説明

感光性平版印刷版の製版方法

【課題】 本発明の目的は、大量に印刷版材料を現像処理しても印刷時の汚れを生ずることなく印刷できる印刷版を与え、また非画像部の汚れが少なく現像性に優れた感光性平版印刷版の製版方法を提供することにある。
【解決手段】 光重合性感光性層を有する感光性平版印刷版材料を画像露光した後、アルカリ性水溶液からなる現像液を用い現像処理を行う感光性平版印刷版の製版方法において、該現像処理が、実質的に未使用の該現像液を画像露光された感光性平版印刷版材料上に供給する工程及び該現像液に浸漬する工程を含み、該感光性平版印刷版が該光重合性感光性層上に鹸化度90%以上であるポリビニルアルコールを80質量%以上含有する保護層を有することを特徴とする感光性平版印刷版の製版方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムを支持体とする光重合型感光性平版印刷版材料の製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷の分野において、特に比較的耐刷力を要求される分野において、従来より、アルミニウム支持体上に光重合型感光層を有する平版印刷版材料が用いられている。
【0003】
この光重合型感光層を有する平版印刷版材料用の現像液として、一般的にはアルカリ溶液を用いることが知られている。
【0004】
アルカリ溶液として、例えば特開平8−248643号公報、特開平11−65129号公報に記載の珪酸アルカリ塩を含む溶液が知られている。
【0005】
これら珪酸アルカリ塩を含む溶液の場合、高pHの場合画像部が損傷し易く、低pHの場合、現像液がゲル化して不溶化し易いという問題があった。
【0006】
珪酸アルカリ塩を含まない現像液としては、例えば特開昭61−109052号公報に、アルカリ試薬、錯化剤、アニオン界面活性剤、乳化剤、n−アルカン酸等からなる現像液が知られているが、画像部の損傷が多く、高耐刷性を得るには不充分であった。
【0007】
又、比較的低pHで珪酸塩を含まない現像液として、例えば特開2000−81711号公報にアニオン界面活性剤を含む水酸化カリウム水溶液が、特開平11−65126号公報にpH8.5〜11.5のアルカリ金属の炭酸塩水溶液が開示されている。
【0008】
このような比較的低pHでの現像の問題としては、基本的に光重合型感光層の溶解力が乏しいため、現像性が不充分である場合があるなどの問題があった。
【0009】
さらに、これらの問題を改良する目的で、光重合性感光層を有する平版印刷版材料の現像に、無機アルカリ剤とポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン系界面活性剤とを含有する現像液を用いることが知られている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。
【0010】
また、現像方法として、少量の現像液を用いて現像でき、現像性能の安定性を改善した、実質的に未使用の現像液を感光性平版印刷版上に供給して現像後、さらに現像液槽中を通過させる現像方法が知られている(特許文献4参照)。
【0011】
しかしながら、これらの現像液を用いても、現像に自動現像機を用い比較的多量に印刷版材料を処理する際、あるいは比較的長期間に渡り現像液を使用する際に現像性が劣化して現像不良による汚れが発生する場合があるなど現像性が不充分であり、また現像液にスラッジが発生しこれによる印刷時の汚れが発生する場合があるなど現像性が不充分であり、上記の現像方法を用いても満足できるものではなかった。
【0012】
特に、近年環境保全のため用いられるようになった、石油系揮発性有機化合物(VOC)を用いない印刷インキを使用する印刷において、上記現像性は、不充分なものであった。
【特許文献1】特開2002−196507号公報
【特許文献2】特開2002−91015号公報
【特許文献3】特開2001−175004号公報
【特許文献4】特開昭63−71855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、大量に印刷版材料を現像処理しても印刷時の汚れを生ずることなく印刷できる印刷版を与え、また非画像部の汚れが少なく現像性に優れた感光性平版印刷版の製版方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
(請求項1)
アルミニウム支持体上に、(A)光重合開始剤、(B)高分子結合材及び(C)重合可能な、エチレン性不飽和結合含有化合物を含有する光重合性感光性層を有する感光性平版印刷版材料を画像露光した後、アルカリ性水溶液からなる現像液を用い現像処理を行う感光性平版印刷版の製版方法において、該現像処理が、実質的に未使用の該現像液を画像露光された感光性平版印刷版材料上に供給する工程及び該現像液に浸漬する工程を含み、該感光性平版印刷版が該光重合性感光性層上に鹸化度90%以上であるポリビニルアルコールを80質量%以上含有する保護層を有することを特徴とする感光性平版印刷版の製版方法。
(請求項2)
前記アルカリ性水溶液からなる現像液が実質的に珪酸塩を含まず、下記化合物Aまたは下記化合物Bを含むことを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版の製版方法。
【0015】
化合物A:ポリオキシエチレン基及び疎水基を含有するノニオン性界面活性剤であって、疎水基の飽和アルキル基の分子量が、疎水基全体の分子量に対して0〜25%であるポリオキシエチレン基を含有するノニオン性界面活性剤。
【0016】
化合物B:R−(OC36m−(OC24n−OH
〔式中Rは置換、無置換のアルキル基または置換、無置換のアリール基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは2〜30の整数を表す。〕
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、アルミニウム支持体上に、(A)光重合開始剤、(B)高分子結合材及び(C)重合可能な、エチレン性不飽和結合含有化合物を含有する光重合性感光性層を有する感光性平版印刷版材料を画像露光した後、アルカリ性水溶液からなる現像液を用い現像処理を行う感光性平版印刷版の製版方法において、該現像処理が、実質的に未使用の該現像液を画像露光された感光性平版印刷版材料上に供給する工程及び該現像液に浸漬する工程を含み、該感光性平版印刷版が該光重合性感光性層上に鹸化度90%以上であるポリビニルアルコールを80質量%以上含有する保護層を有することを特徴とする。
【0018】
本発明は、特に特定の保護層を有する重合型の感光性平版印刷版を、実質的に未使用のアルカリ性現像液を感光性平版印刷版材料上に供給する工程及びアルカリ性現像液に浸漬する工程を含む現像処理工程で現像することにより、非画像部の現像性が良好であり、かつ多量に感光性平版印刷版を処理する際に発生する現像液中のスラッジを低減する、製版方法を提供するものである。
【0019】
(現像液)
本発明において、画像露光がなされた感光性平版印刷版材料は、アルカリ性水溶液からなる現像液で現像処理される。
【0020】
水溶液とは、現像液中の溶媒の90質量%以上が水であることをいう。
【0021】
本発明に係る現像液はアルカリ剤を含み、pH8.5〜12.5のアルカリ性水溶液が好ましく用いられる。
【0022】
(アルカリ剤)
アルカリ剤としては、例えば第二燐酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;重炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;ホウ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム及び同リチウム等の無機アルカリ剤等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0023】
また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−i−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ−i−プロパノールアミン、ジ−i−プロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いることができる。
【0024】
これらの中でも、炭酸塩が好ましく用いられる。
【0025】
アルカリ剤の現像液中の含有量は、0.1質量%〜10質量が好ましく、この範囲でpHを8.5〜12.5に調製するのが好ましい。
【0026】
本発明に係る現像液は実質的に珪酸塩を含まないアルカリ性水溶液であることが好ましい。
【0027】
本発明において、実質的に珪酸塩を含まないとは、珪酸塩を含まないか、又は珪酸塩の濃度として、SiO2濃度換算で0.1質量%以下であることをいう。
【0028】
(化合物A及びB)
本発明に係る現像液は、現像液中のスラッジ発生防止と現像性の面から、実質的に珪酸塩を含まずさらに下記化合物AまたはBを含むことが好ましい。
【0029】
(化合物A)
本発明に係る化合物Bは、親水性基であるポリオキシエチレン基及び疎水基を有する。
【0030】
疎水基は、その分子中に飽和アルキル基を有しないか、有するとしても該飽和アルキル基の分子量が、疎水基全体の分子量に対して0〜25%である疎水基である。
【0031】
飽和アルキル基の分子量は、疎水基全体の分子量の0〜5%であることが特に好ましい。
【0032】
分子中に飽和アルキル基を有する疎水基を、2以上有する場合には、その分子が有する全ての疎水基の元素について合計した分子量を分母として、その全ての疎水基が有する飽和アルキル基の元素についての分子量を分子(飽和アルキル部)として計算した結果を%表示したものである。
【0033】
複数の疎水基を分子が有する場合に、各疎水基が平均して「飽和アルキル基の分子量が、疎水基全体の分子量の0〜25%である」ことが好ましいが、各疎水基が平均して上記の範囲にないものも用いることができる。
【0034】
また、疎水基の元素についての合計した分子量は、ある程度の大きさを有することが好ましく、分子量が120以上2000以下程度のものが好ましい。
【0035】
本発明に係る化合物Aは、現像液中に0.1〜10質量%含有されることが好ましく、更に、2〜10質量%含有されることが特に好ましい。
