説明

成膜装置

【課題】ドライコート法による成膜処理において、成膜対象である基板のセッティング性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】成膜装置100は、基板25を保持する保持器具50と、成膜室110において、保持器具50を、取り付けられた基板25が立った状態となるように固定する基台112とを備える。保持器具50は、枠部51と、枠部51の互いに対向する長辺に沿って設けられた第1と第2の側辺支持部52,53と、枠部51の底辺に沿って設けられた底辺支持部54とを備える。第1と第2の側辺支持部52,53は、基板25の長辺の一部を収容するスリットSを有する。第1と第2の側辺支持部52,53は、基板25が水平方向へと傾くことを抑制するとともに、基板25が枠部51から離間することを抑制する。底辺支持部54は、基板25が重力方向へ脱落することを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドライコート法によって、基板の外表面に成膜する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、通常、発電体である膜電極接合体を狭持する2枚のセパレータを備える。セパレータは、金属板などの導電性を有する板状部材(基板)によって構成される。ここで、セパレータの外表面は膜電極接合体の発電領域と面し合い、反応ガスや冷媒などの流路を構成するとともに、導電パスとしても機能する。そのため、セパレータを構成する基板の外表面は、導電性や耐腐食性、親水性を向上させるために、金属薄膜等によってコーティングされる場合がある。金属薄膜の成膜方法としては、例えば、プラズマCVD法や、スパッタ法などの、いわゆるドライコート法が知られている(下記特許文献1等)。
【0003】
一般に、ドライコート法では、高温(例えば、500〜600℃)環境下の成膜室に、原料ガスを供給することにより成膜が行われる。そして、その成膜の際には、成膜対象である基板は、保持器具に保持された状態で成膜室に設置される。ここで、燃料電池では、軽量化や電気抵抗の低減のために、セパレータを構成する基板が薄型化されることが好ましい。しかし、前記した成膜処理では、基板の厚みが著しく薄いと、基板の保持器具への取り付けや取り外しの際に、基板が変形・損傷してしまう可能性が高くなる。また、保持器具への基板の取り付け・取り外し工程が複雑化してしまうと、成膜処理の処理効率が低下してしまう。これまで、こうした問題について十分な工夫がなされてこなかったのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−045072号公報
【特許文献2】特開昭63−206471号公報
【特許文献3】特開2008−065995号公報
【特許文献4】特開2002−155372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ドライコート法による成膜処理において、成膜対象である基板のセッティング性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
ドライコート法によって、成膜室に配置された基板の両面に同時成膜する成膜装置であって、前記基板を保持する保持器具と、前記基板が取り付けられた前記保持器具を、前記基板が立った状態となるように固定する固定部と、を備え、前記保持器具は、前記基板の、互いに交差する辺方向を有する第1と第2の辺の一部をそれぞれ支持する第1と第2の支持部を備え、前記保持器具は、前記固定部によって、前記第1の支持部が重力方向上側となり、前記第2の支持部が重力方向下側となるように固定され、前記第1の支持部は、前記基板の前記第1の辺の一部を受け入れるスリットを有し、前記基板が水平方向へと傾くことを抑制するとともに、前記基板が前記保持器具から離間することを抑制し、前記第2の支持部は、前記基板が重力方向へと脱落することを抑制する、成膜装置。
この成膜装置によれば、成膜対象である基板が、成膜室において、保持器具の簡易な支持機構によって保持される。従って、成膜装置における基板のセッティング性が向上する。
【0008】
[適用例2]
適用例1記載の成膜装置であって、前記保持器具は、さらに、前記基板の外周と対応する枠を有する枠部材と、前記基板の前記第1の辺と互いに対向し合う第3の辺の一部を支持する第3の支持部と、を備え、前記第3の支持部は、前記基板の前記第3の辺の一部を受け入れるスリットを有し、前記第1と第2と第3の支持部はそれぞれ、前記枠部材の対応する各辺に設けられている、成膜装置。
この成膜装置によれば、保持器具の枠部材に取り付けられた3つの支持部によって、基板の外周3辺が支持されるため、より確実に基板が保持され、成膜装置における基板のセッティング性が向上する。また、成膜処理の処理温度によって、基板が変形してしまうことが抑制される。
【0009】
[適用例3]
適用例2記載の成膜装置であって、前記第1と第2と第3の支持部はそれぞれ、
(i)前記基板と前記保持器具とを、互いに平行に重ね合わせるとともに、前記基板の面に沿った方向における配置角度を互いにずらした第1の配置状態としたときに、前記基板と干渉し合わない位置であって、
(ii)前記第1の配置状態から、前記配置角度のずれを解消させるように、前記基板を回転させることにより、前記基板の前記第1と第3の辺の一部が、前記第1と第3の支持部のそれぞれの前記スリットに受け入れられる位置に設けられている、成膜装置。
