説明

感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】レジストパターンの裾引き形状改善に効果が有り、LER性能が良好なパターンを形成することが可能である感活性光線又は感放射線樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂及び(B)活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物を含有し、(B)活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物を、感活性光線性または感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、10〜30質量%含有する感活性光線性または感放射線性樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、更にはその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。特に波長が300nm以下の遠紫外線光を光源とする液浸式投影露光装置で露光するために好適な液浸露光用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。
なお、本発明において「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の微細化に伴い露光光源の短波長化と投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とするNA0.84の露光機が開発されている。これらは一般によく知れている様に次式で表すことができる。
(解像力)=k1・(λ/NA)
(焦点深度)=±k2・λ/NA2
ここでλは露光光源の波長、NAは投影レンズの開口数、k1及びk2はプロセスに関係する係数である。
【0003】
更なる波長の短波化による高解像力化のために157nmの波長を有するF2エキシマレーザーを光源とする露光機が検討されているが、短波長化のために露光装置に使用するレンズ素材とレジストに使用する素材が非常に限定されるため、装置や素材の製造コストや品質安定化が非常に困難であり、要求される期間内に十分な性能と安定性を有する露光装置及びレジストが間に合わない可能性が出てきている。
【0004】
光学顕微鏡において解像力を高める技術として、従来から投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たす、所謂、液浸法が知られている。
この「液浸の効果」はλ0を露光光の空気中での波長とし、nを空気に対する液浸液の屈折率、θを光線の収束半角としNA0=sinθとすると、液浸した場合、前述の解像力及び焦点深度は次式で表すことができる。
(解像力)=k1・(λ0/n)/NA0
(焦点深度)=±k2・(λ0/n)/NA02
すなわち、液浸の効果は波長が1/nの露光波長を使用するのと等価である。言い換えれば、同じNAの投影光学系の場合、液浸により、焦点深度をn倍にすることができる。これは、あらゆるパターン形状に対して有効であり、更に、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
【0005】
この効果を半導体素子の微細画像パターンの転写に応用した装置例が、特許文献1、特許文献2等にて紹介されている。
最近の液浸露光技術進捗が非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、特許文献3、特許文献4等で報告されている。
ArFエキシマレーザーを光源とする場合は、取り扱い安全性と193nmにおける透過率と屈折率の観点で純水(193nmにおける屈折率1.44)が液浸液として最も有望であると考えられている。F2エキシマレーザーを光源とする場合は、157nmにおける透過率と屈折率のバランスからフッ素を含有する溶液が検討されているが、環境安全性の観点や屈折率の点で十分な物は未だ見出されていない。液浸の効果の度合いとレジストの完成度から液浸露光技術はArF露光機に最も早く搭載されると考えられている。
【0006】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うためにレジストの画像形成方法として化学増幅という画像形成方法が用いられている。ポジ型の化学増幅の画像形成方法を例に挙げ説明すると、露光で露光部の酸発生剤が分解し酸を生成させ、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)でその発生酸を反応触媒として利用してアルカリ不溶の基をアルカリ可溶基に変化させ、アルカリ現像により露光部を除去する画像形成方法である。
【0007】
化学増幅型レジスト組成物の主要構成成分である酸発生剤についても種々の化合物が見出されており、特許文献5及び6は、酸発生剤として、特定のスルホニウム塩化合物を含有するレジスト組成物を開示している。
特許文献7は、X線、電子線、EUV露光によるパターニングにおいて、高感度、高解像力、良好なパターン形状、ラインエッジラフネスを抑制すべく、ポリヒドロキシスチレン系樹脂と5〜20質量%の酸発生剤を含有するポジ型レジスト組成物を開示している。
【0008】
しかしながら、レジストとしての総合性能の観点から、使用される樹脂、光酸発生剤、添加剤、溶剤等の適切な組み合わせを見い出すことが極めて困難であるのが実情であり、更に線幅100nm以下のような微細なパターンを形成する際には、通常のドライ露光、そして特に液浸露光において、微細化によるパターン形状の裾引きの問題や、未だ不十分な点が多く、パターン側壁の荒れるラインエッジラフネス(LER)の改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭57−153433号公報
【特許文献2】特開平7−220990号公報
【特許文献3】特開平10−303114号公報
【特許文献4】国際公開第04/077158号
【特許文献5】特開平10−232490号公報
【特許文献6】特開2003−195489号公報
【特許文献7】特開2004−271629号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】国際光工学会紀要(Proc. SPIE), 2002年, 第4688巻,第11頁
【非特許文献2】J.Vac.Sci.Tecnol.B 17(1999)
【非特許文献3】国際光工学会紀要(Proc. SPIE), 2000年, 第3999巻,第2頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、レジストパターンの裾引き形状改善に効果が有り、LER性能が良好なパターンを形成することが可能である感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法を提供することである。
【0012】
<1>(A)酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有し、(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、10〜30質量%含有することを特徴とする感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0013】
<2>(B)成分が、下記一般式(1−1)又は(1−2)で表される化合物であることを特徴とする上記<1>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0014】
【化1】

【0015】
一般式(1−1)中、
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又は単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有する基を表す。
14は複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又は単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有するアルコキシ基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
一般式(1−2)中、
Mは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はベンジル基を表し、環構造を有するとき、環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
式中、R1c及びR2cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。R1cとR2cとが結合して環を形成してもよい。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
及びRが結合して環を形成してもよい。また、M、R1c及びR2cの少なくとも二つが結合して環を形成してもよく、該環構造に炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
は、非求核性アニオンを表す。
【0016】
<3>更に含窒素塩基性化合物を含むことを特徴とする上記<1>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<4>樹脂(A)が、ラクトン構造を含む繰り返し単位を含有することを特徴とする、上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0017】
<5>樹脂(A)が、単環又は多環の脂環構造を含有する酸分解性基を有する繰り返し単位を含有することを特徴とする、上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0018】
<6>基板上に塗布し、100nmの膜を形成した際の該塗布膜の波長193nmの光に対する透過率が60%以上85%以下であることを特徴とする上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0019】
<7>上記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の液浸露光用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。<8>上記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜を形成し、該塗膜を液浸露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、レジストパターンの裾引き形状改善に効果が有り、LER性能が良好なパターンを形成することが可能である感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法を提供することができる。なお、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、ポジ型レジスト組成物として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表され遠紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
本発明により、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、そして特にArF光に対して高い透明性を有する上記一般式(1−1)又は(1−2)で表される化合物を、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、10〜30質量%という高濃度で添加しても、ArF光に対する透明性の問題を生じずに、レジストパターンの裾引き形状改善に効果が有り、LER性能が良好なパターンを形成することができることを見出した。
【0022】
〔1〕(A)酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂(A)を含有する。
酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(酸分解性樹脂)は、樹脂の主鎖かつ/又は側鎖に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する。
樹脂(A)は好ましくはアルカリ現像液に不溶又は難溶性である。
【0023】
酸分解性基は、アルカリ可溶性基を酸の作用により分解し脱離する基で保護された構造を有することが好ましい。
アルカリ可溶性基としては、アルカリ現像液中で解離してイオンになる基であれば特に限定されないが、好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
酸分解性基として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
【0024】
樹脂(A)が含有し得る、酸分解性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位が好ましい。また、単環又は多環の脂環構造を含有する酸分解性基を有する繰り返し単位が好ましい。
【0025】
【化2】

【0026】
一般式(AI)に於いて、
Xa1は、水素原子、メチル基又は−CH2−R9で表わされる基を表す。R9は、水酸基又は1価の有機基を表し、例えば、炭素数5以下のアルキル基、アシル基が挙げられ、好ましくは炭素数3以下のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。Xa1は好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx1〜Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。
Rx1〜Rx3の2つが結合して、シクロアルキル基(単環若しくは多環)を形成してもよい。
【0027】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、−COO−Rt−基、−O−Rt−基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は−COO−Rt−基が好ましい。Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH2−基、−(CH23−基がより好ましい。
Rx1〜Rx3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
Rx1〜Rx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1〜Rx3の少なくとも2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している様態が好ましい。
上記各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
【0028】
酸分解性基を有する繰り返し単位の合計としての含有率は、樹脂中の全繰り返し単位に対し、20〜70モル%が好ましく、より好ましくは30〜50モル%である。
【0029】
好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、Rx、Xa1は、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。Rxa、Rxbはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を表す。Zは、極性基を含む置換基を表し、水酸基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミド基若しくはスルホンアミド基など極性基自体、又は、これらのいずれかを有する、直鎖若しくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。複数存在する場合は各々独立である。pは0又は正の整数を表す。
【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
樹脂(A)は、一般式(AI)で表される繰り返し単位として、一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかを有する樹脂であることがより好ましい。
なお、単環又は多環の脂環構造を含有する酸分解性基を有する繰り返し単位として、一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)において−C(R)(R)(R)が単環又は多環の脂環構造を含有する繰り返し単位を挙げることができる。
【0035】
【化7】

