説明

感光性樹脂組成物及びそれに用いる感光性樹脂の製造方法

【課題】ナフテン酸クロムのようなクロム化合物を含まず、クロム化合物を合成触媒として用いたものと同等以上の熱安定性及び現像管理幅を有する感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)三価の有機リン化合物と質量基準で該三価の有機リン化合物の少なくとも4倍のナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種との存在下で、多官能エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを反応させ、更に多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)光重合開始剤並びに(D)反応性希釈剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、クロム化合物を含まず、紫外線露光に対し高感度であり、得られた塗膜が良好な物性を有し、希アルカリにより現像可能な感光性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種プリント配線板のソルダーレジストインクとしては、希アルカリ現像型の液状ソルダーフォトレジストインクが広く用いられている。希アルカリ現像型の感光性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート樹脂の水酸基に酸無水物を反応させて得られる酸ペンダント型エポキシアクリレート樹脂が知られている。こうした酸ペンダント型エポキシアクリレート樹脂の合成触媒として、例えば、特許文献1では、ナフテン酸リチウム、ナフテン酸クロム、ナフテン酸ジルコニウム等のカルボン酸の金属塩を用いることが提案されており、これらの中でも熱安定性及び現像管理幅が特に優れるという点でナフテン酸クロムが多用されてきた。ところが、昨今の環境問題に対する意識の高まりや現像後の廃液処理の煩雑さの点からみて、ナフテン酸クロムのようなクロム化合物を合成触媒として使用することは好ましくない。そこで、例えば、特許文献2には、有機リン化合物を合成触媒として使用し、所定の条件下で多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とを反応させ、更に酸無水物を反応させて得られる感光性樹脂が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−290428号公報
【特許文献2】特開2005−41958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載される感光性樹脂は、最近のソルダーレジストインクに要求されるような熱安定性及び現像管理幅を満足するものではなく、未だ改良の余地がある。
従って、本発明は、ナフテン酸クロムのようなクロム化合物を含まず、クロム化合物を合成触媒として用いたものと同等以上の熱安定性及び現像管理幅を有する感光性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記した問題点を解消すべく鋭意検討した結果、三価の有機リン化合物と質量基準で該三価の有機リン化合物の少なくとも4倍のナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種との存在下で、多官能エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを反応させ、更に多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性樹脂を配合した感光性樹脂組成物が上記の目的に合致することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)三価の有機リン化合物と質量基準で該三価の有機リン化合物の少なくとも4倍のナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種との存在下で、多官能エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを反応させ、更に多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)光重合開始剤並びに(D)反応性希釈剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。
また、本発明は、三価の有機リン化合物と質量基準で該三価の有機リン化合物の少なくとも4倍のナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種との存在下で、多官能エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを反応させる第一工程と、第一工程で得られた生成物に多塩基酸無水物を反応させる第二工程とを含むことを特徴とする感光性樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ナフテン酸クロムのようなクロム化合物を含まず、クロム化合物を合成触媒として用いたものと同等以上の熱安定性及び現像管理幅を有する感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物における(A)成分は、三価の有機リン化合物とナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種との存在下で、多官能エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを反応させ、更に多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性樹脂である。
【0008】