この成膜装置によれば、保持器具において、枠部材の3辺にそれぞれ支持部が設けられている場合であっても、基板の面に沿った方向への回転のみで、基板を保持器具に取り付けることができる。従って、成膜装置における基板のセッティング性が向上する。
【0010】
[適用例4]
適用例3記載の成膜装置であって、前記保持器具は、さらに、前記基板の前記第2の辺と互いに対向し合う第4の辺の一部を支持する第4の支持部を備え、前記第2と第4の支持部はそれぞれ、前記基板の前記第2と第4の辺の一部を受け入れるスリットを有し、
前記第1と第2と第3と第4の支持部はそれぞれ、
(i)前記基板と前記保持器具とを、前記第1の配置状態としたときに、前記基板と干渉し合わない位置であって、
(ii)前記第1の配置状態から、前記配置角度のずれを解消させるように、前記基板を回転させることにより、前記基板の全ての辺の一部が、前記第1と第2と第3と第4の支持部のそれぞれの前記スリットに受け入れられる位置に設けられている、成膜装置。
この成膜装置によれば、保持器具において、枠部材の4辺にそれぞれ支持部が設けられている場合であっても、基板の面に沿った方向への回転のみで、基板を保持器具に取り付けることができる。また、保持器具によって、基板の外周4辺が確実に支持されるため、成膜処理の処理温度による基板の変形がより抑制される。
【0011】
[適用例5]
適用例1〜4に記載の成膜装置であって、さらに、前記基板を搬送し、前記保持器具に取り付ける取付機構を備える、成膜装置。
この成膜装置によれば、取付機構によって基板が保持器具に取り付けられるため、基板のセッティングが容易となり、成膜処理の処理効率が向上する。
【0012】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、成膜装置および成膜方法、それらの装置または方法の実施に用いられる装置・器具等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】燃料電池の一例を示す概略図と、セパレータを構成する基材である基板の一例を示す概略図。
【図2】成膜装置の構成を示す概略図。
【図3】成膜装置の構成を示す概略図。
【図4】保持器具の構成を示す概略図。
【図5】第1と第2の側辺支持部の構成を示す概略断面図。
【図6】保持器具に基板が取り付けられる工程を工程順に説明するための概略図。
【図7】保持器具に基板が取り付けられる工程を工程順に説明するための概略図。
【図8】保持器具に基板が取り付けられる工程を工程順に説明するための概略図。
【図9】保持器具に基板が取り付けられる工程を工程順に説明するための概略図。
【図10】参考例としての保持器具の構成を示す概略図。
【図11】参考例としての保持器具の構成を示す概略図。
【図12】第2実施例の保持器具の構成を示す概略図。
【図13】第2実施例の保持器具への基板の取り付け工程を工程順に示す概略図。
【図14】第3実施例の保持器具の構成を示す概略図。
【図15】第4実施例の保持器具の構成を示す概略図。
【図16】第5実施例の保持器具の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施例:
図1(A),(B)は本発明の一実施例としての成膜装置において成膜対象となる基板を説明するための概略図である。図1(A)は、成膜された基板を用いて構成されたセパレータを備える燃料電池の一例を示す概略図である。この燃料電池10は、反応ガスとして水素(燃料ガス)と酸素(酸化ガス)の供給を受けて発電する固体高分子形燃料電池である。なお、燃料電池10は、固体高分子形燃料電池でなくとも良く、セパレータを備えた他の種類の燃料電池であるものとしても良い。
【0015】
燃料電池10は、膜電極接合体5と、セパレータ20とが交互に積層されたスタック構造を有する。膜電極接合体5は、電解質膜1の外側に2つの電極2,3(以後、それぞれ「アノード2」および「カソード3」とも呼ぶ)が設けられた発電体である。電解質膜1は、湿潤状態において良好なプロトン伝導性を示すイオン交換膜によって構成される。
【0016】
アノード2およびカソード3はそれぞれ、電解質膜1の外表面に形成されたガス拡散性を有する電極であり、電気化学反応を促進するための触媒が担持されている。アノード2およびカソード3は、触媒担持カーボンによって構成することができる。触媒としては、例えば白金(Pt)を用いることができる。
【0017】
2つの電極2,3のそれぞれの外側の面には、ガス拡散層8が設けられている。ガス拡散層8は、反応ガスを拡散させて電極2,3の全体に行き渡らせるための層である。ガス拡散層8は、導電性およびガス透過性・ガス拡散性を有する多孔質の繊維基材(例えば、炭素繊維や黒鉛繊維など)や、いわゆるエキスパンドメタルなどの金属加工板によって構成することができる。なお、ガス拡散層8は省略されるものとしても良い。
【0018】
膜電極接合体5の外周端には、シール部7が形成されている。シール部7は、電解質膜1の外周端を被覆するように樹脂部材を射出成形することにより形成されている。シール部7は、反応ガスがシール部7に囲まれた領域から漏洩することを防止するとともに、膜電極接合体5を狭持するセパレータ20同士の間の短絡を防止する。なお、シール部7には、各膜電極接合体5に反応ガスを供給するためのマニホールドが形成されるが、その図示および説明は省略する。
【0019】
セパレータ20は、アノード2側に配置されるアノードプレート21と、カソード3側に配置されるカソードプレート22とを備える。2つのプレート21,22の間には、反応ガスや冷媒のための流路を構成する流路形成層23が設けられている。各プレート21,22は、導電性を有するガス不透過の板状部材(例えば金属板)によって構成することができる。流路形成層23は樹脂フィルムと導電性部材とを組み合わせて構成されるものとしても良いし、金属材料を各プレート21,22の外表面に付着させて形成されるものとしても良い。
