成膜装置および成膜方法
【課題】粉体状のターゲット材料を用いたスパッタ法において、長時間の連続稼動によっても、常に一定で安定した膜厚および成膜レートを得ることが可能な成膜装置および成膜方法を提供すること。
【解決手段】真空を維持することが可能な真空槽と、真空槽内にあり基板を載置する基板保持台と、基板保持台と対向して設置され、粉状のターゲット材料を保持する容器を載置し、かつ、基板保持台に対向する面の中心軸を中心に回転するカソードと、カソードに電圧を印加する電源と、真空槽内にガスを供給しつつ排気するガス供排気手段からなる成膜装置において、基板保持台とカソードとの間には開口部を有してアースシールドが配置され、アースシールドのカソード側の表面の一部には、粉状のターゲット材料を攪拌する攪拌手段が設けられたこと。
【解決手段】真空を維持することが可能な真空槽と、真空槽内にあり基板を載置する基板保持台と、基板保持台と対向して設置され、粉状のターゲット材料を保持する容器を載置し、かつ、基板保持台に対向する面の中心軸を中心に回転するカソードと、カソードに電圧を印加する電源と、真空槽内にガスを供給しつつ排気するガス供排気手段からなる成膜装置において、基板保持台とカソードとの間には開口部を有してアースシールドが配置され、アースシールドのカソード側の表面の一部には、粉状のターゲット材料を攪拌する攪拌手段が設けられたこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状の材料のターゲット材を用いて基板上に薄膜を形成するための成膜装置および成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デバイスの高性能化や微細化が進み、その要素技術の1つである薄膜形成プロセスはその応用範囲が広がっている。しかし、多くの薄膜形成プロセスは真空技術などの高度な装置システムを必要とすることなどから、しばしばコスト面が問題視され、如何に生産性を高めて効率の良いモノづくりができるかが課題になっている。
【0003】
特に、これまでバルク材の加工によって使用されてきた誘電体や絶縁物も薄膜化の傾向が進み、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化マグネシウム(MgO)などの金属酸化物、或いは、チッ化珪素(SiN)など窒化物も薄膜が用いられてきている。しかし、依然として生産性における問題点を残しているのが現状である。これは、ターゲット材に焼結体が用いられるため、スパッタ率が小さく、成膜速度を十分に高めることができないというのが主な理由である。
【0004】
ところが、近年、ターゲット材にこれまで用いられてきた固形ではなく、顆粒状のものを用いることが報告されており、例えば、特許文献1に記載された発明などがある。特許文献1によれば、真空槽内に保持する材料の形態を工夫することによって、材料寿命を延ばし、稼働率を向上して、生産性を向上するという内容である。特に、固形のターゲットでは、逐一、真空槽内を大気開放し、稼働率を低下させていた問題が改善されるというものである。
【特許文献1】特開平10−18029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明では、粉体状の材料を用いてスパッタ成膜しようとすると、以下のような課題が発生することになる。
【0006】
すなわち、粉体状の材料は、各々の粒子間には働く力によって、凝集しやすいという性質を有しており、ターゲット材として集められたこれらの粒子は、すでに凝集傾向にある。ここに、プラズマ等の放電が直面することになると、発生する熱などの影響によって、その凝集が一層進むこととなり、ターゲット材の密度が高まった状態ができるのである。
【0007】
具体的には、プラズマ中からのイオンがターゲット材である粉体粒子に衝突すると、これによる熱が発生し、ターゲットの表面温度が上昇する。バルク材とは異なり、粉体の場合には粒子と粒子の間に空隙があるため、その熱伝導性は極めて乏しい。従って、ターゲット材の表面付近にある粉体粒子は急激に加熱され、粉体粒子同士の凝集の加速を招くのである。温度上昇による粉体同士の凝集は、放置しておくと溶着にまで進み、もはや、粉体をなさなくなる。
【0008】
前述のように、粉体のターゲット材の熱伝導性は乏しく、ターゲット温度の上昇と粉体凝集は表面付近で進むため、内部の粉体状態はそれに比べて大きな変化はない。すなわち、ターゲット材表面だけ凝集が進み、密度は高くなり、溶着・固化していくのである。この結果、この状態では粉体の特徴である高い成膜レートは得られないという問題を生じることになる。
【0009】
このように、粉体状のターゲット材を使用するに当たっては、表面が粉体の凝集が進んでいない初期状態では、粉体のかさ密度が小さく、スパッタによる成膜速度は早いが、プラズマによる放電に晒されターゲット材表面の温度が上昇して、粉体の凝集が進むと、ターゲット材表面のスパッタ率が下がり、成膜速度が低下する。すなわち、同じターゲット材の表面の放電を連続的に行うと、粉体の凝集度合いが経時的に変化をして、成膜速度も経時的に低下し、安定したプロセスが実現できないという課題を有しているのである。
【0010】
従って、スパッタ放電に曝されたターゲット材料表面は、すぐに凝集してしまうため、同じターゲット面を使って多量の成膜処理はできないと同時に別に準備された材料も同様の理由で使用できなくなる。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、長時間の連続稼動によっても、基板に対して安定した膜厚でかつ高い成膜レートを得ることが可能な成膜装置および成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の成膜装置は、真空を維持することが可能な真空槽と、真空槽内にあり基板を載置する基板保持台と、基板保持台と対向して設置され、粉状のターゲット材料を保持する容器を載置し、かつ、基板保持台に対向する面の中心軸を中心に回転するカソードと、カソードに電圧を印加する電源と、真空槽内にガスを供給しつつ排気するガス供排気手段からなる成膜装置において、基板保持台とカソードとの間には開口部を有してアースシールドが配置され、アースシールドのカソード側の表面の一部には、粉状のターゲット材料を攪拌する攪拌手段が設けられたことで解決できる。
