説明

情報提示システム

【課題】ユーザの情報選別の負担を低減することのできる情報提示システムを提供する。
【解決手段】路上施設にその施設の情報(位置情報、種別情報、特別な情報、営業時間情報など)を周囲に発信する発信機を取り付け、それを車両側の受信装置にて取得する。そして、取得した情報とユーザの事前操作に基づいて、ユーザの必要としている施設情報で、かつ、ユーザにとって最も有用な施設情報(たとえば立ち寄りやすく、実際に営業している施設)を優先して検索し、提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は路上機から情報を取得して、ユーザに対して提示する情報提示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用ナビゲーションシステムの機能の一つに、メモリ内に予め格納された地図データの情報を、マーク(アイコン)として表示装置に地図表示とともに表示させる機能がある。これは、位置検出器により検出した車両現在位置あるいは、地図上の任意位置を基準とする所定の距離範囲内の情報を選択し、ユーザに対して提示するものである。
【0003】
これによれば、たとえばユーザは自分のいる場所(車両現在位置)に近い、地図データ上の施設の情報(以下、静的情報という)などを得ることができ、その中で、自分の必要に応じて前記施設に立ち寄ったりすることができる。
【0004】
しかし、たとえば、ユーザが現在位置近傍の商店に立ち寄りたいと感じても、その商店が車両の進行方向右側にある場合には、進行方向左側にある場合に比べて立ち寄りにくい(交通法規が左側通行の場合)。
【0005】
このことに対し、特許文献1に開示された技術には、車両進行方向左側の施設と、進行方向右側の施設の表示形態を分けて表示するナビゲーション装置についての記載がある。これによりユーザは現在位置近傍の施設のうち、立ち寄りやすい施設を画面上で容易に見分けることができるので、ユーザにとって利便性が高められる。
【0006】
ただし、地図データに格納されている静的情報は、外部のサーバと車両が通信することにより更新情報(動的情報)を取得して更新できるとしても、完全に現実に対応しているとはいえない。たとえば移動、増設、変更が頻繁になされる施設の情報や、施設の提供する商品または役務の情報などは流動的であるので、データベースを構築して管理することは困難である。この施設、商品、役務の典型例としては、自動販売機や、コンビニエンスストアの期間限定商品情報、キャンペーン情報などがある。
【0007】
ところで、本願の発明者は、以下のシステムが実現するかを検討してみた。すなわち例示すれば、周囲に施設情報(たとえば自動販売機の位置情報など)を発信する発信機を当該施設(たとえば当該自動販売機)に設置し、その情報を車両側で受信することにより、地図データベースとしては構築することが困難な施設等の情報(たとえば自動販売機の位置情報など)を、ユーザの利便性を考慮して提示できるシステムが実現するかを検討してみた。
【特許文献1】特開2004−245581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
検討の結果、自動販売機に例示するような施設に対してその施設情報(たとえば位置情報)を発信する発信機を設置し、車両側で受信することにより、このような施設についてのデータベースを構築することなく、車両が当該施設情報を取得することができる。また、取得した施設の位置が走行道路の左側にある場合と右側にある場合で表示(車両側の表示装置に表示すること)を区別することにより、ユーザが自分にとってどの施設が立ち寄りやすいかを判断することもできるようになる。
【0009】
しかし、本願の発明者は以下のような課題を見出した。すなわち、路上施設が密集している場所では、路上施設に設置した情報発信機により発信された施設情報を車両側の受信機で取得し、たとえ道路の右側や左側にある施設を区別して表示しても、結局多くの施設が表示されることになる。これでは、たとえば都市部など、施設が密集している場所では、多くの施設が表示されてユーザに煩わしさを与え、ユーザにとって本当に必要な情報を持つ施設を選別することを困難にしてしまうという課題である。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、施設の情報のうち、ユーザにとって必要な情報を取捨選択して提示し、ユーザの情報選別の負担を低減することのできる情報提示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の情報提示システムでは、各路上施設あるいは当該各路上施設周辺に設置された複数の発信機は、当該路上施設についての、少なくとも当該路上施設の位置情報を含む施設情報を格納するメモリ、前記格納された施設情報を電波に重畳して周囲に発信するためのアンテナを有し、車載装置は、前記複数の発信機により発信された前記施設情報を受信するための受信装置、車両の現在位置を取得する現在位置取得手段、ユーザから前記路上施設のうち所望の路上施設を選択するための条件を指示する操作手段、これらを制御する制御手段を具備し、前記制御手段は、前記受信装置により受信した複数の施設情報のうち、前記操作手段により受け付けた前記ユーザにて指示された前記条件に合致し、かつ、前記受信した施設情報に含まれる位置情報、および前記取得した車両の現在位置に基づいて、前記ユーザにとって車両が立ち寄りやすい施設についての前記施設情報を選び出し、その施設情報を優先して提示すること、を特徴とする。