本発明の(A)成分の物性は、合成時に使用する触媒の影響が大きく、現像管理幅も触媒の影響を受ける傾向にある。また、異なる特性を持つ触媒を併用した場合、それぞれの短所が出る傾向にあるが、本発明者らは、三価の有機リン化合物をナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種と特定の質量割合で併用した場合、予想に反し、クロム系触媒を用いた場合と同等の物性が得られることを見出した。
【0009】
触媒の使用量は、多官能エポキシ樹脂及び不飽和一塩基酸の総量100質量部に対して、好ましくは、三価の有機リン化合物とナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種との総量が1.2質量部〜6.0質量部となる量である。三価の有機リン化合物とナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種との総量が少な過ぎると、反応触媒として十分に機能しない場合があり、総量が多過ぎると、得られる感光性樹脂の熱安定性が低下する傾向がある。また、ナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種は、質量基準で、三価の有機リン化合物の少なくとも4倍使用する必要があり、4倍〜6倍使用することが好ましい。ナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種の使用量が三価の有機リン化合物の4倍未満であると、多官能エポキシ化合物と不飽和一塩基酸との反応が著しく遅く、場合によっては反応が進行しない。また、ナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種が多過ぎても、使用量に見合った効果はなく経済的でない。
【0010】
本発明で使用される多官能エポキシ化合物としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAノボラック型、環状脂肪族エポキシ樹脂、複素環型などのエポキシ樹脂及びこれらに臭素原子や塩素原子等のハロゲン原子を導入したもの等が挙げられる。これらの中で、特に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好適である。
【0011】
本発明で使用される不飽和一塩基酸としては、1個のカルボキシル基と1個以上の重合性不飽和基を有する一塩基酸であればよく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビタン酸、アクリル酸ダイマー等が挙げられる。これらの中で、特に、高い活性エネルギー光硬化性を得るという点から、アクリル酸の使用が好ましい。これらの不飽和一塩基酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
これら不飽和一塩基酸は、多官能エポキシ化合物のエポキシ基1.0当量に対して、0.9当量〜1.1当量反応させるのが好ましい。不飽和一塩基酸の割合が0.9当量未満であると、保存安定性が悪くなったり、合成時にゲル化等の問題が起こる場合があり、一方、1.1当量を越えると、臭気が発生したり、耐熱性が低下する傾向がある。
【0013】
本発明で使用する多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物が挙げられる。これらの中で、特に、電食性に優れるという点から、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸の使用が好ましい。
【0014】
これら多塩基酸無水物の使用量は、多官能エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを反応させて得られた生成物の水酸基1.0モルに対して0.3モル〜0.8モルとなる割合であることが好ましく、0.4モル〜0.7モルの割合で反応させることが更に好ましい。多塩基酸無水物の使用量が0.3モル未満であると、十分なアルカリ現像性が得られない場合があり、一方、0.8モルを超えると、硬化塗膜の電気特性等が低下する傾向がある。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物における(B)成分であるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール−クレゾールノボラック共縮合型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂あるいはそれらのハロゲン化エポキシ化合物、トリフェニロールメタン型エポキシ樹脂、アルキル置換トリフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の多官能フェノールにエピクロルヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂、多官能ヒドロキシナフタレン類エピクロルヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂、シリコーン変成エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変成エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと一級又は二級アミンとの反応によって得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート等の複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
これらエポキシ樹脂の配合量は、感光性樹脂100質量部に対して、好ましくは3質量部〜100質量部、更に好ましくは6質量部〜75質量部である。エポキシ樹脂の配合量が3質量部未満であると、感光性樹脂中のカルボキシル基が実質的に反応する量に満たないため、耐水性、耐アルカリ性、電気特性が低下する傾向があり、一方、100質量部を超えると、未反応のエポキシ基を有する線状重合体が生成するため、耐熱性、耐溶剤性が不十分となる場合がある。
【0017】
