信用バッファ制御部402のパケットヘッダ解読部411より取得したパラメータに含まれる、量子化に関する情報に基づいて逆量子化を行い、得られた係数データを係数バッファ部483に供給し、格納させる。ウェーブレット逆変換部484は、係数バッファ部483に格納された係数データを用いて、合成フィルタによる合成フィルタ処理を行い、合成フィルタ処理の結果を再び係数バッファ部483に格納する。ウェーブレット逆変換部484は、この処理を分解レベルに応じて繰り返して、復号された画像データ(出力画像データ)を得る。ウェーブレット逆変換部484は、この出力画像データを復号部403の外部に出力する。
【0314】
一般的なウェーブレット逆変換の方法の場合、処理対象の分解レベルの全係数に対して、まず、画面水平方向に水平合成フィルタリング処理を行い、次に画面垂直方向に垂直合成フィルタリング処理を行っていた。つまり、各合成フィルタリング処理の度に、その合成フィルタリング処理の結果をバッファに保持させる必要があるが、その際、バッファは、その時点の分解レベルの合成フィルタリング結果と、次の分解レベルの全係数を保持する必要があり、多大なメモリ容量を必要とすることになる(保持するデータ量が多い)。
【0315】
また、この場合、ピクチャ(インタレース方式の場合フィールド)内において全てのウェーブレット逆変換が終了するまで画像データ出力が行われないので、入力から出力までの遅延時間が増大する。
【0316】
これに対して、ウェーブレット逆変換部484の場合、プレシンクト単位で垂直合成フィルタリング処理および水平合成フィルタリング処理をレベル1まで連続して行うので、従来の方法と比較して、一度に(同時期に)バッファリングする必要のあるデータの量が少なく、用意すべきバッファのメモリ量を大幅に低減させることができる。また、レベル1まで合成フィルタリング処理(ウェーブレット逆変換処理)が行われることにより、ピクチャ内の全画像データが得られる前に(プレシンクト単位で)画像データを順次出力させることができ、従来の方法と比較して遅延時間を大幅に低減させることができる。
【0317】
次に、以上に説明したデジタルトライアックスシステム100の各部により実行される処理について説明する。まず、図23のフローチャートを参照して、送信ユニット110のビデオ信号符号化部120の符号化部201(図3)により実行される符号化処理の流れの例を説明する。
【0318】
符号化処理が開始されると、ウェーブレット変換部221は、ステップS1において、処理対象プレシンクトの番号Aを初期設定にする。通常の場合、番号Aは「1」に設定される。設定が終了すると、ウェーブレット変換部221は、ステップS2において、最低域サブバンドにおいて上からA番目の1ラインを生成するのに必要なライン数(すなわち、1プレシンクト)の画像データを取得し、その画像データに対して、ステップS3において画面垂直方向に並ぶ画像データに対して分析フィルタリングを行う垂直分析フィルタリング処理を行い、ステップS4において画面水平方向に並ぶ画像データに対して分析フィルタリング処理を行う水平分析フィルタリング処理を行う。
【0319】
ステップS5においてウェーブレット変換部221は、分析フィルタリング処理を最終レベルまで行ったか否かを判定する。分解レベルが最終レベルに達していないと判定された場合、処理はステップS3に戻り、現在の分解レベルに対して、ステップS3およびステップS4の分析フィルタリング処理が繰り返される。
【0320】
ステップS5において、分析フィルタリング処理が最終レベルまで行われたと判定された場合、処理はステップS6に進む。
【0321】
ステップS6において、係数並び替え部224は、プレシンクトA(ピクチャ(インタレース方式の場合フィールド)の上からA番目のプレシンクト)の係数を低域から高域の順番に並び替える。量子化部225は、ステップS7において、その並び替えられた係数に対して所定の量子化係数を用いて量子化を行う。エントロピ符号化部227は、ステップS8において、その係数に対してライン毎にエントロピ符号化する。エントロピ符号化が終了すると、エントロピ符号化部227は、ステップS9において、プレシンクトAの符号化データを外部に送出する。
【0322】
ウェーブレット変換部221は、ステップS10において番号Aの値を「1」インクリメントして次のプレシンクトを処理対象とし、ステップS11において、処理対象のピクチャ(インタレース方式の場合フィールド)について、未処理の画像入力ラインが存在するか否かを判定する。未処理の画像入力ラインが存在すると判定された場合、処理はステップS2に戻り、新たな処理対象のプレシンクトに対してそれ以降の処理が繰り返される。
【0323】
以上のようにステップS2乃至ステップS11の処理が繰り返し実行され、各プレシンクトが符号化される。そして、ステップS11において、未処理の画像入力ラインが存在しないと判定された場合、そのピクチャに対する符号化処理が終了される。次のピクチャに対しては新たに符号化処理が開始される。
【0324】
このように、ウェーブレット変換部221は、プレシンクト単位で垂直分析フィルタリング処理および水平分析フィルタリング処理を最終レベルまで連続して行うので、従来の方法と比較して、一度に(同時期に)保持する(バッファリングする)必要のあるデータの量が少なく、用意すべきバッファのメモリ量を大幅に低減させることができる。また、最終レベルまで分析フィルタリング処理が行われることにより、後段の係数並び替えやエントロピ符号化等の処理も行うことができる(つまり、係数並び替えやエントロピ符号化をプレシンクト単位で行うことができる)。従って、画面全体に対してウェーブレット変換を行う方法と比較して遅延時間を大幅に低減させることができる。
【0325】
次に、図24のフローチャートを参照して、送信用バッファ書き込み制御処理部271(図11)により実行される送信用バッファ書き込み制御処理の流れの例を説明する。
【0326】
送信用バッファ書き込み制御処理が開始されると、書き込み制御部281は、ステップS31において、所定のタイミングであるか否かを判定し、所定のタイミングであると判定されるまで待機する。所定のタイミングであると判定されると処理はステップS32に進む。ステップS32において、書き込み指示部282は、Yデータ書き込み制御部251およびCデータ書き込み制御部252に書き込み指示を供給し、1プレシンクト分の符号化データをバッファに書き込ませる。
【0327】
ステップS33において、プレシンクト数判定部284は、バッファに蓄積した符号化データのプレシンクト数を算出し、バッファ内のプレシンクト数が予め定められた所定の閾値を越えたか否かを判定する。越えたと判定された場合、処理はステップS34に進む。ステップS34において、出力禁止部285は、現在読み出し中のプレシンクトの次のプレシンクトの符号化データを出力禁止にする。ステップS34の処理が終了すると、処理はステップS37に進む。
【0328】
また、ステップS33において、バッファ内のプレシンクト数が所定の閾値以下であると判定した場合、処理は、ステップS35に進む。ステップS35において、送出時間確認部283は、バッファに蓄積された符号化データの総送出時間を算出し、バッファ内符号化データを全て所定の時間内に送出可能であるか否かを判定する。送出可能でないと判定された場合、処理はステップS36に進む。ステップS36において、出力禁止部285は、現在読み出し中のプレシンクトの次のプレシンクトから出力順に必要な数のプレシンクトの符号化データを出力禁止にする。ステップS36の処理が終了すると、処理はステップS37に進む。
【0329】
また、ステップS35において、バッファ内の符号化データを全て所定の時間内に送出可能であると判定された場合、処理はステップS37に進む。
【0330】
ステップS37において、書き込み制御部281は、ピクチャ内に未処理のプレシンクトが存在するか否かを判定する。ピクチャ内に未処理のプレシンクトが存在すると判定された場合、処理はステップS31に戻り、それ以降の処理が繰り返される。また、ステップS37において、ピクチャ内に未処理のプレシンクトが存在しないと判定された場合、送信用バッファ書き込み制御処理が終了される。
【0331】
次に、図25のフローチャートを参照して、送信用バッファ読み出し制御処理部272(図11)により実行される送信用バッファ読み出し制御処理の流れの例を説明する。
