説明

感光性樹脂組成物及び感光性エレメント

【課題】吸水性が十分に低く、アルカリ現像性に優れ、厚膜で像形成を行うことが可能な感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
下記一般式(1)、(2)及び(3)でそれぞれ表される構成単位を有するポリアミック酸と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物。


ここで、Arは炭素数5〜20のアルキレン基を有する4価の基を示し、Arは炭素数5〜20のアルキレン基を有する2価の基を示し、Arは芳香族炭化水素基を有する2価の基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及び感光性エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜には、優れた耐熱性を有し、かつ、電気特性、機械的特性等にも優れるポリイミド樹脂やポリベンズオキサゾール樹脂を含む感光性樹脂組成物が用いられている。
【0003】
感光性樹脂組成物としては、溶剤現像型とアルカリ現像型があるが、作業環境保全、地球環境保全の点からアルカリ現像型が主流になっている。このような感光性樹脂組成物として、例えば、特許文献1記載の液状レジストインキ組成物や、特許文献2記載の感光性熱硬化性樹脂組成物等が知られている。
【0004】
しかし、従来のアルカリ現像型の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像を可能にするために親水性基を有するものが主成分となっているため、露光部にも現像液、水等が浸透しやすく、形成されるレジスト被膜の実用的な耐湿性が低下し易い傾向にある。
【0005】
これに対して、特許文献3では、ポリアミドイミド樹脂等に無機フィラーを配合することで吸水率を低下させて耐湿性を改善した樹脂組成物が開示されている。また、特許文献4では、脂環式ポリイミドを含有する感光性樹脂組成物が、特許文献5では、含フッ素ジアミンから合成される高分子化合物が開示され、吸水性が低いことが報告されている。
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開平1−141904号公報
【特許文献3】特開2006−348178号公報
【特許文献4】特開2007−314583号公報
【特許文献5】特開2008−150534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、無機フィラーを配合した樹脂組成物は、粘度が高くなり流動性が低下することや、長期保管中に無機フィラーが沈降して保存安定性が低下することがある。このため、無機フィラーを配合せずに低吸水率を達成できる樹脂組成物が求められている。
【0007】
一方、特許文献4及び5に記載の樹脂組成物は低吸水性であるものの、アルカリ現像液への溶解性が十分ではないため、厚膜で像形成を行うことが難しい。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、吸水性が十分に低く、アルカリ現像性に優れ、厚膜で像形成を行うことが可能な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は(A)下記一般式(1)、(2)及び(3)でそれぞれ表される構成単位を有するポリアミック酸と、(B)光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物を提供する。
【化1】


【化2】


【化3】


ここで、式(1)、(2)及び(3)中、Arは炭素数5〜20のアルキレン基を有する4価の基を示し、Arは炭素数5〜20のアルキレン基を有する2価の基を示し、Arは芳香族炭化水素基を有する2価の基を示す。

【0010】
かかる感光性樹脂組成物によれば、特定の構造を有するポリアミック酸と、光重合性化合物及び光重合開始剤とを含有することで、十分なアルカリ現像性を得ることができると共に、未露光部の溶解性と露光部の残膜性とを両立でき、厚膜でも良好な像形成を行うことができ、なおかつ、吸水性が十分に低い硬化膜を形成できる。
【0011】
現像性及び解像性を向上する観点から、上記一般式(1)において、Arが下記一般式(4)で表される4価の基であることが好ましい。
【化4】


ここで、式(4)中、Xは炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜3の整数を示し、mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0012】
上記一般式(2)において、Arが下記一般式(5)で表される2価の基であると、比較的低温でのイミド化が進行し易くなり、また、可とう性に優れるため、反りを低減することができる。
【化5】


ここで、式(5)中、Zは単結合又は2価の有機基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示す。
【0013】
上記一般式(5)において、Zが、下記一般式(6)、(7)及び(8)でそれぞれ表される2価の基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。これにより、現像性に優れるのみでなく、パターン形成後の硬化温度を低下することができる。
【化6】


ここで、式(6)、(7)及び(8)中、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、q、r及びsは、それぞれ独立に1〜4の整数を示し、qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0014】
硬化膜の透明性、光硬化時の残膜率、アルカリ可溶性及び耐熱性を向上する観点から、上記Arが、置換基を有していてもよいアリーレン基又は下記一般式(8)で表される基であることが好ましい。
【化7】


ここで、式(8)中、Dは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、スルホニル基、メチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、下記式(i)で表される基又は下記式(ii)で表される基を示し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、t1及びt2は、それぞれ独立に1〜4の整数を示す。t1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t2が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【化8】

