説明

成膜装置、その成膜装置を用いた振動子、及び成膜方法

【課題】塗布対象物の被処理面に塗布する液体の塗布領域の精度を高めることを目的とする。
【解決手段】感応膜溶液Lをマイクロキャピラリ20内に吸い上げて保持し、振動子100上において感応膜150を形成すべき領域の大きさに応じ、マイクロキャピラリ20に印加する圧力を調整しながら、振動子100上に感応膜溶液Lを塗布して感応膜150を形成する。
このとき、振動子100上に感応膜150を形成すべき領域を、感応膜溶液Lと親和性の高い材料からなる膜や線や溝によって画成するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置およびこれを用いて形成された振動子、及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、爆発危険性や有害性のあるガス等の存在、あるいはその定量的な濃度を検出するためのセンサが存在した。このセンサでは、ガスに含まれる特定種の分子を吸着し、その吸着の有無、あるいは吸着量を検出することで、ガス等の存在の有無、あるいはその濃度を検出している。このようなセンサは、ガス等を取り扱う施設、設備、装置等に設置され、ガスの漏れやガス量のコントロールに用いられている。
また近年、燃料電池の開発が盛んに行われている。燃料電池は水素を用いるため、水素ステーションや、燃料電池を使用する車両や装置、機器等において、水素の漏れが無いか監視するのが好ましい。このような用途にも、上記センサは適用できる。
上記用途以外にも、特定種の分子を吸着することで、その吸着の有無あるいは吸着量を検出するセンサは、空気中を漂う有機分子やにおい分子を検出することにより、例えば食物の鮮度や成分分析、快適空間を提供・維持するための環境制御、さらには、人体等、生体の状態検知等に用いることが考えられる。
【0003】
空気中を漂う有機分子やにおい分子などを、その微小な分子質量によって検出するセンサ素子は、これらの分子を含む気体中で振動子を振動させ、分子が振動子表面に付着または吸着された際の振動子の質量変化を、振動子の共振周波数変化として検出する。
【0004】
振動子の共振周波数変化から付着質量を求める最も基本的な方法として、QCM(Quartz Crystal Microbalance)法が挙げられる。QCMでは圧電性を有する水晶の単結晶を板状に切り出して振動子とし、この振動子に電圧を印加することで「厚みすべり振動」と呼ばれるせん断振動を起こさせる。その共振周波数fは、表面に質量Δmの物体が付着すると元の共振周波数fからΔfだけ下がり、その量は
Δf/f=−Δm/(m) (1)
となることが知られている。mは振動子の質量である。
【0005】
一方で、シリコン薄膜等を写真技術(フォトリソグラフィ)で精密に加工するMEMS(Micro Electrical Mechanical Systems)と呼ばれる技術が発達し、今までmm(ミリメートル)単位の領域で製造されていたQCMと同じような振動子を、μm(マイクロメートル)単位の領域で作製することが可能となってきた。振動子のサイズを小さくすることで式(1)における振動子質量が大幅に減少し、付着質量に対する検出感度がアップする。
【0006】
質量検出を行う振動子としては、他に、片持ち梁の横振動を利用するカンチレバー型、板状振動子の面内振動を利用するディスク型の振動子が主に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
いずれの場合も、その共振周波数変化は
Δf/f=−Δm/(2m) (2)
となり、式(1)とは係数が異なるが、振動子質量への依存性は変わらない。
【0007】
このような振動子において、分子やガスの検出を行うには、振動子上に特定の分子を吸着または付着する有機膜等の感応膜(膜)を形成する。感応膜は、溶媒で薄めて塗布したり、スプレーコーティング法、スパッタリング法等によって振動子上に成膜されている(例えば、非特許文献1、2、特許文献2参照。)
【0008】
また、成膜を行うため、液状体を吐出する吐出ヘッドの内圧を、圧力制御装置によって制御する手法(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−240252号公報
【特許文献2】特許第4136811号公報
【特許文献3】特開2007−229676号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】F.M Battiston et al "A chemical sensor based on a microfabricated cantilever array with simultaneous resonave-frequency and bending readout " 2001年 Sensors and Actuators B 77 P.122 - P.131
【非特許文献2】Dirk lange et al " Complementary Metal Oxide Semiconductor Cantilever Arrays on a Single Chip: Mass-Sensitive Detection of Volatile Organic Compounds " 2002年 Anal. Chern. 74, P.3084 - P.3095