【0332】
送信用バッファ読み出し制御処理が開始されると、ステップS51において、プレシンクトヘッダ生成部292は、Yデータのプレシンクトヘッダを生成する。ステップS52において、読み出し制御部291は、現在のプレシンクトがピクチャの先頭のプレシンクトであるか否かを判定する。先頭のプレシンクトであると判定された場合、処理はステップS53に進む。ステップS53において、ピクチャヘッダ生成部293は、ピクチャヘッダを生成する。ピクチャヘッダが生成されると処理はステップS54に進む。また、ステップS52において先頭プレシンクトで無いと判定された場合、ステップS53の処理は省略され、ステップS54に処理が進む。
【0333】
ステップS54において、読み出し指示部294は、処理対象プレシンクトのYデータを読み出すようにYバッファ253に対して読み出し指示を行う。ステップS55において、プレシンクトヘッダ生成部292は、Cデータのプレシンクトヘッダを生成する。ステップS56において、読み出し指示部294は、処理対象プレシンクトのCデータを読み出すようにCバッファ254に対して読み出し指示を行う。ステップS56の処理が終了すると処理はステップS57に進む。
【0334】
ステップS57において、読み出し制御部291は、ピクチャ内に未処理のプレシンクトが存在するか否かを判定する。ピクチャ内に未処理のプレシンクトが存在すると判定された場合、処理はステップS51に戻り、それ以降の処理が繰り返される。また、ステップS57において、ピクチャ内に未処理のプレシンクトが存在しないと判定された場合、送信用バッファ読み出し制御処理を終了する。
【0335】
次のピクチャに対しては、新たな送信用バッファ読み出し制御処理が実行される。
【0336】
次に、図26のフローチャートを参照して、プレシンクト情報制御部431(図18)により実行される受信用バッファ書き込み制御処理の流れの例を説明する。
【0337】
受信用バッファ書き込み制御処理が開始されると、受信用バッファ書き込み制御処理部441の書き込み制御部451は、ステップS71において、符号化データが入力制御部421に供給されたか否かを判定する。供給されたと判定されるまで処理は待機される。符号化データが供給されたと判定された場合、処理はステップS72に進む。
【0338】
ステップS72において、書き込み指示部452は、YデータをYバッファ422にプレシンクト別に蓄積するように、入力制御部421に対して書き込み指示を行う。入力制御部421は、その指示に基づいて、YデータをYバッファ422に供給してプレシンクト別に蓄積させる。
【0339】
ステップS73において、書き込み指示部452は、CデータをCバッファ423にプレシンクト別に蓄積するように、入力制御部421に対して書き込み指示を行う。入力制御部421は、その指示に基づいて、CデータをCバッファ423に供給してプレシンクト別に蓄積させる。
【0340】
ステップS74において書き込み制御部451は、処理中のピクチャ内に未処理のプレシンクトが存在するか否かを判定する。未処理のプレシンクトが存在すると判定された場合、処理はステップS71に戻り、それ以降の処理が繰り返される。ステップS74において、未処理のプレシンクトが存在しないと判定された場合、受信用バッファ書き込み制御処理が終了される。
【0341】
次のピクチャに対しては、新たな受信用バッファ書き込み制御処理が実行される。
【0342】
次に、図27のフローチャートを参照して、プレシンクト情報制御部431(図18)により実行される受信用バッファ読み出し制御処理の流れの例を説明する。
【0343】
受信用バッファ読み出し制御処理が開始されると、ステップS91において、プレシンクト番号確認部464は、バッファ(Yバッファ422およびCバッファ423)に蓄積された符号化データのうち、最も古いプレシンクトを処理対象プレシンクトに設定する。ステップS92において、読み出し制御部461は、所定のタイミングであるか否かを判定する。所定のタイミングになるまで処理は待機される。所定のタイミングになると、処理はステップS93に進む。
【0344】
ステップS93において、プレシンクト番号確認部464は、処理対象プレシンクトのプレシンクト番号が、前回バッファより読み出されたまたは補完処理されたプレシンクトのプレシンクト番号と連続するか否かを判定する。なお、処理対象プレシンクトが、ピクチャ内で最初に処理されるプレシンクトである場合、プレシンクト番号確認部464は、その処理対象プレシンクトがピクチャ内の1番上のプレシンクトであるか否か、つまり、処理対象プレシンクトのプレシンクト番号が1であるか否かを判定する。
【0345】
プレシンクト番号が連続すると判定された場合、処理はステップS94に進む。この場合、送信用バッファ制御部202においてバンクオーバ制御処理が行われていないと判定されたので、パラメータ抽出指示部465は、ステップS94において、ヘッダ情報より処理対象プレシンクトのパラメータ情報を抽出するように、パケットヘッダ解読部411に対してパラメータ抽出指示を出す。パケットヘッダ解読部411は、この指示に基づいて、ヘッダ情報より処理対象プレシンクトのパラメータ情報を抽出し、復号部403に供給する。
【0346】
ステップS95において、読み出し指示部466は、処理対象プレシンクトのYデータを読み出すように、Yバッファ422に対して読み出し指示を出す。Yバッファ422は、その指示に基づいて処理対象プレシンクトのYデータを読み出して出力制御部424に供給する。ステップS96において、読み出し指示部466は、処理対象プレシンクトのCデータを読み出すように、Cバッファ423に対して読み出し指示を出す。Cバッファ423は、その指示に基づいて処理対象プレシンクトのCデータを読み出して出力制御部424に供給する。
【0347】
出力制御部424は、供給されたYデータおよびCデータを多重化して復号部403に供給する。ステップS96の処理が終了されると処理はステップS98に進む。
【0348】
また、ステップS93において、プレシンクト番号が連続しないと判定された場合、処理はステップS97に進む。この場合、符号化データの欠損があると判定されている。ステップS97において、補完処理部468は、ダミーデータ保持部467よりダミーデータを取得し、そのダミーデータを復号部403に出力することにより、損失した符号化データを補完する。ステップS97の処理が終了されると処理はステップS98に進む。
【0349】
ステップS98において、読み出し制御部461は、未処理のプレシンクトが存在するか否かを判定する。未処理のプレシンクトが存在すると判定された場合、処理はステップS91に戻り、それ以降の処理が繰り返される。つまり、次のプレシンクトに対する処理が行われる。なお、ステップS93においてプレシンクト番号が連続しないと判定された場合、まだ、その処理対象プレシンクトの符号化データはバッファより読み出されていないので、未処理のプレシンクトが存在すると判定される。つまり、この場合、処理はステップS91に戻る。
【0350】
このように、各プレシンクトに対して、ステップS91乃至ステップS98の各処理よりなるループが実行される。なお、ステップS91においては、最も古いプレシンクトが処理対象プレシンクトに設定されるため、前回のループでステップS97においてダミーデータで補完された場合、前回のループで処理対象プレシンクトに設定されたプレシンクトの符号化データはまだバッファより読み出されていないので、同じプレシンクトが処理対象プレシンクトとされる。
【0351】
ステップS98において、処理中のピクチャ内に未処理のプレシンクトが存在しないと判定された場合、受信用バッファ読み出し制御処理が終了される。
【0352】
次のピクチャに対しては、新たな受信用バッファ読み出し制御処理が実行される。
【0353】
次に、図28のフローチャートを参照して、復号部403(図22)により実行される復号処理の流れの例を説明する。この復号処理は、図23のフローチャートに示される符号化処理に対応する。
【0354】
