説明

感放射線性樹脂組成物およびそれに用いる重合体

【課題】 溶解性および解像性能に優れ、かつ、マスク依存性が小さくLWRの小さい化学増幅型レジストを形成可能な感放射線性樹脂組成物およびそれに用いる重合体を提供すること。
【解決手段】 特定のイオン性構造を有する繰り返し単位を7モル%以上含有しラクトン骨格を有しない重合体、および、(A)特定のイオン性構造を有する繰り返し単位を7モル%以上含有しラクトン骨格を有しない重合体と、(B)溶剤とを含むことを特徴とする、感放射線性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物およびそれに用いる重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路素子の製造に代表される分野においては、一般に放射線としてi線等の近紫外線、KrFやArFに代表されるエキシマレーザーといった遠紫外線を用いたリソグラフィプロセスが行われている。パターンサイズが微細になるにつれて放射線は短波長化が進んでおり、将来の光源としてEUV光が期待されている。
【0003】
感放射線性樹脂組成物は、近紫外線世代ではノボラック樹脂とナフトキノンジアジド(NQD)を用いた非化学増幅型レジストが多く用いられ、遠紫外線世代では、酸解離性官能基を有する成分と放射線の照射(以下、「露光」という場合がある)により酸を発生する感放射線性酸発生剤との間の化学増幅効果を利用した組成物(以下、「化学増幅型感放射線性組成物」という場合がある)が一般的に用いられている。
【0004】
化学増幅型感放射性組成物に含有される上記感放射線性酸発生剤は、放射線に対する透明性が優れ、かつ、酸の発生に際して高い量子収率を有しているという特性が求められる。更に、上記感放射線性酸発生剤が発生する酸は、十分に強く、沸点が十分に高く、レジスト被膜中の拡散距離(以下、「拡散長」という場合がある)が適切であることなどの特性が求められる。
【0005】
発生する酸が非揮発性で拡散長が十分短い(適切である)場合、リソグラフィーにおいてマスク依存性が小さくなり、また露光量に対する線幅の変化が小さくなることで、半導体製造においてデザインの幅が広がる、プロセスが安定するといった利点がある。このような系として、重合体中に酸発生基を導入した感放射線性樹脂組成物(特許文献1、特許文献2)が知られている。しかしながら、これらの技術では、酸の強度が十分ではないため、フォトレジストとしての解像性能が十分得られないという欠点がある。
【0006】
酸の強度を増した、フルオロアルキルスルホニル構造を有する樹脂に関する技術の開示もなされている(特許文献3、4)。しかしながら、ここに示されている重合体には酸発生基を含有した上で更にラクトン骨格を含有する繰り返し単位を含むことが望ましく、この場合に、この重合体はフォトレジスト溶剤への溶解性が十分でないという欠点がある。特に酸発生基がイオン性である場合には、溶解性が更に悪化するという欠点がある。そのため、酸発生基を含有する繰り返し単位を一つの重合体に多く導入することが困難であった。酸発生基の導入量が少ない場合、感度が遅く(不良)、パターンのガタツキの程度を示すパターンウィズスラフネス(LWR)が大きくなる(不良)場合がある。
【0007】
また、ラクトン骨格を含有しない酸発生基を含有する重合体も知られているが(特許文献5)、この場合、酸発生基を含有する繰り返し単位の主鎖連結部がアミド骨格であるため、フォトレジスト溶剤への溶解性が十分でなかったり、レジスト膜中での該重合体の分布が均一なものとなりにくく、LWRが十分小さくならない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−325497号公報
【特許文献2】特開2006−178317号公報
【特許文献3】WO2006/121096
【特許文献4】WO2008/056796
【特許文献5】特開2009−093137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
溶解性および解像性能に優れ、かつ、マスク依存性が小さくLWRの小さい化学増幅型レジストを形成可能な感放射線性樹脂組成物および重合体の開発が急務になっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、溶解性および解像性能に優れるフルオロアルキルスルホニル構造を有する単位を一つの重合体に多く導入した重合体を含有する感放射線性樹脂組成物によって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、以下に示す、感放射線性樹脂組成物および重合体が提供される。
【0012】
[1](A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」ともいう)を7モル%以上含有しラクトン骨格を有しない重合体(以下、「重合体(A)」ともいう)と、(B)溶剤とを含むことを特徴とする、感放射線性樹脂組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Xは置換基を有してもよいアルキレン基を示す。Rは水素原子、フッ素原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数2〜11の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基を示し、Rは炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシル基若しくは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルカンスルホニル基を示し、Rは相互に独立に炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換されていてもよい芳香環含有炭化水素基を示すか、或いは2個のRが互いに結合して、両者が結合しているS+と共に環状構造を形成する。mは0〜2の整数であり、nは0〜10の整数である。)
【0015】
[2]重合体(A)が、さらに下記一般式(2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」ともいう)を含有することを特徴とする、請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【0016】
【化2】

【0017】
(一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示し、RおよびRは、相互に独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示すか、あるいはRとRが相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成する。)
【0018】
[3]さらに、(a)上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有しない重合体(以下、「重合体(a)」ともいう)を含むことを特徴とする、[1]に記載の感放射線性樹脂組成物。
【0019】
[4]重合体(a)が、ラクトン構造を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3−1)」ともいう)、環状カーボネート構造を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3−2)」ともいう)および下記一般式(3)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3−3)」ともいう)から選ばれる少なくとも一種(以下、これらをまとめて「繰り返し単位(3)」ともいう)を含有することを特徴とする、[1]に記載の感放射線性樹脂組成物。
【0020】
【化3】

