説明

感光性樹脂層への露光方法

【課題】 現像した後の硬化レジストパターンの解像度が高度に優れ、サイドウォールのがたつきが少なく、これに由来するエッチング工程又はめっき工程において形成される回路の欠けや断線、ショートなどの欠陥の少ないプリント配線板等の金属配線パターンの製造過程における露光方法を提供すること。
【解決手段】片面又は両面に金属導体層を有する金属被覆絶縁板の金属被覆された面に、支持体(A)、厚みが1〜35μmであるネガ型感光性樹脂層(B)、及び保護層(C)を有する感光性樹脂積層体を、ネガ型感光性樹脂層(B)が該金属被覆絶縁板の金属被覆面と密着するようにラミネートして、フォトマスクを通して紫外線露光するに際し、露光の前に支持体を剥離した上で、フォトマスクの像をレンズを通して投影させることを特徴とする感光性樹脂層への露光方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂積層体への露光方法、並びに、これを用いた金属配線パターンを有するプリント配線板、TAB基板、フレキシブル配線板、及びリードフレームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会に向けて電子機器の微細化、高密度実装が進むなかで、金属配線パターンを有するプリント配線板、TAB基板及びフレキシブル配線板等も回路の微細化が求められている。
【0003】
プリント配線板は、パソコン、携帯電話等の用途を中心に急速展開してきた。プリント配線板の配線密度は、飛躍的に増加し、多層化・ファイン化への傾向がある。最近では、プリント配線板はLSIなどのパッケージ基板として、BGA・CSP用途への適用にも拡大され、注目を集めている。
【0004】
TAB基板は、これまで、LCD(液晶)ドライバーIC用途を中心に、技術的にも、量的にも発展してきた。最近では、LSIの高集積化、多ピン化及び高速化の進展に対応したパッケージ技術の変革、特にBGA、CSP等エリアアレイタイプパッケージの実用化に伴い、高密度配線が可能なこと、薄型・軽量であること、及び設計自由度が大きいこと等の優れた特徴から、パッケージ材料の一つとして、重要な位置を占めるようになってきている。
【0005】
フレキシブル配線板を中心としたチップ・オン・フィルム実装も、携帯電話のドライバ実装方式に採用されたこともあって、最近、大きな注目を集めている。
【0006】
LSI実装形態として、リードがパッケージの四辺に設けられたリードフレームは、端子型実装のQFP(Quad Flat Package)形態として使用されている。
【0007】
従来、TAB基板、フレキシブル配線板の製造方法としては、基材となるTABテープ又はフレキシブル基材の銅箔上に、ポジ型の液状フォトレジストを塗布して乾燥した後、露光し、現像して基材上にレジストパターンを形成し、その後エッチング、場合によってはめっき後、レジストパターンを剥離し、金属配線パターンを形成する方法が用いられてきた。同様に、リードフレームの製造にも、ポジ型の液状フォトレジストが用いられてきた。
【0008】
しかしながら、液状フォトレジストは、基材上に均一な膜厚で塗布することが難しく、塗布後の乾燥条件によって硬化収縮が発生し、所望の設定膜厚よりも、膜厚が減少する、いわゆる、膜減りが発生するという問題がある。このような不均一な膜厚の液状フォトレジストや膜減りを起こした液状フォトレジストを、そのまま露光し、現像すると、得られたレジストパターンにクラックが生じ、その後のエッチング工程又はめっき工程を経て得られた金属配線パターンの欠陥となる。
【0009】
また、液状フォトレジストを扱う場合には、季節、室温、湿度等の環境変化に対する粘度調整等の熟練技術を要する。さらに、高沸点の有機溶剤を含有するため、基材上に塗布した後の乾燥時間が長く、生産性の低下が問題となっていた。
【0010】
最近、上記の液状フォトレジストの問題点を解決するために、支持体と感光性樹脂層と保護層とから成る、感光性樹脂積層体が用いられるようになってきた。感光性樹脂積層体が、液状フォトレジスト並に薄膜化が可能になったこともあって、金属配線パターンの高密度化及び高多層化に要求される解像性、密着性を満足する性能を有するようになったためである。
感光性樹脂層積層体を用いた金属配線パターン形成方法は、従来からのプリント配線板の製造に加えて、TAB基板、フレキシブル配線板及びリードフレーム等の製造にも用いられるようになってきた。
【0011】
感光性樹脂積層体の製法としては、光透過性のポリエステル等の支持体上に感光性樹脂組成物を塗布して乾燥し、この乾燥された感光性樹脂層上にポリエチレン等の保護層をラミネートさせる方法が一般的である。
【0012】
金属配線パターン形成に感光性樹脂積層体を用いる場合には、まず保護層を剥離した後、感光性樹脂層を所望のパターンを形成しようとする基材表面に熱圧着し、フォトマスクを介して、活性光線を照射(露光)し、次いでアルカリ水溶液又は有機溶剤を噴霧して未露光部分を溶解除去し、水洗、乾燥することでレジストパターンの画像を形成する方法が一般的である。