復号処理が開始されると、ステップS131において、エントロピ復号部481は符号化データを取得する。ステップS132において、エントロピ復号部481は、ライン毎に符号化データをエントロピ復号する。ステップS133において、逆量子化部482は、エントロピ復号されて得られた係数データに対して逆量子化を行う。ステップS134において、係数バッファ部483は、その逆量子化された係数データを保持する。ステップS135においてウェーブレット逆変換部484は、係数バッファ部483に1プレシンクト分の係数が蓄積されたか否かを判定する。蓄積されていないと判定された場合、処理はステップS131に戻り、それ以降の処理が実行され、係数バッファ部483に1プレシンクト分の係数が蓄積されるまで待機する。
【0355】
ステップS135において係数バッファ部483に1プレシンクト分の係数が蓄積されたと判定された場合、処理はステップS136に進む。ステップS136において、ウェーブレット逆変換部484は、係数バッファ部483に保持されている係数を1プレシンクト分読み出す。
【0356】
そしてその読み出した係数に対して、ウェーブレット逆変換部484は、ステップS137において、画面垂直方向に並ぶ係数に対して合成フィルタリング処理を行う垂直合成フィルタリング処理を行い、ステップS138において、画面水平方向に並ぶ係数に対して合成フィルタリング処理を行う水平合成フィルタリング処理を行い、ステップS139において、合成フィルタリング処理がレベル1(分解レベルの値が「1」のレベル)まで終了したか否か、すなわち、ウェーブレット変換前の状態まで逆変換したか否かを判定する。合成フィルタリング処理がレベル1まで達していないと判定された場合、処理はステップS137に戻る。つまり、レベル1に達するまでステップS137およびステップS138のフィルタリング処理が繰り返される。
【0357】
ステップS139において、レベル1まで逆変換処理が終了したと判定された場合、処理はステップS140に進む。ステップS140において、ウェーブレット逆変換部484は、逆変換処理により得られた画像データを復号部403の外部に出力する。
【0358】
ステップS141において、エントロピ復号部481は、復号処理を終了するか否かを判定する。符号化データの入力が継続しており、復号処理を終了しないと判定された場合、処理はステップS131に戻り、それ以降の処理が繰り返される。また、ステップS141において、符号化データの入力が終了するなどして復号処理を終了すると判定された場合、復号処理が終了される。
【0359】
以上のように、ウェーブレット逆変換部484の場合、プレシンクト単位で垂直合成フィルタリング処理および水平合成フィルタリング処理をレベル1まで連続して行うので、画面全体に対してウェーブレット逆変換を行う方法と比較して、一度に(同時期に)バッファリングする必要のあるデータの量が少なく、用意すべきバッファのメモリ量を大幅に低減させることができる。また、レベル1まで合成フィルタリング処理(ウェーブレット逆変換処理)が行われることにより、ピクチャ内の全画像データが得られる前に(プレシンクト単位で)画像データを順次出力させることができ、画面全体に対してウェーブレット逆変換を行う方法と比較して遅延時間を大幅に低減させることができる。
【0360】
以上のように、送信側においてバンクオーバ制御処理を行い、受信側においてそのバンクオーバ制御に応じて補完処理を行うことにより、コンテンツのデータ伝送において、容易に、不要な遅延時間の増大を抑制するとともに、コンテンツとしての品質の不要な低下も抑制することができる。
【0361】
このようなデータ伝送における処理は、データ伝送に即時性(リアルタイム性)、つまり遅延時間の低減が求められるシステムにおいて特に有効である。また、上述したバンクオーバ制御処理や補完処理は、プレシンクト単位で行うことができるので、プレシンクト単位で処理を行う符号化処理や復号処理を用いるシステムに特に好適である。
【0362】
以上のような各部により実行される各種処理は、例えば、図29に示されるように、適宜、並列的に実行される。
【0363】
図29は、図2に示されるビデオ信号符号化部120および図16に示されるビデオ信号復号部136により実行される処理の各要素の並列動作の例を概略的に示す図である。この図29は、上述した図7と対応するものである。画像データの入力In−1(図29A)に対して、ウェーブレット変換部221(図3)で1回目のウェーブレット変換WT−1が施される(図29B)。図6を参照し説明したように、この1回目のウェーブレット変換WT−1は、最初の3ラインが入力された時点で開始され、係数C1が生成される。すなわち、画像データIn−1の入力からウェーブレット変換WT−1が開始されるまで、3ライン分の遅延が生じる。
【0364】
生成された係数データは、係数並び替え用バッファ部223(図3)に格納される。以降、入力された画像データに対してウェーブレット変換が施され、1回目の処理が終了すると、そのまま2回目のウェーブレット変換WT−2に処理が移行する。
【0365】
2回目のウェーブレット変換WT−2のための画像データIn−2の入力と、当該2回目のウェーブレット変換WT−2の処理と並列的に、係数並び替え部224(図3)により3個の、係数C1、係数C4、および係数C5の並び替えOrd−1が実行される(図29C)。
【0366】
なお、ウェーブレット変換WT−1の終了から並び替えOrd−1が開始されるまでの遅延は、例えば、並び替え処理を係数並び替え部224に指示する制御信号の伝達に伴う遅延や、制御信号に対する係数並び替え部224の処理開始に要する遅延、プログラム処理に要する遅延といった、装置やシステム構成に基づく遅延であって、符号化処理における本質的な遅延ではない。
【0367】
係数データは、並び替えが終了した順に係数並び替え用バッファ部223から読み出され、量子化部225において量子化された後、エントロピ符号化部227(図3)に供給され、エントロピ符号化EC−1が行われる(図29D)。このエントロピ符号化EC−1は、3個の、係数C1、係数C4、および係数C5の、全ての並び替えの終了を待たずに開始することができる。例えば、最初に出力される係数C5による1ラインの並び替えが終了した時点で、当該係数C5に対するエントロピ符号化を開始することができる。この場合、並び替えOrd−1の処理開始からエントロピ符号化EC−1の処理開始までの遅延は、1ライン分となる。
【0368】
エントロピ符号化部227によるエントロピ符号化EC−1が終了した符号化データは、所定の信号処理が施された後、トライアックスケーブル111を介してカメラ制御部112に伝送される(図29E)。このとき、符号化データは、パケット化されて伝送される。
【0369】
送信ユニット110のビデオ信号符号化部120に対して、1回目の処理による7ライン分の画像データ入力に続けて、画面上の下端のラインまで画像データが順次、入力される。ビデオ信号符号化部120では、画像データの入力In−n(nは2以上)に伴い、上述したようにして、4ライン毎にウェーブレット変換WT−n、並び替えOrd−nおよびエントロピ符号化EC−nを行う。ビデオ信号符号化部120における最後の回の処理に対する並び替えOrdおよびエントロピ符号化ECは、6ラインに対して行われる。これらの処理は、ビデオ信号符号化部120において、図29A乃至図29Dに例示されるように、並列的に行われる。
【0370】
ビデオ信号符号化部120によるエントロピ符号化EC−1により符号化された符号化データのパケットは、カメラ制御部112に伝送され、所定の信号処理が施された後、ビデオ信号復号部136に供給される。ビデオ信号復号部136(図16)のパケット解読部401は、パケットのヘッダ情報と符号化データを分離し、受信用バッファ制御部402は、プレシンクト毎に符号化データを復号部403に供給する。復号部403(図22)のエントロピ復号部481は、供給された、エントロピ符号化EC−1により符号化された符号化データに対して、順次、エントロピ符号の復号iEC−1を行い、係数データを復元する(図29F)。復元された係数データは、逆量子化部482において逆量子化された後、順次、係数バッファ部483に格納される。ウェーブレット逆変換部484は、係数バッファ部483にウェーブレット逆変換が行えるだけ係数データが格納されたら、係数バッファ部483から係数データを読み出して、読み出された係数データを用いてウェーブレット逆変換iWT−1を行う(図29G)。
【0371】