【0013】
このとき、攪拌手段にターゲット材と同種類の粉末材料を供給しながら基板を処理すること好適である。
【0014】
また、粉状のターゲット材の平均粒径は50nm以上10μm未満であるとなお良い。
【0015】
更に、本発明の成膜方法は、真空槽内にガスを供給しつつ排気し、真空槽内を所定の圧力に制御しながらプラズマを発生させ、粉状のターゲット材料を保持する容器を載置するカソードに電圧を印加させながら、カソードを基板保持台に対向する面の中心軸を中心に回転させ、カソードに対向する基板保持台に載置された基板を処理する成膜方法であって、粉状のターゲット材料は基板保持台とカソードとの間に配設された開口部を有するアースシールドを介してプラズマに曝される第1領域と曝されない第2領域を有し、第2領域にて粉状のターゲット材料を攪拌させることで前記第1領域と前記第2領域でのターゲット材料のかさ密度を実質的に同一にしながら、基板の成膜を行うことで解決できる。
【0016】
このとき、攪拌手段にターゲット材と同種類の粉末材料を供給しながら基板を処理すること好適である。
【0017】
また、粉状のターゲット材の平均粒径は50nm以上10μm未満であるとなお良い。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によると、長期間にわたって均一な膜厚で安定的な成膜レートを確保することができるため、生産性が高い成膜装置および成膜方法が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1に本発明の実施の形態1について示す。
【0021】
真空槽1に、粉末ターゲット材料2を入れた容器3を配置すると共にその直上に基板4を配置し、基板4とターゲットの間には、シャッター5が配置される。ターゲット材2には二酸化ケイ素(SiO2)粉末を用い、容器3は石英(SiO)製とした。容器3は回転機能を有する銅製の電極6上に配置し、電極6には整合回路7を介して、高周波電源8が接続されると同時に、内部には、冷却水が循環するよう水路を切って、プラズマによる熱の発生に対して冷却するようになっている。
【0022】
図2はターゲット材2、容器3と電極6などを含むカソードの詳細図を示し、図2(1)はカソードの上面図であり、図2(2)は側面図である。
【0023】
同図において、容器3の深さは10mm、直径を400mmとし、ここに粉末状のターゲット材を敷き詰めた。容器3は同等以上の面積を有する電極6の上に配置されている。また、ターゲット材2の上部に、ターゲット材の一部を残して、全体を覆うアースシールドカバー10が設置され、アースに接地されている。ターゲット材表面とこの覆った金属板の間の空隙の間隔は2mmとした。
【0024】
この空隙が大きくなると、プラズマの放電が回りこみ、ターゲットのプラズマからの隔離が難しくなる。また、ターゲット面が露出された領域の電極6裏面には、複数の永久磁石からなるマグネトロン磁石11を配置してあり、露出したターゲット面上に磁石と閉じた磁気回路を形成するように配置をした。ターゲットの露出面は、アースシールド板の開口形状によって形成されるが、直径160mmの円形状とした。これは、プラズマの放電を安定させるためである。アースシールドカバーの裏面の一部に、ターゲット材料の表面を機械的接触により、凝集した粉末を攪拌させる機構12を設ける。
【0025】
図3は凝集した粉末を分離するための機構部品(攪拌手段)の詳細を示している。
【0026】
同図において、部品は長さ7mm、直径約0.5mmの針状部品13を複数配置した櫛状の構成部品14である。また、構成部品14は、針状部品の配置位置を変えたものが複数ありこれを直列に並べて構成されている。針状部品の各々の配置間隔は、5mmとした。これらの配置間隔は、間隔が広すぎると攪拌効果が得られないが、小さくしすぎると、針状部品と針状部品の間に粉体が詰まることになり、やはり攪拌効果が発揮できない。具体的には、針状部品13のうち、ターゲット材料に入り込んでいる長さ、すなわち、本実施の形態の場合には2mmでこれ以上針状部品13の間隔が狭まると、相隣接する2本の針状部品で形成される断面が縦長となり、そこにターゲット材料が詰まると相隣接する2本の針状部品とその間に詰まったターゲット材料によって、それらが一体となった部品のごとく機能することになり、ターゲット材料の表面形状が荒らされることになる。
【0027】
以上の見解から、針状部品13の間隔は針状部品13のターゲット材料への入り込みの距離の2〜3倍程度が好ましく、具体的には、針状部品13のターゲット材料の入り込み2mmに対して2〜6mmが好ましい。本実施の形態の場合、図3に示すように、針状部品の間隔を5mmにしたもので、これらの配置位置を変えたものを複数おくことにより攪拌効果を発揮する。
【0028】
また、針状部品の長さは、部品がターゲット材料の内部に約5mm入る程度とし、全長を7mmとした。これは、ターゲット表面の凝集や固化は、せいぜい1mm程度の深さで十分であるが、成膜が進むことによって、材料が消費され減少する。このため、ターゲット材料の位置は、下がって来るため、針状部品の長さもある程度の全長が必要である。ここでは、深さが5mmなので、都合ターゲットの減少が、4mmまでは対応が可能となるようにした。
【0029】
さて、このような構成によって得られた装置により、成膜処理の実験を行った。そこで、以下に、本実施の形態の成膜処理の動作手順の説明を行う。
【0030】
まず、真空槽1内を真空ポンプ(図示せず)により、10-5Pa程度まで排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入し、0.2Pa程度の圧力に調整した。なお、ターゲット材容器の回転速度は2r.p.hとした。
【0031】