【0013】
感光性樹脂積層体を用いた金属配線パターンの形成方法において、金属配線パターンの高解像度化を達成するために、様々な試みがなされている。
例えば、露光前に支持体を剥がし、感光性樹脂層の上に直接フォトマスクを密着させる方法がある。通常、感光性樹脂層は基材に密着するように、ある程度粘着性を保持しているため、フォトマスクと感光性樹脂組成物の層が強く密着してしまい、フォトマスクが剥がしにくいことによる作業性の低下や、組成物層の付着によってマスクが汚染することによる不良の増大等の問題点があった。
【0014】
組成的な高解像度化の試みとしては、特許文献1に示される、1つのベンゼン環に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物と特定のウレタン型モノマーの組み合わせが行われているが、この方法では解像度の向上効果は十分ではなく、感度が低下する欠点があった。さらに微細化が進展すると、解像度のみならず、レジストパターンの側面(以下、サイドウォール、という)のがたつきのないこと、及び金属配線パターンに欠け、断線、ショート等の欠陥のないことが求められる。
【特許文献1】特開2000−162767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、感光性樹脂層を露光し、現像した後の硬化レジストパターンの解像度が高度に優れ、サイドウォールのがたつきが少なく、これに由来する続くエッチング工程やめっき工程での金属配線パターンの欠け、断線、ショート等の欠陥の少ない、プリント配線板等の製造過程における露光方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、前期課題を解決するため、鋭意検討した結果、露光工程において、露光の前に支持体を剥離した上で、フォトマスクの像をレンズを通して投影させる露光方法を用いたときに、前述の課題を十分に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0017】
(1)片面又は両面に金属導体層を有する金属被覆絶縁板の金属被覆された面に、支持体(A)、厚みが1〜35μmであるネガ型感光性樹脂層(B)、及び保護層(C)を有する感光性樹脂積層体を、ネガ型感光性樹脂層(B)が該金属被覆絶縁板の金属被覆面と密着するようにラミネートして、フォトマスクを通して紫外線露光するに際し、露光の前に支持体を剥離した上で、フォトマスクの像をレンズを通して投影させることを特徴とする感光性樹脂層への露光方法。
(2)前記保護層(C)が、中心線平均粗さが0.1未満のフィルムであることを特徴とする上記(1)に記載の露光方法。
(3)上記(1)又は(2)に記載の露光方法に引き続き、アルカリ水溶液で現像することにより硬化レジストパターンを形成させ、レジストパターンで覆われていない金属被覆面の金属をエッチング液で除去するか、又は、レジストパターンで覆われていない金属被覆面に金属めっきを施すことを特徴とする金属配線パターンの作製方法。
(4)保護層(C)を剥がしながら、ネガ型感光性樹脂層(B)が該金属被覆絶縁板の金属被覆面と密着するようにラミネートしてネガ型感光性樹脂層が金属被覆面と密着するようにラミネートすることを特徴とする上記(3)に記載の金属配線パターンの作製方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の露光方法をプリント配線板、フレキシブルプリント配線板、TABテープ及びリードフレーム等の製造に用いることにより、感光性樹脂層を露光し、現像した後の硬化レジストパターンの解像度が高度に優れ、さらにサイドウォールのがたつきが少ないため、続くエッチング工程又はめっき工程において形成される回路の欠けや断線、ショートなどの欠陥を少なくすることができる。
さらに、本発明の露光方法に、適切な組成の感光性樹脂積層体を組み合わせた場合には、より一層解像度が向上し、密着性も向上するという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を以下に詳細に説明する。
本発明の露光方法を用いて、感光性樹脂積層体を使用してプリント配線板等を製造する方法における工程を順を追って説明する。
【0020】
本発明の露光方法を用いて行うプリント配線板等の製造工程は通常は次の(1)〜(5)の工程からなる。
(1)ラミネート工程:感光性樹脂積層体の保護層を剥がしながら、感光性樹脂積層体を、ネガ型感光性樹脂層が、銅張り積層板又は導体層を有するフィルム状基材等の金属被覆絶縁板の金属被覆面に密着するように、ホットロールラミネーターを用いて熱圧着させる。
(2)露光工程:露光の前に支持体を剥離した上で、フォトマスクの像をレンズを通して投影させて露光する。
(3)現像工程:アルカリ現像液を用いて、ネガ型感光性樹脂層の未露光部分を溶解又は分散除去して、硬化レジストパターンを基板上に形成する。
(4)回路形成工程:形成された硬化レジストパターン上からエッチング液を用いてレジストパターンに覆われていない銅面をエッチングするか、レジストパターンによって覆われていない銅面に銅、はんだ、ニッケル及び錫等のめっき処理を行う。
