説明

成膜装置および該成膜装置を用いた成膜方法

【課題】 ノズルから噴射される微粒子の量を調整し、安定で均一性の高い成膜を得る。
【解決手段】 成膜材料の粒子を含むエアロゾルを形成するエアロゾル形成手段と、該エアロゾル形成手段により形成されたエアロゾルを噴射するノズルと、を有する成膜装置において、前記エアロゾル形成手段が、成膜材料の粒子の量を検出する検出手段と、形成するエアロゾルに含まれる、成膜材料の粒子の量を、前記検出手段の検出結果に基づいて、制御する手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスや金属などの成膜材料の粒子を含むエアロゾルをノズルから被処理部材である基体に向けて高速で吹き付けることによって、セラミックスや金属を含む膜を基体上に成膜する成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスや金属からなる構造物や膜を成膜する装置および製造方法においては、セラミックスや金属などの成膜材料の粒子を含むエアロゾルをノズルから基板に向けて吹き付け、セラミックスや金属を含む膜を基板上に堆積させることによって行う方法、装置が提案されている。このような成膜装置においては、成膜する材料の粒子を含むエアロゾルの供給量を経時的に安定化して成膜を行うことが大きな課題となっている。尚、上記セラミックスの一例としては、圧電セラミックスが挙げられる。圧電セラミックスとしては、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(以下「PZT」と略す)や、ビスマス酸チタン酸ナトリウム(以下「BNT」と略す)が挙げられる。
【0003】
この課題に対し、特許文献1にあるように、エアロゾル中の成膜材料の粒子の量をセンサにより感知し、感知したセンサの信号を利用してセラミックス構造物の堆積高さを調整する方法などがある。この方法の場合、ノズルから噴射された微粒子の量を計測し、該計測データをエアロゾル発生源へフィードバックしてエアロゾル発生量を調整する機構になっている。
【0004】
図1には上記の方法によるセラミックス構造物作製装置の該略が示されている。従来、紛体を充填したエアロゾル化用ユニット29に対し、何らかの形で搬送ガスをガスボンベ11から導入し、該搬送ガスによってエアロゾル化した微粒子を搬送管4を通して成膜室へ搬送し、ノズル5から噴射することによってセラミックス構造物を作製する。この際、搬送微粒子の粒径を一様に揃えるため、分散器30を介して分級器31を搬送経路中に組み込むこともある。
【0005】
さらに特許文献1においては、エアロゾルの発生量を安定化するためにエアロゾル中の微粒子の量をセンサ32により感知し、フィードバック制御回路9、配線10を通してエアロゾル発生ユニット29の駆動部または搬送ガス供給ボンベ11へ補正データを送信し、該補正データを用いてエアロゾル供給量を調整する。このとき、エアロゾル供給量の調整手段として、ガス流量の調整、ガス流速の調整、ガス温度の調整、またはエアロゾル化ユニットの駆動調整などが挙げられる。
【特許文献1】特開2001−348659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ノズルから噴射された後にエアロゾル中の微粒子量を評価し、然る後にエアロゾル発生源でのエアロゾル発生量制御を行っても、すでに搬送途中のエアロゾル中の微粒子の量には反映されず、微粒子量を調整することができない。すなわち調整機構の反応速度が遅く、結果的に微粒子の噴射量を高精度に制御することができない。また、粒径の小さい粒子(一次粒子)を用いて成膜を行おうとしても、このような一次粒子は凝集を起こしやすい。そのため、複数の一次粒子が凝集して形成された粒子(二次粒子)が混ざったエアロゾルを用いて成膜を行うと、粒子の供給量を制御することができたとしても、安定で均一性の高い成膜が困難であった。さらには、エアロゾル中における粒子の分散性が低下すると、形成される膜の形状においては厚みにムラが生じるなどして、均一性の高い成膜が困難となる。本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、微粒子の供給レートを高精度に制御することを目的とし、更には、微粒子の分級および分散を行うことで、均一性が高く安定な成膜を実現することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた、第1の発明は、成膜材料の粒子を含むエアロゾルを形成するエアロゾル形成手段と、該エアロゾル形成手段により形成されたエアロゾルを噴射するノズルと、を有する成膜装置において、前記エアロゾル形成手段は、成膜材料の粒子を供給する供給手段と、成膜材料の粒子の量を検出する検出手段と、該検出手段の検出結果に基づいて、形成するエアロゾルに含まれる成膜材料の粒子の量を制御する制御手段と、を有しており、前記供給手段は、成膜材料の粒子を収容する容器を備えており、前記検出手段は、成膜材料の粒子を収容した状態における前記容器の重量を測定することによって、前記形成するエアロゾルに含まれる成膜材料の粒子の量を検出することを特徴とする成膜装置である。
【0008】