図6を参照して説明したように、ウェーブレット逆変換部484によるウェーブレット逆変換iWT−1は、係数C4および係数C5が係数バッファ部483に格納された時点で開始することができる。したがって、エントロピ復号部481による復号iEC−1が開始されてからウェーブレット逆変換部484によるウェーブレット逆変換iWT−1が開始されるまでの遅延は、2ライン分となる。
【0372】
ウェーブレット逆変換部484において、1回目のウェーブレット変換による3ライン分のウェーブレット逆変換iWT−1が終了すると、ウェーブレット逆変換iWT−1で生成された画像データの出力Out−1が行われる(図29H)。出力Out−1では、図6および図7を用いて説明したように、第1ライン目の画像データが出力される。
【0373】
ビデオ信号復号部136に対して、ビデオ信号符号化部120における1回目の処理による3ライン分の符号化された係数データの入力に続けて、エントロピ符号化EC−n(nは2以上)により符号化された係数データが順次、入力される。ビデオ信号復号部136では、入力された係数データに対して、上述したようにして、4ライン毎にエントロピ復号iEC−nおよびウェーブレット逆変換iWT−nを行い、ウェーブレット逆変換iWT−nにより復元された画像データの出力Out−nを順次、行う。ビデオ信号符号化部120の最後の回に対応するエントロピ復号iECおよびウェーブレット逆変換iWTは、6ラインに対して行われ、出力Outは、8ラインが出力される。これらの処理は、ビデオ信号復号部136において、図29F乃至図29Hに例示されるように、並列的に行われる。
【0374】
上述のようにして、画面上部から下部の方向に順番に、ビデオ信号符号化部120およびビデオ信号復号部136における各処理を並列的に行うことで、画像圧縮処理および画像復号処理をより低遅延で行うことが可能となる。
【0375】
図29を参照して、5×3フィルタを用いて分解レベル=2までウェーブレット変換を行った場合の、画像入力から画像出力までの遅延時間を計算してみる。第1ライン目の画像データがビデオ信号符号化部120に入力されてから、この第1ライン目の画像データがビデオ信号復号部136から出力されるまでの遅延時間は、下記の各要素の総和となる。なお、ここでは、伝送路における遅延や、装置各部の実際の処理タイミングに伴う遅延などの、システムの構成により異なる遅延は、除外している。
【0376】
(1)最初のライン入力から7ライン分のウェーブレット変換WT−1が終了するまでの遅延D_WT
(2)3ライン分の計数並び替えOrd−1に伴う時間D_Ord
(3)3ライン分のエントロピ符号化EC−1に伴う時間D_EC
(4)3ライン分のエントロピ復号iEC−1に伴う時間D_iEC
(5)3ライン分のウェーブレット逆変換iWT−1に伴う時間D_iWT
【0377】
図29を参照して、上述の各要素による遅延の計算を試みる。(1)の遅延D_WTは、10ライン分の時間である。(2)の時間D_Ord、(3)の時間D_EC、(4)の時間D_iEC、および(5)の時間D_iWTは、それぞれ3ライン分の時間である。また、ビデオ信号符号化部120において、並び替えOrd−1が開始されてから1ライン後には、エントロピ符号化EC−1を開始することができる。同様に、ビデオ信号復号部136において、エントロピ復号iEC−1が開始されてから2ライン後には、ウェーブレット逆変換iWT−1を開始することができる。また、エントロピ復号iEC−1は、エントロピ符号化EC−1で1ライン分の符号化が終了した時点で処理を開始することができる。
【0378】
したがって、この図29の例では、ビデオ信号符号化部120に第1ライン目の画像データが入力されてから、ビデオ信号復号部136から当該第1ライン目の画像データが出力されるまでの遅延時間は、10+1+1+2+3=17ライン分となる。
【0379】
遅延時間について、より具体的な例を挙げて考察する。入力される画像データがHDTV(High Definition Television)のインタレースビデオ信号の場合、例えば1920画素×1080ラインの解像度で1フレームが構成され、1フィールドは、1920画素×540ラインとなる。したがって、フレーム周波数を30Hzとした場合、1フィールドの540ラインが16.67msec(=1sec/60フィールド)の時間に、ビデオ信号符号化部120に入力されることになる。
【0380】
したがって、7ライン分の画像データの入力に伴う遅延時間は、0.216msec(=16.67msec×7/540ライン)であり、例えば1フィールドの更新時間に対して非常に短い時間となる。また、上述した(1)の遅延D_WT、(2)の時間D_Ord、(3)の時間D_EC、(4)の時間D_iEC、および(5)の時間D_iWTの総和についても、処理対象のライン数が少ないため、遅延時間が非常に短縮される。
【0381】
以上においては、受信用バッファ制御部402は、バンクオーバ制御処理等によりプレシンクトの損失が発生した場合、予め用意されたダミーデータを用いて補完するように説明したが、これに限らず、例えば、補完処理に、1ピクチャ前の同じ位置のプレシンクトの符号化データを用いるようにしてもよい。
【0382】
図30は、図16の受信用バッファ制御部の詳細な、他の構成例を示すブロック図である。図30に示される受信用バッファ制御部502は、基本的に図17を参照して説明した受信用バッファ制御部402と同様の構成を有し、同様に動作するが、プレシンクト情報制御部が、入力制御部に供給された符号化データ(YデータおよびCデータ)を取得し、次のピクチャにおいて行われる補完処理に利用するために、取得した符号化データを1ピクチャ分保持する点と、バンクオーバ制御処理等によりプレシンクトの損失が発生した場合に、プレシンクト情報制御部が、その保持している1ピクチャ前の同じ位置のプレシンクトの符号化データを用いて補完処理を行う点が異なる。
【0383】
つまり、受信用バッファ制御部502は、受信用バッファ制御部402のパケットヘッダ解読部411に対応し、パケットヘッダ解読部411と同様の処理を行うパケットヘッダ解読部511、受信用バッファ制御部402のYバッファ422に対応し、Yバッファ422と同様の処理を行うYバッファ522、受信用バッファ制御部402のCバッファ423に対応し、Cバッファ423と同様の処理を行うCバッファ523、および、受信用バッファ制御部402の出力制御部424に対応し、出力制御部424と同様の処理を行う出力制御部524の他に、入力制御部521およびプレシンクト情報制御部531を有する。
【0384】
入力制御部521は、受信用バッファ制御部402の入力制御部421に対応し、基本的に入力制御部421と同様の処理を行うが、取得した符号化データ(YデータおよびCデータ)をYバッファ422およびCバッファ423に供給して蓄積させるとともに、その符号化データをプレシンクト情報制御部531にも供給する点が入力制御部421と異なる。
【0385】
プレシンクト情報制御部531は、受信用バッファ制御部402のプレシンクト情報制御部431に対応し、基本的にプレシンクト情報制御部431と同様の処理を行うが、記憶媒体を内蔵し、その記憶媒体に入力制御部521より供給された符号化データを1ピクチャ分蓄積し、プレシンクトの損失が発生した際に、ダミーデータではなく、保持している1ピクチャ前の同じ位置のプレシンクトの符号化データを復号部403に供給する点がプレシンクト情報制御部431と異なる。
【0386】
図31は、図30のプレシンクト情報制御部531の詳細な構成例を示すブロック図である。
【0387】
図31に示されるように、プレシンクト情報制御部531は、受信用バッファ書き込み制御処理部541および受信用バッファ読み出し制御処理部542を有する。
【0388】
受信用バッファ書き込み制御処理部541は、書き込み制御部551、書き込み指示部552、および符号化データ更新部553を有する。
【0389】
書き込み制御部551は、受信用バッファ書き込み制御処理部441の書き込み制御部451(図18)に対応し、基本的に書き込み制御部451と同様の処理を行うが、書き込み指示部552だけでなく、符号化データ更新部553が実行する処理も制御する点が書き込み制御部451と異なる。書き込み指示部552は、受信用バッファ書き込み制御処理部441の書き込み指示部452(図18)に対応し、書き込み制御部551に制御されて書き込み指示部452と同様の処理を行う。