また、エポキシ樹脂の密着性、耐薬品性、耐熱性等をより向上させるために、エポキシ硬化剤を併用することが好ましい。このようなエポキシ硬化剤としては、イミダゾール誘導体、フェノール誘導体、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド誘導体、メラミン、メラミン樹脂、ヒドラジド誘導体、アミン類、酸無水物等が挙げられる。これらのエポキシ硬化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エポキシ硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、硬化剤の活性水素量が0.5モル〜1.2モルとなる割合であることが好ましい。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物における(C)成分である光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン及びその誘導体、ベンジル、ベンジルジメチルケタール等のベンジル及びその誘導体、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフィル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン及びその誘導体、2−メチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン等のアントラキノン及びその誘導体、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン及びその誘導体、ベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン及びその誘導体が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。さらに必要に応じて、各種のアミン化合物をこれら光重合開始剤と併用することにより、光重合開始効果が促進されることが公知であり、本発明においても、組み合わせて使用することができる。
【0019】
これら光重合開始剤の配合量は、感光性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜20質量部、更に好ましくは1質量部〜10質量部である。光重合開始剤の配合量が0.1質量部未満であると、光重合開始剤としての効果が十分に得られない場合があり、一方、20質量部を超えても配合量に見合った効果はなく経済的でない。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物における(D)成分である反応性希釈剤は、活性エネルギー光線に対する硬化性及び/又は感光性樹脂組成物をレジストインクとして使用する場合の塗工性を向上させる目的で使用するものである。反応性希釈剤としては、活性エネルギー光線硬化性のあるモノマー類が好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、N−ピロリドン、N−アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート、メラミンアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシプロピルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセリンジアクリレート、イソボロニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート及びこれらに対応する各種メタクリレートが挙げられる。これらの反応性希釈剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
反応性希釈剤の配合量は、感光性樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部〜200質量部、更に好ましくは20質量部〜150質量部である。反応性希釈剤の配合量が、10質量部未満であると、光感度が十分に得られない場合があり、一方、200質量部を超えると、感光性樹脂組成物をレジストインキとして使用する場合に粘度が低くなり過ぎ、硬化塗膜としての耐性が不十分になる場合がある。
【0022】
また、塗工性の調整のために、反応性希釈剤と共に溶剤を使用することができる。このような溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテートなどが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物を液状レジストインキとして使用する場合には、上記の(A)〜(D)成分の他に、さらに必要に応じて、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の無機充填剤、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、酸化チタン、カーボンブラック等の着色顔料、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ピロガノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、フェノチアジン等の重合防止剤を添加することができる。
【0024】
次に、本発明の感光性樹脂の製造方法について説明する。
第一工程では、三価の有機リン化合物と質量基準で該三価の有機リン化合物の少なくとも4倍のナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種との存在下で、多官能エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを公知の方法で反応させる。また、この反応は、反応時の熱重合を防ぐという点から、ハイドロキノン、メチルハイドロキノンなどの公知の重合禁止剤を系内に添加したり、系内に空気を吹き込みながら行うことが好ましい。