また、上記第1の発明の成膜装置は、「前記制御手段は、前記供給手段から供給する成膜材料の粒子の量を制御する手段である」こと、「前記容器は、前記成膜材料の粒子を通す複数の開口を備えるフィルタを具備している」こと、「前記容器は、さらに、前記フィルタに接触し移動するブラシを具備する」こと、「前記エアロゾル形成手段は、さらに、前記粒子のうち、多数の粒子が凝集して形成された粒子を複数の粒子に解砕する解砕手段を備える」こと、「前記解砕手段は、形成されたエアロゾルが流される第1の搬送管と、該第1の搬送管の先端が挿入され、該先端から放出されるエアロゾルと並んでガスが流れるようにした第2の搬送管とを備える」こと、「前記先端から放出されるエアロゾルの流速と、前記エアロゾルと並んで流れるガスの流速とが異なるように、前記エアロゾルと前記ガスとが流される」ことをもその特徴とするものである。
【0009】
上記課題を解決するためになされた、第2の発明は、成膜材料の粒子を含むエアロゾルを形成するエアロゾル形成手段と、該エアロゾル形成手段により形成されたエアロゾルを噴射するノズルと、を有する成膜装置において、前記エアロゾル形成手段は、第1の搬送管と、該第1の搬送管の先端が挿入され、該先端から放出されるエアロゾルと並んでガスが流れるようにした第2の搬送管とを備える、ことを特徴とする成膜装置である。
【0010】
そして、上記第2の発明の成膜装置は、「前記先端から放出されるエアロゾルの流速と、前記エアロゾルと並んで流れるガスの流速とが異なるように、前記エアロゾルと前記ガスとが流される」ことをもその特徴とする。
【0011】
そして、さらに、本発明の第3は、上記成膜装置を用いて、前記エアロゾルを基体に向けて噴射することで、前記成膜材料を含む膜を形成する成膜方法である。
【発明の効果】
【0012】
上記のように、成膜材料の粒子を所定の粒径以下に分級し、かつ分級された粒子の供給量を即時供給装置の駆動部にフィードバックすることで、粒子を経時的に安定に供給し、かつ供給された粒子を解砕及びまたは分散させることで、成膜に適した最適な径の微粒子を安定的に得ることができるため、成膜安定性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態について説明する。
【0014】
本発明の成膜装置の第1の例を図2に、そして第2の例を図3に概念図で示す。尚、本発明の成膜装置は図2、図3に示される例に限られず、さまざまな変形例が適用可能である。
【0015】
本発明の成膜装置は、成膜材料の粒子を含むエアロゾルを生成する(形成する)エアロゾル形成手段100(図2、3において点線で囲まれて図示されている)と、エアロゾル形成手段100によって生成された(形成された)エアロゾルを噴射するためのノズル5とを、少なくとも、有している。そして、エアロゾル形成手段100によって形成されたエアロゾルは、搬送管4を通じてノズル5に導かれる。ノズル5は、成膜室(チャンバー)6内に導入されている。成膜室6内には、被成膜部材である基体7が配置されており、この基体7に向けてノズル5からエアロゾルが噴射される。基体は、典型的には基板である。基体7はステージ8上に固定されている。ステージ8はX方向およびY方向に可動なX−Yステージとすることもできる。このようなX−Yステージを用いれば、所望パターンの膜を基体7上に形成することができる。
【0016】
エアロゾル形成手段100は、少なくとも、成膜材料の粒子をガス中に供給するための供給手段1を備えており、供給手段1はエアロゾルを形成するためのガス中へ供給する成膜材料の粒子の量(供給量)を所望量に制御することができる。
【0017】
供給手段1としては、例えば、所望の粒径範囲内の成膜材料の粒子を収容した容器を備えている。容器は、所定量の粒子を供給することのできる手段(例えばフィーダー)を備えることもできる。このような供給手段1を用いる場合は、エアロゾル形成手段100は、ガスの流れの中に、供給手段1から粒子を供給するようにすることが好ましい(図11参照。詳細は実施例4で説明する)。あるいは、また、供給手段1としては、所望の粒径範囲内の成膜材料の粒子を収容した容器と、該容器内にガスを噴射する(ガスを吹き付ける)手段を備え、容器内に収容された粒子にガスを吹き付け(好ましくは容器下部から開口を備えるフィルタを通してガスを噴射し)、成膜材料の粒子を容器内で舞い上がらせて、粒子を供給する供給手段を用いることもできる(図10参照。詳細は実施例3で説明する)。
【0018】
そして、本発明におけるエアロゾル形成手段100は、好ましくは、ノズル5からエアロゾルが噴射される前に、供給手段1から供給される成膜材料の粒子の量を検出する検出手段2を備える。この検出手段2により、供給手段1から供給される成膜材料の粒子の量を検出(計測)することができる。
【0019】
そして、検出手段2の検出結果(検出値)を基にして、制御手段(フィードバック制御回路)9が、エアロゾル中に含まれる粒子の量が所望の値になるように、供給手段1から供給する粒子の量を所望量に制御する。
【0020】
尚、検出手段2による粒子の供給量の検出は、常に行うことが最も好ましいが、許容される範囲で、間欠的に行うこともできる。尚、図3で説明する例は、供給手段1から供給される成膜材料の粒子の量を、粒子を収容した容器ごと計測する例である。この例においては、供給手段1は、粒子を収容する容器を備えており、該容器から放出(供給)する粒子の量(粒子の供給量)を、粒子を収容した容器の重量の変化で検出(モニター)することができる。そして、この検出した値を基にして、制御手段9によって、粒子の供給量を制御する例である。また、この例においては、粒子を収容する容器内に、粒子を分級するための分級手段として、複数の開口を備えたフィルタを具備することができる。このようにすれば、供給手段1から供給される成膜材料の粒子の粒径を、予め、ある程度揃えることができる。また、さらに、上記フィルタの開口に粒子を送り込むために、フィルタに接触し移動するブラシを備えることもできる。またこのような移動可能なブラシとしては、例えば、フィルタに接触しながら回転するブラシを用いることが好ましい。このようにすれば、供給手段1から、安定に且つ高精度に成膜材料の粒子を所望量供給することができる。