【0015】
上記式(8)中、Dがスルホニル基であると、光硬化時の残膜率の向上により厚膜での像形成が可能であり、かつ、現像時の膨潤が低減されるため、アルカリ現像液での現像性が向上する。このため厚膜において、解像度に優れる像形成が可能という本発明の効果をより一層有効かつ確実に発現することができる。
【0016】
本発明は、また、支持体と、該支持体上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる層(以下、「感光層」という)とを備える感光性エレメントを提供する。これにより、非感光性樹脂組成物を塗布して非感光層を形成した後、非感光層の上に感光性樹脂組成物を塗布して感光層を形成し露光、現像してパターン形成を行うといった煩雑な工程を経る必要がなくなり、プロセスを短縮することができる。また、感光層がフィルム状であるため、取り扱いが容易となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吸水性が十分に低く、アルカリ現像性に優れ、厚膜で像形成を行うことが可能な感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
【0019】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリアミック酸(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)光重合性化合物(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)光重合開始剤(以下、場合により「(C)成分」という)とを含むものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0020】
<(A)成分>
本発明におけるポリアミック酸は、上記一般式(1)、(2)及び(3)(以下、「一般式(1)〜(3)」と表記する)で表される構成単位を有するものである。また、(A)成分は、上記一般式(1)〜(3)で表される構成単位のみからなるものであってもよく、上記一般式(1)〜(3)以外の構成単位を更に有するものであってもよい。さらに、(A)成分としては、上記一般式(1)〜(3)で表される構成単位を有するポリアミック酸を単独で用いてもよく、他のポリアミック酸と併用してもよい。
【0021】
これらの(A)ポリアミック酸は、例えば、テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分とを溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0022】
この場合、一般式(1)は、炭素数5〜20のアルキレン基を有するテトラカルボン酸二無水物成分残基として、一般式(2)は、炭素数5〜20のアルキレン基を有するジアミン成分残基として、一般式(3)は、芳香族炭化水素基を有するジアミン成分残基として、ポリアミック酸に組み入れられる。炭素数5〜20のアルキレン基及び芳香族炭化水素基は、ポリアミック酸の主鎖を構成することができる。これにより、十分な現像性を得ることができると共に、厚膜で解像度よく像形成を行うことが可能な感光性樹脂組成物を提供できる。また、主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を含有することで、感光性樹脂組成物の低温硬化性、可撓性、低吸水率及び低反り性を達成することもできる。なお、本明細書において、厚膜であるとは、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の厚みが20μm以上となる場合をいう。
【0023】
Arを有するテトラカルボン酸二無水物成分と、Arを有するジアミン成分とから、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を形成することができる。
【化9】

【0024】
Arを有するテトラカルボン酸二無水物成分と、Arを有するジアミン成分とから、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を形成することができる。
【化10】

【0025】
(テトラカルボン酸二無水物成分)
テトラカルボン酸二無水物成分は、上記一般式(1)で表される構成単位を形成できるものであればよい。一般式(1)において、Arは、主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を有することが好ましく、上記一般式(4)で表される4価の有機基であることがより好ましい。このようなテトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
【化11】


ここで、式(9)中、Xは炭素数5〜20アルキレン基であり、炭素数8〜15のアルキレン基であることが好ましい。
【0026】
一般式(9)で表される化合物としては、例えば、ペンタメチレンビストリメリテート二無水物、ヘキサメチレンビストリメリテート二無水物、ヘプタメチレンビストリメリテート二無水物、オクタメチレンビストリメリテート二無水物、ノナメチレンビストリメリテート二無水物、デカメチレンビストリメリテート二無水物、ドデカメチレンビストリメリテート二無水物が挙げられる。この中でも、デカメチレンビストリメリテート二無水物は、得られる膜が低吸水率、低弾性となるため好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
また、(A)ポリアミック酸を合成するにあたり、上記主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を有するテトラカルボン酸二無水物成分以外のテトラカルボン酸二無水物を併用してもよい。このようなテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物(4,4’−オキシジフタル酸二無水物)、2,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ノナン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]デカン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]トリデカン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]テトラデカン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル〕ペンタデカン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]−2−メチルデカン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]−2−メチルオクタン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]−2−エチルペンタデカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ドデカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]デカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]トリデカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジエチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ペンタデカン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]シクロヘキサン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]プロピルシクロヘキサン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ヘプチルシクロヘキサン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、4,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0028】
(ジアミン成分)
ジアミン成分は、上記一般式(2)又は(3)で表される構成単位を形成できるものであればよい。一般式(2)において、Arは、炭素数5〜20のアルキレン基を有するものであり、上記一般式(5)で表される2価の有機基であることがより好ましい。また、一般式(5)において、Zが2価の有機基である場合、上記一般式(6)、(7)及び(8)でそれぞれ表される2価の有機基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。
【0029】
主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を有するジアミン成分としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン並びに下記一般式(10)、(11)及び(12)でそれぞれ表される化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0030】
【化12】


ここで、式(10)中、Y及びYは、それぞれ独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、qは1〜4の整数を示す。なお、qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0031】
【化13】


ここで、式(11)中、Y及びYは、それぞれ独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、rは1〜4の整数を示す。なお、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0032】
【化14】