【0036】
本発明の化合物Aとしては、疎水基としてナフチル基を有するものが好ましく、且つアルカリ水溶液現像液中に2〜10質量%含有されていることが特に好ましい。
【0037】
次に、本発明に係る化合物Aの好ましい例を挙げるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0038】
【化1】

【0039】
化合物B:R−(OC36m−(OC24n−OH
〔式中Rは置換、無置換のアルキル基または置換、無置換のアリール基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは2〜30の整数を表す。〕
上記アルキル基としては、炭素数6〜20の飽和アルキル基が挙げられ、特に炭素数8〜14の飽和アルキル基が好ましく用いられる。
【0040】
アリール基としは、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0041】
置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基、ヘテロ環基などが挙げられる。
【0042】
本発明に係る化合物Bは、現像液中に0.1〜10質量%含有されることが好ましく、更に、2〜10質量%含有されることが特に好ましい。
【0043】
化合物Bの具体例を以下に示す。
【0044】
【化2】

【0045】
【化3】

【0046】
(界面活性剤)
本発明に係る現像液には、現像性の促進や現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて他の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
【0047】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル、エステルポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、エチレンジアミンのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体付加物、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアリールエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、ポリオキシエチレンアリールルエーテル硫酸エステル塩、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。
【0048】
好ましい界面活性剤は分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。かかるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型およびパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
【0049】
(現像安定化剤)
本発明に係る現像液には、種々の現像安定化剤をふくんでもよい。それらの好ましい例として、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩およびジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。
【0050】
更には、特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質がある。更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭60−129750号公報のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合物、特開昭61−215554号公報記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開平2−39157号公報の酸またはアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物と、水溶性ポリアルキレン化合物などが挙げられる。
【0051】
(有機溶剤)
現像液には更に必要により有機溶剤を加えてもよい。かかる有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10質量%以下のものが適しており、好ましくは5質量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノールおよび4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミンなどを挙げることができる。
【0052】
有機溶剤の含有量は現像液の使用液の総質量に対して1質量%以下が好ましく、実質的に含まれないことが特に好ましい。実質的に含まれないとは1質量%以下であることをいう。
【0053】
(還元剤)
本発明に係る現像液には必要に応じて還元剤が加えられる。これは印刷版の汚れを防止するものであり。好ましい有機還元剤としては、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾルシンなどのフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジンなどのアミン化合物が挙げられる。更に好ましい無機の還元剤としては、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チオ硫酸および亜ジチオン酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。これらの還元剤のうち汚れ防止効果が特に優れているのは亜硫酸塩である。これらの還元剤は使用時の現像液に対して好ましくは、0.05〜5質量%の範囲で含有される。
【0054】
(有機カルボン酸)
本発明に係る現像液には必要に応じて更に有機カルボン酸を加えることもできる。好ましい有機カルボン酸は炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸である。脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸などがあり、特に好ましいのは炭素数8〜12のアルカン酸である。また炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でも、枝分かれした炭素鎖のものでもよい。
【0055】
芳香族カルボン酸としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などにカルボキシル基が置換された化合物で、具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などがあるがヒドロキシナフトエ酸は特に有効である。
【0056】
上記脂肪族および芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウム塩やカリウム塩またはアンモニウム塩として用いるのが好ましい。本発明で用いる現像液の有機カルボン酸の含有量は格別な制限はないが、0.1質量%より低いと効果が十分でなく、また10質量%以上ではそれ以上の効果の改善が計れないばかりか、別の添加剤を併用する時に溶解を妨げることがある。従って、好ましい添加量は使用時の現像液に対して0.1〜10質量%であり、よりこのましくは0.5〜4質量%である。
【0057】
(その他の添加剤)
本発明に係る現像液には現像性能を高めるために前記の他に以下のような添加剤を加えることができる。例えば特開昭58−75152号公報記載のNaCl、KCl、KBr等の中性塩、特開昭59−121336号公報記載の[Co(NH3)]6Cl3等の錯体、特開昭56−142258号公報記載のビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸ナトリウムの共重合体等の両性高分子電解質、特開昭59−75255号公報記載のSi、Ti等を含む有機金属界面活性剤、特開昭59−84241号公報記載の有機硼素化合物等が挙げられる。本発明に用いられる現像液および補充液には更に必要に応じて、防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤および硬水軟化剤などを含有させることもできる。
【0058】
消泡剤としては例えば、特開平2−244143号公報記載の鉱物油、植物油、アルコール、界面活性剤、シリコーン等が挙げられる。硬水軟化剤としては例えば、ポリ燐酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、メチルイミノジ酢酸、βアラニンジ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸および1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)および1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。このような硬水軟化剤はそのキレート化力と使用される硬水の硬度および硬水の量によって最適値が変化するが、一般的な使用量を示せば、使用時の現像液に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲である。この範囲より少ない添加量では所期の目的が十分に達成されず、添加量がこの範囲より多い場合は、色抜けなど、画像部への悪影響がでてくる。現像液および補充液の残余の成分は水である。得られた現像液の電導度は5〜50mSの範囲であることがより好ましい。
【0059】
本発明に係る現像液は使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起こさない程度が適当であるが、必要により可溶化剤を加えることが好ましい。かかる可溶化剤としては、特開平6−32081号公報記載のトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸およびそれらのアルカリ金属塩等のいわゆるヒドロトロープ剤が好ましく用いられる。
【0060】
