説明

感光性樹脂組成物、感光性樹脂転写フイルム及びフォトスペーサーの製造方法並びに液晶表示装置用基板、及び液晶表示装置

【課題】表示装置を構成するカラーフィルタ用として用いたとき、光照射した後に得られる画像形状が良好な感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】重合性化合物と架橋性のバインダーと下記一般式(I)で表される光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物であって、前記光重合開始剤を前記モノマーに対して4質量%以上12質量%以下含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置を構成するカラーフィルタ、スペーサー等に好適な感光性樹脂組成物、特に、液晶セルのセル厚の変動が表示ムラとなりやすい表示装置を構成するスペーサーの作製に好適な感光性樹脂組成物、感光性樹脂転写フイルム及びフォトスペーサーの製造方法、並びにこの方法により作製されたフォトスペーサーを備えた液晶表示装置用基板、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置は、高画質画像を表示する表示装置に広く利用されている。液晶表示装置は一般に、一対の基板間に所定の配向により画像表示を可能とする液晶層が配置されており、この基板間隔、すなわち液晶層の厚みを均一に維持することが画質を決定する要素の一つであり、そのために液晶層の厚みを一定に保持するためのスペーサーが配設されている。この基板の間の厚みは一般に「セル厚」と称され、セル厚は通常、前記液晶層の厚み、換言すれば、表示領域の液晶に電界をかけている2枚の電極間の距離を示すものである。
【0003】
スペーサーは、従来ビーズ散布により形成されていたが、近年では、感光性組成物を用いてフォトリソグラフィーにより位置精度の高いスペーサーが形成されるようになってきている。このような感光性組成物を用いて形成されたスペーサーは、フォトスペーサーと呼ばれている。
【0004】
感光性組成物を用いてパターニング、アルカリ現像、及びベークを経て作製されたフォトスペーサーについては、そのスペーサドットの圧縮強度が弱く、パネル形成時に塑性変形が大きくなる傾向を有している。高画質の画像表示には、これに起因して液晶層の厚みが設計値より小さくなる等して均一性が保持できない問題や、画像ムラを生ずるといった問題がないことが要求される。また、液晶表示装置の高精度化の点では、感光性組成物のアルカリ現像残渣が生じないことも重要である。
【0005】
上記に関連して、液晶層の厚さ(セル厚)を一定に保つためのスペーサー形成技術として、スペーサー形成用にアリル基を有する樹脂を用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、製造が容易で貯蔵安定性に優れたフォトスペーサー用の感光性組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、耐冷熱衝撃性に優れた組成物、スペーサーを透明基板上に設けられたブラックマトリクス上に形成する組成物も開示されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【特許文献1】特開2003−207787号公報
【特許文献2】特開2005−62620号公報
【特許文献3】特開2002−287354号公報
【特許文献4】特開2004−240335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、表示装置を構成するカラーフィルタ用として用いたとき、光照射した後に得られる画像形状が良好な感光性樹脂組成物、特に、フォトスペーサー形成用として用いたとき良好なテーパー形状を得ることができる好適な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
更に、本発明は、前記感光性樹脂組成物を用いた感光性樹脂転写フィルムを提供することを目的とする。
更に、本発明は、前記感光性樹脂組成物及び感光性樹脂転写フィルムを用いたフォトスペーサーの製造方法、該製造方法により製造されたフォトスペーサーを備えた液晶表示装置用基板及び該基板を備えた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、前記特定の光重合開始剤を用いたとき上記課題を解決しうることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
【0008】
<1> 重合性化合物と架橋性のバインダーと下記一般式(I)で表される光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物であって、前記光重合開始剤を前記モノマーに対して4質量%以上12質量%以下含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(I)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、下記一般式(I−A)又は(I−B)で示される基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルコキシ基を表す。Wはハロゲン原子を表す。X、Yはそれぞれ独立に、塩素原子又は臭素原子を表す。m、nは、それぞれ独立に、0、1又は2を表す。)
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(I−A)及び(I−B)中、R、R、Rは、それぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表す。)
【0013】
<2> 前記感光性樹脂組成物がスペーサー形成用であることを特徴とする上記<1>に記載の感光性樹脂組成物。
<3> 前記一般式(1)で表される光重合開始剤は、前記一般式(1)中のRが水素原子、m及びnは共に0、X及びYは共に塩素原子であり、R及びRが共に一般式(I−A)を表し、かつRが共にアルキル基であることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物。
【0014】
<4> 仮支持体上に、少なくとも感光性樹脂層を有する感光性樹脂転写フイルムであって、該感光性樹脂層が、上記<1>〜<3>の何れか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とする感光性樹脂転写フイルム。
<5> 上記<1>〜<3>の何れか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて、塗布することで支持体上に感光性樹脂層を形成する工程を有することを特徴とするフォトスペーサーの製造方法。
【0015】
<6> 上記<4>に記載の感光性樹脂転写フイルムを用いて、加熱及び/又は加圧により支持体上に感光性樹脂層を転写する工程を有することを特徴とするフォトスペーサーの製造方法。
<7> 上記<5>又は<6>に記載のフォトスペーサーの製造方法により製造したフォトスペーサーを備えたことを特徴とする液晶表示装置用基板。
<8> 上記<7>に記載の液晶表示装置用基板を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表示装置を構成するカラーフィルタ用として用いたとき、光照射した後に得られる画像形状が良好な感光性樹脂組成物、特に、フォトスペーサー形成用として用いたとき良好なテーパー形状を得ることができる好適な感光性樹脂組成物を提供することできる。
更に、本発明によれば、前記感光性樹脂組成物を用いた感光性樹脂転写フィルムを提供することできる。
更に、本発明によれば、前記感光性樹脂組成物及び感光性樹脂転写フィルムを用いたフォトスペーサーの製造方法、該製造方法により製造されたフォトスペーサーを備えた液晶表示装置用基板及び該基板を備えた液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、架橋性のバインダー(以下、「架橋性基を有する高分子化合物(A)」、単に「樹脂(A)」とも言う。)、重合性化合物(B)(以下、単に「モノマー」とも言う。)、光重合開始剤(C)(以下、「特定開始剤」ともいう。)を少なくとも含有する。また、必要に応じて、着色剤や界面活性剤などのその他の成分を用いて構成することができる。
前記感光性樹脂組成物は、フォトスペーサー用に特に好ましく用いられる。
以下、感光性樹脂組成物について、フォトスペーサーを主として説明するが、表示装置に用いられカラーフィルタ、ブラックマトリクス等にも用いることができる。
【0018】
−光重合開始剤−
本発明の感光性樹脂組成物は、良好な光硬化発現の観点から、下記一般式(I)で表される光重合開始剤(特定開始剤)を少なくとも1種含有する。更に、本発明の効果を妨げない範囲でその他の光重合開始剤を含有してもよい。
以下、一般式(1)で表される光重合開始剤について説明する。
【0019】
【化3】