【0012】
このように、頻繁に移動や増設、変更がなされる流動的施設(たとえば自動販売機)に対しても、その周辺あるいはその施設に直接発信機を設置し、そこから発信される当該路上施設の情報を車両側で受信し、取捨選択するので、以下の効果を奏することができる。
【0013】
すなわち、このような地図データベースにない、あるいはデータベースを構築することが困難な流動的施設を含む路上施設が密集していたとしても、それらの施設の情報(静的情報、発信機から受信した情報を含む)の中からユーザにとって利用したい施設の条件(所望の施設情報)に合致し、かつユーザにとって車両が立ち寄りやすい位置に存在するものを優先して提示するので、不要な情報が提示されることが少なくなり、ユーザの情報選別(本当に必要な情報の選別)の負担が低減する。
【0014】
上記ユーザにとって車両が立ち寄りやすい位置、の優先順位としては、たとえば、交通法規が左側通行の場合には、請求項2に記載の情報システムのように、請求項1に記載の情報提示システムにおいて、前記立ち寄りやすい施設とは、車両進行方向の前方左側に存在する施設であることを第1優先とし、前記車両進行方向の後方左側に存在する施設であることを第2優先とし、前記車両進行方向の前方右側に存在する施設であることを第3優先とし、前記車両進行方向の後方右側に存在する施設であることを第4優先とし、前記制御手段は、前記優先順に前記選び出した施設情報を提示するように構成する。
【0015】
このように構成すれば、よりユーザにとって情報選別の負担が低減される。なお、前記優先順位はこの順のみに限らず、たとえば、車両進行方向の後方左側に存在する施設より、前方右側に存在する施設をより立ち寄りやすいものとして優先させるようにしてもよい。
【0016】
また、請求項3に記載の情報提示システムでは、請求項1乃至2のいずれかに記載の情報提示システムにおいて、前記施設情報には、当該施設の営業時間情報が含まれており、
前記制御手段は、前記営業時間情報に基づいて、前記受信した施設情報のうち、営業時間内の施設情報を選び出し、その施設情報を優先して提示すること、を特徴とする。
【0017】
このようにすれば、少なくとも営業時間内の施設情報のみが自動的に選別されるので、より、ユーザの情報選別の負担が低減する。
【0018】
請求項4に記載の情報提示システムでは、請求項1乃至3のいずれかに記載の情報提示システムにおいて、前記施設情報には、当該施設を区別するための種別情報が含まれており、前記条件とは、前記種別情報であること、を特徴とする。
【0019】
このようにすれば、ユーザにとって利用したい施設の種別に合致する施設情報のみが自動的に選別されるので、よりユーザの情報選別の負担が低減する。なお、ここでいう種別情報とは、路上施設の名称、登録商標、通称などの情報であり、たとえばコンビニエンスストア、自動販売機などである。
【0020】
請求項5に記載の情報提示システムによれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の情報提示システムにおいて、前記施設情報には、当該施設が提供する役務あるいは商品に関する特別情報が含まれており、前記条件とは、この特別情報を含むこと、を特徴とする。
【0021】
このようにすれば、ユーザにとって利用したい施設の前記特別情報に合致する施設情報のみが自動的に選別されるので、よりユーザの情報選別の負担が低減する。なお、この特別情報とは、施設が提供する商品、役務のほか、キャンペーン情報などの期間限定情報なども含まれる。
【0022】
上記のような期間限定の特別情報は、その期間を過ぎてしまえば無用な情報となる。そこで、請求項6に記載の情報提示システムでは、請求項1乃至5のいずれかに記載の情報提示システムにおいて、前記施設情報には、その情報の有効期限を示す有効期限情報が付与されており、前記制御手段は、前記有効期限情報に基づいて、有効期限内の前記施設情報を選び出すこと、を特徴とする。
【0023】