濃縮液の水の含有量をさらに減らし、固形状もしくはペースト状にすることもできる。この場合、一旦現像液にしてから蒸発乾固しても良いが、好ましくは複数の素材を混ぜ合わせる際に水を加えず、または少量の水を加える方法で素材を混ぜ合わせることで濃縮状態とする方法が好ましい。また、この現像液濃縮物は、特開昭51−61837、特開平2−109042、特開平2−109043、特開平3−39735、特開平5−142786、特開平6−266062、特開平7−13341等に記載された従来よく知られた方法にて顆粒状、錠剤とすることができる。固形状もしくはペースト状の現像液濃縮物に含まれる素材は、通常の光重合性感光性平版印刷版の現像液に用いられる成分を使用することができるが、水で希釈してももとに戻らないものは含まない方が好ましい。
【0061】
これらの現像液の濃縮液もしくは固形状もしくはペースト状の濃縮物は、素材種や素材配合比等の異なる複数のパートに分けても良い。これらの濃縮した現像液濃縮物は、現像前に水で所定の濃度に希釈した後現像に使用することが好ましい。またこの現像液濃縮液または濃縮物を現像補充液として用いる場合は、所定の濃度に水で希釈した後、使用中の現像液に投入することが最も好ましいが、所定の濃度より濃い濃度や、所定の濃度に希釈せずそのまま使用中の現像液に投入することも可能である。所定の濃度より濃い濃度や、所定の濃度に希釈せずそのままで現像液濃縮物を使用中の現像液に投入する際は、同じタイミングまたは別のタイミングで使用中の現像液に直接別途に水を添加しても良い。
【0062】
(現像処理)
本発明に係る現像処理は、実質的に未使用の現像液を画像露光された感光性平版印刷版材料上に供給する工程及びそれに引き続く、現像液に浸漬する工程を含む。
【0063】
本発明の現像処理では、処理のたびごとに、実質的に未使用の現像液を感光性平版印刷版上に供給する。ここで未使用の現像液とは、感光性平版印刷版の現像処理に使用していない現像液のことをいう。実質的に未使用の現像液とは、未使用の現像液でなくても未使用の現像液と実用上同等の現像能力を有するものをいう。
【0064】
感光性平版印刷版上に供給する現像液と浸漬する工程に用いる現像液組成は同じであっても異なってもよい。
【0065】
以下、図面に示す実施態様に基づいて現像処理を説明する。
【0066】
図1は、本発明の製版方法の一実施態様に用いられる現像装置の斜視図であり、図2はその側断面図である。
【0067】
図1、図2において、1は搬送ローラ対で、感光性平版印刷版2をニップ搬送するもので、水平方向ないし水平方向に対して下降する方向に搬送するように設ける。
【0068】
3は感光性平版印刷版を搬送位置を安定させるための押さえローラである。
【0069】
4は実質的に未使用の現像液を貯蔵する現像液貯蔵槽、5は送液ポンプで現像液供給パイプ6へ現像液を圧送する。
【0070】
現像液供給パイプ6には現像液を流出させるための複数の穴をパイプの側面に設ける。
【0071】
7は、現像液供給部材で2枚の板材により構成され、この2枚の板材により形成されるスリットを下端に有し、このスリットは現像液供給パイプ6からの現像液流出量に応じてスリットの間隙の増減ができる構造にする。
【0072】
8は、現像部ローラで感光性平版印刷版を下方から支えると共に現像液供給部材7の下端が現像部ローラ8の周面に接して、感光性平版印刷版が通過していないときには現像液供給部材7の下端部と現像部ローラ8とで、形成される凹部に現像液溜9が生ずるようにし、感光性平版印刷版の先端が現像液供給部材7の下端と現像部ローラ8との接触部に突入するように搬送ローラ対1及び押さえローラ3を設ける。
【0073】
現像液供給部材7を構成する板材としては、例えばポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンのようなプラスチックのシート、ステンレス鋼のような金属、ゴム等のシートを用いることができる。
【0074】
上記スリットの好ましい実施態様として、その下端部がスリットを形成する2枚の板材が各々搬送面に平行な方向でかつ搬送方向に直交する方向にすくなくともフレキシブルな部分を有し、感光性平版印刷版上の位置において、搬送方向から見て出口側の板材が入り口側の板材より先端(下端)が短い(好ましくは3〜10mm)態様が挙げられる。
【0075】
現像部ローラ8の後(搬送方向から見て)には現像液槽11及びガイドローラ12を設け、現像液溜9を通過し次いで現像部ローラ8に沿って通過した感光性平版印刷版2が現像液槽11内の現像液に浸漬されるようにする。13はスクイズローラである。
【0076】
感光性平版印刷版上に現像液を供給する手段は、現像液が感光性平版印刷版上にできるだけ均一な厚さに、かつ巾手方向(搬送面に平行で搬送方向と直交する方向)にできるだけ時間的ずれがなくほどこされるものが望ましく、そのような手段として、上記の2枚の板材で形成されるスリットを有する現像液供給部材を用いる方法に限定されず種々の手段を用いることができる。このような態様においては現像液溜9は現像液供給部材7と現像部ローラ8との接触部に表面張力によって形成される。
【0077】
感光性平版印刷版2が装置入り口から挿入されると感光性平版印刷版検出スイッチ(図示せず)にとり搬送ローラ対1、押さえローラ3、現像部ローラ8、ガイドローラ12及びスクイズローラ13が回転し感光性平版印刷版2を搬送する。
【0078】
また、現像液は感光性平版印刷版検出スイッチにより搬送ポンプ5が作動し、所定時間及び所定量の現像液を現像液供給パイプ6に流すように液流制御が行われる。
【0079】
現像液供給パイプ6の複数の穴から流出した現像液は現像液供給部材7を構成する2つの板材の内側斜面に沿って流下するが、下端の出口付近でスリットができ、せき止められて連続した液溜ができることにより搬送される感光性平版印刷版上に均一な液膜の供給が可能となる。図1において一端に矢印を付した2点鎖線は現像液の流下方向を示したものである。
【0080】
本発明の製版方法において、現像液供給量は感光性平版印刷版1m2当たり、好ましくは50〜500mlである。
【0081】
感光性平版印刷版2は現像部ローラ8に接して搬送され、現像液供給部材より現像液がその版面上に塗布される。
【0082】
また供給部材7と現像部ローラ8との間に形成される液溜において現像され、さらに現像液が塗布された感光性平版印刷版2は現像液槽11内の現像液によって現像される。そして現像液槽11内の現像液中を通過し、これらの2つの現像部を通過することによって感光性平版印刷版の先端部及び両サイド部も現像される。
【0083】
現像液溜9を通過した後、現像液槽11内の現像液に浸漬されるまでの間は感光性平版印刷版2の版面上に現像液膜が保持されるように搬送することが望ましい。
【0084】
現像液槽内に入れる現像液の容量は搬送巾1m2当たり0.5〜3L程度が適当である。
【0085】
感光性平版印刷版に現像液を供給後現像液を供給後、現像促進手段を加えることができる。
【0086】
現像促進手段には、現像促進する物理的、化学的、電気的、機械的などのすべての手段を利用することができる。この好ましい1実施態様として、感光性平版印刷版が現像液槽内の現像液を現像液を通過後スクイズローラなどで現像液を除去するまでの間に回転するブラシローラで感光性平版印刷版の版面を擦る現像促進手段を付加する態様が挙げられる。
【0087】
本発明の製版方法において、本発明に係る現像処理の前にプレ水洗を行う製版方法も好ましい実施態様である。
【0088】
(画像露光)
本発明に係る画像露光の光源としては、例えば、レーザー、発光ダイオード、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク燈、メタルハライドランプ、タングステンランプ、高圧水銀ランプ、無電極光源等を挙げることができる。
【0089】
一括露光する場合には、光重合性感光層上に、所望の露光画像のネガパターンを遮光性材料で形成したマスク材料を重ね合わせ、露光すればよい。
【0090】
発光ダイオードアレイ等のアレイ型光源を使用する場合や、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ等の光源を、液晶、PLZT等の光学的シャッター材料で露光制御する場合には、画像信号に応じたデジタル露光をすることが可能であり好ましい。この場合は、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うことができる。
【0091】
レーザー露光の場合には、光をビーム状に絞り画像データに応じた走査露光が可能なので、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うのに適している。又、レーザーを光源として用いる場合には、露光面積を微小サイズに絞ることが容易であり、高解像度の画像形成が可能となる。
【0092】
レーザーの走査方法としては、円筒外面走査、円筒内面走査、平面走査などがある。円筒外面走査では、記録材料を外面に巻き付けたドラムを回転させながらレーザー露光を行い、ドラムの回転を主走査としレーザー光の移動を副走査とする。円筒内面走査では、ドラムの内面に記録材料を固定し、レーザービームを内側から照射し、光学系の一部又は全部を回転させることにより円周方向に主走査を行い、光学系の一部又は全部をドラムの軸に平行に直線移動させることにより軸方向に副走査を行う。平面走査では、ポリゴンミラーやガルバノミラーとfθレンズ等を組み合わせてレーザー光の主走査を行い、記録媒体の移動により副走査を行う。円筒外面走査及び円筒内面走査の方が光学系の精度を高め易く、高密度記録には適している。
【0093】
(後処理)
前記のように現像処理された感光性平版印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施された後、印刷に供せられる。
【0094】
これらの後処理は、一般に現像部と後処理部とからなる自動現像機を用いて行われる。
【0095】
後処理液は、スプレーノズルから吹き付ける方法、処理液が満たされた処理槽中を浸漬搬送する方法が用いられる。また、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃液を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の後処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。このような処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0096】