また、基板4は真空槽1に隣接した基板搬送室20から投入される。基板4投入後、シャッター5を閉じた状態で、電極6に13.56MHzの高周波電力を印加し、真空槽1内にプラズマを発生させる。このとき、電極6に印加した電力は3kWである。供給したターゲット材の粉体材料は、平均粒径が500μm、かさ密度が0.5のものを使用し、攪拌機構12を使用した場合と、従来例における使用しない場合において、30分ごとに基板を投入し、膜厚の径時的な変化について評価を行った。
【0032】
その結果を図4に示す。同図に示すように、本実施の形態において、ターゲット材料2に攪拌機構12を設けた場合、ターゲット材料が凝集して、固化することが防ぐことができるため、ターゲットのスパッタ率が変化せず、安定した成膜レートを維持できる。
【0033】
一方、従来例においては、スパッタ放電に曝されるターゲット材料は凝集が進み、固化が進行する。その結果、成膜レートが低下するために、得られる二酸化ケイ素の膜厚が小さくなる。すなわち、安定なプロセス状態が得られない。本実施の形態の同じ条件にてプロセスを実施した場合のターゲット表面の粉体材料について、そのかさ密度を評価した。結果を図5に示す。
【0034】
同図に示すように、攪拌機構12が無い場合、スパッタの連続放電の進行と共に、ターゲット表面の粉体のかさ密度は増加し、凝集が進んでいることが示される。一方、攪拌機構12が配置されている場合には、かさ密度に変化はない。これは、スパッタの放電によって、ターゲット表面は一度は凝集するものの、直ぐに攪拌機構12によって、凝集状態を解くように機能する。また、攪拌機構12によって、放電に曝されないていない内部の粉体を表面に出すようにするため、結果的に凝集した粉体は、固化する状態にまで到達することはない。従って、攪拌機構12によって、かさ密度を小さくならしめることにより、安定したプロセスが得られるのである。
【0035】
(実施の形態2)
次にターゲット材料2の平均粒径、及び、かさ密度の条件を変化させた場合の実施結果について述べる。使用した装置は、図1〜図3に示される装置と同様であり、説明に付す番号も同じものを使用する。
【0036】
ターゲット材料2の粉体平均粒径を5.0μmとし、これらのかさ密度は0.4であった。これらの材料を用いて、攪拌機構12の有無の条件で、連続放電による成膜実験を行い、膜厚の安定性について評価を行った。その結果を図6に示す。
【0037】
同図に示すように、本実施の形態において、ターゲット材料2に攪拌機構を設けた場合、ターゲット材料が凝集して固化することが防ぐことができるため、ターゲットのスパッタ率が変化せず、安定した成膜レートを維持できる。また、本実施の形態の場合、実施の形態1の場合と比較して膜厚が低くなる。
【0038】
これは、粉体の平均粒径が大きくなると、その分スパッタ率が小さくなって、成膜レートが減少する。一方、従来例においては、スパッタ放電に曝されるターゲット材料は径時的に凝集が進み、固化が進行する。その結果、成膜レートが低下するために、得られる二酸化ケイ素の膜厚が小さくなる。すなわち、安定なプロセス状態が得られない。この場合も同様に、同じ条件のプロセスにて、ターゲット表面の粉末材料のかさ密度を評価した。
【0039】
結果を図7に示す。実施の形態1と比較して、平均粒径が大きいとかさ密度は大きい。これは、粒子1つ1つは、密度の高い物質であるため、この粒子を大きさが大きいとかさ密度も大きくなる。これらの粉体も、プラズマの放電によって、粉体の凝集が進み、かさ密度が大きくなる。一方、攪拌機構12が配置されている場合には、かさ密度に変化はない。これは、実施の形態1と同様にスパッタの放電によって、ターゲット表面は一度は凝集するが、直ぐに攪拌機構12によって凝集状態を解くように機能する。
【0040】
また、攪拌機構12によって、放電に曝されていない内部の粉体を表面に出すようにするため、結果的に凝集した粉体は、固化する状態にまで到達することはない。従って、攪拌機構12によって、かさ密度を小さくならしめることにより、安定したプロセスが得られるのである。
【0041】
(実施の形態3)
次に、ターゲット材料2の粉体の平均粒径を50nmとし、かさ密度を0.2とした場合の攪拌機構12有無の条件によって、連続放電による成膜実験を行った。結果を図8に示す。
【0042】
ターゲット攪拌機構12を設けた場合、ターゲット材料が凝集して、固化することが防ぐことができるため、ターゲットのスパッタ率が変化せず、安定した成膜レートを維持できる。本実施の形態の場合、実施の形態1の場合と比較して膜厚が大きくなる。これは、粉体の平均粒径が小さくなると、その分スパッタ率が大きくなって、成膜レートが増大するためである。一方、従来例においては、スパッタ放電に曝されるターゲット材料は径時的に凝集が進み固化が進行する。その結果、成膜レートが低下するために、得られる二酸化ケイ素の膜厚が小さくなる。すなわち、安定なプロセス状態が得られない。粉体の平均粒径が小さい場合、凝集も進みやすい傾向があるため、従来例における膜厚の径時的な変動の割合も大きくなる傾向にある。従って、本発明の効果は、粉体の平均粒径が小さいほど効果は大きい。
【0043】
同様に、この場合も同様に、同じ条件のプロセスにて、ターゲット表面の粉末材料のかさ密度を評価した。
【0044】
結果を図9に示す。実施の形態1と比較して、平均粒径が大きいとかさ密度は大きい。これは、粒子1つ1つは、密度の高い物質であるため、この粒子を大きさが大きいとかさ密度も大きくなる。これらの粉体も、プラズマの放電によって、粉体の凝集が進み、かさ密度が大きくなる。一方、攪拌機構12が配置されている場合には、かさ密度に変化はない。
【0045】
同様の検討を、更に平均粒径の異なる材料について検討を行った。
【0046】
その結果、粉体の適当な平均粒径の範囲として、上記実施の形態を含む50nm〜10μmが適することが判明した。これは、粉体の平均粒径が50nmより小さくなると、真空槽内における粉体の挙動が、攪拌する機構等の各部に付着し、かさ密度を一定にならしめる本来の機能が発揮できない。一方、粉体の平均粒径が10μmでは、ターゲット材料自体のスパッタ率は小さく、粉体材料を使用する実用性は小さくなる。