【0020】
図1(B)は、セパレータ20を構成する2つのプレート21,22を構成する基板25の一例を示す概略図である。基板25は、略長方形の形状を有しており、その2つの短辺に沿った端部にそれぞれ、反応ガスや冷媒のためのマニホールドを構成する貫通孔9が、3個ずつ形成されている。
【0021】
ここで、セパレータ20は、反応ガスや冷媒のための流路が形成された流体流路として機能する。即ち、セパレータ20を構成する各プレート21,22は、燃料電池10に供給される水素をはじめとする各流体や、燃料電池10で生成される水分と、高温環境下(例えば80℃程度)で直接的に接触する。そのため、セパレータ20の各プレート21,22は、耐腐食性が向上されることが好ましい。
【0022】
また、セパレータ20の各プレート21,22は、膜電極接合体5における発電反応で生じた水分を発電領域から円滑に誘導するために、親水性が向上されていることが好ましい。さらに、セパレータ20は、膜電極接合体5で発電された電気の導電パスとしても機能するため、各プレート21,22は、その表面抵抗が低減されることが好ましい。そこで、本実施例では、セパレータ20を構成するための基板25の外表面を炭素薄膜によってコーティングする。
【0023】
図2,図3は、本実施例の成膜装置100の構成を示す概略図である。図2は成膜装置100の全体の構成を示す概略図であり、図3は成膜装置100のうちの、成膜室110と、成膜室110に接続された各構成部の一部とを示す概略図である。
【0024】
なお、図2には、成膜室110にセッティングされた基板25を正面方向から見たときの成膜室110の内部構成が図示してあり、図3には、成膜室110にセッティングされた基板25を側面方向から見たときの成膜室110の内部構成が図示してある。さらに、図2および図3には、成膜処理の際の原料ガスおよび陽イオンの流れを模式的に図示してある。
【0025】
この成膜装置100は、プラズマCVD(plasma CVD; plasma-enhanced chemical vapor deposition)法によって、基板25の両面に、炭素薄膜を同時に成膜する。ここで、基板25に成膜される炭素薄膜の構造としては、アモルファス構造や、グラファイト構造であるものとしても良く、他の種類の構造で有るものとしても良い。また、成膜装置100は、炭素薄膜以外の他の種類の薄膜を基板25の外表面に成膜するものとしても良い。例えば、成膜装置100は、金や、白金、タンタルなどの金属元素の薄膜を成膜するものとしても良い。
【0026】
成膜装置100は、制御部101と、基板準備部102と、成膜室110と、原料ガス供給部120と、排ガス排出部130とを備える。制御部101は、中央処理装置と主記憶装置とを備えるマイクロコンピュータによって構成され、成膜装置100の各構成部の動作を制御する。
【0027】
基板準備部102は、成膜対象となる複数の基板25と、それに対応する個数の保持器具50とを格納している。基板準備部102は、基板25を保持器具50に自動的に取り付ける機構を備えている。基板準備部102における保持器具50への基板25の取り付け工程の詳細については後述する。保持器具50に取り付けられた基板25は、成膜室110内に収容・配置される。
【0028】
成膜室110は、隔壁110Wによって囲まれており、その天井面には、原料ガスを噴射するためのシャワー管111が設けられ、その床面には、保持器具50に取り付けられた基板25を載置する基台112が設けられている。また、成膜室110には、室内の圧力を計測する圧力計測部118が設けられている。
【0029】
シャワー管111は、基台112の上方において、成膜室110の室内を横断するようにほぼ水平に取り付けられている。シャワー管111の側壁面には、成膜室110の全体に渡って、原料ガスが放射状に噴射されるように、シャワー孔が形成されている。
【0030】
基台112は、台面が脚部112fによって支持されており、その台面には、保持器具50を取り付ける取付部113が設けられている。この取付部113によって、基板25は、シャワー管111の直下に、立った状態で固定される。ここで、基板25が「立った状態」とは、基板25が、その面に沿った方向が重力方向に垂直な水平面に対して角度を有するように配置された状態を意味する。なお、本実施例では、基板25は、その面に沿った方向と、シャワー管111の延伸方向(図2の紙面左右方向)とがほぼ平行となり、その長辺に沿った方向と重力方向とがほぼ平行となるように、基台112に固定される。
【0031】
ここで、基台112は導電性を有するように構成されており、バイアス電源115と接続されている。これによって、成膜装置100は、基台112のセッティングされた基板25にマイナスの高電圧を印加することができる。基台112の台面下側には、排ガスを排気するための排気口116が形成されている。
【0032】
原料ガス供給部120は、原料ガス供給源121と、ガス配管123と、制御バルブ124とを備える。原料ガス供給源121は、ガス配管123を介して成膜室110のシャワー管111と接続され、成膜室110に原料ガスを供給する。制御バルブ124は、ガス配管123の途中に設けられており、制御部101の指令に応じて開閉する。
【0033】