(印刷)
感光性平版印刷版は、本発明の製版方法により処理された後、印刷に供せられる。
【0097】
印刷は、一般的な平版印刷機を用いて行うことができる。
【0098】
近年印刷業界においても環境保全の面から、印刷インキにおいては石油系の揮発性有機化合物(VOC)を使用しないインキが開発されその普及が進みつつあるが、本発明の効果はこのような環境対応の印刷インキを使用した場合に特に顕著である。環境対応の印刷インキとしては大日本インキ化学工業社製の大豆油インキ“ナチュラリス100”、東洋インキ社製のVOCゼロインキ“TKハイエコーNV”、東京インキ社製のプロセスインキ“ソイセルボ”等があげられる。
【0099】
以下に、本発明に係る光重合性感光性層について説明する。
【0100】
((A)光重合開始剤)
本発明に係る光重合開始剤は、画像露光により、(C)重合可能な、エチレン性不飽和結合含有化合物の重合を開始し得る化合物であり、好ましく使用できるものは、チタノセン化合物、モノアルキルトリアリールボレート化合物、鉄アレーン錯体化合物、トリハロアルキル化合物などが挙げられる。
【0101】
チタノセン化合物としては、特開昭63−41483、特開平2−291に記載される化合物等が挙げられるが、更に好ましい具体例としては、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ジ−クロライド、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−フェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル(IRUGACURE727L:チバスペシャリティーケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム(IRUGACURE784:チバスペシャリティーケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウムビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(2−5−ジメチルピリ−1−イル)フェニル)チタニウム等が挙げられる。
【0102】
モノアルキルトリアリールボレート化合物としては、特開昭62−150242、特開昭62−143044に記載される化合物等挙げられるが、更に好ましい具体例としては、テトラ−n−ブチルアンモニウム n−ブチルートリナフタレン−1−イル−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム n−ブチルートリフェニル−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム n−ブチルートリ−(4−tert−ブチルフェニル)−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム n−ヘキシルートリ−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムn−ヘキシルートリ−(3−フルオロフェニル)−ボレート等が挙げられる。
【0103】
本発明に用いることができる、鉄アレーン錯体化合物の構造は、下記一般式(a)で表される化合物が好ましい。本発明の製版方法において、前記光重合開始剤が鉄アレーン錯体化合物である態様は特に好ましい態様である。
【0104】
一般式(a)[A−Fe−B]+-
式中Aは、シクロペンタジエニル基、アルキル置換シクロペンタジエニル基を表す。式中Bは芳香族環を表す。式中X-はアニオンを表す。
【0105】
芳香族環としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ビフェニル、フルオレン等が挙げられる。X-としては、PF6-、BF4-、SbF6-、AlF4-、CF3SO3-等が挙げられる。
【0106】
鉄アレーン錯体化合物は、重合可能な基を有する化合物に対して0.1〜20質量%の割合で含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0107】
その他に任意の光重合開始剤の併用が可能である。例えばJ.コーサー(J.Kosar)著「ライト・センシテイブ・システムズ」第5章に記載されるようなカルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ並びにジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。更に具体的な化合物は英国特許1,459,563号に開示されている。
【0108】
即ち、併用が可能な光重合開始剤としては、次のようなものを使用することができる。
【0109】
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−i−プロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−i−プロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン等のアクリドン誘導体;α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物の他、特公昭59−1281号、同61−9621号ならびに特開昭60−60104号記載のトリアジン誘導体;特開昭59−1504号、同61−243807号記載の有機過酸化物;特公昭43−23684号、同44−6413号、同44−6413号、同47−1604号ならびに米国特許3,567,453号記載のジアゾニウム化合物;米国特許2,848,328号、同2,852,379号ならびに同2,940,853号記載の有機アジド化合物;特公昭36−22062b号、同37−13109号、同38−18015号ならびに同45−9610号記載のo−キノンジアジド類;特公昭55−39162号、特開昭59−14023号ならびに「マクロモレキュルス(Macromolecules)」10巻,1307頁(1977年)記載の各種オニウム化合物;特開昭59−142205号記載のアゾ化合物;特開平1−54440号、ヨーロッパ特許109,851号、同126,712号ならびに「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」30巻,174頁(1986年)記載の金属アレン錯体;特願平4−56831号及び同4−89535号記載の(オキソ)スルホニウム有機硼素錯体;「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(CoordinationChemistryReview)」84巻,85〜277頁(1988年)ならびに特開平2−182701号記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体;特開平3−209477号記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;四臭化炭素、特開昭59−107344号記載の有機ハロゲン化合物、等。
【0110】
(トリハロアルキル化合物)
本発明に係る光重合性感光性層は、トリハロアルキル化合物を含むことが好ましい。トリハロアルキル化合物はトリハロアルキル基を有する化合物であり、特に付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物として光で酸化し得る基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物を含む場合に特に好ましく用いられる。トリハロアルキル基を含む化合物としては、塩素または臭素を含有した化合物が特に適当である。
【0111】
トリハロアルキル基としては、トリハロメチル基が好ましく、直接に、あるいは連続的に共役した鎖を経由して、芳香族炭素環または複素環に結合していることが好ましい。好ましくはふたつのトリハロメチル基を持つトリアジン環、を母核としてもつもの、特にEP−A−137452号、DE−A−2118259号および同2243621号各明細書に記載された化合物、が好ましい。これらの化合物は、近紫外領域、たとえば350〜400nm、に強い光吸収を示す。複写光のスペクトル領域において、それ自身光吸収しないか、ごくわずかだけ光吸収する併用開始剤、例えば、メソメリーを可能にする短い電子系を伴った置換基または脂肪族置換基を含むトリハロメチルトリアジン、も適当である。同様に適当なのは、異なった基本骨格をもち、短波紫外領域で光吸収する化合物であり、例えばフェニルトリハロメチルスルフォンまたはフェニルトリハロメチルケトン、例えばフェニルトリブロモメチルスルフォン、である。
【0112】
((B)高分子結合剤)
本発明に係る高分子結合材としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、その他の天然樹脂等が使用出来る。また、これらを2種以上併用してもかまわない。
【0113】
好ましくはアクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。さらに、高分子結合材の共重合組成として、(a)カルボキシル基含有モノマー、(b)メタクリル酸アルキルエステル、またはアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることが好ましい。
【0114】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、α,β−不飽和カルボン酸類、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。その他、フタル酸と2−ヒドロキシメタクリレートのハーフエステル等のカルボン酸も好ましい。
【0115】
メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等の無置換アルキルエステルの他、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキルエステルや、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の置換アルキルエステルも挙げられる。