(一般式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Xは炭素数1〜10の(a+1)価の炭化水素基を示し、Aは単結合または−O−、−COO−、−OCO−もしくは−NH−で表される基を示し、Yは単結合または炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、Rは水酸基またはカルボキシル基を示し、aは1〜3の整数である。)
【0021】
[5](a)重合体が、さらに繰り返し単位(2)を含有することを特徴とする、[4]に記載の感放射線性樹脂組成物。
【0022】
[6]さらに、(C)酸拡散制御体を含有することを特徴とする、[1]〜[5]に記載の感放射線性樹脂組成物。
【0023】
[7]繰り返し単位(1)を7モル%以上含有しラクトン骨格を有しないことを特徴とする、重合体。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の感放射線性樹脂組成物は、特定構造の繰り返し単位を7モル%以上含有しラクトン骨格を有しない重合体および溶剤を含有することで、従来の感放射線性樹脂組成物と比べ、レジスト溶剤への溶解性に優れ、マスク依存性が小さくLWRの小さいレジストパターンを得ることができるレジスト被膜を形成することができるという効果を奏するものである。従って、短波長の活性放射線に感応する化学増幅型感放射線性樹脂組成物として、微細加工時の加工性に優れ、今後さらに微細化が進行すると予想される集積回路素子等の分野において好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0026】
<感放射線性樹脂組成物>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、繰り返し単位(1)を7モル%以上含有しラクトン骨格を有しない重合体(A)と、溶剤とを含有する。
前記一般式(1)中のスルホニウムカチオン部位は、露光により酸を発生する部位である。すなわち、重合体(A)は、イオン性の感放射線性酸発生体としての構造を有する。このような構造を有することで、非イオン性の感放射線性酸発生体としての構造を有する重合体に比べ、露光部において酸を効率的に発生する。そして発生した酸により、例えば酸解離性基を有する繰り返し単位(2)を含有する重合体が存在すると、露光部では−CRが解離して、−COOHとなるため、酸の作用前にはアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性を示す重合体は、酸の作用後にはアルカリ易溶性を示す。
重合体(A)は高分子であるため、低分子化合物の酸発生体を用いる場合と比較して、露光部に発生した酸の拡散を小さく抑えることが可能で、重合体(A)を含有する感放射線性樹脂組成物は、マスク依存性が小さくLWRの小さいレジストパターンが得られるレジスト被膜を形成することができる。また、一般的にラクトン骨格を含有するイオン性の重合体は非イオン性の重合体に比べ溶剤に対して溶解性が乏しい傾向にあるが、重合体(A)はラクトン骨格を有しないことで、繰り返し単位(1)の導入量を多くすることが可能で、露光部に発生する酸の濃度を高めることができる。このため、マスク依存性が小さくLWRの小さいレジストパターンを得ることに対して特段の効果を示すものである。さらに、溶剤を含むことにより均一なレジスト膜をウエハー上に形成可能である。
【0027】
なお、本明細書にいう「アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性」とは、当該感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、レジスト被膜の代わりに重合体のみを用いた被膜を現像した場合に、被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質を意味する。また、本明細書にいう「感放射線性樹脂組成物」および「感放射線性酸発生体」の「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を含む概念である。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0028】
重合体(A):
本発明の感放射線性樹脂組成物に用いられる重合体(A)は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を7モル%以上含有しラクトン骨格を有しない重合体である。
前記一般式(1)中のRは水素またはメチル基を示し、Xは置換基を有してもよいアルキレン連結基を示す。前記アルキレン連結基としては、鎖状または環状のアルキレン連結基であり、好ましくは、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基もしくは1,2−プロピレン基などのプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、インサレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、または、2−プロピリデン基等の飽和鎖状炭化水素基、1,3−シクロブチレン基などのシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基などのシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基などのシクロオクチレン基等の炭素数3〜10のシクロアルキレン基などの単環式炭化水素環基、1,4−ノルボルニレン基もしくは2,5−ノルボルニレン基などのノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基などのアダマンチレン基等の2〜4環式炭素数4〜30の炭化水素環基などの架橋環式炭化水素環基等が挙げられる。
【0029】
これらアルキレン連結基を置換してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、直鎖状または分岐状アルキル基、脂環式炭化水素基、フッ素などのハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシカルボニルオキシ基の群から選択される少なくとも一種の基等が挙げられる。
【0030】
直鎖状または分岐状アルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、1,3−プロピル基もしくは1,2−プロピル基などのプロピル基、テトラメチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基、トリデカニル基、テトラデカニル基、ペンタデカニル基、ヘキサデカニル基、ヘプタデカニル基、オクタデカニル基、ノナデカニル基、インサニル基、1−メチル−1,3−プロピル基、2−メチル−1,3−プロピル基、2−メチル−1,2−プロピル基、1−メチル−1,4−ブチル基、2−メチル−1,4−ブチル基等の飽和鎖状炭化水素基または、これらの飽和鎖状炭化水素基の一つ以上の水素原子を置換基で置換した基等が挙げられる。置換基としては、前記一般式(1)のXで表されるアルキレン連結基を置換してもよい置換基と同義である。
【0031】
脂環式炭化水素基としては、好ましくは、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基等の有橋脂環式炭化水素基;または、これらの脂環式炭化水素基の一つ以上の水素原子を置換基で置換した基等が挙げられる。置換基としては、前記一般式(1)のXで表されるアルキレン連結基を置換してもよい置換基と同義である。
【0032】
アルコキシル基としては、好ましくは、直鎖状アルコキシル基、分岐状アルコキシル基等を挙げることができる。これらの中では、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が更に好ましい。
【0033】
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等の直鎖状アルコキシカルボニル基;i−プロポキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等の分岐状アルコキシカルボニル基;シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル等のシクロアルキルオキシカルボニル基;等を挙げることができる。これらの基の炭素数は2〜21であることが更に好ましい。
【0034】
アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基等の直鎖状アルコキシカルボニルオキシ基;i−プロポキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基等の分岐状アルコキシカルボニルオキシ基;シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル等のシクロアルキルオキシカルボニル基;等を挙げることができる。これらの基の炭素数は2〜21であることが更に好ましい。
【0035】
前記一般式(1)中、スルホニウムアニオンとして、特に好ましいものを下記に示す。なお下記式におけるRは、水素原子またはメチル基である。
【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
前記一般式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数2〜11の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基を示し、Rは炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシル基若しくは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルカンスルホニル基を示し、Rは相互に独立に炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換されていてもよい芳香環含有炭化水素基を示すか、或いは2個のRが互いに結合して、両者が結合しているS+と共に環状構造を形成する。mは0〜2の整数であり、nは0〜10の整数である。
で示される「炭素数1〜10のアルコキシル基」としては、直鎖状アルコキシル基、分岐状アルコキシル基等を挙げることができる。これらの中では、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が好ましい。
また、Rで示される「炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基」としては、直鎖状アルコキシカルボニル基、分岐状アルコキシカルボニル基等を挙げることができる。これらの中では、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等が好ましい。
【0040】
また、Rで示される「炭素数1〜10のアルカンスルホニル基」としては、直鎖状アルカンスルホニル基、分岐状アルカンスルホニル基、シクロアルカンスルホニル基等を挙げることができる。これらの中では、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基等が好ましい。
【0041】
また、一般式(1)においては、nが0〜2の整数であることが好ましい。
【0042】
一般式(1)中、Rで示される「芳香環含有炭化水素基」としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−ジメチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、3−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基等;これらの基の水素原子を、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシカルボニルオキシ基の群から選択される少なくとも一種の基で置換した基;等を挙げることができる。
【0043】
また、2個のRが相互に結合して、両者が結合しているS+と共に形成される環状構造としては、硫黄原子と共に5員または6員の環を形成した構造、中でも、5員の環(テトラヒドロチオフェン環)を形成した構造が好ましい。
【0044】
としては、芳香族含有炭化水素基と、2個のRが相互に結合して、両者が結合しているS+と共に形成される環状構造が特に好ましい。
【0045】
一般式(1)のカチオンとしては、トリフェニルスルホニウムカチオン、トリ−1−ナフチルスルホニウムカチオン、トリ−tert−ブチルフェニルスルホニウムカチオン、4−フルオロフェニル−ジフェニルスルホニウムカチオン、ジ−4−フルオロフェニル−フェニルスルホニウムカチオン、トリ−4−フルオロフェニルスルホニウムカチオン、4−シクロヘキシルフェニル−ジフェニルスルホニウムカチオン、4−メタンスルホニルフェニル−ジフェニルスルホニウムカチオン、4−シクロヘキサンスルホニル−ジフェニルスルホニウムカチオン、1−ナフチルジメチルスルホニウムカチオン、1−ナフチルジエチルスルホニウムカチオン、1−(4−ヒドロキシナフチル)ジメチルスルホニウムカチオン、1−(4−メチルナフチル)ジメチルスルホニウムカチオン、1−(4−メチルナフチル)ジエチルスルホニウムカチオン、1−(4−シアノナフチル)ジメチルスルホニウムカチオン、1−(4−シアノナフチル)ジエチルスルホニウムカチオン、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、1−(4−メトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、1−(4−エトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、1−(4−n−プロポキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、2−(7−メトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、2−(7−エトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、2−(7−n−プロポキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、2−(7−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン等が特に好ましい。
【0046】
繰り返し単位(1)として特に好ましいものを下記に示す。
【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