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、スプレーコーティング法やスパッタリング法は、大量のセンサに成膜する用途には適しているものの、大量の感応膜材料を成膜領域にふりかけるこれらの手法は、塗布領域のずれが少なくなるように、精度よく成膜することができない課題があった。
【0012】
また、特許文献3に、液状体を吐出する吐出ヘッドの内圧を圧力制御装置によって制御する手法が示されている。この方法では塗布領域に対して精度よく成膜するように圧力制御する方法が示されておらず、塗布対象物の被処理面に膜を精度良く形成するのは、非常に困難であった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、塗布対象物の被処理面に塗布する液体の塗布領域の精度を高めた成膜装置、振動子、成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的のもとになされた本発明は、膜材料を含有する液体を対象物の被処理面に吐出することによって成膜する成膜装置であって、液体を先端部に形成された開口部から吸引してから保持する液体保持部と、液体保持部が開口部から液体を吸引または吐出するために、液体保持部の内部において液体に印加する圧力を調整する圧力調整部と、液体が保持された液体保持部の先端部を対象物の被処理面と対向する被処理位置へ移動させる移動部と、を備え、圧力調整部によって、被処理位置において、被処理面の大きさに応じて被処理面に液体を吐出させるための液体保持部の圧力が調整されることを特徴とする。
このように、被処理面の大きさに応じて液体保持部の圧力を調整することにより、被処理面に吐出される液体の量をコントロールすることができる。これにより、被処理面に塗布される液体の塗布範囲の精度を高めることができる。
【0014】
ここで、成膜装置は、被処理面に対する液体の吐出範囲を観察できる観察部をさらに備えることができる。この場合、観察部によって得られた液体の吐出範囲と被処理面の大きさとを比較し、その比較結果に基づいて、圧力制御部における液体保持部の圧力を調整する。
【0015】
圧力調整部における圧力の調整は、手動で行うことも可能であるが、自動的に行うのが好ましい。このため、本発明は、移動部と圧力調整部とに接続された自動制御部をさらに備え、自動制御部は、予め定められたコンピュータプログラムに基づいた処理を実行することで、移動部における液体保持部の先端部の移動動作、および圧力調整部における液体保持部の圧力の調整を自動的に行うことができる。
また、前記の観察部を備える場合は、移動部と圧力調整部と観察部とに接続された自動制御部をさらに備え、自動制御部は、予め定められたプログラムと観察部による情報に基づいて、移動部における液体保持部の先端部の移動動作、および圧力調整部における液体保持部の圧力の調整を自動的に行う。
【0016】
液体保持部は、毛細管現象によって液体を吸引するのが、微少量の液体を吐出するためには好ましい。
このとき、液体保持部は、先端部に向かって小径化し、液体を保持する空洞部を備えた管形状とすることができる。このような液体保持部は、ガラス管を引っ張ることで形成された、先端に行くに従い小径化する形状を有したものとするのが好ましい。
液体保持部に、例えばルビーを用いることで、ガラス管から作成した液体保持部と同等の先端径を実現できるが、そのような液体保持部は非常に高価である。液体保持部内で液体が硬化してしまった場合、液体保持部を交換しなければならないため、液体保持部にルビー等の高価な材料を用いた場合、振動子の製作コストが非常に高くなってしまう。
また、液体保持部を金属製とした場合、機械加工精度上の限界から先端径を小さくするのが困難であり、また、先端径を小さくすればするほど、加工コストが上昇してしまう。
その点、ガラス管を加熱して引っ張って形成した液体保持部は、先端径も非常に小さくできるので、微少領域への液体保持部の位置決めを目視で行うことも可能となり、しかもこのような液体保持部は数十円単位で安価で製作できるため、コストも抑えることができる。
【0017】
対象物の被処理面に、液体に対する対象物の表面の親和性よりも高い親和性を有し、膜塗布範囲を規定する膜塗布範囲規定材をさらに備えることができる。このような膜塗布範囲規定材には、範囲に対応して形成された金からなる薄膜、または範囲の外形線に沿って線状に形成された金からなる線部を用いることができる。
また、対象物の被処理面に、膜塗布範囲を規定する膜塗布範囲規定材として、範囲の外形線に沿って溝または段部を形成することができる。
【0018】
膜材料は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクタンおよびその共重合体や、オリゴフェニル基やターシャルブチル基を有するフタロシアニン錯体などの分子量1000以上の中分子有機材料などを用いることができる。また、酸化チタンナノ粒子のような、液体中にコロイド状に分散できうる金属酸化物ナノ粒子も有効である。
【0019】
