説明

把持装置及びこれを備えた作業機械

【課題】把持部材を回動させる2本の油圧シリンダに対する作動油の圧力損失を低減することができる把持装置及び、これを備えた作業機械を提供すること。
【解決手段】各増速部材39、40は、中継部材38と各油圧シリンダ21、22との間となる位置で中継部材38の側面にそれぞれ固定され、かつ、油圧配管41は、各増速部材のうち、油圧シリンダ21に近いものと当該油圧シリンダ21とを連結するとともに、油圧シリンダ22に近いものと当該油圧シリンダ22とを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の作業腕の先端に設けられ、建設解体作業や産業廃棄物の解体分別作業等を目的として処理対象物を把持するのに用いられる把持装置、及びこれを備えた作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械の作業腕の先端に設けられる把持装置として、例えば、特許文献1に記載された破砕装置が知られている。特許文献1の破砕装置は、油圧ショベル等の作業車両のアーム先端部位に装着されるブラケットと、このブラケットに対し旋回可能に設けられたフレームと、このフレームに開閉可能に設けられた一対の破砕部材と、これら破砕部材の上部間に装着され、当該破砕部材を傾動動作させる油圧シリンダとを備えている。また、前記破砕装置は、前記フレームから下方に突出するスイベルシャフトと、このスイベルシャフトの突出部分に回動可能に設けられたスイベルロータとを備え、これらスイベルシャフト及びスイベルロータを介した作動油のやりとりが行われることによって、前記油圧シリンダを伸縮動作させて前記一対の破砕部材の開閉が行われるようになっている。
【0003】
そして、特許文献1に係るスイベルロータには、前記油圧シリンダのロッド側から排出される作動油を当該油圧シリンダのヘッド側へ作動油を供給する油路に戻す(いわゆる、作動油の再生を行う)ための増速弁が組み込まれている。
【0004】
また、一本の油圧シリンダにより一対の破砕部材の双方を傾動させる特許文献1の破砕装置とは異なり、一対の把持部材(前記破砕部材)のそれぞれを回動させるための一対の油圧シリンダを備えた把持装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−49990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一対の油圧シリンダを有する把持装置においても、各油圧シリンダからの戻り油をそれぞれ再生することが好ましい。ここで、戻り油の再生を効率的に行うためには、各油圧シリンダに接続された油路における作動油の圧力損失を低減することが要求される。
【0007】
しかしながら、一対の油圧シリンダを有する把持装置において特許文献1のようにスイベルロータに増速弁を組み込む構成とした場合には、一つの増速弁に繋がる油路を、一対の油圧シリンダについて共用しなければならないため、圧力損失が大きくなるという問題があった。
【0008】
また、特許文献1の増速弁は、スイベルロータと2本の油圧シリンダとを接続する複数のホースの配索形態について何ら考慮されていないため、当該各ホース長の増大に伴う作動油の圧力損失が生じるおそれもある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、把持部材を回動させる2本の油圧シリンダに対する作動油の圧力損失を低減することができる把持装置及び、これを備えた作業機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、先端が変位可能な作業腕をもつ作業機械の当該作業腕の先端部に設けられ、処理対象物を把持する把持装置であって、前記作業腕の先端部に取り付けられる取付部材と、前記取付部材に対し回動軸回りに回動可能に設けられた回動部材と、前記回動部材に対して前記回動軸と直交する一対の開閉軸回りにそれぞれ回動可能に設けられた一対の把持部材と、前記回動部材と前記一対の把持部材との間にそれぞれ設けられ、前記各把持部材をそれぞれ前記回動部材に対して前記開閉軸回りに回動させる一対の油圧シリンダと、前記取付部材に固定された第一固定部と前記回動部材に固定された第二固定部とを有するとともに、これら第一固定部と第二固定部とが前記回動軸回りに回動可能で、かつ、前記第一固定部と第二固定部との間で作動油のやりとりが可能とされたスイベルジョイントと、前記スイベルジョイントとの間で作動油のやりとりが可能となるように、当該スイベルジョイントの第二固定部に固定された中継部材と、前記中継部材との間で作動油のやりとりが可能となるように当該中継部材に固定され、前記油圧シリンダから導出された作動油を再生するための油路及び弁を有する一対の増速部材とを備え、前記中継部材は、前記回動軸に沿って前記スイベルジョイントから延びるように当該スイベルジョイントに固定されているとともに、前記各増速部材は、前記回動軸と直交する方向に前記中継部材を挟むように当該中継部材の両側面にそれぞれ固定されていることを特徴とする作業機械の把持装置を提供する。
【0011】
本発明によれば、一対の油圧シリンダのそれぞれに対応して一対の増速部材が設けられているとともに、各増速部材が中継部材の両側面に固定されているため、各油圧シリンダに対する作動油の圧力損失の低減を有効に行いながら把持装置をコンパクトに構成することができる。
【0012】
具体的に、本発明では、一対の油圧シリンダのそれぞれに対応して増速部材が設けられているため、一対の油圧シリンダが一つの増速部材を共用する場合と異なり、各油圧シリンダがそれぞれ対応する増速部材の油路を個別に利用することができるため、当該増速部材の油路における作動油の圧力損失を低減することができる。
【0013】
これに加えて、本発明では、中継部材が回動軸に沿って延びるように設けられているとともにこの中継部材を挟むように当該中継部材の両側面に各増速部材が固定されているため、二の油圧シリンダに対応して割り当てられる各増速部材のレイアウトをコンパクトにすることができる。
【0014】
したがって、本発明によれば、圧力損失の低減を有効に行いながら把持装置をコンパクトに構成することができる。
【0015】
なお、本発明における中継部材は、スイベルジョイントの第二固定部と固定されていることが必要であるが、中継部材とスイベルジョイントとを別々の部材として構成し、これらを固定することだけでなく、予めスイベルジョイントの第二固定部に対し中継部材を一体に構成することもできる。