【0049】
上記重合体(A)において、繰り返し単位(1)の含有率は、重合体(A)を構成する全構造単位に対して、繰り返し単位(1)の総量が7モル%以上50モル%以下であることが好ましく、7〜40モル%であることがさらに好ましく、7〜30モル%であることが特に好ましい。7モル%未満では、繰り返し単位(1)の効果が十分に発揮されず、解像性能が劣り、低マスク依存性および低LWRのバランス等を向上させることができない恐れがある。50モル%を超えると、重合体(A)の後述する溶剤(B)に対する溶解性が悪化し、組成物としてのウエハーへの塗布性が悪化する恐れがある。
【0050】
重合体(A)は、後述するように、上記繰り返し単位(1)を与える単量体の他、必要に応じてラクトン骨格を含む繰り返し単位以外の他の構造単位を与える単量体と共にラジカル重合させることで得られる。
【0051】
上記重合体(A)は、さらに上記繰り返し単位(2)を有することが好ましい。繰り返し単位(2)は、酸の存在下で−CRが解離して(メタ)アクリル酸構造を生成する基を有する単位である。
【0052】
上記重合体(A)が、さらに構造単位(2)を有することで、重合体(A)を含む感放射線性樹脂組成物のパターン形成能が向上し、レジストとしての解像度が向上する。
【0053】
上記式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はR及びRが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成する。
【0054】
上記一般式(2)中のR、RおよびRが示す炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等を挙げることができ、中でもメチル基、エチル基、i−プロピル基が好ましい。また、R、RおよびRが示す炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等が挙げられる。さらに、RとRが相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に形成される炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、上記1価の脂環式炭化水素基から水素原子1つを除いた基が挙げられる。
【0055】
繰り返し単位(2)としては、下記一般式(2−1)〜(2−20)で示される繰り返し単位が特に好ましい。これらは一種単独でも、二種以上が含まれていてもよい。
【0056】
【化9】