このようにすれば、ユーザが指定する特別情報に合致する特別情報を持つ施設のうち、その特別情報が有効期間内である施設のみの情報が自動的に選別されるので、よりユーザの情報選別の負担が低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明が路上施設および車載用ナビゲーションシステムに適用された実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は、本発明の一形態である情報提供システム10の全体構成を示す略図である。当該情報提供システム10は大きくは、路上施設1に設置され、その施設の位置情報などを周囲に対して発信する発信機2とその情報を車両側で受信するための受信装置を含む車載用ナビゲーションシステム3からなる。
【0026】
路上施設1は移動、増設、商品や役務(サービス)の変更、が頻繁になされる施設であり、たとえば自動販売機やコンビニエンスストアなどである。
【0027】
発信機2は、図2にてその構成の詳細を示すように、当該施設の種別情報(たとえば自動販売機、コンビニエンスストアなど)、当該路上施設の位置情報(緯度経度情報)、当該施設に関する特別な情報(たとえば新製品発売情報や販売製品、提供する役務、サービス、キャンペーン情報、期間限定情報など)とその特別な情報の有効期限情報、当該施設の営業時間情報などの各種情報が格納されたメモリ20、そのメモリ20から読み出された情報を信号として変調する変調部22、変調部22により変調された信号を外部に電波に重畳して発信するための無指向性アンテナ23、これらを制御する制御回路21が内蔵されてなる。
【0028】
そして、この発信機2は、当該施設やその周辺に設置されることを想定しているために、このアンテナ23から発信される電波の伝播距離範囲としては、数百メートル程度が好適である。なお、メモリ20は書き換え可能に構成されており、たとえば施設の管理者のみがパスワード認証などを条件として、随時そのメモリの情報を書き換えられるようになっている。
【0029】
次に、車載用ナビゲーションシステム3は、図3にその構成を示すように、車両の現在位置を検出する位置検出器30、地図データなどを格納する記憶手段と格納されたデータを読み出すためのデータ入力器とが一体となったHDD(Hard Disk Drive)装置31、ユーザからの指示を受け付けるための操作スイッチ群32、ユーザに対して様々な表示を提供するための表示部33、スピーカやマイクや音声認識装置(いずれも不図示)からなる音声入出力部34、路上施設に設置された発信機からの電波を受信するための受信装置35、とこれらの構成エレメントを制御する制御部36が接続されてなる。
【0030】
位置検出器30は、走行距離を算出するために、車両の前後方向の車速などを検出する車速センサ、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープ、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星から電波を受信してその受信信号を制御部36に入力するGPS受信機(いずれも不図示)、を備えている。そして制御部36は、これら各エレメントからの入力信号に基づいて、車両の現在位置、方位などを算出する。
【0031】
HDD装置31に格納されている地図データは地図を構成するノードデータやリンクデータ、道路データ、施設のデータ、およびそのシンボルマークデータ(アイコンデータ)などである。その他のデータとしては、案内用の音声データや音声認識データなどが格納されている。そしてHDD装置31はそれらのデータ(すなわち静的情報)を必要に応じて読み出し、制御部36に入力する。
【0032】
なお、この施設のデータの中には、施設の種別情報(商店やレジャー施設などといった施設の種別)、位置情報、特別な情報(キャンペーンなどの期間限定情報)、その有効期限情報、施設の営業時間情報が含まれている。そしてこれらを外部データベースとの通信により(動的情報を得ることで)定期的に更新する。
【0033】
操作スイッチ群32は、車両のインストルメントパネルに設けられたメカニカルなキースイッチ(ハードスイッチ)等からなり、ユーザからの様々な操作指令を受け付け、受け付けた指令を信号として制御部に入力するようになっている。また、操作スイッチ群32は、表示部33と一体となったタッチスイッチであってもよい。なお、これら操作スイッチ群32を、図示しないリモートコントロール端末に設け、前記端末からの電波をセンサ(不図示)により受信することで、指示を受け付けるようにすることもできる。
【0034】
表示部33は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどからなり、ユーザに様々な表示を提供することができるようになっている。たとえば、位置検出器30により検出した車両の現在位置と、HDD装置31から入力された地図データとから特定した現在地を示すシンボルマーク(アイコン)、施設のアイコン、現在地から目的地までの誘導経路など、を重ねて表示できる。