【0047】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について述べる。
【0048】
図10に本実施の形態で用いた装置の概略を示す。同図において、実施の形態1と同様の機能を果たすものについて、同じ番号を付した。
【0049】
図10において、ターゲット配置、基板、ガス導入系およびプラズマ放電を発生させるカソード構成は図1と同様である。但し、新たにターゲット材料である粉末材料の供給部21をアースシールド板の開口領域とは隔てた部分に設けた。材料の供給機構部21は容器3に敷き詰められたターゲット材料2の表面上に一定量の割合で供給される機構である。以下に、本装置を用いた実施の形態の状況について述べる。
【0050】
真空槽1内を真空ポンプ(図示せず)により、10-5Pa程度まで排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入し、0.2Paの圧力に調整した。ターゲット材容器の回転速度は2r.p.hとした。
【0051】
基板4は真空槽1に隣接した基板搬送室20から投入される。基板4投入後、シャッター5を閉じた状態で、電極6に13.56MHzの高周波電力を印加し、真空槽1内にプラズマを発生させる。このとき、電極6に印加した電力は3kWである。
【0052】
容器に収められたターゲット材の粉体材料2は、平均粒径が0.5μm、かさ密度が0.5のもので、実施の形態1の場合と同じである。放電開始直後より、材料供給機構を動作させ、1g/4minの割合で、材料を供給した。材料供給機構21を使用した場合と、従来例における使用しない場合において、30分ごとに基板を投入し、膜厚の径時的な変化について評価を行った。
【0053】
その結果を図11に示す。同図に示すように、本実施の形態において、ターゲット材料2の供給機構を動作させ、材料を供給した場合、ターゲット材料2が放電によって凝集しても、その表面には新たに初期のかさ密度を有する材料が供給されるため、その表面状態を安定する。この結果、ターゲット表面のスパッタ率が変化せず、安定した成膜レートを維持できる。
【0054】
一方、従来例においては、スパッタ放電に曝されるターゲット材料は凝集が進み、固化が進行する。その結果、成膜レートが低下するために、得られる二酸化ケイ素の膜厚が小さくなる。すなわち、安定なプロセス状態が得られない。本発明においても、放電の直前に常に一定のかさ密度をもつ材料を供給することにより、安定的なプロセスを得られるのである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の成膜装置および成膜方法は、長期間にわたって安定的な成膜レートを得ることができる効果を有し、薄膜デバイス形成や表面処理分野の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1に係る成膜装置の概略図
【図2】(1)本発明の実施の形態1に係る成膜装置のうちカソードの上面図(2)本発明の実施の形態1に係る成膜装置のうちカソードの側面図
【図3】(1)本発明の実施の形態1に係る成膜装置のうちターゲット材料の表面を攪拌する構成部品の上面図(2)本発明の実施の形態1に係る成膜装置のうちターゲット材料の表面を攪拌する構成部品の側面図
【図4】第1の実施の形態において、実施した成膜の膜厚の径時的な傾向を示す図
【図5】本発明の実施の形態1におけるターゲット材料のかさ密度の径時的な状態を示す図
【図6】本発明の実施の形態2における成膜の膜厚の径時的な状態を示す図
【図7】本発明の実施の形態2におけるターゲット材料のかさ密度の径時的な状態を示す図
【図8】本発明の実施の形態3における成膜の膜厚の径時的な状態を示す図
【図9】本発明の実施の形態3におけるターゲット材料のかさ密度の径時的な状態を示す図
【図10】本発明の実施の形態4における成膜装置の概略図
【図11】本発明の実施の形態4における成膜の膜厚の径時的な状態を示す図
【符号の説明】
【0057】
1 真空槽
2 ターゲット材料
3 容器
4 基板
5 シャッター
6 電極
7 整合回路
8 高周波電源
9 アルゴンガス
10 アースシールド板
11 マグネトロン磁石
12 攪拌機構
13 針状部品
14 材料攪拌板
20 基板搬送室
21 材料供給機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状の材料のターゲット材を用いて基板上に薄膜を形成するための成膜装置および成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デバイスの高性能化や微細化が進み、その要素技術の1つである薄膜形成プロセスはその応用範囲が広がっている。しかし、多くの薄膜形成プロセスは真空技術などの高度な装置システムを必要とすることなどから、しばしばコスト面が問題視され、如何に生産性を高めて効率の良いモノづくりができるかが課題になっている。
【0003】
特に、これまでバルク材の加工によって使用されてきた誘電体や絶縁物も薄膜化の傾向が進み、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化マグネシウム(MgO)などの金属酸化物、或いは、チッ化珪素(SiN)など窒化物も薄膜が用いられてきている。しかし、依然として生産性における問題点を残しているのが現状である。これは、ターゲット材に焼結体が用いられるため、スパッタ率が小さく、成膜速度を十分に高めることができないというのが主な理由である。
【0004】
ところが、近年、ターゲット材にこれまで用いられてきた固形ではなく、顆粒状のものを用いることが報告されており、例えば、特許文献1に記載された発明などがある。特許文献1によれば、真空槽内に保持する材料の形態を工夫することによって、材料寿命を延ばし、稼働率を向上して、生産性を向上するという内容である。特に、固形のターゲットでは、逐一、真空槽内を大気開放し、稼働率を低下させていた問題が改善されるというものである。