膜材料は溶媒に溶解または分散された状態で液体保持部に吸い上げられる。溶媒は、膜材料を0.1%から10%程度溶解またはコロイド状に分散しうる高沸点溶媒であり、テトラリン、o−ジクロロベンゼン、メシチレン、キシレン、エチレングリコールの少なくとも1種を含むものとするのが好ましい。
【0020】
本発明は、振動子本体と、この振動子本体の表面に形成され、質量を有した物質が付着または吸着する感応膜と、を備えた振動子とすることもでき、この振動子は、感応膜が、請求項1から12のいずれか一項に記載の成膜装置を用いて振動子本体上に成膜されたことを特徴とする。
【0021】
本発明は、膜材料を含有する液体を対象物の被処理面に吐出することによって成膜する成膜方法であって、先端部に開口部が形成された液体保持部に、開口部から液体を吸引してから保持するステップと、液体が保持された液体保持部の先端部を対象物の被処理面と対向する被処理位置へ移動させるステップと、被処理位置において、被処理面の大きさに応じて液体保持部の圧力を調整しながら、開口部から被処理面に液体を吐出させるステップと、を備えることを特徴とする成膜方法とすることもできる。
【0022】
そして、被処理面に液体を吐出させるステップにて、被処理面に対する液体の吐出範囲を観察し、液体の吐出範囲と被処理面の大きさとを比較し、その比較結果に基づいて、液体保持部の圧力を調整することもできる。
【0023】
被処理面に液体を吐出させるステップでは、液体保持部の圧力を増加させることで、液体保持部の先端部から液体を被処理面に吐出した後、吐出された液体が、形成すべき膜の範囲に広がった時点で、液体保持部の圧力を減少させ、液体保持部の先端部を被処理面から離間させることができる。
【0024】
また、液体保持部の圧力を増加させることで、液体保持部の先端部から液体を被処理面に吐出させるときに、液体保持部の先端部と被処理面とを間隔を隔てて対向させておくことで、液体保持部の先端部から吐出されて被処理面に付着した液体を、液体保持部の先端部と被処理面との間にブリッジさせるのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、被処理面の大きさに応じて液体保持部の圧力を調整して、被処理面に吐出される液体の量をコントロールすることにより、被処理面に塗布される液体の塗布範囲の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施の形態における成膜装置の概略構成を示す図である。
【図2】カンチレバー型の振動子の一例を示す図である。
【図3】ディスク型の振動子の一例を示す図である。
【図4】マイクロキャピラリの製作方法を示す概略図である。
【図5】感応膜を形成するときの流れを示すステップ図である。
【図6】本実施の形態における成膜装置の応用例を示す図である。
【図7】(a)は、感応膜塗布範囲規定材として振動子上に形成した金の膜を示す図、(b)は、感応膜塗布範囲規定材として金を帯状に形成した線部を示す図、(c)は感応膜塗布範囲規定材として振動子に形成した溝を示す図である。
【図8】(a)はカンチレバー型の振動子上に成膜した感応膜を示す画像、(b)は金の膜を形成したディスク型の振動子上に成膜した感応膜を示す画像、(c)は溝を形成したディスク型の振動子上に成膜した感応膜を示す画像、(d)は膜や溝を形成していないディスク型の振動子上に成膜した感応膜を示す画像である。
【図9】図8(c)の一点鎖線において振動子を断面視した、感応膜の膜厚分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における成膜装置10の構成を説明するための図である。
図1に示すように、成膜装置10は、マイクロキャピラリ(液体保持部)20を保持するホルダ11と、ホルダ11を上下方向(Z軸方向)に昇降移動させるZ軸ステージ(移動部)12と、Z軸ステージ12を、水平面内(XY軸方向)に移動させるXY軸ステージ(移動部)13と、感応膜塗布対象である振動子が支持される振動子支持ステージ14と、感応膜溶液(膜材料、液)Lが収容される塗布液収容部15とを備えている。
【0028】
ホルダ11は、ベース板16を介してZ軸ステージ12に保持されている。ベース板16には、振動子支持ステージ14上にセットした振動子(対象物)100を拡大して観察するための例えばCCDカメラやCMOSカメラからなるカメラ(観察部)17と、振動子支持ステージ14上にセットした振動子100に光を照射する照明18とが一体に設けられている。また、カメラ17には、カメラ17で撮影した映像を表示するモニタ19が接続されている。
【0029】
Z軸ステージ12、XY軸ステージ13は、図示しないステージ駆動部によりその動作が制御される。オペレータが、ステージ駆動部にX、Y、Z方向の移動量を適宜に操作手段により入力する結果、Z軸ステージ12、XY軸ステージ13は動作する。
ここで、XY軸ステージ13を動作させると、これによってZ軸ステージ12がXY方向に移動される。そして、Z軸ステージ12を動作させると、Z軸ステージ12に保持されたベース板16、ホルダ11、カメラ17、照明18がZ軸方向に一体に移動される。
このようにして、ホルダ11、カメラ17、照明18が、振動子支持ステージ14上にセットされる振動子100に対してX、Y、Z方向の任意の位置に移動動作できるようになっている。
