説明

感光性ペースト組成物,感光性ペースト組成物を用いた電極およびグリーンシート

【課題】 優れた加工性,耐変質性,高導電性,および耐酸化性などのような優れた物性を有しながらも,低い製造費用で電極パターンを製造することができる感光性ペースト組成物,感光性ペースト組成物を用いた電極およびグリーンシートを提供する。
【解決手段】 本発明によれば,金属−コーティング粉末を含む導電性粉末と,無機バインダと,有機ビヒクルとを含む感光性ペースト組成物およびこの感光性ペースト組成物を用いて製造されるグリーンシートが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,感光性ペースト組成物に係り,より詳しくは,優れた加工性,耐変質性,高導電性,および耐酸化性などのような優れた物性を有しながらも,低い製造費用で電極パターンを製造することができる感光性ペースト組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,ディスプレイ装置において,大型化,高密度化,高精密化,および高信頼性の要求が高くなるにしたがい,さまざまなパターン加工技術の開発がなされている。このように,多様なパターン加工技術に適した各種の微細電極形成用組成物に対する研究が活発になされている。
【0003】
従来,PDP(Plasma Display Panel)などのディスプレイパネル,または集積回路などの基板表面に所定の電極パターンを形成する方法としては,一般に,スクリーン印刷法を用いたパターニング方法が使用されてきた。しかし,従来のスクリーン印刷法は,高度の熟練度を要し,スクリーンによる精度が低下するため,高精度の大画面パターンを得るのが大変難しいという欠点があった。また,印刷の時,スクリーンによる短絡または断線が発生し,解像度に限界があるため,微細パターンの電極を形成する際,制限を受けるという問題点があった。
【0004】
したがって,最近では,大画面に適した高精密の電極回路を形成するために,感光性ペーストを用いたフォトリソグラフィ法が開発された。これは,感光性ペーストをガラス基板などに全面印刷した後,所定の乾燥工程を経ってから,フォトマスクが付着された紫外線露光装置を用いて露光させた後,フォトマスクにより遮光されて硬化されなかった部分を所定の現像液で現像して除去し,その後,硬化されて残っている硬化膜を所定の温度で焼成させることで,パターン化された電極を形成する方法である。
【0005】
感光性ペーストは,通常,導電性粉末,ガラスフリットなどの無機バインダ,共重合体バインダ,光開始剤,および溶媒などを含む。
【0006】
導電性粉末は,電極に伝導率を付与するためのものであって,銀,金,銅,白金,パラジウム,アルミニウムまたはこれらの合金などがこのような導電性粉末として使用できる。このような導電性粉末としては,銀粉末が主に使用されるが,これは銀粉末が優れた導電性および微細粉末への優れた加工性を有し,さらに比較的価格面で有利であり,焼成の時,酸化などの変質が発生されないからである。
【0007】
また,銅粉末の場合は,価格面で他の導電性物質に比べて非常に低価格であり,導電性も優れているが,焼成の時,酸化反応が非常によく起こって,導体として使用することができない銅酸化物に変化される問題点がある。したがって,このような銅粉末の酸化性を緩和するための方案として,特許文献1〜3には,銅粉末に銀および金などの成分をコートする方法,特許文献4には,銅粉末にニッケルをコートする方法,特許文献5には,銅粉末にスズまたは亜鉛をコートする方法などが開示されている。特許文献6および特許文献7には,このような銀または金などにコートされた銅粉末を用いた電磁波遮蔽物質が開示されており,特許文献8には,導電性インクが開示されている。
【0008】
一方,ニッケル,アルミニウム,タングステン,またはモリブデン粉末の場合は,価格面で銅よりは,幾分高価格にもかかわらず,銀または金などの他の貴金属導電性物質より非常に低価格である利点があるが,焼成時に酸化反応が起こり,導電性が銀または金に比べて低いため単独で使うことができないという欠点がある。ニッケル粉末の場合,このような焼成時の酸化反応による導電性低下の欠点を克服するための方案として,特許文献9には,銀−コーティングニッケルなどの製造方法およびこれを電磁波遮蔽物質として使用することが開示されており,特許文献10には,銀−コーティングニッケルなどを位置センサーなどのような導体素子として用いることが開示されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,652,465号明細書
【特許文献2】米国特許第5,139,890号明細書
【特許文献3】米国特許第5,178,909号明細書
【特許文献4】米国特許第6,610,417号明細書
【特許文献5】米国特許第6,652,990号明細書
【特許文献6】米国特許第5,171,937号明細書
【特許文献7】米国特許第6,013,203号明細書
【特許文献8】米国特許第6,322,620号明細書
【特許文献9】米国特許第5,855,820号明細書
【特許文献10】米国特許第6,228,288号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし,従来技術で用いられる導電性粉末は,高価格であり,その代替の導電性粉末として利用される銅粉末やニッケル,アルミニウム,タングステン,またはモリブデン粉末は,焼成時に,酸化されて導電性が低下するという問題があった。
【0011】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,優れた加工性,耐変質性,高導電性,および耐酸化性などのような優れた物性を有しながらも,低い製造費用で電極パターンを製造することができる導電性粉末を含む感光性ペースト組成物,感光性ペースト組成物を用いて製造される電極を提供し,および感光性ペースト組成物を用いて製造されるグリーンシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために,本発明の第1の観点によれば,金属−コーティング粉末を含む導電性粉末と,無機バインダと,有機ビヒクル(vehicle)とを含む感光性ペースト組成物が提供される。
【0013】
本発明によれば,感光性ペースト組成物は,銅金属粉末,ニッケル金属粉末,アルミニウム金属粉末,タングステン金属粉末,またはモリブデン金属粉末を銀または金にコートした粉末を導電性粉末として使用することにより,優れた加工性,耐変質性,高導電性,および耐酸化性などに優れた物性を有することができる。よって,本発明の感光性ペースト組成物は,従来技術に用いられる高価な導電性粉末を含む感光性ペースト組成物を代替することができるため,低価格の製造費用で電極パターンなどを製造することができる。