第一工程における反応温度は、好ましくは110℃〜140℃であり、反応時間は、好ましくは5時間〜20時間である。反応温度が110℃未満では反応の進行が非常に遅く反応時間が非常に長時間になり経済的ではない。一方、反応温度が140℃を超えるとゲル化や分子量増大による増粘の可能性があり好ましくない。多官能エポキシ化合物が液状の場合、無溶剤で反応させることが可能であるが、多官能エポキシ化合物が固形の場合、溶剤中で反応させることが好ましい。ここで使用する溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤が挙げられる。
【0025】
第二工程では、第一工程で得られた生成物に多塩基酸無水物を公知の方法で反応させる。第二工程における反応温度は、好ましくは100℃〜120℃であり、反応時間は、好ましくは1時間〜6時間である。反応温度が100℃未満では反応の進行が非常に遅く反応時間が非常に長時間になり経済的ではない。反応温度が120℃を超えても反応時間の短縮にはあまり効果は無く、またゲル化や分子量増大による増粘の可能性があり好ましくない。また、この反応では、100℃以上ではアルコール性水酸基と多塩基酸無水物との反応促進触媒としての活性を有するが100℃未満では反応促進触媒としての活性をほぼ有さない触媒を併用してもよい。このような触媒としては、ナフテン酸リチウムやオクチル酸リチウムが挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
<合成例1>
攪拌機、気体導入管及び還流管を備えたフラスコ内に、エチルカルビトールアセテート192質量部を仕込み、そこにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製エポトート(登録商標)YDCN704、エポキシ当量206)206質量部(1当量)を溶解させた。更に、アクリル酸72質量部(1.0モル)、ハイドロキノン0.23質量部、トリフェニルホスフィン0.4質量部及びナフテン酸ジルコニウム(金属含有量6質量%)2質量部を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を吹き込みながら130℃で10時間反応を続け、酸価0.5mgKOH/gの反応物(エポキシアクリレート)を得た。これにテトラヒドロ無水フタル酸76.0質量部(0.5モル)を加え、120℃で更に2時間反応させ、固形分酸価79.3mgKOH/gの反応物を得た。これに不揮発分が60%になるようにエチルカルビトールアセテートを添加し、感光性樹脂Aを得た。
【0028】
<合成例2>
ナフテン酸ジルコニウム(金属含有量6質量%)2質量部の代わりにオクチル酸ジルコニウム(金属含有量12質量)2質量部を用いる以外は、合成例1と同様の操作を行い、固形分酸価79.3mgKOH/gの反応物を得た。これに不揮発分が60%になるようにエチルカルビトールアセテートを添加し、感光性樹脂Bを得た。
【0029】
<合成例3>
攪拌機、気体導入管及び還流管を備えたフラスコ内に、エチルカルビトールアセテート192質量部を仕込み、そこにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製エポトート(登録商標)YDCN704、エポキシ当量206)206質量部(1当量)を溶解させた。更に、アクリル酸72質量部(1.0モル)、ハイドロキノン0.23質量部、トリフェニルホスフィン0.4質量部及びナフテン酸ジルコニウム(金属含有量6質量%)2質量部を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を吹き込みながら130℃で10時間反応を続け、酸価0.5mgKOH/gの反応物(エポキシアクリレート)を得た。これにナフテン酸リチウム(金属含有量1.15質量%)0.4質量部及びテトラヒドロ無水フタル酸76.0質量部(0.5モル)を加え、120℃で更に2時間反応させ、固形分酸価79.3mgKOH/gの反応物を得た。これに不揮発分が60%になるようにエチルカルビトールアセテートを添加し、感光性樹脂Cを得た。
【0030】
<比較合成例1>
攪拌機、気体導入管及び還流管を備えたフラスコ内に、エチルカルビトールアセテート192質量部を仕込み、そこにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製エポトート(登録商標)YDCN704、エポキシ当量206)206質量部(1当量)を溶解させた。更に、アクリル酸72質量部(1.0モル)、ハイドロキノン0.1質量部、ナフテン酸クロム0.8質量部及びナフテン酸リチウム(金属含有量1質量%)0.4質量部を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を吹き込みながら120℃で8時間反応を続け、酸価1.0mgKOH/gの反応物(エポキシアクリレート)を得た。これにテトラヒドロ無水フタル酸76.0質量部(0.5モル)を加え、120℃で更に2時間反応させ、固形分酸価79.3mgKOH/gの反応物を得た。これに不揮発分が60%になるようにエチルカルビトールアセテートを添加し、感光性樹脂Dを得た。
【0031】
<比較合成例2>
攪拌機、気体導入管及び還流管を備えたフラスコ内に、エチルカルビトールアセテート192質量部を仕込み、そこにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製エポトート(登録商標)YDCN704、エポキシ当量206)206質量部(1当量)を溶解させた。更に、アクリル酸72質量部(1.0モル)、2、6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール2.17質量部、トリフェニルホスフィン0.415質量部を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を吹き込みながら130℃で10時間反応を続け、酸価1.0mgKOH/gの反応物(エポキシアクリレート)を得た。これにテトラヒドロ無水フタル酸76.0質量部(0.5モル)及びナフテン酸リチウム(金属含有量3質量%)0.707質量部を加え、120℃で更に2時間反応させ、固形分酸価79.3mgKOH/gの反応物を得た。これに不揮発分が60%になるようにエチルカルビトールアセテートを添加し、感光性樹脂Eを得た。