【特許文献1】特開平10−18029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明では、粉体状の材料を用いてスパッタ成膜しようとすると、以下のような課題が発生することになる。
【0006】
すなわち、粉体状の材料は、各々の粒子間には働く力によって、凝集しやすいという性質を有しており、ターゲット材として集められたこれらの粒子は、すでに凝集傾向にある。ここに、プラズマ等の放電が直面することになると、発生する熱などの影響によって、その凝集が一層進むこととなり、ターゲット材の密度が高まった状態ができるのである。
【0007】
具体的には、プラズマ中からのイオンがターゲット材である粉体粒子に衝突すると、これによる熱が発生し、ターゲットの表面温度が上昇する。バルク材とは異なり、粉体の場合には粒子と粒子の間に空隙があるため、その熱伝導性は極めて乏しい。従って、ターゲット材の表面付近にある粉体粒子は急激に加熱され、粉体粒子同士の凝集の加速を招くのである。温度上昇による粉体同士の凝集は、放置しておくと溶着にまで進み、もはや、粉体をなさなくなる。
【0008】
前述のように、粉体のターゲット材の熱伝導性は乏しく、ターゲット温度の上昇と粉体凝集は表面付近で進むため、内部の粉体状態はそれに比べて大きな変化はない。すなわち、ターゲット材表面だけ凝集が進み、密度は高くなり、溶着・固化していくのである。この結果、この状態では粉体の特徴である高い成膜レートは得られないという問題を生じることになる。
【0009】
このように、粉体状のターゲット材を使用するに当たっては、表面が粉体の凝集が進んでいない初期状態では、粉体のかさ密度が小さく、スパッタによる成膜速度は早いが、プラズマによる放電に晒されターゲット材表面の温度が上昇して、粉体の凝集が進むと、ターゲット材表面のスパッタ率が下がり、成膜速度が低下する。すなわち、同じターゲット材の表面の放電を連続的に行うと、粉体の凝集度合いが経時的に変化をして、成膜速度も経時的に低下し、安定したプロセスが実現できないという課題を有しているのである。
【0010】
従って、スパッタ放電に曝されたターゲット材料表面は、すぐに凝集してしまうため、同じターゲット面を使って多量の成膜処理はできないと同時に別に準備された材料も同様の理由で使用できなくなる。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、長時間の連続稼動によっても、基板に対して安定した膜厚でかつ高い成膜レートを得ることが可能な成膜装置および成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の成膜装置は、真空を維持することが可能な真空槽と、真空槽内にあり基板を載置する基板保持台と、基板保持台と対向して設置され、粉状のターゲット材料を保持する容器を載置し、かつ、基板保持台に対向する面の中心軸を中心に回転するカソードと、カソードに電圧を印加する電源と、真空槽内にガスを供給しつつ排気するガス供排気手段からなる成膜装置において、基板保持台とカソードとの間には開口部を有してアースシールドが配置され、アースシールドのカソード側の表面の一部には、粉状のターゲット材料を攪拌する攪拌手段が設けられたことで解決できる。
【0013】
このとき、攪拌手段にターゲット材と同種類の粉末材料を供給しながら基板を処理すること好適である。
【0014】
また、粉状のターゲット材の平均粒径は50nm以上10μm未満であるとなお良い。
【0015】
更に、本発明の成膜方法は、真空槽内にガスを供給しつつ排気し、真空槽内を所定の圧力に制御しながらプラズマを発生させ、粉状のターゲット材料を保持する容器を載置するカソードに電圧を印加させながら、カソードを基板保持台に対向する面の中心軸を中心に回転させ、カソードに対向する基板保持台に載置された基板を処理する成膜方法であって、粉状のターゲット材料は基板保持台とカソードとの間に配設された開口部を有するアースシールドを介してプラズマに曝される第1領域と曝されない第2領域を有し、第2領域にて粉状のターゲット材料を攪拌させることで前記第1領域と前記第2領域でのターゲット材料のかさ密度を実質的に同一にしながら、基板の成膜を行うことで解決できる。
【0016】
このとき、攪拌手段にターゲット材と同種類の粉末材料を供給しながら基板を処理すること好適である。
【0017】
また、粉状のターゲット材の平均粒径は50nm以上10μm未満であるとなお良い。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によると、長期間にわたって均一な膜厚で安定的な成膜レートを確保することができるため、生産性が高い成膜装置および成膜方法が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1に本発明の実施の形態1について示す。
【0021】
真空槽1に、粉末ターゲット材料2を入れた容器3を配置すると共にその直上に基板4を配置し、基板4とターゲットの間には、シャッター5が配置される。ターゲット材2には二酸化ケイ素(SiO2)粉末を用い、容器3は石英(SiO)製とした。容器3は回転機能を有する銅製の電極6上に配置し、電極6には整合回路7を介して、高周波電源8が接続されると同時に、内部には、冷却水が循環するよう水路を切って、プラズマによる熱の発生に対して冷却するようになっている。
【0022】
図2はターゲット材2、容器3と電極6などを含むカソードの詳細図を示し、図2(1)はカソードの上面図であり、図2(2)は側面図である。
【0023】
同図において、容器3の深さは10mm、直径を400mmとし、ここに粉末状のターゲット材を敷き詰めた。容器3は同等以上の面積を有する電極6の上に配置されている。また、ターゲット材2の上部に、ターゲット材の一部を残して、全体を覆うアースシールドカバー10が設置され、アースに接地されている。ターゲット材表面とこの覆った金属板の間の空隙の間隔は2mmとした。
【0024】