【0030】
振動子支持ステージ14は、感応膜(膜)150の成膜対象となる振動子100を支持するもので、機械的なチャックや、バキューム吸着、静電力による吸着等によって、振動子100を支持固定する。ここで、振動子支持ステージ14に支持される振動子100は、その表面に感応膜150を形成するのであれば、カンチレバー型、ディスク型等、いかなる形式のものであっても良い。
【0031】
例えば、図2に示すように、カンチレバー型の振動子100Aは、シリコン系材料、より詳しくはポリシリコンあるいは単結晶シリコンからなる基板に、フォトリソグラフィ法等のMEMS技術を用いることによって形成されている。振動子100Aは、平面視長方形状で、基板を構成するシリコン系材料、特に好ましくは単結晶シリコンから形成されている。振動子100Aの寸法の一例を挙げると、厚さは2〜10μm、長さは30〜1000μm、幅は10〜300μmとするのが好ましい。振動子100Aの表面に、感応膜150Aが形成されている。
【0032】
また、図3に示すように、ディスク型の振動子100Bは、カンチレバー型と同様の材料から形成され、円形、矩形等の外形をなしている。このようなディスク型の振動子100Bの表面にも、感応膜150Bが形成される。
なお、以下の説明においては、カンチレバー型の振動子100Aとディスク型の振動子100Bを区別する必要がある以外、これらを振動子100と称し、また、感応膜150A、150Bについても、同様に感応膜150と称する。
【0033】
塗布液収容部15は、振動子100の表面に形成される感応膜150の材料となる感応膜溶液Lを収容する容器15aを備えている。この容器15aは上方に開口しており、上部の開口部からマイクロキャピラリ20の先端を塗布液収容部15内に挿入して、感応膜溶液Lを吸い上げるようになっている。
【0034】
ここで、感応膜150は、前記の振動子100上の予め定められたエリア(被処理面)に塗布されるもので、無機系や有機系の感応膜材料(膜材料)からなる膜によって形成することができる。
感応膜150を構成する無機系の感応膜材料とすれば、代表的なものに二酸化チタン(TiO)があり、吸着効率を高めるために二酸化チタンを多孔体状とするのが好ましい。また、酸化チタンナノ粒子のような、液体中にコロイド状に分散できうる金属酸化物ナノ粒子も有効である。そして、感応膜150を構成する有機系の感応膜材料としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクタンおよびその共重合体や、オリゴフェニル基やターシャルブチル基を有するフタロシアニン錯体などの分子量1000以上の中分子有機材料等がある。この感応膜材料については、例えば特開2008−268170号公報に記載の各種材料を用いることもできる。
この感応膜150では、特定種の分子、あるいは特定の特性または特徴を有する複数種の分子のみを吸着する、分子に対する選択性を有したものとすることができ、その選択性は、高分子を形成する官能基や、架橋の状態等の様々な要素で決まると考えられる。この感応膜150を、振動子100の上面の少なくとも一部を覆うように形成するのが好ましい。
【0035】
このような感応膜150を形成するための感応膜溶液Lとしては、上記した材料を溶媒に分散させたものが用いられる。ここで用いる溶媒としては、有機膜材料を0.1%から10%程度溶解またはコロイド状に分散しうる高沸点溶媒であり、テトラリン、o−ジクロロベンゼン、メシチレン、キシレン、エチレングリコールの少なくとも1種を含むものとするのが好ましい。沸点が低いと、溶媒が蒸散しやすく、感応膜溶液Lの粘度が過度に上昇したり、固化してしまったりする。なお、これらの感応膜溶液Lは、飽和蒸気圧、沸点だけでなく、感応膜材料の分散性等も考慮して選定する必要がある。
【0036】
図4に示すように、マイクロキャピラリ20は、内部に感応膜溶液Lを保持するための空洞部を有した中空のチューブ材、例えばガラス管Gが、先端部20aに行くに従いその外径・内径が漸次小さくなるニードル状に形成されたものである。このようなマイクロキャピラリ20は、以下のようにして得ることができる。すなわち、図4(a)に示すように、ガラス管Gを加熱しながら、プラーと称される引張装置で両端を引っ張ることで、図4(b)に示すように、ガラス管Gを加熱した部位においてガラス管Gが大きく伸び、その管径が外径・内径とも、漸次小さくなる。そこで、図4(c)に示すように、ガラス管Gが細くなり、所望の外径を有している部分にて、このガラス管Gを切断することで、マイクロキャピラリ20が得られる。さらに、切断面を加熱処理する事により、滑らかな先端形状のマイクロキャピラリ20を作成することができる。
このとき、マイクロキャピラリ20の先端の外径は10〜100μm、管路の内径は5〜90μmとするのが好ましい。マイクロキャピラリ20の先端の外径が大きすぎると、マイクロキャピラリ20の先端を、モニタ19に表示された映像で目視しながら振動子100の表面上において感応膜150を形成すべき位置合わせするのが困難となる。またマイクロキャピラリ20の管路の内径が上記範囲以上となると、感応膜溶液Lの吐出量を微細にコントロールするのが困難になる。また、マイクロキャピラリ20の先端の外径、管路の内径が上記範囲以下とすると、マイクロキャピラリ20の製作自体が困難になるという問題がある。