【0057】
(式中、Rの定義は上記式(2)と同じである。)
【0058】
繰り返し単位(2)の含有率は、重合体(A)を構成する全構造単位に対して、5モル%〜93モル%が好ましく、10モル%〜93モル%がより好ましく、20モル%〜93モル%が特に好ましい。構造単位(2)の含有率が、上記範囲内であることで、レジストとしての解像度が向上し、さらに、低マスク依存性、低LWR共に優れるものとなる。
【0059】
また、重合体(A)は、後述する繰り返し単位(3−2)、繰り返し単位(3−3)を1種類以上含有してもよい。
【0060】
さらに、重合体(A)は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[4.4.0]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニルエステル等のアルキル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位を含有してもよい。
【0061】
上記重合体(A)は、ラジカル重合等の常法に従って合成することができる。例えば、
単量体およびラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;
単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;
各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0062】
なお、単量体溶液に対して、単量体溶液を滴下して反応させる場合、滴下される単量体溶液中の単量体量は、重合に用いられる単量体総量に対して30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上が特に好ましい。
【0063】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよい。通常、30℃〜150℃であり、40℃〜150℃が好ましく、50℃〜140℃がさらに好ましい。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜6時間が好ましく、1時間〜5時間がさらに好ましい。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常、30分〜12時間であり、45分〜12時間が好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。
【0064】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」ともいう。)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を挙げることができる。これらの開始剤は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0065】
重合溶媒としては、重合を阻害する溶媒(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶媒であって、その単量体を溶解可能な溶媒であれば限定されない。重合溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル・ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒及びその混合溶媒等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独又は2種以上を併用できる。
【0066】
重合反応により得られた樹脂は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の樹脂を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、樹脂を回収することもできる。
【0067】
上記重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCともいう。)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、1,000以上100,000以下が好ましく、1,000以上30,000以下がより好ましく、1,000以上20,000以下が特に好ましい。なお、上記重合体(A)のMwが1,000未満であると、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向がある。一方、上記重合体(A)のMwが100,000を超えると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向がある。
【0068】
また、上記重合体(A)のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」ともいう。)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1.0以上5.0以下であり、1.0以上3.0以下が好ましく、1.0以上2.0以下がより好ましい。
【0069】
本明細書のMw及びMnとは、GPCカラム(東ソー社、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した値をいう。
【0070】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記重合体(A)を単独または2種以上併用してもよい。また、重合体(A)と、後述する他の重合体(a)とを混合して用いてもよい。この場合、全重合体における重合体(A)の割合は1質量%以上、好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。1質量%未満では、重合体(A)の効果が十分に発揮されず、解像度、MEEFおよびLWRが高度にバランスされたレジスト特性を発揮することができない恐れがある。
【0071】
溶剤(B):
本発明の感放射線性樹脂組成物は、溶剤を含有する。該溶剤は、少なくとも上記の重合体(A)、および任意成分を溶解可能であれば、特に限定されない。例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤およびその混合溶剤等が挙げられる。クレームの表現に合わせて、全て「溶媒」→「溶剤」としました。
【0072】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶剤;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶剤等が挙げられる。
【0073】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶剤が挙げられる。
【0074】
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0075】
エーテル系溶剤としては、例えば、エチルエーテル、iso−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール等が挙げられる。
【0076】
エステル系溶剤としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0077】
その他の溶剤としては、例えば、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、iso−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶剤;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶剤を挙げることができる。
【0078】
これらの溶剤のうちでも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンおよびγ−ブチロラクトン、乳酸エチルが好ましい。これらの溶剤は、単独または2種以上を併用できる。これらの溶剤を用いると、レジストとしての塗布性、保存安定性、レジスト膜形成後のレジスト膜中の残溶剤率がバランスされたものとなる。
【0079】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記の重合体(A)および溶剤(B)に加え、他の重合体(a)、酸拡散制御体(C)を含有することが好ましい。
【0080】
(他の重合体(a))
重合体(a)は、前記重合体(A)をサポートするものであり、ラクトン構造を有する繰り返し単位(3−1)、環状カーボネート構造を有する繰り返し単位(3−2)および前記一般式(3)で表される繰り返し単位(3−3)から選ばれる少なくとも一種(繰り返し単位(3))を含有することが好ましい。特に、繰り返し単位(3−1)および繰り返し単位(3−2)から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0081】
これらの繰り返し単位(3)としては、下記式で示される繰り返し単位が特に好ましい。Rは、水素またはメチル基である。
【0082】
【化10】

【0083】
【化11】

【0084】
重合体(a)において、繰り返し単位(3)の含有率は、重合体(a)を構成する全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(3)の総量が、0〜70モル%であることが好ましく、20〜60モル%であることが更に好ましい。このような含有率とすることによって、レジストとしての現像性、欠陥性、低LWR、低PEB温度依存性等を向上させることができる。一方、70モル%を超えると、レジストとしての解像性、LWR、が低下するおそれがある。
【0085】
さらに重合体(a)には、上述した繰り返し単位(2)を含むことが好ましい。これらは一種単独でも、二種以上が含まれていてもよい。
【0086】
これらの繰り返し単位(2)の含有率は、重合体(a)を構成する全構造単位に対して、5モル%〜80モル%が好ましく、10モル%〜80モル%がより好ましく、20モル%〜70モル%が特に好ましい。上記範囲内であることで、レジストとしての解像度が向上し、さらに、感度、露光余裕共に優れるものとなる。
【0087】
さらに、重合体(a)は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[4.4.0]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニルエステル等のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0088】
重合体(a)は、単独または2種以上を併用できる。重合体(a)を用いる場合の使用量は、重合体(A)の効果を確保する観点から、全重合体100質量部に対して、通常、全重合体における重合体(a)の割合は99質量%以下、好ましくは98質量%以下、特に好ましくは95質量%以下である。上記範囲内であることで、レジストとしての解像度が向上し、さらに、低マスク依存性、低LWRのバランス共に優れるものとなる。
【0089】
(酸拡散制御体(C))
酸拡散制御体は、露光により酸発生体(前記重合体(A)または前記酸発生剤)から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御する成分である。具体的には、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏し、その結果、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上するとともに、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。酸拡散制御体の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態でも、重合体(A)または前述の他の重合体(a)の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0090】
酸拡散制御体としては、例えば、下記式で表される窒素含有化合物を好適に用いることができる。
【0091】
【化12】