【0021】
そして、本発明の成膜装置において、さらに好ましくは、エアロゾル形成手段100が、形成されたエアロゾル中に含まれる粒子(あるいは供給手段1から供給された粒子と考えることもできる)を解砕する解砕手段(ガス中における粒子の分散性を向上させる機能を更に備える場合もある)3を備える。
【0022】
供給装置100から供給された粒子には、多数の粒子が凝集することで形成された2次粒子が含まれることが多い。そのため、解砕手段3(あるいは「解砕・分散手段3」と呼ぶ場合もある)を備えることによって、多数の粒子が凝集することで形成された粒子の塊(典型的には2次粒子)を解砕し、1次粒子の数を増やすことができる。そして、さらに、搬送ガス中における粒子の分散性を向上させることもできる。
【0023】
その結果、均一性の高い成膜を実現することができる。また、凝集していない粒子が解砕手段3に供給されれば解砕はされないが、搬送ガス中における粒子の分散性を向上させることができる。この意味で、本発明の「解砕手段3」は、「解砕・分散手段3」と呼ぶこともできる。尚、凝集している粒子であっても解砕手段3によって解砕されなかった場合においても、その粒子の分散性を向上することもできる。
【0024】
そして、本発明の成膜装置においては、エアロゾルが搬送管4を通り、ノズル5の先端から、X−Yステージ8上に固定された基体7に向けて噴射される。
【0025】
供給装置100は、更に、供給する粒子を分級するための分級手段を備えることもできる。分級手段としては、実用的には、2000μm以下、好ましくは100μm以下の粒径に分級することのできるものであればよい。
【0026】
尚、粒子の粒径の下限は実用的には0.5μm以上である。また、供給手段は、実用的には、粒子が0.1g/h以上のレートであればよく、500g/h以下のレートで供給することができるものであることが好ましい。
【0027】
尚、例えば、分級手段は、粒子を収容する(貯蔵する)容器と、該容器の底部に配置される所望のメッシュ径(好ましくは0.5μmから2000μm)を備える網体(「メッシュ部材」あるいは「フィルタ」と言うこともある)と、該網体に接触しながら網体に対して相対的に移動する(回転や振動することをも含む)ことのできる部材(例えばブラシ)とで構成することができる。上記ブラシの回転によって粒子を前記網体を通し篩い分けることで所望の粒径の粒子を抽出する(所望の粒径を備える粒子を分級する)ことができる。このような分級手段は、前述したように、図3に示した供給手段1を構成する、成膜材料の粒子が収容される容器内に設けることができる。
【0028】
また、分級手段としては、エアロゾルの搬送経路(搬送管4)を非直線状に構成し、搬送経路の一部に粒子の流出口となる開口を設けることによって、粒子の粒径に依存した質量の違いを利用して、所定の粒径以上の粒子を取り除くものを用いることもできる。あるいはまた、粒子を帯電させ、搬送経路上に電場や磁場を発生させることによって、帯電させた粒子に加えられる電場や磁場による偏向力の違いを利用して所定の粒径以上の粒子を取り除くものを用いることもできる。このように、分級手段は特に限定されず、公知の分級手段を適用することができる。
【0029】
また、供給手段1および分級手段は、粒子の供給量及び粒子の粒径を所望の値(所望の範囲)に制御することができれば、特に限定されるものではない。
【0030】
尚、本発明の成膜装置においては、チャンバー6内の圧力は、排気装置(真空ポンプ)12などによって減圧状態に維持される。即ち、供給装置1側の圧力よりもチャンバー6内の圧力は低く設定される(搬送管4のチャンバー6側の圧力よりも供給装置100側の圧力の方が高く設定される)ために、供給装置100から供給された粒子が、ノズル5からステージ8上に固定された基体7の表面に向けて噴射される。その結果、エアロゾルに含まれた粒子が基体7の表面に衝突し、堆積することで、膜が基体7の表面に形成される。
【0031】
図2で示す本発明の成膜装置の第1の例においては、供給手段1に搬送ガスを供給するためのボンベ11が接続されている。
【0032】
この例においては、供給装置100は供給手段1から搬送管4に供給されたエアロゾル中に含まれる粒子の量を検出する供給量検出手段2を備えている。そして、検出手段2が検出した値を基に、適宜、供給手段1から供給される粒子の量を所望の量に制御することができる。
【0033】
一方、図3で示す本発明の成膜装置の第2の例においては、供給量検出手段2として電子天秤13を用い、粒子の供給手段1ごと(粒子を収容している容器ごと)供給する粒子の重量を計測する例である。この例においては、供給する粒子の重量を算出し、該算出したデータを基に、供給手段1からの粒子の供給量を制御することができるので好ましい。このような装置を用いることで、供給する粒子の量を高精度に制御することができる。
【0034】
尚、本発明においては、粒子の供給量を計測し、計測したデータを基に供給装置から供給される粒子の量を制御することができる機構ならば重量計測法に限定されるものではない。例えば光学的に粒子の供給量を計測するものも供給量検出手段として好ましく採用することができる。しかしながら、より精度高く計測するためには、図3で示した形態の供給量検出手段2を採用することが好ましい。
【0035】