【0020】
一般式(I)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、下記一般式(I−A)又は(I−B)で示される基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルコキシ基を表す。Wはハロゲン原子を表す。X、Yはそれぞれ独立に、塩素原子又は臭素原子を表す。m、nは、それぞれ独立に、0、1又は2を表す。
【0021】
上記一般式(I)中、上記アルキル基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数2〜10がより好ましく、炭素数3〜5が特に好ましい。
上記アリール基としては、炭素数6〜20が好ましく、炭素数6〜15がより好ましく、炭素数6〜10が特に好ましい。
上記アルコキシ基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数2〜10がより好ましく、炭素数3〜5が特に好ましい。
【0022】
上記一般式(I)中、上記アルキル基、アリール基、アルコキシ基は、さらに置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、フェニル基等のアリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、カルボアルコキシ基、カルボアリールオキシ基、アシル基、ニトロ基、ジアルキルアミノ基、スルホニル誘導体等が挙げられる。
【0023】
【化4】

【0024】
一般式(I−A)及び(I−B)中、R、R、Rは、それぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表す。
【0025】
一般式(I)において、RとRがそれらと結合している窒素原子と共に非金属原子からなるヘテロ環を形成してもよく、その場合、ヘテロ環としては下記に示されるものが挙げられる。
【0026】
【化5】