【0035】
音声入出力部34は、地図データの施設案内や各種報知のための音声をスピーカから出力し、また、ユーザがマイクから入力した音声を音声認識装置により認識して、電気信号に変換し、制御部36に入力する。これにより、ユーザは、マイクから音声を入力することによってシステムを操作することができる。
【0036】
受信装置35は、たとえば図4(車両を車幅中心付近にて前後方向に切断した断面を示す略図)に示すように、車両のインストルメントパネル内部に取り付けられている。構成としては、路上施設1に設置された発信機2からの電波を受信するための無指向性のアンテナ35a、アンテナ35aにより受信した電波を処理し、データを取り出すため処理回路35bを有し、取り出したデータを制御部36に送る。
【0037】
制御部36は、CPU(Central Processing Unit)に、周辺のROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリが、バスラインにより接続されてなる、マイクロコンピュータを主体として構成されている。なお、制御部36は、水晶振動子に電圧を印加することによって得られる発振現象を周期的な電気信号に変換し、その信号を計測することで計時を行う計時手段(不図示の内部時計)を内蔵する。そして、上述したさまざまな構成エレメントからの入力信号と、ROMやRAMに記憶されたプログラムとに基づいて各種処理を実行する。
【0038】
[動作の説明]
以下、本発明にかかわる制御部36の動作例について、実施例を挙げて説明する。なお、各実施例の前提として、交通法規が左側通行であるものとする。
【実施例1】
【0039】
本実施例の概要は、路上施設1に設置された発信機2から周囲に発信される、当該路上施設に関するデータを重畳した電波を車両側で受信し、ユーザにとって必要な情報であればユーザに対して報知を行い、不要であれば報知しないというものである。また、受信した電波から抽出したデータは、制御部36に送られ、RAMに格納されるものとする。
【0040】
上記に関して、制御部36の具体的動作を図5に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0041】
図5に示すフローチャートの動作開始の条件としては、まずユーザによって車両の駆動源が始動(イグニッションオン)されたか、あるいは、アクセサリーオンされた(駆動源は停止しているが、車載用ナビゲーションシステム3には給電が行われる)ことを要する。これにより、車載用ナビゲーションシステム3は、制御部36をはじめ各構成エレメントに対して給電が行われ、起動する。
【0042】
そして、さらに、ユーザによって施設情報の提示指示が操作スイッチ群33あるいはマイクからの音声入力により行われて、本フローチャートの動作が開始される。なお、この指示は、提示する施設の種別情報、特別な情報(購入したい商品や役務など)の指定である。
【0043】
さて、上記により動作を開始した制御部36はまずステップS500に進み、RAMに格納された前記データ、およびHDD装置31に地図データの一部として格納された施設に関する静的情報のうち、車両現在位置周辺の情報、を全て読み出し、ステップS510に進む。
【0044】
そして、ステップS510では、先のステップS500にて読み出した情報から、施設の営業時間情報を参照し、内部時計が示す現在時刻との比較によって、営業中の施設のデータのみを検索し、ステップS520に進む。
【0045】
続くステップS520では、前記検索の結果、営業している施設のデータが得られたか否かを判断する。営業中の施設のデータが全くない(ステップS520:no)場合はステップS521に進み、そうでない(ステップS520:yes)場合には、ステップS530以下に進む。このようにすれば、営業中の施設のみを自動的に検索することが可能になる。
【0046】
ここで、ステップS521では、ユーザにとって必要な、提示するべき情報が現時点でないために、路上施設1に設置された発信機2からの電波を受信装置35が新たに受信するまで待機する。そして、受信装置35が発信機2からの電波を受信し、そこから施設に関するデータを抽出して制御部36に入力した(ステップS521:yes)場合には、制御部はステップS500に戻り、取得したデータを読み出す。
【0047】
さて、ステップS530以下は、事前に受け付けたユーザからの指示に合致するデータを検索するステップ群である。ステップS530において、制御部36はまず、ユーザが指定した提示条件のうち、施設の種別が合致するものを検索し、ステップS540に移行する。
【0048】