【0037】
マイクロキャピラリ20は、先端部20aが、振動子支持ステージ14上にセットされる振動子100に対向するよう、下方に向けてホルダ11に保持される。また、マイクロキャピラリ20の後端部20bには、マイクロキャピラリ20の配管内に印加する圧力を調整するためのバルブ等を備えた圧力調整部30が接続されている。圧力調整部30には、窒素ボンベ等の圧力発生源31が接続されている。ここで、圧力調整部30では、マイクロキャピラリ20に正圧だけでなく負圧をも印加できるようにするのが好ましい。
【0038】
次に、上記したような成膜装置10を用いた振動子100への感応膜成膜方法について説明する。
まず、マイクロキャピラリ20を用意する。これには、例えば外径1mm、内径0.6〜0.75mm、長さ90mmのガラス管Gの中ほどを高温で熱し、長軸方向へ引っ張ることで、先端の細く尖ったニードルが出来る。もちろん、このガラス管Gのサイズは一例に過ぎず、適宜他のサイズのものを用いることができる。
ニードル状の部分を任意の箇所で切断することで、先端の外径が10〜100μm、内径が5〜90μmのマイクロキャピラリ20を作成する。さらに切断面を加熱処理する事により、滑らかな先端形状のマイクロキャピラリ20を作成することができる。
作成したマイクロキャピラリ20は、ホルダ11に装着する。
【0039】
また、感応膜150の成膜対象である振動子100を、振動子支持ステージ14上にセットする。
【0040】
次に、予め感応膜材料を溶媒中に分散させて、濃度調整をした感応膜溶液Lを、塗布液収容部15に収容する。ここで、感応膜溶液Lは、目的の膜厚に応じて濃度調整する事が望ましいが、塗布領域の制御性を考慮すると数十cp程度の粘度とするのが好ましい。また、濃度・粘度の調製のため、2種以上の溶媒の混合溶液を用いることも可能である。
【0041】
次いで、図5(a)、(b)に示すように、Z軸ステージ12、XY軸ステージ13を操作し、ホルダ11に保持されたマイクロキャピラリ20の先端部20aを、塗布液収容部15の感応膜溶液L中に浸漬させる。すると、毛細管現象により、感応膜溶液Lが吸い上げられ、マイクロキャピラリ20内に感応膜溶液Lが保持される。
このとき、感応膜溶液Lの粘度、マイクロキャピラリ20の内径等に応じて、感応膜溶液Lが過度に吸い上げられないよう、圧力調整部30の操作により、マイクロキャピラリ20に圧力を印加することができる。
【0042】
続いて、図5(c)に示すように、Z軸ステージ12、XY軸ステージ13を操作し、マイクロキャピラリ20を、振動子支持ステージ14上の振動子100に対向する位置に移動させる。このとき、Z軸ステージ12、XY軸ステージ13は、カメラ17で撮影されてモニタ19に表示された映像により、マイクロキャピラリ20の先端位置を観察しながら操作すれば良い。
また、このとき、マイクロキャピラリ20の移動に時間が掛かると、感応膜溶液Lが溶媒の蒸散により濃度が高くなり、粘性も上昇してしまうため、マイクロキャピラリ20の移動は速やかに行うのが好ましい。
【0043】
図5(d)に示すように、マイクロキャピラリ20は、振動子100における感応膜成膜位置の、例えば上方1〜5μmの位置にて静止させる。
【0044】
次いで、圧力調整部30をオペレータが外部から操作することにより、マイクロキャピラリ20に、例えば0.5〜5kPa程度の圧力を、例えば10〜100msec程度印加する。
すると、図5(e)に示すように、マイクロキャピラリ20内に保持された感応膜溶液Lが、マイクロキャピラリ20の先端部20aから吐き出されるように垂れ下がり、振動子100上に付着(接触)する。このとき、前記したようにマイクロキャピラリ20を、振動子100の上方例えば1〜5μmに位置させておくと、マイクロキャピラリ20の先端部20aから吐出された感応膜溶液Lは、表面張力により、振動子100の表面とマイクロキャピラリ20の先端部20aとの間にブリッジしたような状態となる。
【0045】
図5(f)に示すように、圧力をさらに印加し続け、吐出された感応膜溶液Lが、感応膜150を形成すべき目的の領域に広がった時点で、圧力調整部30を操作することにより、マイクロキャピラリ20に印加する圧力を減圧し、感応膜溶液Lを吸引する。そして、図5(f)、(g)に示すように、Z軸ステージ12を操作し、マイクロキャピラリ20を上方に引き上げる。すると、図5(h)に示すように、マイクロキャピラリ20の先端部20aから感応膜溶液Lが切れ、振動子100上に感応膜溶液Lが広がって塗布される。
【0046】
しかる後、予め定めた時間だけ経過させることで、振動子100上の感応膜溶液Lの溶媒が蒸散し、これによって感応膜材料からなる感応膜150が振動子100上に成膜される。
【0047】
ところで、上記したような振動子100上への感応膜150の一連の成膜工程は、ステージ駆動部と、圧力調整部30の動作を自動的に制御することで、自動化することが可能である。
このためには、図6に示すように、成膜装置10は、予め設定されたコンピュータプログラムに基づいた一連の処理を実行することにより、ステージ駆動部におけるZ軸ステージ12、XY軸ステージ13の動作の制御、圧力調整部30におけるマイクロキャピラリ20に印加する圧力の制御を自動的に行う自動制御装置(自動制御部)40を備える。