この空隙が大きくなると、プラズマの放電が回りこみ、ターゲットのプラズマからの隔離が難しくなる。また、ターゲット面が露出された領域の電極6裏面には、複数の永久磁石からなるマグネトロン磁石11を配置してあり、露出したターゲット面上に磁石と閉じた磁気回路を形成するように配置をした。ターゲットの露出面は、アースシールド板の開口形状によって形成されるが、直径160mmの円形状とした。これは、プラズマの放電を安定させるためである。アースシールドカバーの裏面の一部に、ターゲット材料の表面を機械的接触により、凝集した粉末を攪拌させる機構12を設ける。
【0025】
図3は凝集した粉末を分離するための機構部品(攪拌手段)の詳細を示している。
【0026】
同図において、部品は長さ7mm、直径約0.5mmの針状部品13を複数配置した櫛状の構成部品14である。また、構成部品14は、針状部品の配置位置を変えたものが複数ありこれを直列に並べて構成されている。針状部品の各々の配置間隔は、5mmとした。これらの配置間隔は、間隔が広すぎると攪拌効果が得られないが、小さくしすぎると、針状部品と針状部品の間に粉体が詰まることになり、やはり攪拌効果が発揮できない。具体的には、針状部品13のうち、ターゲット材料に入り込んでいる長さ、すなわち、本実施の形態の場合には2mmでこれ以上針状部品13の間隔が狭まると、相隣接する2本の針状部品で形成される断面が縦長となり、そこにターゲット材料が詰まると相隣接する2本の針状部品とその間に詰まったターゲット材料によって、それらが一体となった部品のごとく機能することになり、ターゲット材料の表面形状が荒らされることになる。
【0027】
以上の見解から、針状部品13の間隔は針状部品13のターゲット材料への入り込みの距離の2〜3倍程度が好ましく、具体的には、針状部品13のターゲット材料の入り込み2mmに対して2〜6mmが好ましい。本実施の形態の場合、図3に示すように、針状部品の間隔を5mmにしたもので、これらの配置位置を変えたものを複数おくことにより攪拌効果を発揮する。
【0028】
また、針状部品の長さは、部品がターゲット材料の内部に約5mm入る程度とし、全長を7mmとした。これは、ターゲット表面の凝集や固化は、せいぜい1mm程度の深さで十分であるが、成膜が進むことによって、材料が消費され減少する。このため、ターゲット材料の位置は、下がって来るため、針状部品の長さもある程度の全長が必要である。ここでは、深さが5mmなので、都合ターゲットの減少が、4mmまでは対応が可能となるようにした。
【0029】
さて、このような構成によって得られた装置により、成膜処理の実験を行った。そこで、以下に、本実施の形態の成膜処理の動作手順の説明を行う。
【0030】
まず、真空槽1内を真空ポンプ(図示せず)により、10-5Pa程度まで排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入し、0.2Pa程度の圧力に調整した。なお、ターゲット材容器の回転速度は2r.p.hとした。
【0031】
また、基板4は真空槽1に隣接した基板搬送室20から投入される。基板4投入後、シャッター5を閉じた状態で、電極6に13.56MHzの高周波電力を印加し、真空槽1内にプラズマを発生させる。このとき、電極6に印加した電力は3kWである。供給したターゲット材の粉体材料は、平均粒径が500μm、かさ密度が0.5のものを使用し、攪拌機構12を使用した場合と、従来例における使用しない場合において、30分ごとに基板を投入し、膜厚の径時的な変化について評価を行った。
【0032】
その結果を図4に示す。同図に示すように、本実施の形態において、ターゲット材料2に攪拌機構12を設けた場合、ターゲット材料が凝集して、固化することが防ぐことができるため、ターゲットのスパッタ率が変化せず、安定した成膜レートを維持できる。
【0033】
一方、従来例においては、スパッタ放電に曝されるターゲット材料は凝集が進み、固化が進行する。その結果、成膜レートが低下するために、得られる二酸化ケイ素の膜厚が小さくなる。すなわち、安定なプロセス状態が得られない。本実施の形態の同じ条件にてプロセスを実施した場合のターゲット表面の粉体材料について、そのかさ密度を評価した。結果を図5に示す。
【0034】
同図に示すように、攪拌機構12が無い場合、スパッタの連続放電の進行と共に、ターゲット表面の粉体のかさ密度は増加し、凝集が進んでいることが示される。一方、攪拌機構12が配置されている場合には、かさ密度に変化はない。これは、スパッタの放電によって、ターゲット表面は一度は凝集するものの、直ぐに攪拌機構12によって、凝集状態を解くように機能する。また、攪拌機構12によって、放電に曝されないていない内部の粉体を表面に出すようにするため、結果的に凝集した粉体は、固化する状態にまで到達することはない。従って、攪拌機構12によって、かさ密度を小さくならしめることにより、安定したプロセスが得られるのである。
【0035】
(実施の形態2)
次にターゲット材料2の平均粒径、及び、かさ密度の条件を変化させた場合の実施結果について述べる。使用した装置は、図1〜図3に示される装置と同様であり、説明に付す番号も同じものを使用する。
【0036】
ターゲット材料2の粉体平均粒径を5.0μmとし、これらのかさ密度は0.4であった。これらの材料を用いて、攪拌機構12の有無の条件で、連続放電による成膜実験を行い、膜厚の安定性について評価を行った。その結果を図6に示す。
【0037】
同図に示すように、本実施の形態において、ターゲット材料2に攪拌機構を設けた場合、ターゲット材料が凝集して固化することが防ぐことができるため、ターゲットのスパッタ率が変化せず、安定した成膜レートを維持できる。また、本実施の形態の場合、実施の形態1の場合と比較して膜厚が低くなる。
【0038】
これは、粉体の平均粒径が大きくなると、その分スパッタ率が小さくなって、成膜レートが減少する。一方、従来例においては、スパッタ放電に曝されるターゲット材料は径時的に凝集が進み、固化が進行する。その結果、成膜レートが低下するために、得られる二酸化ケイ素の膜厚が小さくなる。すなわち、安定なプロセス状態が得られない。この場合も同様に、同じ条件のプロセスにて、ターゲット表面の粉末材料のかさ密度を評価した。
【0039】