【0027】
一般式(I)で表される特定開始剤の具体例としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル〕−s−トリアジン、4−〔m−クロロ−p−N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−フロロ−p−N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−ブロモ−p−N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−クロロ−p−N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−フロロ−p−N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−ブロモ−p−N,N−ビス(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−クロロ−p−N,N−ビス(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−フロロ−p−N,N−ビス(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−ブロモ−p−N,N−ビス(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−クロロ−p−N,N−ビス(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、
【0028】
4−〔m−フロロ−p−N,N−ビス(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−ブロモ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−クロロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−フロロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、
【0029】
4−(o−ブロモ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−クロロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−フロロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−ブロモ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−クロロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−フロロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−クロロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−フロロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等、及び、フェニル部にハロゲン原子が2つ以上導入されたトリアジン等が挙げられる。
【0030】
これら特定開始剤は、分子内にラジカル発生部位とトリアジン骨格を有するものであり、好ましくは、中央に位置するフェニル環に、ハロゲン原子を2つ有するもの、或いは、臭素原子を有するものが好ましく挙げられる。
【0031】
特定開始剤は、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
感光性樹脂組成物における特定開始剤の含有量は、固形分換算で、0.1〜15.0質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜10.0質量%の範囲であり、この範囲において効率よく重合反応が進行し、得られた硬化膜の強度にも優れる。
【0032】
−他の光重合開始剤−
なお、感光性樹脂組成物においては、上記特定開始剤に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、これ以外の光重合開始剤を併用することができる。
ここで用いうる光重合開始剤は、光により分解し、後述する付加重合可能なエチレン性不飽和基をもつ化合物の重合を開始、促進する化合物であり、波長300〜500nmの領域に吸収を有するものであることが好ましい。
【0033】
光重合開始剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ビイミダゾール系化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物が挙げられる。
なかでも、高感度化の観点から、トリハロメチルトリアジン系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が最も好ましく、ビイミダゾール系化合物が最も好ましい。
【0034】
併用可能な光重合開始剤の含有量は、前記特定開始剤に対して、75質量%以下であることが好ましく、0〜50質量%の範囲であることがより好ましい。
また、特定開始剤と他の光重合開始剤との総量として、組成物の全固形分に対し0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜30質量%、特に好ましくは0.3〜20質量%である。この範囲で、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0035】
−増感剤−
これら特定開始剤には、増感剤を併用することができる。
本発明に用いることができる増感剤としては、特定開始剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。
また、増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ300nm(330nm)〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
増感剤の具体例としては、例えば、多核芳香族類(例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9,10−ジアルコキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、チオキサントン類(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、クロロチオキサントン)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、フタロシアニン類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)、ケトクマリン、フェノチアジン類、フェナジン類、スチリルベンゼン類、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン類、カルバゾール類、ポルフィリン、スピロ化合物、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーズケトンなどの芳香族ケトン化合物、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物などが挙げられる。
【0036】
このような増感剤に関しては、さらに、感光性樹脂組成物の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。
例えば、増感剤と、付加重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを、共有結合、イオン結合、水素結合等の方法により結合させることで、露光膜の高強度化や、露光後の膜からの特定増感剤の不要な析出抑制を行うことができる。
また、増感剤と前記光重合開始剤におけるラジカル発生能を有する部分構造(例えば、ハロゲン化アルキル、オニウム、過酸化物、ビイミダゾール、オニウム、ビイミダゾール等の還元分解性部位や、ボレート、アミン、トリメチルシリルメチル、カルボキシメチル、カルボニル、イミン等の酸化解裂性部位)との結合により、特に開始系の濃度の低い状態での感光性を著しく高めることができる。
【0037】
増感剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
増感剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分中、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.2質量%〜20質量%がより好ましい。
増感剤は、感光性樹脂組成物において着色剤を用いた場合着色剤の濃度が非常に高く、形成される着色パターン(感光層)の光の透過率が極端に低くなる場合、具体的には、これら増感剤を添加せずに形成した場合の感光層の365nmの光の透過率が10%以下となるような場合に添加することで、その効果が顕著に発揮される。
【0038】
―樹脂(A)―
本発明の感光性樹脂組成物において、樹脂(A)は架橋性のバインダーであり、スペーサーや着色画素等の積層体を形成した場合にバインダー成分としての機能を有するものである。
例えば、それ自体架橋性・重合性を有する、特開2003−131379の段落番号[0031]〜[0054]に記載の光により重合可能なアリル基を有する高分子樹脂(高分子物質)が好ましい例として挙げられる。
また、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの架橋性の極性基を有するポリマーが挙げられる。
【0039】
高分子物質は、目的に応じて適宜選択した単量体の単独重合体、複数の単量体からなる共重合体のいずれであってもよく、1種単独で用いる以外に、2種以上を併用するようにしてもよい。
側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーの例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
また、側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、また、この他にも水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく用いることができる。また、特に好ましい例としては、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や,ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。
【0040】
アリル基を有する高分子物質の単量体としては、アリル基を有する単量体、アリル基となり得る単量体、及びその他の単量体が挙げられる。特に制限はなく、目的に応じてその他の単量体を適宜選択することができる。これらには、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニル化合物、アリル基含有(メタ)アクリレート、等が挙げられる。尚、本明細書中において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを表す。
これら単量体は、1種単独で用いる以外に2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、トリルアクリレート、ナフチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、等が好適に挙げられる。
【0042】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも特に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシn−プロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシn−ブチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0043】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、等が好適に挙げられる。
【0044】
前記アリル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、2−メチルアリルアクリレート、クロチルアクリレート、クロルアリルアクリレート、フェニルアリルアクリレート、シアノアリルアクリレート、等が挙げられ、中でもアリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0045】
上記した高分子物質の中でも、アリル基含有(メタ)アクリレートをモノマーユニットとして少なくとも有する樹脂が好ましく、アリル基含有(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸及びアリル基非含有(メタ)アクリレートから選択されるモノマーとをモノマーユニットとして有する樹脂がより好ましい。
【0046】
前記高分子物質の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸(M)とアリル(メタ)アクリレート(M)との二元共重合樹脂〔好適な共重合比[モル比]はM:M=2〜90:10〜98〕や、(メタ)アクリル酸(M)とアリル(メタ)アクリレート(M)とベンジル(メタ)アクリレート(M)との三元共重合樹脂〔好適な共重合比[モル比]はM:M:M=5〜40:20〜90:5〜70〕などが挙げられる。
【0047】
前記高分子物質がアリル基を有する場合のアリル基含有モノマーの含有率としては、10モル%以上が好ましく、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは15〜90モル%、更に好ましくは20〜85モル%である。
【0048】
前記高分子物質の重量平均分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定値のポリスチレン換算値で5,000〜100,000が好ましく、8,000〜50,000がより好ましい。該重量平均分子量を5,000〜100,000の範囲内とすることで、膜強度を良化することができる。
【0049】
さらに、樹脂(A)は側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基:X(xモル%)と、酸性基を有する基:Y(yモル%)と、エチレン性不飽和基を有する基:Z(zモル%)を含有してなり、必要に応じてその他の基(L)(lモル%)を有していてもよい。
また、樹脂(A)中のひとつの基の中にX,Y,及びZが複数組み合わされていてもよい。
【0050】
―側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基:X―
前記「側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基」について説明する。
まず、側鎖に分岐を有する基としては、炭素原子数3〜12個の分岐状のアルキル基を示し、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、i−アミル基、t−アミル基、3−オクチル、t−オクチル等が挙げられる。これらの中でも、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基等が好ましく、さらにi−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が好ましい。
【0051】
次に側鎖に脂環構造を有する基としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基を示し、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等が好ましく、更にシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基等が好ましい。
【0052】
前記側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基を含有する単量体としては、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類である。
【0053】
前記側鎖に分岐構造を有する基を含有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸sec−iso−アミル、(メタ)アクリル酸2−オクチル、(メタ)アクリル酸3−オクチル、(メタ)アクリル酸t−オクチル等が挙げられ、その中でも、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等が好ましく、さらに好ましくは、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸t−ブチル等である。
【0054】
次に、前記側鎖に脂環構造を有する基を含有する単量体の具体例としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである。具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ−2,2,1−ヘプチル−2)、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸−1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ〔3,1,1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸−3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ〔4,1,0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸−2,2,5−トリメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、メタクリル酸フエンチル、メタクリル酸1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシルなどが好ましく、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチルが特に好ましい。
【0055】
―側鎖に酸性基を有する基:Y―
前記酸性基としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、スルホニル基、スルホンアミド基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。これらの中でも、現像性、及び硬化膜の耐水性が優れる点から、カルボキシ基、フェノール性水酸基であることが好ましい。
【0056】
前記側鎖に酸性基を有する基の単量体としては、特に制限はなく、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類である。
【0057】
前記側鎖に酸性基を有する基の単量体の具体例としては、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、α−シアノ桂皮酸、アクリル酸ダイマー、水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0058】
前記水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物に用いられる水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記環状酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0059】
前記市販品としては、東亜合成化学工業(株)製:アロニックスM−5300、アロニックスM−5400、アロニックスM−5500、アロニックスM−5600、新中村化学工業(株)製:NKエステルCB−1、NKエステルCBX−1、共栄社油脂化学工業(株)製:HOA−MP、HOA−MS、大阪有機化学工業(株)製:ビスコート#2100等が挙げられる。これらの中でも現像性に優れ、低コストである点で(メタ)アクリル酸等が好ましい。
【0060】
―側鎖にエチレン性不飽和基を有する基:Z―
前記「側鎖にエチレン性不飽和基」としては、特に制限はなく、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、エチレン性不飽和基と単量体との連結はエステル基、アミド基、カルバモイル基などの2価の連結基であれば特に制限はない。側鎖にエチレン性不飽和基を導入する方法は公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸性基を持つ基にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、ヒドロキシル基を持つ基にイソシアネート基を持つ(メタ)アクリレートを付加した付加する方法、イソシアネート基を持つ基にヒドロキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法などが挙げられる。
その中でも、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法が最も製造が容易であり、低コストである点で好ましい。
【0061】
前記エチレン性不飽和結合及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、これらを有すれば特に制限はないが、例えば、下記構造式(1)で表される化合物及び下記構造式(2)で表される化合物が好ましい。
【0062】
【化6】