【0390】
符号化データ更新部553は、書き込み制御部551に制御されて、後述する受信用バッファ読み出し制御処理部542の1ピクチャ符号化データ保持部567に保持されている符号化データの更新を行う。つまり、符号化データ更新部553は、入力制御部521より供給される1プレシンクト分の符号化データを取得すると、それを1ピクチャ符号化データ保持部567に供給し、1ピクチャ符号化データ保持部567が保持している符号化データを更新させる。つまり、符号化データ更新部553は、入力制御部521より供給される新たな1プレシンクト分の符号化データを1ピクチャ符号化データ保持部567に供給することにより、1ピクチャ符号化データ保持部567が保持している1ピクチャ分の符号化データのうち、同じ位置のプレシンクトの符号化データに、その新たな符号化データを上書きさせる。
【0391】
受信用バッファ読み出し制御処理部542は、読み出し制御部561、プレシンクト番号確認部564、パラメータ抽出指示部565、読み出し指示部566、1ピクチャ符号化データ保持部567、および補完処理部568を有する。
【0392】
読み出し制御部561は、受信用バッファ読み出し制御処理部442の読み出し制御部461(図18)に対応し、基本的に読み出し制御部461と同様の処理を行うが、ダミーデータ保持部467の代わりに1ピクチャ符号化データ保持部567を制御する点が読み出し制御部461と異なる。
【0393】
プレシンクト番号確認部564は、受信用バッファ読み出し制御処理部442のプレシンクト番号確認部464(図18)に対応し、読み出し制御部561に制御されてプレシンクト番号確認部464と同様の処理を行う。パラメータ抽出指示部565は、受信用バッファ読み出し制御処理部442のパラメータ抽出指示部465(図18)に対応し、読み出し制御部561に制御されてパラメータ抽出指示部465と同様の処理を行う。読み出し指示部566は、受信用バッファ読み出し制御処理部442の読み出し指示部466(図18)に対応し、読み出し制御部561に制御されて読み出し指示部466と同様の処理を行う。
【0394】
1ピクチャ符号化データ保持部567は、入力制御部521より供給される符号化データを1ピクチャ分保持している。補完処理部568は、読み出し制御部561に制御され、プレシンクト番号確認部564の確認結果に基づいて、プレシンクトの損失が発生した場合には、1ピクチャ符号化データ保持部567に保持されている1ピクチャ分の符号化データの中から、同じ位置のプレシンクトの符号化データ、すなわち、損失したプレシンクトの1ピクチャ前の同じ位置のプレシンクトの符号化データを取得し、その符号化データを用いて補完処理を行う。
【0395】
図19の例の場合、図18の補完処理部468は、図20に示されるように、損失したプレシンクトBの符号化データの代わりに、予め用意されたダミーデータ(ダミーB)を復号部403に供給したが、図31の補完処理部568は、図32に示されるように、損失したプレシンクトBの符号化データの代わりに、1ピクチャ前のプレシンクトBの符号化データ(1ピクチャ前のB)を復号部403に供給する。
【0396】
通常の動画像の場合、隣り合うピクチャ間での画像の相関性は高い。つまり、同じ位置のラインの画像は、隣り合うピクチャ間での相関性が高い。従って、補完処理部568は、1つ前のピクチャの同じ位置のプレシンクトの符号化データを用いて補完することにより、出力画像において、欠損した画像によく似た画像を補完することができる。つまり、補完処理部568は、予め用意された所定の画像のダミーデータを補完処理に用いる場合よりも、補完処理による画質劣化を低減させることができる(画質劣化を視覚的に目立たなくさせることができる)。
【0397】
ただし、この場合、1ピクチャ分の符号化データを補完処理のために蓄積しなければならないので、1ピクチャ符号化データ保持部567に必要な記憶容量は、少なくとも1プレシンクト分の符号化データを保持すればよいダミーデータ保持部467と比較して、増大する。ただし、ベースバンドの画像データではなく符号化データを蓄積すればよいので、その増大するデータ量は実施不可能なほどではない(十分に実現可能である)。
【0398】
図33のフローチャートを参照して、この場合の受信用バッファ書き込み制御処理の流れの例を説明する。なお、この受信用バッファ書き込み制御処理は、図26のフローチャートを参照して説明した受信用バッファ書き込み制御処理に対応する。
【0399】
つまり、受信用バッファ書き込み制御処理部541の書き込み制御部551および書き込み指示部552は、図26のステップS71乃至ステップS73の場合と同様に、ステップS171乃至ステップS173の処理を実行し、供給されたYデータをYバッファ522に蓄積し、CデータをCバッファ523に蓄積する。符号化データがバッファに蓄積されると、処理は、ステップS174に進む。
【0400】
符号化データ更新部553は、ステップS174において、1ピクチャ符号化データ保持部567に保持されている1ピクチャ前の、バッファに新たに蓄積した符号化データのプレシンクトと同じ位置のプレシンクトの符号化データを削除し、ステップS175において、ステップS172およびステップS173の処理によりバッファに蓄積した符号化データ(YデータおよびCデータ)を、1ピクチャ符号化データ保持部567に供給し、プレシンクト別に蓄積させる。
【0401】
書き込み制御部551は、ステップS176において、図26のステップS74の場合と同様に未処理のプレシンクトが存在するか否かを判定する。未処理のプレシンクトが存在すると判定された場合、処理はステップS171に戻り、それ以降の処理が繰り返され、未処理のプレシンクトが存在しないと判定された場合、受信用バッファ書き込み制御処理が終了される。
【0402】
次に、図34のフローチャートを参照して、この場合の受信用バッファ読み出し制御処理の流れの例を説明する。なお、この受信用バッファ読み出し制御処理は、図27のフローチャートを参照して説明した受信用バッファ読み出し制御処理に対応する。
【0403】
つまり、受信用バッファ読み出し制御処理部542の読み出し制御部561、プレシンクト番号確認部564、パラメータ抽出指示部565、および読み出し指示部566の各部は、図27のステップS91乃至ステップS96の場合と同様に、ステップS191乃至ステップS196の処理を実行し、処理対象プレシンクトのプレシンクト番号が連続している場合は、Yバッファ522およびCバッファ523に蓄積されている符号化データをプレシンクト毎に読み出して復号部403に供給する。ステップS196の処理が終了すると処理はステップS198に進む。
【0404】
また、ステップS193において、プレシンクト番号が連続しない、つまり、プレシンクトの欠損が発生したと判定された場合、処理はステップS197に進む。ステップS197において、補完処理部568は、1ピクチャ前の符号化データを復号部403に供給することにより、欠損した符号化データを補完する。ステップS197の処理が終了すると、処理はステップS198に進む。
【0405】
ステップS198において、読み出し制御部561は、図26のステップS98の場合と同様に、未処理のプレシンクトが存在するか否かを判定する。未処理のプレシンクトが存在すると判定された場合、処理はステップS191に戻り、それ以降の処理が繰り返される。また、未処理のプレシンクトが存在しないと判定された場合、受信用バッファ読み出し制御処理が終了される。
【0406】
なお、以上においては、図1に示されるようなデジタルトライアックスシステムにおいて、バンクオーバ制御処理や補完処理を行うように説明したが、これらの処理は、他のシステムにも適用可能であり、画像データを伝送するシステムであればどのようなシステムに適用してもよい。また、そのシステムの用途は任意である。
【0407】
ただし、このバンクオーバ制御処理や補完処理は、コンテンツのデータ伝送において、容易に、不要な遅延時間の増大を抑制するとともに、コンテンツとしての品質の不要な低下も抑制するためのものであるので、データ伝送において、即時性(リアルタイム性)が求められるシステム、すなわち、送信側から受信側へのデータ伝送をより低遅延で行うことが求められるシステムに適用する場合の方が、より効果的である。