(5)剥離工程:硬化レジストパターンをアルカリ剥離液を用いて金属被覆絶縁板から除去する。
【0021】
従来のプリント配線板の製造過程における露光方法では、所望の配線パターンを有するフォトマスクを支持体上に密着させ紫外線光源を用いて露光するのに対し、本発明は、露光の前に支持体を剥離した上で、フォトマスクの像をレンズを通して投影させて露光する点に特徴がある。
【0022】
本発明のように、露光の前に支持体を剥離した上で、フォトマスクの像をレンズを通して投影させる露光方法を用いることによって、現像後の硬化レジストパターンの解像度に優れ、硬化レジストのサイドウォールのがたつきが小さくなり、このため、エッチングあるいはめっき後の金属配線パターンが良好な形状になるという効果を発揮する。
【0023】
支持体は、露光する数時間前から剥離しても、直前に剥離しても構わない。支持体を剥離すると、周辺のごみが付着しやすくなる点で、剥離後15分以内で露光することが好ましい。
【0024】
露光工程において用いられる紫外線光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプなどが挙げられる。より微細なレジストパターンを得るためには、平行光光源を用いるのが好ましい。
【0025】
前記(3)現像工程で用いられるアルカリ水溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液が用いられる。一般的に、0.2〜2質量%の炭酸ナトリウム水溶液が用いられる。解像性を上げるために、好ましくは0.2〜0.6質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いる。
【0026】
前記(5)剥離工程では、現像で用いたアルカリ水溶液よりもさらに強いアルカリ性の水溶液を用いることにより、レジストパターンの剥離を行う。一般的に、1〜5質量%の水酸化ナトリウム、水酸化カリウムや、アミンの水溶液が用いられる。
【0027】
本発明における片面又は両面に金属導体層を有する金属被覆絶縁板としては、ガラスエポキシ基板に銅箔を張り合わせた銅張り積層板及び導体層を有するフィルム状基材等が挙げられる。
【0028】
導体層を有するフィルム状基材は、フィルム状の絶縁樹脂層に銅、金、銀、アルミニウム等の導体層を有するものであり、例えばポリイミドフィルム或いはポリエステルフィルム、BTレジン等の絶縁樹脂層に銅箔を張ったフレキシブル基材や、TABテープが挙げられる。フレキシブル基材の絶縁樹脂層の厚みは、絶縁樹脂層と銅箔との間に接着層がある場合は、30〜150μmが一般的であり、接着層がない場合には、12.5〜125μmが一般的である。銅箔の厚みは、通常、9〜18μmが主流であり、その厚みはより薄くなる傾向がある。フレキシブル基材の幅は、200〜300mmが一般的である。
【0029】
TABテープには、絶縁樹脂層上に銅箔を形成した2層型のものや、絶縁樹脂層上に接着剤層を介して銅箔を形成した3層型のものがある。TABテープの絶縁樹脂層の厚み又は絶縁樹脂層と接着剤層の合計の厚みは、通常75〜125μmである。また銅箔の厚みは9〜18μmが主流であり、その厚みはより薄くなる傾向がある。TABテープの幅は、その用途に応じて規格化されているが、35、48、70、96、105mmのものがある。最近では、より広幅の158mm幅のものもある。
【0030】
以下、本発明に用いられる感光性樹脂積層体について詳細に説明する。
感光性樹脂積層体は、支持体(A)、ネガ型感光性樹脂層(B)を含んでなり、さらに保護層(C)を含む。
支持体(A)、ネガ型感光性樹脂層(B)及び保護層(C)からなる感光性樹脂積層体は、ネガ型感光性樹脂層(B)に用いる感光性樹脂組成物を、これらを溶解する溶剤と混ぜ合わせて均一な溶液にしておき、支持体(A)上にバーコーターやロールコーターを用いて塗布して乾燥し、支持体(A)上に感光性樹脂組成物からなるネガ型感光性樹脂層(B)を積層し、この上に保護層(C)をラミネートすることによって得られる。
【0031】
支持体(A)は、感光性樹脂層を積層できればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合体フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルム等が挙げられる。
【0032】
支持体(A)は、露光の前に剥離するので、光を透過する性質を有する必要はない。支持体(A)の厚みは、好ましくは10〜30μmであり、より好ましくは12〜20μmである。支持体(A)のフィルム厚みが10μm未満ではフイルムが柔軟すぎて取り扱いが不便となり、30μmを超えるとネガ型感光性樹脂積層体全体の剛性が高くなりすぎて、製造しにくくなる。
【0033】