ここで、式(12)中、Y及びYは、それぞれ独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R10は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、sは1〜4の整数を示す。なお、sが2以上の場合、複数存在するR10は同一でも異なっていてもよい。
【0033】
上記一般式(10)で表される化合物を含有するジアミン成分として、例えば、1,4−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メトキシ−4−アミノペンチル)ベンゼンが挙げられる。
【0034】
上記一般式(11)及び/又は(12)で表される化合物を含有するジアミン成分として、[3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシルー5−(1−オクテニル)]シクロヘキセン(コグニスジャパン社製、商品名「バーサミン551」)が市販品として入手可能である。ここで、「バーサミン551」は、下記式(13)で表される化合物及び/又は下記(13)で表される化合物の不飽和部が水添された化合物を含むジアミン化合物である。
【化15】

【0035】
(A)ポリアミック酸の合成において用いられる一般式(2)で表される構成単位を形成できるジアミン成分の含有量は、ジアミン成分全量に対して、50〜99mol%であることが好ましく、60〜98mol%であることがより好ましく、70〜97mol%であることがさらに好ましい。一般式(2)で表される構成単位を形成できるジアミン成分の含有量が上記範囲外にある場合と比較して、現像性及び解像性が向上する傾向にある。
【0036】
また、上記一般式(3)において、Arとしては、主鎖に芳香族炭化水素基を有するものであり、置換基を有していてもよいアリーレン基又は上記一般式(8)で表される基を有することが好ましい。
【0037】
上記一般式(8)で表される基を有するジアミン化合物としては、下記一般式(14)で表されるジアミン化合物が挙げられる。
【化16】


ここで、式(14)中、Dは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、スルホニル基、メチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、下記式(i)で表される基又は下記式(ii)で表される基を示す。R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、t1及びt2はそれぞれ独立に1〜4の整数を示す。t1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t2が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【化17】

