説明

感光性ポリアミド酸エステル組成物

【課題】電気・電子材料の製造に有用な、i線露光可能な膜厚領域が広く、かつ高い解像度のポリイミドパターンを与え得る感光性ポリアミド酸エステル組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリアミド酸エステル100質量部と、(B)光開始剤1〜15質量部と、(C)溶媒30〜600質量部とを含むことを特徴とする感光性ポリアミド酸エステル組成物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、多層配線基板などの電気・電子材料の製造に有用な感光性材料に関するものである。さらに詳しく言えば、本発明は、i線露光可能な膜厚領域が広く、かつ高い解像度のポリイミドパターンを与え得るポリアミド酸エステル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、その高い熱的及び化学的安定性、低い誘電率及び優れた平坦化能のために、マイクロエレクトロニクス関係の材料として注目されており、半導体の表面保護膜、もしくは層間絶縁膜、またはマルチチップモジュールなどの材料として広く使用されている。
ポリイミド樹脂を用いて半導体装置を製造する場合には、通常、ポリイミド樹脂膜を基材上に形成し、リソグラフィー技術を利用して所望のパターンを形成する。具体的には、ポリイミド樹脂膜の上に、フォトレジストとフォトマスクを用いてフォトレジストのパターンを形成し、その後にエッチィングによるポリイミド樹脂のパターン化を行うという間接的なパターン形成方法が用いられる。しかしながら、この方法においては、初めに、マスクとなるフォトレジストのパターンをポリイミド樹脂膜の上に形成し、次にポリイミド樹脂をエッチングを行い、最後に不要になったフォトレジストパターンの剥離を行わなければならないため、工程が複雑であり、更に間接的なパターン形成であるが故に解像度が低い。又、エッチングにヒドラジンのような有毒物質を溶剤として用いる必要があるため、安全性の問題もある。
【0003】
上記のような問題点を克服する目的で、光重合性の感光基をポリイミド前駆体に導入し、ポリイミド前駆体膜に直接パターンを形成する方法が実用化されている。例えば、二重結合を有する化合物をエステル結合、アミド結合、またはイオン結合などを介してポリアミド酸誘導体に結合してなるポリイミド前駆体、及び光開始剤等を含む感光性ポリイミド前駆体組成物で膜を形成し、これをパターンを有するフォトマスクを介して露光することによって上記塗膜の露光された部分のポリイミド前駆体を不溶化させる手段を用いてパターンを形成し、現像処理に付し、その後、加熱して感光基成分を除去することにより、ポリイミド前駆体を熱安定性を有するポリイミドに変換する方法などが提案されている(非特許文献1参照)。この技術は、一般に感光性ポリイミド技術と呼ばれている。この技術によって、上記の従来の非感光性ポリイミド前駆体を用いるプロセスに伴う問題は克服された。そのため、ポリイミドパターンの形成を上記の感光性ポリイミド技術で行うことが多くなっている。
【0004】
近年、半導体装置等に用いられるポリイミド膜のパターンを形成する際の解像度の向上が求められている。上記の感光性ポリイミド技術が開発される以前の非感光性ポリイミドを用いたプロセスにおいては高い解像度が得られなかったため、それを前提にして半導体装置や製造プロセスが設計されており、それによって半導体装置の集積率や精度が限られていた。一方、感光性ポリイミド技術を用いると、パターン形成時に高い解像度が得られることから、集積率や精度の高い半導体装置の製造が可能となる。これに関して以下に説明する。
例えば、メモリー素子等を製造する場合は、製品の収率を上げるために、あらかじめ予備の回路を作っておいて製品の検査後に不要な回路を切るという操作を行う。従来の非感光性ポリイミドを用いたプロセスでは、不要な回路の切断は、ポリイミドパターンの形成前に行っていたのに対し、感光性ポリイミドを用いるプロセスでは、ポリイミドパターン形成時の解像度が高いため、パターンに不要な回路を切るための穴を設けておいて、ポリイミドパターンの形成後に予備回路を切ることができる。したがって、最終製品の完成時点により近い段階で予備回路を切断することが可能となり、更に高い製品の収率が達成される。
【0005】
ポリイミドパターンに不要な回路を切るための穴を設けておく際には、半導体装置の高集積化のためにこの穴をより小さくすることが望まれており、そのためには、現在よりも更に高い解像度でパターン形成が可能な感光性ポリイミド前駆体が求められている。また、半導体装置の製造プロセスにおいて、高解像度のパターン形成を可能にする感光性ポリイミド前駆体を用いると、半導体装置の高集積化や高精度化に必要な広いプロセスマージンを達成することができる。ここで、「広いプロセスマージン」とは、当該プロセスにおけるパターン形成のための露光や現像時の使用可能条件(例えば時間や温度などの条件)が広いことを意味する。従って、ポリイミドパターン形成時の解像度は高ければ高いほど望ましい。上記のことは、ポリイミドパターンをその他の半導体装置(マルチチップモジュール等)に用いる場合にも当てはまる。そのため、精度の高いパターンの形成を可能にする解像度の高い感光性ポリイミド前駆体組成物への要求は増してきている。
【0006】
ところで、半導体装置(以下、「素子」とも言う。)は目的に合わせて、様々な方法でプリント基板に実装される。通常の素子は、素子の外部端子(パッド)からリードフレームまで細いワイヤで接続するワイヤボンディング法が一般的であったが、素子の高速化が進み、動作周波数がGHzまで到達した今日、実装における各端子間の配線長さの違いが、素子の動作に影響を及ぼすまでに至った。その為に、ハイエンド用途の素子の実装では、実装配線の長さを正確に制御する必要が生じ、ワイヤボンディングではその要求を満たすことが不可能となった。
そこで、半導体チップの表面に再配線層を形成し、その上にバンプ(電極)を形成し、チップを裏返し(フリップ)て、プリント基板に直接実装するフリップチップ実装が提案されている。フリップチップ実装は配線距離を正確に制御できるため高速な信号を取り扱うハイエンド用途の素子や、実装サイズの小ささから携帯電話等に採用され、需要が急拡大している。そのため、再配線層の材料用として、上述したような感光性ポリイミド前駆体の優れたパターン形成性に加えて、複数の配線層をカバーできる厚膜でのパターン形成性がますます重要視されるようになった。さらにパターンを形成する際の露光源としてi線を使用する要求が高まっている。