【0016】
前記把持装置において、前記増速部材と前記油圧シリンダとを連結する複数の油圧配管とを備え、前記各増速部材は、前記中継部材と前記各油圧シリンダとの間となる位置で前記中継部材の側面にそれぞれ固定され、かつ、前記油圧配管は、前記各増速部材のうち、一方の油圧シリンダに近いものと当該一方の油圧シリンダとを連結するとともに、他方の油圧シリンダに近いものと当該他方の油圧シリンダとを連結することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、中継部材と各油圧シリンダとの間にそれぞれ増速部材が設けられているとともに、これら増速部材とそれに近い油圧シリンダとを油圧配管によって接続している、つまり、中継部材を基準として、各増速部材が接続すべき油圧シリンダ側に振り分けて配置されているため、これら各増側部材と各油圧シリンダとを連結する各油圧配管の長さを短くすることができ、これにより当該各油圧配管における作動油の圧力損失を低減することができる。
【0018】
前記把持装置において、前記各油圧シリンダは、シリンダ本体と、このシリンダ本体に対して伸縮可能なロッドとを有し、前記ロッドの先端部が前記回動部材に回動可能に支持されているとともに、前記シリンダ本体の先端部が前記把持部材に回動可能に支持されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、各油圧シリンダのロッドを回動部材に固定するとともに、シリンダ本体を把持部材に固定しているため、把持装置をコンパクトに構成することができる。
【0020】
具体的に、各把持部材によって処理対象物を把持する把持装置においては、各把持部材に近い構成ほど作業中に外部の物に接触する可能性が高くなる傾向があるため、当該各把持部材に油圧シリンダのロッドを固定した場合には、外部の物からロッドを保護するための保護部材を別途設ける必要があり、把持装置が大掛かりなものになるのに対し、前記構成のように、各把持部材に対して油圧シリンダのシリンダ本体を固定することにより、前記保護部材を省略することができる。特に、従来では、油圧シリンダのロッドに直接増速弁等を設けることも行われていたが、このような構成において、ロッドを把持部材に固定すると、ロッドだけでなく増速弁等を保護するための保護部材を設けることを要するのに対し、前記構成によれば、ロッドを回動部材に固定した上で各増速部材を中継部材に固定することとしているため、ロッド及び増速部材を保護するための部材を省略して、さらなるコンパクト化を図ることができる。
【0021】
したがって、前記構成によれば、把持装置をコンパクトに構成することができる。
【0022】
前記把持装置において、前記油圧シリンダは、前記ロッドに設けられ、前記シリンダ本体内のロッド側室及びヘッド側室にそれぞれ連通する一対の案内油路と、前記シリンダ本体の外側に配置される前記ロッドの先端部に設けられ、前記各案内油路にそれぞれ前記油圧配管を接続するための第一接続部とをさらに備えているとともに、接続対象となる前記増速部材側に前記第一接続部が向くように前記回動部材に取り付けられており、前記増速部材は、接続対象となる油圧シリンダ側に向けて配置され、前記油圧配管を接続するための第二接続部を有することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、上記のように回動部材に固定されたロッドに第一接続部を設け、この第一接続部に各油圧配管を接続することにより、各把持部材からなるべく離れた位置に各油圧配管を配置することができるため、作業中に外部の物と各油圧配管とが接触するのを抑制することもできる。したがって、この構成によれば、把持装置をよりコンパクトに構成することができる。
【0024】
さらに、前記構成では、油圧シリンダの第一接続部と増速部材の第二接続部とが相対向して配置されているため、これら接続部の間の油圧配管をより短くすることができ、これにより、当該油圧配管における作動油の圧力損失を低減することができる。
【0025】
前記把持装置において、前記中継部材は、前記増速部材を介して前記油圧シリンダのロッド側室に接続された第一ロッド側油路と、前記増速部材を介して前記油路シリンダのヘッド側室に接続された第一ヘッド側油路と、これらの油路を連通する第一連通油路と、この第一連通油路に設けられ、通常閉鎖されるとともに前記第一ヘッド側油路又は第一ロッド側油路内の圧力が設定圧以上となったときに開放するリリーフ弁とを備えていることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、各把持部材により処理対象物を破砕する等の高負荷作業を行なう場合に、油圧シリンダのヘッド側又はロッド側の圧力が設定圧以上になると、リリーフ弁を開放して当該圧力を下げることができるため、油圧回路を有効に保護することができる。
【0027】
前記把持装置において、前記各増速部材は、前記油圧シリンダのロッド側室に接続された第二ロッド側油路と、前記油圧シリンダのヘッド側室に接続された第二ヘッド側油路と、これらの油路を連通する第二連通油路と、この第二連通油路を介した作動油の再生を可能とする再生部材とをそれぞれ備え、前記中継部材は、前記各増速部材の前記第二ロッド側油路同士を連通する第一ロッド側油路と、前記各増速部材の前記第二ヘッド側油路同士を連通する第一ヘッド側油路とを備えていることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、各増速部材の第二ロッド側油路同士、及び第二ヘッド側油路同士が中継部材によって連通されているため、一方の油圧シリンダから導出された作動油を他方の油圧シリンダに再生することができるため、より効果的に作動油の再生を行うことができる。
【0029】
前記把持装置において、前記各油圧シリンダは、前記油圧配管を接続するための第一接続部をそれぞれ有し、前記開閉軸と平行する軸回りで回動可能となるように前記回動部材に支持されており、前記各増速部材は、前記回動軸と直交する方向に前記第一接続部と並んで配置されるとともに、前記油圧配管を接続するための第二接続部をそれぞれ有し、前記油圧配管は、前記第二接続部から前記回動軸に沿って先端側に延びる基部と、この基部の先端部から接続対象となる油圧シリンダとは反対側に向かうとともに、その先端部が前記増速部材側に戻る方向に向く方向転換部と、前記方向転換部の先端部と前記第一接続部とを接続するとともに可撓性を有する可撓性部とを有することが好ましい。