【0014】
上記金属−コーティング粉末は,銅粉末,ニッケル粉末,アルミニウム粉末,タングステン粉末,またはモリブデン粉末を金属にコートした粉末であってよい。
【0015】
上記金属は,銀または金であってよい。
【0016】
上記金属−コーティング粉末中の上記金属の含量は,0.5〜20質量%であってよい。
【0017】
上記金属−コーティング粉末の粒子形状は,略球形であってよい。
【0018】
上記金属−コーティング粉末の平均粒径は,1.0〜10.0μmであってよい。
【0019】
上記感光性ペースト組成物は,上記導電性粉末の100質量部に対して,上記無機バインダを0.1〜10質量部,および上記有機ビヒクルを20〜100質量部含むことができる。
【0020】
上記導電性粉末は,銀,金またはこれらの合金粉末をさらに含むことができる。
【0021】
上記銀,上記金または上記これらの合金粉末の粒子形状は,略球形であってよい。
【0022】
上記銀,上記金または上記これらの合金粉末の平均粒径は,1.0〜10.0μmであってよい。
【0023】
上記銀,上記金または上記これらの合金粉末の含量は,上記感光性ペースト組成物の総質量に対して,50質量%以下であってよい。
【0024】
上記無機バインダは,PbO−SiO系,PbO−B−SiO系,PbO−SiO−B−Al系,ZnO−SiO系,ZnO−B−SiO系,Bi−SiO系,およびBi−B−SiO系からなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよい。
【0025】
上記無機バインダは,軟化温度(softening temperature)が400〜600℃であってよい。
【0026】
上記無機バインダの平均粒径は,0.1〜5.0μmであってよい。
【0027】
上記有機ビヒクルは,有機バインダ,架橋剤,光開始剤,および溶媒を含むことができる。
【0028】
上記有機ビヒクルは,上記有機バインダの100質量部に対して,上記架橋剤を20〜150質量部,上記光開始剤を2〜75質量部,および上記溶媒を100〜500質量部含むことができる。
【0029】
上記有機バインダは,カルボキシル基を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体であってよい。ここで,他のモノマーとは,カルボキシル基を有しないモノマーで,少なくとも一つ以上であってよい。
【0030】
上記カルボキシル基を有するモノマーは,アクリル酸,メタクリル酸,フマル酸,マレイン酸,酢酸ビニル,およびこれらの無水物からなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよい。
【0031】
上記カルボキシル基を有するモノマーと共重合される上記他のモノマーは,メチルアクリレート,メチルメタクリレート,エチルアクリレート,エチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,n−ブチルメタクリレート,イソブチルアクリレート,イソブチルメタクリレート,2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシエチルメタクリレート,エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート,エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート,スチレン,およびp−ヒドロキシスチレンからなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよい。
【0032】
上記有機バインダは,上記共重合体に含まれる上記カルボキシル基を有するモノマーのカルボキシル基と,グリシジルメタクリレート,3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート,および3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートからなる群から選択されるエチレン性不飽和化合物のエポキシ基との反応により分子内に架橋性基を含むことができる。
【0033】
上記架橋剤は,ジアクリレート系,トリアクリレート系,テトラアクリレート系,およびヘキサアクリレート系からなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよい。
【0034】
上記光開始剤は,ベンゾフェノン,o−ベンゾイル安息香酸メチル,4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン,4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン,2,2−ジエトキシアセトフェノン,2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン,2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン,ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド,およびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよい。
【0035】
上記溶媒は,エチルカルビトール,ブチルカルビトール,エチルカルビトールアセテート,ブチルカルビトールアセテート,テキサノール,テルピン油,ジプロピレングリコールメチルエーテル,ジプロピレングリコールエチルエーテル,ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート,γ−ブチロラクトン,セロソルブアセテート,ブチルセロソルブアセテート,およびトリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよい。
【0036】
上記有機ビヒクルは,メチルセルロース,エチルセルロース,ニトロセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,カルボキシメチルセルロース,カルボキシエチルセルロース,およびカルボキシエチルメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一つ以上の物質をさらに含むことができる。