【0036】
式(1)及び(2)中、
1、R3は、各々独立して、水素原子、メチル基又は−CH2−R9で表わされる基を表す。R9は水酸基又は1価の有機基を表す。
2、R4、R5、R6は、各々独立して、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rは炭素原子とともに脂環構造を形成するのに必要な原子団を表す。
【0037】
1は、好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0038】
2におけるアルキル基は、直鎖型でも分岐型でもよく、置換基を有していてもよい。
2におけるシクロアルキル基は、単環でも多環でもよく、置換基を有していてもよい。
2は好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは1〜5のものであり、例えばメチル基、エチル基が挙げられる。
【0039】
Rは炭素原子とともに脂環構造を形成するのに必要な原子団を表す。Rが形成する脂環構造としては、好ましくは、単環の脂環構造であり、その炭素数は好ましくは3〜7、より好ましくは5又は6である。
【0040】
3は好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
4、R5、R6におけるアルキル基は、直鎖型でも分岐型でもよく、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
4、R5、R6におけるシクロアルキル基は、単環でも多環でもよく、置換基を有していてもよい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0041】
また、一般式(1)で表される繰り返し単位が、以下の一般式(1−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0042】
【化8】

【0043】
式(1−1)中、
Rv及びRvは、各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
nは1〜6の整数を表す。
【0044】
nは好ましくは1又は2を表し、より好ましくは1を表す。
Rv、Rvにおける炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖でも分岐でもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下のものが好ましい。
【0045】
一般式(2)で表される繰り返し単位が、以下の一般式(2−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0046】
【化9】

【0047】
式(2−1)中、
3〜R5は、一般式(2)におけるものと同義である。
10は極性基を含む置換基を表す。R10が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。極性基を含む置換基としては、例えば、水酸基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミド基若しくはスルホンアミド基など極性基自体、又は、これらのいずれかを有する、直鎖若しくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基が挙げられ、好ましくは、水酸基を有するアルキル基である。より好ましくは水酸基を有する分岐状アルキル基である。分岐状アルキル基としてはイソプロピル基が特に好ましい。
pは0〜15の整数を表す。pは好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1である。
【0048】
また、樹脂(A)は酸分解性基を有する繰り返し単位を併用してもよい。また本発明の組成物が樹脂(A)を複数種含有し、それぞれが異なる酸分解性基を含有してもよい。
これらの場合、一般式(1)で表される異なる繰り返し単位を少なくとも2種含む場合、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位を含む場合、又は、一般式(1−1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位を含む場合が好ましい。
一般式(1)で表される繰り返し単位を少なくとも2種含む場合としては、例えば一般式(1)におけるRがエチル基の繰り返し単位と、該Rがメチル基の繰り返し単位との組み合わせ、一般式(1)におけるRがエチル基の繰り返し単位と、該Rがシクロアルキル基である繰り返し単位との組み合わせ、式(1)におけるR2がメチル基又はエチル基でありRが形成する環がアダマンタンである繰り返し単位と式(1−1)においてRv2がメチル基又はエチル基である繰り返し単位との組み合わせが好ましい。
一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位を含む場合としては、例えば一般式(1)におけるRがエチル基の繰り返し単位と、一般式(2)におけるR、Rがメチル基でRがアダマンチル基である繰り返し単位との組み合わせ、一般式(1)におけるRがエチル基の繰り返し単位と、一般式(2)におけるR、Rがメチル基でRがシクロヘキシル基である繰り返し単位との組み合わせ、一般式(1−1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位を含む場合としては、例えば一般式(1−1)におけるRvがエチル基でnが1である繰り返し単位と、一般式(2)におけるR、Rがメチル基でRがアダマンチル基である繰り返し単位との組み合わせ、一般式(1−1)におけるRvがエチル基でnが2である繰り返し単位と、一般式(2)におけるR、Rがメチル基でRがシクロヘキシル基である繰り返し単位との組み合わせ等を挙げることができる。
【0049】
樹脂(A)が酸分解性繰り返し単位を併用する場合の、好ましい組み合わせとしては、以下に挙げるものが好ましい。下式において、Rは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0050】
【化10】

【0051】
樹脂(A)は、ラクトン基を有する繰り返し単位を含有していることが好ましい。
ラクトン基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)、(LC1−17)であり、特定のラクトン構造を用いることでLER、現像欠陥が良好になる。
【0052】
【化11】

【0053】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。nは、0〜4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb2)は、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在する置換基(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0054】
ラクトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0055】
【化12】

【0056】
一般式(AII)中、
Rb0は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rb0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基であり、水素原子、メチル基が特に好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。好ましくは、単結合、−Ab1−CO2−で表される2価の連結基である。
Ab1は、直鎖、分岐アルキレン基、単環又は多環のシクロアルキレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
Vは、ラクトン構造を有する基を表す。具体的には、例えば一般式(LC1−1)〜(LC1−17)の内のいずれかで示される構造を有する基を表す。
【0057】
一般式(AII)で表される単位のうち、Abが単結合である場合に特に好ましいラクトン基を有する繰り返し単位としては、下記の繰り返し単位が挙げられる。具体例中、RxはH,CH,CHOH,又はCFを表す。最適なラクトン基を選択することにより、パターンプロファイル、疎密依存性が良好となる。
【0058】
【化13】

【0059】
樹脂(A)は、下記一般式(3)で表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0060】
【化14】

【0061】
式(3)中、
Aは、エステル結合(−COO−で表わされる基)又は−CONH−で表わされる基を表す。
は、複数個ある場合にはそれぞれ独立にアルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組合せを表す。
Zは、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、又はウレア結合を表す。
8は、ラクトン構造を有する1価の有機基を表す。
nは、式(3)で表わされる繰り返し単位内における−R−Z−で表わされる構造の繰り返し数であり、1〜5の整数を表す。
7は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
【0062】
のアルキレン基、環状アルキレン基は置換基を有してよい。 Zは好ましくは、
エーテル結合、エステル結合であり、特に好ましくはエステル結合である。
【0063】
7のアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。R7におけるアルキル基は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子やメルカプト基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基、アセチル基、プロピオニル基等のアセトキシ基が挙げられる。R7は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基が好ましい。
における好ましい鎖状アルキレン基としては炭素数が1〜10の鎖状のアルキレンが好ましく、より好ましくは炭素数1〜5であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。好ましい環状アルキレンとしては、炭素数1〜20の環状アルキレンであり、例えば、シクロヘキシレン、シクロペンチレン、ノルボルニレン、アダマンチレン等が挙げられる。本発明の効果を発現するためには鎖状アルキレン基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0064】
8で表されるラクトン構造を有する置換基は、ラクトン構造を有していれば限定されるものではなく、具体例として一般式(LC1−1)〜(LC1−17)で表されるラクトン構造が挙げられ、これらのうち(LC1−4)で表わされる構造が特に好ましい。また、(LC1−1)〜(LC1−17)におけるn2は2以下のものがより好ましい。
また、R8は無置換のラクトン構造を有する1価の有機基、或いはメチル基、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を置換基として有するラクトン構造を有する1価の有機基が好ましく、シアノ基を置換基として有するラクトン構造(シアノラクトン)を有する1価の有機基がより好ましい。
【0065】
以下に一般式(3)で表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
下記具体例中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又はハロゲン原子を表し、好ましくは、水素原子、メチル基、置換基を有するアルキル基であるヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基を表す。
【0066】
【化15】

【0067】
ラクトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(3−1)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0068】
【化16】

【0069】
一般式(3−1)に於いて、
7、A、R、Z、及びnは、上記一般式(3)と同義である。
9は、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、水酸基又はアルコキシ基を表し、複数個ある場合には2つのR9が結合し、環を形成していてもよい。
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
mは、置換基数であって、0〜5の整数を表す。mは0又は1であることが好ましい。
【0070】
9のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、がより好ましく、メチル基が最も好ましい。シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基を挙げることができる。エステル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。置換基としてはヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、シアノ基、フッ素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。
9はメチル基、シアノ基又はアルコキシカルボニル基であることがより好ましく、シアノ基であることが更に好ましい。
Xのアルキレン基としてはメチレン基、エチレン基等が挙げられる。Xは酸素原子又はメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが更に好ましい。
m=1である場合、Rはラクトンのカルボニル基のα位又はβ位に置換することが好ましく、特にα位に置換することが好ましい。
【0071】
一般式(3−1)で表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。式中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又はハロゲン原子を表し、好ましくは、水素原子、メチル基、置換基を有するアルキル基であるヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基を表す。
【0072】
【化17】

【0073】
ラクトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。
【0074】
ラクトン基を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂中の全繰り返し単位に対し、15〜60モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは30〜50モル%である。
本発明の効果を高めるために、一般式(3)から選ばれる2種以上のラクトン繰り返し単位を併用することも可能である。併用する場合には一般式(3)の内、nが1であるラクトン繰り返し単位から2種以上を選択し併用することが好ましい。また、一般式(AII)においてAbが単結合であるラクトン繰り返し単位と一般式(3)の内、nが1であるラクトン繰り返し単位を併用することも好ましい。
【0075】
樹脂(A)は、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位(前述の一般式(3)又は(AI)で表される繰り返し単位などが水酸基又はシアノ基を有する場合は、これに含めない。)を有することが好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルニル基が好ましい。好ましい水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、モノヒドロキシアダマンチル基、ジヒドロキシアダマンチル基、モノヒドロキシジアマンチル基、ジヒドロキシアダマンチル基、シアノ基で置換されたノルボルニル基等が挙げられる。
上記原子団を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0076】
【化18】

