説明

手指用消毒剤組成物

【課題】べたつき、使用後の残存感、ヨレの生成を防止し、かつ、低温安定性を有するゲル状手指用消毒剤の提供。
【解決手段】低級アルコール40〜90重量%、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体0.02〜0.1重量%、及び、ジイソプロパノールアミン0.01〜0.1重量%を含有する、手指用消毒剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増粘剤の使用を抑制し、かつ、耐食塩性及び低温安定性に優れた手指用消毒剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
簡便に手指を消毒する手段として、ゲル状の消毒剤が使用されている。ゲル状の消毒剤は通常、垂れ落ちを防止するため、さらに使用時に所定の「延び」を得ること等を目的として増粘剤が添加されている。
増粘剤としては、カルボキシビニルポリマーが広く利用されている。さらには、セルロース系高分子や、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を使用するものも提案されている(特許文献1〜5)。
しかしながら、必要な粘性を得るために添加する増粘剤の量が多くなると、べたつきや使用後の残存感が生じたり、ヨレが生じたりするなどの問題があった。また、増粘剤としてアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を使用した場合、使用時のべたつきや残存感等を除去するために環状シリコンを添加するなどする必要があった。
また、各種の感染症予防のため手指消毒剤の使用時期は比較的低温の季節に多く、室内のみならず室外で保管使用される事があるが、現在市販されているゲル状の手指消毒剤は冬季の低温で増粘剤の一部が析出して系内が白濁し、粘度が低下するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−305504号公報
【特許文献2】特開平5−255078号公報
【特許文献3】特開平8−92078号公報
【特許文献4】特開平6−199700号公報
【特許文献5】特開2006−83119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、べたつき、使用後の残存感、ヨレの生成を防止し、かつ、低温安定性を有するゲル状手指用消毒剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、増粘剤と中和剤の種類及び量を検討した結果、これらを所定のものとすることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、低級アルコール40〜90重量%、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体0.02〜0.1重量%、及び、ジイソプロパノールアミン0.01〜0.1重量%を含有する、手指用消毒剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、増粘剤の使用を抑制し、使用時に手からの垂れ落ち、ヨレがなく、使用後の製剤のベトツキ、残存感がないゲル状の手指用消毒剤が得られる。
さらに、上記組成の手指消毒剤は低温時でも安定であり増粘剤の析出もなく安定して長期使用が可能である。例えば、本発明の手指消毒剤組成物は、0℃以下に保管されても安定したゲル状で使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の手指用消毒剤組成物は、低級アルコール40〜90重量%、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体0.02〜0.1重量%、及び、ジイソプロパノールアミン0.01〜0.1重量%を含有する。
【0008】
本発明の手指用消毒剤組成物に使用される低級アルコールは特に限定はされないが、例えば炭素数が1〜5のアルコール、例えばエタノール、イソプロパノール等が挙げられる。本発明においては、エタノールが最も好ましい。
【0009】
本発明の手指用消毒剤組成物に含まれる低級アルコールの量は40〜90重量%、好ましくは65〜75重量%である。
【0010】
本発明の手指用消毒剤組成物に使用されるアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、皮膚用の各種化粧料や薬剤等に使用するものであれば特に限定はされない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの単純エステルからなるモノマー1種以上とアクリル酸アルキル(炭素数10〜30のものなど)の共重合体を、ショ糖のアリルエステル又はペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋したものを使用することができる。例えば、Carbopol 1342、Carbopol 1382、Carbopol ETD2020(日光ケミカル社製)として市販されているものなどを使用することが可能であり、本発明においては、上記のうちCarbopol ETD2020が特に好ましい。
【0011】
本発明の手指用消毒剤組成物は、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を、組成物全体を基準として0.02〜0.1重量%、好ましくは0.05〜0.1重量%含む。