【0007】
しかしながら、従来知られている芳香族テトラカルボン酸と芳香族ジアミンを縮合させてなる感光性ポリイミド前駆体においては、i線の吸収が大きいために薄膜ではパターンが形成可能であっても厚膜ではパターンの底部にまで光が通らず所望のポリイミドパターンが得られないものがほとんどであった。この問題点を解決する技術としては、特定のテトラカルボン酸二無水物および特定のジアミンを使用したポリアミド酸エステルを用い、ポリマーのi線に対する透明性を改善する技術が提案されている(特許文献1参照)。また、特定のテトラカルボン酸二無水物および特定のジアミンを使用したポリアミド酸エステルに加え、特定の光開始剤を用いることが提案されている(特許文献2参照)。
しかし、これらの技術に開示された組成物よりもさらに高いi線露光可能膜厚を持つ感光性ポリイミド前駆体組成物が望まれている。すなわち、感光性ポリイミド前駆体組成物の塗布乾燥後における厚みが40〜50μmと厚い塗膜であってもi線によりパターン形成可能で、硬化後に20〜30μmの厚みを有するポリイミド膜となる厚膜i線硬化性と、アスペクト比(塗布乾燥後の厚み/解像度)が1以上のパターンを形成できる高解像性とを合わせ持つ感光性ポリイミド前駆体組成物が求められている。
【0008】
【非特許文献1】山岡・表、「ポリファイル」、1990年、第27巻、第2号、第14〜18頁
【特許文献1】特許第2693168号公報
【特許文献2】特許第3424085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、i線露光可能な膜厚領域が広く、かつ高い解像度のポリイミドパターンを与え得る感光性ポリアミド酸エステル組成物、該感光性組成物を用いたポリイミドパターンの形成方法、及び該ポリイミドパターンを有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、塗布乾燥後における厚みが40〜50μmと厚い塗膜であってもi線によるパターン形成可能で、硬化後に20〜30μmの厚みを有するポリイミド膜となり得る厚膜i線硬化性と、アスペクト比(塗布乾燥後の厚み/解像度)が1以上のパターンを形成できる高解像性とを合わせ持つ感光性ポリイミド前駆体組成物を開発すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の繰り返し単位からなるポリアミド酸エステルと、光開始剤と、溶媒からなる感光性ポリアミド酸エステル組成物が、i線露光可能な膜厚領域が広く、かつ高い解像度のポリイミドパターンを与え得ることを見い出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0011】
すなわち、本発明の一は、(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリアミド酸エステル100質量部と、(B)光開始剤1〜15質量部と、(C)溶媒30〜600質量部とを含むことを特徴とする感光性ポリアミド酸エステル組成物である。
【化1】

(式中、Xは2個のベンゼン環をオキシ基で結合した4価の芳香族基であり、R及びR’はそれぞれ独立してオレフィン性二重結合を有する1価の基であり、R" は炭素数1〜44の直鎖あるいは分岐のアルキル基あるいはアルコキシ基である。)
一般式(1)におけるR" 基は、メチル基であることが好ましい。
【0012】
本発明の二は、(a)本発明の一の感光性ポリアミド酸エステル組成物を基材に塗布し、乾燥する工程、(b)塗膜をパターンを有するフォトマスクまたはレチクルを介して紫外線により露光後、未露光部を溶剤で溶解除去して、ポリアミド酸エステルのパターンを得る工程、(c)ポリアミド酸エステルのパターンを加熱硬化することにより、ポリイミドのパターンを得る工程、を含むことを特徴とするポリイミドパターンの形成方法である。
本発明の三は、本発明の2のポリイミドパターンの形成方法により形成したポリイミドパターンを有することを特徴とする半導体装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、i線露光可能な膜厚領域が広く、かつ高い解像度のポリイミドパターンを与え得る感光性ポリアミド酸エステル組成物、該感光性組成物を用いたポリイミドパターンの形成方法、及び該ポリイミドパターンを有する半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
<感光性ポリアミド酸エステル組成物>
(A)ポリアミド酸エステル
本発明の組成物の成分であるポリアミド酸エステルは、下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを縮合させた繰り返し単位からなるポリアミド酸エステルである。
【化2】

(式中、Xは2個のベンゼン環をオキシ基で結合した4価の芳香族基であり、R及びR’はそれぞれ独立してオレフィン性二重結合を有する1価の基であり、R" は炭素数1〜44の直鎖あるいは分岐のアルキル基あるいはアルコキシ基である。)
上記ポリアミド酸エステルにおいて、その繰り返し単位中のX基は、テトラカルボン酸ジエステルの原料として用いるテトラカルボン酸誘導体に由来する基である。
好ましいテトラカルボン酸誘導体の例としては、4,4’−オキシジフタル酸二無水物が挙げられる。
【0015】
好ましいジアミンの例としては、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジ−n−プロピルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジ−イソプロピルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジ−n−ブチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジ−イソブチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジ−tert−ブチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエトキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジ−n−プロポキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロポキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジ−n−ブトキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソブトキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジ−tert−ブトキシジフェニルメタン等が挙げられる。これらの中でも特に4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタンが好ましい。