【0408】
また、送信側において符号化処理を行い、符号化データを伝送し、受信側において復号処理を行うシステムのように、元々、符号化処理や復号処理によって画質劣化が生じており、さらなる画質劣化に対する許容度が狭いシステムに適用する場合の方が、より効果的である。
【0409】
さらに、その符号化処理や復号処理の方法は任意であるが、バンクオーバ制御処理や補完処理はプレシンクト単位での処理が可能であるので、上述したようなプレシンクト単位で符号化処理や復号処理を行うシステムに適用する場合の方が、処理単位の変更などによる無駄が少なく効率的である。
【0410】
なお、システムの構成は任意であり、例えば、上述したデジタルトライアックスシステムのように、双方向に符号化データが伝送されるシステムであってもよいし、一方の装置から他方の装置に対してのみ符号化データが伝送されるシステムであってもよいし、1つの送信装置から複数の受信装置に対して符号化データが伝送されるシステムであってもよいし、複数の装置間で任意の相手と双方向に符号化データが伝送可能なシステムであってもよい。
【0411】
なお、図1のデジタルトライアックスシステム100において、ビデオ信号復号部136として従来のビデオ信号復号部を適用するようにしてもよい。すなわち、補完処理を行わないようにしてもよい。その場合、ビデオ信号符号化部120において、バンクオーバ制御処理が行われるので、ビデオ信号復号部136において発生するアンダーフローの長期化を抑制し、不要な画質劣化を抑制することができる。ただし、欠損したプレシンクトが補完されないので、出力画像において、そのプレシンクトに対応するラインに黒い水平線が生じる恐れがあり、画質劣化が目立つ恐れもある。
【0412】
また、逆に、ビデオ信号符号化部120として従来のビデオ信号符号化部を適用し、バンクオーバ制御処理を行わずに補完処理のみを行うようにしてもよい。この場合、ビデオ信号復号部136は、例えば、伝送時のパケットロス等、任意の理由で欠損した符号化データを補完することができるものの、ビデオ信号復号部136においてアンダーフローが発生する可能性がある場合、そのアンダーフローが長期化し、画質劣化が増大する恐れがある。
【0413】
以上においては、送信用バッファ書き込み制御処理部271の出力禁止部285が、バンクオーバ制御処理として、プレシンクト毎に符号化データの出力の禁止を設定するように説明したが、出力禁止部285は、出力禁止を設定する代わりに、バッファより符号化データをプレシンクト毎に破棄するようにしてもよい。なお、以上において出力禁止部285は、バンクオーバ制御処理として符号化データを出力禁止に設定するように説明したが、この出力禁止の設定は、符号化データのパケット生成部203への出力、すなわち符号化データの伝送を禁止するものであり、出力禁止に設定された符号化データの消去は可能である。また、他の新たな符号化データを上書きすることも可能である。
【0414】
また、図18において、ダミーデータ保持部467がダミーデータを保持し、補完処理の際にそのダミーデータを補完処理部468に提供するように説明したが、ダミーデータ保持部467が互いに画像が異なるダミーデータを複数保持するようにし、補完処理部468が、補完処理の際に、それらのダミーデータの中から1つを選択して使用するようにしてもよい。このダミーデータの選択方法は任意であるが、例えば、補完処理部468が、1つ前に処理したプレシンクトの符号化データの画像を確認し、その画像に最も近い画像のダミーデータを選択するようにしてもよい。
【0415】
さらに、図31においては、1つ前の同じ位置のプレシンクトの符号化データを用いて補完処理が行われるように説明したが、これ以外にも、例えば、同じピクチャの1つ上、または近隣に位置するプレシンクトの符号化データを用いるようにしてもよいし、同じピクチャの1つ上、または近隣に位置するプレシンクトの符号化データに基づいて作成された新たな符号化データを用いるようにしてもよい。例えば、補完処理部568が、処理対象のプレシンクトの1つ上のプレシンクトと2つ上のプレシンクトの符号化データを用いて、2つ上のプレシンクトの符号化データとの平均が1つ上のプレシンクトの符号化データとなるような符号化データを算出し、その符号化データを用いて補完処理を行うようにしてもよい。このように同じピクチャの符号化データを利用することにより、保持する符号化データのデータ量を低減することができ、バッファメモリの記憶容量を低減させることができる。
【0416】
また、補完処理部が実際にダミーデータや符号化データを出力する代わりに、その場合と等価の、復号部403を制御する制御情報を出力するようにしてもよい。例えば、補完処理部が、補完処理の際に、符号化データを生成するように指示する制御情報を復号部403に対して供給し、その復号部403等において、欠損した符号化データの代わりとなる符号化データを生成するようにしてもよい。もちろん、これ以外の制御情報であってもよい。
【0417】
なお、以上においては、バンクオーバ制御処理を実行するための条件として、プレシンクト数やデータ量(送出時間)を用いる場合について説明したが、このバンクオーバ制御処理を実行するための条件は、これら以外のものであってもよい。例えば、プレシンクト数やデータ量(送出時間)と同様の、バッファにおけるデータの蓄積状況に関するパラメータであってもよいし、それ以外のものを用いてもよい。つまり、受信側のバッファにおけるアンダーフローの発生を抑制したり、発生したアンダーフローを短期に解消させたりするようにバンクオーバ制御処理を実行することができるような条件であれば何でもよい。ただし、上述したように、プレシンクト数に基づくバンクオーバ制御処理の場合とデータ量(送出時間)に基づくバンクオーバ制御処理の場合とで得られる効果の特徴が異なるように、それら以外の条件の場合も、その内容によってバンクオーバ制御処理により得られる効果の特徴が異なる。
【0418】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。この場合、例えば、図35に示されるようなパーソナルコンピュータとして構成されるようにしてもよい。
【0419】
図35において、パーソナルコンピュータ700のCPU(Central Processing Unit)701は、ROM(Read Only Memory)702に記憶されているプログラム、または記憶部713からRAM(Random Access Memory)703にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM703にはまた、CPU701が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0420】
CPU701、ROM702、およびRAM703は、バス704を介して相互に接続されている。このバス704にはまた、入出力インタフェース710も接続されている。
【0421】
入出力インタフェース710には、キーボード、マウスなどよりなる入力部711、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部712、ハードディスクなどより構成される記憶部713、モデムなどより構成される通信部714が接続されている。通信部714は、例えばインターネットに代表されるネットワークを介しての通信処理を行う。
【0422】
入出力インタフェース710にはまた、必要に応じてドライブ715が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア721が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部713にインストールされる。
【0423】
上述した一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0424】
この記録媒体は、例えば、図35に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)(登録商標)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア721により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROM702や、記憶部713に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0425】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0426】