供給手段1は、解砕手段3(解砕・分散手段3)に粒子15を供給する。図3で示した形態において、供給手段1と解砕手段3との間は、大気に開放されていても良いが、構造体で覆っていても良い。構造体で覆った場合には内部を減圧状態に維持しても良い。例えば、図2に示す形態においては、供給手段1と解砕手段3とが搬送管で繋げられているため、供給手段1と解砕手段3との間の空間は搬送管によって覆われているとも言える(供給手段1と解砕手段3とが搬送管によって接続されている)。そして、解砕手段3を通った粒子は、搬送管4を介してノズル5に導かれ、ノズル5の先端から基体7に向けて搬送ガスと共に噴射される。
【0036】
本発明における解砕手段3(解砕・分散手段3)としては、具体的には、例えば、図4または図5に示されるような構造を採用することができる。
【0037】
図4で示した例においては、供給装置100から粒子24が供給される第1の搬送管4−1と、第1の搬送管4−1の先端が挿入されている第2の搬送管4−2とを備えている。尚、好ましくは、第1の搬送管の中心と第2の搬送管の中心とが実質的に一致するように配置することが好ましい。
【0038】
第2の搬送管4−2には第2のガスを導入するための第2の導入口19が備えられ、第1の搬送管4−1には第1のガスを導入するための第1の導入口18が備えられる場合がある。そして、第1の導入口18には、第1のガスの、第1の搬送管4−1内に導入する流量を制御するための制御弁21が接続されている。同様に、第2の導入口19には、第2のガスの、第2の搬送管4−2内に導入する流量を制御するための制御弁22が接続されている。尚、第1の搬送管4−1に粒子24が導かれる前にエアロゾル状態が形成されている場合には、第1のガスを導入するための第1の導入口18、制御弁21は必ずしも必要としない。
【0039】
このようにすることで、第1のガス(エアロゾル)の流れる向きと第2のガスの流れる向きとを、ほぼ同じにすることができる。より詳細に述べれば、流速にもよるが、第1の搬送管4−1は、その先端からある所定の距離までの部分の中心軸が、第2の搬送管の中心軸と実質的に同じにすることで、第1のガス(エアロゾル)の流れる向きと第2のガスの流れる向きとを、ほぼ同じにすることができる。即ち、第1の搬送管4‐1の先端から第2の搬送管4‐2内に放出される第1のガス(エアロゾル)の流れが、第2のガスの流れと並ぶように(沿うように)することができる。そして、特には、第1の搬送管4‐1の先端を第2の搬送管4‐2の内壁に接触しないようにすることで、第1の搬送管4‐1の先端から第2の搬送管4‐2内に放出される第1のガス(エアロゾル)の流れを、第2のガスの流れが取り巻く様にすることができる。
【0040】
図5の構造においては、図4の構成に加えて、第2の搬送管4−2の先端が挿入されている第3の搬送管4−3を備えている例である。第3の搬送管4−3には第3のガスを導入するための第3の導入口20が備えられ、そして、第3の導入口20には、第3のガスの、第3の搬送管4−3内に導入する流量を制御するための制御弁23が接続されている。
【0041】
本発明においては、第1の搬送管4−1の先端部の直径が、第2の搬送管4−2の内径よりも小さく設定されている。そして、第1の搬送管4−1の先端が第2の搬送管4−2内に挿入されている。そして、好ましくは、即ち、第1の搬送管4−1の先端が、第2の搬送管の内壁と接触しないように配置している。
【0042】
また、図5に示す形態においては、図4に示す形態に加えて、さらに、第2の搬送管4−2の先端部の直径が、第3の搬送管の4−3の内径よりも小さく設定されており、第2の搬送管4−2の先端が第3の搬送管4−3内に挿入されている。そして、好ましくは、第2の搬送管4−2の先端が、第3の搬送管4−3の内壁と接触しないように配置されている。
【0043】
このようにすることで、図4の構成について説明したガスの流れに加えて、第2のガス(第2のガスと第1のガスの混合ガス)の流れる向きと、第3のガスの流れる向きとをほぼ同じにすることができる。
【0044】
尚、図5においては、第2の搬送管4−2の先端の位置と第1の搬送管4−1の先端の位置とが、第3の搬送管4−3内の実質的に同じ位置まで挿入されている場合を示している。
【0045】
しかしながら、本発明においては、例えば、第2の搬送管4−2の先端よりもノズル5から離れた位置に第1の搬送管4−1の先端を配置することもできる。つまり、第1のガスと第2のガスとを十分に混合させた後に、第2の搬送管4−2の先端から第1のガスと第2のガスとの混合ガス(粒子を含む)を、第3のガスの流れの中に導入する形態を採用することもできる。このような形態であれば、ガス中における粒子の分散させる効果並びに凝集した粒子を解砕する効果を一層向上することができる。
【0046】
図4および図5においては、解砕・分散手段3として、第1〜第3の搬送管を用いた場合を示した。しかしながら、本発明においては、上述した効果をさらに向上するため、あるいは、最終的に得たい粒子の粒度分布や分散度合いに応じて、搬送管の数(ガス導入口の数)を増やすことも可能である。
【0047】
次に、図4の構造を例に、解砕手段3(解砕・分散手段3)の働きについて以下に説明する。
【0048】
まず、供給装置100から供給された粒子24が第1の速度(「第1の流速」と置き換えて実質的に問題ない)で流れる第1のガス中に導入され、粒子24が第1の速度に設定される。次いで、粒子24を含む第1のガスが、第1の速度と異なる第2の速度(第2の流速)で流れる第2のガスに並ぶように(第2のガスに隣り合わせになるように)流される。これは、粒子24を含み第1の流速を有する第1のガスと、第1の流速と異なる第2の流速を有する第2のガスとを接触させると言い換えることもできる。