【0030】
この構成によれば、油圧シリンダがその伸縮に応じて回動部材に対して回動する際に、この油圧シリンダと油圧配管との接触を抑制しながら、当該油圧シリンダに従動する油圧配管の負担を軽減することができる。具体的に、前記構成では、基部、方向転換部及び可撓性部により、各油圧配管が増速部材から先端側へ延び、接続対象となる油圧シリンダとは反対側に向かうとともに増速部材側へ戻る形状とされているため、基部を基準として、接続対象となる油圧シリンダ側へ張り出すことなく油圧配管を配置することができ、油圧配管と油圧シリンダとの接触を抑制することができる。さらに、前記方向転換部と第一接続部とを可撓性部により連結しているため、各油圧シリンダに従動する際に可撓性部を有効に撓ませることができる。
【0031】
したがって、油圧シリンダと油圧配管との接触を抑制しながら、油圧配管が折れ曲がる等の負担を軽減することができる。
【0032】
前記把持装置において、前記油圧配管は、前記基部と前記可撓性部とが互いに非接触となる形状を有することが好ましい。
【0033】
この構成によれば、前記基部と前記可撓性部とが互いに非接触とされているため、前記油圧シリンダの伸縮に応じて油圧配管が従動する際に、前記油圧配管の交差する部分同士が擦れて油圧配管が破損するのを抑制することができる。
【0034】
前記把持装置において、前記複数の油圧配管は、それぞれ前記油圧シリンダ及び増速部材においてのみ回動部材に支持されており、同じ油圧シリンダに接続された前記複数の油圧配管同士の間隔を一定に維持するように、当該複数の油圧配管を前記方向転換部、又はその近傍位置で保持する保持部材をさらに備えていることが好ましい。
【0035】
この構成によれば、保持部材によって同じ油圧シリンダに接続された複数の油圧配管同士の間隔を一定に維持することができるので、油圧シリンダの回動に応じて、複数の油圧配管同士が擦れて破損するのを抑制することができる。特に、前記構成のように、油圧シリンダ及び増速部材においてのみ各油圧配管が保持されている場合、方向転換部において各油圧配管の変位が起こり易いところ、保持部材によって方向転換部又はその近接位置において各油圧配管が保持されているため、各油圧配管同士の破損を有効に抑制することができる。
【0036】
また、本発明は、移動可能な作業機械本体と、この作業機械本体に搭載され、当該作業機械に対して先端が変位するように動作可能な作業腕とを備え、この作業腕の先端に前記把持装置が取り付けられることを特徴とする作業機械を提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、把持部材を回動させる2本の油圧シリンダに対する作動油の圧力損失を低減することができる把持装置及び、これを備えた作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る把持装置及びこれを備えた作業機械を示した図である。
【図2】図1の把持装置を拡大して示す正面図である。
【図3】図2の一部を拡大して示す正面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3の中継部材を分解して示す正面図である。
【図6】図1の油圧ショベルの油圧回路の一部を示す回路図である。
【図7】図5の中継部材の平面図である。
【図8】図5のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【図10】図5の増速部材40を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)及び(d)は側面図、(c)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0040】
図1は、本発明の実施形態に係る把持装置及びこれを備えた作業機械を示した図である。この図では、作業機械として油圧ショベルを利用したものが例示されているが、本発明に係る作業機械はこれに限られず、先端が変位可能な作業腕をもつ様々の作業機械について本発明の適用が可能である。
【0041】
油圧ショベル1は、下部走行体2と、その上に旋回可能に搭載される上部旋回体3とを備えている。上部旋回体3は、旋回フレーム4を有し、旋回フレーム4上に、カウンタウェイト5、キャビン6、及び作業腕7が搭載される。
【0042】
前記作業腕7は、ブーム8及びアーム9と、これらをそれぞれ駆動するためのブームシリンダ10及びアームシリンダ11を備えている。ブーム8は、旋回フレーム4上に起伏可能に(すなわち旋回フレーム4の左右方向の軸回りに回動可能に)搭載され、ブームシリンダ10の伸縮により当該起伏方向に駆動される。アーム9は、ブーム8の先端部に回動可能に連結され、アームシリンダ11の伸縮により当該回動方向に駆動される。これらブーム8及びアーム9の回動動作と、旋回フレーム4の旋回動作との組み合わせにより、当該アーム9の先端部は、自在に変位することが可能である。
【0043】
なお、本発明に係る作業機械は、旋回可能なものに限られない。また、作業腕は、一の関節を有するもの、あるいは多数の関節を有するものであってもよい。
【0044】
前記アーム9の先端部には、作業アタッチメントとして、図略のバケットや把持装置16が取り付けられるようになっている。図1は、作業アタッチメントとして把持装置16が取り付けられたものを示している。
【0045】
把持装置16は、アーム9に対して軸J4回りに回動可能に取り付けられ、作業シリンダ14の伸縮に応じて回動方向に駆動される。具体的には、アーム9にアイドラリンク15aの一端が回動可能に取り付けられるとともに当該リンク15aの他端が作業シリンダ14に連結され、このアイドラリンク15aの他端に把持装置16が作業リンク15bを介して連結される。そして、作業シリンダ14の伸縮によりアイドラリンク15a及び作業リンク15bが回動し、これに応じて把持装置16が回動することになる。
【0046】