【0116】
さらに、本発明に係る高分子結合材は、他の共重合モノマーとして、下記(1)〜(14)に記載のモノマー等を用いる事が出来る。
【0117】
1)芳香族水酸基を有するモノマー、例えばo−(又はp−,m−)ヒドロキシスチレン、o−(又はp−,m−)ヒドロキシフェニルアクリレート等。
【0118】
2)脂肪族水酸基を有するモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等。
【0119】
3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えばm−(又はp−)アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(又はp−)アミノスルホニルフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
【0120】
4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えばN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
【0121】
5)アクリルアミド又はメタクリルアミド類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ニトロフェニル)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等。
【0122】
6)弗化アルキル基を含有するモノマー、例えばトリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
【0123】
7)ビニルエーテル類、例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等。
【0124】
8)ビニルエステル類、例えばビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
【0125】
9)スチレン類、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
【0126】
10)ビニルケトン類、例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
【0127】
11)オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、i−ブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
【0128】
12)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
【0129】
13)シアノ基を有するモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−(又はm−,p−)シアノスチレン等。
【0130】
14)アミノ基を有するモノマー、例えばN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−i−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0131】
さらにこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを共重合してもよい。
【0132】
上記ビニル系重合体は、通常の溶液重合により製造することができる。また、塊状重合または懸濁重合等によっても製造することができる。重合開始剤としては、特に限定されないが、アゾビス系のラジカル発生剤が挙げられ、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が挙げられる。また、これらの重合開始剤の使用量は、共重合体を形成するのに使用されるモノマー全体100質量部に対し、通常0.05〜10.0質量部(好ましくは0.1〜5質量部)である。また、溶液重合を行う際に使用される溶媒としては、ケトン系、エステル系、芳香族系の有機溶媒が挙げられ、なかでもトルエン、酢酸エチル、ベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン等の一般にアクリル系ポリマーの良溶媒が挙げられ、なかでも沸点60〜120℃の溶媒が好ましい。溶液重合の場合、上記溶媒を使用し、反応温度として通常40〜120℃(好ましくは60〜110℃)、反応時間として通常3〜10時間(好ましくは5〜8時間)の条件で行うことができる。反応終了後、溶媒を除去して共重合体を得る。また、溶媒を除去せずに引き続き後記の二重結合の導入反応を行うこともできる。
【0133】
得られる共重合体の分子量は、使用される溶媒および反応温度を調整することによって調節することができる。目的とする分子量の共重合体を得るために使用される溶媒および反応温度等は、使用されるモノマーによって適宜決定することができる。また、特定の溶媒を上記溶媒に混合することによっても得られる共重合体の分子量を調節することができる。このような溶媒としては、例えば、メルカプタン系(例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等)、四塩化炭素系(例えば、四塩化炭素、塩化ブチル、塩化プロピレン等)等が挙げられる。これらの溶媒を上記反応に使用する溶媒に混合する割合は、反応に使用するモノマー、溶媒、反応条件等によって適宜決定することができる。
【0134】
さらに、本発明に係る高分子結合材は、側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体であることが好ましい。例えば、上記ビニル系共重合体の分子内に存在するカルボキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。
【0135】
分子内に不飽和結合とエポキシ基を共に含有する化合物としては、具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、特開平11−271969号に記載のあるエポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられる。また、上記ビニル系重合体の分子内に存在する水酸基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。分子内に不飽和結合とイソシアネート基を共に有する化合物としては、ビニルイソシアネート、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−またはp−イソプロペニル−α,α′−ジメチルベンジルイソシアネートが好ましく、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0136】
ビニル系共重合体の分子内に存在するカルボキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物を付加反応させる方法は公知の方法で出来る。例えば、反応温度として20〜100℃、好ましくは40〜80℃、特に好ましくは使用する溶媒の沸点下(還流下)にて、反応時間として2〜10時間、好ましくは3〜6時間で行うことができる。使用する溶媒としては、上記ビニル系共重合体の重合反応において使用する溶媒が挙げられる。また、重合反応後、溶媒を除去せずにその溶媒をそのまま脂環式エポキシ基含有不飽和化合物の導入反応に使用することができる。また、反応は必要に応じて触媒および重合禁止剤の存在下で行うことができる。
【0137】
ここで、触媒としてはアミン系または塩化アンモニウム系の物質が好ましく、具体的には、アミン系の物質としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ベンジルアミン等が挙げられ、塩化アンモニウム系の物質としては、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0138】
これらを触媒として使用する場合、使用する脂環式エポキシ基含有不飽和化合物に対して、0.01〜20.0質量%の範囲で添加すればよい。また、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、tert−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン等が挙げられ、その使用量は、使用する脂環式エポキシ基含有不飽和化合物に対して、0.01〜5.0質量%である。なお、なお、反応の進行状況は反応系の酸価を測定し、酸価が0になった時点で反応を停止させればよい。
【0139】
ビニル系重合体の分子内に存在する水酸基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物を付加反応させる方法は公知の方法で出来る。例えば、反応温度として通常20〜100℃、好ましくは40〜80℃、特に好ましくは使用する溶媒の沸点下(還流下)にて、反応時間として通常2〜10時間、好ましくは3〜6時間で行うことができる。使用する溶媒としては、上記高分子共重合体の重合反応において使用する溶媒が挙げられる。また、重合反応後、溶媒を除去せずにその溶媒をそのままイソシアネート基含有不飽和化合物の導入反応に使用することができる。また、反応は必要に応じて触媒および重合禁止剤の存在下で行うことができる。ここで、触媒としてはスズ系またはアミン系の物質が好ましく、具体的には、ジブチルスズラウレート、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0140】
触媒は使用する二重結合を有する化合物に対して、0.01〜20.0質量%の範囲で添加することが好ましい。また、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、tert−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン等が挙げられ、その使用量は、使用するイソシアネート基含有不飽和化合物に対して、通常0.01〜5.0質量%である。なお、反応の進行状況は反応系のイソシアナト基の有無を赤外吸収スペクトル(IR)で判定し、吸収が無くなった時点で反応を停止させればよい。