ネガ型感光性樹脂層(B)は、ネガ型感光性樹脂組成物によって形成される。ネガ型感光性樹脂組成物としては、公知のものを使用することができ、例えば、魚膠、ポリビニルアルコール、シェラック、カゼイン等のポリマーに重クロム酸アンモニウム等の感光材を添加した水溶性のフォトレジストや、ポリケイ皮酸ビニル、環化ゴムにアジドを組み合わせた油溶性のフォトレジスト等が挙げられる。
【0034】
ネガ型感光性樹脂組成物の中でも、皮膜形成するための熱可塑性高分子結合剤を含んでいるものが好ましく用いられる。
最も好ましいネガ型感光性樹脂層(B)は、(a)熱可塑性高分子結合剤、(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマー、(c)光重合性開始剤を含んでなる。更に(d)ヒンダードフェノール系化合物を含んでもよい。
【0035】
ネガ型感光性樹脂層(B)の(a)熱可塑性高分子結合剤としては、α,β−不飽和エチレン系単量体単位を有する高分子量重合体が用いられる。該α,β−不飽和エチレン系単量体単位を構成する単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのスチレン類、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類、などが挙げられる。
これらの単量体は一種のみを用いてもよいし、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(a)熱可塑性高分子結合剤の含有量は、ネガ型感光性樹脂層(B)の(a)熱可塑性高分子結合剤成分及び(b)光重合性モノマー成分の総量100質量部に対して、10〜90質量部、好ましくは30〜70質量部の範囲で選ばれる。10質量部未満であると耐コールドフロー性が低下する。70質量部より多いと感光性樹脂層が脆くなる。
特に、アルカリ可溶性の熱可塑性高分子結合剤とするには、カルボキシル基をを含む単量体、例えば(メタ)アクリル酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステルなどの中から選ばれた少なくとも一種が併用される。
【0037】
このようなアルカリ可溶性熱可塑性高分子結合剤中に含まれるカルボキシル基の含有量はカルボキシル基当量で、通常100〜600、好ましくは200〜450の範囲で選ばれる。ここでカルボキシル基当量とは、カルボキシル基1当量が含まれるグラム重量を意味する。カルボキシル基当量の測定は、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で電位差滴定法により行われる。
【0038】
さらにこのアルカリ可溶性熱可塑性高分子結合剤は、その重量平均分子量が、通常、5000〜500000、好ましくは20000〜400000が用いられる。分子量の測定はゲル パーミエーション クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレンの検量線を用いて行われる。
【0039】
ネガ型感光性樹脂層(B)の(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーとしては、光重合性モノマーを1種又は2種以上用いる。
このような光重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシプロピルアクリレートとの半エステル化物とプロピレンオキシドとの反応物(日本触媒化学社製OE−A200)、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコールアクリレート、1,4−テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレートAポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート)ポリプロピレングリコール等が挙げられる。また、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナートなどの多価イソシアネート化合物と、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアクリレート化合物とのウレタン化反応物などが挙げられる。
【0040】
(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマー成分としては、エチレングリコール反復単位総数が2〜20個である、2,2−ビス{(4−アクリロキシポリエトキシ)フェニル}プロパン、又は2,2−ビス{(4−メタクリロキシポリエトキシ)フェニル}プロパンを含むことが好ましい。より好ましくは、(b)重合性モノマーがエチレングリコール反復単位総数が4〜15個である、2,2−ビス{(4−アクリロキシポリエトキシ)フェニル}プロパン、又は2,2−ビス{(4−メタクリルオキシポリエトキシ)フェニル}プロパンである。この光重合性モノマーを用いると感光性樹脂層の解像度が向上し、基材との密着性に優れる。
【0041】