【0038】
上記芳香族炭化水素基を有するジアミン化合物としては、例えば、4,4’−ジアミノジベンジルスルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、1,2−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,5−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,3−ジアミノ−2−フェニルナフタレン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、1−メトキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジメチルベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジメチルベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−メチルベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、o−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート、1,1−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)デカフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタ−1−エン−3−イン4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(3−アミノフェニル)エーテル、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−トルイジン)スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(5−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。中でも、アルカリ可溶性が向上し、現像性が向上することから、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを用いることが好ましい。これらのジアミン成分は、1種を単独で又は2種以上併用して使用してもよい。
【0039】
(A)ポリアミック酸の合成において用いられる一般式(3)で表される構成単位を形成できるジアミン成分の含有量は、ジアミン成分全量に対して、1〜50mol%であることが好ましく、5〜45mol%であることがより好ましく、10〜40mol%であることがさらに好ましい。一般式(3)で表される構成単位を形成できるジアミン成分の含有量が1mol%未満では現像時の膜減りが大きく、また高温・高湿化での信頼性が低下する傾向があり、50mol%を超えると現像液への溶解性が低下し、アルカリ水溶液での現像性が低下する傾向がある。
【0040】
本発明において、吸水率をより一層低減し、現像時の残膜率を良好にでき、且つアルカリ現像性を両立させる観点から、一般式(9)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、一般式(10)、(11)、(12)及び/又は(13)で表されるジアミン化合物と、一般式(14)で表されるジアミン化合物と、から合成されるポリアミック酸を含有することが好ましい。
【0041】
また、本発明において、上記一般式(10)〜(14)で表されるジアミン化合物以外のジアミン化合物を併用することができる。このようなジアミン化合物としては、例えば、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,2’−ジアミノジエチルスルフィド、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等の脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジドが挙げられる。さらに、上記ジアミン成分の一部に、例えば、ジメチルシロキサン系ジアミン(例えば、信越化学社製、商品名:「LP−7100」)等のケイ素含有ジアミンを使用することもできる。解像度をより向上できることから、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等の脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジドを用いることも好ましい。これらのジアミン成分は、1種を単独で又は2種以上を併用して使用してもよい。
【0042】
なお、ジアミン成分として、上述したジアミン化合物以外のジアミン化合物を本発明が奏する効果の範囲を逸脱しない範囲で併用することができる。
【0043】
(ポリアミック酸の合成方法)
(A)ポリアミック酸は、上記ジアミン成分と上記テトラカルボン酸二無水物成分とから公知の方法によって合成される。すなわち、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを選択的に組み合わせ、有機溶媒中で重合反応させることにより合成される。具体的には、(A)ポリアミック酸は、ほぼ当モルのテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを有機溶媒中で80℃以下、好ましくは70℃以下の反応温度で1〜12時間付加重合反応させて得ることができる。
【0044】
上記溶媒としては、例えば、含窒素系溶剤類(N,N’−ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジエチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチレンホスホアミド、N−メチルピロリドン等)、ラクトン類(γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等)、脂環式ケトン類(シクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン等)、エーテル類(3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテート等)が挙げられる。これらの中でも、溶解性及び吸水性の観点から、含窒素系溶剤類、脂環式ケトン類が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキサノンが特に好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0045】
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との組合せは、最終的に形成されるポリイミド樹脂からなる硬化膜の耐熱性、機械的特性、電気的特性等を考慮して、上述した成分の中から選択することができる。
【0046】
また、(A)ポリアミック酸の接着性、現像性を向上させるために、(A)ポリアミック酸にアミノベンズイミダゾール又はその誘導体を導入することが好ましい。アミノベンズイミダゾール及びその誘導体としては、例えば、2−アミノベンズイミダゾール、2−アミノ−6−メチル−ベンズイミダゾール、2−アミノ−6−エチル−ベンズイミダゾール、2−アミノ−6−ブチル−ベンズイミダゾール、2−アミノ−6−ニトロ−ベンズイミダゾールが挙げられる。これらの中でも、接着性の観点から、2−アミノ−ベンズイミダゾールが好ましい。
【0047】
アミノベンズイミダゾール又はその誘導体を導入する際の導入量は、(A)ポリアミック酸100molに対して0.1〜10molであることが好ましく、1〜5molであることがより好ましく、2〜3molであることが特に好ましい。アミノベンズイミダゾール又はその誘導体の導入量が0.1mol未満では接着性の向上効果が不十分となる傾向があり、10molを超えると現像性及び保存安定性が低下する傾向がある。
【0048】
アルカリ現像液への溶解性及び硬化膜の特性を良好にする観点から、(A)成分であるポリアミック酸の重量平均分子量は、10000〜50000であることが好ましく、20000〜45000であることがより好ましく、25000〜40000であることが特に好ましい。ポリアミック酸の重量平均分子量が10000未満では、現像時に膨潤しやすくなる傾向があり、50000を超えると現像液への溶解性が低下し、不溶化する傾向がある。
【0049】
感光性樹脂組成物において、(A)ポリアミック酸の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、20〜80質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましく、40〜60質量部であることが特に好ましい。この含有量が20質量部未満であると、現像性が低下する傾向にあり、含有量が80質量部を超えると、解像度が低下したり、低温でのイミド化率が低下したりする傾向にある。
【0050】
<(B)成分>
次に(B)成分について説明する。
【0051】
(B)成分としては、エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物であれば特に制限はなく、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物等のウレタンモノマー、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、フタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。なお、(B)光重合性化合物は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。
【0052】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。ここで、「EO」とはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。また、「PO」とはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。
【0053】
ネオペンチルグリコールジアクリレートは、A−NPG(商品名、新中村化学工業株式会社社製、)として商業的に入手可能であり、ノナンジオールジアクリレートは、FA−129(商品名、日立化成工業株式会社製、)として商業的に入手可能である。
【0054】
上記ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用される。
【0055】
このうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(商品名、新中村化学工業社製)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(商品名、新中村化学工業社製)として商業的に入手可能である。
【0056】
上記分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物は、例えば、ジヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応に由来するウレタン結合を有し且つ複数の末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物と、ヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物とを縮合反応させることで得ることができる。
【0057】
入手可能な分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物としては、例えば、TMCH−5(商品名、日立化成工業社製)、ヒタロイド9082(商品名、日立化成工業社製)、UA−11、UA−21(商品名、新中村化学工業社製)が挙げられる。
【0058】
上記グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型A型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂及びサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類のエポキシ樹脂と、ビニル基含有モノカルボン酸とを反応させて得られる樹脂を含むことが好ましい。