結果を図7に示す。実施の形態1と比較して、平均粒径が大きいとかさ密度は大きい。これは、粒子1つ1つは、密度の高い物質であるため、この粒子を大きさが大きいとかさ密度も大きくなる。これらの粉体も、プラズマの放電によって、粉体の凝集が進み、かさ密度が大きくなる。一方、攪拌機構12が配置されている場合には、かさ密度に変化はない。これは、実施の形態1と同様にスパッタの放電によって、ターゲット表面は一度は凝集するが、直ぐに攪拌機構12によって凝集状態を解くように機能する。
【0040】
また、攪拌機構12によって、放電に曝されていない内部の粉体を表面に出すようにするため、結果的に凝集した粉体は、固化する状態にまで到達することはない。従って、攪拌機構12によって、かさ密度を小さくならしめることにより、安定したプロセスが得られるのである。
【0041】
(実施の形態3)
次に、ターゲット材料2の粉体の平均粒径を50nmとし、かさ密度を0.2とした場合の攪拌機構12有無の条件によって、連続放電による成膜実験を行った。結果を図8に示す。
【0042】
ターゲット攪拌機構12を設けた場合、ターゲット材料が凝集して、固化することが防ぐことができるため、ターゲットのスパッタ率が変化せず、安定した成膜レートを維持できる。本実施の形態の場合、実施の形態1の場合と比較して膜厚が大きくなる。これは、粉体の平均粒径が小さくなると、その分スパッタ率が大きくなって、成膜レートが増大するためである。一方、従来例においては、スパッタ放電に曝されるターゲット材料は径時的に凝集が進み固化が進行する。その結果、成膜レートが低下するために、得られる二酸化ケイ素の膜厚が小さくなる。すなわち、安定なプロセス状態が得られない。粉体の平均粒径が小さい場合、凝集も進みやすい傾向があるため、従来例における膜厚の径時的な変動の割合も大きくなる傾向にある。従って、本発明の効果は、粉体の平均粒径が小さいほど効果は大きい。
【0043】
同様に、この場合も同様に、同じ条件のプロセスにて、ターゲット表面の粉末材料のかさ密度を評価した。
【0044】
結果を図9に示す。実施の形態1と比較して、平均粒径が大きいとかさ密度は大きい。これは、粒子1つ1つは、密度の高い物質であるため、この粒子を大きさが大きいとかさ密度も大きくなる。これらの粉体も、プラズマの放電によって、粉体の凝集が進み、かさ密度が大きくなる。一方、攪拌機構12が配置されている場合には、かさ密度に変化はない。
【0045】
同様の検討を、更に平均粒径の異なる材料について検討を行った。
【0046】
その結果、粉体の適当な平均粒径の範囲として、上記実施の形態を含む50nm〜10μmが適することが判明した。これは、粉体の平均粒径が50nmより小さくなると、真空槽内における粉体の挙動が、攪拌する機構等の各部に付着し、かさ密度を一定にならしめる本来の機能が発揮できない。一方、粉体の平均粒径が10μmでは、ターゲット材料自体のスパッタ率は小さく、粉体材料を使用する実用性は小さくなる。
【0047】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について述べる。
【0048】
図10に本実施の形態で用いた装置の概略を示す。同図において、実施の形態1と同様の機能を果たすものについて、同じ番号を付した。
【0049】
図10において、ターゲット配置、基板、ガス導入系およびプラズマ放電を発生させるカソード構成は図1と同様である。但し、新たにターゲット材料である粉末材料の供給部21をアースシールド板の開口領域とは隔てた部分に設けた。材料の供給機構部21は容器3に敷き詰められたターゲット材料2の表面上に一定量の割合で供給される機構である。以下に、本装置を用いた実施の形態の状況について述べる。
【0050】
真空槽1内を真空ポンプ(図示せず)により、10-5Pa程度まで排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入し、0.2Paの圧力に調整した。ターゲット材容器の回転速度は2r.p.hとした。
【0051】
基板4は真空槽1に隣接した基板搬送室20から投入される。基板4投入後、シャッター5を閉じた状態で、電極6に13.56MHzの高周波電力を印加し、真空槽1内にプラズマを発生させる。このとき、電極6に印加した電力は3kWである。
【0052】
容器に収められたターゲット材の粉体材料2は、平均粒径が0.5μm、かさ密度が0.5のもので、実施の形態1の場合と同じである。放電開始直後より、材料供給機構を動作させ、1g/4minの割合で、材料を供給した。材料供給機構21を使用した場合と、従来例における使用しない場合において、30分ごとに基板を投入し、膜厚の径時的な変化について評価を行った。
【0053】
その結果を図11に示す。同図に示すように、本実施の形態において、ターゲット材料2の供給機構を動作させ、材料を供給した場合、ターゲット材料2が放電によって凝集しても、その表面には新たに初期のかさ密度を有する材料が供給されるため、その表面状態を安定する。この結果、ターゲット表面のスパッタ率が変化せず、安定した成膜レートを維持できる。
【0054】
一方、従来例においては、スパッタ放電に曝されるターゲット材料は凝集が進み、固化が進行する。その結果、成膜レートが低下するために、得られる二酸化ケイ素の膜厚が小さくなる。すなわち、安定なプロセス状態が得られない。本発明においても、放電の直前に常に一定のかさ密度をもつ材料を供給することにより、安定的なプロセスを得られるのである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の成膜装置および成膜方法は、長期間にわたって安定的な成膜レートを得ることができる効果を有し、薄膜デバイス形成や表面処理分野の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1に係る成膜装置の概略図
【図2】(1)本発明の実施の形態1に係る成膜装置のうちカソードの上面図(2)本発明の実施の形態1に係る成膜装置のうちカソードの側面図
【図3】(1)本発明の実施の形態1に係る成膜装置のうちターゲット材料の表面を攪拌する構成部品の上面図(2)本発明の実施の形態1に係る成膜装置のうちターゲット材料の表面を攪拌する構成部品の側面図