【0037】
上記有機ビヒクルは,増感剤,重合防止剤,酸化防止剤,紫外線吸光剤,消泡剤,分散剤,レベリング剤,および可塑剤からなる群から選択される少なくとも一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0038】
上記課題を解決するために,本発明の第2の観点によれば,上記感光性ペースト組成物を用いて製造される電極が提供される。
【0039】
上記課題を解決するために,本発明の第3の観点によれば,上記感光性ペースト組成物を用いて製造されるグリーンシートが提供される。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように本発明によれば,優れた加工性,耐変質性,高導電性,および耐酸化性などに優れた物性を有しながらも,低い製造費用で電極パターンを製造することができる感光性ペースト組成物,感光性ペースト組成物を用いた電極およびグリーンシートを提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0042】
以下,本発明の実施形態についてより詳細に説明する。本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物は,導電性粉末,無機バインダ,および有機ビヒクルを含む感光性ペースト組成物において,導電性粉末が金属−コーティング粉末を含むことを特徴とする。
【0043】
本発明の実施形態によれば,優れた加工性,耐変質性,高導電性,および耐酸化性などに優れた物性を有しながらも,低い製造費用で電極パターンを製造することができる。
【0044】
本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物は,導電性粉末として金属−コーティング粉末を含む。
【0045】
好ましくは,金属−コーティング粉末は,銅粉末,ニッケル粉末,アルミニウム粉末,タングステン粉末,またはモリブデン粉末を金属にコートした粉末である。
【0046】
また,金属−コーティング粉末において,コートされる金属成分は,導電性に優れ,コーティングが容易であり,常温であるいは焼成時にめったに酸化されない金属成分であることが要求される。このような特性を満足させるものとしては,銀または金が最も好ましい。
【0047】
上記のような銅,ニッケル,アルミニウム,タングステンまたはモリブデン金属粉末を銀または金にコートする方法は,沈殿法,メッキ法など,当業界で通常的に使用される方法を用いることができ,これらに限定されるものではない。銅,ニッケル,アルミニウム,タングステンまたはモリブデンに対するコートされる銀または金の含量比は,0.5〜20質量%が好ましい。これは,コートされる金属の含量が0.5質量%未満の場合には,コーティングが充分になされないという問題点があり,20質量%を超過する場合には,製造費用の節減という效果を充分に達成することができないという問題点があるからである。
【0048】
金属−コーティング粉末は,充填率または紫外線透過性などを考慮すると,球形であることが好ましく,平均粒径は,1.0〜10.0μmであることが好ましい。
【0049】
金属−コーティング粉末の平均粒径が10.0μmを超過すると,焼成膜パターンの直進性が不良であり,焼成膜の緻密性が低下して抵抗が高くなるという問題点があり,平均粒径が0.1μm未満の場合には,ペーストの分散性および露光感度が悪くなる問題点があるため好ましくないからである。
【0050】
本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物において,導電性粉末の相対的含量は,導電性粉末の100質量部に対し,無機バインダを0.1〜10質量部,および有機ビヒクルを20〜100質量部であることが好ましい。
【0051】
感光性ペースト組成物において,導電性粉末の相対的含量が上記範囲に達しない場合には,焼成時に導電膜の線幅収縮が酷く,厚さが薄すぎて抵抗が高くなるか,断線が発生するおそれがある。導電性粉末の相対的含量が上記範囲を超過する場合には,印刷性不良および光透過の低下による不十分な架橋反応のため,所望のパターンを得ることができないという問題点がある。
【0052】
また,本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物は,導電性粉末として,金属−コーティング粉末のほかにも,銀,金またはこれらの合金粉末をさらに含むこともできる。添加される導電性粉末は,製造費用および製造容易性などを考慮する時,銀粉末であることが好ましい。
【0053】
添加される導電性粉末の外形,比表面積および平均粒径は,金属−コーティング粉末と同様であり,外形は球形であり,平均粒径は,1.0〜10.0μmであることが好ましい。
【0054】
このような銀粉末または金粉末,これらの合金粉末が導電性粉末としてさらに添加される場合,その含量は,感光性ペースト組成物の総質量に対して50質量%以下であることが好ましい。添加される導電性粉末の含量が50質量%を超過する場合には,ペーストの製造費用の節減という效果を充分に果たすことができなくて好ましくないという問題点がある。
【0055】
また,本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物は,無機バインダを含む。無機バインダは,焼成工程で導電性粉末の焼結特性を向上させ,さらに導電膜とガラス基板との間に接着力を付与する役目をする。無機バインダの含量は,導電性粉末の100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。無機バインダの含量が0.1質量部未満の場合には,導電性粉末の焼結が正常になされなく,導電膜とガラス基板との間の接着力が低下して,後工程の過程で導電膜が分離する問題点が発生し,10質量部を超過する場合には,導電膜の抵抗が増加する問題点があるため好ましくない。
【0056】
無機バインダとしては,PbO−SiO系,PbO−B−SiO系,PbO−SiO−B−Al系,ZnO−SiO系,ZnO−B−SiO系,Bi−SiO系,およびBi−B−SiO系などからなる群から少なくとも一つ以上選択されたものを使用することができるが,これらに限定されるものではない。無機バインダの粒子外形は,特別に限定されないが,球形であるほど良く,平均粒径は,0.1〜5.0μmであることが好ましい。無機バインダの平均粒径が0.1μm未満の場合には,分散性の問題点があるため好ましくなく,5.0μmを超過する場合には,焼成膜が均一でなく,直進性が悪くなるという問題点があるため好ましくない。