排ガス排出部130は、排ガス配管132と、ポンプ135とを備える。排ガス配管132は、成膜室110の排気口116に接続されており、ポンプ135は、排ガス配管132に設けられている。排ガス排出部130は、制御部101の指令に応じてポンプ135を駆動し、成膜室110の排ガスを吸引して排出する。
【0034】
ここで、成膜装置100における成膜の際には、シャワー管111を介して原料ガスが成膜室110に供給され、成膜室110の室内は、高温(例えば600℃程度)な状態に昇温される。そして、バイアス電源115によって基台112とシャワー管111との間に電場が生成されることにより、原料ガスがプラズマ状態となって、陽イオンが生成される。生成された陽イオンは、基台112を介してマイナスに帯電している基板25に付着する。この陽イオンの付着によって、基板25の外表面には、炭素薄膜が成膜される。
【0035】
図4(A),(B)は、基板25が取り付けられる保持器具50の構成を示す概略図である。図4(A)は基板25が取り付けられる正面側を示す概略図であり、図4(B)は、図4(A)に示す矢印SVの方向に見たときの側面側を示す概略図である。なお、図4(A),(B)にはそれぞれ、保持器具50に取り付けられたときの基板25が一点鎖線で図示してある。
【0036】
保持器具50は、本体部である枠部51と、基板25を支持するための3つの支持部52,53,54とを備えている。枠部51は、基板25の外周端部に重ね合わせることが可能なように、基板25の外周形状と対応させた略長方形形状を有する枠部材である。即ち、枠部51は、基板25の外周全体に渡って端部を被覆できる形状およびサイズを有している。
【0037】
3つの支持部52,53,54はそれぞれ、基板25の2つの長辺端部をそれぞれ支持する第1と第2の側辺支持部52,53と、基板25の短辺端部を支持する底辺支持部54である。各支持部52,53,54は、枠部51の所定の位置にボルト56によって固定的に取り付けられている。
【0038】
第1と第2の側辺支持部52,53は、枠部51の互いに対向し合う2つの長辺部において、それぞれ互いにオフセットされた位置に取り付けられている。より具体的には、第1の側辺支持部52は、図4(A)における紙面上側の内周の角部に近い位置に、内周の長辺に沿って取り付けられ、第2の側辺支持部53は、図4(A)における紙面下側の内周の角部に近い位置に、内周の長辺に沿って取り付けられている。
【0039】
図5(A),(B)はそれぞれ、第1と第2の側辺支持部52,53の構成を示す概略図であり、図4(A)に示すA−A切断およびB−B切断における保持器具50の概略断面図である。第1と第2の側辺支持部52,53にはそれぞれ、枠部51の内周側(図5(A)では紙面右側であり、図5(B)では紙面左側)に向いた面に、スリットSが形成されている。
【0040】
第1と第2の側辺支持部52,53は、これらのスリットSに、基板25の各長辺端部の一部が収容されて受け入れられることにより、基板25を支持する。第1と第2の側辺支持部52,53は、基板25を保持する保持器具50が成膜室110の基台112に取り付けられたときには、基板25が水平方向に傾くことを抑制するとともに、基板25が枠部51から離間することを抑制する。
【0041】
底辺支持部54(図4)は、略L字形状を有する部材であり、枠部51における内周の角部に沿って取り付けられている。より具体的には、底辺支持部54は、第1の側辺支持部52が設けられた長辺側において、第1の側辺支持部52が近くに設けられている角部とは反対側(図4(A)の紙面下側)の角部に沿うように取り付けられている。
【0042】
ここで、基板25を保持する保持器具50が成膜室110の基台112に取り付けられたときには、底辺支持部54は重力方向下側に配置される。これによって、底辺支持部54は、枠部51の内周に沿った側面が、基板25の底辺における端面の一部と係合して、基板25が重力方向に脱落することを抑制する。
【0043】
このように、3つの支持部52,53,54は、基板25の3つの外周辺をそれぞれ支持するように、各外周辺に対応して設けられている。また、3つの支持部52,53,54はそれぞれ、後述する方法によって基板25を取り付け可能とするために、枠部材51の内周における3つの角部に近い位置に設けられている。なお、本実施例における第1と第2の側辺支持部52,53がそれぞれ、特許請求の範囲における「第1の支持部」に相当し、本実施例における底辺支持部54が「第2の支持部」に相当する。
【0044】
図6〜図9は、基板準備部102(図2)において、保持器具50に基板25が取り付けられる工程を工程順に説明するための概略図である。なお、図6〜図9では、便宜上、基板25の位置や角度を変化させたときの、その変化前の残像を一点鎖線で図示してある。
【0045】
図6(A),(B)は、チャック部62によって基板25が把持された状態を示す概略図である。図6(A)は、基板25を正面方向に沿って見たときの図であり、図6(B)は、基板25を、その長辺方向に沿って見たときの図である。図6(C)は、基板25が取り付け対象である保持器具50まで搬送された状態を示す概略図である。
【0046】
ここで、基板準備部102は、基板25を把持して搬送する2つのチャック部62を備えている。基板準備部102では、2つのチャック部62が、基板25の2つの長辺部における互いに対角する部位を把持する(図6(A),(B))。そして、チャック部62に把持された基板25は、取り付け対象である保持器具50の格納位置まで搬送される(図6(C))。
【0047】