【0059】
上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのノボラック型エポキシ樹脂は、それぞれ公知の方法でフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを反応させることで得られる。
【0060】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂の水酸基と、エピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。
【0061】
上記サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂としては、具体的にはFAE−2500、EPPN−501H、EPPN−502H(以上、日本化薬社製、商品名)が挙げられる。
【0062】
上記ビニル基含有モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、β−スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸が挙げられる。また、水酸基含有アクリレートと飽和若しくは不飽和二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物、ビニル基含有モノグリシジルエーテル若しくはビニル基含有モノグリシジルエステルと飽和若しくは不飽和二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物が挙げられる。これら半エステル化合物は、水酸基含有アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル若しくはビニル基含有モノグリシジルエステルと飽和あるいは不飽和二塩基酸無水物とを等モル比で反応させることで得られる。これらビニル基含有モノカルボン酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
上記半エステル化合物の合成に用いられる水酸基含有アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル、ビニル基含有モノグリシジルエステルとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスルトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0064】
上記半エステル化合物の合成に用いられる飽和若しくは不飽和二塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸が挙げられる。
【0065】
必要に応じてビニル基含有モノカルボン酸と、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物とを併用することができる。
【0066】
飽和若しくは不飽和基含有多塩基酸無水物と、ビニル基含有エポキシ樹脂との反応において、水酸基1当量に対して、飽和若しくは不飽和基含有多塩基酸無水物を0〜1.0当量反応させることで、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂を得ることができる。
【0067】
酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A)の酸価は150mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以下であることがより好ましく、70mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。酸価が150mgKOH/gを超えると、現像時に膜が膨潤する又は膜の吸水率が増加する傾向がある。
【0068】
入手可能な酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂を有する光重合性化合物としては、例えば、ヒタロイド7661(日立化成工業社製、商品名)、KAYARAD CCR−1159(日本化薬社製、商品名)、KAYARAD TCR−1310(日本化薬社製、商品名)が挙げられる。
【0069】
これらの中でも、(B)成分としては、(A)ポリアミック酸との相溶性、現像液への溶解性、及び硬化膜の耐熱性の観点から、酸変性ビニル基含有ノボラック樹脂であるヒタロイド7661が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いても良い。
【0070】
感光性樹脂組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部を基準として、20〜80質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましく、40〜60質量部であることがさらに好ましい。この含有量が20質量部未満では、解像度が低下したり、低温でのイミド化率が低下したりする傾向にあり、含有量が80質量部を超えると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、現像性が低下する傾向にある。
【0071】
<(C)成分>
(C)成分である光重合開始剤は、活性光により遊離ラジカルを生成するものであれば特に制限はなく、例えば、芳香族ケトン、キノン類、ベンゾインエーテル化合物、ベンジル誘導体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、アクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、オキシムエステル誘導体、クマリン系化合物が挙げられる。
【0072】
芳香族ケトンとしては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(すなわちミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンが挙げられる。
【0073】
キノン類としては、例えば、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノンが挙げられる。
【0074】
ベンゾインエーテル化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルが挙げられる。市販で入手可能なものとしては、イルガキュア−369、イルガキュア−907(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名)が挙げられる。
【0075】
ベンジル誘導体としては、例えば、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタールが挙げられる。市販で入手可能なものとしては、ベンジルジメチルケタールであるイルガキュア−651(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名)が挙げられる。
【0076】
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2−(2−クロロフェニル)−1−〔2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニル−1,3−ジアゾール−2−イル〕−4,5−ジフェニルイミダゾール等の2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
【0077】
アクリジン誘導体としては、例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンが挙げられる。
【0078】
ホスフィン誘導体としては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドが挙げられる。市販で入手可能なものとしては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドであるダロキュア−TPO(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名)が挙げられる。
【0079】
オキシムエステル誘導体としては、例えば、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)−1,2−オクタンジオンが挙げられる。
【0080】
(C)光重合開始剤は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。市販で入手可能な(C)光重合開始剤としては、例えば、ダロキュア−TPO、イルガキュア−369、イルガキュア−907、イルガキュア−651、イルガキュア−819、イルガキュア−OXE−01(以上、いずれもチバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名)が挙げられる。
【0081】
上記(C)光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上述した(C)光重合開始剤の中でも、特にイルガキュア−651及びイルガキュア−OXE−01が、感度及び溶剤との相溶性を良好にできる観点から好ましい。また、光重合開始剤としてダロキュア−TPOを用いた場合、イルガキュア−651及びイルガキュア−OXE−01を組み合わせた場合と比較し、感度が若干低下するものの、解像度が向上する傾向にある。
【0082】
本発明の感光性樹脂組成物において、(C)光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましく、2.5〜8質量%であることが特に好ましい。(C)光重合開始剤の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、感光性樹脂組成物の感度が低下したり、相溶性が低下したりする傾向にある。
【0083】
<その他の成分>
((D)架橋剤)
また、本発明の感光性樹脂組成物には、更に(D)架橋剤を加えてもよい。(D)架橋剤としては、特に制限されないが、エポキシ化合物、ブロック化イソシアネート化合物等が挙げられる。エポキシ化合物として具体的には、YH−434L(アミン型エポキシ樹脂、東都化成社製、商品名)が好ましい。また、ブロック化イソシアネート化合物として具体的には、BL−3175(ブロック化イソシアネート、住化バイエルウレタン社製、商品名)が好ましい。これらの架橋剤を添加すると、硬化後の感光性樹脂組成物の基板への密着性をより向上させることができる。
【0084】
感光性樹脂組成物に(D)架橋剤を含有させる場合、その含有量は、(A)ポリアミック酸100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、30〜40質量部であることがより好ましい。(D)架橋剤の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、キュア後の硬化膜が脆くなったり、(A)ポリアミック酸と(D)架橋剤との相溶性が低下したりする傾向がある。
【0085】
((E)増感剤)
また、本発明の感光性樹脂組成物には、更に(E)増感剤を加えることができる。(E)増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’−カルボニルビス(ジエチルアミノクマリン)等が挙げられる。(E)増感剤としては、感光性樹脂組成物の感度、及び、溶剤との相溶性等の観点から、クマリン類が好ましく、クマリン102(アクロス社製、商品名)が特に好ましい。(E)増感剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0086】
感光性樹脂組成物における(E)増感剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として0.1〜1質量%であることが好ましい。(E)増感色素の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、感光性樹脂組成物の感度が低下したり、溶剤との相溶性が低下したりする傾向がある。
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述した(A)ポリアミック酸、(B)光重合性化合物及び(C)光重合開始剤と、必要に応じて用いられる(D)架橋剤及び/又は(E)増感剤とを、溶媒とともに混合することにより得ることができる。