【0049】
このようにすることで、第1の速度(第1の流速)で流れる第1のガスと第2の速度(第2の流速)で流れる第2のガスとの境界付近に存在する粒子24に力(例えばせん断力)が作用する。その結果、理想的には、粒子24の解砕、および、粒子24が解砕されることで形成された粒子25のガス中(第1のガスと第2のガスとの混合ガス中)への分散が行われる。
【0050】
上記粒子24に作用する力の効果をより得るためには、特に、図4、図5に示す様に、第1の搬送管4‐1の先端の外径が第2の搬送管4−2の内径よりも小さく設定され、且つ、第1の搬送管4‐1の先端が第2の搬送管4−2の内壁に接触しないように設定されることが好ましい。このようにすることで、第1の搬送管4−1の先端から放出されたエアロゾルが第2のガスの流れで取り囲まれるようにすることが出来、その結果、上記した力を効率良く粒子24に作用させることができる。
【0051】
このように、本発明においては、第1のガスと第2のガスとの境界付近において、粒子24が解砕する及び或いは分散するだけの力を、粒子24に加えられる状態であれば良い。従って、本発明は、第1のガスと第2のガスとが完全な層流状態で搬送管中を流れる形態以外を除外するものではなく、第1のガスと第2のガスとの境界が明確ではない状態をも含む。
【0052】
尚、第1の速度と第2の速度は、その方向が概ね揃っていることが好ましい。しかしながら、流速を大幅に減少させない限り、それぞれのガスの流れの向きが交差するような場合も許容される。
【0053】
また、第1のガスに供給装置100から供給された粒子24を導入することにより得られる、上記「粒子24を含む第1のガス」は「第1のエアロゾル」と言うこともできる。
【0054】
解砕・分散手段3を通った後において、粒子25は、第2のガスと第1のガスとの混合ガス中に存在することになる(図5の例では、粒子25は、第1〜第3のガスの混合ガス中に存在することになる)。そのため、このような粒子25を含むガスは、「第2のエアロゾル」と言うこともできる。
【0055】
また、上記説明においては、その都合上、「第1のガス」、「第2のガス」を区別して記している。しかしながら、この表現は、ガスの種類やガスの分圧が異なることを許容するものではあるが、全く同じガスであることを除外するものではない。
【0056】
図5は、図4に記した解砕手段3の構造に加えて、さらに、第3のガスの流れを作り出すための第3のガスの導入経路20を備える搬送管4−3を加えた、本発明の別の形態例である。この形態においては、第2の搬送管4−2の少なくとも一部が、第3の搬送管4−3に挿入している。そして、第3の搬送管4‐3の内径が第2の搬送管4‐2の外径よりも大きく設定され、且つ、第2の搬送管4‐2の先端が第3の搬送管4−3の内壁に接触しないように設定されている。このようにすることで、搬送管4−2の先端から放出された第2のガスを、第3のガスで取り巻くようにしている。
【0057】
図5に示す解砕・分散手段3は、第3のガスの導入経路20から第3のガスを流す。第3のガスは、第1のガスの流速及び/または第2のガスの流速とは異なる流速を有することが許容される。図5に示した形態であれば、第1のガスの流速と第2のガスの流速との差によって生じる力によって解砕・分散された粒子25が搬送管の内壁に付着することを抑制することができる、および/または、粒子25のさらなる分散を行うことはできる。また、「第3のガス」は、ガスの種類やガスの分圧が「第1のガス」及び「第2のガス」と異なることを許容するものではあるが、全く同じガスであることを除外するものではない。
【0058】
このように、本発明における、解砕・分散手段3として、目的とする粒径および流速等に応じて、流速の異なる多数(2以上)のガスを用いる構成を採用することができる。
【0059】
尚、本発明の解砕・分散手段3によって、供給された粒子24は、実用的な範囲として、0.1μm以上500μm以下の粒径を持った粒子25に揃えることが好ましい。このような粒径の範囲の粒子を用いれば、膜厚の均一性に優れた膜を基体7上に形成することができる。
【0060】
解砕などを行うための力を粒子24に有効に加えるため及び/或いは粒子25の分散性を向上するためには、粒子24を含む第1のガスの流れを取り巻くように、第2のガスを流すことが、好ましい。そのため、図4に示される解砕・分散手段3は、第1の搬送管4−1の先端を、第2の搬送管4−2の中心部付近に配置している。そして、供給装置100から粒子24を、第1のガスとともに、第2のガスの流れの中に導入することで、粒子を含む第1のガスの流れを、第2のガスの流れが取り巻く状況を作ることができる。また、同様の理由で、図5に示される形態のおいては、第1の搬送管4−1の先端を第2の搬送管4−2の中心部付近に配置しており、第2の搬送管の先端を第3の搬送管4−3の中心部付近に配置している。
【0061】
尚、粒子24は第1のガス中に導入された時点で、粒子24は第1のガス中において分散され、エアロゾルが形成されていると言うこともできる。そして、第2の導入口19から導入された第2のガスと導入口18から導入されたガスとが合流し、この合流したガス中に粒子25が分散されエアロゾルが形成される。そして形成されたエアロゾルが前述した差圧によってノズル5に導かれ、粒子25がノズル5から搬送ガス(第1のガスと第2のガスとの混合ガス)と共に噴射される。
【0062】