具体的に、把持装置16は、前記アーム9の先端部に着脱可能に取り付けられる取付部材17と、この取付部材17に対し回動軸J1回りに回動可能に設けられた回動部材18と、この回動部材18に対して一対の開閉軸J2及びJ3回りに回動可能に設けられた一対の把持部材19及び20と、これら把持部材19、20をそれぞれ回動させる一対の油圧シリンダ21及び22と、前記取付部材17と回動部材18とに跨って設けられたスイベルジョイント23と、このスイベルジョイント23と前記各油圧シリンダ21、22との間の作動油のやりとりが可能となるようにスイベルジョイント23(図2参照)と各油圧シリンダ21、22とを連結する連結部材12(図2参照)とを備えている。
【0047】
図2は、図1の把持装置を拡大して示す正面図である。
【0048】
図1及び図2を参照して、前記取付部材17は、アーム9の先端部に回動可能に取り付けられる一対の取付板25と、これら取付板25の先端部同士を連結する連結板26と、この連結板26から先端側へ突出する支持リング27とを備えている。前記各取付板25は、軸J4回りに回動可能となるように前記アーム9に対して着脱可能に取り付けられるとともに、軸J5(図1参照)回りに回動可能となるようにバケットリンク15bに着脱可能に取り付けられる。なお、軸J4及びJ5は、それぞれ前記回動軸J1と直交する方向に延びる軸である。前記連結板26は、後述するスイベルジョイント23を挿通するために厚み方向に貫通する孔26a(図4参照)を有する板部材である。前記支持リング27は、その一端が前記連結板26に固定されているとともに、他端が先端側に向けて開口する部材である。この支持リング27は、後述する回動部材の一部を先端側から受け入れて、当該回動部材を回動可能に保持するようになっている。
【0049】
再び図1及び図2を参照して、前記回動部材18は、前記支持リング27に挿入される被支持部28と、この被支持部28が固定されたベース板29と、このベース板29の縁部に立設された一対の被覆板30(図1参照:図1では一枚のみを示している)と、これら被覆板30が所定の間隔となるように当該各被覆板30間に固定された被挟持板31a、31b及び31cとを備えている。前記被支持部28は、前記支持リング27に対して回動軸J1回りに回動可能な状態、かつ、支持リング27から抜け止めされた状態で、当該支持リング27内に設けられている。前記ベース板29は、一方の面に前記被支持部28が固定されるとともに、反対側の面の縁部に前記各被覆板30が固定された板部材である。また、ベース板29には、図4に示すように、スイベルジョイント23を挿入するための孔29aが形成されている。前記各被覆板30は、前記ベース板29から先端側へ延びる板部材であり、その基端部において側方の両側へ突出するシリンダ取付部30a(図1参照)と、その先端部において側方の両側へ突出する把持部材取付部30b(図1参照)とを備えている。各シリンダ取付部30aには、各被覆板30に跨るように軸J6及び軸J7が設けられているとともに、各把持部材取付部30bには、各被覆板30に跨るように前記開閉軸J2、J3が設けられている。なお、軸J2、J3、J6及びJ7は、それぞれ略平行する軸であり、前記回動軸J1と直交する方向に延びている。
【0050】
把持部材19、20は、図1に示す開放位置と図2に示す閉鎖位置との間で、それぞれ回動部材18に対して前記開閉軸J2、J3回りに回動可能とされている。これら把持部材19、20は、図2に示すように、前記開閉軸J2、J3に近い基端部側に設けられた破断刃19a、20aと、この破断刃19a、20aよりも先端側に設けられた把持刃19b、20bと、前記開閉軸J2、J3よりも外側となる位置に形成されたシリンダ取付部19c、20cとを備えている。破断刃19a、20aは、図2の閉鎖位置において開閉軸J2、J3の軸線方向に位置ずれした状態で互いに交差するような形状を有している。また、把持部19b、20bは、図2の閉鎖位置において互いに相対向する半円形の凹部をそれぞれ有し、これら凹部の間で処理対象物を把持することが可能とされている。シリンダ取付部19c、20cは、前記各開閉軸J2、J3から離間する方向へ突出する形状を有しており、当該シリンダ取付部19c、20cには、油圧シリンダ21、22をそれぞれ支持するための軸J8及びJ9が設けられている。なお、これら軸J8、J9は、前記回動軸J1と直交し、前記軸J2〜J7と略平行するものである。
【0051】
図2に示すように、油圧シリンダ21、22は、前記各把持部材19、20にそれぞれ固定されたシリンダ本体32と、このシリンダ本体32に対して伸縮可能に設けられたロッド33と、このロッド33に設けられ、前記シリンダ本体32内のロッド側室に連通するロッド側案内油路34、前記ロッド33に設けられ、前記シリンダ本体32のヘッド側室に連通するヘッド側案内油路35と、前記シリンダ本体32の外側に配置される前記ロッド33の先端部に設けられ、前記各案内油路34、35に油圧配管を接続するための第一接続部24a、24b(図4参照)とを備えている。
【0052】
図3は、図2の一部を拡大して示す正面図である。図4は、図3のIV−IV線断面図である。
【0053】
図3及び図4を参照して、スイベルジョイント23は、前記取付部材17に固定された第一固定部36と、前記回動部材18に固定された第二固定部37とを備えている。このスイベルジョイント23は、第一固定部36と第二固定部37との間の作動油の輸送を可能としながら、当該第一固定部36と第二固定部37とが前記回動軸J1回りに回動可能に構成されている。前記第一固定部36は、図4に示すように前記連結板26の孔26aに挿通する本体部36aと、図3に示すように本体部36aから側方へ突出する回転位置決め板36bとを備え、この回転位置決め板36bがボルトB1によって連結板26に締結されることにより当該連結板26に対する回転位置が固定されたものである。第二固定部37は、図4に示すようにベース板29の孔29a内に挿入された本体部37aと、この本体部37aの周方向の外側に突出するフランジ部37bとを備え、このフランジ部37bがボルトB2によってベース板29に締結されることにより当該ベース板29と一体となって回転するようになっている。
【0054】
以下、連結部材12について説明する。図5は、図3の中継部材を分解して示す正面図である。
【0055】
図3〜図5を参照して、前記連結部材12(図4参照)は、前記スイベルジョイント23の第二固定部37に固定された中継部材38と、この中継部材38の両側に固定された一対の増速部材39及び40と、これら増速部材39、40と各油圧シリンダ21、22とを連結する4本の油圧配管41とを備えている。