【0077】
一般式(AIIa)〜(AIId)に於いて、
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
2c〜R4cは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cの内の少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、R2c〜R4cの内の1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)に於いて、更に好ましくは、R2c〜R4cの内の2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0078】
水酸基又はシアノ基 を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、5〜40モル%が好ましく、より好ましくは5〜30モル%、更に好ましくは10〜25モル%である。
【0079】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0080】
【化19】

【0081】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有してもよい。アルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、更にはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0082】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、0〜20モル%が好ましく、より好ましくは3〜15モル%、更に好ましくは5〜10モル%である。
【0083】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。具体例中、RxはH,CH,CHOH,又はCFを表す。
【0084】
【化20】

【0085】
本発明の樹脂(A)は、更に極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することが好ましい。これにより液浸露光時に感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成された膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位としては、一般式(4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0086】
【化21】

【0087】
一般式(4)中、Rは少なくとも一つの環状構造を有し、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は−CH2−O−Ra2基を表す。式中、Ra2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0088】
が有する環状構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、たとえば、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3から7の単環式炭化水素基である。
【0089】
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれる。架橋環式炭化水素環として、2環式炭化水素環、3環式炭化水素環、4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環(例えば、5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環)も含まれる。好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0090】
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、保護基で保護されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t−ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基は更に置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、保護基で保護されたアミノ基を挙げることができる。
【0091】
保護基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0092】
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の含有率は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、0〜40モル%が好ましく、より好ましくは0〜20モル%である。
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、又はCFを表す。
【0093】
【化22】

【0094】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。
【0095】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
これにより、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂に要
求される性能、特に、(1)塗布溶剤に対する溶解性、(2)製膜性(ガラス転移点)、(3)アルカリ現像性、(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、(5)未露光部の基板への密着性、(6)ドライエッチング耐性、等の微調整が可能となる。
【0097】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0098】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0099】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0100】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂(A)は芳香族基を有さないことが好ましい。
また、樹脂(A)は、後述する疎水性樹脂(C)との相溶性の観点から、フッ素原子及び珪素原子を含有しないことが好ましい。
【0101】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂(A)として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以下であることが好ましい。
なお、レジスト膜のエッチング耐性の向上の点では、アクリレート系繰り返し単位が多いほうがよく、アクリレート系繰り返し単位の含有率は、好ましくは40〜100モル%、より好ましくは60〜100モル%である。
また、酸分解性基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位20〜50モル%、ラクトン基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位20〜50モル%、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位5〜30モル%、更にその他の(メタ)アクリレート系繰り返し単位を0〜20モル%含む共重合ポリマーが好ましい。
【0102】
本発明の樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、更には後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明の組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
【0103】
本発明の樹脂(A)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、より好ましくは2,000〜20,000、更により好ましくは3,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜10,000である。重量平均分子量を上記範囲とすることにより、耐熱性向上やドライエッチング耐性の劣化防止、現像性の劣化、高粘度化による製膜性の劣化などを防ぐことができる。
分散度(分子量分布)は、通常1〜3であり、好ましくは1〜2.6、更に好ましくは1〜2、特に好ましくは1.4〜2.0の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、かつレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0104】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の樹脂の組成物全体中の配合量は、全固形分中一般的に68〜88質量%、好ましくは68〜80質量%、より好ましくは68〜78質量%、特に好ましくは72〜78質量%である。
また、本発明の樹脂は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0105】
〔2〕(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、10〜30質量%含有する。
酸発生剤の添加量は、好ましくは18〜30質量%、より好ましくは20〜30質量%、特に好ましくは20〜26質量%である。
【0106】
本発明において酸発生剤は、下記一般式(1−1)又は(1−2)で表される化合物であることが特に好ましい。
これらの化合物は、上記添加量範囲としても、形成される膜の波長193nmのArFF光に対する透過率を高く維持することができ、例えば、100nmの膜として、波長193nmの光に対する透過率を60%以上85%以下とすることができる。ArF光に対する透過率が高いことは、ArF光によるパターニングにおいて、良好な性能をもたらすものである。
波長193nmの光に対する透過率は、例えば、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を石英ガラス基板上にスピンコートにより塗布し、100℃でプリベークを行って膜厚100nmの膜を形成し、エリプソメーターEPM-222(ジェー・エー・ウーラム社製)などにより、その膜の波長193nmの吸光度を求め、算出できる。
酸発生剤の総量中、一般式(1−1)又は(1−2)で表される化合物の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。
【0107】
【化23】

【0108】
一般式(1−1)中、
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又は単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有する基を表す。
14は複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又は単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有するアルコキシ基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
一般式(1−2)中、
Mは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はベンジル基を表し、環構造を有するとき、環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
式中、R1c及びR2cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。R1cとR2cとが結合して環を形成してもよい。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
及びRが結合して環を形成してもよい。また、M、R1c及びR2cの少なくとも二つが結合して環を形成してもよく、該環構造に炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
は、非求核性アニオンを表す。
【0109】
一般式(1−1)において、R13、R14及びR15のアルキル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等を挙げることができる。これらのアルキル基のうち、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が好ましい。
13、R14及びR15のシクロアルキル基としては、単環であっても多環であってもよく、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデカニル、シクロベンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクタジエニル、ノルボルニル、アダマンチル等があげられ、特にシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルが好ましい。
【0110】
13及びR14のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状若しくは環状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等を挙げることができる。これらのアルコキシ基のうち、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が好ましい。
環状アルコキシ基については、単環であっても多環であってもよく、環状アルコキシ基の総炭素数は7以上であることが好ましく、7以上15以下であることが更に好ましい。
環状アルコキシ基の具体例としては、上記シクロアルキル基の具体例に酸素原子が結合した基を挙げることができる。
【0111】
13及びR14のアルコキシカルボニル基としては、直鎖状、分岐状若しくは環状であり、炭素原子数2〜11のものが好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、ノルボルニロキシカルボニル基、アダマンチロキシカルボニル基等を挙げることができる。これらのアルコキシカルボニル基のうち、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等が好ましい。
【0112】
13の単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有する基としては、例えば、置換基を有していてもよい単環若しくは多環のシクロアルキル基で置換された直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は単環若しくは多環のシクロアルキル基で置換されたアルキル基が挙げられ、単環若しくは多環のシクロアルキル基で置換された直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基が好ましい。R13の総炭素数は、7以上であることが好ましく、7以上15以下であることがより好ましい。
【0113】
14で表される単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有するアルコキシ基は、上述した直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基に上述した単環若しくは多環のシクロアルキル基が置換した基であり、単環のシクロアルキル基が置換した基であることが好ましく、その総炭素数が7以上であることが好ましく、7以上15以下であることが更に好ましい。
【0114】
13及びR14としての単環のアルコキシ基とは、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロドデカニルオキシ基等のシクロアルキルオキシ基に、任意にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、iso−アミル基等のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、アセトキシ基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する単環のシクロアルコキシ基であって、該シクロアルキル基上の任意の置換基と合わせた総炭素数が7以上のものを表す。
13及びR14の多環のアルコキシ基としては、ノルボルニルオキシ基、アダマンチルオキシ基などを挙げることができる。
【0115】
置換基を有していてもよい単環若しくは多環のシクロアルキル基を有する総炭素数が7以上のアルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプトキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、t-ブトキシ、iso−アミルオキシ等のアルコキシ基に上述の置換基を有していてもよい単環若しくは多環のシクロアルキル基が置換したものであり、置換基も含めた総炭素数が7以上のものを表す。たとえば、シクロプロピルエトキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、シクロペンチルエトキシ基、シクロヘキシルエトキシ基等が挙げられ、シクロヘキシルメトキシ基が好ましい。
【0116】
14のアルキルカルボニル基のアルキル基としては、上述したR13〜R15としてのアルキル基と同様の具体例が挙げられる。
14のアルコキシカルボニル基のアルコキシ基としては、上述したR13〜R14としてのアルコキシ基と同様の具体例が挙げられる。
14のアルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基としては、直鎖状、分岐状、環状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましく、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、tert−ブタンスルホニル基、n−ペンタンスルホニル基、ネオペンタンスルホニル基、n−ヘキサンスルホニル基、n−ヘプタンスルホニル基、n−オクタンスルホニル基、2−エチルヘキサンスルホニル基n−ノナンスルホニル基、n−デカンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基等を挙げることができる。これらのアルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基のうちメタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基等が好ましい。
【0117】
lとしては、0又は1が好ましく、1がより好ましい。rとしては、0〜2が好まし
い。
【0118】
上記各基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルコキシ基等を挙げることができる。
前記アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、2−エトキシエチル基等の炭素原子数2〜21の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルコキシアルキル基等を挙げることができる。
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル等の炭素原子数2〜21の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルコキシカルボニル基等を挙げることができる。
前記アルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、i−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル等の炭素原子数2〜21の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
【0119】
2個のR15が互いに結合して形成してもよい環構造としては、2個の2価のR15が一般式(1−1)中の硫黄原子と共に形成する5員又は6員の環、特に好ましくは5員の環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)が挙げられ、アリール基又はシクロアルキル基と縮環していてもよい。この2価のR15は置換基を有してもよく、置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。一般式(1−1)におけるR15としては、メチル基、エチル基、ナフチル基、2個のR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基等が好ましい。
13及びR14が有し得る置換基としては、水酸基、アルコキシ基、又はアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)が好ましい。
【0120】
本発明の一般式(1−1)で表される塩としては以下の具体例が挙げられる。
下記式中、Xは対アニオンを表す。
【0121】
【化24】