【0088】
(溶媒)
このときに用いられる溶媒としては特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトンが挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0089】
(接着助剤)
感光性樹脂組成物には、必要に応じて、感光性樹脂組成物と基板との接着性を向上させるために、接着助剤を添加してもよい。接着助剤としては、例えば、γ−グリシドキシシラン、アミノシラン、γ−ウレイドシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。一般的に入手可能な接着助剤としては、KBM−503(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン社製、商品名)、AY−43031(γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、東レダウ社製、商品名)が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0090】
以上のようにして得られる本発明の感光性樹脂組成物は、十分な現像性を得ることができると共に、厚膜で解像度よく像形成を行うことが可能であり、形成される硬化体は、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜として用いることができる。
【0091】
[パターン形成方法]
本発明の感光性樹脂組成物を用いて硬化体(硬化膜)を形成する方法について説明する。
【0092】
まず、上記感光性樹脂組成物を基板上に塗布する。基板としては、シリコン、アルミナセラミック、ガラス、ガラスセラミック、窒化アルミ、半導体を形成した基板等が用いられる。塗布方法としては、例えば、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、浸漬、ロールコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
塗布膜厚は、塗布手段、感光性樹脂組成物の固形分濃度及び粘度等によって異なる。層間絶縁膜用途としては、乾燥後の被膜(感光性樹脂組成物層)の膜厚が1〜300μmであることが好ましく、15〜150μmであることがより好ましく、20〜100μmであることが特に好ましい。乾燥後の被膜の膜厚が1〜300μmになるようにするためには、本発明の感光性樹脂組成物を溶剤で溶解させ、粘度を1〜50Pa・sに調節することが好ましく、20〜40Pa・sに調節することがより好ましい。また、感光性樹脂組成物の固形分濃度は、20〜80質量%にすることが好ましく、30〜70質量%にすることがより好ましい。得られる被膜の膜厚が300μmを超えると、解像度が低下する傾向がある。
【0094】
次に、感光性樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を得る。乾燥は、オーブン、ホットプレート等を使用し、60〜120℃の範囲で1分〜1時間行うことが好ましい。
【0095】
次に、この感光性樹脂組成物層上に必要に応じて所望のパターンを有するマスクを置き、それを介して活性光線を照射して露光する。露光に用いられる活性光線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられる。これらの中でも特に、紫外線、可視光線が好ましい。
【0096】
露光後に、現像液を用いて未露光部を除去することにより、パターンを形成することができる。ここで、現像液としては、N−メチルピロリドン、エタノールのような有機溶媒、又は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等のアルカリ水溶液を使用することができる。これらの中でも、金属性イオン化合物が少ないことから、感光性樹脂組成物の現像には、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを用いることが好ましい。
【0097】
また、現像後、必要に応じて、水、又は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールでリンスする。
【0098】
更に、現像後、キュアすることにより、感光性樹脂組成物からなる硬化体を得ることができる。現像後のキュアでは、加熱温度を適宜調節することが好ましく、例えば、段階的に昇温しながら1〜2時間実施することが好ましい。加熱温度は、120〜225℃の間で調節することが好ましい。具体的には、現像後、例えば、120℃、150℃、180℃で各20分間熱処理した後、225℃で40分間熱処理を行うことで光硬化後のパターンを更に熱硬化させ、目的とする硬化体を得ることができる。
【0099】
本発明による感光性樹脂組成物により形成した硬化体は、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜として有用である。
【0100】
[感光性エレメント]
本発明の感光性樹脂組成物は、支持体上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層(感光層)が形成された感光性エレメントの形態で用いることもできる。
【0101】
図1は、本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した感光性エレメント1は、支持体10と、支持体10上に設けられた感光層14とで構成される。感光層14は、上述した本発明の感光性樹脂組成物からなる層である。また、本発明の感光性エレメント1は、感光層14上の支持体10とは反対側の面F1を保護フィルムで被覆してもよい。
【0102】
感光層14は、本発明の感光性樹脂組成物を上記溶剤又は混合溶剤に溶解して固形分30〜70質量%程度の溶液とした後に、かかる溶液を支持体10上に塗布して形成することが好ましい。
【0103】
感光層14の厚みは、用途により異なるが、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した乾燥後の厚みで、10〜100μmであることが好ましく、20〜70μmであることがより好ましい。
【0104】
感光性エレメント1が備える支持体10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムなどが挙げられる。
【0105】
支持体10の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。
【0106】
上述したような支持体10と感光層14との2層からなる感光性エレメント1又は支持体10と感光層14と保護フィルムとの3層からなる感光性エレメントは、例えば、そのまま貯蔵してもよく、又は保護フィルムを介在させた上で巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。
【0107】
上述したパターン形成工程において感光エレメント1を用いる場合、感光層14が基板と接するように感光エレメント1を配置し、活性光線を感光層14の所定の部分に照射して、感光層14に光硬化部を形成させた後、支持体10を剥離し、現像することができる。
【0108】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0109】
以下、実施例及び参考例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0110】
<分子量の測定>
また、以下の合成例において、ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して求めた。GPCの測定条件を以下に示す。
【0111】
(GPC条件)
ポンプ:日立 L−6000型(日立製作所社製、商品名)
検出器:日立 L−3300型RI(日立製作所社製、商品名)
カラム:Gelpack GL−S300MDT−5(計2本)(以上、日立化成工業社製、商品名)
溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/THF(テトラヒドロフラン)(質量比1/1)
流量:1mL/分
【0112】
[ポリアミック酸の合成]
(合成例1)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに「バーサミン551」([3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)]シクロヘキセン、コグニスジャパン社製、商品名)15.73g(0.028mol)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(以下、「DDS」と表記する)3.54g(0.014mol)及びN−メチルピロリドン(以下、「NMP」と表記する)30.00gを加えて、室温で15分間攪拌した溶液へ、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート)二無水物(以下、「DBTA」と表記する)22.24g(0.043mol)及びNMP30.00gの混合溶液を15分間かけて添加した。添加終了後、得られた混合液を60℃まで昇温し、8時間攪拌することで、ポリアミック酸のNMP溶液を得た。得られた溶液中の固形分は40質量%であり、ポリアミック酸のMwは29000であった。
【0113】
(合成例2)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに1,12−ドデカンジアミン(以下、「DDO」と表記する)2.20g(0.011mol)、DDS1.39g(0.006mol)、DBTA10.00g(0.019mol)及びNMP20.00gを加えて室温で10分間攪拌した。この反応溶液を60℃まで昇温し、8時間攪拌することで、ポリアミック酸のNMP溶液を得た。得られた溶液中の固形分は40質量%であり、ポリアミック酸のMwは27000であった。
【0114】
(合成例3)
300mLの4つ口セパラブルフラスコにDBTA10g(0.019mol)、「バーサミン551」4.76g(0.009mol)、DDS1.56g(0.006mol)、「N−12」(ドデカン二酸ジヒドラジド、日本ファインケム社製、商品名)1.20g(0.004mol)及びNMP18.00gを入れて懸濁した状態で室温で攪拌した。白い沈殿が現れたところで120℃で15分間攪拌し、室温で1時間攪拌した後、更に60℃で3時間攪拌し目的のポリアミック酸のNMP溶液を得た。得られた溶液中の固形分は50質量%であり、ポリアミック酸のMwは32000であった。
【0115】
(合成例4)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに、「バーサミン551」19.61g(0.035mol)、DBTA20.39g(0.039mol)及びNMP60gを加えて室温で10分間攪拌した。次に反応液を60℃まで昇温し、8時間攪拌することで、ポリアミック酸のNMP溶液を得た。得られた溶液中の固形分は40質量%であり、ポリアミック酸のMwは20000であった。
【0116】
(合成例5)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに、「バーサミン551」21.06g(0.038mol)、DBTA14.60g(0.028mol)、4,4’−オキシジフタル酸二無水和物(ODPA)4.33g(0.014mol)及びNMP60gを加えて室温で10分間攪拌した。次に反応液を60℃まで昇温し、8時間攪拌することで、ポリアミック酸のNMP溶液を得た。得られた溶液中の固形分は40質量%であり、ポリアミック酸のMwは20000であった。
【0117】
(合成例6)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに、DBTA27.13g(0.052mol)、DDS12.89g(0.052mol)及びNMP60gを加えて室温で10分間攪拌した。次に反応液を60℃まで昇温し、8時間攪拌することで、ポリアミック酸のNMP溶液を得た。得られた溶液中の固形分は40質量%であり、ポリアミック酸のMwは18000であった。
【0118】
合成例1〜6で得られたポリアミック酸における各成分内の配合比(mol%)及びMwを表1にまとめて示す。
【0119】
【表1】