以上のように、本発明の成膜装置によれば、粒径の制御された粒子がガス中に均一性高く且つ分散度合いの経時的な変化が小さいエアロゾルを形成することができる。その結果、ノズル5から噴射される粒子の量の経時的な変動が少なく、且つ、噴射する粒子の粒径分布も狭いため、均一性の高い成膜を行うことができる。
【0063】
尚、本発明においては、ノズル5から噴射される粒子の飛翔方向に対し、実質的に直角な方向に基板7をステージ8によって移動させることができる。そのため所望形状の膜を成膜することができる。尚、射ノズル5と基板7との相対位置が変化させられれば良いので、基板7でなくノズル5を可動としても良い。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
本実施例では、図3に示した構成の成膜装置を用いて成膜を行った。
【0065】
分級手段を備える供給手段1に、粒子として無処理のPZT粉体を50g投入した。供給手段1には粒子(PZTの粉体)を装填する容器と、この容器の底部に配置される固定目開きを有する網体(メッシュ)と、この網体上に接触して回転できるブラシとからなる供給手段を用いた。ブラシの回転によってPZT紛体を、網体を通すことで、篩い分け、所定の粒径以下の粒子のみを供給する構造とした。
【0066】
尚、固定目開きのメッシュ径は400μmのものを用いることで、400μm以下に分級された粒子を、1g/hのレートで解砕・分散手段3に供給した。尚、粒子の供給レートは、電子天秤13を用いて供給手段1ごと重量を計測することで供給する粒子の重量を算出し、この算出データを基に前記ブラシの回転速度の調整を行うことによって制御した。
【0067】
この制御によるPZT粉体の供給量は、図6のようにほぼ直線で推移した。電子天秤13による測定で500mgを供給した時点での供給量誤差は±5%以内であった。また、供給時におけるPZT紛体の粒径分布を測定したところ、図7のように、ピークは80μm以上100μm以下の範囲であった。
【0068】
400μm以下に分級され、1g/hのレートで供給されたPZT粒子は、解砕・分散手段3に供給される。解砕・分散手段3の内部構造は、図4のものを用いた。400μm以下の粒径のPZT粒子(凝集している粒子も多数存在する)24が、図4における上方から供給されるようにした。
【0069】
第1のガス導入管18と、それに付属するガスバルブ21を大気開放とし、第2のガス導入管19から導入する第2のガスの圧力を、バルブ22を調節することで0.3MPaとした。このとき、供給されたPZT粒子を含む第1のガスの流速26と、第2のガス導入管19から供給された第2のガスの流速27が異なる。そのため、ガス流26とガス流27との境界付近における粒子24に対してせん断力が生じ、400μm以下の範囲で凝集していた粒子24が解砕されるとともに分散される。解砕後のPZT粒子25の粒径は、ガス流26およびガス流27との流速の差によって決まり、目的とする粒径によって適宜調整することができる。この場合においては、解砕後の粒度分布が図8のようになっており、1μm±0.5μmの範囲にピークをもち、且つ、粒径を3μm以下にすることができた。
【0070】
上記のような手段を用いて分級,供給,解砕および分散されたPZT粒子は、搬送管4を通って噴射ノズル5から基板7に向かって噴射される。基板7はX−Y方向に可動することのできるステージ8に固定されており、ステージ8をスキャンすることによってPZT膜を成膜した。
【0071】
成膜されたPZT膜は、その平均膜厚に対し、膜厚の誤差(バラツキ)が±6%以内であった。このように、本発明の成膜装置によれば、膜厚を均一性高く、再現性が良い成膜を行うことができた。ここでは粒子としてPZT粒子を用いたが、本発明においては、その他の材料の粒子を用いた場合においても、同様に再現性良く、成膜することができる。
【0072】
(実施例2)
本実施例では、図2に示した構成の成膜装置を用いて成膜を行った。
【0073】
供給装置100として、容器内に充填した粉体(粒子)にガス(第1のガス)を吹き付け、舞い上がった粒子を吹き付けたガス(第1のガス)と共に搬送する方法をとった。供給装置100のより詳細な構成を図9に示す。容器1内にはPZT紛体(PZT粒子)が充填されており、充填された紛体に直接ガスを吹き付けるためのガス導入管33および、ガスを吹き付けることで形成されたエアロゾル(ガス導入管33から導入されたガス(第1のガス)中にPZT粒子が分散されることで形成されるエアロゾル)を容器1外に搬送する搬送管34が備えられている。搬送管34の先には粒子の供給量を検出するための供給量検出手段2が備えられている。
【0074】
ここでは、粒子の供給量の検出は光学的な手法を用いた。そして検出したデータを基にして容器内に吹き付けるガスの流量を制御することで粒子の供給量が所望量になるように制御した。また、ガス導入管33および搬送管34の相対的な位置を変化させることで、搬送管34を通じて容器1内から搬出される粒子の平均粒径が400μm以下になるようにした。
【0075】
400μm以下に分級されたPZT粒子は、解砕・分散手段3に供給される。解砕・分散手段3の構造は図4の構成のものを用いた。解砕・分散手段3に供給される粒子24の平均粒径は400μm以下である。そして、解砕・分散手段3にはPZT粒子24(多数のPZT粒子から構成される2次粒子も含む)がガス導入管33から導入されたガスの流れ26とともに供給されるようにした。
【0076】
尚、本実施例においては、ガス導入管18と、それに付属するバルブ21を完全密閉した。
【0077】