【0016】
ポリアミド酸エステルの合成においては、通常、テトラカルボン酸二無水物のエステル化反応を行って得られたテトラカルボン酸ジエステルをそのままジアミンとの縮合反応に付する方法が好ましく使用できる。
上記のテトラカルボン酸二無水物のジエステル化反応に用いるアルコール類は、オレフィン性二重結合を有するアルコール類である。具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルアルコール、2−アクリロイルオキシエチルアルコール、1−アクリロイルオキシ−2−プロピルアルコール、2−メタクリルアミドエチルアルコール、2−アクリルアミドエチルアルコール、メチロールビニルケトン、2−ヒドロキシエチルビニルケトン、アリルアルコール、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート等を挙げることができる。これらのアルコール類は、1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
また、特開平06−080776号公報に記載のように、上記のオレフィン性二重結合を有するアルコール100モルに対し、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、及びイソプロピルアルコールを1〜30モル混合して用いることもできる。
【0017】
理論上、テトラカルボン酸二無水物のジエステル化に使用するアルコール類の量は、テトラカルボン酸二無水物1.0当量あたり1.0当量(テトラカルボン酸二無水物1.0モルあたり2.0モル)であるが、本発明においては、テトラカルボン酸二無水物1.0当量あたり、1.01〜1.10当量になるようにアルコールを用いてテトラカルボン酸ジエステルを合成すると、最終的に得られる感光性ポリアミド酸エステル組成物の保存安定性が向上するので好ましい。
本発明の組成物においては、上述した特定のテトラカルボン酸ジエステルと特定のジアミンとを縮合させたポリアミド酸エステルにより、厚膜i線硬化性及び高解像性と、その他の性能とのバランスをとることができる。
ポリアミド酸エステルの合成に使用するテトラカルボン酸ジエステルとジアミンのモル比は、1.0付近であることが好ましいが、目的とするポリアミド酸エステルの分子量に応じて0.7〜1.3の範囲で用いることができる。
本発明に用いるポリアミド酸エステルの具体的な合成方法に関しては従来公知の方法を採用することができる。これについては、例えば、国際公開第00/43439号パンフレットに示されている、テトラカルボン酸ジエステルを一度テトラカルボン酸ジエステルジ酸塩化物に変換し、該テトラカルボン酸ジエステルジ酸塩化物とジアミンを塩基性化合物の存在下で縮合反応に付しポリアミド酸エステルを合成する方法、およびテトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを有機脱水剤の存在下で縮合反応に付す方法によってポリアミド酸エステルを合成する方法が挙げられる。
有機脱水機の例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジエチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、エチルシクロヘキシルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、カルボジイミドなどが挙げられる。
本発明に用いるポリアミド酸エステルの重量平均分子量は、8000〜150000であることが好ましく、9000〜50000であることがより好ましい。
【0018】
(B)光開始剤
本発明の感光性ポリアミド酸エステル組成物の成分である光開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、及びフルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、及び2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン等のアセトフェノン誘導体、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及びジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ベンジル、ベンジルジメチルケタール及び、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体、2,6−ジ(4’−ジアジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、及び2,6′−ジ(4’−ジアジドベンザル)シクロヘキサノン等のアジド類、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルプロパンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルプロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルプロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、及び1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム等のオキシム類、N−フェニルグリシン等のN−アリールグリシン類、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物類、並びに芳香族ビイミダゾール類、チタノセン類などが挙げられる。これらの中でも、厚膜i線硬化性及び光感度の点で上記オキシム類が好ましい。