【0092】
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜20のアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基であり、これらは置換基を有していてもよく、又はR11同士若しくはR12同士が互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の飽和若しくは不飽和炭化水素基若しくはその誘導体を形成してもよい。)
【0093】
上記式で表される窒素含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−アルキルアルコキシカルボニル基含有アミノ化合物等を挙げることができる。
【0094】
また、窒素含有化合物としては、上記式で表される窒素含有化合物以外にも、例えば、3級アミン化合物、4級アンモニウムヒドロキシド化合物、光崩壊性塩基化合物、その他含窒素複素環化合物等を挙げることができる。
【0095】
3級アミン化合物としては、例えば、
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;
アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類;
トリエタノールアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン等のアルカノールアミン類;
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンテトラメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル等を挙げることができる。
【0096】
4級アンモニウムヒドロキシド化合物としては、例えば、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。
【0097】
上述の酸拡散抑制剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。低分子の酸拡散制御剤の含有割合は、全重合体100質量部に対して、5質量部未満が好ましく、1質量部未満がさらに好ましい。合計使用量が5質量部を超えると、レジストとしての感度が著しく低下する傾向にある。
【0098】
任意成分
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記の重合体(A)および溶剤(B)、他の重合体(a)、酸拡散制御体(C)に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として酸発生剤、フッ素含有樹脂、脂環式骨格含有化合物、界面活性剤、増感剤等を含有することができる。任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0099】
(酸発生剤)
酸発生剤は、露光により酸を発生する低分子成分である。酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらの酸発生剤のうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0100】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む。)、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。これらのオニウム塩化合物のうち、スルホニウム塩が好ましい。
【0101】
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートおよびトリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましく、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネートがより好ましい。
【0102】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのテトラヒドロチオフェニウム塩のうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネートおよび1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0103】
ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのヨードニウム塩のうち、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0104】
スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等を挙げることができる。これらのスルホンイミド化合物のうち、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドが好ましい。
【0105】
酸発生剤は、単独または2種以上を併用できる。酸発生体を用いる場合の使用量は、重合体(A)の効果を確保する観点から、全重合体100質量部に対して、通常、10質量部以下、好ましくは9質量部以下である。この場合、酸発生体の使用量が10質量部を超えると、重合体(A)の効果が損なわれ、マスク依存性、LWRのバランスが悪化する恐れがある。
【0106】
(フッ素含有樹脂)
フッ素含有樹脂は、特に液浸露光においてレジスト膜表面に撥水性を発現させる作用を示す。また、レジスト膜から液浸液への成分の溶出を抑制する効果を奏し、さらに高速スキャンにより液浸露光を行ったとしても液滴を残さない為、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制する効果がある。
【0107】
フッ素含有樹脂の構造としては、例えば、
それ自体が現像液に不溶で、酸の作用によりアルカリ可溶性となるフッ素含有樹脂;
それ自体が現像液に可溶で、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大するフッ素含有樹脂;
それ自体が現像液に不溶で、アルカリの作用によりアルカリ可溶性となるフッ素含有樹脂;
それ自体が現像液に可溶であり、アルカリの作用によりアルカリ可溶性が増大するフッ素含有樹脂等を挙げることができる。
【0108】
フッ素含有樹脂としては、フッ素含有繰り返し単位を有する重合体が好ましい。フッ素含有繰り返し単位を与える単量体としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0109】
フッ素含有樹脂としては、例えば、上記フッ素含有繰り返し単位と、重合体(A)を構成する繰り返し単位とを有する共重合体等が好ましい。これらのフッ素含有樹脂は、単独または2種以上を併用できる。
【0110】
(脂環式骨格含有化合物)
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0111】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等を挙げることができる。これらの脂環式骨格含有化合物は、単独または2種以上を併用できる。
【0112】
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。
【0113】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名で、KP341(信越化学工業社)、ポリフローNo.75、同No.95(共栄社化学社)、エフトップEF301(トーケムプロダクツ社)、エフトップEF303(トーケムプロダクツ社)、エフトップEF352(トーケムプロダクツ社)、メガファックF171(大日本インキ化学工業社)、メガファックF173(大日本インキ化学工業社)、フロラードFC430(住友スリーエム社)、フロラードFC431(住友スリーエム社)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382(旭硝子工業社)、サーフロンSC−101(旭硝子工業社)、サーフロンSC−102(旭硝子工業社)、サーフロンSC−103(旭硝子工業社)、サーフロンSC−104(旭硝子工業社)、サーフロンSC−105(旭硝子工業社)、サーフロンSC−106(旭硝子工業社)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0114】
(増感剤)
増感剤は、酸発生体に吸収される放射線のエネルギー以外のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを電子やラジカル等の形で酸発生体に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0115】
増感剤としては、例えば、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等を挙げることができる。これらの増感剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0116】
(その他の任意成分)
その他の任意成分としては、例えば、染料、顔料、接着助剤、アルカリ可溶性樹脂、酸解離性の保護基を有する低分子のアルカリ溶解性制御剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、消泡剤等が挙げられる。これらのうち、例えば、染料または顔料を配合すると、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できる。また、接着助剤を配合すると、基板との接着性を改善できる。これらのその他の任意成分は、単独または2種以上を併用できる。
【0117】
(フォトレジストパターンの形成方法)
フォトレジストパターンの形成方法は、例えば、以下に示す方法が一般的である。感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にフォトレジスト膜を形成する工程(以下、工程(i)ともいう。)、形成されたフォトレジスト膜に、必要に応じて液浸媒体を介し、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射して露光する工程(以下、工程(ii)ともいう。)、基板(露光されたフォトレジスト膜)を加熱する工程(以下、工程(iii)ともいう。)、現像工程(以下、工程(iv)ともいう。)を経て、フォトレジストパターンを形成することができる。
【0118】
工程(i)では、感放射線性樹脂組成物またはこれを溶剤に溶解させて得られた組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって、基板(シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等)上に所定の膜厚となるように樹脂組成物溶液を塗布し、次いでプレベークすることにより塗膜中の溶剤を揮発させることにより、フォトレジスト膜を形成する。
【0119】
工程(ii)では、工程(i)で形成されたフォトレジスト膜に(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し、露光させる。なお、この際、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等から適宜選択して照射する。ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザーがより好ましい。
【0120】
工程(iii)は、PEBと呼ばれ、工程(ii)でフォトレジスト膜の露光された部分において、酸発生体[B]から発生した酸が重合体を脱保護する工程である。PEBは、通常50℃から180℃の範囲で適宜選択して実施される。
【0121】
工程(iv)では、露光されたフォトレジスト膜を、現像液で現像することにより、所定のフォトレジストパターンを形成する。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【0122】
また、液浸露光を行う場合は、工程(ii)の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、工程(iv)の前に溶剤により剥離する、溶剤剥離型保護膜(例えば、特開2006−227632号公報参照)、工程(iv)の現像と同時に剥離する、現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005−069076号公報、WO2006−035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。但し、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0123】
このようにして得られるレジストパターンは、トップロスが防止されて矩形性が良好であり、LWRおよびパターン倒れも抑制されているので、リソグラフィー技術を応用した微細加工に好適である。
【実施例】
【0124】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、部は、特記しない限り質量基準である。実施例および比較例における各測定・評価は、下記の要領で行った。
【0125】
[分子量(Mw、Mn)測定方法]:
下記樹脂(A−1)、(A−4)、(A−5)の分子量(Mw、Mn)測定には、MALLSを検出器として用いた。東ソー社製のGPCカラム(TSKgel α−2500、TSKgel α−M)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒としてLiBrを30mmol/lとHPOを10mmol/l溶解させたジメチルホルムアミドを用い、カラム温度40℃の分析条件で、MALLS(Wyatt社製、DAWN DSP、セルタイプK5、レーザー波長632.8nm)を検出器として用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
下記樹脂(A−2)、(A−3)の分子量(Mw、Mn)測定には、東ソー社製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0126】
13C−NMR分析]:
それぞれの重合体の13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(商品名:JNM−ECX400、日本電子社製)を使用し、測定した。
【0127】
<樹脂(A)の合成>
樹脂(A−1)〜(A−4)は、各合成例において、下記の単量体(M−1)〜(M−6)を用いて合成した。
【0128】
(M−1):1−エチルシクロペンチルメタクリレート
(M−2):トリフェニルスルホニウム=1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタン−1−スルホナート
(M−3):1−エチルアダマンチルメタクリレート
(M−4):4−オキサ−5−オキソトリシクロ[4,2,1,03,7]ノナン−2−イルメタクリレート
(M−5):2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(M−6):2−(1,1,1−トリフルオロエチル)メタクリレート
(M−7):下記式で示される化合物
【0129】
【化13】