【0063】
ただし、前記構造式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは有機基を表す。
【0064】
【化7】

【0065】
ただし、前記構造式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは有機基を表す。Wは4〜7員環の脂肪族炭化水素基を表す。
【0066】
前記構造式(1)で表される化合物及び構造式(2)で表される化合物の中でも、構造式(1)で表される化合物が好ましく、前記構造式(1)及び(2)において、L及びLが炭素数1〜4のアルキレン基のものがより好ましい。
【0067】
前記構造式(1)で表される化合物又は構造式(2)で表される化合物としては、特に制限はないが、例えば、以下の例示化合物(1)〜(10)が挙げられる。
【0068】
【化8】

―その他の単量体―
その他の単量体としては、特に制限はなく、例えば分岐および/または脂環構造をもたない(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルエーテル、二塩基酸無水物基、ビニルエステル基、炭化水素アルケニル基等を有する単量体などが挙げられる。
前記ビニルエーテル基としては、特に制限はなく、例えば、ブチルビニルエーテル基などが挙げられる。
【0069】
前記二塩基酸無水物基としては、特に制限はなく、例えば、無水マレイン酸基、無水イタコン酸基などが挙げられる。
前記ビニルエステル基としては、特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル基などが挙げられる。
前記炭化水素アルケニル基としては、特に制限はなく、例えば、ブタジエン基、イソプレン基などが挙げられる。
【0070】
前記樹脂(A)におけるその他の単量体の含有率としては、モル組成比が、0〜30mol%であることが好ましく、0〜20mol%であることがより好ましい。
【0071】
樹脂(A)の具体例としては、例えば、下記化合物P−1〜P−28で表される化合物が挙げられる。
【0072】
【化9】