【図4】第1の実施の形態において、実施した成膜の膜厚の径時的な傾向を示す図
【図5】本発明の実施の形態1におけるターゲット材料のかさ密度の径時的な状態を示す図
【図6】本発明の実施の形態2における成膜の膜厚の径時的な状態を示す図
【図7】本発明の実施の形態2におけるターゲット材料のかさ密度の径時的な状態を示す図
【図8】本発明の実施の形態3における成膜の膜厚の径時的な状態を示す図
【図9】本発明の実施の形態3におけるターゲット材料のかさ密度の径時的な状態を示す図
【図10】本発明の実施の形態4における成膜装置の概略図
【図11】本発明の実施の形態4における成膜の膜厚の径時的な状態を示す図
【符号の説明】
【0057】
1 真空槽
2 ターゲット材料
3 容器
4 基板
5 シャッター
6 電極
7 整合回路
8 高周波電源
9 アルゴンガス
10 アースシールド板
11 マグネトロン磁石
12 攪拌機構
13 針状部品
14 材料攪拌板
20 基板搬送室
21 材料供給機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空を維持することが可能な真空槽と、真空槽内にあり基板を載置する基板保持台と、基板保持台と対向して設置され、粉状のターゲット材料を保持する容器を載置し、かつ、基板保持台に対向する面の中心軸を中心に回転するカソードと、カソードに電圧を印加する電源と、真空槽内にガスを供給しつつ排気するガス供排気手段からなる成膜装置において、基板保持台とカソードとの間には開口部を有してアースシールドが配置され、アースシールドのカソード側の表面の一部には、粉状のターゲット材料を攪拌する攪拌手段が設けられたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記攪拌手段にターゲット材と同種類の粉末材料を供給しながら基板を処理することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
粉状のターゲット材の平均粒径は50nm以上10μm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
真空槽内にガスを供給しつつ排気し、真空槽内を所定の圧力に制御しながらプラズマを発生させ、粉状のターゲット材料を保持する容器を載置するカソードに電圧を印加させながら、カソードを基板保持台に対向する面の中心軸を中心に回転させ、カソードに対向する基板保持台に載置された基板を処理する成膜方法であって、粉状のターゲット材料は基板保持台とカソードとの間に配設された開口部を有するアースシールドを介してプラズマに曝される第1領域と曝されない第2領域を有し、第2領域にて粉状のターゲット材料を攪拌させることで前記第1領域と前記第2領域でのターゲット材料のかさ密度を実質的に同一にしながら、基板の成膜を行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
ターゲット材と同種類の粉末材料を供給しながら基板を処理することを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
粉状のターゲット材の平均粒径は50nm以上10μm未満であることを特徴とする請求項4または5に記載の成膜方法。
【請求項1】
真空を維持することが可能な真空槽と、真空槽内にあり基板を載置する基板保持台と、基板保持台と対向して設置され、粉状のターゲット材料を保持する容器を載置し、かつ、基板保持台に対向する面の中心軸を中心に回転するカソードと、カソードに電圧を印加する電源と、真空槽内にガスを供給しつつ排気するガス供排気手段からなる成膜装置において、基板保持台とカソードとの間には開口部を有してアースシールドが配置され、アースシールドのカソード側の表面の一部には、粉状のターゲット材料を攪拌する攪拌手段が設けられたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記攪拌手段にターゲット材と同種類の粉末材料を供給しながら基板を処理することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
粉状のターゲット材の平均粒径は50nm以上10μm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
真空槽内にガスを供給しつつ排気し、真空槽内を所定の圧力に制御しながらプラズマを発生させ、粉状のターゲット材料を保持する容器を載置するカソードに電圧を印加させながら、カソードを基板保持台に対向する面の中心軸を中心に回転させ、カソードに対向する基板保持台に載置された基板を処理する成膜方法であって、粉状のターゲット材料は基板保持台とカソードとの間に配設された開口部を有するアースシールドを介してプラズマに曝される第1領域と曝されない第2領域を有し、第2領域にて粉状のターゲット材料を攪拌させることで前記第1領域と前記第2領域でのターゲット材料のかさ密度を実質的に同一にしながら、基板の成膜を行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
ターゲット材と同種類の粉末材料を供給しながら基板を処理することを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
粉状のターゲット材の平均粒径は50nm以上10μm未満であることを特徴とする請求項4または5に記載の成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−299370(P2006−299370A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126033(P2005−126033)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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