【0141】
上記した本発明に用いることができる側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体は、全高分子結合剤において、50〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0142】
光重合性感光性層中における高分子結合剤の含有量は、10〜90質量%の範囲が好ましく、15〜70質量%の範囲が更に好ましく、20〜50質量%の範囲で使用することが感度の面から特に好ましい。
【0143】
((C)重合可能な、エチレン性不飽和結合含有化合物)
本発明に係る重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物は、分子内に、重合可能な、エチレン性不飽和結合を有する化合物であり、一般的なラジカル重合性のモノマー類、紫外線硬化樹脂に一般的に用いられる分子内に付加重合可能なエチレン性二重結合を複数有する多官能モノマー類や、多官能オリゴマー類を用いることができる。
【0144】
これらの重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物に特に限定は無いが、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル等を挙げることができる。
【0145】
(光で酸化し得る基を含む重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物)
本発明に係る光重合性感光性層に用いられる重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物は、少なくとも一つの、光で酸化し得る基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物であることが好ましい。
【0146】
特に好ましいのは、少なくとも1つの光酸化性基と少なくとも1つのウレタン基とを、分子中に含む、付加重合性化合物である。適当な光酸化性基としては、特に、複素環の構成員となっていてもよいチオ基、チオエーテル基、ウレイド基、アミノ基、およびエノール基である。それらの基の例としては、トリエタノールアミノ基、トリフェニルアミノ基、チオウレイド基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、アセチルアセトニル残基、N−フェニルグリシン残基およびアスコルビン酸残基である、好ましいものは、3級アミノ基、チオエーテル基を含む付加重合性化合物である。
【0147】
光酸化性基を含む化合物の例は、ヨーロッパ特許出願公開第287,818号、同第353,389号および同第364,735号各明細書に記載されている。そこに記載されている化合物のなかで好ましいものは、第3アミノ基に加えて、ウレイド基および(または)ウレタン基をも含むものである。
【0148】
また、少なくとも1つの光酸化性基と少なくとも1つのウレタン基を有する化合物としては、特開昭63−260909号公報、特許2669849号公報、特開平6−35189号公報、特開2001−125255に記載のものが挙げられる。
【0149】
さらに、分子内に三級アミノ基を含有する多価アルコール、ジイソシアネート化合物、および分子内にヒドロキシル基と付加重合可能なエチレン性二重結合を含有する化合物の反応生成物を使用することが好ましい。
【0150】
ここで言う、分子内に三級アミノ基を含有する多価アルコールとしては、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノ−ルアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert.−ブチルジエタノ−ルアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン、N,N,N’,N’−テトラ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、p−トリルジエタノ−ルアミン、N,N,N’,N’−テトラ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、アリルジエタノールアミン、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−ジエチルアミノ−1,2−プロパンジオ−ル、N,N−ジ(n−プロピル)アミノ−2,3−プロパンジオール、N,N−ジ(iso−プロピル)アミノ−2,3−プロパンジオール、3−(N−メチル−N−ベンジルアミノ)−1,2−プロパンジオ−ル等が挙げられるが、これに限定されない。
【0151】
ジイソシアネート化合物としては、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、オクタン−1,8−ジイソシアネート、1,3−ジイソシアナートメチル−シクロヘキサノン、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,5−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン等が挙げられるが、これに限定されない。分子内にヒドロキシル基と付加重合可能なエチレン性二重結合を含有する化合物としては、特に限定されないが、好ましくは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピレン−1,3−ジメタクリレート、2−ヒドロキシプロピレン−1−メタクリレート−3−アクリレート等が挙げられる。
【0152】
これらの反応は、通常のジオール化合物、ジイソシアネート化合物、ヒドロキシル基含有アクリレート化合物の反応で、ウレタンアクリレートを合成する方法と同様に行うことが出来る。
【0153】
また、これらの分子内に三級アミノ基を含有する多価アルコール、ジイソシアネート化合物、および分子内にヒドロキシル基と付加重合可能なエチレン性二重結合を含有する化合物の反応生成物において具体例を以下に示す。
【0154】
M−1:トリエタノールアミン(1モル)、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート(3モル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(3モル)の反応生成物
M−2:トリエタノールアミン(1モル)、イソホロンジイソシアネート(3モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(3モル)の反応生成物
M−3:N−n−ブチルジエタノールアミン(1モル)、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシプロピレン−1−メタクリレート−3−アクリレート(2モル)の反応生成物
M−4:N−n−ブチルジエタノ−ルアミン(1モル)、1,3−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシプロピレン−1−メタクリレート−3−アクリレート(2モル)の反応生成物
M−5:N−メチルジエタノールアミン(1モル)、トリレン−2,4−ジイソシアネート(2モル)、2−ヒドロキシプロピレン−1,3−ジメタクリレート(2モル)の反応生成物
この他にも、特開平1−105238、特開平2−127404記載の、アクリレートまたはアルキルアクリレートが用いることが出来る。
【0155】
(その他の、重合可能な、エチレン性不飽和結合含有化合物)
また、プレポリマーも上記同様に使用することができる。プレポリマーとしては、後述する様な化合物等が挙げることができ、また、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸、又はメタクリル酸を導入し、光重合性を付与したプレポリマーも好適に使用できる。これらプレポリマーは、1種又は2種以上を併用してもよいし、上述の単量体及び/又はオリゴマーと混合して用いてもよい。
【0156】
プレポリマーとしては、例えばアジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ハイミック酸、マロン酸、こはく酸、グルタール酸、イタコン酸、ピロメリット酸、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類;例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸のようにエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類;例えば、エチレングリコール・アジピン酸・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート・キシレンジイソシアネート、1,2−ポリブタジエングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン・プロピレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート;例えば、ポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン・ジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート等のシリコーン樹脂アクリレート類;その他、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、スピラン樹脂アクリレート類;等のプレポリマーが挙げられる。
【0157】
また、本発明に係る重合可能な、エチレン性不飽和結合含有化合物として、ホスファゼンモノマー・トリエチレングリコール・イソシアヌール酸EO(エチレンオキシド)変性ジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、アルキレングリコールタイプアクリル酸変性・ウレタン変性アクリレート等の単量体及び該単量体から形成される構成単位を有する付加重合性のオリゴマー及びプレポリマーを挙げることができる。
【0158】