【0032】
<比較合成例3>
攪拌機、気体導入管及び還流管を備えたフラスコ内に、エチルカルビトールアセテート192質量部を仕込み、そこにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製エポトート(登録商標)YDCN704、エポキシ当量206)206質量部(1当量)を溶解させた。更に、アクリル酸72質量部(1.0モル)、ハイドロキノン0.1質量部、ナフテン酸ジルコニウム6.0質量部(金属含有量6質量%)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を吹き込みながら130℃で10時間反応を続けた。しかし、酸価の低下が遅かったため、更に130℃で10時間反応を行ったが反応が進行しないため中断した。
【0033】
<比較合成例4>
攪拌機、気体導入管及び還流管を備えたフラスコ内に、エチルカルビトールアセテート192質量部を仕込み、そこにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製エポトート(登録商標)YDCN704、エポキシ当量206)206質量部(1当量)を溶解させた。更に、アクリル酸72質量部(1.0モル)、ハイドロキノン0.23質量部、トリフェニルホスフィン0.4質量部及びナフテン酸ジルコニウム(金属含有量6質量%)1.2質量部を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を吹き込みながら130℃で反応を行ったが反応が進行しないため中断した。
【0034】
<熱安定性>
感光性樹脂A〜Eを80℃で3日間保管し、保管前後の粘度変化率を求めた。粘度変化率が低いほど熱安定性が高いと言える。結果を表1に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
次に、表2に示す配合比率に従って各成分を配合し、3本ロールによって充分混練し、感光性樹脂組成物を調製した。予め面処理済のプリント配線基板に、この感光性樹脂組成物を30μm〜40μmになるようにスクリーン印刷法により塗工し、80℃で20分間予備乾燥後、室温まで冷却し乾燥塗膜を得た。この塗膜を、オーク製作所製平行超高圧水銀灯露光装置を用いて250mJ/cm2で露光し、その後、熱風乾燥器を用い150℃で30分間加熱して硬化塗膜を得た。得られた塗膜について、以下に示す評価試験方法に従って、各種物性評価を行なった。これらの結果を表3に示した。
【0037】
<感度>
予備乾燥後の乾燥塗膜に感度測定用ステップタブレット(コダック21段)を設置し、オーク製作所製平行超高圧水銀灯露光装置を用いて250mJ/cm2で露光し、1%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スプレー圧2.0kgf/mm2で60秒間現像を行なった後の露光部分の除去されない部分の段数を測定した。除去されない部分の段数が大きいほど高感度である。
【0038】
<現像管理幅>
予備乾燥時間を20分、40分、60分又は80分に変更した乾燥塗膜を用い、1%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スプレー圧2.0kgf/mm2で現像を行い現像後の塗膜の有無を観察し、下記の基準で評価した。乾燥時間が長くても現像可能なものほど現像管理幅が良好である。
○:現像時間60秒後、目視で塗膜無し。
△:現像時間120秒後、目視で塗膜無し。
×:現像時間120秒後、目視で残膜有り。
【0039】
<半田耐熱性>
硬化塗膜を、JIS C6481に準じて、全面が半田に浸かるように浮かべ、260℃の半田浴に10秒間、3回浮かせ、取り出した後、膨れ又は剥れなどの塗膜の状態を観察し、下記の基準で評価した。
○:外観変化無し。
×:外観変化有り。
【0040】
<耐溶剤性>
硬化塗膜を塩化メチレンに30分浸せきした後の塗膜状態を評価した。
○:外観変化なし
△:外観わずかに変化あり
×:塗膜が剥離したもの
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)三価の有機リン化合物と質量基準で該三価の有機リン化合物の少なくとも4倍のナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種との存在下で、多官能エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを反応させ、更に多塩基酸無水物を反応させることにより得られる感光性樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)光重合開始剤並びに(D)反応性希釈剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
三価の有機リン化合物と質量基準で該三価の有機リン化合物の少なくとも4倍のナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムの少なくとも1種との存在下で、多官能エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを反応させる第一工程と、
第一工程で得られた生成物に多塩基酸無水物を反応させる第二工程と
を含むことを特徴とする感光性樹脂の製造方法。
【請求項3】
空気を吹き込みながら前記第一工程における反応を行うことを特徴とする請求項2に記載の感光性樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2010−189464(P2010−189464A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32435(P2009−32435)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】