これらの光開始剤の添加量は、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対し、1〜15質量部が好ましい。開始剤をポリアミド酸エステル100質量部に対し1質量部以上添加することで光感度にすぐれ、15質量部以下添加することで厚膜i線硬化性にすぐれる組成物とすることができる。
【0019】
(C)溶媒
本発明のポリアミド酸エステル組成物の成分である溶媒としては、成分(A)及び(B)に対する溶解性の点から、極性の有機溶剤を用いることが好ましい。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N―シクロヘキシル−2−ピロリドンなどが挙げられ、これらは単独または二種以上の組合せで用いることができる。
これらの溶媒は、塗布膜厚、粘度に応じて、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対し、30〜600質量部の範囲で用いることができる。
さらに本発明のポリアミド酸エステル組成物の保存安定性を向上させるため、溶媒として使用する有機溶剤中にアルコール類を含有させることが好ましい。
【0020】
使用可能なアルコール類としては、分子内にアルコール性水酸基を持つものであれば特に制限はないが、具体的な例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、乳酸エチル等の乳酸エステル類、プロピレングリコール−1−メチルエーテル、プロピレングリコール−2−メチルエーテル、プロピレングリコール−1−エチルエーテル、プロピレングリコール−2−エチルエーテル、プロピレングリコール−1−(n−プロピル)エーテル、プロピレングリコール−2−(n−プロピル)エーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル等のモノアルコール類、2−ヒドロキシイソ酪酸エステル類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のジアルコール類、が挙げられる。これらの中では、乳酸エステル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、2−ヒドロキシイソ酪酸エステル類、エチルアルコールが好ましく、特に乳酸エチル、プロピレングリコール−1−メチルエーテル、プロピレングリコール−1−エチルエーテル、プロピレングリコール−1−(n−プロピル)エーテルがより好ましい。
全溶媒中に占めるアルコール類の含量は5〜50重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜30重量%である。アルコール類の含量が5重量%以上の場合、ポリアミド酸エステル組成物の保存安定性が良好になり、また50重量%以下の場合、(A)成分であるポリアミド酸エステルの溶解性が良好になる。
【0021】
(D)その他の成分
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、光重合性の不飽和二重結合を有する化合物を添加することができる。
このような化合物としては光重合開始剤により重合可能な(メタ)アクリル化合物が好ましく、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート(各エチレングリコールユニットの数2〜20)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(各エチレングリコールユニットの数2〜20)、ポリ(1,2−プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(1,2−プロピレングリコール)ジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、エチレングリコールジグリシジルエーテル-メタクリル酸付加物、グリセロールジグリシジルエーテル−アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル−アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル−メタクリル酸付加物、N,N’−ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)尿素などが挙げられる。また、これらの使用にあたっては、必要に応じて、単独でも2種以上を混合して用いてもかまわない。その添加量は、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対し、1〜50質量部とするのが好ましい。
【0022】
本発明の感光性ポリアミド酸エステル組成物には、更に光感度を向上させるために増感剤を添加することもできる。
増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビフェニレン)−ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4’−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンジロキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−メトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、N−フェニル−N′−エチルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−p−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、4−モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2−メルカプトベンズイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2−d)チアゾール、2−(p−ジメチルアミノベンゾイル)スチレン、ベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。これらは単独でまたは2〜5種類を組み合わせて用いることができる。