第2のガス導入管19から導入する第2のガスの圧力を、バルブ22を調節することで0.3MPaとした。このとき、粒子の流速(第1のガスの流速に相当する流速)26と、第2のガス導入管19から供給された第2のガスの流速27とが異なるため、凝集した粒子24が解砕されると共に、第1のガスと第2のガスとの混合ガス中に分散される。解砕後のPZT粒子の粒径の粒度分布が図8のようになっており、4μm以下の粒径であり、0.5μmから1.5μmの間にピークにまで解砕されていた。
【0078】
本実施例の成膜装置を用いて成膜したPZT膜の膜厚誤差(平均膜厚に対する膜厚の変動の範囲)が±8%以内であり、均一性の高い成膜を実現できた。
【0079】
(実施例3)
本実施例は実施例2と同様に図2に示した構成の成膜装置を用いて成膜を行った。分級手段を備える供給装置100としては、粉体を充填する容器と、容器内の粉体の下部から均一性高くガスを導入する機構を備える。そして、舞い上がらせた粒子を搬送する。
【0080】
本実施例の供給装置100のより詳細な構成を図10に示す。容器1内の底面にはメッシュ状のフィルタ(ガスを通すことのできる多数の孔を有する部材)36が配されており、フィルタ36下部から容器1内に第1のガスを導入できるようになっている。尚、第1のガスは、容器1に接続された搬送管33を通じて、ボンベ11からフィルタ36を通して容器1の底部に供給される。フィルタ36上にはPZT紛体(粒子)を30g充填(載置)した。容器1の上部に第2の搬送管34を設置した。
【0081】
尚、搬送管34の先には粒子の供給量を検出するための供給量検出手段2が備えられている。そして、搬送管34の更に先には、後述する解砕・分散手段3が配置されている。
【0082】
粒子の供給量のフィードバックは、光学的な手法を用いて粒子の量を測定し、その測定データに基づいて第1のガスの流量を制御することで行った。
【0083】
また、搬送管34の位置すなわちエアロゾルの吸い込み高さを変化させ、供給量検出手段2に供給される粒子の平均粒径が400μm以下になるように分級した。また、このときの粒子の供給量の経時的な変動は±8%以内であった。
【0084】
解砕・分散手段3の内部構造を、図4に模式的に示す。本実施例においては、ガス導入管18と、それに付属するガスバルブ21を完全密閉した。第2のガス導入管19から導入する第2のガスの圧力を、バルブ22を調節することで0.3MPaとした。
【0085】
このようにすることで、第1の搬送管4−1の先端から噴射された粉体(多数のPZT粒子が凝集することで構成された2次粒子)24のもつ流速26と、第1の搬送管4−1の先端近傍を流れる第2のガスの流速27とが異なるため、ガス流26とガス流27との境界付近に存在する粒子24にせん断力などの力が働き、凝集していた粒子が解砕され、分散される。
【0086】
解砕後のPZT粒子の粒度分布が図8のようになっており、0.5μm〜1.5μmの範囲においてピークを有しており、最大粒径が4μm以下まで解砕されている。
【0087】
上記のような装置を用いてPZT膜を成膜したところ、PZT膜の膜厚は、平均膜厚に対し、誤差(バラツキ)が±9%以内に収めることができた。本実施例の成膜装置によれば、粒子の供給量を安定させることができ、且つ、2次粒子が少なく粒径分布が狭い粒子を用いることができるので、膜厚バラツキが少ない膜を再現性良く、均質性高く形成することができた。
【0088】
(実施例4)
本実施例の成膜装置においては、図2に示した構成の成膜装置を用いて成膜を行った。
【0089】
供給装置100としてフィーダ37を用いた。実施例3では、容器(エアロゾル化室)1内に予め紛体を配置したが、本実施例では、実施例3と同様な機構によりエアロゾル化室1内の下方に配置されたメッシュ36を通して第1のガスを容器1内に導入しつつ、エアロゾル化室1内に粉体を少量ずつ供給することでエアロゾルを形成した。そして、形成されたエアロゾルを搬送管34を容器1内から導出した。
【0090】
本実施例で用いた供給装置100のより詳細な構造を図11に模式的に示す。
【0091】
容器(エアロゾル化室)1内の底面にはメッシュ状のフィルタ36が配されており、該フィルタ下部から一様に第1のガスを導入できるようになっている。この構造は実施例3と同様である。
【0092】
容器1内に、フィーダ37から搬送管38を通してPZT紛体(PZT粒子)を1g/hのレートで供給した。導入された紛体は、第1のガスによってエアロゾル化され、搬送管34により搬送される。
【0093】
本実施例においては、粒子の供給量のフィードバック機構は、粒子の供給量を光学的な手法で測定し、測定したデータを基に所望の値(供給量)になるように、第1のガスの流量およびフィーダ37の駆動を制御した。
【0094】
また、搬送管34の位置、すなわちエアロゾルの吸い込み高さ、を変化させ、搬送される粒子の平均粒径が300μm以下になるように制御した。
【0095】
300μm以下に分級されたPZT粒子24は、解砕・分散手段3に供給される。
【0096】
解砕・分散手段3の内部は、図4のような構造である。尚、本実施例においては、第1のガス導入管18と、それに付属するガスバルブ21を完全密閉した。第2のガス導入管19から導入する第2のガスの圧力を、バルブ22を調節することで0.4MPaとした。このとき、第1の搬送管4−1の先端から放出される第1のガスの流速26と、第2のガス導入管19から第2の搬送管4−2内に供給された第2のガスの流速27とが異なる。そのため、ガス流26とガス流27との境界近傍に存在する粒子24にせん断力などの凝集した粒子24が解砕するに足る力が加わり、凝集していた粉体24が解砕され、分散される。