ステップS540は前記検索の結果、種別が合致する施設のデータが得られたか否かを判断する。合致するデータが全くない(ステップS540:no)場合はステップS521に進み、そうでない(ステップS540:yes)場合には、ステップS530に進む。なおこのステップS540の判定がyesとなるのは、ユーザによって種別の指定がなされなかった場合(たとえば、飲み物を購入するのに、コンビニエンスストアでも、自動販売機でもかまわないとユーザが判断した場合)も含まれる。これにより、ユーザにとって利用したい施設の種別に合致する施設のみが自動的に選別される。
【0049】
ステップS550は、ステップS540にて選別したデータの中で、特別な情報(販売商品やサービスの情報)を参照し、ユーザの事前の指示に合致するものを検索し、ステップS560に進む。制御部36はこの検索のために、データの中の、特別な情報に付与された有効期限情報を参照し、現在時刻と比較して、有効期限内であるもののみを検索する。もともと有効期限情報がない場合も有効期限内であるとみなす。なお、前記事前の指示は、たとえば、ユーザが飲み物を購入するのに、どうしても飲み物X(飲み物X:通称、名称、あるいは商標登録)を飲みたいと感じ、操作スイッチ群32により事前に指定することによってなされる。
【0050】
次にステップS560は、前記検索の結果、前記指示に合致する施設のデータが得られたか否かを判断する。合致するデータが全くない(ステップS560:no)場合はステップS521に戻り、そうでない(ステップS560:yes)場合には、ステップS570に進む。なおこのステップS570の判定がyesとなるのは、ユーザによって特別の情報の指定がなされなかった場合(たとえば、飲み物を購入するのに、どのような商品でもかまわないとユーザが判断した場合)も含まれる。これにより、ユーザにとって利用したい特別な情報(有効期限内の特別情報)を持つ施設のみが自動的に選別される。
【0051】
ステップS570は、ステップS560にて選別した施設(種別が検索条件に合致し、営業中であり、商品やサービスの情報も条件に合致する施設)の中で、ユーザにとって立ち寄りやすい場所に存在する施設があるか否かを判断するステップである。
【0052】
この判断は次のようにして行う。まず、位置検出器により検出した車両の現在位置と、データを参照して得た施設の位置情報を比較し、車両の進行方向左側に存在する施設を抽出する(ステップS570)。ここで該当する施設がない場合には、車両の後方に存在する施設の中で、進行方向左側に存在する施設を抽出する(ステップS571)。ここでも、該当する施設がない場合には、車両の進行方向右側にある施設を抽出する(ステップS572)。さらにここでも該当する施設がない場合には、車両の後方に存在する施設の中で、進行方向右側の施設を抽出する(ステップS573)。上記抽出動作によって該当する施設が抽出できた場合には、ステップS580に進む。
【0053】
このように、車両現在位置と、路上施設の位置関係に優先順位をつけ、優先順に該当する施設を抽出することによって、ユーザの情報選別の負担を低減することができる。
【0054】
一方、上記抽出動作によっても、該当する施設がない場合には、周辺にユーザの立ち寄りたい施設がないとものとみなし、ステップS521に戻る。このとき、その旨をユーザに対して、表示や音声により報知してもよい。
【0055】
次に、ステップS580では、表示部に、抽出した施設のマーク(HDD装置内に格納されたアイコンの情報)を当該施設の位置(地図データ上の対応する位置)に表示する。このとき、当該施設の種別情報、特別な情報、有効期限情報、営業時間情報などについて提示してもよい。またこの提示は、表示部による表示が望ましいが、それのみならずスピーカによる音声報知を行ってもよい。このようにして一連の動作がなされた後、制御部36はユーザからの指示待ち状態(ステップS590)となり、新たな情報提示指示が入力されれば、再びステップS500以下の動作に移行する。そして、ユーザによって車両の駆動源が停止されるか、アクセサリーオフ(車載用ナビゲーションシステム3への給電が遮断状態となる)されると、上記どの動作ステップにおいても強制的に動作を終了する。
【0056】
このようにすれば、路上施設1が密集していて、発信機2により受信した施設の情報をそのまま表示部に表示した場合に比べ、ユーザにとって不要な情報が表示されず、表示が見やすくなり、しかもユーザにとって立ち寄りやすい施設の情報が優先して表示されるので、ユーザにとって不要な情報が提示されることが少なくなり、ユーザの情報選別の負担を低減することができる。すなわちユーザの利便性を考慮した情報提示ができる。
【0057】
なお、上記において、発信機2から受信したデータを格納する場所としてはRAMに限らず、HDD装置31でもよい。
【0058】