【0023】
これらの中では、光感度の点で、メルカプト基を有する増感剤とジアルキルアミノフェニル基を有する増感剤とを組み合わせて用いることが好ましい。また、基材として銅基板を使用する場合は、トリアゾール環を有する増感剤とジアルキルアミノフェニル基を有する増感剤とを組み合わせて用いることが好ましい。増感剤は、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対し、0.1〜10質量部を用いるのが好ましい。
また、本発明の感光性組成物には、基材との接着性向上のため接着助剤を添加することもできる。接着助剤としては、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル−3−ピペリジノプロピルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、N−(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)スクシンイミド、N−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕フタルアミド酸、ベンゾフェノン−3,3’−ビス(N−〔3−トリエトキシシリル〕プロピルアミド)−4,4’−ジカルボン酸、ベンゼン−1、4−ビス(N−〔3−トリエトキシシリル〕プロピルアミド)−2,5−ジカルボン酸、3−(トリエトキシシリル)プロピルスクシニックアンハイドライド、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、及びアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系接着助剤などが挙げられる。
これらの内では接着力の点からシランカップリング剤を用いることがより好ましい。接着助剤の添加量は、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対し、0.5〜10質量部の範囲が好ましい。
【0024】
また、本発明の感光性ポリアミド酸エステル組成物には、保存時の組成物溶液の粘度や光感度の安定性を向上させるために熱重合禁止剤を添加することができる。
熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、N−ニトロソジフェニルアミン、p−tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、N−フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6−ジ−tert−ブチル−p−メチルフェノール、5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン、1−ニトロソ−2−ナフトール、2−ニトロソ−1−ナフトール、2−ニトロソ−5−(N−エチル−N−スルフォプロピルアミノ)フェノール、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソ−N(1−ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩等が用いられる。
感光性ポリアミド酸エステル組成物に添加する熱重合禁止剤の量としては、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対し、0.005〜5質量部の範囲が好ましい。
本発明のポリアミド酸エステル組成物においては、耐熱性及び耐薬品性を向上する成分として有機チタン化合物を添加することができる。使用可能な有機チタン化合物としては、チタン原子に有機化学物質が共有結合あるいはイオン結合を介して結合しているものであれば特に制限はない。
【0025】
本発明に用いることのできる有機チタン化合物の具体的な例は、まずチタノセン類である。好ましいチタノセン類としては、例えばペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイドが挙げられる。この際に、ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1−ヒドロピロール−1−イル)フェニル)チタノセンのような光開始剤として機能するチタノセン類を用いると、本発明で用いることのある他の光開始剤との干渉により、良好なパターンを得にくい場合があり、光開始剤としては機能しないチタノセン類の方がより好ましい。
また、本発明に用いることのできる有機チタン化合物の別の具体的な例は、チタンキレート類である。本発明ではチタンキレート類の内、2個以上のアルコキシ基を有する化合物が、組成物の安定性及び良好なパターンがえられることからより好ましい。好ましいチタンキレート類としては、例えば、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n−ブトキサイド)(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
【0026】
また、本発明で用いることのできる有機チタン化合物の別の具体的な例としては、チタニウムテトラ(n−ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2−エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n−ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n−プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス(ビス2,2−(アリロキシメチル)ブトキサイド)、等のテトラアルコキシド類、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルフォネート)イソプロポキサイド等のモノアルコキサイド類、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等のチタニウムオキサイド類、チタニウムテトラアセチルアセトネート等のテトラアセチルアセトネート類、及びイソプロピルトリドデシルベンゼンスルフォニルチタネート等のチタネートカップリング剤類などが挙げられる。