図7(A),(B)と、図8(A)〜(C)と、図9(A),(B)とは、チャック部62の操作による基板25の保持器具50への取付工程を説明するための概略図である。なお、図8(B),(C)はそれぞれ、基板25が取り付けられた保持器具50の概略断面図であり、図8(A)に示すB−B切断およびC−C切断における切断面を示している。
【0048】
チャック部62は、把持している基板25を、保持器具50の配置角度に対し所定の角度を有するように、基板25の面に沿った方向において回転させる(図7(A))。そして、チャック部62は、基板25を、保持器具50と重なり合う位置まで移動させる(図7(B))。このとき、基板25と保持器具50とは、互いに平行に重ね合わされるとともに、面に沿った方向における互いの配置角度がずれた配置状態となる。
【0049】
さらに、チャック部62は、基板25を、その厚み方向に沿って移動させて、2の側辺支持部52,53のスリットSが設けられた位置まで、保持器具50に接近させる。なお、このとき、基板25と、保持器具50の3つの支持部52,53,54とは、基板25が、保持器具50の配置角度に対して所定の角度を有するように回転されているため、互いに干渉し合わない。
【0050】
次に、チャック部62は、基板25と保持器具50との配置角度のずれが解消されるように、図7(A)のときとは逆の方向に、基板25を回転させる(図8(A))。これによって、基板25の2つの長辺の一部がそれぞれ、第1と第2の側辺支持部52,53のスリットSに収容される(図8(B),(C))。
【0051】
チャック部62は、基板25を、基板25の短辺における端面と、底辺支持部54の側壁面とが係合し合うように、基板25の長辺に沿った方向(紙面下側に向かう方向)に直線移動させる(図9(A))。この工程の後、チャック部62は、基板25から離脱する(図9(B))。このように、基板準備部102では、チャック部62による簡易な操作によって、基板25が、保持器具50に取り付けられる。
【0052】
図10,図11は、参考例としての保持器具70の構成を示す概略図である。図10(A),(B)はそれぞれ、保持器具70の正面側と背面側の面を示している。なお、図10(A),(B)にはそれぞれ、保持器具70が基板25を保持した状態が図示されており、保持器具70の構成部材によって隠れている基板25の一部を一点鎖線で図示してある。
【0053】
図11(A),(B)はそれぞれ、図10(A)の矢印SVの方向に沿って見たときの保持器具70の側面側を示す概略図である。図11(A)には、保持器具70に基板25が取り付けられる様子を模式的に図示してあり、図11(B)には、保持器具70に基板25が取り付けられた状態を示してある。なお、図11(B)には、保持器具70に取り付けられた基板25を一点鎖線で図示してある。
【0054】
この参考例の保持器具70も、本実施例の保持器具50と同様に、成膜対象である基板25を保持して、成膜装置100の成膜室110に収容され、基台112の台面上に基板25が立った状態となるように固定される。保持器具70は、3つの枠部材71,72,73と、ヒンジ機構74と、ヒンジ支持部材75と、複数のボルト76とを備える。
【0055】
3つの枠部材71,72,73はそれぞれ、基板25の外周形状に対応させた形状およびサイズを有しており、互いに積層される。第1の枠部材71は、基板25と重ね合わせたときに、基板25の外周端部を被覆できる形状およびサイズを有している。第1の枠部材71は、保持器具70の正面側に配置される。
【0056】
第2の枠部材72は、基板25と重ね合わせたときに、基板25の外周全体に渡って端部を被覆できる形状およびサイズを有しており、保持器具70の背面側に配置される。なお、第2の枠部材72は、第1の枠部材71と底辺(紙面下側の短辺)を揃えたときに、その底辺に対向する上辺が、第1の枠部材71より突出するように構成されている。
【0057】
第3の枠部材73は、その枠内に基板25を収容可能であり、その外周が、第1の枠部材71と同様の形状およびサイズを有している。第3の枠部材73は、第1と第2の枠部材71,72の間に配置される。より具体的には、第3の枠部材73は、第1と第2の枠部材71,72によって、それらと底辺および側辺が揃った状態で狭持される。
【0058】
ここで、保持器具70では、第2の枠部材72の上端部は、第1と第3の枠部材71,73の上辺から突出する。この第2の枠部材72の突出した上端部の外表面には、ヒンジ支持部材75が配置される。ヒンジ支持部材75には、ヒンジ機構74が取り付けられる。ヒンジ機構74は、第1の枠部材71とヒンジ支持部材75とに架設され、第1の枠部材71を開閉動作が可能なように保持する。
【0059】
上記の構成によって、保持器具70には、以下のように基板25が保持される。保持器具70の第1の枠部材71を開き、第3の枠部材73の枠内に基板25を収容する(図11(A))。そして、第1の枠部材71を閉じ、複数のボルト76を、第1の枠部材の長辺に沿った位置に取り付けて、各枠部材71,72,73を締結する(図11(B))。
【0060】
このように、この参考例の保持器具70を用いた場合であっても、成膜装置100において、基板25の両面に同時に成膜を行うことが可能である。しかし、以下の点において、本実施例の保持器具50の方が、参考例の保持器具70よりも、ドライコート法による成膜処理に適している。
【0061】
本実施例の保持器具50では、基板25を搬送・回転する操作のみで取り付けることができ、上述したチャック部62などの簡易な機構によって、基板25の取り付けを自動的に実行することができる。また、本実施例の保持器具50であれば、基板25の取り付けと同様に、基板25の取り外しが容易に実行できる。即ち、保持器具50への基板25の取り付け・取り外しが容易であり、成膜処理の処理効率が向上する。