【0130】
(M−8):下記式で示される化合物
【0131】
【化14】

【0132】
(M−9):下記式で示される化合物
【0133】
【化15】

【0134】
(M−10):1−(3−ヒドロキシアダマンチル)メタクリレート
【0135】
実施例1:樹脂(A−1)
イエロールームにて、単量体(M−1)19.49g(85モル%)、単量体(M−2)10.51g(15モル%)を2−ブタノン60gに溶解し、更に開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.90g(10モル%)を投入、溶解した単量体溶液を準備した。
【0136】
次に、イエロールームにて温度計および滴下漏斗を備えた200mlの三つ口フラスコに30gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、600gのヘキサン、60gのメタノール、3gの水を注ぎ激しく攪拌した後、静置した。混合溶液は2層に分離し、3時間静置した後に下層(樹脂溶液)を分取した。エバポレーターを用いて分取した樹脂溶液をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液へと溶剤置換した。共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液70.3gを得た。ホットプレートを用いて固形分濃度を求めた結果、共重合体濃度は26.3%、収率は62%であった。この共重合体を樹脂(A−1)とした。この共重合体は、Mwが7,000であり、Mw/Mnが1.60であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−2)由来の繰り返し単位の含有比率が83.0:17.0(モル%)の共重合体であった。
【0137】
13C−NMR分析にて組成比算出に用いたピークは以下の通りである。
(M−1)由来の構造単位:δ 93.1(1C)
(M−2)由来の構造単位:δ 124.8(3C)
【0138】
合成例1:樹脂(A−2)
単量体(M−1)13.42g(30モル%)、単量体(M−4)27.28g(50モル%)、単量体(M−5)3.20g(10モル%)を2−ブタノン100gに溶解し、更に開始剤としてAIBN4.03g(10モル%)を投入、溶解した単量体溶液を準備した。
【0139】
次に、温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに50gの2−ブタノン、単量体(M−3)6.10g(10モル%)を投入、溶解し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、800gのメタノールおよび200gの水の混合用液へ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を200gのメタノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(34.2g、収率68%)。この共重合体を樹脂(A−2)とした。この共重合体は、Mwが4,300であり、Mw/Mnが1.32であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−3)由来の繰り返し単位:化合物(M−4)由来の繰り返し単位:化合物(M−5)由来の繰り返し単位の含有比率が29.0:8.0:52.9:10.1(モル%)の共重合体であった。
【0140】
合成例2:樹脂(A−3)
単量体(M−1)35.83g(70モル%)、単量体(M−6)14.17g(30モル%)を2−ブタノン50gに溶解し、更に開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.17g(8モル%)を投入、溶解した単量体溶液を準備した。
【0141】
次に、温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに50gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、150gのヘキサン、600gのメタノール、30gの水を注ぎ激しく攪拌した後、静置した。混合溶液は2層に分離し、3時間静置した後に下層(樹脂溶液)を分取した。エバポレーターを用いて分取した樹脂溶液をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液へと溶剤置換した。共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液159.2gを得た。ホットプレートを用いて固形分濃度を求めた結果、共重合体濃度は20.1%、収率は64%であった。この共重合体を樹脂(A−3)とした。この共重合体は、Mwが6,900であり、Mw/Mnが1.34であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−6)由来の繰り返し単位の含有比率が80.5:29.5(モル%)の共重合体であった。
【0142】
合成例3:樹脂(A−4)
単量体(M−1)21.13g(50モル%)、単量体(M−2)5.16g(4モル%)、単量体(M−4)23.71g(46モル%)を2−ブタノン150gに溶解し、更に開始剤としてAIBN1.90g(5モル%)を投入、溶解した単量体溶液を準備した。
【0143】
次に、温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに50gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、250gの2−プロパノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を1250gの2−プロパノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(34.7g、収率69%)。この共重合体を樹脂(A−4)とした。この共重合体は、Mwが12,500であり、Mw/Mnが1.19であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−2)由来の繰り返し単位:化合物(M−4)由来の繰り返し単位の含有比率が34.8:4.2:61.0(モル%)の共重合体であった。
【0144】
合成例4:樹脂(A−5)
単量体(M−1)20.50g(50モル%)、単量体(M−2)7.51g(6モル%)、単量体(M−4)21.99g(44モル%)を2−ブタノン150gに溶解し、更に開始剤としてAIBN1.85g(5モル%)を投入、溶解した単量体溶液を準備した。
【0145】
次に、温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに50gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、250gの2−プロパノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を1250gの2−プロパノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(36.9g、収率75%)。この共重合体を樹脂(A−5)とした。この共重合体は、Mwが10,900であり、Mw/Mnが1.20であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−2)由来の繰り返し単位:化合物(M−4)由来の繰り返し単位の含有比率が34.5:6.1:59.4(モル%)の共重合体であった。
【0146】
実施例2:樹脂(A−6)
イエロールームにて、単量体(M−1)19.74g(85モル%)、単量体(M−7)10.26g(15モル%)を2−ブタノン60gに溶解し、更に開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.93g(10モル%)を投入、溶解した単量体溶液を準備した。