これにより、自動制御装置40の司る制御により、塗布液収容部15からの感応膜溶液Lの吸い上げ、マイクロキャピラリ20の振動子100に対向する位置への移動、マイクロキャピラリ20への圧力印加による感応膜溶液Lの吐出、マイクロキャピラリ20に印加する圧力の減圧・吸引、マイクロキャピラリ20の上方への引き上げ、といった一連の工程を順次自動的に実行し、振動子支持ステージ14上の所定位置にセットされた振動子100に対し、感応膜150の成膜を自動的に行うことができる。
【0048】
また、上記のようにして振動子100上への感応膜150の一連の成膜を自動的に行う過程で、自動制御装置40において、カメラ17で撮影した画像に基づき、振動子100上に吐出された感応膜溶液Lの範囲と、形成すべき感応膜150の大きさとを、画像処理により比較し、その比較結果に基づいて、圧力調整部30におけるマイクロキャピラリ20に印加する圧力の制御を行うこともできる。
すなわち、自動制御装置40において、振動子100上に吐出された感応膜溶液Lの範囲の面積を一定微少時間ごとに算出し、算出された面積と、形成すべき感応膜150の面積との差が、予め定めた大きさ以下になったと判定された時点で、圧力調整部30において印加する圧力を減少させる制御を行うことができる。
このようにして、感応膜溶液Lの吐出量の制御を高精度化することができる。
【0049】
なお、上記した一連の動作は、適宜、並行あるいは同時に行うことができる。また、上記にあげた各数値例は、あくまでも理解を助けるための一例であり、本発明が上記数値例に何ら限定されるものではない。
【0050】
ところで、上記のようにマイクロキャピラリ20から感応膜溶液Lを振動子100上に供給して塗布するに際しては、振動子100上の微少領域に高精度に感応膜150を成膜させるため、上記のような成膜装置10やそれを用いた塗布方法だけでなく、振動子100側にも、感応膜150の塗布範囲を高精度に規制するための加工、処理を施すのが好ましい。
例えば、図7(a)に示すように、振動子100において、感応膜150を形成する範囲に、金(Au)からなる膜(感応膜塗布範囲規定材)200を、例えばスパッタや蒸着等の適宜手段により成膜しておくのが好ましい。金は、振動子100の材料に比較し、上記したような感応膜溶液Lとの親和性に大幅に優れるため、感応膜溶液Lを上記マイクロキャピラリ20から供給したときに、膜200とその周囲の振動子100との間で、親和性の差により、膜200よりも外周側に感応膜溶液Lが広がるのが阻止され、これによって、膜200上の感応膜150を形成する範囲に感応膜材料が精度良く成膜される。
もちろん、感応膜溶液Lとの親和性に優れるのであれば、金以外の材料で同様に膜200を形成しても良い。このような感応膜溶液Lとの親和性に優れる他の材料としては、CVDやスパッタ等によって形成することのできるシリコン酸化膜、アルキルSAM(Self-Assembled Monolayer)膜、等がある。
【0051】
また、図7(b)に示すように、振動子100において、感応膜150を形成する範囲の外形に沿って、金等、感応膜溶液Lと親和性が振動子100の材料よりも大幅に優れる材料により、一定幅の帯状の線部(感応膜塗布範囲規定材)250を形成しても良い。このような線部250を形成することでも、線部250に囲まれた領域内に広がった感応膜溶液Lは、線部250と、振動子100を形成する材料との親和性の差により、線部250よりも外周側に広がるのが阻止され、これによって感応膜150を形成する範囲に感応膜材料が精度良く成膜される。
【0052】
また、図7(c)に示すように、振動子100において、感応膜150を形成する範囲の外形に沿って連続する溝(感応膜塗布範囲規定材)300(または段部、凹部)を形成しても良い。溝300を形成することで、溝300に囲まれた領域内に広がった感応膜溶液Lは、表面張力によって、溝300の角部においてそれよりも外周側に広がるのが阻止され、これによって感応膜150を形成する範囲に感応膜材料が精度良く成膜される。このような溝300は、Siセンサチップ製作ステップ、振動子100の発振特性の両面からも有効である。また、溝300は、例えばSi基板からなる振動子100上に円形パターン状に形成するのであれば、幅2μmあれば十分に有効となる。
【0053】
線部250や溝300を形成する場合には、振動子100の表面を、酸素プラズマやUV−オゾン処理により表面処理することで、振動子100の表面における感応膜溶液Lの濡れ性改善を図るのが好ましい。
【0054】
このように、ガラス管Gを引っ張ることで先端を小径化したマイクロキャピラリ20を用い、感応膜溶液Lを毛細管現象によりマイクロキャピラリ20内に吸い上げ、マイクロキャピラリ20に印加する圧力をコントロールすることで、振動子100上の微少な領域に感応膜溶液Lを塗布して感応膜150を形成することが可能となる。
このとき、振動子100上に感応膜150を形成すべき領域を、感応膜溶液Lと親和性の高い材料からなる膜200および線部250、溝300によって画成することで、感応膜150を高精度に成膜することが可能となる。