また、ステップS570以下のステップ群は、必ずしもこの順に検索する必要はない。たとえばステップS571の動作とステップS572の動作の順を逆にしたり、ステップS572の動作とステップS573の動作を逆にしたりすることも可能である。そして、たとえば車両後方に存在する施設は検索から除外する(ステップS571、S573の動作を行わない)ようにしても構わない。同様に、進行方向右側に存在する施設については除外する(ステップS572、S573の動作を行わない)ようにしても構わないし、これらの組み合わせでの動作の除外を行っても当然構わない。なお、この動作の除外は、予め自動的に行われるように設定されていてもよいし、ユーザの操作によって設定可能なようにしてもよい。
【実施例2】
【0059】
上記実施例1では、発信機2からアンテナ23を介して発信された電波は無指向であり、全方位に対して同じ強度で発信されているという前提で説明した。しかし、発信される電波に指向性を持たせれば、より車両側(車載用ナビゲーションシステム3:電波受信側)での取得情報の取捨選択処理が容易になる。
【0060】
すなわち本実施例の概要は、路上施設1に設置された発信機2から一定の方向に発信される、当該路上施設に関するデータを重畳した電波を車両側で受信し、ユーザにとって必要な情報であればユーザに対して報知を行い、不要であれば報知しないというものである。
【0061】
ここで本実施例に係わるアンテナ23について、さらに図6を参照しつつ説明する。図6は、アンテナ23を含む発信機2が、路上施設1に取り付けられた状態を鉛直上方より見た図である。ここに、アンテナ23は周囲に電波を発信し続けるためのアンテナ素子23aと、そのアンテナ素子23aの発する電波を遮蔽する導電性金属板23b(遮蔽部材23b)が支持部材23cによって一定間隔dだけ離れて平行に固定されている。そして、アンテナ23は全体として、隣接道路に対してアンテナ素子23aの電波照射面23dが横方向に所定角度傾いて配置されている。アンテナ素子23aと金属板23bとの距離dは、アンテナ素子23aが発信する電波の波長に対して十分小さいもの(少なくとも10分の1以下)となっている。そして、アンテナ素子23aの長さL1は、前記波長の2分の1であり、金属板23bの長さL2はそれよりも長くなっている。このとき金属板23bをアースしておくことで、アンテナ素子23aから発信される電波は、金属板23bの後方に回折することなく、互いに干渉しあって結局前記所定角度に応じて、一点鎖線で示すような指向性を持つ。
【0062】
すなわち、図6中で、向かって左側に路上施設1を見ながら進行してくる車両Aは発信機2からの電波を受信することができるが、向かって右側に路上施設を見ながら進行してくる車両Bは、路上施設1を通り過ぎなければ発信機2からの電波を受信することができない。
【0063】
これにより、当該路上施設に比較的立ち寄りやすい車両Aでは、当該路上施設の情報が事前(通り過ぎる前)に取得され、当該路上施設に比較的立ち寄りにくい車両Bでは、当該路上施設の情報が事前には取得されなくなる。なお、この電波の伝播距離範囲は実施例1と同様に、数百メートル程度が望ましい。
【0064】
このように、発信機2の発信電波に指向性を持たせれば、車両側でユーザが必要とする情報を取捨選択する際、検索するデータが予め選択的に取得されるので、検索処理の負荷が低減し、検索処理速度(情報選別処理速度)が向上し、結果より円滑な情報提示を実現できる。
【実施例3】
【0065】
上記実施例2では、車両側におけるデータ検索処理の負荷低減を目的として、発信機2の発信電波に指向性を持たせた。しかし、発信機2の発信電波に指向性がなく、車両側の受信装置35の感度に指向性を持たせても良い。
【0066】
本実施例に係わる受信装置35は、受信アンテナの周囲を導電性の金属遮蔽部材で被い、受信したい方向のみ、遮蔽しないようにする。たとえば図7に示すように、受信装置35を一方向に穴部70をあけた前記金属部材性の遮蔽容器71で被えば、車両進行方向から来る電波のみを受信するように、一定の受信感度(指向性)を持たせることができる。
【0067】
このように、受信装置35の受信感度に指向性を持たせることによっても、車両側でユーザが必要とする情報を取捨選択する際、検索するデータが予め選択的に取得されるので、検索処理の負荷が低減し、検索処理速度が向上する。すなわちより円滑な情報提示を実現できる。
【実施例4】
【0068】
実施例2、実施例3では発信側と受信側のいずれか一方に指向性を持たせた。しかし、発信側と受信側の双方に指向性を持たせることも可能である。すなわち、実施例2で説明した、電波発信方向に指向性を持つアンテナ23を内蔵する発信機2が路上施設1に設置され、一方で、車両側には、受信感度に指向性を持つ受信装置35を搭載するようにしてもよい。このようにすれば、さらに検索処理の負荷が低減でき、処理速度が向上し、円滑な情報提示が実現できる。
【0069】
[その他の実施例]
本発明は上記実施例に限定されることなく、様々な形態を採りうる。たとえば、突発的な交通事故情報などは、一般のユーザに流布されるまでに、ある程度のタイムラグがある。