【0057】
また,無機バインダの軟化温度(softening temperature)は,400〜600℃であることが好ましい。無機バインダの軟化温度が400℃未満の場合には,焼成時に電極の周辺で流れ拡散してしまう問題点があり,軟化温度が600℃を超過する場合には,焼成温度が600℃を超過する場合にガラス基板が曲がるため,焼成温度を600℃以上にすることができなくて,無機バインダの軟化ができなくなる問題点がある。
【0058】
また,本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物は,有機ビヒクルを含む。有機ビヒクルの含量は,導電性粉末の100質量部に対して20〜100質量部であることが好ましい。有機ビヒクルの含量が20質量部に達しない場合には,感光性ペースト組成物の印刷性不良および露光感度低下の問題点があり,100質量部を超過する場合には,相対的に導電性粉末の含量比が低くなり,焼成時に導電膜の線幅収縮が酷く,断線が発生する問題点があるため好ましくない。
【0059】
有機ビヒクルは,有機バインダ,架橋剤,光開始剤,溶媒,およびその他の添加剤を含む。
【0060】
現像工程において,アルカリ水溶液を現像液として使用する場合,有機バインダは,酸性基を含むものを使用する。このような有機バインダとしてはさまざまな種類の高分子が使用できるが,そのなかでも,アクリル系樹脂が価格および特性面で一番適合している。アクリル系樹脂内に酸性基を持たせるためには,カルボキシル基を有するモノマーを用いることができる。したがって,本発明の実施形態に係る有機バインダとして,カルボキシル基を有するモノマーと他の一つ以上のモノマーとの共重合体を使用することができる。カルボキシル基を有するモノマーは,アクリル酸,メタクリル酸,フマル酸,マレイン酸,酢酸ビニル,およびこれらの無水物などからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることが好ましいが,これらに限定されるものではない。このようなカルボキシル基を有するモノマーと共重合される他のモノマーとしては,メチルアクリレート,メチルメタクリレート,エチルアクリレート,エチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,n−ブチルメタクリレート,イソブチルアクリレート,イソブチルメタクリレート,2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシエチルメタクリレート,エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート,エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート,スチレン,およびp−ヒドロキシスチレンなどからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることが好ましい。
【0061】
また,有機バインダとしては,共重合体のカルボキシル基とエチレン性不飽和化合物のエポキシ基を反応させることにより,結果的に有機バインダの分子内に架橋反応を引き起こす成分,つまり,架橋性基を付加した共重合体を用いることもできる。よって,光照射時,有機ビヒクルに含まれる光開始剤によって,この架橋基(二重結合)が反応し,架橋反応が起こる。エチレン性不飽和化合物としては,グリシジルメタクリレート,3,4−エポキシクロヘキシルメチルメタクリレート,および3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートなどからなる群から選択されたものが使用できる。
【0062】
さらに,有機バインダとしては,共重合体を単独で使うこともできるが,膜レベリング特性またはチキソトロピー特性の向上などの目的で,メチルセルロース,エチルセルロース,ニトロセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,カルボキシメチルセルロース,カルボキシエチルセルロース,およびカルボキシエチルメチルセルロースなどからなる群から選択される少なくとも一つ以上の物質を混合して使用することもできる。
【0063】
有機ビヒクルにおいて,各成分の相対的含量は,有機バインダの100質量部に対して,架橋剤を20〜150質量部,光開始剤を2〜75質量部,および溶媒を100〜500質量部であることが好ましい。
【0064】
有機バインダの含量は,添加される導電性粉末の含量,増粘剤の添加の有無,およびその含量などによって決まる。有機バインダの含量が上記範囲未満の場合には,粘度および印刷性低下という問題点があるため好ましくなく,有機バインダの含量が上記範囲を超過する場合には,乾燥膜厚さが大きくなり,これにより,焼成時の収縮率が増加してエッジ−カールが増加することになるという問題点があるため好ましくない。
【0065】
架橋剤としては,単官能モノマーおよび多官能モノマーが用いられるが,一般的には,露光感度の良い多官能モノマーを用いる。このような多官能モノマーとしては,エチルグリコールジアクリレート(EGDA;Ethylene Glycol Diacrylate)のようなジアクリレート系;トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA;Trimethylol Propane Triacrylate),トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(TMPEOTA;Trimethylol Propane Ethoxylate Triacrylate),またはペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;Pentaerythritol Triacrylate)のようなトリアクリレート系;テトラメチロールプロパンテトラアクリレート(Tetramethylol Propane Tetraacrylate),またはペンタエリスリトールテトラアクリレート(Pentaerythritol Tetraacrylate)のようなテトラアクリレート系;およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA;Dipentaerythritol Hexaacrylate)のようなヘキサアクリレート系などからなる群から選択される少なくとも一つ以上を使用することができるが,これらに限定されるものではない。架橋剤の含量は,有機バインダの100質量部に対して20〜150質量部であることが好ましい。架橋剤の含量が20質量部未満の場合には,架橋反応が十分でなくて現像時にパターンが不良になり,架橋剤の含量が150質量部を超過する場合には,現像時にパターン形状がきれいではなく,また固形分含量の増加の原因になってエッジ−カールが発生するため好ましくない。