しかも、このような成膜装置10は、複雑な機構やコストの掛かる加工等は不要である。特に、マイクロキャピラリ20は、ガラス管を用いて非常に低コストで製作することができる。これにより、試験研究や試作段階において、振動子100に感応膜150を形成するのに非常に適している。
【実施例】
【0055】
さてここで、上記したような成膜装置10を用いて、振動子100上に感応膜150を実際に成膜したので、その結果を示す。
(実施例1):図2に示す振動子100の表面の所定領域に、金からなる膜200を蒸着形成した(膜厚100nm)。ここで、膜200の大きさは、100×500μmないし100×300μmとした。
【0056】
そして、膜200上に、アクリロニトリルとブタジエンをモノマー単位とする共重合体(PAB)、TiO、ポリブタジエン(PBD)の3種の感応膜材料をそれぞれ溶媒中に分散させたものを、上記成膜装置10により塗布した。
ここで、PABは、溶媒にo−ジクロロベンゼンを用い、その混合比は、PABを1.5wt%、溶媒を98.5wt%とした。
TiOは、溶媒にエチレングリコールを用い、その混合比は、TiOを2.5wt%、溶媒を90wt%、水を7.5wt%とした。
PBDは、溶媒にテトラリンを用い、その混合比は、PBDを2.5wt%、残部をテトラリンとした。
【0057】
また、図3に示したようなディスク型の振動子100においては、以下の3通りのサンプルを用意した。
(実施例2):ディスク型の振動子100の表面の所定領域に、金からなる膜200を蒸着形成した。
(実施例3):ディスク型の振動子100の表面の所定領域の外形線に沿って、幅2μm、深さ500nmの溝300を形成した。
(比較例):表面に膜200、溝300を形成しないディスク型の振動子100。
そして、実施例2、3、比較例のそれぞれにおいて、振動子100の表面の所定領域に、PBD:2.5wt%、溶媒:残部とした感応膜溶液Lを上記成膜装置10により塗布した。
【0058】
これらの結果を図8(a)、(b)、(c)、(d)に示す。
実施例1(図8(a))、実施例2(図8(b))、実施例3(図8(c))においては、上記いずれの場合でも、振動子100上において、膜200、溝300によって画成された所定領域に感応膜150が形成されていることが確認された。一方、図8(d)に示すように、比較例の膜200、溝300を形成しない振動子100においては、所定領域よりも広がって感応膜150が形成されていることが確認された。
【0059】
また、図8(c)に示した実施例3の振動子100上の感応膜150の膜厚分布を、触針式段差計により測定した。その結果を図9に示す。
図9に示すように、振動子100上において溝300によって画成された領域に形成された感応膜150は、その膜厚もほぼ均一であることが確認された。
【0060】
なお、上記実施の形態では、成膜装置10の構成や、感応膜150の成膜方法について説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…成膜装置、11…ホルダ、12…Z軸ステージ(移動部)、13…XY軸ステージ(移動部)、14…振動子支持ステージ、15…塗布液収容部、15a…容器、17…カメラ(観察部)、18…照明、19…モニタ、20…マイクロキャピラリ(液体保持部)、20a…先端部、20b…後端部、30…圧力調整部、31…圧力発生源、40…自動制御装置(自動制御部)、100…振動子(対象物)、150…感応膜(膜)、200…膜(膜塗布範囲規定材)、250…線部(膜塗布範囲規定材)、300…溝(膜塗布範囲規定材)、G…ガラス管、L…感応膜溶液(膜材料、液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜材料を含有する液体を対象物の被処理面に吐出することによって成膜する成膜装置であって、
前記液体を先端部に形成された開口部から吸引してから保持する液体保持部と、
前記液体保持部が前記開口部から前記液体を吸引または吐出するために、前記液体保持部の内部において前記液体に印加する圧力を調整する圧力調整部と、
前記液体が保持された前記液体保持部の前記先端部を前記対象物の前記被処理面と対向する被処理位置へ移動させる移動部と、を備え、
前記圧力調整部によって、前記被処理位置において、前記被処理面の大きさに応じて前記被処理面に前記液体を吐出させるための前記液体保持部の前記圧力が調整されることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記成膜装置は、前記被処理面に対する前記液体の吐出範囲を観察できる観察部をさらに備え、
前記観察部によって得られた前記液体の吐出範囲と前記被処理面の大きさとを比較し、その比較結果に基づいて、前記圧力制御部における前記液体保持部の前記圧力を調整することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記移動部と、前記圧力調整部と、に接続された自動制御部をさらに備え、
前記自動制御部は、予め定められたプログラムに基づいた処理を実行することで、前記移動部における前記液体保持部の前記先端部の移動動作、および前記圧力調整部における前記液体保持部の前記圧力の調整を自動的に行うことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記移動部と、前記圧力調整部と、前記観察部と、に接続された自動制御部をさらに備え、