【0122】
なお、現像欠陥抑制の点で、R13が単環のシクロアルキル骨格を有する基である一般式(1−1)で表される酸発生剤が特に好ましい。以下に、このような一般式(1−1)で表される化合物におけるカチオンの好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0123】
【化25】

【0124】
【化26】

【0125】
一般式(1−2)中、
Mは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はベンジル基を表し、環構造を有するとき、環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
式中、R1c及びR2cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。R1cとR2cとが結合して環を形成してもよい。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
及びRが結合して環を形成してもよい。また、M、R1c及びR2cの少なくとも二つが結合して環を形成してもよく、該環構造に炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
は、非求核性アニオンを表す。
【0126】
Mとしてのアルキル基は、直鎖、分岐のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個のアルキル基、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
M、R1c、R2c、R、Rとしてのシクロアルキル基は、炭素数3〜8個の環状アルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
M、R1c、R2cとしてのアリール基は、好ましくは炭素数5〜15であり、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
Mとしての各基は、置換基として、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニルチオ基などを有していてもよい。Mとしてのシクロアルキル基及びアリール基は、更に置換基として、アルキル基を有していてもよい。置換基の炭素数は、15以下が好ましい。
1c及びR2cとしてのアルキル基は、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基を挙げることができる。
Mがフェニル基であるとき、置換基として、少なくともひとつ直鎖、分岐、環状アルキル基、又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基を有することが好ましく、更に好ましくは、置換基の炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
M、R1c及びR2cの少なくとも二つが結合して形成する環構造としては、好ましくは3〜10員環、より好ましくは3〜6員環を挙げることができる。環骨格は炭素−炭素二重結合を有していてもよい。
【0127】
及びRとしてのアルキル基は、R1c及びR2cとしてのアルキル基と同様のものを挙げることができる。
2−オキソアルキル基は、R1c及びR2cとしてのアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
及びRが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。即ち、Rx及びRyが互いに結合して形成してもよい環構造としては、2価のRx及びRy(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等)が一般式(1−2)中の硫黄原子と共に形成する5員又は6員の環、特に好ましくは5員の環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)が挙げられる。
【0128】
、Rは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基である。
Rx又はRyとしての各基、及びRx及びRyが互いに結合して形成してもよい環構造は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、前述のMとしての各基が有していてもよい置換基を挙げることができる。
【0129】
以下に、一般式(1−2)で表される化合物におけるカチオンの好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0130】
【化27】

【0131】
【化28】

【0132】
【化29】

【0133】
【化30】

【0134】
【化31】

【0135】
一般式(1−1)及び(1−2)に於けるXは、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF、PF、SbFなどが挙げられ、好ましくは炭素原子を含有する有機アニオンである。
好ましい有機アニオンとしては下式に示す有機アニオンが挙げられる。
【0136】
【化32】

【0137】
Rcは有機基を表す。
Rcにおける有機基として炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、又はこれらの複数が、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SON(Rd)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。
Rdは水素原子、アルキル基を表す。
Rc、Rc、Rcは、各々独立に、有機基を表す。
Rc、Rc、Rcの有機基として好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1−4のパーフロロアルキル基である。
RcとRcが結合して環を形成していてもよい。
RcとRcが結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2−4のパーフロロアルキレン基である。
Rc、Rc〜Rcの有機基として最も好ましくは1位がフッ素原子又はフロロアアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。
【0138】
また、Xとして、下記一般式(A1)で表されるアニオンを挙げることができる。
【0139】
【化33】

【0140】
一般式(A1)中、Rは、水素原子又は有機基を表し、好ましくは、炭素数1〜40の有機基であり、より好ましくは、炭素数3〜20の有機基であり、下記式(A1a)で表される有機基であることが最も好ましい。
Rの有機基としては、炭素原子を1つ以上有していればよく、好ましくは、一般式(A1)に示すエステル結合における酸素原子と結合する原子が炭素原子であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ラクトン構造を有する基が挙げられ、鎖中に、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有していてもよい。また、これらを相互に置換基として有していてもよく、水酸基、アシル基、アシルオキシ基、オキシ基(=O)、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0141】
【化34】

【0142】
(式(A1a)中、Rcは、環状エーテル、環状チオエーテル、環状ケトン、環状炭酸エステル、ラクトン、ラクタム構造を含んでも良い炭素数3〜30の単環又は多環の環状有機基を表す。Yは、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基を表す。m=0〜6であり、複数Yが存在する場合、互いに同一でも異なっても良い。n=0〜10である。
式(AIa)で表されるR基を構成する炭素原子の総数は好ましくは40以下である。
n=0〜3であり、Rcが7〜16の単環又は多環の環状有機基であることが好ましい。
【0143】
また、Xとして、下記一般式(A2)で表される酸に対応するアニオンを挙げることができる。
【化35】

【0144】
式中、
Xfは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、及び、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基から選ばれる基を表し、複数存在する場合のR、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、単結合又は二価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Aは、環状構造を有する基を表す。
xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
【0145】
一般式(A2)について、更に詳細に説明する。
Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくは炭素数1〜4である。また、Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfとして好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、フッ素原子、CF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、C6F13、C7F5、C8F17、CH2CF3、CH2CH2CF3、CH2C2F5、CH2CH2C2F5、CH2C3F7、CH2CH2C3F7、CH2C4F9、CH2CH2C4F9が挙げられ、中でもフッ素原子、CF3が好ましい。
【0146】
、Rのアルキル基、並びに、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、炭素数1〜4のものが好ましい。更に好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、CF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、C6F13、C7F5、C8F17、CH2CF3、CH2CH2CF3、CH2C2F5、CH2CH2C2F5、CH2C3F7、CH2CH2C3F7、CH2C4F9、CH2CH2C4F9が挙げられ、中でもCF3が好ましい。
【0147】
yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。xは1〜8が好ましく、中でも1〜4が好ましい。zは0〜8が好ましく、中でも0〜4が好ましい。
Lの2価の連結基としては特に限定されず、―COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S―、−SO―、―SO2−、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基などがあげられる。このなかでも―COO−、−OCO−、−CO−、−O−がこのましく、―COO−、−OCO−がより好ましい。
【0148】
Aの環状構造を有する基としては、環状構造を有するものであれば特に限定されず、脂環基、アリール基、複素環構造を有する基(芳香属性を有するものだけでなく、芳香属性を有さないものも含み、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環構造も含む。)等が挙げられる。
【0149】
脂環基としては、単環でも多環でもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基の炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性を抑制でき、MEEF向上の観点から好ましい。
【0150】
アリール基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環、アントラセン環が挙げられる。中でも193nmにおける光吸光度の観点から低吸光度のナフタレンが好ましい。
【0151】
複素環構造を有する基としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環が挙げられる。中でもフラン環、チオフェン環、ピリジン環が好ましい。
【0152】
上記環状構造を有する基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、スルホン酸エステル基等が挙げられる。
【0153】
更に、Xとして、特開2005−221721号公報に記載されている下記一般式(A3)又は(A4)で表されるアニオンを挙げることができる。
【0154】
【化36】

【0155】
一般式(A3)及び(A4)中、
Yは少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキレン基であり、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。アルキレン鎖中に酸素原子を含有していてもよい。更に好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基であり、最も好ましくはテトラフロロエチレン基、ヘキサフロロプロピレン基、オクタフロロブチレン基である。
式(A4)におけるRは、アルキル基又はシクロアルキル基をを表す。なお、アルキル基又はシクロアルキル基中のアルキレン鎖中に酸素原子を含有していてもよい。
一般式(A3)又は(A4)で表されるアニオンを有する化合物としては、特開2005−221721号公報に記載されている具体例を挙げることができる。
【0156】
以下に一般式(1−1)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0157】
【化37】

【0158】
【化38】

【0159】
以下に一般式(1−2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0160】
【化39】

【0161】
一般式(1−1)又は(1−2)で表される酸発生剤は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、一般式(1−1)又は(1−2)で表される酸発生剤は、他の酸発生剤を組み合わせて用いてもよい。
【0162】
により表される対イオンとして、下記一般式(III)で表される構造を有することが特に好ましい。
【0163】
上記対アニオンは、下記一般式(III)で表される構造であることが好ましい。
【化40】