【0120】
[感光性樹脂組成物の作製]
上記各合成例で合成したポリアミック酸の溶液、光重合性化合物、光開始剤及びその他の成分を、それぞれ下記表2に示した配合割合で混合し、実施例1〜4及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物の溶液を得た。なお、表2中の数字は固形分の質量部を示している。また、表2中の各成分は、以下に示すものである。
【0121】
「ヒタロイド7661」:酸変性フェノールノボラック型エポキシアクリレート、日立化成工業社製、商品名
「I−651」:ベンジルジメチルケタール、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名
「I−OXE−01」:1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−フェニル−2−(o−ベンゾイルオキシム)]、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名
「D−TPO」:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名
「AY−43031」:ウレイドプロピルトリエトキシシラン、東レダウ社製、商品名
「KBM−503」:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン社製、商品名
【0122】
【表2】

【0123】
[感光性樹脂組成物の評価]
上記実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物の溶液を用い、以下に示す方法で、相溶性、溶解性、現像性及び吸水率の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0124】
<相溶性評価>
上記実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物の溶液外観と、スピンコーターを用いてシリコン基板上に塗布し、110℃のホットプレートで5分間乾燥した後、形成された感光性樹脂組成物層の塗膜外観とをそれぞれ目視で観察した。ここで、感光性樹脂組成物の溶液又は塗膜に濁りがある場合は、感光性樹脂組成物成分同士の相溶性が悪く、感光性樹脂組成物の溶液又は感光性樹脂組成物層中で析出していると考えられる。
A:溶液外観及び塗膜外観に濁りがなく均一。
B:溶液外観及び/又は塗膜外観に濁りがあり不均一。
【0125】
<吸水率の測定>
上記実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、厚さ1mmのガラス板上にアプリケーターを用いて均一に塗布し、110℃のホットプレートで5分間乾燥し、膜厚70μmの感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層を形成した試験基板について、プロキシミティー露光機(ウシオ電機社製、商品名:UX−1000SM)を用いて露光量500mJ/cmで全面露光を行った。その後、120℃で40分間、続いて200℃で60分加熱硬化させ、膜厚50μmの硬化膜を得た。この硬化膜をガラス板ごと精製水に24時間浸漬し、前後での重量変化より下記式(a)により吸水率を求めた。
吸水率(%)=(浸漬後硬化膜重量−浸漬前硬化膜重量)/(浸漬前硬化膜重量)×100 …(a)
【0126】
<未露光部の現像液溶解性評価>
上記感光性樹脂組成物の溶液を、スピンコーターを用いてシリコン基板上に均一に塗布し、110℃のホットプレートで5分間乾燥しし、膜厚70μmの感光性樹脂組成物層を形成した。感光性樹脂組成物層へ2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を滴下し、膜が完全に溶解するのにかかる時間を測定し、下記式(b)により溶解速度を求めた。
溶解速度(nm/秒)=膜厚(nm)/溶解時間(秒) …(b)
A:溶解速度500nm/秒以上
B:溶解速度500nm/秒未満
【0127】
<現像性評価>
上記実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、110℃のホットプレートで5分間乾燥し、膜厚70μmの感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層を形成した試験基板について、ライン幅/スペース幅が50/400(単位:μm)の配線パターンを有するネガマスクを介して、プロキシミティー露光機(ウシオ電機社製、商品名:UX−1000SM)を用いて露光量500mJ/cmで感光性樹脂組成物層の露光を行った。ここで、露光量は、光の照度を、紫外線積算光量計(ウシオ電機株式会社製、商品名:UIT−150−A、照度計としても使用可能)及び受光器である「UVD−S365」(感度波長域:320nm〜470nm、絶対校正波長:365nm)を用いて測定し、露光量=照度×露光時間の関係から求めたものである。その後、試験基板を2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に浸漬し、感光性樹脂組成物層の未露光部が完全に溶解するまで現像を行った。この現像後の感光性樹脂組成物層の露光部の膜厚から残膜率を下記式(c)により求め、以下の評価基準に基づいて現像性を評価した。
残膜率(%)=(現像後の露光部の膜厚(μm)/初期膜厚(μm))×100 …(c)
A:残膜率80%以上である。
B:残膜率20%以上80%未満である。
C:残膜率20%未満である。
【0128】
【表3】