前記自動制御部は、予め定められたプログラムと前記観察部による情報に基づいて、前記移動部における前記液体保持部の前記先端部の移動動作、および前記圧力調整部における前記液体保持部の前記圧力の調整を自動的に行うことを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記液体保持部は、毛細管現象によって前記液体を吸引することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記液体保持部は、前記先端部に向かって小径化し、前記液体を保持する空洞部を備えた管形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記液体保持部は、ガラス管を引っ張ることで形成された、先端に行くに従い小径化する形状を有していることを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記対象物の前記被処理面に、前記液体に対する前記対象物の表面の親和性よりも高い親和性を有し、膜塗布範囲を規定する膜塗布範囲規定材がさらに備えられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記膜塗布範囲規定材は、前記範囲に対応して形成された金からなる薄膜、または前記範囲の外形線に沿って線状に形成された金からなる線部であることを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記対象物の前記被処理面に、膜塗布範囲を規定する前記膜塗布範囲規定材として、前記範囲の外形線に沿って溝または段部が形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記膜材料は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクタンおよびその共重合体や、オリゴフェニル基やターシャルブチル基を有するフタロシアニン錯体などの分子量1000以上の中分子有機材料からなることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記膜材料は溶媒に分散された状態で前記液体保持部に吸引され、
前記溶媒は、テトラリン、エチレングリコール、o−ジクロロベンゼン、メシチレン、キシレンの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項11に記載の成膜装置。
【請求項13】
振動子本体と、
前記振動子本体の表面に形成され、質量を有した物質が付着または吸着する感応膜と、を備え、
前記感応膜が、請求項1から12のいずれか一項に記載の成膜装置を用いて前記振動子本体上に成膜されたことを特徴とする振動子。
【請求項14】
膜材料を含有する液体を対象物の被処理面に吐出することによって成膜する成膜方法であって、
先端部に開口部が形成された液体保持部に、前記開口部から前記液体を吸引してから保持するステップと、
前記液体が保持された前記液体保持部の前記先端部を前記対象物の前記被処理面と対向する被処理位置へ移動させるステップと、
前記被処理位置において、前記被処理面の大きさに応じて前記液体保持部の前記圧力を調整しながら、前記開口部から前記被処理面に前記液体を吐出させるステップと、
を備えることを特徴とする成膜方法。
【請求項15】
前記被処理面に前記液体を吐出させるステップにて、前記被処理面に対する前記液体の吐出範囲を観察し、観察された前記液体の吐出範囲と前記被処理面の大きさとを比較し、その比較結果に基づいて、前記液体保持部の前記圧力を調整することを特徴とする請求項14に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記被処理面に前記液体を吐出させるステップでは、前記液体保持部の前記圧力を増加させることで、前記液体保持部の前記先端部から前記液体を前記被処理面に吐出した後、吐出された前記液体が、形成すべき前記膜の範囲に広がった時点で、前記液体保持部の前記圧力を減少させ、前記液体保持部の前記先端部を前記被処理面から離間させることを特徴とする請求項14または15に記載の成膜方法。
【請求項17】
前記液体保持部の前記圧力を増加させることで、前記液体保持部の前記先端部から前記液体を前記被処理面に吐出させるときに、前記液体保持部の前記先端部と前記被処理面とを間隔を隔てて対向させておくことで、前記液体保持部の前記先端部から吐出されて前記被処理面に付着した前記液体を、前記液体保持部の前記先端部と前記被処理面との間にブリッジさせることを特徴とする請求項16に記載の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−62666(P2011−62666A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217243(P2009−217243)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】