【0056】
前記中継部材38は、前記回動軸J1に沿ってスイベルジョイント23から延びるように当該スイベルジョイント23に固定されている。具体的に、中継部材38は、図5に示すように、略直方体の形状を有する本体部38aと、この本体部38aの基端部から両側方に突出する円板状の固定部38b(図7参照)とを有する正面視でT字形の部材である。この中継部材38は、図4に示すように、前記固定部38bを貫くボルトB3が第二固定部37の雌ねじ部に螺合することによって当該第二固定部37に固定されている。また、中継部材38は、その側面に取り付けられたブラケット42(図3参照)によって、回動部材18のベース板29にも固定されている。
【0057】
増速部材39、40は、前記回動軸J1と直交する方向に前記中継部材38を挟むように当該中継部材38の両側面にそれぞれ固定されている。具体的に、増速部材39、40は、固定部38bよりも先端側の位置で本体部38aに固定されている。これら増速部材39、40は、詳しくは後述するが、前記スイベルジョイント23を介して油圧ポンプ43及びタンクT(図6参照)に接続される二つの油路に油圧配管41を接続するための第二接続部45a、45b(図10の(b)参照)をそれぞれ備えている。これら増速部材39、40は、前記第二接続部45a、45bが接続対象となる油圧シリンダ21、22の第一接続部24a、24b側に向くように、それぞれ中継部材38に取り付けられている。本実施形態では、回動軸J1と直交する左右方向に増速部材39、40と軸J6、J7(図2参照)とが並べて配置されている。
【0058】
図2及び図4に示すように、油圧配管41は、増速部材39と油圧シリンダ21との間に2本、増速部材40と油圧シリンダ22との間に2本、合計4本設けられている。つまり、4本の油圧配管41は、中継部材38を介して油圧シリンダ21側と油圧シリンダ22側とに2本ずつ振り分けられている。各油圧配管41は、各油圧シリンダ21、22及び増速部材39、40によってのみ支持されている。具体的に、各油圧配管41は、増速部材39、40の第二接続部45a、45b(図4参照)から前記回動軸J1に沿って先端側に延びる基部41aと、この基部41aの先端部から接続対象となる油圧シリンダ21、22とは反対側に向かうとともに、その先端部が増速部材39、40側に戻る方向に向く方向転換部41bと、この方向転換部41bの先端部と油圧シリンダ21、22の第一接続部24a、24bとを接続するとともに可撓性を有する可撓性部41cとを有している。前記基部41aと可撓性部41cとは、図2に示すように交差して配置されることになるが、これら基部41aと可撓性部41cとは、図4に示すように互いに非接触となるように配置されている。さらに、本実施形態では、前記各油圧配管41を接続された油圧シリンダ21、22ごとにまとめて保持するためのクランプ部材46(図4参照:保持部材)が設けられている。具体的に、クランプ部材46は、同じ油圧シリンダ21、22に接続された2本の油圧配管41同士の間隔を一定に維持するように、当該2本の油圧配管41を方向転換部41bの近傍位置で保持するようになっている。さらに、前記各油圧配管41は、各被覆板30(図1参照)及びその間に設けられた被挟持板31a〜31c(図2参照)によって周囲が取り囲まれているため、作業中に外部から各油圧配管41に対して異物が接触する可能性を低減することができる。
【0059】
以下、上述した連結部材により構成される油圧回路について、図6を参照して説明する。
【0060】
前記油圧ショベル1の有する油圧回路において、油圧ポンプ43から導出された作動油は、コントロールバルブ48及び前記スイベルジョイント23を介して各油圧シリンダ21、22に導かれるとともに、各油圧シリンダ21、22から導出された作動油はコントロールバルブ48及びスイベルジョイント23を介してタンクTに導かれる。
【0061】
具体的に、油圧ショベル1の有する油圧回路は、前記スイベルジョイント23と接続されたロッド側油路49及びヘッド側油路50を備えている。ロッド側油路49は、各油圧シリンダ21、22のロッド側室に接続されており、ヘッド側油路50は、各油圧シリンダ21、22のヘッド側室に接続されている。
【0062】
前記ロッド側油路49には、前記各油圧シリンダ21、22のそれぞれに対応して一対のカウンタバランス弁51が設けられている。このカウンタバランス弁51は、通常閉とされており、ロッド側油路49内の圧力に対してヘッド側油路50内の圧力が高くなることに応じて開方向に操作され、油圧シリンダ21、22からタンクT側への流れを許容するようになっている。また、ロッド側油路49には、前記カウンタバランス弁51をバイパスするバイパス油路52と、このバイパス油路52に設けられたチェック弁53とが設けられている。チェック弁53は、油圧ポンプ43から油圧シリンダ21、22のロッド側室への作動油の流れを許容し、その逆の流れを規制する。したがって、油圧ポンプ43から油圧シリンダ21、22に作動油が供給される場合には、このバイパス油路52を介して作動油が流れることになる。
【0063】
前記油圧シリンダ21とバイパス油路52との間、及び、油圧シリンダ22とバイパス油路52との間には、それぞれロッド側油路49とヘッド側油路50とを連通させる再生油路54が設けられている。これら再生油路54には、ロッド側油路49からヘッド側油路50への作動油の流れを許容する一方、その逆の流れを規制する一対のチェック弁55、56がそれぞれ設けられている。これらチェック弁55、56のうちチェック弁56は、ロッド側油路49内の圧力が高くなるほど、その開放圧が上がるようになっている。したがって、油圧ポンプ43から油圧シリンダ21、22のロッド側室に作動油が供給される場合には、再生油路54を介した作動油の流れが規制される一方、ロッド側室から導出される作動油は、再生油路54を介してヘッド側室に導かれる。したがって、各油圧シリンダ21、22のロッド伸張時における(各把持部材19、20の閉鎖時における)、各油圧シリンダ21、22の増速を図ることができる。なお、本実施形態では、前記カウンタバランス弁51、再生油路54、チェック弁55、56が再生部材の一例を構成する。
【0064】