【0164】
一般式(III)中、Aは酸素原子、窒素原子、炭素原子を表す。
【0165】
はフッ素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0166】
Aが酸素原子であるときn=1、m=0であり、Aが窒素原子であるときn+m=2かつn=1又は2、m=0又は1であり、Aが炭素原子であるときn+m=3かつn=1〜3の整数、m=0〜2の整数である。nが2以上のときRは同一でも異なっていてもよく、Rがそれぞれ結合し環を形成していてもよい。
【0167】
により表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基とは鎖式アルキル基、単環式アルキル基、多環式炭化水素基、又は単環式アリール基を表し、該鎖状アルキル基、該単環式アルキル基、該多環式炭化水素基、該単環式アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としてはフッ素原子を有していることが好ましい。
【0168】
鎖式アルキル基としては、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル、2−エチルヘキシル、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、iso−アミル等が挙げられる。
【0169】
該アルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、アセトキシ基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、カルボキシ基が挙げられる。
【0170】
単環式アルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプチル、シクロオクチル、シクロドデカニル、シクロベンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクタジエニル等が挙げられ、特にシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルが好ましい。
【0171】
該単環式アルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、アセトキシ基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、カルボキシ基が挙げられる。
【0172】
多環式炭化水素基としては、ビシクロ[4.3.0]ノナニル、デカヒドロナフタレニル、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニル、ボルニル、イソボルニル、ノルボルニル、アダマンチル、ノルアダマンチル、1,7,7-トリメチルトリシクロ[2.2.1.02,6]ヘプタニル、3,7,7-トリメチルビシクロ[4.1.0]ヘプタニル等があげられ、特にノルボルニル、アダマンチル、ノルアダマンチルが好ましい。
【0173】
単環式アリール基は、置換又は無置換のフェニル基を意味し、置換基としては、水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、アセトキシ基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、カルボキシ基が挙げられる。
【0174】
は、酸強度の観点から電子求引性基を有することが好ましい。電子求引性基としては特に限定はされないが、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、カルボキシル基、ケトン基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、パーフルオロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子などが挙げられ、特にフッ素原子を有することが好ましい。より好ましくは、Rは、分子量220以下のフッ素原子を有する基であり、特に、Rはトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0175】
は、複数ある場合はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表し、Rは水素原子を表す。
【0176】
Lは単結合又は連結基を表す。
【0177】
p1は1〜8の整数を表し、p2=1又は2を表し、p3=0又は1を表す。
【0178】
p2=2である場合、2つのRは互いに結合し環構造を形成してもよく、n=2以上である場合、複数あるRは互いに結合し環構造を形成していてもよい。
【0179】
により表されるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基の具体例としては、Rの各々において例示した基と同様の基が挙げられる。
【0180】
ここでRは低フッ素含率の観点からフッ素原子を有さないことが好ましい。
【0181】
Lは、単結合、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、窒素原子(>N−)、カルボキシル基(−OC=O−,−CO=O−)、アミド基(>NC=O−)、スルホンアミド基(>NSO−)であることが好ましい。特に、p2=2であり、2つのRが互いに結合して環を形成する場合、Lはアミド基、スルホンアミド基等の窒素原子を有する連結基であることが好ましく、このとき2つのRは互いに結合してL上の窒素原子を環内に有する環状アミン残基を形成する。
【0182】
環状アミン残基構造としてはアジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ピペラジン、デカヒドロキノリン、デカヒドロキノリン、8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、インドール、オキサゾリジン、チアゾリジン、2−アザノルボルナン、7−アザノルボルナン、モルホリン、チアモルホリン等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。置換基としては、水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、及び環を形成する炭素上のカルボニル基等のアシル基、アセトキシ基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、カルボキシ基が挙げられる。
【0183】
本発明の一般式(III)で表される対アニオン構造としては以下の具体例が挙げられる。
【0184】
【化41】

【0185】
【化42】

【0186】
酸発生剤としては、下記一般式(ZI)、(ZII)、又は(ZIII)で表される化合物も挙げられるが、特に上記一般式(1−1)又は(1−2)で表される酸発生剤の総量に対して、50質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%、良好な透過率を保つ範囲で、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0187】
【化43】

【0188】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
-は、非求核性アニオン(求核反応を起こす能力が著しく低いアニオン)を表す。
【0189】
-としては、例えば、スルホン酸アニオン(脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなど)、カルボン酸アニオン(脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなど)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン等を挙げられる。また、前述の一般式(1−1)又は(1−2)で表される酸発生剤が有してもよいXとしてのアニオンであってもよい。
【0190】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基が挙げられる。
【0191】
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0192】
上記で挙げたアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。この具体例としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数2〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、アルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数5〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)等を挙げることができる。各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を挙げることができる。
【0193】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数6〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルブチル基等を挙げることができる。
【0194】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
【0195】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
【0196】
その他のZとしては、例えば、弗素化燐、弗素化硼素、弗素化アンチモン等を挙げることができる。
【0197】
-としては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとして、より好ましくはパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン(更に好ましくは炭素数4〜8)、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオン、更により好ましくはノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5−ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンである。
酸強度の観点からは、発生酸のpKaが−1以下であることが、感度向上のために好ましい。
【0198】
201、R202及びR203の有機基としては、アリール基(炭素数6〜15が好ましい)、直鎖又は分岐のアルキル基(炭素数1〜10が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数3〜15が好ましい)などが挙げられる。
201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、三つ全てがアリール基であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの他に、インドール残基、ピロール残基などのヘテロアリール基も可能である。これらアリール基は更に置換基を有していてもよい。その置換基としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、R201、R202及びR203から選ばれる2つが、単結合又は連結基を介して結合していてもよい。連結基としてはアルキレン基(炭素数1〜3が好ましい)、−O−,−S−,−CO−,−SO−などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0199】
201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基でない場合の好ましい構造としては、特開2004−233661号公報の段落0046,0047、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046、US2003/0224288A1号明細書に式(I-1)〜(I-70)として例示されている化合物、US2003/0077540A1号明細書に式(IA-1)〜(IA-54)、式(IB-1)〜(IB-24)として例示されている化合物等のカチオン構造を挙げることができる。
【0200】
一般式(ZII)又は(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0201】
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基としては、前述のR201〜R203としてのアリール基、アルキル基、シクロアルキル基として説明したアリール基と同様である。
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述のR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられる。
【0202】
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZ-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0203】
酸発生剤として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物も挙げられる。
【0204】
【化44】

【0205】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
208、R209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0206】
酸発生剤を2種類以上併用する場合、同一アニオンで異なるカチオンを有するものの組み合わせが好ましく、一般式(1−1)又は(1−2)で表される酸発生剤と一般式(ZI)でで表される酸発生剤との組み合わせが好ましい。
一般式(1−1)又は(1−2)で表される酸発生剤とともに、併用する酸発生剤として、好ましい例を以下に挙げる。
【0207】
【化45】

【0208】
【化46】

【0209】
〔3〕疎水性樹脂
液浸媒体を介して露光する場合には、本発明の組成物に、必要に応じて更に疎水性樹脂(C)を添加することができる。これにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表層に疎水性樹脂(C)が偏在化し、液浸媒体が水の場合、該膜とした際の水に対する膜表面の後退接触角を向上させ、液浸水追随性を向上させることができる。疎水性樹脂(C)としては、表面の後退接触角が添加することにより向上する樹脂であれば何でもよいが、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂であることが好ましい。膜の後退接触角は60°〜90°が好ましく、更に好ましくは70°以上である。
添加量は、該膜の後退接触角が前記範囲になるよう適宜調整して使用できるが、組成物の全固形分を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。疎水性樹脂(C)は前述のように界面に偏在するものであるが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
後退接触角とは、液滴-基板界面での接触線が後退する際に測定される接触角であり、動的な状態での液滴の移動しやすさをシミュレートする際に有用であることが一般に知られている。簡易的には、針先端から吐出した液滴を基板上に着滴させた後、その液滴を再び針へと吸い込んだときの、液滴の界面が後退するときの接触角として定義でき、一般に拡張収縮法と呼ばれる接触角の測定方法を用いて測定することができる。
液浸露光工程に於いては、露光ヘッドが高速でウェハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウェハ上を動く必要があるので、動的な状態に於ける該膜に対する液浸液の接触角が重要になり、液滴が残存することなく、露光ヘッドの高速なスキャンに追随する性能がレジストには求められる。
【0210】
疎水性樹脂(C)に於けるフッ素原子又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0211】
疎水性樹脂(C)は、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。 フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、更に他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更に他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更に他の置換基を有していてもよい。
【0212】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基として、好ましくは、下記一般式(F2)〜(F4)で表される基を挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0213】
【化47】

【0214】
一般式(F2)〜(F4)中、
57〜R68は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R57〜R61、R62〜R64及びR65〜R68の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。R57〜R61及びR65〜R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R62、R63及びR68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。R62とR63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0215】
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基などが挙げられる。ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基が好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
一般式(F4)で表される基の具体例としては、例えば、−C(CF32OH、−C(C252OH、−C(CF3)(CH3)OH、−CH(CF3)OH等が挙げられ、−C(CF32OHが好ましい。
【0216】
以下、フッ素原子を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、X1は、水素原子、−CH3、−F又は−CF3を表す。
2は、−F又は−CF3を表す。
【0217】
【化48】

【0218】
疎水性樹脂(C)は、珪素原子を含有してもよい。疎水性樹脂(C)は、珪素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、又は環状シロキサン構造を有する樹脂であることが好ましい。
アルキルシリル構造、又は環状シロキサン構造としては、具体的には、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基などが挙げられる。
【0219】
【化49】

【0220】
一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
12〜R26は、各々独立に、直鎖若しくは分岐アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)又はシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)を表す。
3〜L5は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、フェニレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、又はウレイレン基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを挙げられる。
nは、1〜5の整数を表す。nは、好ましくは、2〜4の整数である。
【0221】
以下、一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基を有する繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、具体例中、X1は、水素原子、−CH3、−F又は−CF3を表す。
【0222】
【化50】