(b)成分の含有量は、ネガ型感光性樹脂層(B)の(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、(b)成分が10〜90質量部が好ましく、より好ましくは30〜70質量部が用いられる。(b)成分が10質量部未満では、光硬化膜が脆くなり、感光性樹脂層の密着性が低下し、この配合量が90質量部より多い場合には、感光性樹脂層の保存安定性が悪く、感光性樹脂層の解像度も低下しやすくなる傾向がある。
【0042】
ネガ型感光性樹脂層(B)中の(c)光重合性開始剤としては、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体が好ましく用いられる。ネガ型感光性樹脂層(B)のなかの(a)成分と(b)成分の総量100質量部に対し好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部が用いられる。配合量が0.01質量部未満では解像性及び密着性が低下し、配合量が15質量部より多い場合にはコスト高になり、かつアルカリ現像液に析出するトラブルが起き、感度は高くなるが、かぶりやすく解像度が悪化しやすくなる傾向がある。
【0043】
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、2−(o−クロロフェニル)−4・5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−クロロフェニル)−4・5−ビス−(m−メトキシフェニル)イミダゾリル二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4・5−ジフェニルイミダゾリル二量体等が用いられる。
【0044】
上記の光重合性開始剤に加えて、別の光重合性開始剤を加えることができる。具体例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジプロピルケタール、ベンジルジフェニルケタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインピロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾフェノン、9−フェニルアクリジン等のアクリジン類、α、α−ジメトキシ−α−モルホリノ−メチルチオフェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフォンオキシド、フェニルグリシン、さらに1−フェニル−1、2−プロパンジオン−2−o−ベンゾイルオキシム、2,3−ジオキソ−3−フェニルプロピオン酸エチル−2−(o−ベンゾイルカルボニル)−オキシム等のオキシムエステル類がある。
【0045】
ネガ型感光性樹脂層(B)中には、(d)ヒンダードフェノール化合物を含んでもよく、ネガ型感光性樹脂層(B)の中の(a)成分と(b)成分の総量100質量部に対し0.01〜5質量部、好ましくは、0.02〜2質量部が用いられる。配合量が0.01未満では解像度に対し効果は少なく、配合量が5質量部より多い場合には、感度が低下し、解像度、密着性が低下しやすくなる傾向がある。
【0046】
上記ヒンダードフェノール化合物としては、ペンタエリスリチルテトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}(日本チバガイギー社製 IRGANOX(登録商標)1010)、トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}(日本チバガイギー社製 IRGANOX(登録商標)245)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(日本チバガイギー社製 IRGANOX(登録商標)1076)等が挙げられる。
【0047】
ネガ型感光性樹脂層(B)には、必要に応じて、熱安定性や保存安定性を向上させる為のラジカル重合禁止剤、可塑剤、通常の染料や顔料等の添加剤を添加することができる。
【0048】
上記ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロールナフチルアミン塩化第一銅などが挙げられ、可塑剤としては、例えば、ジエチルフタレート、ジフェニルフタレート等のフタル酸エステル系化合物、p−トルエンスルホンアミド等のスルホンアミド系化合物、石油樹脂、ロジン、エチレングリコール−プロピレングリコールブロック共重合体などが挙げられる。
【0049】
通常の染料や顔料などの着色物質としては、例えば、フクシン、オーラミン塩基、クリスタルバイオレット、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ダイアモンドグリーンなどが挙げられる。また、該発色系染料として例えば、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン{ロイコクリスタルバイオレット}、トリス(4−ジエチルアミノ2−メチルフェニル)メタン{ロイコマラカイトグリーン}などが挙げられる。
【0050】