また、ロッド側油路49とヘッド側油路50とを連通する第一連通油路65が設けられ、この第一連通油路65には、リリーフ弁57が設けられている。このリリーフ弁57は、通常閉じられており、ヘッド側油路50内の圧力が規定圧以上となったときに開放して、第一連通油路65内におけるヘッド側油路50からロッド側油路49への作動油の流れを許容する。したがって、各把持部材19、20による高負荷作業時(処理対象物の破砕時)においてヘッド側油路50内の圧力が規定のリリーフ圧以上となったときに、当該ヘッド側油路50をロッド側油路49側(タンクT側)に開放して、油圧系統の保護を図ることができる。
【0065】
そして、本実施形態では、前記ロッド側油路49のうちポートP1からP2までの範囲であって前記ヘッド側油路50のうちポートP3からP4までの範囲、つまり、前記リリーフ弁57を含む範囲が前記中継部材38により構成されている。
【0066】
また、前記ロッド側油路49のうちポートP5からP6までの範囲であって前記ヘッド側油路50のうちポートP7からP8までの範囲が増速部材39により構成されている。具体的に、増速部材39は、油圧シリンダ21に対応するカウンタバランス弁51と、このカウンタバランス弁51をバイパスするためのバイパス油路52と、ロッド側油路49とヘッド側油路50とを連通させる再生油路54と、この再生油路54に設けられたチェック弁55、56とを備えている。
【0067】
さらに、前記ロッド側油路49のうちポートP9からP10までの範囲であって前記ヘッド側油路50のうちポートP11からP12までの範囲が増速部材40により構成されている。具体的に、増速部材40は、油圧シリンダ22に対応するカウンタバランス弁51と、このカウンタバランス弁51をバイパスするためのバイパス油路52と、ロッド側油路49とヘッド側油路50とを連通させる再生油路54と、この再生油路54に設けられたチェック弁55、56とを備えている。
【0068】
なお、図6では、ポートP1とP6との間、ポートP3とP8との間、ポートP2とP9との間、及びポートP4とP11との間に、それぞれ油路を表しているが、これらの油路は便宜上表現しているに過ぎず、実際には、中継部材38に対して増速部材39、40を直接取り付けることにより、前記各ポート間は直接連通している。
【0069】
以下、図5〜図9を参照して、中継部材38の具体的構成について説明する。図7は、図5の中継部材38の平面図である。図8は、図5のVIII−VIII線断面図である。図9は、図8のIX−IX線断面図である。
【0070】
前記中継部材38は、前記固定部38b側の端面から所定深さに形成された一対の縦穴58、59と、これら縦穴58、59と直交する方向に前記本体部38aを貫通する一対の横穴60、61と、横穴60と前記縦穴58とを連通させる連通穴62と、横穴61と前記縦穴59とを連通させる連通穴63と、横穴61と縦穴59とを連通させる連通穴64とを備えている。前記縦穴58は、縦穴59よりも深く形成され、これら縦穴58、59は、前記スイベルジョイント23と接続される油路として利用される。各横穴60、61は、前記各縦穴58、59の間となる位置に設けられている。つまり、各横穴60、61と前記各縦穴58、59とは直接的には連通しないように配置されている。連通穴62は、本体部38aの側面から縦穴58を経由して横穴60まで繋がる穴である。連通穴63は、連通穴62とは反対側となる本体部38aの側面から縦穴59を経由して横穴61まで繋がる穴である。連通穴64は、連通穴63と同じ側となる本体部38aの側面から横穴61を経由して縦穴59まで繋がる穴である。そして、前記本体部38aの側面における各連通穴62〜64の開口部は、それぞれ閉じられている。また、連通穴64内には、前記リリーフ弁57が設けられている。そして、図9に示すように、横穴61の一方の開口部が前記ポートP1として利用され、他方の開口部がポートP2として利用される。また、横穴60の一方の開口部が前記ポートP3として利用され、他方の開口部がポートP4として利用される。
【0071】
図10は、図5の増速部材40を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)及び(d)は側面図、(c)は正面図である。
【0072】
図6及び図10(d)に示すように、増速部材40の側面には、前記中継部材38のポートP2、P4に対応する位置に、ポートP9及びポートP11が設けられている。一方、図10(b)に示すように、前記ポートP9、P11と反対側となる増速部材40の側面には、前記各油圧配管41が接続される第二接続部45a、45bが設けられている。なお、図10では、増速部材40について例示しているが、増速部材39は、中継部材38を基準として増速部材40と対称である点を除き、同様の構成を有している。
【0073】
以上説明したように、前記実施形態によれば、一対の油圧シリンダ21、22のそれぞれに対応して一対の増速部材39、40が設けられているとともに、各増速部材39、40が中継部材38の両側面にそれぞれ固定されているため、各油圧シリンダ21、22に対する作動油の圧力損失の低減を有効に行いながら把持装置16をコンパクトに構成することができる。
【0074】
具体的に、本発明では、一対の油圧シリンダ21、22のそれぞれに対応して増速部材39、40が設けられているため、一対の油圧シリンダ21、22が一つの増速部材を共用する場合と異なり、各油圧シリンダ21、22がそれぞれ対応する増速部材39、40の油路を個別に利用することができるため、当該増速部材39、40の油路における作動油の圧力損失を低減することができる。
【0075】
これに加えて、本発明では、中継部材38が回動軸J1に沿って延びるように設けられているとともに回動軸J1と直交する方向に中継部材38を挟むように当該中継部材38の両側面に各増速部材39、40が固定されているため、二の油圧シリンダ21、22に対応して割り当てられる各増速部材39、40のレイアウトをコンパクトにすることができる。
【0076】
したがって、前記実施形態によれば、圧力損失の低減を有効に行いながら把持装置16をコンパクトに構成することができる。
【0077】
なお、前記実施形態における中継部材38は、スイベルジョイント23の第二固定部37と固定されていることが必要であるが、中継部材38とスイベルジョイント23とを別々の部材として構成し、これら固定することだけでなく、予めスイベルジョイントの第二固定部37に対して中継部材38を一体に構成することもできる。
【0078】