【0147】
次に、イエロールームにて温度計および滴下漏斗を備えた200mlの三つ口フラスコに30gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、600gのヘキサン、60gのメタノール、3gの水を注ぎ激しく攪拌した後、静置した。混合溶液は2層に分離し、3時間静置した後に下層(樹脂溶液)を分取した。エバポレーターを用いて分取した樹脂溶液をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液へと溶剤置換した。共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液71.3gを得た。ホットプレートを用いて固形分濃度を求めた結果、共重合体濃度は25.9%、収率は62%であった。この共重合体を樹脂(A−6)とした。この共重合体は、Mwが7,100であり、Mw/Mnが1.59であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−7)由来の繰り返し単位の含有比率が83.5:17.5(モル%)の共重合体であった。
【0148】
13C−NMR分析にて組成比算出に用いたピークは以下の通りである。
(M−1)由来の構造単位:δ 93.1(1C)
(M−7)由来の構造単位:δ 124.8(3C)
【0149】
実施例3:樹脂(A−7)
イエロールームにて、単量体(M−1)10.41g(55モル%)、単量体(M−7)8.36g(15モル%)、単量体(M−9)11.23g(30モル%)を2−ブタノン60gに溶解し、更に開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.39g(10モル%)を投入、溶解した単量体溶液を準備した。
【0150】
次に、イエロールームにて温度計および滴下漏斗を備えた200mlの三つ口フラスコに30gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、600gのヘキサン、60gのメタノール、3gの水を注ぎ激しく攪拌した後、静置した。混合溶液は2層に分離し、3時間静置した後に下層(樹脂溶液)を分取した。エバポレーターを用いて分取した樹脂溶液をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液へと溶剤置換した。共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液71.5gを得た。ホットプレートを用いて固形分濃度を求めた結果、共重合体濃度は23.9%、収率は57%であった。この共重合体を樹脂(A−7)とした。この共重合体は、Mwが7,500であり、Mw/Mnが1.55であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−7)由来の繰り返し単位:化合物(M−9)由来の繰り返し単位の含有比率が53.6:17.2:29.2(モル%)の共重合体であった。
【0151】
13C−NMR分析にて組成比算出に用いたピークは以下の通りである。
(M−1)由来の構造単位:δ 93.1(1C)
(M−7)由来の構造単位:δ 124.8(3C)
(M−9)由来の構造単位:δ 110.5(1C)
【0152】
実施例4:樹脂(A−8)
イエロールームにて、単量体(M−1)11.95g(55モル%)、単量体(M−7)9.60g(15モル%)、単量体(M−10)8.45g(30モル%)を2−ブタノン60gに溶解し、更に開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.75g(10モル%)を投入、溶解した単量体溶液を準備した。
【0153】
次に、イエロールームにて温度計および滴下漏斗を備えた200mlの三つ口フラスコに30gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、600gのヘキサン、60gのメタノール、3gの水を注ぎ激しく攪拌した後、静置した。混合溶液は2層に分離し、3時間静置した後に下層(樹脂溶液)を分取した。エバポレーターを用いて分取した樹脂溶液をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液へと溶剤置換した。共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液73.1gを得た。ホットプレートを用いて固形分濃度を求めた結果、共重合体濃度は24.2%、収率は59%であった。この共重合体を樹脂(A−8)とした。この共重合体は、Mwが7,300であり、Mw/Mnが1.57であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−7)由来の繰り返し単位:化合物(M−10)由来の繰り返し単位の含有比率が52.9:16.0:31.1(モル%)の共重合体であった。
(M−1)由来の構造単位:δ 93.1(1C)
(M−7)由来の構造単位:δ 124.8(3C)
(M−10)由来の構造単位:δ 73.9(1C)
【0154】
合成例5:樹脂(A−9)
イエロールームにて、単量体(M−1)17.27g(55モル%)、単量体(M−8)12.73g(30モル%)を2−ブタノン50g、2−プロパノール10gの混合溶媒に溶解し、更に開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.57g(10モル%)を投入、溶解した単量体溶液を準備した。
【0155】
次に、イエロールームにて温度計および滴下漏斗を備えた200mlの三つ口フラスコに30gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、600gのヘキサン、60gのメタノール、3gの水を注ぎ激しく攪拌した後、静置した。混合溶液は2層に分離し、3時間静置した後に下層(樹脂溶液)を分取した。エバポレーターを用いて分取した樹脂溶液をシクロヘキサノン溶液へと溶剤置換した。共重合体のシクロヘキサノン溶液69.6gを得た。ホットプレートを用いて固形分濃度を求めた結果、共重合体濃度は25.0%、収率は58%であった。この共重合体を樹脂(A−6)とした。この共重合体は、Mwが7,400であり、Mw/Mnが1.55であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−8)由来の繰り返し単位の含有比率が84.0:16.0(モル%)の共重合体であった。
【0156】
溶解性試験
得られた実施例1,2,3,4および合成例3,4,5で得られた共重合体(A−1)、(A−6)、(A−7)、(A−8)、(A−4)、(A−5)、(A−9)について、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する溶解性を試験した。その結果、共重合体濃度が20%となるように共重合体とPGMEAを混ぜた時、実施例1,2,3,4の共重合体のPGMEA溶液は沈殿の無い均一な溶液となるのに対し、合成例3,4,5の共重合体は沈殿を生じた。なお、合成例5の共重合体(A−9)については、合成例5中に記載したシクロヘキサノンへと溶剤を置換する段階で置換溶剤をシクロヘキサノンからPGMEAに変更して試験した。溶解性試験の結果から分かるように、本発明の共重合体はPGMEAに良好な溶解性を示すことが明らかである。
【0157】
(感放射線性樹脂組成物の調製)
上記合成例にて合成した重合体(A−1)〜(A−10)以外の感放射線性レジスト組成物を構成する各成分(酸発生剤(C)、溶剤(E))について以下に示す。
【0158】
<酸発生剤(C)>
(C−1):下記式で示される化合物
【0159】
【化16】