【0223】
更に、疎水性樹脂(C)は、下記(x)〜(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有していてもよい。
(x)アルカリ可溶性基、
(y)アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基、
(z)酸の作用により分解する基。
【0224】
(x)アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、ビス(カルボニル)メチレン基が挙げられる。
【0225】
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位などが挙げられ、更にはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入することもでき、いずれの場合も好ましい。
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂中の全繰り返し単位に対し、1〜50モル%が好ましく、より好ましくは3〜35モル%、更に好ましくは5〜20モル%である。
【0226】
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0227】
【化51】

【0228】
(y)アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基としては、例えば、ラクトン構造を有する基、酸無水物基、酸イミド基などが挙げられ、好ましくはラクトン構造を有する基である。
アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルによる繰り返し単位のように、樹脂の主鎖にアルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)が結合している繰り返し単位、あるいはアルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましい。
アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂中の全繰り返し単位に対し、1〜40モル%が好ましく、より好ましくは3〜30モル%、更に好ましくは5〜15モル%である。
【0229】
アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の具体例としては、(A)成分の樹脂で挙げたラクトン構造を有する繰り返し単位と同様のものを挙げることができる。
【0230】
疎水性樹脂(C)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、(A)成分の樹脂で挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。疎水性樹脂(C)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂中の全繰り返し単位に対し、1〜80モル%が好ましく、より好ましくは10〜80モル%、更に好ましくは20〜60モル%である。
【0231】
疎水性樹脂(C)は、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0232】
【化52】

【0233】
一般式(III)に於いて、
c31は、水素原子、アルキル基、又はフッ素で置換されていても良いアルキル基、シアノ基又は−CH2−O−Rac2基を表す。式中、Rac2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Racは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
c32は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基を有する基を表す。これら基はフッ素原子、珪素原子で置換されていても良い。
c3は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0234】
一般式(III)に於ける、Rc32のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
c32は無置換のアルキル基又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
c3の2価の連結基は、エステル基、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基、フェニレン基、エステル結合(−COO−で表される基)が好ましい。
疎水性樹脂(C)は、更に、下記一般式(CII−AB)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0235】
【化53】

【0236】
式(CII-AB)中、
C11'及びRc12'は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Z'は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
以下に一般式(III)、(CII−AB)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、CF又はCNを表す。
【0237】
【化54】

【0238】
疎水性樹脂(C)がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有量は、疎水性樹脂(C)の分子量に対し、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位が、疎水性樹脂(C)中10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましい。
疎水性樹脂(C)が珪素原子を有する場合、珪素原子の含有量は、疎水性樹脂(C)の分子量に対し、2〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。また、珪素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(C)中10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましい。
【0239】
疎水性樹脂(C)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000である。
【0240】
疎水性樹脂(C)は、(A)成分の樹脂同様、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%、0〜1質量%が更により好ましい。それにより、液中異物や感度等の経時変化のない組成物が得られる。また、解像度、パターン形状、パターンの側壁、ラフネスなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜5の範囲が好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2の範囲である。
【0241】
疎水性樹脂(C)は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、更には後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明の組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0242】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは30〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
【0243】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0244】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
【0245】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、更に好ましくは300〜1000質量部である。
【0246】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0247】
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0248】
なお、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
【0249】
以下に疎水性樹脂(C)の具体例を示す。また、下記表Aに、各樹脂における繰り返し単位のモル比(各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、分散度を示す。
【0250】
【化55】

【0251】
【化56】

【0252】
【化57】

【0253】
【表1】

【0254】
本発明の感活性光線又は感放射線樹脂組成物による膜と液浸液との間には、膜を直接、液浸液に接触させないために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト上層部への塗布適性、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液難溶性である。トップコートは、レジストと混合せず、更にレジスト上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートは、193nm透明性という観点からは、芳香族を豊富に含有しないポリマーが好ましく、具体的には、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー、フッ素含有ポリマーなどが挙げられる。前述の疎水性樹脂(C)はトップコートとしても好適なものである。トップコートから液浸液へ不純物が溶出すると光学レンズを汚染するという観点からは、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は少ない方が好ましい。
【0255】
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程が膜の現像処理工程と同時にできるという点では、アルカリ現像液により剥離できることが好ましい。アルカリ現像液で剥離するという観点からは、トップコートは酸性が好ましいが、レジスト膜との非インターミクス性の観点から、中性であってもアルカリ性であってもよい。
トップコートと液浸液との間には屈折率の差がない方が、解像力が向上する。ArFエキシマレーザー(波長:193nm)において、液浸液として水を用いる場合には、ArF液浸露光用トップコートは、液浸液の屈折率に近いことが好ましい。屈折率を液浸液に近くするという観点からは、トップコート中にフッ素原子を有することが好ましい。また、透明性・屈折率の観点から薄膜の方が好ましい。
【0256】
トップコートは、膜と混合せず、更に液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコートに使用される溶剤は、本発明の組成物に使用される溶媒に難溶で、かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。更に、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
【0257】
〔4〕溶剤
前記各成分を溶解させて感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を含有しても良いモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
【0258】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0259】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルを好ましく挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
【0260】
環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0261】
環を含有しても良いモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0262】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
好ましく使用できる溶剤としては、常温常圧下で、沸点130℃以上の溶剤が挙げられる。具体的には、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネートが挙げられる。
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0263】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルが特に好ましい。
水酸基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
【0264】
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0265】
〔5〕塩基性化合物
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0266】
【化58】

【0267】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
これら一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0268】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0269】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタンー1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0270】
好ましい塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。
アミン化合物は、1級、2級、3級のアミン化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアミン化合物が好ましい。アミン化合物は、3級アミン化合物であることがより好ましい。アミン化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。アミン化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)若しくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−若しくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基である。
【0271】
アンモニウム塩化合物は、1級、2級、3級、4級のアンモニウム塩化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアンモニウム塩化合物が好ましい。アンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。アンモニウム塩化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)若しくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−若しくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基である。
アンモニウム塩化合物のアニオンとしては、ハロゲン原子、スルホネート、ボレート、フォスフェート等が挙げられるが、中でもハロゲン原子、スルホネートが好ましい。ハロゲン原子としてはクロライド、ブロマイド、アイオダイドが特に好ましく、スルホネートとしては、炭素数1〜20の有機スルホネートが特に好ましい。有機スルホネートとしては、炭素数1〜20のアルキルスルホネート、アリールスルホネートが挙げられる。アルキルスルホネートのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては例えばフッ素、塩素、臭素、アルコキシ基、アシル基、アリール基等が挙げられる。アルキルスルホネートとして、具体的にはメタンスルホネート、エタンスルホネート、ブタンスルホネート、ヘキサンスルホネート、オクタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。アリールスルホネートのアリール基としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が挙げられる。ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環は置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましい。直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基として、具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられる。他の置換基としては炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。
【0272】
フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物とは、アミン化合物又はアンモニウム塩化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、置換基を有していてもよい。フェノキシ基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。置換基の置換位は、2〜6位のいずれであってもよい。置換基の数は、1〜5の範囲で何れであってもよい。
フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)若しくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−若しくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基である。
【0273】
スルホン酸エステル基を有するアミン化合物、スルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物に於ける、スルホン酸エステル基としては、アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキル基スルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルのいずれであっても良く、アルキルスルホン酸エステルの場合にアルキル基は炭素数1〜20、シクロアルキルスルホン酸エステルの場合にシクロアルキル基は炭素数3〜20、アリールスルホン酸エステルの場合にアリール基は炭素数6〜12が好ましい。アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルは置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基が好ましい。
スルホン酸エステル基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)若しくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−若しくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基である。
【0274】
また、下記化合物も塩基性化合物として好ましい。
【0275】
【化59】

【0276】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0277】
塩基性化合物の使用量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0278】
酸発生剤と塩基性化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0279】
これらの塩基性化合物は下記((D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物に対しモル比(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物/塩基性化合物=100/0〜10/90で用いることが好ましく、モル比(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物/塩基性化合物=100/0〜30/70で用いることがより好ましく、(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物/塩基性化合物=100/0〜50/50でもちいる事が特に好ましい。
なお、ここでの塩基性化合物は、塩基性化合物でもある場合の(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物を含まない。
【0280】
〔6〕(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物
本発明の組成物は、(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(D成分ともいう)を含有することができる。酸の作用により脱離する基としては特に限定されないが、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、ヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、ヘミアミナールエーテル基であることが特に好ましい。
酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物の分子量範囲は100〜1000が好ましく、100〜700がより好ましく、100〜500が特に好ましい。
【0281】
酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物が3級エステル構造を有する場合特に下記一般式(1a)で表されるカルボン酸エステル又は不飽和カルボン酸エステルであることが好ましい。
【0282】
【化60】