【0066】
光開始剤は,紫外線の照射によって分解されてラジカルを生成し,このようなラジカルが架橋剤を攻撃して,架橋剤が架橋反応を起こす役目をする。このような光開始剤としては,ベンゾフェノン,o−ベンゾイル安息香酸メチル,4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン,4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン,2,2−ジエトキシアセトフェノン,2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン,2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン,ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド,およびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどからなる群から選択される少なくとも一つ以上を使用することができるが,これらに限定されるものではない。光開始剤の含量は,有機バインダの100質量部に対して2〜75質量部であることが好ましい。光開始剤の含量が2質量部未満の場合には,ペーストの露光感度が低下して所望の大きさの焼成膜線幅を得ることができなく,75質量部を超過する場合には,未露光部が現像されないか,または固形分の含量が増加してエッジ−カールが発生する問題点があるため好ましくない。
【0067】
溶媒としては,有機バインダおよび光開始剤を溶解させることができ,架橋剤およびその他の添加剤とよく混合しながら沸点が150℃以上のものが使用できる。沸点が150℃未満の場合には,感光性ペースト組成物の製造過程,特に3−ロールミル工程で揮発する傾向が高くて問題となり,また印刷時に溶媒が速く揮発して印刷状態が不良となるため好ましくない。上記条件を満たし得る好適な溶媒としては,エチルカルビトール,ブチルカルビトール,エチルカルビトールアセテート,ブチルカルビトールアセテート,テキサノール,テルピン油,ジプロピレングリコールメチルエーテル,ジプロピレングリコールエチルエーテル,ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート,γ−ブチロラクトン,セロソルブアセテート,ブチルセロソルブアセテート,およびトリプロピレングリコールなどからなる群から選択される少なくとも一つ以上を使用できるが,これらに限定されるものではない。溶媒の含量は,有機バインダの100質量部に対して100〜500質量部であることが好ましい。溶媒の含量が100質量部未満の場合には,感光性ペースト組成物の粘度が高すぎて印刷が正常にできない問題点があるため好ましくなく,500質量部を超過する場合には,粘度が低すぎて印刷ができない問題点があるため好ましくない。
【0068】
また,有機ビヒクルは,感度を向上させる増感剤,感光性ペースト組成物の保存性を向上させる重合防止剤および酸化防止剤,解像度を向上させる紫外線吸光剤,組成物内の気泡を減らす消泡剤,分散性を向上させる分散剤,印刷時に膜の平坦性を向上させるレベリング剤,および印刷性向上のための可塑剤などのような添加剤をさらに含むこともできる。これら添加剤は,必ず使用しなければならない物質ではなくて,必要に応じて使用可否が決定できるものであり,乾燥膜厚さを増加させる作用ができるので,使用時には最小量のみを使用することが好ましい。
【0069】
本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物は,下記のような方法で製造できる。まず,有機バインダ,架橋剤,光開始剤,溶媒,およびその他の添加剤を一緒に混合して撹拌することで有機ビヒクルを製造する。次いで,無機バインダおよび本発明の実施形態に係る導電性粉末をPLM(Planetary Mixer)のような混合器に入れて撹拌しながら,上記で製造された有機ビヒクルを徐々に投入して混合する。混合されたペーストは3−ロールミル(3−roll mill)を用いて機械的に混合する。ついで,フィルタリングにより,粒径の大きい粒子および埃などの不純物を除去し,最後に脱泡装置によりペースト内の気泡を除去することにより,本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物を製造することができる。
【0070】
本発明の他の実施形態において,上述した感光性ペースト組成物を用いて製造された電極を提供する。電極は,微細パターンの形成過程および焼成過程により製造される。本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物は,集積回路(IC;Integrated Circuit),高密度集的回路(LSI;Large Scale Integrated Circuit),またはプラズマディスプルレイパネル(PDP;Plasma Dispay Panel)などにおいて,基板上に電極をパターニングすることに使用できるが,下記ではプラズマディスプルレイパネルの場合を例として挙げて説明することにする。
【0071】
微細パターンの形成過程は,次の通りである。上記のように製造された感光性ペースト組成物をSUS325メッシュまたはSUS400メッシュのようなスクリーンマスクを使用するスクリーン印刷機を用いて基板表面に印刷を行う。印刷によってコートされた試片を,コンベクションオーブン(convection oven)またはIRオーブンにより,80〜150℃の温度で,5〜30分間乾燥させた後,形成されたペーストコーティング膜上に適当な光源を使用して,300〜450nmの光でパターンを形成するように露光を行い,NaCO溶液,KOH,TMAHなどのような適当なアルカリ現像液で30℃前後の温度で現像する工程となる。また,焼成過程は,上記のように形成された微細パターンを電気炉などにより500〜600℃で10〜30分間焼成する工程となる。
【0072】
本発明のさらに他の実施形態において,感光性ペースト組成物を用いて製造されたグリーンシート(green sheet)を提供する。ここで,グリーンシートとは,支持体フィルムと保護フィルムとの間に乾燥ペーストが存在する構造を意味する。