【0073】
【化10】

【0074】
【化11】

【0075】
【化12】

【0076】
【化13】

【0077】
―製造法について―
前記樹脂(A)は、モノマーの(共)重合反応の工程とエチレン性不飽和基を導入する工程の二段階の工程から作られる。
まず、(共)重合反応は種々のモノマーの(共)重合反応によって作られ、特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、重合の活性種については、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合などを適宜選択することができる。これらの中でも合成が容易であり、低コストである点からラジカル重合であることが好ましい。また、重合方法についても特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、バルク重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などを適宜選択することができる。これらの中でも、溶液重合法であることがより望ましい。
【0078】
−分子量−
樹脂(A)として好適な前記共重合体の重量平均分子量は、7,000〜10万が好ましく、8,000〜8万が更に好ましく、9,000〜5万が特に好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、共重合体の製造適性、現像性の点で望ましい。
【0079】
−ガラス転移温度−
樹脂(A)として好適なガラス転移温度(Tg)は、40〜180℃であることが好ましく、45〜140℃であることはより好ましく、50〜130℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる。
【0080】
―酸 価−
樹脂(A)として好適な酸価はとりうる分子構造により好ましい範囲は変動するが、一般には20mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることはより好ましく、70〜130mgKOH/gであることが特に好ましい。酸価が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる。
【0081】
前記樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が40〜180℃であり、かつ重量平均分子量が7,000〜100,000であることが良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる点で好ましい。
更に、前記樹脂(A)の好ましい例は、好ましい前記分子量、ガラス転移温度(Tg)、及び酸価のそれぞれの組合せがより好ましい。
【0082】
前記樹脂(A)の前記各成分の共重合組成比については、ガラス転移温度と酸価を勘案して決定され、一概に言えないが、「側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基」は10〜70モル%が好ましく、15〜65モル%が更に好ましく、20〜60モル%が特に好ましい。側鎖に分岐および/または脂環構造を有する基が前記範囲内であると、良好な現像性が得られると共に、画像部の現像液耐性も良好である。
また、「側鎖に酸性基を有する基」は5〜70モル%が好ましく、10〜60モル%が更に好ましく、20〜50モル%が特に好ましい。側鎖に酸性基を有する基が前記範囲内であると、良好な硬化性、現像性が得られる。
また、「側鎖にエチレン性不飽和基を有する基」は10〜70モル%が好ましく、20〜70モル%が更に好ましく、30〜70モル%が特に好ましい。側鎖にエチレン性不飽和基を有する基が前記範囲内であると、顔料分散性に優れると共に、現像性及び硬化性も良好である。
【0083】
前記樹脂(A)の含有量としては、前記感光性樹脂組成物全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。樹脂(A)は後述のその他の樹脂を含有することができるが、樹脂(A)のみが好ましい。
【0084】
−その他の樹脂−
前記樹脂(A)と併用することができる樹脂としては、アルカリ性水溶液に対して膨潤性を示す化合物が好ましく、アルカリ性水溶液に対して可溶性である化合物がより好ましい。
アルカリ性水溶液に対して膨潤性又は溶解性を示す樹脂としては、例えば、酸性基を有するものが好適に挙げられ、具体的には、エポキシ化合物にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物(エポキシアクリレート化合物)、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体、エポキシアクリレート化合物と、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体との混合物、マレアミド酸系共重合体、などが好ましい。
前記酸性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、などが挙げられ、これらの中でも、原料の入手性などの観点から、カルボキシル基が好ましく挙げられる。
【0085】
−樹脂(A)とその他の樹脂の比率―
前記樹脂(A)と併用することができる樹脂との合計の含有量としては、前記感光性樹脂組成物全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。該固形分含有量が、5質量%未満であると、後述する感光層の膜強度が弱くなりやすく、該感光層の表面のタック性が悪化することがあり、70質量%を超えると、露光感度が低下することがある。なお、前記含有量は、固形分含有量のことを示している。
【0086】
―重合性化合物(B)、その他の成分―
本発明において、上記以外の、重合性化合物(B)、光重合開始剤(C)、その他の成分として公知の組成物を構成する成分を好適に用いることができ、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号[0010]〜[0020]に記載の成分や、特開2006−64921号公報の段落番号[0027]〜[0053]に記載の成分が挙げられる。
【0087】
前記樹脂(A)との関係において、重合性化合物(B)の樹脂(A)に対する質量比率((B)/(A)比)が0.3〜1.5であることが好ましく、0.4〜1.4であることはより好ましく、0.5〜1.2であることが特に好ましい。(B)/(A)比が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる。
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物には、カラーフィルタ用途に好適な従来公知の種々の顔料を、目的に応じて1種又は2種以上選択して用いることができる。
【0089】
(着色顔料)
本発明の感光性樹脂組成物には、カラーフィルタ用途に好適な、従来公知の種々の顔料を、目的に応じて1種又は2種以上選択して併用することができる。
本発明に係る感光性樹脂組成物に用いることができる顔料としては、従来公知の種々の無機顔料または有機顔料を用いることができる。また、無機顔料、有機顔料のいずれであっても、形成された感光性樹脂組成物が高光透過率であることが好ましいことを考慮すれば、なるべく細かい粒径の顔料を使用することが好ましく、ハンドリング性をも考慮すると、上記顔料の平均粒子径は、0.01μm〜0.1μmが好ましく、0.01μm〜0.05μmがより好ましい。また、上記無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物を挙げることができ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、および前記金属の複合酸化物を挙げることができる。
【0090】
有機顔料としては、例えば、
C.I.ピグメント イエロー 11, 24, 31, 53, 83, 93, 99, 108, 109, 110, 138, 139, 147, 150, 151, 154, 155, 167, 180, 185, 199, ;
C.I.ピグメント オレンジ36, 38, 43, 71;
C.I.ピグメント レッド81, 105, 122, 149, 150, 155, 171, 175, 176, 177,209, 220, 224, 242, 254, 255, 264, 270;
C.I.ピグメント バイオレット 19, 23, 32, 39;
C.I.ピグメント ブルー 1, 2, 15, 15:1, 15:3, 15:6, 16, 22, 60, 66;
C.I.ピグメント グリーン 7, 36, 37;
C.I.ピグメント ブラウン 25, 28;
C.I.ピグメント ブラック 1, 7;
カーボンブラック等を挙げることができる。
【0091】
本発明では、特に顔料の構造式中に塩基性のN原子をもつものを好ましく用いることができる。これら塩基性のN原子をもつ顔料は本発明の組成物中で良好な分散性を示す。その原因については十分解明されていないが、感光性重合成分と顔料との親和性の良さが影響しているものと推定される。
【0092】
本発明において好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
【0093】
C.I.ピグメント イエロー 11, 24, 108, 109, 110, 138, 139, 150, 151, 154, 167, 180, 185,
C.I.ピグメント オレンジ36, 71,
C.I.ピグメント レッド 122, 150, 171, 175, 177, 209, 224, 242, 254, 255, 264,
C.I.ピグメント バイオレット 19, 23, 32,
C.I.ピグメント ブルー 15:1, 15:3, 15:6, 16, 22, 60, 66,
C.I.ピグメント ブラック 1
【0094】
これら有機顔料は、単独もしくは色純度を上げるため種々組合せて用いることができる。上記組合せの具体例を以下に示す。例えば、赤の顔料として、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料単独またはそれらの少なくとも一種と、ジスアゾ系黄色顔料、イソインドリン系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料またはペリレン系赤色顔料と、の混合などを用いることができる。例えば、アントラキノン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド177が挙げられ、ペリレン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド155、C.I.ピグメントレッド224が挙げられ、ジケトピロロピロール系顔料としては、C.I.ピグメントレッド254が挙げられ、色再現性の点でC.I.ピグメントイエロー139との混合が好ましい。また、赤色顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:50が好ましい。100:4以下では400nmから500nmの光透過率を抑えることが困難で色純度を上げることが出来ない場合がある。また100:51以上では主波長が短波長よりになり、NTSC目標色相からのずれが大きくなる場合がある。特に、上記質量比としては、100:10〜100:30の範囲が最適である。尚、赤色顔料同士の組み合わせの場合は、色度に併せて調整することができる。
【0095】
また、緑の顔料としては、ハロゲン化フタロシアニン系顔料を単独で、または、これとジスアゾ系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料、アゾメチン系黄色顔料若しくはイソインドリン系黄色顔料との混合を用いることができる。例えば、このような例としては、C.I.ピグメントグリーン7、36、37とC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180またはC.I.ピグメントイエロー185との混合が好ましい。緑顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:150が好ましい。上記質量比が100:5未満では400nm〜450nmの光透過率を抑えることが困難となり色純度を上げることが出来ない場合がある。また100:150を越えると主波長が長波長よりになりNTSC目標色相からのずれが大きくなる場合がある。上記質量比としては100:30〜100:120の範囲が特に好ましい。
【0096】
青の顔料としては、フタロシアニン系顔料を単独で、若しくはこれとジオキサジン系紫色顔料との混合を用いることができる。例えばC.I.ピグメントブルー15:6とC.I.ピグメントバイオレット23との混合が好ましい。青色顔料と紫色顔料との質量比は、100:0〜100:30が好ましく、より好ましくは100:10以下である。
【0097】
また、ブラックマトリックス用の顔料としては、前記黒色顔料以外のカーボン顔料、チタンカーボン、酸化鉄、酸化チタン単独または混合が用いられ、前記黒色顔料とチタンカーボンとの組合せが好ましい。また、黒色顔料とチタンカーボンとの質量比は、100:0〜100:60の範囲が好ましい。100:61以上では、分散安定性が低下する場合がある。