更に、本発明に係る重合可能な、エチレン性不飽和結合含有化合物として、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を含有するリン酸エステル化合物が挙げられる。該化合物は、リン酸の水酸基の少なくとも一部がエステル化された化合物であり、しかも、(メタ)アクリロイル基を有する限り特に限定はされない。
【0159】
この他に特開昭58−212994号公報、同61−6649号公報、同62−46688号公報、同62−48589号公報、同62−173295号公報、同62−187092号公報、同63−67189号公報、特開平1−244891号公報等に記載の化合物などを挙げることができ、更に「11290の化学商品」化学工業日報社p.286〜p.294に記載の化合物、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会p.11〜65に記載の化合物なども本発明においては好適に用いることができる。これらの中で、分子内に2以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物が本発明においては好ましく、更に分子量が10,000以下、より好ましくは5,000以下のものが好ましい。
【0160】
本発明に係る光重合性感光性層には、上記した重合可能な、エチレン性不飽和結合含有化合物を感光層の1.0〜80.0質量%の範囲で含有するのが好ましく、より好ましくは3.0〜70.0質量%の範囲である。
【0161】
(色材)
本発明に係る光重合性感光性層は、必要に応じ画像露光光を吸収する色材をふくんでもよい。色材としては、例えばシアニン、フタロシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、クマリン誘導体、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等、ケトアルコールボレート錯体が挙げられ、更に欧州特許568,993号、米国特許4,508,811号、同5,227,227号、特開2001−125255、特開平11−271969号等に記載の化合物が挙げられる。
【0162】
(保護層)
本発明に係る光重合性感光性層の上側には、鹸化度90%以上であるポリビニルアルコールを80質量%以上含有する保護層が設けられる。
【0163】
鹸化度90%以上であるポリビニルアルコールとは原材料のポリビニル酢酸の酢酸エステル基が90%以上鹸化されて水酸基となっているものをいう。
【0164】
鹸化度90%以上であるポリビニルアルコールの分子量としては種々のものを用いることができるが、重量平均分子量0.2万〜50万が好ましく、0.4万〜10万が特に好ましい。
【0165】
保護層は上記ポリビニルアルコールを80質量%以上含有することが必要であるが特に90%以上が好ましい。
【0166】
保護層に含まれる他の素材としては、例えばポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、アラビアゴム、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド等が挙げられる。これらの化合物を単独又は2種以上併用し保護層塗布液組成物を作製しこれを用い保護層を用いることができる。特に好ましい化合物としてはポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0167】
保護層を作製するための保護層塗布液組成物を調製するには、上記の素材を適当な溶剤に溶解して塗布液とすることができ、この塗布液を本発明に係る光重合性感光層上に塗布し、乾燥して保護層を形成することができる。保護層の厚みは0.1〜5.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜3.0μmである。保護層には、更に必要に応じて界面活性剤、マット剤等を含有することができる。
【0168】
保護層の塗布方法として、公知の塗布方法を好適に用いることができる。保護層の乾燥温度は、感光層性層の乾燥温度よりも低い方が好ましく、好ましくは感光性層乾燥温度との差が10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、上限はせいぜい50℃程度である。
【0169】
また、保護層の乾燥温度が、感光層が含有するバインダーのガラス転移温度(Tg)より低いことが好ましい。保護層の乾燥温度と、感光層が含有するバインダーのガラス転移温度(Tg)の差は20℃以上であることが好ましい。
【0170】
(アルミニウム支持体)
本発明に係るアルミニウム支持体は、アルミニウム板が使用され、この場合、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板等であってもかまわない。
【0171】
支持体のアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。又アルミニウム支持体は、保水性付与のため、表面を粗面化したものが用いられる。
【0172】
粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。粗面化の方法としては、例えば、機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。
【0173】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。
【0174】
電気化学的粗面化法も特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。
【0175】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。
【0176】
表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0177】
機械的粗面化処理法、電気化学的粗面化法はそれぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、又機械的粗面化処理法に次いで電気化学的粗面化法を行って粗面化してもよい。
【0178】
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことができる。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。
【0179】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0180】
更に、本発明では、これらの処理を行った後に、親水化処理を施すことが好ましい。親水化処理は特に限定されないが、水溶性の樹脂、たとえばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えばホウ酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものが使用できる。更に、特開平5−304358号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も用いられる。
【0181】
好適なのは、ポリビニルホスホン酸で支持体表面を親水化処理を行うことである。処理としては、塗布式、スプレー式、ディップ式等限定されないが、設備を安価にするにはディップ式が好適である。ディップ式の場合には、ポリビニルホスホン酸を0.05〜3%の水溶液で処理することが好ましい。処理温度は20〜90℃、処理時間は10〜180秒が好ましい。処理後、過剰に積層したポリビニルホスホン酸を除去するため、スキージ処理または水洗処理を行うことが好ましい。更に乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥温度としては、20〜95℃が好ましい。
【0182】
得られるアルミニウム支持体の感光層側の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.4〜0.6μmが好ましく、粗面化処理での塩酸濃度、電流密度、電気量の組み合わせで制御することが出来る。
【実施例】
【0183】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例における「部」は、特に断りない限り「質量部」を表す。
【0184】
《高分子結合材:アクリル系共重合体1の合成》
窒素気流下の三ツ口フラスコに、メタクリル酸30部、メタクリル酸メチル50部、メタクリル酸エチル20部、イソプロピルアルコール500部及びα,α′−アゾビスイソブチロニトリル3部を入れ、窒素気流中80℃のオイルバスで6時間反応させた。その後、イソプロピルアルコールの沸点で1時間還流を行った後、トリエチルアンモニウムクロライド3部及びグリシジルメタクリレート25部を加えて3時間反応させ、アクリル系共重合体1を得た。GPCを用いて測定した重量平均分子量は約35,000、DSC(示差熱分析法)を用いて測定したガラス転移温度(Tg)は約85℃であった。
【0185】
(支持体の作製)
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質1050,調質H16)を65℃に保たれた5質量%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、0.3質量%の硝酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間、電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、15%硫酸溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行い、更に75℃の熱水で親水化処理を行って支持体を作製した。
【0186】
(感光性平版印刷版1の作製)上記支持体上に、下記組成の光重合性感光性層塗工液1を乾燥時1.5g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、95℃で1.5分間乾燥し、光重合感光性層塗布試料を得た。
【0187】
《光重合性感光性層塗工液1》
重合可能なエチレン性二重結合含有化合物:M−3(下記) 25.0部
重合可能なエチレン性二重結合含有単量体:NKエステル4G(新中村化学社製ポリエチレングリコールジメタクリレート) 25.0部