【0073】
グリーンシートは,下記のような過程で製造できる。すなわち,支持体フィルムに本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物を印刷し,引き続き,乾燥装置を用いてペーストを乾燥させることで感光性導体層を形成する。最後に,感光性導体層に保護フィルムをラミネーションさせることにより,グリーンシートを製造することができる。
【0074】
上記のような方法によって製造されたグリーンシートは,下記のような過程により,電極の製造に用いることができる。
【0075】
まず,ラミネータを用いて製造されたグリーンシートの保護フィルムを剥ぎながら,感光性導体層をラミネータの加熱ローラを用いて基板に付着させる。ラミネーション工程を経た基板は,その温度が常温に低下するように一定時間放置される。引き継き,フォトマスクが付着された紫外線露光装置を用いて露光し,現像液ノズルで噴射することにより,未露光部分を現像させ,焼成炉を用いて焼成することにより,電極を製造することができる。
【実施例】
【0076】
以下,本発明の実施例に基づいてより詳しく説明するが,本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0077】
実施例1:感光性ペースト組成物の製造
銀−コーティング銅粉末(球形,平均粒径2.5μm)70.0質量%,ガラスフリット(無晶形,平均粒径1.5μm,PbO−SiO−B−Al系)3.0質量%,および有機ビヒクル27.0質量%を配合し撹拌器で撹拌した後,3−ロールミルを用いて練ることにより,本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物を製造した。ここで,有機ビヒクルは,有機バインダとして,分子量15,000g/mol,酸価110mgKOH/gの(poly(MMA−co−MAA);メチルメタクリレート−メタクリル酸コポリマー)6.0質量%,架橋剤として,トリメチロールプロパントリアクリレート6.0質量%,光開始剤としてビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド2.5質量%,溶媒としてテキサノール12.5質量%を含むものを使用した。感光性ペースト組成物の製造においては,有機バインダ,光開始剤,架橋剤および溶媒を先に配合して有機ビヒクルを製造した後,ガラスフリットおよび銀−コーティング銅粉末を攪拌器で混合し,そこに有機ビヒクルを添加して混合した。
【0078】
実施例2:感光性ペースト組成物の製造
金−コーティング銅粉末(球形,平均粒径6.5μm)70.0質量%,ガラスフリット(実施例1で使用したものと同一)3.0質量%,および有機ビヒクル27.0質量%(実施例1で使用したものと同一)を配合させ撹拌器で撹拌した後,3−ロールミルを用いて練ることにより,本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物を製造した。感光性ペースト組成物の製造においては,有機バインダ,光開始剤,架橋剤および溶媒を先に配合させて有機ビヒクルを製造した後,ガラスフリットおよび金−コーティング銅粉末を攪拌器で混合し,そこに有機ビヒクルを添加して混合した。
【0079】
実施例3:感光性ペースト組成物の製造
銀−コーティングニッケル粉末(球形,平均粒径5.8μm)50.0質量%,銀粉末(球形,平均粒径1.4μm)20.0質量%,ガラスフリット(実施例1で使用したものと同一)3.0質量%,および有機ビヒクル27.0質量%(実施例1で使用したものと同一)を配合させ撹拌器で撹拌した後,3−ロールミルを用いて練ることにより,本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物を製造した。感光性ペースト組成物の製造においては,有機バインダ,光開始剤,架橋剤および溶媒を先に配合させて有機ビヒクルを製造した後,ガラスフリット,銀−コーティングニッケル粉末,および銀粉末を攪拌器で混合し,そこに有機ビヒクルを添加して混合した。
【0080】
実施例4:感光性ペースト組成物の製造
銀−コーティングアルミニウム粉末(球形,平均粒径4.3μm)50.0質量%,銀粉末(実施例3で使用したものと同一)20.0質量%,ガラスフリット(実施例1で使用したものと同一)3.0質量%,および有機ビヒクル27.0質量%(実施例1で使用したものと同一)を配合させ撹拌器で撹拌した後,3−ロールミルを用いて練ることにより,本発明の実施形態に係る感光性ペースト組成物を製造した。感光性ペースト組成物の製造においては,有機バインダ,光開始剤,架橋剤および溶媒を先に配合させて有機ビヒクルを製造した後,ガラスフリット,銀−コーティングアルミニウム粉末,および銀粉末を攪拌器で混合し,そこに有機ビヒクルを添加して混合した。
【0081】
電極の直接製造および性能評価試験
上記実施例1〜4の組成物を用いて下記工程条件で電極を製造した。
I)印刷:20cm×20cmのガラス基板上にスクリーン印刷法で印刷した。
II)乾燥:ドライオーブンで100℃,15分間乾燥した。
III)露光:高圧水銀ランプが装着された紫外線露光装置を用いて500mJ/cmで照射した。
IV)現像:0.4%炭酸ナトリウム水溶液をノズル圧力1.5kgf/cmで噴射して現像させた。
V)焼成:電気焼成炉を用いて580℃で12分間焼成した。
【0082】
上記方法によって実施例1〜4の組成物を用いて製造された電極に対して,乾燥膜厚さ,焼成膜厚さ,および比抵抗(μΩ・cm)を測定し,測定結果を下記表1に示した。
【0083】
【表1】

【0084】
乾燥膜厚さおよび焼成膜厚さは,Nanofocus社製のμscanを用いて測定し,比抵抗値は,HIOKI社製の抵抗測定器を用いて4−probe法により面抵抗を測定した後,比抵抗に換算して示した。
【0085】
グリーンシートを用いた電極の製造および性能評価試験
実施例1〜4で使用した金属−コーティング粉末と同一のものを使用して,下記表2の組成を有する感光性ペースト組成物を製造し,これを用いて実施例5〜8のグリーンシートを製造した。
【0086】
【表2】

【0087】
ここで,有機ビヒクルは,有機バインダとして分子量15,000g/mol,酸価110mgKOH/gの(poly(MMA−co−MAA);メチルメタクリレート−メタクリル酸コポリマー)6.0質量%,架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート6.0質量%,光開始剤としてビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド2.5質量%,溶媒としてテキサノール7.5質量%を含む。