前記実施形態では、中継部材38と各油圧シリンダ21、22との間にそれぞれ増速部材39、40が設けられているとともに、これら増速部材39、40とそれに近い油圧シリンダ21、22とを油圧配管41によって接続している、つまり、中継部材38を基準として、各増速部材39、40が接続すべき油圧シリンダ21、22側に振り分けて配置されているため、これら各増速部材39、40と各油圧シリンダ21、22とを連結する各油圧配管41の長さを短くすることができ、これにより当該各油圧配管41における作動油の圧力損失を低減することができる。
【0079】
前記実施形態のように、各油圧シリンダ21、22のロッド33を回動部材18に固定するとともに、シリンダ本体32を各把持部材19、20に固定する構成によれば、把持装置16をコンパクトに構成することができる。
【0080】
具体的に、各把持部材19、20によって処理対象物を把持する把持装置16においては、各把持部材19、20に近い構成ほど作業中に外部の物に接触する可能性が高くなる傾向があるため、当該各把持部材19、20に油圧シリンダのロッドを固定した場合には、外部の物からロッドを保護するための保護部材を別途設ける必要があり、把持装置が大掛かりなものになるのに対し、前記構成のように、各把持部材19、20に対して油圧シリンダ21、22のシリンダ本体32を固定することにより、前記保護部材を省略することができる。特に、従来では、油圧シリンダ21、22のロッド33に直接増速弁等を設けることも行われていたが、このような構成において、ロッド33を把持部材19、20に固定すると、ロッド33だけでなく増速弁等を保護するための保護部材を設けることを要するのに対し、前記実施形態によれば、ロッド33を回動部材18に固定した上で各増速部材39、40を中継部材38に固定することとしているため、ロッド33及び増速部材39、40を保護するための部材を省略してさらなるコンパクト化を図ることができる。
【0081】
したがって、前記構成によれば、把持装置16をコンパクトに構成することができる。
【0082】
前記構成のように、回動部材18に固定された油圧シリンダ21、22のロッド33に第一接続部24a、24b(図4参照)を設け、これら第一接続部24a、24bに各油圧配管41を接続することにより、各把持部材19、20からなるべく離れた位置に各油圧配管41を配置することができるため、作業中に外部の物と各油圧配管41とが接触するのを抑制することができる。したがって、この構成によれば、把持装置16をよりコンパクトに構成することができる。
【0083】
さらに、前記構成では、油圧シリンダ21、22の第一接続部24a、24bと各増速部材39、40の第二接続部45a、45bとが相対向して配置されているため、これら接続部24a、24b、45a、45bの間の油圧配管41をより短くすることができ、これにより、当該油圧配管41における作動油の圧力損失を低減することができる。
【0084】
前記構成のように、中継部材38にリリーフ弁57を備えた構成によれば、各把持部材19、20により処理対象物を破砕する等の高負荷作業を行なう場合に、油圧シリンダ21、22のヘッド側又はロッド側の圧力が設定圧以上になると、リリーフ弁57を開放して圧力を下げることができるため、油圧回路を有効に保護することができる。
【0085】
前記構成のように、各油圧シリンダ21、22のロッド側室及びヘッド側室にそれぞれ接続される各増速部材39、40内の油路が中継部材38によって連通しているため、各油圧シリンダ21、22のうちの一方から導出された作動油を他方に再生することができるため、より効果的に作動油の再生を行うことができる。
【0086】
前記実施形態のように、各油圧配管41が基部41cと方向転換部41bと可撓性部41cとを有する構成によれば、油圧シリンダ21、22がその伸縮に応じて回動部材18に対して回動する際に、この油圧シリンダ21、22と油圧配管41との接触を抑制しながら、当該油圧シリンダ21、22に従動する油圧配管41の負担を軽減することができる。具体的に、前記実施形態では、基部41a、方向転換部41b、及び可撓性部41cにより、各油圧配管41が増速部材39、40から先端側へ延び、接続対象となる油圧シリンダ21、22とは反対側に向かうとともに増速部材39、40側へ戻る形状とされているため、基部41aを基準として、接続対象となる油圧シリンダ21、22側へ張り出すことなく油圧配管41を配置することができる。さらに、方向転換部41bと第一接続部24a、24bとを可撓性部41cにより連結しているため、各油圧シリンダ21、22に従動する際に可撓性部41cを有効に撓ませることができる。
【0087】
したがって、油圧シリンダ21、22と油圧配管41との接触を抑制しながら、油圧配管41が折れ曲がる等の負担を軽減することができる。
【0088】
前記実施形態のように、前記基部41aと可撓性部41cとが互いに非接触となる構成によれば、油圧シリンダ21、22の伸縮に応じて油圧配管41が従動する際に、油圧配管41の交差する部分(基部41aと可撓性部41c)同士が擦れて油圧配管41が破損するのを抑制することができる。
【0089】
前記実施形態のように、クランプ部材46を備えた構成によれば、クランプ部材46によって同じ油圧シリンダ21、22に接続された2本の油圧配管41同士の間隔を一定に保持することができるので、油圧シリンダ21、22の回動に応じて、2本の油圧配管41同士が擦れて破損するのを抑制することができる。特に、前記実施形態のように、油圧シリンダ21、22及び増速部材39、40においてのみ各油圧配管41が保持されている場合、方向転換部41cにおいて各油圧配管41の変位が起こり易いところ、クランプ部材46によって方向転換部41cの近傍位置において各油圧配管41が保持されているため、各油圧配管41同士の破損を有効に抑制することができる。
【符号の説明】
【0090】
J1 回動軸
J2、J3 開閉軸
1 油圧ショベル(作業機械)
7 作業腕
16 把持装置
17 取付部材
18 回動部材
19、20 把持部材
21、22 油圧シリンダ
23 スイベルジョイント
24a、24b 第一接続部
32 シリンダ本体
33 ロッド
34 ロッド側案内油路
35 ヘッド側案内油路
36 第一固定部
37 第二固定部
38 中継部材
39、40 増速部材
41 油圧配管
41a ループ部
45a、45b 第二接続部
46 クランプ部材
51 カウンタバランス弁