重合開始剤T−1 2.0部
重合開始剤T−2 2.0部
重合開始剤BR22 1.0部
重合開催剤BR43 1.0部
分光増感色素D−1 1.5部
分光増感色素D−2 1.5部
アクリル系共重合体1 40.0部
N−フェニルグリシンベンジルエステル 4.0部
フタロシアニン顔料(MHI454:御国色素社製) 6.0部
2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(スミライザーGS:住友3M社製) 0.5部
弗素系界面活性剤(F−178K;大日本インキ社製) 0.5部
メチルエチルケトン 80部
シクロヘキサノン 820部
M−3:N−n−ブチルジエタノ−ルアミン(1モル)、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシプロピレン−1−メタクリレート−3−アクリレート(2モル)の反応生成物
上記光重合性感光性層塗布試料上に、下記組成の保護層塗工液を乾燥時1.8g/m2になるようになるようアプリケーターで塗布し、75℃で1.5分間乾燥して、感光層上に保護層遮断層を有する感光性平版印刷版試料1を作製した。
【0188】
(保護層塗工液1)
ポリビニルアルコール(AL−06:日本合成化学社製鹸化度:91〜94)
93部
水溶性ポリアミド(P−70:東レ社製) 7部
界面活性剤(サーフィノール465:日信化学工業社製) 0.5部
水 900部
(感光性平版印刷版試料2の作製)
光重合性感光性層塗工液1を下記の光重合性感光性層塗工液2に変更した以外は感光性平版印刷版1の作製と同様にして感光性平版印刷版2を作製した。
【0189】
《光重合性感光性層塗工液2》
重合可能なエチレン性二重結合含有化合物:M−3(下記) 25.0部
重合可能なエチレン性二重結合含有単量体:NKエステル4G(新中村化学社製ポリエチレングリコールジメタクリレート) 25.0部
重合開始剤T−3 4.0部
重合開始剤BR22 1.0部
重合開催剤BR43 1.0部
分光増感色素D−3 3部
アクリル系共重合体1 40.0部
N−フェニルグリシンベンジルエステル 4.0部
フタロシアニン顔料(MHI454:御国色素社製) 6.0部
2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(スミライザーGS:住友3M社製) 0.5部
弗素系界面活性剤(F−178K;大日本インキ社製) 0.5部
メチルエチルケトン 80部
シクロヘキサノン 820部
【0190】
【化4】

【0191】
【化5】

【0192】
【化6】

【0193】
(感光性平版印刷版試料3の作製)
保護層塗工液1を下記保護層塗工液2に変更した以外は感光性平版印刷版1の作製と同様にして感光性平版印刷版3を作製した。
【0194】
(保護層塗工液2)
ポリビニルアルコール(GL−05:日本合成化学社製鹸化度:86.5〜89)
75部
水溶性ポリアミド(P−70:東レ社製) 25部
界面活性剤(サーフィノール465:日信化学工業社製) 0.5部
水 900部
(感光性平版印刷版試料4の作製)
保護層塗工液1を下記保護層塗工液3に変更した以外は感光性平版印刷版1の作製と同様にして感光性平版印刷版4を作製した。
【0195】
(保護層塗工液3)
ポリビニルアルコール(KL−05:日本合成化学社製鹸化度:78〜82)
93部
水溶性ポリアミド(P−70:東レ社製) 7部
界面活性剤(サーフィノール465:日信化学工業社製) 0.5部
水 900部
(製版)
このようにして作製した感光性平板材料1、2、3および4について、FD−YAGレーザー光源を搭載したCTP露光装置(Tigercat:ECRM社製)を用いて2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)の解像度で画像露光(露光パターンは、100%画像部と、175LPI50%のスクエアードットを使用した)を行った。(ただし、実施例3については、408nm、30mW出力のレーザーを備えた光源を備えたプレートセッター(タイガーキャット:ECRM社製改造品)を用いて同様の画像露光を行った。)
次いで、現像前に酸素遮断層を除去する前水洗部、下記組成の現像液を充填した現像部、版面に付着した現像液を取り除く水洗部、画線部保護のための下記のガム液をフィニッシャー部に備えた図3に示す自動現像機で(使用自動現像機は表1に示す)を用い、画像部、非画像部の面積比率が、2:8になるよう現像を400m2実施した。
【0196】
(非画像部のインキ汚れ評価)
上記の方法でランニング状態となった自現機を用いて、同じ版を55℃1週間強制保存させたものを用いて上記と同様の露光・現像を行い、作製された印刷版を、印刷機(三菱重工業(株)製DAIYA1F−1)で、コート紙、印刷インキ(大日本インキ化学工業社製の、大豆油インキ”ナチュラリス100”)及び湿し水(東京インク(株)製H液SG−51濃度1.5%)を用いて印刷を行い、100枚目の印刷物の非画像部に、100cm2内の斑点状のインキ汚れを目視にて評価した。
◎:非画像部にインキ汚れは認められない
○:非画像部にインキ汚れはほとんど認められない
△:非画像部にインキ汚れがわずかに認められるが、印刷物として使用可
×:非画像部にインキ汚れが認められ、印刷物として使用不可
(スラッジの評価)
上記の方法でランニング処理された自動現像機で現像終了後の槽内のスラッジの量を確認した。
○:現像槽内にわずかにスラッジへドロの発生が見られるが、現像される版材には付着せず実質上問題はない。また現像槽の清掃作業は水で流す程度で対応可能。
△:現像槽内にスラッジへドロ発生が見られ現像槽の清掃作業は水で流すだけでは困難でスポンジ・ブラシ等での擦りが必要。現像される版材にはスラッジへドロは付着せず現像作業自体は実質上問題はない。
×:スラッジへドロが、現像後の版に付着し汚れ発生。
【0197】
(現像液処方)
(実施例1、2、3、5及び比較例2、3に用いる現像液)
炭酸カリウム 2.5g/L
炭酸水素カリウム 5.0g/L
化合物A(表1に記載)を含む場合 10g/L
化合物B(表1に記載)を含む場合 30g/L
ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムを含む場合(表1に記載) 10g/L
エチレンジアミンテトラ酢酸 0.5g/L
水酸化カリウム 下記pHになる量
残余の成分は水。pH:11.4
(実施例4、比較例1に用いる現像液)
珪酸カリウム水溶液(SiO226質量%、K2O13.5質量%)40.0g/L
エチレンジアミンテトラ酢酸 0.5g/L
化合物B(表1に記載)を含む場合 10.0g/L
ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムを含む場合(表1に記載)10.0g/L
水酸化カリウム 下記pHになる量
残余の成分は水。pH:12.1
(ガム液(フィニッシャー液)処方(1L処方))
白色デキストリン 5.0g
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 0.5g
ヒドロキシプロピルエーテル化デンプン 10.0g
燐酸第1アンモン 0.1g
ジラウリルコハク酸ナトリウム 0.15g
ポリオキシエチレンナフチルエーテル 0.5g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.3g
エチレングリコール 1.0g
エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム 0.05g
O−フェニルフェノール 0.05g
水 全体を1Lに仕上げる量
結果を表1に示した。表1から本発明の製版方法は大量に印刷版材料を現像処理しても印刷時の汚れが防止でき、また非画像部の汚れが少なく現像性に優れていることが分かる。
【0198】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】本発明の製版方法の一実施態様に用いられる現像装置の斜視図である。
【図2】図1に示す現像装置の側断面図である。
【図3】実施例で用いた自動現像機の側断面模式図である。
【符号の説明】
【0200】
1 搬送ローラ
2 感光性平版印刷版
3 押さえローラ
4 現像液貯蔵槽
5 送液ポンプ
6 現像液供給パイプ
7 現像液供給部材
8 現像部ローラ
9 現像液溜
11 現像液槽
12 ガイドローラ
13 スクイズローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム支持体上に、(A)光重合開始剤、(B)高分子結合材及び(C)重合可能な、エチレン性不飽和結合含有化合物を含有する光重合性感光性層を有する感光性平版印刷版材料を画像露光した後、アルカリ性水溶液からなる現像液を用い現像処理を行う感光性平版印刷版の製版方法において、該現像処理が、実質的に未使用の該現像液を画像露光された感光性平版印刷版材料上に供給する工程及び該現像液に浸漬する工程を含み、該感光性平版印刷版が該光重合性感光性層上に鹸化度90%以上であるポリビニルアルコールを80質量%以上含有する保護層を有することを特徴とする感光性平版印刷版の製版方法。
【請求項2】
前記アルカリ性水溶液からなる現像液が実質的に珪酸塩を含まず、下記化合物Aまたは下記化合物Bを含むことを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版の製版方法。
化合物A:ポリオキシエチレン基及び疎水基を含有するノニオン性界面活性剤であって、疎水基の飽和アルキル基の分子量が、疎水基全体の分子量に対して0〜25%であるポリオキシエチレン基を含有するノニオン性界面活性剤。
化合物B:R−(OC36m−(OC24n−OH
〔式中Rは置換、無置換のアルキル基または置換、無置換のアリール基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは2〜30の整数を表す。〕

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−3782(P2006−3782A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182303(P2004−182303)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】