これらの有機チタン化合物の添加量は、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対し、0.3〜10質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜2質量部である。添加量が0.3質量部以上で所望の耐熱性及び耐薬品性が発現し、また10質量部以下であれば保存安定性に優れる。
【0027】
<ポリイミドパターンの形成方法、及び半導体装置>
本発明の他の態様においては、下記の工程を包含するポリイミドパターンを基材上に形成する方法が提供される。
(a)上記の感光性ポリアミド酸エステル組成物を基材に塗布し、乾燥する工程;
(b)塗膜を、パターンを有するフォトマスクまたはレチクルを介して紫外線により露光後、未露光部を溶剤で溶解除去して、ポリアミド酸エステルのパターンを得る工程;
(c)ポリアミド酸エステルのパターンを加熱硬化することにより、ポリイミドのパターンを得る工程。
本発明で使用できる基材としては、シリコンウエハー、銅等の金属、ガラス、半導体、金属酸化絶縁膜、窒化ケイ素などが挙げられるが、好ましくはシリコンウエハーまたは銅基板が用いられる。
【0028】
本発明において、感光性ポリアミド酸エステル組成物を基材上に塗布する方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法等を用いることができる。
塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性ポリアミド酸エステル組成物中のポリアミド酸エステルのイミド化が起こらないような条件で行うことが望ましい。具体的には、風乾、あるいは加熱乾燥を行う場合、20℃〜140℃で1分〜1時間の条件で行うことができる。乾燥後の塗膜の厚みは5〜50μmが好ましい。
【0029】
こうして得られた塗膜は、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー等の露光装置を用いて、パターンを有するフォトマスクまたはレチクルを介して紫外線光源等により露光され、次いで現像される。
現像に使用される現像液としては、ポリアミド酸エステル組成物に対する良溶媒、または良溶媒と貧溶媒との組み合わせが好ましい。良溶媒としては、N−メチルピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等が好ましく、貧溶媒としてはトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び水等が用いられる。良溶媒と貧溶媒とを混合して用いる場合には、ポリマーの溶解性によって良溶媒に対する貧溶媒の割合を調整する。また、各溶媒を数種類組み合わせて用いることもできる。
【0030】
現像に用いる方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば、回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択することができる。
上記のようにして得られたポリアミド酸エステルのパターンは加熱して感光成分を希散させるとともに、ポリイミド化させることによって、ポリイミドのパターンに変換する。加熱硬化させる方法としては、ホットプレートによるもの、オーブンを用いるもの、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いるもの等種々の方法を選ぶことができる。加熱は、280℃〜450℃で30分〜5時間の条件で行うことができる。加熱硬化させる際の雰囲気気体としては空気を用いても良く、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。
【0031】
このようにして、硬化後の厚みが4〜30μmかつアスペクト比(塗布乾燥後の厚み/解像度)が1以上が両立するポリイミドのパターンを得ることができる。特に、後述の実施例で示すように、従来のi線硬化型ポリイミド前駆体組成物では得ることが困難であった硬化後の厚みが20〜30μmかつアスペクト比が1以上のポリイミドのパターンを形成することができる。
また、本発明のさらに他の態様においては、前述の方法により形成したポリイミドパターンを有することを特徴とする半導体装置が提供される。特に、従来のi線硬化型ポリイミド前駆体組成物では得ることが困難であったシリコンウエハー上に厚みが20〜30μmかつアスペクト比が1以上のポリイミドのパターンを有する半導体装置を得ることができる。また、銅基板上に厚みが15〜25μmかつアスペクト比が1以上のポリイミドのパターンを有する半導体装置を得ることができる。なお、該半導体装置は、公知の半導体装置の製法に前述のポリイミドパターンの形成方法を組み合わせることで、得ることができる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
実施例、比較例及び参考例においては、感光性ポリアミド酸エステル組成物の物性を以下の方法に従って測定及び評価した。
(1)重量平均分子量
各ポリアミド酸エステルの重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(標準ポリスチレン換算)で測定した。
(2)解像度及びポリイミドパターンの精度
感光性ポリアミド酸エステル組成物を5インチシリコンウエハーまたは銅基板上にスピン塗布し、乾燥して10μm厚の塗膜を形成した。この塗膜にテストパターン付レチクルを用いてi線ステッパーNSR1755i7B(日本国、ニコン社製)により、300mJ/cm2 のエネルギーを照射した。次いで、ウエハー上に形成した塗膜を、シクロペンタノンを用いて現像機(D−SPIN636型、日本国、大日本スクリーン製造社製)でスプレー現像し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートでリンスしてポリアミド酸エステルのパターンを得た。
パターンを形成したウエハーを昇温プログラム式キュア炉(VF−2000型、日本国、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、200℃で1時間、続いて350℃で2時間熱処理することにより、5μm厚のポリイミドのパターンをシリコンウエハー上に得た。
【0033】