【0070】
このとき事故現場付近に当該事故情報を発信する発信機を設置しておけば、事故現場の情報をユーザが事前に取得することができ、ユーザの利便性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の情報提示システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の情報提示システムの発信機の構成例を示す図である。
【図3】本発明の情報提示システムの車載用ナビゲーションシステムの構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の情報提示システムの受信装置の搭載位置を示す略図である。
【図5】本発明の情報提示システムの情報選択動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の情報提示システムの、発信機に内蔵されたアンテナの構成を示す略図である。
【図7】本発明の情報提示システムの受信装置の一様態を示す略図である。
【符号の説明】
【0072】
1・・・路上施設
2・・・発信機
3・・・車載用ナビゲーションシステム
10・・・情報提示システム
20・・・メモリ
23・・・アンテナ
30・・・位置検出器
33・・・表示部
35・・・受信装置
36・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各路上施設あるいは当該各路上施設周辺に設置された複数の発信機は、
当該路上施設についての、少なくとも当該路上施設の位置情報を含む施設情報を格納するメモリ、前記格納された施設情報を電波に重畳して周囲に発信するためのアンテナを有し、
車載装置は、
前記複数の発信機により発信された前記施設情報を受信するための受信装置、車両の現在位置を取得する現在位置取得手段、車両搭乗者(以下、ユーザという)から前記路上施設のうち所望の路上施設を選択するための条件を指示する操作手段、これらを制御する制御手段を具備し、
前記制御手段は、前記受信装置により受信した複数の施設情報のうち、前記操作手段により受け付けた前記ユーザにて指示された前記条件に合致し、かつ、前記受信した施設情報に含まれる位置情報、および前記取得した車両の現在位置に基づいて、前記ユーザにとって車両が立ち寄りやすい施設についての前記施設情報を選び出し、その施設情報を優先して提示すること、
を特徴とする情報提示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提示システムにおいて、前記立ち寄りやすい施設とは、
車両進行方向の前方左側に存在する施設であることを第1優先とし、
前記車両進行方向の後方左側に存在する施設であることを第2優先とし、
前記車両進行方向の前方右側に存在する施設であることを第3優先とし、
前記車両進行方向の後方右側に存在する施設であることを第4優先とし、
前記制御手段は、前記優先順に前記選び出した施設情報を提示すること、
を特徴とする情報提示システム。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の情報提示システムにおいて、前記施設情報には、当該施設の営業時間情報が含まれており、
前記制御手段は、前記営業時間情報に基づいて、前記受信した施設情報のうち、営業時間内の施設情報を選び出し、その施設情報を優先して提示すること、
を特徴とする情報提示システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の情報提示システムにおいて、前記施設情報には、当該施設を区別するための種別情報が含まれており、前記条件とは、前記種別情報であること、
を特徴とする情報提示システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の情報提示システムにおいて、
前記施設情報には、当該施設が提供する役務あるいは商品に関する特別情報が含まれており、
前記条件とは、この特別情報を含むこと、
を特徴とする情報提示システム。
【請求項6】
請求項5に記載の情報提示システムにおいて、前記施設情報には、その情報の有効期限を示す有効期限情報が付与されており、
前記制御手段は、前記有効期限情報に基づいて、有効期限内の前記施設情報を選び出すこと、
を特徴とする情報提示システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−82851(P2008−82851A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262507(P2006−262507)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】