54 再生油路
55、56 チェック弁
57 リリーフ弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が変位可能な作業腕をもつ作業機械の当該作業腕の先端部に設けられ、処理対象物を把持する把持装置であって、
前記作業腕の先端部に取り付けられる取付部材と、
前記取付部材に対し回動軸回りに回動可能に設けられた回動部材と、
前記回動部材に対して前記回動軸と直交する一対の開閉軸回りにそれぞれ回動可能に設けられた一対の把持部材と、
前記回動部材と前記一対の把持部材との間にそれぞれ設けられ、前記各把持部材をそれぞれ前記回動部材に対して前記開閉軸回りに回動させる一対の油圧シリンダと、
前記取付部材に固定された第一固定部と前記回動部材に固定された第二固定部とを有するとともに、これら第一固定部と第二固定部とが前記回動軸回りに回動可能で、かつ、前記第一固定部と第二固定部との間で作動油のやりとりが可能とされたスイベルジョイントと、
前記スイベルジョイントとの間で作動油のやりとりが可能となるように、当該スイベルジョイントの第二固定部に固定された中継部材と、
前記中継部材との間で作動油のやりとりが可能となるように当該中継部材に固定され、前記油圧シリンダから導出された作動油を再生するための油路及び弁を有する一対の増速部材とを備え、
前記中継部材は、前記回動軸に沿って前記スイベルジョイントから延びるように当該スイベルジョイントに固定されているとともに、前記各増速部材は、前記回動軸と直交する方向に前記中継部材を挟むように当該中継部材の両側面にそれぞれ固定されていることを特徴とする作業機械の把持装置。
【請求項2】
前記増速部材と前記油圧シリンダとを連結する複数の油圧配管とを備え、
前記各増速部材は、前記中継部材と前記各油圧シリンダとの間となる位置で前記中継部材の側面にそれぞれ固定され、かつ、前記油圧配管は、前記各増速部材のうち、一方の油圧シリンダに近いものと当該一方の油圧シリンダとを連結するとともに、他方の油圧シリンダに近いものと当該他方の油圧シリンダとを連結することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の把持装置。
【請求項3】
前記各油圧シリンダは、シリンダ本体と、このシリンダ本体に対して伸縮可能なロッドとを有し、前記ロッドの先端部が前記回動部材に回動可能に支持されているとともに、前記シリンダ本体の先端部が前記把持部材に回動可能に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記油圧シリンダは、前記ロッドに設けられ、前記シリンダ本体内のロッド側室及びヘッド側室にそれぞれ連通する一対の案内油路と、前記シリンダ本体の外側に配置される前記ロッドの先端部に設けられ、前記各案内油路にそれぞれ前記油圧配管を接続するための第一接続部とをさらに備えているとともに、接続対象となる前記増速部材側に前記第一接続部が向くように前記回動部材に取り付けられており、
前記増速部材は、接続対象となる油圧シリンダ側に向けて配置され、前記油圧配管を接続するための第二接続部を有することを特徴とする請求項3に記載の把持装置。
【請求項5】
前記中継部材は、前記増速部材を介して前記油圧シリンダのロッド側室に接続された第一ロッド側油路と、前記増速部材を介して前記油路シリンダのヘッド側室に接続された第一ヘッド側油路と、これらの油路を連通する第一連通油路と、この第一連通油路に設けられ、通常閉鎖されるとともに前記第一ヘッド側油路又は第一ロッド側油路内の圧力が設定圧以上となったときに開放するリリーフ弁とを備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の把持装置。
【請求項6】
前記各増速部材は、前記油圧シリンダのロッド側室に接続された第二ロッド側油路と、前記油圧シリンダのヘッド側室に接続された第二ヘッド側油路と、これらの油路を連通する第二連通油路と、この第二連通油路を介した作動油の再生を可能とする再生部材とをそれぞれ備え、
前記中継部材は、前記各増速部材の前記第二ロッド側油路同士を連通する第一ロッド側油路と、前記各増速部材の前記第二ヘッド側油路同士を連通する第一ヘッド側油路とを備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の把持装置。
【請求項7】
前記各油圧シリンダは、前記油圧配管を接続するための第一接続部をそれぞれ有し、前記開閉軸と平行する軸回りで回動可能となるように前記回動部材に支持されており、
前記各増速部材は、前記回動軸と直交する方向に前記第一接続部と並んで配置されるとともに、前記油圧配管を接続するための第二接続部をそれぞれ有し、
前記油圧配管は、前記第二接続部から前記回動軸に沿って先端側に延びる基部と、この基部の先端部から接続対象となる油圧シリンダとは反対側に向かうとともに、その先端部が前記増速部材側に戻る方向に向く方向転換部と、前記方向転換部の先端部と前記第一接続部とを接続するとともに可撓性を有する可撓性部とを有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の把持装置。
【請求項8】
前記油圧配管は、前記基部と前記可撓性部とが互いに非接触となる形状を有することを特徴とする請求項7に記載の把持装置。
【請求項9】
前記複数の油圧配管は、それぞれ前記油圧シリンダ及び増速部材においてのみ回動部材に支持されており、
同じ油圧シリンダに接続された前記複数の油圧配管同士の間隔を一定に維持するように、当該複数の油圧配管を前記方向転換部、又はその近傍位置で保持する保持部材をさらに備えていることを特徴とする請求項7又は8に記載の把持装置。
【請求項10】
移動可能な作業機械本体と、この作業機械本体に搭載され、当該作業機械に対して先端が変位するように動作可能な作業腕とを備え、この作業腕の先端に請求項1〜9の何れか1項に記載の把持装置が取り付けられることを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−74671(P2011−74671A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227816(P2009−227816)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】