得られた各パターンについて、パターン形状やパターン部の幅を光学顕微鏡下で観察し、解像度を求めた。解像度に関しては、テストパターン付きレチクルを介して露光することにより複数の異なる面積の開口部を有するパターンを上記の方法で形成し、得られたパターン開口部の面積が、対応するパターンマスク開口面積の1/2以上であれば解像されたものとみなし、解像された開口部のうち最小面積を有するものに対応するマスクの開口辺の長さを解像度とした。解像度は、10μm以下、すなわちアスペクト比(塗布乾燥後の膜厚/解像度)が1以上であれば良好である。同様にして塗布乾燥後の膜厚が50μmまたは40μmの塗膜の評価も実施した。また、以下の基準に基づきポリイミドパターンの精度を評価した。
「良好」・・・パターン断面がすそびきしておらず、アンダーカットや膨潤、ブリッジングが起こっていないものであり、且つアスペクト比が1以上であるもの。更に、加熱硬化時にパターン形状が変動しないもの。
「不良」・・・上記条件を1つでも満足していないもの。
【0034】
<参考例1>(ポリアミド酸エステルAの合成)
4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)131.2gとγ−ブチロラクトン400mlを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジン81.5gを加えて反応混合物を得た。反応による発熱の終了後に室温まで放冷し、16時間放置した。
次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ−ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を攪拌しながら40分かけて反応混合物に加え、続いて3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン105.1gをγ−ブチロラクトン350mlに懸濁したものを攪拌しながら60分かけて加えた。更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌し、次に、γ−ブチロラクトン400mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。
得られた反応液を3リットルのエチルアルコールに加えて粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン1.5リットルに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28リットルの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリアミド酸エステルA)を得た。ポリアミド酸エステルAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は23000だった。
【0035】
<参考例2>(ポリアミド酸エステルBの合成)
4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)131.2gとγ−ブチロラクトン400mlを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジン81.5gを加えて反応混合物を得た。反応による発熱の終了後に室温まで放冷し、16時間放置した。
次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ−ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を攪拌しながら40分かけて反応混合物に加え、続いて4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)93.0gをγ−ブチロラクトン350mlに懸濁したものを攪拌しながら60分かけて加えた。更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌し、次に、γ−ブチロラクトン400mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。
得られた反応液を3リットルのエチルアルコールに加えて粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン1.5リットルに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28リットルの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリアミド酸エステルB)を得た。ポリアミド酸エステルBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は20000だった。
【0036】
<参考例3>(ポリアミド酸エステルCの合成)
テトラカルボン酸として、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミンとして、2,2−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用い、前述の特許文献1の実施例1に記載の方法にて反応させてポリアミド酸エステルCを得た。ポリアミド酸エステルCの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は25000だった。
【0037】
<実施例1>
ポリアミド酸エステルAを用いて以下の方法で感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、調整した組成物の評価を行った。
ポリアミド酸エステルA100gを、ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム(光開始剤)4g、テトラエチレングリコールジメタクリレート4g、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール1g、N−フェニルジエタノールアミン4g、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸3g、及び2−ニトロソ−1−ナフトール0.05gと共に、N−メチルピロリドン(NMP)80gと乳酸エチル20gからなる混合溶媒に溶解した。得られた溶液の粘度を、少量の該混合溶媒をさらに加えることによって約75ポイズに調整し、感光性ポリアミド酸エステル組成物とした。