【0097】
解砕後のPZT粒子25の粒径は、解砕後の粒度分布が、0.7μm以上1.3μm以下の範囲にピークを持ち、その粒径が3μm以下であった。解砕語の粒度分布は、第1のガスの流速と第2のガスの流速との相対速度によって制御することができる。一般的に、相対速度が大きければ解砕後の粒径の最小値は小さくなる傾向になる。
【0098】
上記のような装置を用いてPZT膜を成膜したところ、PZT膜の膜厚は、平均膜厚に対し、誤差(バラツキ)が±7%以内に収めることができた。本実施例の成膜装置によれば、粒子の供給量を安定させることができ、且つ、2次粒子が少なく粒径分布が狭い粒子を用いることができるので、膜厚バラツキが少ない膜を再現性良く、均質性高く形成することができた。尚、PZTをBNTに置き換えて、本実施例の成膜装置を用いてBNT膜を成膜したところ、PZTと同様に良好な形状特性を備える膜を形成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】従来の成膜装置の該略図
【図2】本発明の成膜装置の該略図
【図3】本発明の実施形態1
【図4】インジェクタ部分の拡大図1
【図5】インジェクタ部分の拡大図2
【図6】粒子の供給量
【図7】分級後の粒子の粒度分布
【図8】解砕後の粒子の粒度分布
【図9】実施例2におけるエアロゾル形成手段
【図10】実施例3におけるエアロゾル形成手段
【図11】実施例4におけるエアロゾル形成手段
【符号の説明】
【0100】
1 供給手段
2 供給量検出手段
3 解砕手段
4 搬送管
5 ノズル
6 成膜室(チャンバー)
7 基体
8 ステージ
9 フィードバック制御回路
13 電子天秤
24 凝集粒子
25 解砕された粒子
26 第1のガス流
27 第2のガス流
28 第3のガス流
100 エアロゾル形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜材料の粒子を含むエアロゾルを形成するエアロゾル形成手段と、該エアロゾル形成手段により形成されたエアロゾルを噴射するノズルと、を有する成膜装置において、
前記エアロゾル形成手段は、成膜材料の粒子を供給する供給手段と、成膜材料の粒子の量を検出する検出手段と、該検出手段の検出結果に基づいて、形成するエアロゾルに含まれる成膜材料の粒子の量を制御する制御手段と、を有しており、
前記供給手段は、成膜材料の粒子を収容する容器を備えており、
前記検出手段は、成膜材料の粒子を収容した状態における前記容器の重量を測定することによって、前記形成するエアロゾルに含まれる成膜材料の粒子の量を検出することを特徴とすることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記供給手段から供給する成膜材料の粒子の量を制御することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記容器は、前記成膜材料の粒子を通す複数の開口を備えるフィルタを具備していることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記容器は、さらに、前記フィルタに接触し移動するブラシを具備することを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記エアロゾル形成手段は、さらに、前記粒子のうち、多数の粒子が凝集して形成された粒子を複数の粒子に解砕する解砕手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記解砕手段は、形成されたエアロゾルが流される第1の搬送管と、該第1の搬送管の先端が挿入され、該先端から放出されるエアロゾルと並んでガスが流れるようにした第2の搬送管とを備えることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記先端から放出されるエアロゾルの流速と、前記エアロゾルと並んで流れるガスの流速とが異なるように、前記エアロゾルと前記ガスとが流されることを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
成膜材料の粒子を含むエアロゾルを形成するエアロゾル形成手段と、該エアロゾル形成手段により形成されたエアロゾルを噴射するノズルと、を有する成膜装置において、
前記エアロゾル形成手段は、第1の搬送管と、該第1の搬送管の先端が挿入され、該先端から放出されるエアロゾルと並んでガスが流れるようにした第2の搬送管とを備える、ことを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
前記先端から放出されるエアロゾルの流速と、前記エアロゾルと並んで流れるガスの流速とが異なるように、前記エアロゾルと前記ガスとが流されることを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の成膜装置を用いて、前記エアロゾルを基体に向けて噴射することで、前記成膜材料を含む膜を形成することを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−297251(P2006−297251A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120917(P2005−120917)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】