【0012】
また、本発明の手指用消毒剤組成物は、ジイソプロパノールアミンを0.01〜0.1重量%、好ましくは0・03〜0.06重量%を含有する。さらに、上記のジイソプロパノールアミンの含有量は、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の含有量に対して10%〜300%とするのが好ましく、より好ましくは20%〜100%とされる。
ジイソプロパノールアミンを上記の範囲で含むことにより、本発明の手指用消毒剤組成物に含まれるアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、増粘剤としての好ましい効果を示す。
【0013】
一般に、カルボキシビニルポリマーやアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体などの増粘剤を使用する場合、ゲルを形成するために同時に塩基性の物質が添加される。ここで、増粘剤としてアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を使用し、これとジイソプロパノールアミンを上記の含有量で組み合わせて使用することにより、増粘剤の使用量が0.1重量%以下であっても所定のゲル状の形態を保つことが可能となる。その結果、手指用消毒剤組成物中の増粘剤の使用量を抑えて、べたつき、使用後の残存感を防止する効果が得られる。従って、ゲル状消毒剤組成物として必要な所定のべたつき・残存感防止効果を得るために、さらに環状シリコンの添加等を行う必要がない。
さらには、上記の組成を有する本発明の手指用消毒剤は、耐食塩性が優れるため手に擦り込み時に汗等の食塩の影響を受け難いのでヨレの発生もなく、また低温での増粘剤の析出も抑えられ、低温安定性に優れる。
【0014】
本発明の手指用消毒剤組成物は、必要によりさらに殺菌剤及び/又は保湿剤を含んでもよい。
殺菌剤は当業者が適宜選択することが可能であり、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ポピドンヨード、ポロクサマーヨード、ヨードチンキ、オキシドール、トリクロサンを使用することができる。上記のうち、本発明においては塩化ベンザルコニウムを使用することが好ましい。殺菌剤を使用する場合、その使用量は例えば0.01〜1.0重量%とすることが可能であり、0.05〜0.2重量%とするのがより好ましい。
【0015】
また、保湿剤も同様に当業者が適宜選択することが可能であり、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、尿素、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウムを使用することができる。上記のうち、本発明においてはグリセリンを使用することが好ましい。保湿剤を使用する場合、その含有量は、例えば0.01〜2.0重量%とすることが可能であり、0.05〜1.0重量%とするのがより好ましい。
【0016】
本発明の手指用消毒剤は、低級アルコール以外の溶媒として精製水を使用して全体の量を調整することができる。
以下、実施例を参照して本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
表1の組成の通りに実施例及び比較例を常法により作成し、各組成物の評価を行った。評価基準は以下の通りである。
【0018】
耐食塩性
1%食塩水を添加した時の配合剤が白濁するまでの食塩の添加量(NaCl濃度:ppm)
低温安定性
手指用消毒剤の容器に各試料を入れ、0℃にて貯蔵したときの液の外観(一ヶ月)。
○:透明である
△:濁りがやや見られる
×:液が白濁
垂れ落ち
○:垂れ落ちなし
△:垂れ落ちがややある
×:垂れ落ちがある
【0019】
べたつき
○:べたつきなし
△:べたつきがややある
×:べたつきあり
ヨレ
○:ヨレが生じない
△:ヨレがやや生じる
×:ヨレが生じる
残存感
○:残存感なし
△:残存感がややある
×:残存感り
【0020】
評価結果は以下の表1の通りである。なお、表1の評価は、試用者10人に使用させ、その結果を平均値で纏めたものである。
【表1】

【0021】
表1の結果から、本発明の手指用消毒剤組成物は、耐食塩性及び低温安定性が改善されていることが分かる。また、使用時に手からの垂れ落ちやヨレがなく、また、べたつき及び残存感においても良好な結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級アルコール40〜90重量%、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体0.02〜0.1重量%、及び、ジイソプロパノールアミン0.01〜0.1重量%を含有する、手指用消毒剤組成物。
【請求項2】
殺菌剤及び/又は保湿剤を更に含む、請求項1記載の手指用消毒剤組成物。

【公開番号】特開2011−132184(P2011−132184A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293781(P2009−293781)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000115027)ユーホーケミカル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】