【0098】
本発明における顔料は、平均粒径r(単位nm)は、20≦r≦300、好ましくは125≦r≦250、特に好ましくは30≦r≦200を満たすことが望ましい。このような平均粒径rの顔料を用いることにより、高コントラスト比であり、かつ高光透過率の赤色および緑色の画素を得ることができる。ここでいう「平均粒径」とは、顔料の一次粒子(単微結晶)が集合した二次粒子についての平均粒径を意味する。
また、本発明において使用しうる顔料の二次粒子の粒径分布(以下、単に「粒径分布」という。)は、(平均粒径±100)nmに入る二次粒子が全体の70質量%以上、好ましくは80質量%以上であることが望ましい。
【0099】
<顔料分散剤>
本発明では着色剤として顔料を用いているため、公知の顔料分散剤を併用することができる。顔料分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、および、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造からさらに直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0100】
高分子分散剤は顔料の表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
【0101】
本発明に用いうる顔料分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050、4010、4165(ポリウレタン系)、EFKA4330、4340(ブロック共重合体)、4400、4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル者製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」等が挙げられる。
【0102】
前記感光性樹脂組成物における着色顔料の含有量は、該組成物を構成する全固形分に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0103】
―微粒子(D)―
前記感光性樹脂組成物において、微粒子を添加することが好ましい。前記微粒子(D)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、特開2003−302639号公報[0035]〜[0041]に記載の体質顔料が好ましく、中でも良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られるという観点からコロイダルシリカが好ましい。
【0104】
前記微粒子(D)の平均粒子径は、高い力学強度を有するフォトスペーサーが得られるという観点から、5〜50nmであることが好ましく、10〜40nmであることがより好ましく、15〜30nmであることが特に好ましい。
【0105】
また、前記微粒子(D)の含有量は、高い力学強度を有するフォトスペーサーが得られるという観点から、本発明における感光性樹脂組成物中の全固形分に対する質量比率が5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが特に好ましい。
【0106】
[パターニング工程]
本発明におけるパターニング工程は、支持体上に形成された感光性樹脂層を露光及び現像してパターニングする。パターニング工程の具体例としては、特開2006−64921号公報の段落番号[0071]〜[0077]に記載の形成例や、特開2006−23696号公報の段落番号[0040]〜[0051]に記載の工程などが、本発明においても好適な例として挙げられる。
【0107】
<液晶表示装置用基板>
本発明の液晶表示装置用基板は、前記本発明のフォトスペーサーの製造方法により得られたフォトスペーサーを備えたものである。フォトスペーサーは、支持体上に形成されたブラックマトリクス等の表示用遮光部の上やTFT等の駆動素子上に形成されることが好ましい。また、ブラックマトリクス等の表示用遮光部やTFT等の駆動素子とフォトスペーサーとの間にITO等の透明導電層(透明電極)やポリイミド等の液晶配向膜が存在していてもよい。
【0108】
例えば、フォトスペーサーが表示用遮光部や駆動素子の上に設けられる場合、該支持体に予め配設された表示用遮光部(ブラックマトリクスなど)や駆動素子を覆うようにして、例えば感光性樹脂転写材料の感光性樹脂層を支持体面にラミネートし、剥離転写して感光性樹脂層を形成した後、これに露光、現像、加熱処理等を施してフォトスペーサーを形成することによって、本発明の液晶表示装置用基板を作製することができる。
本発明の液晶表示装置用基板には更に、必要に応じて赤色(R)、青色(B)、緑色(G)3色等の着色画素が設けられていてもよい。
【0109】
<液晶表示素子>
前記本発明の液晶表示装置用基板を設けて液晶表示素子を構成することができる。液晶表示素子の1つとして、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段(単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式を含む。)を少なくとも備えたものが挙げられる。
【0110】
この場合、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されているカラーフィルタ基板として構成できる。このカラーフィルタ基板には、高さ均一で変形回復性に優れたフォトスペーサーが設けられるため、該カラーフィルタ基板を備えた液晶表示素子は、カラーフィルタ基板と対向基板との間にセルギャップムラ(セル厚変動)の発生が抑えられ、色ムラ等の表示ムラの発生を効果的に防止することができる。これにより、作製された液晶表示素子は鮮やかな画像を表示できる。
【0111】
また、液晶表示素子の別の態様として、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段とを少なくとも備え、前記液晶駆動手段がアクティブ素子(例えばTFT)を有し、かつ一対の基板間が高さ均一で変形回復性に優れたフォトスペーサーにより所定幅に規制して構成されたものである。
この場合も、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されたカラーフィルタ基板として構成されている。
【0112】
本発明において使用可能な液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、強誘電液晶が挙げられる。
また、前記カラーフィルタ基板の前記画素群は、互いに異なる色を呈する2色の画素からなるものでも、3色の画素、4色以上の画素からなるものであってもよい。例えば3色の場合、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの色相で構成される。RGB3色の画素群を配置する場合には、モザイク型、トライアングル型等の配置が好ましく、4色以上の画素群を配置する場合にはどのような配置であってもよい。カラーフィルタ基板の作製は、例えば2色以上の画素群を形成した後既述のようにブラックマトリックスを形成してもよいし、逆にブラックマトリックスを形成した後に画素群を形成するようにしてもよい。RGB画素の形成については、特開2004−347831号公報等を参考にすることができる。
【0113】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示装置用基板を設けて構成されたものである。また、本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示素子を設けて構成されたものである。すなわち、互いに向き合うように対向配置された一対の基板間を既述のように、本発明のフォトスペーサーの製造方法により作製されたフォトスペーサーで所定幅に規制し、規制された間隙に液晶材料を封入(封入部位を液晶層と称する。)して構成されており、液晶層の厚さ(セル厚)が所望の均一厚に保持されるようになっている。
【0114】
液晶表示装置における液晶表示モードとしては、STN型、TN型、GH型、ECB型、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、VA型、IPS型、OCB型、ASM型、その他種々のものが好適に挙げられる。中でも、本発明の液晶表示装置においては、最も効果的に本発明の効果を奏する観点から、液晶セルのセル厚の変動により表示ムラを起こし易い表示モードが望ましく、セル厚が2〜4μmであるVA型表示モード、IPS型表示モード、OCB型表示モードに構成されるのが好ましい。
【0115】
本発明の液晶表示装置の基本的な構成態様としては、(a)薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動素子と画素電極(導電層)とが配列形成された駆動側基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、(b)駆動基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、等が挙げられ、本発明の液晶表示装置は、各種液晶表示機器に好適に適用することができる。
【0116】
液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、側工業調査会、1994年発行)」に記載がある。本発明の液晶表示装置には、本発明の液晶表示素子を備える以外に特に制限はなく、例えば前記「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載された種々の方式の液晶表示装置に構成することができる。中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置を構成するのに有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)、1996年発行)」に記載がある。
【0117】
本発明の液晶表示装置は、既述の本発明の液晶表示素子を備える以外は、電極基板、偏光フイルム、位相差フイルム、バックライト、スペーサー.視野角補償フイルム、反射防止フイルム、光拡散フイルム、防眩フイルムなどの様々な部材を用いて一般的に構成できる。これら部材については、例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島健太郎、(株)シーエムシー、1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉、(株)富士キメラ総研、2003等発行)」に記載されている。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
【0119】
(実施例1):転写法
−スペーサー用感光性転写フイルムの作製−
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体(PET仮支持体)上に、下記処方Aからなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させ、乾燥層厚6.0μmの熱可塑性樹脂層を形成した。
【0120】
〔熱可塑性樹脂層用塗布液の処方A〕
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(=55/11.7/4.5/28.8[モル比]、重量平均分子量90,000) … 25.0部
・スチレン/アクリル酸共重合体 … 58.4部
(=63/37[モル比]、重量平均分子量8,000)
・2,2−ビス〔4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン
… 39.0部
・界面活性剤1(メガファックF−780−F、大日本インキ化学工業(株)製) … 10.0部
・メタノール … 90.0部
・1−メトキシ−2−プロパノール … 51.0部
・メチルエチルケトン … 700部
【0121】
次に、形成した熱可塑性樹脂層上に、下記処方Bからなる中間層用塗布液を塗布、乾燥させて、乾燥層厚1.5μmの中間層を積層した。
【0122】
〔中間層用塗布液の処方B〕
・ポリビニルアルコール … 3.22部
(PVA−205、鹸化率80%、(株)クラレ製)
・ポリビニルピロリドン … 1.49部
(PVP K−30、アイエスピー・ジャパン株式会社製)
・メタノール … 42.3部
・蒸留水 … 524部
【0123】
次に、形成した中間層上に更に、下記表1に示す処方1からなる感光性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させて、乾燥層厚3.9μmの感光性樹脂層を積層した。
【0124】
以上のようにして、PET仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層の積層構造(3層の合計層厚は11.6μm)に構成した後、感光性樹脂層の表面に更に、カバーフィルムとして厚み12μmのポリプロピレン製フィルムを加熱・加圧して貼り付け、スペーサー用感光性転写フイルム(1)を得た。
【0125】
【表1】