また、本明細書において、システムとは、複数のデバイス(装置)により構成される装置全体を表すものである。
【0427】
なお、以上において、1つの装置として説明した構成を分割し、複数の装置として構成するようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置として説明した構成をまとめて1つの装置として構成されるようにしてもよい。また、各装置の構成に上述した以外の構成を付加するようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置の構成の一部を他の装置の構成に含めるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0428】
以上説明した本発明は、複数の端末間で画像を圧縮して伝送、受信して伸長して画像を出力する装置、特に低遅延で実現する必要性が高いプロダクツ・アプリケーションに好適である。具体的には、放送局で多用するデジタルトライアックスシステム、ライブ映像配信システム、TV会議システム、監視カメラ・レコーダシステム、医用遠隔医療診断、生徒と教師間のインタラクティブ通信、ビデオゲーム等に応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0429】
【図1】本発明を適用したデジタルトライアックスシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のビデオ信号符号化部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の符号化部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図4】ウェーブレット変換について概略的に説明するための略線図である。
【図5】ウェーブレット変換について概略的に説明するための略線図である。
【図6】5×3フィルタのリフティングによるフィルタリングを分解レベル=2まで実行した例を示す略線図である。
【図7】この発明によるウェーブレット変換およびウェーブレット逆変換の流れを概略的に示す略線図である。
【図8】図2の符号化部の符号化データの出力順を説明する図である。
【図9】プレシンクト毎の発生符号量の変化を説明する図である。
【図10】図2の送信用バッファ制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図11】図10のプレシンクト情報制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図12】バッファに読み出し可能に蓄積される符号化データのデータ量の時間的変化の例を示す模式図である。
【図13】バッファに読み出し可能に蓄積される符号化データのデータ量の時間的変化の、他の例を示す模式図である。
【図14】ヘッダ情報の構成例を示す模式図である。
【図15】符号化データの授受の様子の例を説明する模式図である。
【図16】図1のビデオ信号復号部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図17】図16の受信用バッファ制御部の詳細な構成例を示す図である。
【図18】図17のプレシンクト情報制御部の詳細な構成例を示す図である。
【図19】バッファに読み出し可能に蓄積される符号化データのデータ量の時間的変化の例を示す模式図である。
【図20】図16の受信用バッファ制御部の符号化データの出力順の例を説明する図である。
【図21】バッファに読み出し可能に蓄積される符号化データのデータ量の時間的変化の、他の例を示す模式図である。
【図22】図16の復号部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図23】符号化処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図24】送信用バッファ書き込み制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図25】送信用バッファ読み出し制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図26】受信用バッファ書き込み制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図27】受信用バッファ読み出し制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図28】復号処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図29】並列動作の例を概略的に示す略線図である。
【図30】図16の受信用バッファ制御部の、他の詳細な構成例を示す図である。
【図31】図30のプレシンクト情報制御部の詳細な構成例を示す図である。
【図32】図30の受信用バッファ制御部の符号化データの出力順の例を説明する図である。
【図33】受信用バッファ書き込み制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図34】受信用バッファ読み出し制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図35】本発明を適用したパーソナルコンピュータの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0430】
100 デジタルトライアックスシステム, 110 送信ユニット, 111 トライアックスケーブル, 112 カメラ制御部, 120 ビデオ信号符号化部, 121 ビデオ信号復号部, 136 ビデオ信号復号部, 137 ビデオ信号符号化部, 201 符号化部, 202 送信用バッファ制御部, 253 Yバッファ, 254 Cバッファ, 261 プレシンクト情報制御部, 283 送出時間確認部, 284 プレシンクト数判定部, 285 出力禁止部, 402 受信用バッファ制御部, 403 復号部, 431 プレシンクト情報制御部, 464 プレシンクト番号確認部, 467 ダミーデータ保持部, 468 補完処理部, 502 受信用バッファ制御部, 531 プレシンクト情報制御部, 553 符号化データ更新部, 564 プレシンクト番号確認部, 567 1ピクチャ符号化データ保持部, 568 補完処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄積部に蓄積されているデータを、所定のデータ単位毎に、所定の順序で、所定のビットレートで読み出す読み出し手段と、
前記蓄積部における前記データの蓄積状況に関するパラメータが、所定の条件を満たすか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、前記所定の順序において、現在前記読み出し手段により読み出されている前記データ単位のデータの次に読み出される予定の前記データ単位のデータの読み出しを禁止する禁止手段と
を備え、
前記読み出し手段は、前記禁止手段により読み出しが禁止された前記データ単位のデータの読み出しを省略し、前記所定の順序において、さらに次に読み出しが予定されている、前記禁止手段により読み出しが禁止されていない前記データ単位のデータの読み出しを行う
情報処理装置。
【請求項2】
前記パラメータは、前記蓄積部に蓄積されているデータの、前記データ単位の数であり、
前記判定手段は、前記データ単位の数が所定の閾値以上であるか否かを判定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記パラメータは、前記読み出し手段が前記蓄積部に蓄積されているデータを全て読み出すのに必要な時間であり、