該組成物を、前述の方法に従ってシリコンウエハに塗布乾燥、露光、現像、熱処理して得たポリイミド塗膜の解像度は塗布乾燥後の膜厚が10μmの場合は8μmであり、硬化後の膜厚は5μmであった。また塗布乾燥後の膜厚が50μmの場合の解像度は40μmであり、硬化後の膜厚は30μmであった。それぞれアスペクト比1以上を満たし、かつパターン精度は良好であった。
【0038】
<実施例2>
ポリアミド酸エステルAを用いて以下の方法で感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、調整した組成物の評価を行った。
ポリアミド酸エステルA100gを、ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム(光開始剤)4g、テトラエチレングリコールジメタクリレート6.5g、ベンゾトリアゾール1g、N−フェニルジエタノールアミン6.5g、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸3g、及び2−ニトロソ−1−ナフトール0.05gと共に、N−メチルピロリドン(NMP)80gと乳酸エチル20gからなる混合溶媒に溶解した。得られた溶液の粘度を、少量の該混合溶媒をさらに加えることによって約75ポイズに調整し、感光性ポリアミド酸エステル組成物とした。
該組成物を、前述の方法に従って銅基板に塗布乾燥、露光、現像、熱処理して得たポリイミド塗膜の解像度は塗布乾燥後の膜厚が10μmの場合は8μmであり、硬化後の膜厚は5μmであった。また塗布乾燥後の膜厚が40μmの場合の解像度は30μmであり、硬化後の膜厚は24μmであった。それぞれアスペクト比1以上を満たし、かつパターン精度は良好であった。
【0039】
<比較例1>
ポリアミド酸エステルBをポリアミド酸エステルAの代わりに使用した以外は実施例1と同様に感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、評価を行った。
該組成物を、前述の方法に従ってシリコンウエハに塗布乾燥、露光、現像、熱処理して得たポリイミド塗膜の解像度は塗布乾燥後の膜厚が10μmの場合は8μmであり、硬化後の膜厚は5μmであり、アスペクト比1以上を満たし、パターン精度は良好であった。しかしながら、塗布乾燥後の膜厚が50μmの場合はアンダーカットが発生し、必要条件を満たすパターンが得られなかった。
【0040】
<比較例2>
ポリアミド酸エステルBをポリアミド酸エステルAの代わりに使用した以外は実施例2と同様に感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、評価を行った。
該組成物を、前述の方法に従って銅基板に塗布乾燥、露光、現像、熱処理して得たポリイミド塗膜の解像度は塗布乾燥後の膜厚が10μmの場合は8μmであり、硬化後の膜厚は5μmであり、アスペクト比1以上を満たし、パターン精度は良好であった。しかしながら、塗布乾燥後の膜厚が40μmの場合はアンダーカットが発生し、必要条件を満たすパターンが得られなかった。
【0041】
<比較例3>
ポリアミド酸エステルCをポリアミド酸エステルAの代わりに使用した以外は実施例1と同様に感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、評価を行った。
該組成物を、前述の方法に従ってシリコンウエハに塗布乾燥、露光、現像、熱処理して得たポリイミド塗膜の解像度は塗布乾燥後の膜厚が10μmの場合は8μmであり、硬化後の膜厚は5μmであり、アスペクト比1以上を満たし、パターン精度は良好であった。しかしながら、塗布乾燥後の膜厚が50μmの場合はアンダーカットが発生し、必要条件を満たすパターンが得られなかった。
【0042】
<比較例4>
ポリアミド酸エステルCをポリアミド酸エステルAの代わりに使用した以外は実施例2と同様に感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、評価を行った。
該組成物を、前述の方法に従って銅基板に塗布乾燥、露光、現像、熱処理して得たポリイミド塗膜の解像度は塗布乾燥後の膜厚が10μmの場合は8μmであり、硬化後の膜厚は5μmであり、アスペクト比1以上を満たし、パターン精度は良好であった。しかしながら、塗布乾燥後の膜厚が40μmの場合はアンダーカットが発生し、必要条件を満たすパターンが得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の組成物は、半導体装置の表面保護膜、層間絶縁膜の分野で好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリアミド酸エステル100質量部と、(B)光開始剤1〜15質量部と、(C)溶媒30〜600質量部とを含むことを特徴とする感光性ポリアミド酸エステル組成物。
【化1】

(式中、Xは2個のベンゼン環をオキシ基で結合した4価の芳香族基であり、R及びR’はそれぞれ独立してオレフィン性二重結合を有する1価の基であり、R" は炭素数1〜44の直鎖あるいは分岐のアルキル基あるいはアルコキシ基である。)
【請求項2】
一般式(1)におけるR" 基がメチル基であることを特徴とする請求項1記載の感光性ポリアミド酸エステル組成物。
【請求項3】
(a)請求項1または2に記載の感光性ポリアミド酸エステル組成物を基材に塗布し、乾燥する工程、(b)塗膜をパターンを有するフォトマスクまたはレチクルを介して紫外線により露光後、未露光部を溶剤で溶解除去して、ポリアミド酸エステルのパターンを得る工程、(c)ポリアミド酸エステルのパターンを加熱硬化することにより、ポリイミドのパターンを得る工程、を含むことを特徴とするポリイミドパターンの形成方法。
【請求項4】
請求項3記載のポリイミドパターンの形成方法により形成したポリイミドパターンを有することを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2007−286154(P2007−286154A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110584(P2006−110584)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】