【0062】
ところで、一般に、ドライコート法による成膜処理の際には、成膜対象である基板は高温環境下に曝されるため、基板が薄型化されるほど、温度に起因する剛性の低下によって、基板に変形が生じてしまう可能性が高くなる。しかし、本実施例の保持器具50であれば、基板25の外周形状に合わせて形成された枠部51と、3つの支持部52,53,54とによる外周辺の固定によって基板25が保持され、基板25の変形が抑制される。
【0063】
また、第1実施例の保持器具50では、第1と第2の側辺支持部52,53が、スリットSへの基板25の外周端部の収容(挿入)のみによって基板25を保持しているため、基板25の保持のための締結力などの外力が基板25に付与されない。従って、第1実施例の保持器具50では、成膜処理の際に、基板25がそうした外力によって変形・損傷してしまうことが抑制されている。
【0064】
ここで、参考例の保持器具70では、第1と第2の枠部材71,72によって、基板25の外周端部が全周に渡って被覆されるため、基板25の熱変形によるたわみなどが、より確実に抑制される。しかし、参考例の保持器具70では、基板25の外周端部が、保持器具70から受ける締結力によって変形してしまう可能性が高い。また、参考例の保持器具70では、基板25における、第1と第2の枠部材71,72によって被覆される領域が多い分だけ、成膜領域が狭くなってしまっている。
【0065】
このように、本実施例の成膜装置100が有する保持器具50であれば、簡易な操作で成膜対象である基板25を取り付けることができ、基板25の変形・損傷も抑制され、成膜装置100における基板25のセッティング性が向上する。従って、ドライコート法による成膜処理の処理効率が向上する。
【0066】
B.第2実施例:
図12は本発明の第2実施例としての成膜装置に用いられる保持器具50Aの構成を示す概略図である。図12は、底辺支持部54が省略され、上辺支持部57と、底辺支持部58とが追加されている点以外は、図4(A)とほぼ同じである。なお、第2実施例の成膜装置は、第1実施例で説明した保持器具50に換えて、この保持器具50Aによって基板25が保持される点以外は、第1実施例の成膜装置100とほぼ同じ構成である。
【0067】
第2実施例の保持器具50Aでは、枠部51の互いに対向し合う2つの短辺部にそれぞれ、上辺支持部57と、底辺支持部58とが、互いにオフセットされた位置に設けられている。より具体的には、上辺支持部57は、図12における紙面右上側の内周の角部に近い位置において、内周の短辺に沿って取り付けられている。また、底辺支持部58は、図12における紙面左下側の内周の角部に近い位置において、内周の短辺に沿って取り付けられている。
【0068】
上辺支持部57および底辺支持部58には、第1と第2の側辺支持部52,53と同様に、枠部51の内周側の側面に、スリットSが設けられている。保持器具50Aに基板25が取り付けられる際には、上辺支持部57のスリットSに、基板25の上辺端部の一部が受け入れられ、底辺支持部58のスリットSに、基板25の底辺端部の一部が受け入れられる。
【0069】
即ち、第2実施例の保持器具50Aでは、基板25の4つの外周辺を保持可能なように、各外周辺に対応させて、スリットSを有する4つの支持部52,53,57,58が設けられている。なお、4つの支持部52,53,57,58はそれぞれ、枠部51の内周の各角部に近い位置に設けられている。これによって、第2実施例の保持器具50Aでは、以下に説明する方法により、基板25の取り付けが可能となっている。
【0070】
図13(A),(B)は、保持器具50Aへの基板25の取り付け工程を工程順に示す概略図である。保持器具50Aへの基板25の取り付けは、第1実施例の成膜装置100と同様に、基板準備部102において、チャック部62の操作によって行われる。具体的には、以下の通りである。
【0071】
基板準備部102のチャック部62は、第1実施例で説明したのと同様に、基板25の外周端部の一部を把持して、基板25を保持器具50Aまで搬送する。そして、チャック部62は、基板25を、その面に沿った方向において、保持器具50Aの配置角度に対して、所定の角度を有するように回転させ、保持器具50Aと平行に重ね合わせる(図13(A))。
【0072】
さらに、チャック部62は、基板25を、その厚み方向に沿って移動させ、4つの支持部52,53,57,58のスリットSが設けられた位置まで、保持器具50に接近させる。なお、このとき、基板25と、保持器具50Aの4つの支持部52,53,57,58とは、基板25が保持器具50の配置角度に対して所定の角度を有するように回転されているため、互いに干渉し合わない。
【0073】
次に、チャック部62は、基板25と保持器具50との配置角度のずれが解消されるように、基板25を回転させる(図13(B))。これによって、基板25の4つの外周辺の一部がそれぞれ、4つの支持部52,53,57,58のスリットSに挿入される。
【0074】
このように、第2実施例の保持器具50Aによれば、第1実施例の保持器具50と同様に、簡易な操作によって、基板25を取り付けることが可能である。また、第2実施例の保持器具50Aであれば、基板25の4つの外周辺がそれぞれ各支持部52,53,57,58のスリットSによって支持されるため、成膜温度に起因する基板25のたわみなどの変形が、より抑制される。
【0075】
C.第3実施例:
図14は本発明の第3実施例としての成膜装置に用いられる保持器具50Bの構成を示す概略図である。図14は、第2の側辺支持部53と、上辺支持部57とが省略され、底辺支持部58の位置が異なる点以外は、図12とほぼ同じである。なお、第3実施例の成膜装置は、第1実施例で説明した保持器具50に換えて、この保持器具50Bによって基板25が保持される点以外は、第1実施例の成膜装置100とほぼ同じ構成である。
【0076】
第3実施例の保持器具50Bでは、底辺支持部58が、基板25の底辺を支持するように設けられている。より具体的には、底辺支持部58は、保持器具50Bの底辺部において、第1の側辺支持部52と、基板25の重心位置(点CPとして図示)を挟んで、水平方向に反対側となる位置に設けられている。これによって、第3実施例の保持器具50Bでは、基板25が、その面に沿った方向に傾いて保持されてしまうことが抑制されている。このように、第3実施例の保持器具50Bでは、2つの支持部52,58のみによって基板25が保持されるため、基板25の取り付け・取り外しが、より簡易になる。
【0077】
D.第4実施例:
図15は本発明の第4実施例としての成膜装置に用いられる保持器具50Cの構成を示す概略図である。図15は、底辺支持部58に換えてスリットSを有さない底辺支持部58Cが設けられている点以外は、図14とほぼ同じである。なお、第4実施例の成膜装置は、第1実施例で説明した保持器具50に換えて、この保持器具50Cによって基板25が保持される点以外は、第1実施例の成膜装置100とほぼ同じ構成である。
【0078】
第4実施例の保持器具50Cでは、底辺支持部58Cが、基板25の底辺の一部が挿入されるスリットSを有さない。しかし、第4実施例の保持器具50Cでは、基板25を保持したときに、基板25の底辺部の端面と、底辺支持部58Cの側壁面とが互いに係合することにより、基板25が、重力方向に脱落してしまうことが抑制される。
【0079】
また、第4実施例の保持器具50Cでは、第1の側辺支持部52と、底辺支持部58Cとが、保持器具50Cに取り付けられた基板25の重心位置CPを挟んで、水平方向に互いに反対側の位置に設けられている。そのため、保持器具50Cにおいて、基板25が、その面に沿った方向に傾いて保持されてしまうことが抑制されている。このように、第4実施例の保持器具50Cであれば、より簡易な構成で、基板25を保持することができる。
【0080】
E.第5実施例:
図16は本発明の第5実施例としての成膜装置に用いられる保持器具50Dの構成を示す概略図である。図16は、第2の側辺支持部53の設けられた位置が異なる点以外は、図4(A)とほぼ同じである。なお、第5実施例の成膜装置は、第1実施例で説明した保持器具50に換えて、この保持器具50Dによって基板25が保持される点以外は、第1実施例の成膜装置100とほぼ同じ構成である。
【0081】
第5実施例の保持器具50Dでは、基板25を保持するためのスリットSを有する第1と第2の側辺支持部52,53が、それぞれのスリットSが互いに対向し合う位置に設けられている。第5実施例の保持器具50Dでは、保持器具50Dの上辺部側(図16の紙面上方)から、基板25の側端部を、第1と第2の側辺支持部52,53のスリットSに収容してスライドさせることにより、基板25が取り付けられる。このように、第5実施例の保持器具50Dであれば、第1と第2の側辺支持部52,53が互いにオフセットされた位置に形成されていない場合であっても、簡易な操作で、基板25を取り付けることができる。
【0082】
F.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0083】
F1.変形例1:
上記実施例では、成膜装置100は、プラズマCVD法によって成膜を行っていた。しかし、成膜装置100は、プラズマCVD法以外のドライコート法によって成膜を行うものとしても良い。成膜装置100は、例えば、イオンプレーティング法や、スパッタ法によって成膜を行うものとしても良い。
【0084】
F2.変形例2:
上記実施例では、成膜装置100は、燃料電池10のセパレータ20を構成する基板25を成膜対象としていた。しかし、成膜装置100は、そうした燃料電池用セパレータを構成する基板に限らず、他の基板を成膜するために用いられるものとしても良い。また、上記実施例では、基板25の耐腐食性や親水性の向上、表面抵抗の低減のために成膜処理が行われていたが、他の目的のために成膜処理が行われるものとしても良い。例えば、基板25の撥水性を向上させるために成膜処理が行われるものとしても良い。成膜装置100によって生成される薄膜の材料は、そうした目的に応じて適宜選択されれば良い。
【0085】
F3.変形例3:
上記実施例では、基板準備部102のチャック部62によって、基板25が保持器具50に自動的に取り付けられていた。しかし、成膜装置100のチャック部62は省略されるものとしても良い。基板25は例えば、手作業で保持器具50に取り付けられるものとしても良い。また、基板準備部102において基板25を搬送する機構は、チャック部62でなくとも良く、基板25を磁力や負圧で吸引して搬送する機構であるものとしても良い。なお、成膜装置100は、基板準備部102のチャック部62による基板25の操作とは逆の手順で、基板25を保持器具50から自動的に取り外す機構を備えているものとしても良い。
【0086】
F4.変形例4:
上記実施例では、保持器具50,50A〜50Dは、枠部51を備えていた。しかし、保持器具50,50A〜50Dは、枠部51に換えて、各支持部52,53,54,57,58,58Cのそれぞれの位置を固定できる部材を備えているものとしても良い。