【0129】
表3からわかるように、実施例1〜4で得られた感光性樹脂組成物は、現像性に優れ、かつ、吸水率が十分に低い。以上のことから、本発明の感光性樹脂組成物によれば、十分なアルカリ現像性を得ることができ、厚膜でも良好に像形成を行うことが可能であり、かつ、吸水性が十分に低い硬化膜を形成できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0131】
1…感光性エレメント、10…支持体、14…感光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)、(2)及び(3)でそれぞれ表される構成単位を有するポリアミック酸と、
(B)光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含む感光性樹脂組成物。
【化1】


【化2】


【化3】


[式(1)、(2)及び(3)中、Arは炭素数5〜20のアルキレン基を有する4価の基を示し、Arは炭素数5〜20のアルキレン基を有する2価の基を示し、Arは芳香族炭化水素基を有する2価の基を示す。]
【請求項2】
前記Arが下記一般式(4)で表される4価の基である、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【化4】


[式(4)中、Xは炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜3の整数を示し、mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項3】
前記Arが下記一般式(5)で表される2価の基である、請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【化5】


[式(5)中、Zは単結合又は2価の有機基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示す。]
【請求項4】
前記Zが、下記一般式(6)、(7)及び(8)でそれぞれ表される2価の基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である、請求項3記載の感光性樹脂組成物。
【化6】


[式(6)、(7)及び(8)中、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、q、r及びsは、それぞれ独立に1〜4の整数を示し、qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項5】
前記Arが、置換基を有していてもよいアリーレン基又は下記一般式(8)で表される基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化7】


[式(8)中、Dは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、スルホニル基、メチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、下記式(i)で表される基又は下記式(ii)で表される基を示し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、t1及びt2は、それぞれ独立に1〜4の整数を示す。t1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t2が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化8】

【請求項6】
前記Dがスルホニル基である、請求項5記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる層と、を備える感光性エレメント。

【図1】
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【公開番号】特開2010−151946(P2010−151946A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327837(P2008−327837)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】