【0126】
(CHMA/GMA/MAA(シクロヘキシルメタクリレート/グリシジルメタクリレート/メタクリル酸)のモル比=30:40:30)で表される樹脂溶液の調製)
反応容器中に1−メトキシ−2−プロパノール(MMPGAC、ダイセル化学工業(株)製) 13.56部をあらかじめ加え90℃に昇温し、シクロヘキシルメタクリレート 8.24部、メタクリル酸 9.84部、アゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V−601) 1部、及び1−メトキシ−2−プロパノール 13.56部からなる混合溶液を窒素ガス雰囲気下、90℃の反応容器中に2時間かけて滴下した。滴下後4時間反応させて、アクリル樹脂溶液を得た。
次いで、前記アクリル樹脂溶液に、ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.0415部、及びテトエチルアンモニウムブロマイド 0.068部を加えた後、グリシジルメタクリレート 9.28部を2時間かけて滴下した。滴下後、空気を吹き込みながら90℃で4時間反応させ後、固形分濃度が45%になるように溶媒を添加することにより調製し、下記化合物P(x:y:z=30:30:40(モル比))を含む樹脂溶液(固形分酸価;100mgKOH/g、Mw;18,000、MMPGAC 45%溶液)を得た。
なお、前記化合物P1で表される樹脂の分子量Mwは、重量平均分子量のことを示し、前記分子量の測定方法としては、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて測定した。
【0127】
【化14】