【0283】
(一般式(1a)において、Rは、独立に、1価の脂環式炭化水素基(好ましくは炭素数4〜20)若しくはその誘導体、又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表し、かつRの少なくとも1つが該脂環式炭化水素基若しくはその誘導体であるか、或いは何れか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに2価の脂環式炭化水素基(好ましくは炭素数4〜20)若しくはその誘導体を形成し、残りのRが、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4)、又は1価の脂環式炭化水素基(好ましくは炭素数4〜20)若しくはその誘導体を示す。
Xは、独立に、水素原子又はヒドロキシ基を示し、少なくとも一つがヒドロキシ基である。
Aは単結合或いは−D−COO−で表される基を示し、Dはアルキレン基(好ましくは炭素数1〜4)を示す。)
【0284】
一般式(1a)において、Aは単結合或いは2価の連結基を示し、2価の連結基としては例えば、メチレン基、メチレンカルボニル基、メチレンカルボニルオキシ基、エチレン基、エチレンカルボニル基、エチレンカルボニルオキシ基、プロピレン基、プロピレンカルボニル基、プロピレンカルボニルオキシ基等が挙げられる。特に好ましくは、メチレンカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0285】
一般式(1a)において、Rの1価の脂環式炭化水素基(好ましくは炭素数4〜20)、及び何れか2つのRが相互に結合して形成した2価の脂環式炭化水素基(好ましくは炭素数4〜20)としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタンや、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類等に由来する脂環族環からなる基;これらの脂環族環からなる基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基及びシクロアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基等を挙げることができる。これらの脂環式炭化水素基のうち、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタン、シクロペンタン又はシクロヘキサンに由来する脂環族環からなる基や、これらの脂環族環からなる基を前記アルキル基で置換した基等が好ましい。
【0286】
また、前記脂環式炭化水素基の誘導体としては、例えば、ヒドロキシル基;カルボキシル基;オキソ基(即ち、=O基);ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシル基;シアノ基;シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等の炭素数2〜5のシアノアルキル基等の置換基を1種以上或いは1個以上有する基を挙げることができる。これらの置換基のうち、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基、シアノメチル基等が好ましい。
【0287】
また、Rのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができる。これらのアルキル基のうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が好ましい。
【0288】
好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0289】
【化61】

【0290】
該低分子化合物が不飽和カルボン酸エステルであるとき特に(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。以下に、酸の作用により脱離する基として、3級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸3級エステルの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0291】
【化62】

【0292】
(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物は、市販のものを用いても、公知の方法で合成したものを用いてもよい。
【0293】
また、D成分として、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体が好ましい。
【0294】
D成分は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有しても良い。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d−1)で表すことができる。
【0295】
【化63】

【0296】
一般式(d−1)において、
R’は、それぞれ独立に水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルコキシアルキル基を表す。R’は相互に結合して環を形成していても良い。
R’として好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基である。より好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基である。
このような基の具体的な構造を以下に示す。
【0297】
【化64】

【0298】
D成分は、前記塩基性化合物と一般式(d−1)で表される構造を任意に組み合わせることで構成することも出来る。
D成分は、下記一般式(A)で表される構造を有するものであることが特に好ましい。
なお、D成分は、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物であるかぎり、前記の塩基性化合物に相当するものであってもよい。
【0299】
【化65】

【0300】
一般式(A)において、Raは、独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、n=2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に結合して、2価の複素環式炭化水素基(好ましくは炭素数20以下)若しくはその誘導体を形成していてもよい。
Rbは、独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキ
ル基を示す。但し、−C(Rb) (Rb) (Rb)において、1つ以上のRbが水素原子のとき、残りのRbの少なくとも1つはシクロプロピル基又は1−アルコキシアルキル基である。
少なくとも2つのRbは結合して脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
nは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数をそれぞれ表し、n+m=3である。
【0301】
一般式(A)において、Ra及びRbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリー
ル基及びアラルキル基は、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
前記Rのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基(これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、上記官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)としては、
例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、これらのアルカンに由来する基を、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ノルボルナン、アダマンタン、ノラダマンタン等のシクロアルカンに由来する基、これらのシクロアルカンに由来する基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族化合物に由来する基、これらの芳香族化合物に由来する基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、インドール、インドリン、キノリン、パーヒドロキノリン、インダゾール、ベンズイミダゾール等の複素環化合物に由来する基、これらの複素環化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルキル基或いは芳香族化合物に由来する基の1種以上或いは1個以上で置換した基、直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基・シクロアルカンに由来する基をフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の芳香族化合物に由来する基の1種以上或いは1個以上で置換した基等或いは前記の置換基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基で置換された基等が挙げられる。
【0302】
また、前記Raが相互に結合して、形成する2価の複素環式炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20)若しくはその誘導体としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、ホモピペラジン、4−アザベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、5−アザベンゾトリアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、1,4,7−トリアザシクロノナン、テトラゾール、7−アザインドール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾ[1,2−a]ピリジン、(1S,4S)−(+)−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デック−5−エン、インドール、インドリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノリン、1,5,9−トリアザシクロドデカン等の複素環式化合物に由来する基、これらの複素環式化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、シクロアルカンに由来する基、芳香族化合物に由来する基、複素環化合物に由来する基、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基の1種以上或いは1個以上で置換した基等が挙げられる。
【0303】
本発明における特に好ましい例を具体的に示すと、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルモルホリン、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0304】
本発明における特に好ましいD成分を具体的に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0305】
【化66】

【0306】
【化67】

【0307】
一般式(A)で表される化合物は市販のアミンから、Protective Groups in Organic Synthesis 第四版等に記載の方法で簡便に合成できる。もっとも一般的な方法としては市販のアミンに対してニ炭酸エステル又はハロギ酸エステルを作用させることによって得る方法がある。式中Xはハロゲン原子を表す。
【0308】
【化68】

【0309】
本発明において、(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物は、一種単独でも又は2種以上を混合しても使用することができる。
【0310】
本発明において、(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物の使用量は、下記塩基性化合物と合わせた組成物の全固形分を基準として、通常、0.001〜20質量%、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%である。
【0311】
酸発生剤と(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/[(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物+下記塩基性化合物](モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/[(D)酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物+下記塩基性化合物](モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0312】
〔7〕界面活性剤
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物には、界面活性剤を添加してもしなくてもよい。界面活性剤を添加する場合は、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましい。
【0313】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が上記界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D、222D((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0314】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)若しくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。更に、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0315】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。更に、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C37基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体などを挙げることができる。
【0316】
また、本発明では、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0317】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0318】
界面活性剤の使用量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分量(溶剤を除く全量)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0319】
〔8〕カルボン酸オニウム塩
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、カルボン酸オニウム塩を含有しても良い。カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩などを挙げることができる。特に、カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好ましい。更に、本発明のカルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が芳香族基、炭素−炭素2重結合を含有しないことが好ましい。特に好ましいアニオン部としては、炭素数1〜30の直鎖、分岐、単環又は多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。更に好ましくはこれらのアルキル基の一部又は全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。アルキル鎖中に酸素原子を含んでいても良い。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
【0320】
フッ素置換されたカルボン酸のアニオンとしては、フロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、ペンタフロロプロピオン酸、ヘプタフロロ酪酸、ノナフロロペンタン酸、パーフロロドデカン酸、パーフロロトリデカン酸、パーフロロシクロヘキサンカルボン酸、2,2−ビストリフロロメチルプロピオン酸のアニオン等が挙げられる。
【0321】
これらのカルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸を適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0322】
カルボン酸オニウム塩の組成物中の含量は、組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0323】
〔9〕酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物(以下、「溶解阻止化合物」ともいう)を含有してもよい。溶解阻止化合物としては、220nm以下の透過性を低下させないため、Proceeding of SPIE, 2724,355 (1996)に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体の様な、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。酸分解性基、脂環式構造としては、(A)成分の樹脂のところで説明したものと同様のものが挙げられる。
【0324】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物をKrFエキシマレーザーで露光するか、或いは電子線で照射する場合には、フェノール化合物のフェノール性水酸基を酸分解基で置換した構造を含有するものが好ましい。フェノール化合物としてはフェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、更に好ましくは2〜6個含有するものである。
【0325】
本発明における溶解阻止化合物の分子量は、3000以下であり、好ましくは300〜3000、更に好ましくは500〜2500である。
【0326】
溶解阻止化合物の添加量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対し、好ましくは2〜50質量%であり、より好ましくは3〜30質量%、更に好ましくは5〜10質量%である。
【0327】
以下に溶解阻止化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0328】
【化69】

【0329】
〔10〕その他の添加剤
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて更に染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
【0330】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号公報、特開平2−28531号公報、米国特許第4,916,210号明細書、欧州特許第219294号明細書等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0331】
〔11〕パターン形成方法
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、解像力向上の観点から、膜厚30〜250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚30〜200nmで使用されることが好ましい。感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分濃度は、一般的には1〜10質量%、より好ましくは1〜8.0質量%、更に好ましくは1.0〜6.0質量%である。
【0332】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、次のように所定の支持体上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
【0333】
例えば、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、膜を形成する。
当該膜に、所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像、リンスする。これにより良好なパターンを得ることができる。
【0334】
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、電子線等を挙げることができるが、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1〜200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、電子ビーム等であり、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(13nm)が好ましい。
なお、本発明においては、紫外光やX線などの電磁波も、放射線に含むものとする。
【0335】
膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0336】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、活性光線又は放射線の照射時に感活性光線性又は感放射線性膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体(液浸媒体)を満たして露光を行う、液浸露光によるパターン形成にも好適に用いることができる。これにより解像性を高めることができる。用いる液浸媒体としては空気よりも屈折率の高い液体であればいずれのものでも用いることができるが好ましくは純水である。
【0337】
液浸露光する際に使用する液浸液について、以下に説明する。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ感活性光線性又は感放射線性膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
また、更に屈折率が向上できるという点で屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
【0338】
液浸液として水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させるために、ウェハ上の感活性光線性又は感放射線性膜を溶解させず、かつレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。その添加剤としては水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、感活性光線性又は感放射線性膜上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
【0339】
液浸液としての水の電気抵抗は、18.3MQcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理をしていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(D2O)を用いてもよい。
【0340】
現像工程では、アルカリ現像液を次のように用いる。感活性光線性又は感放射線性樹
脂組成物のアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
更に、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
リンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理又は、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【実施例】
【0341】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に、本実施例に用いた樹脂(A)の合成に使用した繰り返し単位に対応するモノマーを示す。
【0342】
【化70】