前記判定手段は、前記時間を算出し、前記読み出し手段が、所定の時間内に、前記蓄積部に蓄積されているデータを全て読み出すことができるか否かを判定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記禁止手段は、前記判定手段により前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、前記データ単位のデータの読み出しを、前記所定の順序において、現在前記読み出し手段により読み出されている前記データ単位のデータの、次に読み出される予定の前記データ単位のデータから連続して、前記判定手段により前記パラメータが前記所定の条件を満たさないと判定されるのに必要な数以上禁止する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記禁止手段は、前記判定手段により前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、前記所定の順序において、現在前記読み出し手段により読み出されている前記データ単位のデータの、次に読み出される予定の前記データ単位のデータを削除することにより、前記データの読み出しを禁止する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記データは画像データを所定の方法で符号化して得られる符号化データであり、前記データ単位は、前記画像データの符号化における処理単位である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
画像データを符号化する符号化手段と、
前記符号化手段により前記画像データが符号化されて得られた符号化データを、前記データ単位毎に前記蓄積部に書き込んで蓄積させる書き込み手段と
をさらに備える請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記読み出し手段により読み出された前記データをパケット化するパケット化手段をさらに備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記パケット化手段によりパケット化された前記データを他の情報処理装置に送信する送信手段をさらに備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
蓄積部に蓄積されているデータの入出力を制御する情報処理装置の情報処理方法であって、
前記蓄積部における前記データの蓄積状況に関するパラメータが、所定の条件を満たすか否かを判定し、
前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、現在読み出されている所定のデータ単位のデータの次に読み出される予定の前記データ単位のデータの読み出しを禁止し、
読み出しが禁止された前記データ単位のデータの読み出しを省略し、読み出しが禁止されていない前記データ単位のデータのみを、前記データ単位毎に、所定の順序で、所定のビットレートで前記蓄積部より読み出す
ステップを含む情報処理方法。
【請求項11】
蓄積部に蓄積されているデータの欠損を所定のデータ単位毎に確認する確認手段と、
前記確認手段により、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認されていない場合、前記蓄積部に蓄積されているデータを、前記データ単位毎に、所定の順序で読み出す読み出し手段と、
前記確認手段により、前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、代替用のデータを出力して補完する補完手段と
を備える情報処理装置。
【請求項12】
予め定められた所定のデータを、前記代替用のデータとして保持する保持手段をさらに備え、
前記補完手段は、前記確認手段により前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、前記保持手段より前記データを読み出して出力する
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記蓄積部に蓄積されるデータと同一のデータを保持する保持手段をさらに備え、
前記補完手段は、前記確認手段により前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、過去に前記読み出し手段によって前記蓄積部より読み出されたデータと同一のデータを前記保持手段より読み出して出力する
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項14】
他の装置より伝送された、前記データを含むパケットを解読し、前記データを抽出するパケット解読手段と、
前記パケット解読手段により抽出された前記データを前記蓄積部に書き込んで蓄積させる書き込み手段と
をさらに備える請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記データは符号化データであり、
前記読み出し手段により前記蓄積部より読み出された符号化データ、および、前記補完手段により補完された符号化データを復号する復号手段をさらに備える
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項16】
蓄積部に蓄積されているデータの入出力を制御する情報処理装置の情報処理方法であって、
前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損を所定のデータ単位毎に確認し、
前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認されていない場合、前記蓄積部に蓄積されているデータを、前記データ単位毎に、所定の順序で読み出し、
前記蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、代替用のデータを出力して補完する
ステップを含む情報処理方法。
【請求項17】
送信装置より受信装置にデータを伝送する情報処理システムであって、
前記送信装置は、
送信用蓄積部における前記データの蓄積状況に関するパラメータが、所定の条件を満たすか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記パラメータが前記所定の条件を満たすと判定された場合、現在読み出されている所定のデータ単位のデータの次に読み出される予定の前記データ単位のデータの読み出しを禁止する禁止手段と、
前記禁止手段により読み出しが禁止された前記データ単位のデータの読み出しを省略し、読み出しが禁止されていない前記データ単位のデータのみを、前記データ単位毎に、所定の順序で、所定のビットレートで前記送信用蓄積部より読み出す第1の読み出し手段と、
前記第1の読み出し手段により読み出された前記データを前記受信装置に送信する送信手段と
を備え、
前記受信装置は、
前記送信装置より供給される前記データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記データを受信用蓄積部に書き込み蓄積させる書き込み手段と、
前記書き込み手段により書き込まれ、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損を所定のデータ単位毎に確認する確認手段と、
前記確認手段により、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認されていない場合、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータを、前記データ単位毎に、所定の順序で読み出す第2の読み出し手段と、
前記確認手段により、前記受信用蓄積部に蓄積されているデータの欠損が確認された場合、欠損したデータを読み出す代わりに、代替用のデータを出力して補完する補完手段と
を備える情報処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2008−288833(P2008−288833A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131284(P2007−131284)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】