【0087】
F5.変形例5:
上記実施例では、成膜装置100は、成膜室110の室内において、基板25が取り付けられた保持器具50,50A〜50Dを、基板25が立った状態となるように固定するための、取付部113を有する基台112を備えていた。しかし、成膜装置100は、取付部113を有する基台112に換えて、保持器具50,50A〜50Dを固定するための他の固定部を有するものとしても良い。
【0088】
F6.変形例6:
上記実施例では、第1または第2の側辺支持部52,53は、単なる壁面の切れ目として構成されたスリットSに基板25の外周辺の一部が受け入れられることにより、基板25を支持していた。しかし、スリットSの内壁面部には、基板25を締結保持するための機構が設けられるものとしても良い。ただし、上記実施例のように、スリットSへの外周端部の受け入れのみで基板25が保持されれば、基板25に、その保持のための締結力などの外力が余分に付与されないため、基板25の変形や損傷が、より抑制される。
【符号の説明】
【0089】
1…電解質膜
2…アノード
3…カソード
5…膜電極接合体
7…シール部
8…ガス拡散層
9…貫通孔
10…燃料電池
20…セパレータ
21…アノードプレート
22…カソードプレート
23…流路形成層
25…基板
50…保持器具
50A…保持器具
50B…保持器具
50C…保持器具
50D…保持器具
51…枠部
52…第1の側辺支持部
53…第2の側辺支持部
54…底辺支持部
56…ボルト
57…上辺支持部
58…底辺支持部
58C…底辺支持部
62…チャック部
70…保持器具(参考例)
71…第1の枠部材
72…第2の枠部材
73…第3の枠部材
74…ヒンジ機構
75…ヒンジ支持部材
76…ボルト
100…成膜装置
101…制御部
102…基板準備部
110…成膜室
110W…隔壁
111…シャワー管
112…基台
112f…脚部
113…取付部
115…バイアス電源
116…排気口
118…圧力計測部
120…原料ガス供給部
121…原料ガス供給源
123…ガス配管
124…制御バルブ
130…排ガス排出部
132…排ガス配管
135…ポンプ
CP…重心位置
S…スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライコート法によって、成膜室に配置された基板の両面に同時成膜する成膜装置であって、
前記基板を保持する保持器具と、
前記基板が取り付けられた前記保持器具を、前記基板が立った状態となるように固定する固定部と、
を備え、
前記保持器具は、前記基板の、互いに交差する辺方向を有する第1と第2の辺の一部をそれぞれ支持する第1と第2の支持部を備え、
前記保持器具は、前記固定部によって、前記第1の支持部が重力方向上側となり、前記第2の支持部が重力方向下側となるように固定され、
前記第1の支持部は、前記基板の前記第1の辺の一部を受け入れるスリットを有し、前記基板が水平方向へと傾くことを抑制するとともに、前記基板が前記保持器具から離間することを抑制し、
前記第2の支持部は、前記基板が重力方向へと脱落することを抑制する、成膜装置。
【請求項2】
請求項1記載の成膜装置であって、
前記保持器具は、さらに、
前記基板の外周と対応する枠を有する枠部材と、
前記基板の前記第1の辺と互いに対向し合う第3の辺の一部を支持する第3の支持部と、
を備え、
前記第3の支持部は、前記基板の前記第3の辺の一部を受け入れるスリットを有し、
前記第1と第2と第3の支持部はそれぞれ、前記枠部材の対応する各辺に設けられている、成膜装置。
【請求項3】
請求項2記載の成膜装置であって、
前記第1と第2と第3の支持部はそれぞれ、
(i)前記基板と前記保持器具とを、互いに平行に重ね合わせるとともに、前記基板の面に沿った方向における配置角度を互いにずらした第1の配置状態としたときに、前記基板と干渉し合わない位置であって、
(ii)前記第1の配置状態から、前記配置角度のずれを解消させるように、前記基板を回転させることにより、前記基板の前記第1と第3の辺の一部が、前記第1と第3の支持部のそれぞれの前記スリットに受け入れられる位置
に設けられている、成膜装置。
【請求項4】
請求項3記載の成膜装置であって、
前記保持器具は、さらに、前記基板の前記第2の辺と互いに対向し合う第4の辺の一部を支持する第4の支持部を備え、
前記第2と第4の支持部はそれぞれ、前記基板の前記第2と第4の辺の一部を受け入れるスリットを有し、
前記第1と第2と第3と第4の支持部はそれぞれ、
(i)前記基板と前記保持器具とを、前記第1の配置状態としたときに、前記基板と干渉し合わない位置であって、
(ii)前記第1の配置状態から、前記配置角度のずれを解消させるように、前記基板を回転させることにより、前記基板の全ての辺の一部が、前記第1と第2と第3と第4の支持部のそれぞれの前記スリットに受け入れられる位置
に設けられている、成膜装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の成膜装置であって、さらに、
前記基板を搬送し、前記保持器具に取り付ける取付機構を備える、成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−224892(P2012−224892A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91870(P2011−91870)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】