ネガ型感光性樹脂層(B)の乾燥後の厚みは、1〜35μmが好ましく、より好ましくは3〜25μmである。ネガ型感光性樹脂層の厚みが1μm未満では、製膜塗工が困難であり、厚みが35μmを超える場合には、解像度及び密着性が低下しやすくなる傾向がある。
【0051】
保護層(C)は、通常、厚みが30〜50μmであり、好ましくは35〜45μmである。保護層(C)の厚みが30〜50μmの範囲であれば、保護層に生じた保護層原材料の未溶解物の凸部が感光性樹脂層に転写して、感光性樹脂層に凹部ができることが少なくなり、ひいては、回路のかけや断線、ショートなどの欠陥を起こすことが少なくなる。
【0052】
保護層(C)は、中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm未満のフィルムであることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm以上であると感光性樹脂層と保護層の十分な密着性が得られないし、エアーボイドが発生しやすくなる。より好ましい中心線平均粗さ(Ra)は0.85μm以下である。
保護層(C)の表面粗さにおいては、最大高さ(Rmax)が10μm未満であることが好ましい。ここで中心線表面粗さ(Ra)及び最大高さ(Rmax)は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)で測定される中心線平均粗さ及び最大高さをいう。
【0053】
保護層(C)の具体的なフィルムとしては、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムやポリエステルフィルムあるいはシリコーン処理又はアルキッド処理により剥離性を向上させたポリエステルフィルム等が挙げられる。好ましくはポリエチレンフィルムが用いられる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
まず、支持体のヘイズ値及び保護層の中心線平均粗さの測定方法について説明する。
(イ)支持体のヘイズ値の測定
COLOR MEASURING SYSTEM Σ80(日本電色工業社製)を使用して、ヘイズ値を測定する。ヘイズ(Haze)値とは、濁度を表す値であり、ランプにより照射され、試料中を透過した全透過率Tと、試料中で散乱された光の透過率Dとにより、ヘイズ値H=D/T×100として求められる。これらは、JIS K 7105により規定されており、市販の濁度計により容易に測定可能である。
(ロ)保護層の中心線平均粗さ(Ra)の測定
原子間力顕微鏡EXPLORER SPM(Thermo Microscopes社製)を使用し、Si34製コンタクトAFM用プローブで測定モードをContact AFMに設定した。75μm2の測定エリアをプローブで300回往復させて中心線平均粗さ(Ra)を測定する。
次に、実施例及び比較例において用いた感光性樹脂組成物の組成を表1に示す。また、表1において略号(B−100〜D−21)で表した感光性樹脂組成物の構成成分の材料を表2に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
[実施例1,実施例2]
前記表1に示す組成1(実施例1)、組成2(実施例2)成分を混合し、感光性樹脂組成物の溶液を調製し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(AT301、16μm厚み、ヘイズ値0.2%(実測値)(帝人デュポンフィルム社製))に均一に塗布し、90℃の乾燥機中で1分乾燥して、厚さ5μmのネガ型感光性樹脂層を形成し、ネガ型感光性樹脂層の上にポリエチレンフィルム(T1−A742A、35μm厚み、Ra=0.065μm(実測値)(タマポリ社製))を張り合わせて感光性樹脂積層体を得た。
【0058】
銅箔厚みが12μmである電解銅箔フレキシブル基板(ニッカン工業製)を用い、前記感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルムを剥がしながら、該感光性樹脂層をホットロールラミネーター(旭化成製、AL−700,ラミネータ)を使用して、ロール温度105℃、ロール圧0.35MPa,ラミネート速度1m/分で積層した。
支持体及びネガ型感光性樹脂層を有する基板より、支持体を剥離し、投影露光機(ウシオ電機社製UX−2023SM)の基板セットステージに置いた。露光機のマスクホルダーに下記に示す項目を評価できるパターンを有するガラスクロムフォトマスクをセットし、投影レンズを介して、露光量100mJ/cm2で支持体を剥離してから10分後に露光した。
0.4質量%炭酸ソーダ水溶液を30℃で、スプレー圧が0.15MPaで20秒間スプレーすることにより、未露光部を除去し、現像を行った。
【0059】
[比較例1]
表1に示す組成2成分を混合した以外は、実施例1及び2と同様に感光性樹脂積層体を作製し、実施例1及び2と同様に感光性樹脂積層体をフレキシブル基板に積層した。