【0088】
グリーンシートは,支持体フィルムとして30μm厚さのPETフィルム上に上記表2の組成比を有する感光性ペースト組成物をテーブルコータを用いて塗布し,IR乾燥装置を用いて100℃で20分間感光性ペースト組成物を乾燥させて感光性導体層を形成した。このように製造された感光性導体層上に保護フィルムとして,20μm厚さのPEフィルムをラミネーションさせることにより,実施例5〜8に係るグリーンシートを製造した。
【0089】
実施例5〜8のグリーンシートを使用して下記方法にしたがって電極を製造した。まず,GMP社のラミネータを用いて,製造された導体ドライフィルムの保護フィルムを剥きながら,感光性導体層をラミネータの加熱ローラを用いてPD200ガラス基板に付着させた。ラミネーション工程を経た基板は,温度を常温に低下させるために,30分間放置した。引き続き,フォトマスクが付着されたOTS Technology Inc.の平行紫外線露光装置を用いて500mJ/cmで露光し,30℃で,0.8質量%の炭酸ナトリウム水溶液をノズルを介して噴射して,未露光部分を現像させ,Linberg社製の焼成炉を用いて580℃の温度で20分間焼成させることにより,電極を製造した。
【0090】
上記方法により製造された電極に対して,感光性導体層厚さ,焼成膜厚さ,および比抵抗(μΩ・cm)を測定し,測定結果を下記表3に示した。
【0091】
【表3】

【0092】
感光性導体層厚さおよび焼成膜厚さは,Nano Focus社製のμscanを用いて測定し,比抵抗値は,HIOKI社製の抵抗測定器を用いて4−probe法によって面抵抗を測定した後,比抵抗に換算して示した。
【0093】
上記実施例1〜8の結果から分かるように,本発明の実施例に係る感光性ペースト組成物は,銅金属粉末,ニッケル金属粉末,アルミニウム金属粉末,タングステン金属粉末,またはモリブデン金属粉末を銀または金にコートした粉末を導電性粉末として使用することにより,従来技術による高価な導電性粉末を代替することができ,優れた物性(優れた加工性,耐変質性,高導電性,および耐酸化性)を有することができる。
【0094】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は,優れた加工性,耐変質性,高導電性,および耐酸化性などに優れた物性を有しながらも,低い製造費用で電極パターンを製造することが可能な感光性ペースト組成物に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属−コーティング粉末を含む導電性粉末と;
無機バインダと;
有機ビヒクルと;
を含むことを特徴とする,感光性ペースト組成物。
【請求項2】
前記金属−コーティング粉末は,銅粉末,ニッケル粉末,アルミニウム粉末,タングステン粉末,またはモリブデン粉末を金属にコートした粉末であることを特徴とする,請求項1に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項3】
前記金属は,銀または金であることを特徴とする,請求項2に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項4】
前記金属−コーティング粉末中の前記金属の含量は,0.5〜20質量%であることを特徴とする,請求項2または3に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項5】
前記金属−コーティング粉末の粒子形状は,略球形であることを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項6】
前記金属−コーティング粉末の平均粒径は,1.0〜10.0μmであることを特徴とする,請求項1〜5のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項7】
前記感光性ペースト組成物は,前記導電性粉末の100質量部に対して,前記無機バインダを0.1〜10質量部,および前記有機ビヒクルを20〜100質量部含むことを特徴とする,請求項1〜6のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項8】
前記導電性粉末は,銀,金またはこれらの合金粉末をさらに含むことを特徴とする,請求項1〜7のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項9】
前記銀,前記金または前記これらの合金粉末の粒子形状は,略球形であることを特徴とする,請求項8に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項10】
前記銀,前記金または前記これらの合金粉末の平均粒径は,1.0〜10.0μmであることを特徴とする,請求項8または9に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項11】
前記銀,前記金または前記これらの合金粉末の含量は,前記感光性ペースト組成物の総質量に対して,50質量%以下であることを特徴とする,請求項8〜10のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項12】
前記無機バインダは,PbO−SiO系,PbO−B−SiO系,PbO−SiO−B−Al系,ZnO−SiO系,ZnO−B−SiO系,Bi−SiO系,およびBi−B−SiO系からなる群から選択される少なくとも一つ以上であることを特徴とする,請求項1〜11のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項13】
前記無機バインダは,軟化温度が400〜600℃であることを特徴とする,請求項1〜12のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項14】
前記無機バインダの平均粒径は,0.1〜5.0μmであることを特徴とする,請求項1〜13のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項15】
前記有機ビヒクルは,有機バインダ,架橋剤,光開始剤,および溶媒を含むことを特徴とする,請求項1〜14のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項16】