【0343】
【化71】

【0344】
合成例1(樹脂(A−1)の合成)
窒素気流下、シクロヘキサノン8.8gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに、(LM-1)8.5g、(IM-1)2.2g、(PM-4)9.0g、重合開始剤V−60(和光純薬工業(株)製)をモノマーに対し13モル%をシクロヘキサノン79gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、更に80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後メタノール900m/水100mlの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥すると、樹脂(A−1)が18g得られた。得られた樹脂の組成比は40/10/50、重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で8200、分散度(Mw/Mn)は1.53であった。合成例1と同様の操作で、樹脂(A−2)〜(A−22)を合成した。
【0345】
以下にその構造を示す。
【0346】
【化72】




【0347】
【化73】

【0348】
【化74】

【0349】
【化75】

【0350】
下記(表1)に、樹脂(A−1)〜(A−22)について、合成に使用したモノマー、モノマー比、重量平均分子量、分散度を示す。モノマー比は、各モノマーの左から順に対応する。
【0351】
【表2】

【0352】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製〕
下記表2、3及び6に示す成分を溶剤に溶解させ、それぞれについて固形分濃度5質量%の溶液を調製し、これを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過して感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製した。調製した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を下記の方法で評価し、結果を表に示した。
【0353】
〔画像性能試験〕
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚86nmの反射防止膜を形成した。その上に調製したポジ型レジスト組成物を塗布し、100℃で、60秒間ベークを行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。得られたウエハをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製 XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.981、インナーシグマ0.895、XY偏向)を用い、75nm1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液としては超純水を使用した。その後100℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥してレジストパターンを得た。
表2に示す実施例1〜20及び比較例1〜4の組成物については、上記のように、液侵露光によるパターニングを行い、評価し、結果を表4に示した。
なお、表3に示す実施例21及び22及び比較例5の組成物については、ポジ型レジスト組成物が疎水性樹脂を含有せず、レジスト膜を形成後、その上層に疎水性樹脂を含有するトップコート保護膜を形成させ、上記と同様にして評価を行い、結果を表5に示した。
トップコート保護膜は、感光性膜を形成後、下記の操作による形成した。
<トップコートの形成方法>
上記感光性膜上に表3に示す疎水性樹脂を溶剤に溶解させ、スピンコーターにより塗布し、ウエハーを115℃60秒加熱乾燥して0.05μmのトップコート層を形成させた。この時トップコート塗布ムラを観察し、塗布ムラ無く均一に塗布されていることを確認した。
溶剤の略号は次のとおりである。
SL−6;2−エチルブタノール
SL−7;パーフルオロブチルテトラヒドロフラン
【0354】
【化76】

【0355】
(HR−67)
重量平均分子量;8000 分散度;1.4
(HR−68)
重量平均分子量;6900 分散度;2.5
【0356】
また、表6に示す実施例23〜26及び比較例6及び7の組成物については、液浸液を用いず、Dry露光(ArFエキシマレーザースキャナー、NA0.75)により75nm1:1ラインアンドスペースパターンを形成する以外は、上記液侵露光によるパターニングにおけるのと同様に、評価を行い、結果を表7に示した。
【0357】
〔ラインエッジラフネス(LER)評価法〕
ラインエッジラフネスの測定は測長走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して75nmのラインアンドスペース1:1パターンを観察し、ラインパターンの長手方向のエッジが5μmの範囲についてエッジのあるべき基準線からの距離を測長SEMにより50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σ(nm)を算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0358】
〔パターン裾引き〕
線幅75nmのレジストパターンにおけるパターン形状(裾引き)を走査型電子顕微鏡(日立製S−4800)を用いて観察し、裾引きが全く発生しなかったものを◎、裾引きがほとんど発生しなかったものを○、裾引きが見られるものを△、裾引きが酷く発生したものを×、とした。
【0359】
〔透過率〕
前記の方法によって調製したレジスト溶液を石英ガラス基板上にスピンコートにより塗布し、100℃でプリベークを行って膜厚100nmのレジスト膜を形成し、その膜の波長193nmの吸光度から算出した。吸光度の測定には、エリプソメーターEPM-222(ジェー・エー・ウーラム社製)を用いた。〔ドライエッチング耐性(DE耐性)〕
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚86nmの反射防止膜を形成した。その上に、実施例4、17、18のそれぞれにおいて調製したポジ型レジスト組成物を塗布し、100℃で、60秒間ベークを行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。得られた各レジスト膜について、UNITY(東京エレクトロン社製)を用いてエッチングを行い、30秒後のバルクでの膜厚減少量を測定した。膜厚減少量が25nm未満のものを◎、25〜35nmを○とし評価したところ、アクリレート系繰り返し単位を含有する樹脂を用いた実施例17及び18では◎であり、樹脂がメタクリレート系繰り返し単位のみを含有する樹脂を用いた実施例4は○であった。
【0360】
【表3】

【0361】
【表4】




【0362】
【表5】

【0363】
【表6】

【0364】
【表7】

【0365】
【表8】

【0366】
表における記号は次の通りである。
【0367】
【化77】

【0368】
N−1:2,6−ジイソプロピルアニリン
N−2:N,N−ジブチルアニリン
N−3:2,4,6−トリ−t−ブチルアニリン
【0369】
W−1:PF6320(OMNOVA社製、フッ素系)
W−2:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製、シリコン系)
【0370】
SL−1: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SL−2: シクロヘキサノン
SL−3: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
SL−4: γ−ブチロラクトン
SL−5: プロピレンカーボネート
【0371】
【化78】

【0372】
〈光酸発生剤c1の合成〉
下記光酸発生剤c1を以下の合成ルートに従って合成した。
【化79】

【0373】
〔化合物1の合成〕
ブロモメチルシクロヘキサン20g、1−ナフトール12.5gを三口フラスコ中でNMP300gに溶解させた後、炭酸カリウム12g、ヨウ化カリウム14gを加え120℃で8時間加熱した。反応液に水300gを加え、ヘキサン100gで3回抽出を行い、得られた有機層を合わせ、1N水酸化ナトリウム水溶液100gで1回、水100gで1回、Brine100gで1回洗浄した後、濃縮し化合物1を13g得た。
【0374】
〔化合物2の合成〕
化合物2は特開2005−266799号公報に記載の方法を参考に合成した。
【0375】
〔光酸発生剤c1の合成〕
13.1gの化合物1を三口フラスコ中でEaton試薬65gに溶解させた後、攪拌しながらテトラメチレンスルホキシド5.7gを滴下し、更に3時間攪拌を行った。反応液を、水240gにあけた後、化合物2を25g、クロロホルムを50g添加した。有機層を分離した後、水層からクロロホルム50gを用いて更に2回抽出を行った。得られた有機層を合わせ、水洗を2回行い濃縮した。得られた組成生物を酢酸エチル20gを用いて再結晶を行い、光酸発生剤c1を22g得た。
【0376】
上記表2、3及び6に示す成分を溶剤に溶解させ、溶剤の量を調整することで、それぞれについて固形分濃度3質量%の溶液を調製し、これを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過して感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製した。調製した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を同様の方法で評価したところ、表4、5及び7と同様の結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂及び(B)活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物を含有し、(B)活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物を、感活性光線性または感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、10〜30質量%含有することを特徴とする感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
(B)成分が、下記一般式(1−1)または(1−2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【化1】


一般式(1−1)中、
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又は単環もしくは多環のシクロアルキル骨格を有する基を表す。
14は複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又は単環もしくは多環のシクロアルキル骨格を有するアルコキシ基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
一般式(1−2)中、
Mは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はベンジル基を表し、環構造を有するとき、環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
式中、R1c及びR2cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。R1cとR2cとが結合して環を形成してもよい。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
及びRが結合して環を形成してもよい。また、M、R1c及びR2cの少なくとも二つが結合して環を形成してもよく、該環構造に炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
は、非求核性アニオンを表す。
【請求項3】
更に含窒素塩基性化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂(A)が、ラクトン構造を含む繰り返し単位を含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂(A)が、単環又は多環の脂環構造を含有する酸分解性基を有する繰り返し単位を含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
100nmの膜を形成した際の該膜の波長193nmの光に対する透過率が60%以上85%以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の液浸露光用感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物を用いて膜を形成し、該塗膜を液浸露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2013−80240(P2013−80240A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262853(P2012−262853)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2009−205362(P2009−205362)の分割
【原出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】