支持体及びネガ型感光性樹脂層を有する基板を、投影露光機(ウシオ電機社製UX−2023SM)の基板セットステージに置いた。露光機のマスクホルダーに実施例1及び2に用いたものと同じガラスクロムフォトマスクをセットし、投影レンズ及び支持体であるポリエチレンテレフタレートフイルムを介して、露光量100mJ/cm2で露光した。
ポリエチレンテレフタレートフイルムを除去し、0.4質量%炭酸ソーダ水溶液を30℃で、スプレー圧が0.15MPaで20秒間スプレーすることにより、未露光部を除去し、現像を行った。
【0060】
[比較例2]
表1に示す組成2成分を混合した以外は、実施例1及び2と同様に感光性樹脂積層体を作製し、実施例1及び2と同様に感光性樹脂積層体をフレキシブル基板に積層した。
支持体及びネガ型感光性樹脂層を有する基板を超高圧水銀ランプを有する露光機(HMW−801:オーク製作所製)を用い、実施例1及び2に用いたものと同じクロムガラスフォトマスクを支持体であるポリエチレンテレフタレートフイルム上に置き、クロムガラスフォトマスク及びポリエチレンテレフタレートフイルムを介して100mJ/cm2の露光量で露光した。
ポリエチレンテレフタレートフイルムを除去し、0.4質量%炭酸ソーダ水溶液を30℃で、スプレー圧が0.15MPaで20秒間スプレーすることにより、未露光部を除去し、現像を行った。
【0061】
実施例1、2及び比較例1、2の試料についての評価結果をまとめて表3に示す。
表3における評価項目の測定及び観察は、以下の方法により行った。
【0062】
(1)解像度
ライン/スペースが4μm/4μm〜100μm/100μmとなるクロムガラスフォトマスクを用いて露光し、現像して得られた硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスク幅を感光性樹脂の解像度とした。解像度は値が小さいほど解像度が高い。
【0063】
(2)密着性
ライン/スペースが4μm/300μm〜40μm/300μmとなるクロムガラスフォトマスクを用いて露光し、現像して得られた硬化レジストラインと基材とが密着した最小ライン幅を感光性樹脂の密着性とした。値が小さいほど密着性が高い。
【0064】
(3)パターン形状の観察
ライン/スペースが10μm/10μm、長さが20mmで、ラインが10本あるガラスクロムフォトマスクを通して露光し、現像して得られた硬化レジストラインのパターン形状を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、下記のようにランク分けした。
◎:ライン10本の上部表面に凹凸無し。サイドウォールの凹凸全く無し。
○:ライン10本の上部表面に凹凸無し。サイドウォールの凹凸ほとんど無し。
△:ライン10本の上部表面に凹凸有り。サイドウォールの凹凸少数見られる。
×:ライン10本の上部表面に凹凸有り。サイドウォールに凹凸多数見られる。
【0065】
【表3】

【0066】
上記の結果によれば、本発明の露光方法及び本発明の金属パターンの作製方法を用いると、従来法に比して、解像度、密着性及びパターン形状においてより優れたレジストパターンを得ることができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面又は両面に金属導体層を有する金属被覆絶縁板の金属被覆された面に、支持体(A)、厚みが1〜35μmであるネガ型感光性樹脂層(B)、及び保護層(C)を有する感光性樹脂積層体を、ネガ型感光性樹脂層(B)が該金属被覆絶縁板の金属被覆面と密着するようにラミネートして、フォトマスクを通して紫外線露光するに際し、露光の前に支持体を剥離した上で、フォトマスクの像をレンズを通して投影させることを特徴とする感光性樹脂層への露光方法。
【請求項2】
前記保護層(C)が、中心線平均粗さが0.1未満のフィルムであることを特徴とする請求項1記載の露光方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の露光方法に引き続き、アルカリ水溶液で現像することにより硬化レジストパターンを形成させ、レジストパターンで覆われていない金属被覆面の金属をエッチング液で除去するか、又は、レジストパターンで覆われていない金属被覆面に金属めっきを施すことを特徴とする金属配線パターンの作製方法。
【請求項4】
保護層(C)を剥がしながら、ネガ型感光性樹脂層(B)が該金属被覆絶縁板の金属被覆面と密着するようにラミネートしてネガ型感光性樹脂層が金属被覆面と密着するようにラミネートすることを特徴とする請求項3記載の金属配線パターンの作製方法。

【公開番号】特開2008−262231(P2008−262231A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188289(P2008−188289)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【分割の表示】特願2001−389414(P2001−389414)の分割
【原出願日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】