前記有機ビヒクルは,前記有機バインダ100の質量部に対して,前記架橋剤を20〜150質量部,前記光開始剤を2〜75質量部,および前記溶媒を100〜500質量部含むことを特徴とする,請求項15に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項17】
前記有機バインダは,カルボキシル基を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体であることを特徴とする,請求項15または16に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項18】
前記カルボキシル基を有するモノマーは,アクリル酸,メタクリル酸,フマル酸,マレイン酸,酢酸ビニル,およびこれらの無水物からなる群から選択される少なくとも一つ以上であることを特徴とする,請求項17に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項19】
前記カルボキシル基を有するモノマーと共重合される前記他のモノマーは,メチルアクリレート,メチルメタクリレート,エチルアクリレート,エチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,n−ブチルメタクリレート,イソブチルアクリレート,イソブチルメタクリレート,2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシエチルメタクリレート,エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート,エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート,スチレン,およびp−ヒドロキシスチレンからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることを特徴とする,請求項17または18に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項20】
前記有機バインダは,前記共重合体に含まれる前記カルボキシル基を有するモノマーのカルボキシル基と,グリシジルメタクリレート,3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート,および3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートからなる群から選択されるエチレン性不飽和化合物のエポキシ基との反応により分子内に架橋性基を含むことを特徴とする,請求項17〜19のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項21】
前記架橋剤は,ジアクリレート系,トリアクリレート系,テトラアクリレート系,およびヘキサアクリレート系からなる群から選択される少なくとも一つ以上であることを特徴とする,請求項15〜20のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項22】
前記光開始剤は,ベンゾフェノン,o−ベンゾイル安息香酸メチル,4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン,4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン,2,2−ジエトキシアセトフェノン,2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン,2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン,ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド,およびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることを特徴とする,請求項15〜21のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項23】
前記溶媒は,エチルカルビトール,ブチルカルビトール,エチルカルビトールアセテート,ブチルカルビトールアセテート,テキサノール,テルピン油,ジプロピレングリコールメチルエーテル,ジプロピレングリコールエチルエーテル,ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート,γ−ブチロラクトン,セロソルブアセテート,ブチルセロソルブアセテート,およびトリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることを特徴とする,請求項15〜22のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項24】
前記有機ビヒクルは,メチルセルロース,エチルセルロース,ニトロセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,カルボキシメチルセルロース,カルボキシエチルセルロース,およびカルボキシエチルメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一つ以上の物質をさらに含むことを特徴とする,請求項15〜23のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項25】
前記有機ビヒクルは,増感剤,重合防止剤,酸化防止剤,紫外線吸光剤,消泡剤,分散剤,レベリング剤,および可塑剤からなる群から選択される少なくとも一つ以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする,請求項15〜24のいずれかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれかに記載の感光性ペースト組成物を用いて製造されることを特徴とする,電極。
【請求項27】
請求項1〜25のいずれかに記載の感光性ペースト組成物を用いて製造されることを特徴とする,グリーンシート。


【公開番号】特開2006−86123(P2006−86123A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262139(P2005−262139)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】