【0160】
(C−2):トリフェニルスルホニウム サリチル酸塩
【0161】
<溶剤(E)>
(E−1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(E−2):シクロヘキサノン
(E−3):γ−ブチロラクトン
【0162】
実施例5
合成例2で得られた重合体(A−2)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−3)3質量部、酸発生剤として、実施例1で得られた重合体(A−1)32質量部、(C−2)6.2質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン:1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン:100質量部をそれぞれが組成物に含まれる量となるように添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(J−5)とした。
【0163】
実施例6
合成例2で得られた重合体(A−2)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−3)3質量部、酸発生剤として、実施例2で得られた重合体(A−6)32質量部、(C−2)6.2質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン:1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン:100質量部をそれぞれが組成物に含まれる量となるように添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(J−6)とした。
【0164】
実施例7
合成例2で得られた重合体(A−2)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−3)3質量部、酸発生剤として、実施例3で得られた重合体(A−7)32質量部、(C−2)6.2質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン:1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン:100質量部をそれぞれが組成物に含まれる量となるように添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(J−7)とした。
【0165】
実施例8
合成例2で得られた重合体(A−2)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−3)3質量部、酸発生剤として、実施例4で得られた重合体(A−8)32質量部、(C−2)6.2質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン:1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン:100質量部をそれぞれが組成物に含まれる量となるように添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(J−8)とした。
【0166】
比較例1
合成例2で得られた重合体(A−2)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−3)3質量部、酸発生剤として、(C−1)12質量部、(C−2)6.2質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、((E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン:1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン:100質量部をそれぞれが組成物に含まれる量となるように添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(H−1)とした。
【0167】
比較例2
合成例4で得られた重合体(A−4)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−3)3質量部、酸発生剤として、(C−1)8質量部、(C−2)6.2質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン:1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン:100質量部をそれぞれが組成物に含まれる量となるように添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(H−2)とした。
【0168】
比較例3
合成例4で得られた重合体(A−4)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−3)3質量部、酸発生剤として、(C−2)2.1質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン:1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン:100質量部をそれぞれが組成物に含まれる量となるように添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(H−3)とした。
【0169】
比較例4
合成例5で得られた重合体(A−5)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−3)3質量部、酸発生剤として、(C−2)2.1質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン:1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン:100質量部をそれぞれが組成物に含まれる量となるように添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得た。攪拌したが均一な溶液とはならず懸濁したままであった。この溶液は孔径0.20μmのフィルターでろ過できなかった。
【0170】
比較例5
合成例2で得られた重合体(A−2)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−3)3質量部、酸発生剤として、合成例6で得られた重合体(A−9)32質量部、(C−2)6.2質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン:1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン:100質量部をそれぞれが組成物に含まれる量となるように添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(H−5)とした。
【0171】
[評価方法]
得られた実施例5,6,7,8および比較例1,2,3,5の感放射線性樹脂組成物について、ArFエキシマレーザーを光源として、感度、MEFおよびLWRについて評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0172】
最適露光量(感度)(単位:mJ/cm):
まず、下層反射防止膜(「ARC66」、日産化学社製)を形成した12インチシリコンウェハ上に、感放射線性樹脂組成物によって、膜厚75nmの被膜を形成し、120度で60秒間ソフトベーク(SB)を行った。次に、この被膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(「NSR S610C」、NIKON社製)を用い、NA=1.3、ratio=0.800、Annularの条件により、マスクパターンを介して露光した。露光後、組成物(J−1)については90℃で、組成物(H−1)については85℃で、組成物(H−2)、(H−3)については100℃で60秒間ポストベーク(PEB)を行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、50nmライン100nmピッチのパターン形成用のマスクを介して線幅50nmの1:1のラインアンドスペースを形成する露光量を最適露光量とした。なお、測長には走査型電子顕微鏡(「CG−4000」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。
【0173】
MEF(マスクエラーファクター):
上記最適露光量の評価法に従い、最適露光量にて42nmライン58nmピッチ、46nmライン54nmピッチ、50nmライン100nmピッチのパターン形成用のマスクをそれぞれ介して、ピッチ100nmのLSパターンを形成した。このとき、設計パターンサイズのラインサイズ(nm)を横軸に、形成された対応するライン幅(nm)を縦軸にプロットしたときの直線の傾きをMEFとして算出した。MEF(直線の傾き)は、その値が1に近いほどマスク再現性が良好である。
【0174】
LWR(パターンウィズスラフネス):
前記走査型電子顕微鏡を用い、最適露光量にて解像した50nm1L/1Sのパターンをパターン上部から観察し、任意の10点ポイントで線幅を測定した。線幅の測定値の3シグマ値(ばらつき)をLWRとした。このLWRの値が小さいほど、形成されたパターン形状が良好であると評価することが出来る。
【0175】
【表1】

【0176】
表1に示されたように、本感放射線性樹脂組成物を用いれば、感度、LWRを同等に維持して、マスク再現性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、KrFエキシマレーザー、およびArFエキシマレーザーを光源とするリソグラフィー材料として好適に用いることができる。また、液浸露光にも対応可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を7モル%以上含有しラクトン骨格を有しない重合体と、(B)溶剤とを含むことを特徴とする、感放射線性樹脂組成物。

(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Xは置換基を有してもよいアルキレン基を示す。Rは水素原子、フッ素原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数2〜11の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基を示し、Rは炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシル基若しくは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルカンスルホニル基を示し、Rは相互に独立に炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換されていてもよい芳香環含有炭化水素基を示すか、或いは2個のRが互いに結合して、両者が結合しているS+と共に環状構造を形成する。mは0〜2の整数であり、nは0〜10の整数である。)
【請求項2】
(A)重合体が、さらに下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする、請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。

(一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示し、RおよびRは、相互に独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示すか、あるいはRとRが相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成する。)
【請求項3】
さらに、(a)上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有しない重合体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
(a)重合体が、ラクトン構造を有する繰り返し単位、環状カーボネート構造を有する繰り返し単位および下記一般式(3)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする、請求項3に記載の感放射線性樹脂組成物。

(一般式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Xは炭素数1〜10の(a+1)価の炭化水素基を示し、Aは単結合または−O−、−COO−、−OCO−もしくは−NH−で表される基を示し、Yは単結合または炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、Rは水酸基またはカルボキシル基を示し、aは1〜3の整数である。)
【請求項5】
(a)重合体が、さらに上記一般式(2)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする、請求項4に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(C)酸拡散制御体を含有することを特徴とする、請求項1〜5に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位を7モル%以上含有しラクトン骨格を有しないことを特徴とする、重合体。

【公開番号】特開2011−215428(P2011−215428A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84490(P2010−84490)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】