【0128】
【化15】

【0129】
−カラーフィルタ基板(本発明に係る支持体)の作製−
特開2005−3861号公報の段落番号[0084]〜[0095]に記載の方法でブラックマトリクス、R画素、G画素、B画素を有するカラーフィルタを作製した。次いで、カラーフィルタ基板のR画素、G画素、及びB画素並びにブラックマトリクスの上に更に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0130】
−フォトスペーサーの作製−
得られたスペーサー用感光性転写フイルム(1)のカバーフィルムを剥離し、露出した感光性樹脂層の表面を、上記で作製したITO膜がスパッタ形成されたカラーフィルタ基板のITO膜上に重ね合わせ、ラミネーターLamicII型〔(株)日立インダストリイズ製〕を用いて、線圧100N/cm、130℃の加圧・加熱条件下で搬送速度2m/分にて貼り合わせた。その後、PET仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥離除去し、感光性樹脂層を熱可塑性樹脂層及び中間層と共に転写した(樹脂層形成工程)。
【0131】
次に、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、マスク(画像パターンを有する石英露光マスク)と、該マスクと熱可塑性樹脂層とが向き合うように配置したカラーフィルタ基板とを略平行に垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂層の中間層に接する側の表面との間の距離を40μmとし、マスクを介して熱可塑性樹脂層側から露光量100mJ/cmにてプロキシミティー露光した。
【0132】
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30質量%含有、商品名:T−PD2、富士写真フイルム株式会社製を、純水で12倍(T−PD2を1質量部と純水を11質量部の割合で混合)に希釈した液)を30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し熱可塑性樹脂層と中間層を除去した。引き続き、この基板上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水をシャワーにより10秒間吹き付け、純水シャワー洗浄し、エアを吹きかけて基板上の液だまりを減らした。
【0133】
引き続き炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5質量%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士写真フイルム株式会社製を純水で5倍に希釈した液)を用い、29℃30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し感光性樹脂層を現像しパターニング画像を得た。
【0134】
引き続き洗浄剤(商品名:T−SD3 富士写真フイルム株式会社製)を純水で10倍に希釈して用い、33℃20秒、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーで吹きかけ、更にナイロン毛を有す回転ブラシにより形成された画像を擦って残渣除去を行い、スペーサーパターンを得た(パターニング工程)。
【0135】
また、露光の際に露光量を10mJから100mJまで10mJおきにふって、パターニングされたフォトスペーサーの形状、現像工程における脱落の有無を確認して、感光性樹脂層を硬化するのに最低限必要な露光量を調べた。露光量が必要量に満たないときは、フォトスペーサーが脱落したり、形や大きさが不揃いになった。感光性樹脂層を硬化するのに最低限必要な露光量は40mJ/cmであった。
【0136】
次いで、Hgランプにより、フォトスペーサーを形成した面(感光性樹脂層の形成された面;表)から300mJ/cmでポスト露光を行った。このとき、フォトスペーサーを形成した面とは反対の面(感光性樹脂層の形成された面とは反対の面;裏)の露光量は0mJ/cmであった。
【0137】
次に、スペーサーパターンが設けられたカラーフィルタ基板を、230℃下で44分間加熱処理を行ない(熱処理工程)、フォトスペーサーを作製した。
得られたスペーサーパターンは、直径24μm、平均高さ3.7μmの円柱状であった。尚、得られたフォトスペーサーの任意の1000個の各々について、三次元表面構造解析顕微鏡(メーカー:ZYGO Corporation、型式:New View 5022)を用いてITOの透明電極形成面からの最も高い位置を測定し、その平均をフォトスペーサーの平均高さとした。
【0138】
<液晶表示装置の作製>
別途、対向基板としてガラス基板を用意し、上記で得られたカラーフィルタ基板の透明電極上及び対向基板上にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
【0139】
その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリックス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。
【0140】
次いで、赤色(R)LEDとしてFR1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、緑色(G)LEDとしてDG1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、青色(B)LEDとしてDB1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)を用いてサイドライト方式のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置とした。
【0141】
[比較例1]
表1の処方1からなる感光性樹脂層用塗布液に代えて、表1の処方2からなる感光性樹脂層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にしてフォトスペーサー及び液晶表示装置を得た。
【0142】
(実施例2):塗布法
−フォトスペーサーの作製(液レジ法)−
実施例1で作製したITO膜がスパッタ形成されたカラーフィルタ基板のITO膜上に、スリット状ノズルを有するガラス基板用コーターMH−1600(エフ・エー・エス・アジア社製)にて前記表1に示す処方1からなる感光性樹脂組成物層用塗布液を塗布した。引き続き、真空乾燥機VCD(東京応化社製)を用いて30秒間溶媒の一部を乾燥させて塗布膜の流動性をなくした後、120℃で3分間プリベークして膜厚3.9μmの感光性樹脂組成物層を形成した(層形成工程)。
続いて、実施例1と同様のパターニング工程及び熱処理工程により、カラーフィルタ基板上にフォトスペーサーを作製した。但し、露光量は300mJ/cm、KOH系現像液による現像は23℃、60秒間とした。得られたスペーサーパターンは、直径24μm、平均高さ3.7μmの円柱状であった。
フォトスペーサーの作製後、このカラーフィルタ基板を用い、実施例1と同様にして、本発明のPVAモード液晶表示装置を作製した。
【0143】
[評価]
得られたスペーサ付き基板を、基板の斜め上方向からSEM(3000倍)で観察し、スペーサーの断面形状を確認した。良好な形状は順テーパーを示す。
【0144】
【表2】

【0145】
上記表1から明らかな通り、本発明に開始剤Aを用いた実施例は得られたスペーサー断面形状は順テーパーを示し良好であることが判った。一方、開始剤Bを用いた比較例は、断面形状が逆テーパーとなり劣ることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と架橋性のバインダーと下記一般式(I)で表される光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物であって、前記光重合開始剤を前記モノマーに対して4質量%以上12質量%以下含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(I)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、下記一般式(I−A)又は(I−B)で示される基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルコキシ基を表す。Wはハロゲン原子を表す。X、Yはそれぞれ独立に、塩素原子又は臭素原子を表す。m、nは、それぞれ独立に、0、1又は2を表す。)
【化2】

(一般式(I−A)及び(I−B)中、R、R、Rは、それぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項2】
前記感光性樹脂組成物がスペーサー形成用であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(I)で表される光重合開始剤は、前記一般式(I)中のRが水素原子、m及びnは共に0、X及びYは共に塩素原子であり、R及びRが共に一般式(I−A)を表し、かつRが共にアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
仮支持体上に、少なくとも感光性樹脂層を有する感光性樹脂転写フイルムであって、該感光性樹脂層が、請求項1〜3の何れか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とする感光性樹脂転写フイルム。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて、塗布することで支持体上に感光性樹脂層を形成する工程を有することを特徴とするフォトスペーサーの製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の感光性樹脂転写フイルムを用いて、加熱及び/又は加圧により支持体上に感光性樹脂層を転写する工程を有することを特徴とするフォトスペーサーの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のフォトスペーサーの製造方法により製造したフォトスペーサーを備えたことを特徴とする液晶表示装置用基板。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶表示装置用基板を備えたことを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2008−216801(P2008−216801A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56196(P2007−56196)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】